バトルスピリッツ 王者の鉄華   作:バナナ 

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第46ターン「天空斬り裂け、未来を照らせ」

 

「君は僕の何だ、大好きな姉さんを虐めるクズの分際で……何を偉そうにしてんだ!!」

「何って、友達だよ。だから救けたくて、一緒にいたくて、抗ってんだ」

 

 

全てのゼノンザードスピリットを操り、さらには使用者を勝利に導く王者の力まで発揮するソラ。劣勢を強いられ続けたオーカミだったが、彼も遅れて王者を発動させる。

 

目が赤く輝くのみのソラとは違い、オーカミの王者は、目から血が流れ、とても痛々しく見える。

 

 

「来たか、王者の鉄華」

 

 

アルファベットがそう呟いた。かつてない程に緊張感が昂る中、オーカミの第8ターン目が始まる。

 

青と紫の2体のゼノンザードスピリットを操るソラに対抗すべく、カードをドローして行く。

 

 

[ターン08]鉄華オーカミ・王者

 

 

「メインステップ……」

「そう言えば君も使えるんだっけ王者、でもそれを使っても、僕には勝てないよ、絶対に……憂鬱の魔王・ベールフェゴルの効果、君の手札と手元にあるスピリットカード全てのコストは+3される」

「………」

 

 

以前、鈴木レイジに使用された時と全く同じだ。紫のゼノンザードスピリットの影響により、オーカミの手札にあるスピリットカードのコストは全て3上昇。自ずとコアが増えて来る終盤であっても、これはかなりの足枷となる。

 

だが、今のオーカミはこれをモノともせず、突き進む。

 

 

「オレの鉄華団に、そんな効果は通用しない」

「だろうね」

「アタックステップの開始時、トラッシュにあるバルバトス第2形態の効果、トラッシュから自身を召喚」

 

 

ー【ガンダム・バルバトス[第2形態]】LV2(2)BP6000

 

 

オーカミのアタックステップの開始時。トラッシュより、機関銃を備えた小型のバルバトス、バルバトス第2形態を呼び出す。

 

手札と手元のカードに影響を与えるベールフェゴルだが、トラッシュにまでは及ばない。故にその召喚は、僅か1コストで完了した。

 

 

「さらにオルガの【神技】……コアを4つ払い、トラッシュから鉄華団スピリットをノーコストで呼ぶ。大地を揺らせ、未来へ導け!!……ガンダム・バルバトス第4形態、LV3で召喚!!」

 

 

ー【ガンダム・バルバトス[第4形態]】LV3(4)BP12000

 

 

トラッシュから鉄華団を呼び出す事のできる、オルガの【神技】………

 

これにより呼び出されるのは、黒き戦棍メイスを装備した、鉄華オーカミのエースカード、バルバトス第4形態。

 

 

「バルバトス第4形態でアタック、その効果でベールフェゴルとアレックスのコアを1つずつリザーブに置き、消滅させる」

 

 

戦場に立つや否や、高速でソラのフィールドへと駆け抜けて行くバルバトス第4形態。黒き戦棍メイスを横一線に振い、アレックスと、紫のゼノンザードスピリットであるベールフェゴルを討ち倒し、爆散させる。

 

 

「フラッシュでオルガの【神域】を発揮、デッキ上3枚を破棄、1枚ドロー、クーデリア&アトラの【神域】で、トラッシュの紫1色のカード1枚をデッキ下に戻し、もう1枚ドロー」

 

 

このターンも流れるように発揮される、オルガとクーデリア&アトラのコンボ。手札とトラッシュ、取れる戦術を増やして行く。

 

 

「無駄だよ、いくら手札とトラッシュを増やそうと、君に逆転のチャンスは訪れない」

「バルバトス第4形態LV3の効果、紫シンボル1つを得て、ダブルシンボルになる」

「ブロックはしないよ、ライフで受ける」

 

 

〈ライフ4➡︎2〉早美ソラ・王者

 

 

2体を倒しても尚、止まらないバルバトス第4形態。ソラのライフバリア直前まで辿り着くと、手に持つメイスを、今度は縦一線に振い、それを一気に2つ砕く。

 

だが、ここでソラも反撃に出る。このタイミングで使える1枚のカードを、手札から切り……

 

 

「僕のライフが減った事により、手札から赤マジック、覇王爆炎撃の効果を発揮」

「……」

「コレをノーコストで使用する。BP20000以下のバルバトス第4形態を破壊」

 

 

ソラの放った赤マジックにより、バルバトス第4形態は燃え盛る爆炎に襲われ、その身を隅々まで焼き尽くされ、爆散に追い込まれる。

 

バルバトス第4形態の最大の武器は、バトルが終了する度に、トラッシュから鉄華団スピリットを次々と蘇生させられる事。それが封じられたとあれば、この先の展開はかなり厳しくなる。

 

 

「バルバトス第2形態でアタック」

 

 

しかし、この状況になっても、王者に入っているオーカミは、己が見続ける勝利の未来を信じ、迷わず残ったバルバトス第2形態で突き進む。

 

そしてこのフラッシュタイミング、手札にある1枚のカードを、Bパッドへ叩きつけて……

 

 

「フラッシュ【煌臨】を発揮、対象はアタック中のバルバトス第2形態」

 

 

リザーブのソウルコアをコストに、スピリットを更なる高みへと昇華させる『煌臨』の効果を発揮。

 

フィールドでは、バルバトス第2形態が背中のスラスターで飛翔、天空に蔓延る曇天へと突き進む。

 

 

天空(ソラ)を斬り裂け、未来を照らせ!!

 

ガンダム・バルバトスルプス!!

 

LV2で煌臨!!

 

 

やがて曇天を斬り裂き、青空と太陽の光と共に姿を見せたのは、バルバトス第2形態ではなく、バルバトスが更なる進化を遂げた、新たなる姿、バルバトスルプス。

 

バスターソード状のメイス、ソードメイスを手に、オーカミのフィールドへと降り立つ。

 

 

ー【ガンダム・バルバトスルプス】LV2(2)BP8000

 

 

「出たか、最強のバルバトス、バルバトスルプス。ただし、最強は最強でも、現段階で……だがな」

 

 

ルプスが現れるなり、戦況の空気がガラリと変わる。その時、アルファベットがそう呟いた。

 

 

「ルプスの煌臨時効果を発揮、デッキ上2枚を破棄して、その中の鉄華団カード1枚につき、コア3個以下のスピリット1体を破壊」

 

 

発揮されるルプスの効果。それにより破棄された2枚のカードは、いずれも系統に鉄華団を持つカード。

 

 

「青のゼノンザードスピリット、アレシャンドを叩き潰せ」

 

 

ソードメイスを構え、アレシャンドの元へと突き進んでいくルプス。アレシャンドは迫り来る一撃を回避せんと、海原の海水を操り、ルプスをその中へと閉じ込める。

 

だが、ルプスは瞬きする間もなくそれを気迫だけで弾き飛ばす。直後にソードメイスによる縦一線の強烈な一撃を叩き込み、アレシャンドと大地を衝突させ、爆散へと追い込んだ。

 

 

「ルプスの効果発揮により、もう一度クーデリア&アトラの【神域】が誘発する。トラッシュ1枚をデッキ下、デッキ上から1枚ドロー」

 

 

第4形態とルプスの効果により、ソラの残りライフは2、さらにフィールドは、仮面を付けた赤い竜、メルトドラゴンのみ。

 

オーカミがここで一気に攻めない理由はない。

 

 

「フラッシュ、クーデリア&アトラの【神技】……コア5個を払い、トラッシュの鉄華団1枚をデッキ下に戻し、ルプスを回復させる……!!」

 

 

ドローにスピリットの回復と、全面的に鉄華団デッキをサポートを行える、創界神クーデリア&アトラ。オーカミはその効果を完全に使いこなし、エースたるルプスに、二度目の攻撃権利を与えた。

 

怒涛の反撃で優勢に立つオーカミ。しかし、ソラは嘲笑に顔を歪め………

 

 

「面白い、面白いよオーカミ。君は本当に惨めで滑稽だ」

「……」

「この程度の攻撃で、今の僕が負ける訳ないだろ。フラッシュアクセル、己械人シェパードール」

 

 

瞬間、ソラのライフバリアの前方に、半透明で、それとはまた別のバリアが出現する。

 

これは、ある意味でレオンが敗北を喫した理由となったと言っても過言ではないモノであり………

 

 

「これにより、このターンの間、僕のライフはコスト4以上のスピリットのアタックでは減らない。ルプスの攻撃は当然ライフだ」

 

 

〈ライフ2➡︎2〉早美ソラ・王者

 

 

半透明のバリアに、ルプスのソードメイスによる一撃が阻まれる。

 

オーカミを嘲笑うように放ったソラの一手は、少なくともこのターンのオーカミには超えられない、文字通りの壁である。

 

 

「ターンエンド」

手札:6

場:【ガンダム・バルバトスルプス】LV2

【オルガ・イツカ】LV2(4)

【クーデリア&アトラ】LV2(4)

バースト:【無】

手元:【ガンダム・グシオンリベイクフルシティ】

 

 

このターン中常時展開される、己械人シェパードールのバリアを前に、オーカミはルプスをブロッカーとして残し、ターンを終了。

 

 

「ハハ、やっぱりそうなんだ」

「何が」

「先生が教えてくれたんだ、君みたいに片目しか輝かない王者は、不完全な王者。不完全だから、両目が輝き、完全な王者を持つ僕には、絶対に勝てない」

「そっか、じゃあさっさと来いよ。オマエがオレに絶対に勝てるって大口を叩けるなら、全力でオレを、オレとバルバトスを潰しに来い」

 

 

片目しか輝かない王者は不完全、ソラはそれをオーカミに告げる。

 

しかし、オーカミはそれを告げられても尚、モチベーションを下げず、次のソラのターンに備え、手札を構える。

 

 

「アッアッア……そうだ、さぁ見せてやりなさいソラ君、そして私の目に焼き付けさせてくれたまえ、不完全ではない、完全な王者の力を!!」

「もちろんですよ、先生……!」

 

 

嵐マコトがそう叫ぶと、ソラはオーカミの残り2つのライフを粉砕するべく、己のターンを開始する。

 

 

[ターン09]早美ソラ・王者

 

 

「メインステップ、先ずはメルトドラゴンのLVを1に下げ、辛速の勇者ソニックワスプ・Aを召喚する」

 

 

ー【辛速の勇者ソニックワスプ・A】LV1(1)BP3000

 

 

「ソニックワスプの召喚時効果、カードの種類を1つ指定。僕はスピリットカードを指定、相手は指定されたカードを、トラッシュから全て除外する」

「……」

 

 

スマートな昆虫戦士、ソニックワスプが召喚される。

 

それはソラのフィールドに現れるなり、複眼を怪しげに青く輝かせると、オーカミのトラッシュにある全てのスピリットカードは浮遊し、除外ゾーンへと離れていく。

 

除外ゾーンに送られたカードには、このバトル中、その持ち主であっても一切の使用を許されない。

 

 

「トラッシュを操るアイツのデッキにとっては、相当キツイ一手ね」

「オーカミ君……」

 

 

ライとアオイ、2人がそう呟く。

 

ライの言う通り、トラッシュを自在に操る鉄華団デッキにとって、トラッシュのスピリットを失う事は、バトルの根幹に関わってくる。

 

 

「さらに僕はここでコレを呼ぶ。覚えているよねオーカミ。獅堂レオンを屠った、あのスピリットを」

「……」

「フ……ゼノンザードスピリットを召喚する時、アイリエッタの【神域】により、2コスト支払ったモノとして扱う」

 

 

さらに追い討ちを掛けるように、ソラは手札にある1枚のカードをBパッドへと叩きつけた。

 

そのカードは、当然あのゼノンザードスピリットであり……

 

 

「司るは闘。この世の全ての争いを統べる、闘いの荒神!!……九神龍アラバスター!!……LV3で召喚」

 

 

ー【九神龍「闘」アラバスター】LV3(6)BP30000

 

 

眼前の大海を蒸発せんとする程のマグマの一柱が立ち上がると、その中より1体の巨龍が爆音の咆哮を張り上げ、飛び出す。

 

その名はアラバスター。ソラのエースカードにして、全てのゼノンザードスピリットの頂点に君臨する、最強最凶のゼノンザードスピリット。

 

 

「遂に出て来やがった、オーカ……!!」

「大丈夫だよアニキ。あんなデカブツ、オレとバルバトスの敵じゃない」

 

 

ヨッカがオーカミの身を案じ、声を荒げる。それに反し、オーカミはとても落ち着いていて……

 

 

「大口を叩いてるのはどっちだよオーカミ。君はもうすぐ僕に敗北する、今のうちに懺悔の用意をしておくんだね」

「……」

 

 

迎えた終盤、2人の王者の使い手。バルバトスルプスと最凶のゼノンザードスピリット。

 

かつてない程に緊張感が高まる中、ソラのアタックステップが開始される。

 

 

「オマエのアタックステップ開始時、もう一度、オルガの【神技】を発揮」

「また蘇生か、でもソニックワスプの効果で、トラッシュにスピリットはいないよ」

「オルガで呼べるのは、スピリットだけじゃない。パイロットブレイヴ、三日月・オーガスを召喚し、バルバトスルプスに直接合体」

 

 

ー【ガンダム・バルバトスルプス+三日月・オーガス】LV2(2)BP14000

 

 

創界神ネクサスであるオルガの効果で呼び出したのは、パイロットブレイヴ、三日月・オーガス。

 

それと合体したバルバトスルプスの眼光は赤く輝き、両肩からは蒼炎が燃え盛る。

 

 

「ハハ、合体した所で、アラバスターのBPを超えられなければ何も意味はない!!……アラバスターでアタック、その効果を発揮、一度だけ疲労しない。さらにフラッシュ、アイリエッタ・ラッシュの【神技】で、トラッシュのコア1つを、僕のライフへ」

 

 

〈ライフ2➡︎3〉早美ソラ・王者

 

 

強化されたバルバトスルプスに怯む事なく、一気呵成に攻撃を仕掛けてくるソラ。アラバスターは海原をも掻き消す咆哮を張り上げると、翼を広げ、オーカミのフィールドへと飛翔する。

 

 

「姉さんは僕を守ってくれた、だから今度は僕が姉さんを守る番。君は僕の姉さんを虐めた、絶対に赦さない!!……必ず獅堂レオンと同じ目に遭わせてやるんだ」

「ソラ、それが本当に、姉ちゃんのためになるって思ってるのか?……フラッシュマジック、抱擁……オレのデッキ上1枚を破棄、それが鉄華団なら、トラッシュのソウルコアをスピリットに置く」

 

 

迫り来るアラバスター。ブロック前のフラッシュタイミングで、オーカミは頬に流れて来た血を舌で舐め取ると、手札にある1枚のマジックカードを発揮させる。

 

その効果で彼のデッキの上から1枚がトラッシュへと破棄されるのだが………

 

 

「残念だけど、それは鉄華団カードじゃないよ、僕にはわかる、王者があるからね」

「……」

 

 

それは鉄華団のカードではなかった。これにより、トラッシュのソウルコアは、オーカミのフィールドに戻らない。

 

 

「……ソラ、今のオマエは、ただ自分が気に入らない奴を倒したいだけだ。そんな事しても、オマエの姉ちゃんのためにはならない」

「ッ……なんだって」

「オマエの姉ちゃんは、オマエにそんな事をさせたいから、頑張ったんじゃない。オレも姉ちゃんと2人で暮らしてたから、わかる。オマエの姉ちゃんは、オマエとまた一緒に笑っていたいから、一緒に居たいから、頑張ってたんだぞ」

「……姉さん」

 

 

オーカミの言葉に、早美ソラの姉である、アオイが一筋の涙を流す。

 

自分の気持ちを代弁してくれて、わかっていてくれて、自分の弟の事を本気で心配してくれて、嬉しかったのだ。

 

 

「言葉に惑わされてはいけませんよ、ソラ君。所詮他人は他人、涅槃に沈めてあげなさい」

「そ、そうだ。勝つ、僕は君に勝つぞオーカミ。勝って、僕の行動は正しい事を証明して見せる……全てを噛み砕き、焼き尽くせ、アラバスター!!」

 

 

迷うソラだったが、嵐マコトの一言により、また元に戻ってしまう。

 

フィールドの状況は、圧倒的にオーカミの劣勢。このままアラバスターのアタックが通れば、確実にソラの勝利となる。

 

しかし、それは飽くまで、今のオーカミが何もしなければの話ではあるが……

 

 

「抱擁の効果で破棄された、スネークビジョンの効果を発揮」

「!?」

「このカードをトラッシュから手札に加え、オルガにコア+1」

 

 

オーカミの手札に、新たなマジックカードが手札に加えられる。

 

その効果の発揮に、ソラは戸惑う。無理もない、その効果の発揮は、自分の王者の力で見た未来にはなかったモーションなのだから………

 

 

「フラッシュマジック、スネークビジョン。効果でオマエの全てのスピリットのコアを1個になるようにリザーブに置く」

「!!」

「これでアラバスターのLVは、3から1になる。その後、クーデリア&アトラのコア1個を支払い、メルトドラゴンのコア1個を追加でリザーブに置き、消滅させる」

 

 

たった今手札に加えたマジックカードを使用するオーカミ。その力により、最凶のゼノンザードスピリットであるアラバスターですら、LVが最低ラインの1となり、弱体化。メルトドラゴンは耐えられず消滅してしまう。

 

 

「コレだけじゃ終わらないぞ。バルバトスルプスでブロック、その【合体中】アタックブロック時効果で、ソニックワスプとアラバスターのコアを1個ずつリザーブへ、置き、消滅」

「ッ……またコア除去!?」

 

 

直後、オーカミはバルバトスルプスでアラバスターのアタックをブロックする。

 

フィールドでは、バルバトスルプスが手に持つソードメイスを投げ、ソニックワスプを貫き、消滅させる。

 

だが、勝利の余韻に浸る間もなく、アラバスターがバルバトスルプスを喰らわんと襲い掛かってくる。武器を投げてしまったルプスは、その襲撃を両手で抑え込み、やがて受け流しながら跳び上がると、アラバスターの顔面をぶん殴り、地に叩き伏せた。

 

 

「うん、これで殺し切れる」

 

 

オーカミがそう呟くと、バルバトスルプスは、目にも止まらぬ速さでフィールドを駆け巡り、投げたソードメイスを回収。剣先を向けながら、やっとの思いで立ち上がったアラバスターへと飛び込んでいく。

 

アラバスターは火炎放射を放ち、それを止めようとするも、その勢いは止まる事を知らず、遂に突破され、ソードメイスの先端が、胸部へと突き刺さる。

 

悲鳴のような悲痛な咆哮を張り上げながら、爆散していくアラバスター。オーカミのエースであるバルバトスルプスが、最凶のゼノンザードスピリットを易々と討ち取って見せた。

 

 

「そ、そんな……僕のスピリットが、アラバスターが負けた、こんなの、僕の見た未来じゃない」

「なんだ、鉄華オーカミのこの違和感。まさか奴の王者は、ソラ君のそれを超えるとでも言うのか、何故だ、右目しか輝かない、不完全な王者だと言うのに」

 

 

同じ王者同士の激闘。勝敗を決する最後の分かれ目。

 

誰がここまで圧倒的な展開を予想しただろうか、鉄華オーカミのバトルスピリッツは、王者は、ソラとソラのゼノンザードスピリットをも超越しているのだ。

 

 

「私の時と同じだ。未来が、描き変えられてる?」

 

 

ライがそう呟く。同じく王者の力を使い、自分の見た未来が覆される経験のある彼女だからこその言葉だった。

 

 

「オマエのスピリットは0。これでもう何もできないだろ」

「くっ……ターン、エンド」

手札:1

場:【アイリエッタ・ラッシュ】LV1(1)

【アッシュ・クロード】LV1(2)

バースト:【無】

手元:【己械人シェパードール】

 

 

スネークビジョンとバルバトスルプスのコンボにより、スピリットが全て倒されたソラ。悔しさに歯を噛み締めながら、そのターンをエンドとする。

 

そして次はオーカミのターンだ、全てに決着を着けるべく、それを進めて行く。

 

 

[ターン10]鉄華オーカミ・王者

 

 

「メインステップ、手元からグシオンリベイクフルシティ、手札からランドマン・ロディ、バルバトス第1形態を召喚する」

 

 

ー【ガンダム・グシオンリベイクフルシティ】LV2(3)BP10000

 

ー【ランドマン・ロディ】LV2(2)BP3000

 

ー【ガンダム・バルバトス[第1形態]】LV1(1)BP2000

 

 

オーカミは、手札と手元から3体のスピリットを展開し、圧巻のフィールドを作り上げると、最後のアタックステップへと突入する。

 

 

「アタックステップ、ルプスでアタック、合体している三日月の効果で、オマエのリザーブのコア、4つトラッシュに置くぞ」

「!?」

 

 

ルプスが血のような赤色に輝く眼光をソラへ向けると、そのBパッド上にあるリザーブのコアが、使用不可ゾーンであるトラッシュへと送られた。

 

その瞬間、ソラの視線は己の手札にある最後の1枚、防御札の1種である「己械人シェパードール」へと向けられる。今の使えるコアは4つ、対してそれのコストは5、奇しくも僅差で使用できなくなってしまった。

 

 

「シェパードールはもう使わせない」

「……ライフで受ける」

 

 

〈ライフ3➡︎1〉早美ソラ・王者

 

 

「ぐあっ!?」

 

 

ソードメイスを横一線に振るう、ルプスの豪快な一撃が、ソラのライフバリアを、一気に2つ奪う。

 

いよいよ残りライフは1つ。オーカミはシェパードールに阻まれない、低コストのスピリットである、バルバトス第1形態のカードへと、手を伸ばす。

 

 

「ソラ、オマエは姉ちゃん想いの良い奴だ。姉ちゃんを護るのに、そんなカードは必要ない……バルバトス第1形態、ラストアタックだ!」

「オーカミ、僕は……」

 

 

渾身のラストアタック。バルバトス第1形態がソラの最後のライフバリアを優しく抱き締める。

 

そしてそれは、ゆっくりとひび割れていき………

 

 

〈ライフ1➡︎0〉早美ソラ・王者

 

 

「……ありがとう」

 

 

完全に砕け散って行った。ソラのBパッドから「ピー……」と流れる無機質な機械音が、ソラの敗北、オーカミの勝利を告げる。

 

 

「オレの勝ちだ、ソラ。今度はもっと楽しくバトルしよう、命も何も、賭けずに」

 

 

オーカミがそう呟くと、フィールドに残った4体の鉄華団スピリットが凱歌を謳うように、音のない咆哮を張り上げる。

 

さらにその直後、ソラのBパッドから「アラバスター」のカードが謎の力で浮遊すると、そこから吐き出すように、粒子を放出して………

 

 

「……」

「ッ……レオン!!」

 

 

粒子が密集し、凝固すると、それは獅堂レオンであった。オーカミがソラに勝利した事で、元に戻る事ができたのだろう。

 

声を荒げ、アルファベットが真っ先に砂浜に横たわる彼の元へ走り出した。

 

 

「ソラ!!」

「坊ちゃん!!」

 

 

バトルに負け、片膝を突くソラに、アオイとフグタが駆け寄る。

 

 

「姉さん、僕は……ッ」

 

 

何かを言いかけるソラを黙らせるように、アオイは彼を抱き締める。

 

 

「よかった、よかったです。もう何も言わないで、何もしないで………私が、私が全部悪かったから……!!」

「姉さん……ごめんよ」

 

 

抱き締める手が震えているのを感じる。今更、自分のせいで大好きな姉さんを泣かせていた事に気がついた。

 

僕もまた姉さんと一緒に、笑い合って一緒に暮らしたい。そう思いながらソラはアオイを抱き締め返すと、彼の体中から黒いオーラが飛び散り、消滅して行った。

 

 

「オーカ!!」

「赤チビ!!」

 

 

バトルが終わり、フィールドに残った鉄華団スピリット達がゆっくりと消えて行く中、王者の力の影響のせいで足元がふらつくオーカミに、ヨッカとライが駆け寄る。

 

 

「全く、大した奴だぜオーカ、オマエはよ」

「アニキ、ライ……どうだ、勝ったぞ、オ…レ」

「わ、ちょいちょい」

 

 

2人の顔を見るなり安心し、力尽き、気を失いながらライの胸元へと倒れ込むオーカミ。

 

ライは一瞬戸惑うが、直ぐに笑顔に切り替えると、自分の服にオーカミの血痕が付着するのも厭わず、彼を優しく抱き止める。

 

 

「君は凄い奴だ、赤チビ……オーカミ」

 

 

オーカミの勝利でバトルが終わり、コレまで起こった不幸と悲劇が全て払拭されて行く中………

 

ただ1人、諸悪の根源である嵐マコトは、この状況に高笑いし、拍手喝采。

 

 

「アッアッア……いや〜〜実にエクセレントなバトルでしたよ、オーカミ君、ソラ君。しかし至高の素材とは言え、モルモットはモルモット、ソラ君ではこの程度が限界でしたか」

 

 

嵐マコトが手を天に翳すと、ソラのデッキから全てのゼノンザードスピリットが浮遊し、飛び出し、その手に集まって行く。

 

 

「嵐マコト、アンタの負けだ。大人しくお縄につけ、そして……」

「フフ、そして……なんだい、九日ヨッカ。その続きを聞いてみたいなぁ」

「……」

 

 

……『そして、イナズマ先生を解放しろ』

 

ヨッカはそう告げようとしたが、言えなかった。目の前にその娘であるライがいるからである。ライも危険に巻き込んでしまう可能性がある限り、イナズマの名は口に出せない。

 

しかし、その事情を知っている嵐マコトは………

 

 

「ところで、春神ライちゃん」

「ッ……おい、やめろ!!」

「君のお父さん、今私が預かってるんですよね」

「……え」

 

 

ヨッカの制止も虚しく、嵐マコトはライに真実を告げる。

 

突然の言葉に頭の中が真っ白になるライ。ヨッカに関しては頭の血の気が下がり、生きた心地すら失う。

 

 

「ちょ、ちょっと待って、私のお父さんは今行方不明で、どこにいるのかもわからなくて、それでヨッカさんが探してくれてて」

「そう、その原因を作ったのが私と言う事さ。君のお父さんとは旧知の中でね、どうしても彼の頭脳が必要だったんだ」

「ッ……いったい私のお父さんに何させてんだよ!!」

 

 

1年前、突然失踪してしまった自分の父、春神イナズマ。

 

その原因を作った人物を目の前に、ライは声を荒げ、鋭い剣幕を見せる。

 

 

「アッアッア、落ち着きたまえ、君が抱いているオーカミ君が起きてしまっては、気の毒だからね」

「………」

「君のお父さんは、界放市中に多数存在する、私の隠れ研究所のどこかにいるよ」

「!」

「隠れ研究所は、それぞれ1人ずつガードマンが守ってくれていてね、イナズマ先生のいる研究所は、そのガードマンの中でもトップクラスの実力を誇る「エニーズ02」と呼ばれる人造人間が付いている」

「エニーズだと!?」

 

 

嘘か真か、やや抽象的ではあるが、嵐マコトは、はじめて春神イナズマの所在を吐く。

 

端的に言うと、彼が所有している隠れ研究所。その中でも「エニーズ02」言うガードマンが守護している研究所が当たりと言う事だ。

 

そして、その「エニーズ02」と言う名前に、アルファベットが強い反応を示す。

 

 

「嵐マコト、オマエと春神イナズマがDr.Aの元部下だった事は、調べがついている」

「え、お父さんがDr.Aの元部下!?」

「おい、余計な事言うなアルファベットさん!!」

「エニーズ02とは何だ、オマエは一体何を企んでいる」

 

 

決してライの前では言ってはいけない禁句を言ってしまうアルファベット。だが、それを思わず言ってしまう程に、彼にとって「エニーズ」の名前は重たく響くのだ。

 

 

「アッアッア……アルファベット。完全な部外者である君が、それを知る必要はない。ではねライちゃん、是非イナズマ先生を助けるために、私の隠れ研究所を探してくれたまえ」

「あ、ちょい、まだ話は……!!」

「アッアッア……アーッアッアッ!!!」

 

 

ライに挑戦状を叩きつけるかの如く高笑いする嵐マコト。Bパッドを操作し、ワームホールを作り出すと、すぐさまそこへ飛び込み、姿を眩ましてしまう。

 

ジークフリード区のアビス海岸で行われた決戦。最後は嵐マコトが意味深な言葉を残し、この場を後にする形で幕を下ろしたものの、王者の力を発揮させたオーカミの勝利により、無事全ては元通り、その問題の殆どは解決したのだと………

 

誰もがそう思っていた。

 

 

「ん……」

「あ、オーカミ」

「ライ……何でオレ、オマエのとこで寝てんだ」

「ッ……ボーナスタイムは終わり!!……目が覚めたんなら、さっさと自分で立ちなさいよ!!」

「えぇ」

 

 

ほんの数分で、オーカミが目を覚ます。今更自分が何をしていたのかに気づいたライは、顔を赤らめ、彼から手を離す。

 

そんなオーカミは、2本の足で立ち、辺りを見渡そうとするが………

 

その時、ある異変に気がつく。

 

 

「……アレ、なんか右目……右腕、変だな」

 

 

その右目は暗闇に閉ざされ、右腕は骨でも抜かれてしまったかのように垂れていた。おそらく、先のバトルで王者を酷使し過ぎた結果であろう。

 

背筋を凍らせる程に恐ろしい事態だが、もっとも恐ろしいのは、それを全く意に介さず、乏しい反応しか見せないオーカミ自身であった。

 

 




次回、第47ターン「王者、バルバトスルプスレクス」
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