バトルスピリッツ 王者の鉄華   作:バナナ 

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第48ターン「ルプスレクスVSアルファモン」

「天地を揺るがせ、未来へ響け!!…ガンダム・バルバトスルプスレクス!!…LV3で煌臨!!」

 

 

度々強風が吹き荒れる、界放空港の屋上にて、鉄華団のカードを賭けた、オーカミとアルファベットのバトルが続く。

 

オーカミは劣勢を強いられる中、新たなるエースカード「ガンダム・バルバトスルプスレクス」を呼び出す事に成功。今、それと共に、伝説のロイヤルナイツであるアルファモンを操る、アルファベットへ挑む。

 

 

「アレがオーカミの新しいバルバトス……デカ」

「デカいっつーか、デカく見えるだけだなありゃ、腕が太い」

 

 

巨腕と巨大なメイスを持つバルバトスルプスレクスに、ライとヨッカがそう言葉を落とす。

 

 

「アイツ、また王者になったりしねぇよな」

 

 

ヨッカが僅かばかりに震えた声でそう呟いた。

 

使用者に絶対的な力を与える王者の力。その反動で右目と右腕が機能しなくなったオーカミが心配で堪らないのだろう。

 

 

「心配するだけ無駄ですよ、同じ奴使える私にはわかります。今のアイツは、大丈夫だ」

 

 

ライがヨッカにそう告げると、バルバトスルプスレクス煌臨の余韻が終わり、バトルが再開して行く。

 

 

「オレは、紫のパイロットブレイヴ、三日月・オーガスを、ルプスレクスに合体」

 

 

ー【ガンダム・バルバトスルプスレクス+三日月・オーガス】LV3(6)BP22000

 

 

「最後の手札を使い、ルプスレクスを極限まで強化して来たか」

 

 

今まで数多くの鉄華団スピリットと合体して来た、鉄華団専用のブレイヴ「三日月・オーガス」………

 

それが新たなるバルバトス、バルバトスルプスレクスにも合体。オーカミは全ての手札を失ったものの、ルプスレクスはアルファモンにも負けず劣らずのパワーを誇る合体スピリットへと変貌した。

 

 

「アタックステップ、ルプスレクスでアタック!!」

 

 

オーカミはアタックステップへ突入。ルプスレクスは緑色の眼光を輝かせると、超大型メイスを構え、内包された強力なアタック時効果を発揮させて行く。

 

 

「ルプスレクスには、オレのトラッシュが10枚以上の時のみ、発揮できる効果がある。このターンの間、相手のスピリット、ネクサス全てのLVコストを+1。維持コアを満たされないスピリットとネクサス全ては消滅する!!」

「!」

 

 

ルプスレクスは、背部に備え付けられたテイルブレードを伸ばし、本物の尾のように展開。身体を半回転させ、遠心力でそれを動かし、アルファベットの背後に存在する凍れる火山2枚と、英雄皇の神剣を切り裂き、消滅へと追い込む。

 

さらに身体元の位置に戻すように逆回転させ、再びテイルブレードを逆方向から切り付ける。切り付けられたのは、フィールドにいるアルファモンと2体のさまよう甲冑。2体のさまよう甲冑は真っ二つに裂かれ、瞬く間に消滅したが、アルファモンはLVダウンこそしたものの、生き残る。

 

 

「なんて効果、一度のアタックでアルファモン以外の全てのカードを消滅に追い込むなんて」

 

 

ライが驚き、そう言葉を落とす。一度にフィールド全体のLVコストを上昇させるカードと言うのは、確かにかなり稀有な存在なのだ。彼女程の実力者のリアクションから、それがよく伝わる。

 

 

「これで、厄介な凍れる火山はなくなった。ルプスレクスの更なる効果、デッキ上2枚を破棄し、その中に鉄華団カードがあれば、紫シンボルを1つ追加する」

 

 

ルプスレクスのもう1つのアタック時効果が発揮。オーカミのデッキから2枚のカードが破棄される。

 

その中には、当然鉄華団のカードがあって。

 

 

「破棄されたバルバトス第4形態は、鉄華団。よってルプスレクスに紫シンボルを1つ追加。さらにクーデリア&アトラの【神域】の効果で、トラッシュの紫1色のカードをデッキ下に置き、1枚ドロー」

 

 

効果により、ルプスレクスは一度に3つものライフを破壊できるトリプルシンボルと化す。

 

アルファベットのライフは3。この一撃が通れば、彼の勝利へと繋がる。

 

 

「フラッシュ、オルガの【神域】を発揮、デッキ上3枚を破棄、1枚ドロー、クーデリア&アトラの効果でさらにドロー」

 

 

2枚の凍れる火山の消失が、ここに来てオーカミに怒涛のドローを齎す。彼の手札は、0枚から一気に3枚まで回復した。

 

 

「まだだ、クーデリア&アトラの【神技】……クーデリア&アトラのコア5個と、トラッシュの鉄華団1枚をコストに、ルプスレクスを回復させる!!」

 

 

オーカミのコンボはまだ続く。クーデリア&アトラの【神技】の効果により、ルプスレクスは回復。トリプルシンボルで二度目の攻撃権利を得た。

 

これで、アルファモンを倒しつつ、アルファベットの3つのライフを砕く算段が整った。後はこれが通るだけ………

 

 

「すげぇぜオーカ、流石はオレの弟分だ。これでアルファベットさんを倒せるか!?」

「いや、多分まだ」

 

 

ヨッカがそう言い、ライが否定する。

 

そうだ。仮にも彼は、伝説のロイヤルナイツを従える、レジェンドカードバトラーの1人、芽座葉月なのだ。

 

この程度の事で、終わる訳がなくて………

 

 

「ライフで受ける」

「よし、オレの勝……」

「だが、ここで手札にある白のマジックカード『フェイタルダメージコントロール』の効果を発揮させる」

「!?」

「一度に自分のライフが3つ以上減少する時、手札にあるこのカードのフラッシュ効果をノーコストで発揮させる。このターン、オレのライフが減る時、そのダメージを1に抑える」

 

 

〈ライフ3➡︎2〉アルファベット

 

 

ルプスレクスの持つ超大型メイスが、アルファベットのライフバリアへ猛威を振るう直前に展開される半透明のバリア。それが緩衝材となり、彼のライフの減少を3ではなく、1に止まらせる。

 

 

「忘れたか鉄華、オマエに鉄華団を渡したのはこのオレだ。当然熟知しているさ、全ての鉄華団の効果をな」

「……ターンエンド」

手札:3

場:【ガンダム・バルバトスルプスレクス+三日月・オーガス】LV3

【オルガ・イツカ】LV2(6)

【クーデリア&アトラ】LV2(1)

バースト:【無】

 

 

まるで、ルプスレクスの猛攻までもを計算に入れていたかのような発言をするアルファベット。

 

それが嘘か真実かは定かではないが、どちらにせよオーカミはこのターンをエンドとせざるを得なくなった。生き残ったアルファモンを操り、反撃に出て来る事は確実で。

 

 

[ターン10]アルファベット

 

 

「メインステップ、既にオマエのライフは1。風前の灯だが、もちろん容赦はしないぞ、徹底的に潰してやる」

「来いよ」

「その威勢や良し、異魔神ブレイヴ、騎士王蛇ペンドラゴンを召喚」

 

 

ー【騎士王蛇ペンドラゴン〈R〉】LV1(0)BP4000

 

 

「その召喚時効果でルプスレクスのコア2つをリザーブへ」

 

 

天を舞い、フィールドへと降り立ったのは、紫のドラゴンにして異魔神ブレイヴ、騎士王蛇ペンドラゴン。

 

召喚時効果により、ルプスレクスのコアが2個、オーカミのリザーブへと移動し、そのLVは2までダウン。

 

 

「オレのターンを迎えた事で、LVコストを上昇させるオマエのルプスレクスの効果は終了している。が故に、アルファモンのLVは3だ」

 

 

ー【アルファモン+鳳凰竜フェニック・キャノン〈R〉】LV3(6)BP23000

 

 

アルファベットは、今のルプスレクスでは、アルファモンには到底敵わない事を主張すると、バトルを終わらせるべく、アタックステップへと突入する。

 

 

「アタックステップ、全てを砕け、アルファモン。アタック時効果で2コストを支払い回復、さらにまたルプスレクスのコア2個をリザーブへ、LVは2から1となる」

「!」

 

 

アルファモンはアタックした直後、回復状態になると共に、ルプスレクスへと手を翳し、無数のデジタルゲートを形成すると、そこから幾千もの波動弾を放出。

 

ルプスレクスは超大型メイスを盾にそれを何度か打ち返し、防ぐものの、全弾は回避できずに数発被弾。コアが2個取り除かれ、LVは1。BPは14000までダウンしてしまう。

 

 

「最強のバルバトスとは言え、所詮はただのスピリット。伝説のロイヤルナイツの中でもトップの強さを持つ、アルファモンの敵ではない」

「……それは倒してから言うセリフだろ。ブロックだ、ルプスレクス!!」

 

 

アルファモンとルプスレクスのバトル。アルファモンが回復状態となっているため、このバトルが勝負の行方を左右していると言っても過言ではないが………

 

 

「アルファモンのBPは23000、対するルプスレクスのBPは14000。オーカの負けか!?」

 

 

ヨッカがそう叫ぶ。オーカミの勝利を信じている彼だが、肝心のルプスレクスのBPではアルファモンに遠く及ばない。今の状況だと確実にオーカミの敗北となってしまうのだ。

 

フィールドではルプスレクスが超大型メイスで先制攻撃を仕掛けるが、アルファモンの鋼鉄の鎧には亀裂一つ生じない。それどころか振るった超大型メイスの方が粉々に砕け散る。

 

それでも攻撃の手を緩めないルプスレクスは、持ち手だけとなった超大型メイスを投げ、アルファモンを怯ませようとするが、それさえ通じず、ぶん殴られて吹き飛ばされ、大地に叩き伏せられる。

 

 

「終わりだ。オマエにそのカード達は相応しくない、返してもらうぞ、鉄華オーカミ!!」

 

 

アルファベットがそう叫ぶと、アルファモンはトドメだと言わんばかりに、天空に手を翳し、再び無数のデジタルゲートを形成。そこから地に伏せるルプスレクスへ向けて大量の波動弾を発射し………

 

 

「このまま負けるのは面白くないよね、オーカミ」

 

 

絶体絶命の状況の中、ライがそう呟くと、オーカミは「当然だ」と鼻で笑い、起死回生の一手を己のBパッドへと叩きつける。

 

 

「フラッシュマジック、火星の王へ」

「!?」

「効果により、デッキ上1枚を破棄、それが鉄華団なら、このターンの間、ルプスレクスのBPを、トラッシュにある鉄華団1枚につき1000上げる」

 

 

このマジックカードの効果により、オーカミのデッキ上1枚が破棄。それはもちろん鉄華団のカード、この効果は有効となる。

 

 

「落ちたのは鉄華団カード、バルバトス第1形態。よってルプスレクスのBPは上昇、合計BPは27000になる」

「なに、BP27000!?」

 

 

ー【ガンダム・バルバトスルプスレクス+三日月・オーガス】BP14000➡︎27000

 

 

放たれた大量の波動弾をテイルブレードで切り裂き、再びフィールドに立ち上がるルプスレクス。

 

血肉に飢えた狼の如く、アルファモンへと襲い掛かる。

 

 

「この勝ち方、思い出すな、妹を」

「行けルプスレクス。アルファモンを、ロイヤルナイツをぶっ壊せ」

 

 

この瞬間、アルファベットの脳裏に思い浮かんだのは、同じ場所で妹とバトルした、あの日の出来事。

 

フィールドでは、荒々しく突き出した、ルプスレクスの強靭な激爪が、アルファモンの鋼鉄の鎧を貫く。伝説と謳われる流石のアルファモンでも、この一撃には耐えられなかったか、ゆっくりと力付き、前のめりで地に倒れ、大爆発を起こした。

 

 

「ターンエンドだ」

手札:3

場:【鳳凰竜フェニック・キャノン〈R〉】LV1

【騎士王蛇ペンドラゴン〈R〉】LV1

バースト:【無】

 

 

アルファモンの敗北は、アルファベットの敗北も同然。彼はアタックもブロックもできない異魔神ブレイヴを残し、そのターンをエンドとする。

 

強烈なカウンターを見せ、遂に強敵、アルファモンを見事に倒して見せた、オーカミのターンへと移行する。

 

 

[ターン11]鉄華オーカミ

 

 

「メインステップ、ルプスレクスのLVを再び3にアップ」

 

 

アルファモンとペンドラゴンによって減らされたコアを取り戻し、バルバトスルプスレクスは、再びLV3にアップ。

 

いよいよ正真正銘、最後のアタックステップへと身を委ねる。

 

 

「アタックステップ、ルプスレクスでアタック。効果でフェニック・キャノンとペンドラゴン2体のLVコストを上げて消滅」

 

 

ルプスレクスがアルファベットのフィールドへと攻め込む。その道中でアルファモンをも屠った激爪を振い、フェニック・キャノンとペンドラゴンを切り裂き、消滅させる。

 

2体を倒しても尚止まらないルプスレクスの進行に、アルファベットは何故か鼻で笑い……

 

 

「フ……オマエの戦い方は、本当にアイツによく似ている」

「ありがとう、アルファベット。アンタがオレと鉄華団を出会わせてくれたお陰で、オレは今、こんなに楽しい」

 

 

オーカミは、鉄華団と出会わせてくれた事に感謝の言葉を告げると、ルプスレクスが、アルファベットの眼前へと到着。最後のライフを砕かんと、その右手の甲を天に上げ、構える。

 

 

「見事だったぞ、ライフで受ける」

 

 

〈ライフ2➡︎0〉アルファベット

 

 

ルプスレクスの激爪は、アルファベットの残ったライフバリアをも、紙切れの如く容易に切り裂いて見せた。

 

これにより、彼のライフは0。それを全て掻っ攫った、鉄華オーカミの勝利となる。

 

 

「フフフ、フハハハ!!!」

「アルファベットさんが、笑ってる」

「あんな感じで笑うんだ」

 

 

敗北したと言うにもかかわらず、大きな声で高笑いするアルファベット。その光景が珍しいと、ヨッカとライは目を丸くしながらそれを眺める。

 

 

「楽しかった、またやろう」

「強くなったな。それでこそ、オマエをずっと見て来た甲斐があったと言うものだ」

「そうなの」

 

 

バトルが終わり、残ったルプスレクスは消滅。その途端に、オーカミの右腕は骨抜きにでもされたように垂れ、右目は再び視力を失ってしまう。

 

 

「あぁ、オレはある人物に依頼され、鉄華団のカードをオマエに渡していた。オマエの成長を見届けるのも、その一貫だ」

「ある人物って誰」

「それは教えられんな」

「何で、勝ったら教えるんじゃなかったの」

「誰も『全部教えてやる』とまでは言ってないだろ」

「うざ」

「それに、オレも鉄華団カードの細かな詳細は聞かされていない。ただそのお方から定期的に預かっているだけだからな」

 

 

オーカミがバトルに勝利した事により、アルファベットは約束通り鉄華団の秘密を少しだけ話す。

 

どうやら、その背後にはまだ何者かが一枚噛んでいる様子。

 

 

「今言える事はただ1つ。鉄華団と共にバトスピを楽しめ、それがそのお方の願いでもある」

「願い?」

「あぁ、今日の気持ちを忘れるな。ではさらばだ、オレは次の事件現場に行く、こう見えて忙しいからな」

 

 

そこまで言い切ると、アルファベットはこの場を後にしようとするが、ある事をふと思い出し、その足を止める。

 

 

「それと春神」

「ん?」

「オマエはもう、嵐マコトには手を出すな」

「!!」

「オマエの父親は、オレと九日で救出する。この間の奴の挑発に踊らされるなよ」

「……わかってますよ」

 

 

この間はアレだけ危険な目に遭わせておいて、今度は手を出すなと強く釘を刺して来るアルファベット。ここで言う「挑発」とは、ライの父親である「春神イナズマ」をどこかの研究者へ誘拐していると断言した、嵐マコトの発言の事だろう。

 

どこか矛盾を感じ、腹立たしく思うライだったが、ここは大人しく首を縦に振っておく。

 

その様子を見たアルファベットは、何かもっと言いたげな様子だったが、敢えて無言無表情でこの場を後にする。彼の背中が見えなくなった直後、バトル後のオーカミの元へ歩み寄ったのは、彼の兄貴分である九日ヨッカだ。

 

 

「おいオーカ、腕と目、大丈夫か。どこも痛くねぇか」

「別に心配しなくていいって、痛くないから。相変わらず動かないけど」

「お、そっか」

 

 

また異常がないか確認したヨッカだったが、余計なお世話だったようだ。オーカミは普段と何ら変わらない。

 

そんなオーカミは、さっきのアルファベットの声がまだ胸の内に響いているライの方へと首を向けて………

 

 

「おいライ」

「!」

「勝ったぞ、オレ。見てた?」

「お、おうよもちろんだぜい、オメーデトサン。うっしっし、次はいよいよ私との決着だな」

「ライ……」

 

 

彼女のどこかぎこちない喋り方に、彼女を本物の妹のように想っているヨッカは、不安と焦りを感じていて………

 

 

******

 

 

ここは界放空港のホール。飛行機に乗らんと、多くの乗客員が闊歩するこの空間を、アルファベットは歩いていた。飛行機に乗るつもりはない。ここの屋上でオーカミとバトルした、その帰り道だ。

 

 

「おい」

「!」

 

 

そんな折、後ろから声を掛けられる。彼にとっては、懐かしい声だ。

 

 

「レオンか」

 

 

その人物は、鉄華オーカミの好敵手、獅堂レオン。アルファベットがまだ「芽座葉月」であった頃の弟子だ。

 

彼はサングラスを掛け、今も尚、自分の正体を隠し続けている。

 

 

「見たぞ、貴様とオーカミのバトルを」

「そうか」

「ジエスモンにアルファモン。その2枚を持っているカードバトラーは、この世にただ1人しか存在しない」

「……」

 

 

バレている。どう考えても。

 

どうやらレオンはかなりガッツリ彼のバトルを観ていたようだ。その中で伝説のアルファモンを視認して仕舞えば、当然そうなる。

 

 

「貴様は、いや、貴方はオレの……」

「レオン」

「!」

「三度目は言わんぞ、オレみたいになるな。オマエはまだ、孤独ではない、素晴らしいバトル人生を歩む事ができる。デスティニーと共に、それを楽しめ」

「師匠……!」

「オレはオマエの師匠ではない。界放警察の警視『アルファベット』だ」

 

 

レオンにとっては、死んだと思っていた師匠との再会。その目に涙を浮かべない理由はない。

 

対するアルファベットは、そんな彼を横切り、この場を去っていく。共に居たくないわけではない、ただ、レオンに自分は必要ないと感じているのだ。

 

 

「スイート、ティア、ルージュを頼むぞ」

 

 

去り際、アルファベットは心残りだった家族の名を口にした。彼女らは皆女性、レオンが護って上げろと言う意味だろう。

 

 

「オレ、また貴方が戻って来てくれるの、信じてますから!!……いつか絶対、また家族5人で、食卓囲んで、飯食いましょう!!……だって、貴方も孤独じゃないから!!」

 

 

レオンがアルファベットに向けてそう叫んだが、彼はその全てを背中で受け止めるのみ。こうして、アルファベットとレオン、2人の師弟物語は、一時幕を下ろしたのであった。

 

 

 

 

******

 

 

「いや〜〜ここ半年は、実に充実した日々を過ごしました。それはもうもう飛び切りに嬉しい事楽しい事ばかりでしたよ」

 

 

どこかの場所、どこかの空間。

 

怪しげで、いるだけで不安感を煽るような、そんな不気味な雰囲気を漂わせるこの場所は、悪魔の科学者Dr.Aの元部下、嵐マコトの所有する研究所の1つ。

 

 

「アッアッア、早美姉弟に目を付けたのは正解でした。2人とも、扱い易くて、素敵な駒でしたよ。特に弟のソラ君、王者の才能があった彼は、私の作ったゼノンザードスピリットを操らせるのに最適だったんですよ〜〜そのお陰で、人体をデータ化する技術を作ると言う、私の目的は達成されました」

 

 

どこに向けて喋っているのか、やたら響き、耳障りな声色で、これまでの計画を語り出していく。

 

彼の言う『人体をデータ化する技術』と言うのは、ゼノンザードスピリットのアラバスターが、バトルで負かしたレオンを粒子化させ、吸収した事を指しているのだろう。

 

 

「鉄華団とか言うカードを使う邪魔者さえいなければ、もっと多くのサンプルを獲得できたんですがね。いやしかし、それで十分。間もなく私達は己の夢に向かって走り出していくのです。何をしても止める事なんてできません、最早抵抗なんて無意味なんですよ。だから早く私にエニーズ02の量産方法を教えてください、イナズマさん」

「………」

 

 

その声の先にいるのは、手枷を嵌められた、細身で40から50歳程度の男性。顎髭がそこそこ伸びている事から、かなり不憫な生活を強いられてしまっている事が確認できる。

 

そう、この人物こそ、春神ライの父親にして、かつてDr.Aの右腕とも呼ばれたもう1人の部下『春神イナズマ』………

 

 

「何度も言わせるな、教える気はない。人は心のない怪物になる事はできても、全能の神になる事はできんぞ、マコト」

 

 

所謂監禁をされている、絶望的な状況の中、イナズマのその目は、未だ希望を失ってはいなかった。

 

たった1人の娘の世話を任せた、この世で最も信頼できる教え子が、きっと活躍してくれると信じているからだ。

 

 

「貴方こそ、何度そのロマンチックな常套句を押し付けるつもりですか。なるか、なれないかではない、なるんですよ。この私が、あのDr.Aでさえ成し遂げられなかった、この世の常識を塗り替える支配者、創造主、神に……!!」

「……」

「それに、その為にDr.Aが行っていた進化、オーバーエヴォリューションの研究を参考にして作り上げたカードもある」

 

 

そう告げると、嵐マコトは、懐から1枚のカードを取り出し、イナズマに見せびらかすように突きつける。

 

 

「っ……これは」

「アッアッア、その名も『仮面ライダークローズエボル』………これが、Dr.Aの求めていた完成系、神の証」

 

 

故に、これを手にした私は、間もなくこの世の神になるんです。

 

誰が、何をしても、ね。

 

 

彼がなろうとしているのは、心のない怪物。世界を変えるだけ変え、他者を踏みに弄る、真の怪物。

 

鉄華団と言う特別なカードを手にした少年、鉄華オーカミは、やがてその怪物と対峙する事になる。そして、その「やがて」は、もうすぐそこまで来ていて………

 

 

 




次回、新章『魔女の覚醒編』開幕。

第49ターン「デジタル王」

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