バトルスピリッツ 王者の鉄華   作:バナナ 

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第5章 魔女の覚醒編
第49ターン「デジタル王」


 

 

「まさかこのオレが、男に会いに行く事があるなんてな。珍しい事もあるもんや。鉄華オーカミ、オモロイ野郎だとええな」

 

 

民衆で満ちた界放市の街中を歩くのは、関西弁訛りで、やや褐色の肌色の青年。鉄華オーカミの名を口にする彼の正体はいったい………

 

 

******

 

 

早美邸での激闘から、およそ1ヶ月が経過した。その戦いで皆を勝利に導いた立役者、鉄華オーカミは、右目右腕の機能を失いながらも、今も尚、カードショップ「アポローン」でアルバイトをしていて………

 

 

「で、何でいるの」

「え、ホントに今更ですね」

 

 

今の所お客さんが1人足りたとも来店していないガラガラのお店。オーカミはふと横にいる事に気づいた、夏恋フウに疑問を抱く。

 

夏恋フウとは、春神ライの親友の少女。色々ガサツなライとは違い、黒髪ロングで、どこか清楚な印象を与えてくれる。

 

 

「オーカミさんが右腕骨折してるから、お手伝いしてくれないかとヨッカさんに頼まれたんですよ」

「そ、アニキが」

「はい、兎に角今日は2人で頑張りましょう!!」

「うん、よろしく」

 

 

骨折と言うのは嘘だ。本当はもうバトルする時以外動かない。

 

今の所はそれで問題ないが、アレから1ヶ月、ここからさらにもう1ヶ月程経過すれば、周囲から不審がられてもおかしくない頃合いになって来るだろう。

 

 

「ところでオーカミさん、今日ってデッキ持って来てますよね。そうですよね、だってカードバトラーなんですから!!」

「え、うん。Bパッドに刺さってる」

「鉄華団のデッキ、見てもいいですか〜!!」

 

 

フウが目をギラギラと輝かせながらオーカミに訊いた。彼女はバトルこそ下手くそらしいが、実は大のバトスピオタク。珍しいカードの塊である、オーカミの鉄華団デッキが気になって仕方ないのだ。

 

 

「まぁいいけど」

「やったー!!…ありがとうございます!!…大事に見ます、傷もつけません」

「当たり前だろ」

 

 

オーカミはBパッドを装着している左腕をフウに突きつけ、そこに装填されている鉄華団のデッキを抜き取ってもらう。

 

 

「うわ、これが新しいバルバトス、バルバトスルプスレクスですか〜!!…カッコいいですね〜!!」

「……掃除して来る」

 

 

フウが鉄華団のデッキのカード達、引いては「バルバトスルプスレクス」に見惚れている中、オーカミはそっちのけで掃除のためにモップを取ろうと、掃除用具がある店の事務所へ向かった。

 

 

「ボロボロだな、そろそろ新しいモップ買うか」

 

 

オーカミは汚れ塗れでボロボロのモップを手に、売り場に戻る。

 

 

「それは鉄華団のカード、え、まさか鉄華オーカミって、女の子やったんか、しかもゴッツかわえぇやん!!」

「え、えっと……」

 

 

オーカミが戻ると、関西弁訛りで、茶髪の青年が売り場にいた。茶髪で、どこかイチマル以上に軟派な印象を受ける彼。フウが鉄華団のカードを預かっていたが故に、彼女が鉄華オーカミだと勘違いしている様子。

 

 

「歳は、中学生くらいやな。アオイちゃんよりか歳下やろ。えぇでえぇで惚れても、オレは懐が広い、ストライクゾーンももちろん広いんや!!」

「えっと、あの……」

「鉄華オーカミはオレだけど、後、このデッキもオレのだ」

「!」

 

 

困り果ててたフウの前に、オーカミが出る。その間に、貸してた鉄華団のデッキを回収した。

 

 

「え、ほなこっちの子は?」

「ごめんなさい、ただのアルバイトなんです」

「えぇ、オレこっちがよかった」

 

 

残念そうにする青年。中学生程度の女の子相手には、ギリギリ犯罪な気がしないでもないが、この言葉だけで、彼が如何に女好きかがよくわかる。

 

 

「あの、ひょっとして、ヘラクレス、緑坂冬真さんですか?」

「ヘラク、何それ」

「おぉ、お嬢さん、オレの事知っとんたんかいな!!」

「わぁやっぱり、そうじゃないかと思ってたんですよ、大ファンなんです!!」

 

 

フウが青年にそう訊くと、彼は嬉しくなり、声を荒げる。

 

オーカミはあまりピンとはきていないみたいだが、彼が何かしらの有名人である事だけは理解した。

 

 

「おぉそうかいそうかい、それは光栄やな、こんな美少女のファンがいるなんて、まぁオレはイケメンやから当然やがな!!」

「なんかコイツ、うざいな」

「オーカミさん知らないんですか、ヘラクレスさんですよ、あの、デジタル王の!!」

「デジタル……あぁ、三王って奴」

 

 

自己肯定感の塊みたいな青年の名は、緑坂冬真。ヘラクレスの異名を持つ、プロのカードバトラーにして、界放市のスリートップである『三王』の1人、デジタル王の称号も持つ者だ。

 

 

「凄い、凄すぎます、こんなお店でヘラクレスさんにお会いできるなんて!!」

「こんなお店って……え、お嬢さんここでアルバイトしてるんだよね?」

「サインください!!」

「ハハ、まぁ可愛ければなんでもよかね。お安いご用や」

「わぁ、ありがとうございます!!…大事にします、傷もつけません」

 

 

偶に毒を吐くフウ。どこからか取り出した色紙に、ヘラクレスのサインを貰う。

 

フウは喜びの余り、サイン入り色紙を抱きしめながら大騒ぎする中、今度はオーカミがヘラクレスに質問する。

 

 

「で、そのデジタル王が、オレに何の用なの」

「オマエは、オレのファンやなさそうやな」

「答えになってない」

「せっかちな奴やな、急かさんくても、今から説明しちゃるって」

 

 

どこか警戒気味のオーカミ。普段はここまでではないが、これまで出会って来た三王と呼ばれる存在の中に、ヨッカ以外でまともな人間はいなかった事が原因だと思われる。

 

 

「知っての通り、モビル王のアオイちゃんがプロを引退、海外へ赴き、ライダー王のレイジは行方不明。三王の内2人が急にいなくなってもーたから、三王制度は消失、オレはもうデジタル王じゃなくなった」

「そうなの」

 

 

実はそうなのだ。彼の言う通り、三王の3人の内2人が突如として姿を消したため、これ以上の継続は不可能だと界放市の市長に判断されて、三王制度は消滅。

 

 

「つまり、オレはもうただのプロのカードバトラーっちゅうこっちゃ。もう界放市に留まる理由もなくなってもーたし、ここを経つ前に、最後に一戦、誰か強いカードバトラーの胸を借りたろって思たんや」

「戦闘狂かよ」

「まだまだ続くで。そこで目をつけたんがオマエや、鉄華オーカミ。アオイちゃんから聞いたで、アオイちゃんだけやなく、ライダー王のレイジにも勝ったんやってな」

「うん」

 

 

ライダー王、いや、元ライダー王のレイジ。かつて、オーカミは友であるイチマルを侮辱した彼に憤慨し、バトルを挑んだ事がある。

 

その際にそれを隠れて見ていたアオイは、どこまで話したのかは定かではないが、その事を伝えたようだ。

 

 

「レイジはな。性格こそゴミやったが、仮にもライダースピリット使いの模範たる存在、ライダー王や。それに勝つ奴、気にならんわけないよな」

「要するに、オレとバトスピしに来たんだろ。じゃあさっさとやろうよ」

「フン、オマエも十分戦闘狂やないかい」

 

 

まどろっこしい事は苦手で嫌いなオーカミ。ヘラクレスの言った事を要約すると、1人彼に背中を向けて、アポローンのバトル場へと向かった。

 

それの後を追うように、ヘラクレスも歩みを進め………

 

 

「つか、オマエその腕でバトルなんてできるんかいな?」

 

 

バトル場に立ち、対面する中、オーカミの左腕を指差しながら、ヘラクレスが訊いた。Bパッドを使ったバトルは、基本的に左腕にBパッドを装着し、右腕で操作する。両腕がなければできないのだ。

 

 

「あぁいいよ、始まったら動くから」

「はあ?」

 

 

オーカミの妙な内容の返答に、ヘラクレスは疑問符を浮かべる。三角巾で固定されている右腕が見えるなら、当然の反応だ。

 

 

「オーカミさん、頑張ってくださいね!!」

「うわオマエ、何美少女に応援されてんねん、狡いぞ!!」

「ズルイの?」

 

 

だがそんな疑問は、突然現れたフウに応援されたオーカミを見るなり、どこかへ飛んで行った。その心は怒りへと満ち溢れる。懐の広さはどこへ行ったのだろうか………

 

 

「まぁえぇ、見せたるで、このヘラクレス様の実力をな」

「行くぞ、バトル開始だ」

 

 

……ゲートオープン、界放!!

 

 

コールと共に、アポローンのバトル場にて、未だ未知なるカード、鉄華団を操る鉄華オーカミと、ヘラクレスの異名を持つ緑坂冬真によるバトルスピリッツが幕を開ける。

 

先攻は鉄華オーカミだ。動くようになった右腕で、つけていた三角巾を取り外し、ターンを進めて行く。

 

 

[ターン01]鉄華オーカミ

 

 

「メインステップ、ランドマン・ロディをLV2で召喚」

 

 

ー【ランドマン・ロディ】LV2(2S)BP3000

 

 

オーカミが繰り出したのはスピリットカード。濁った橙色に、丸みを帯びたボディが特徴的な鉄華団のモビルスピリット、ランドマン・ロディが召喚される。

 

 

「ターンエンド。アンタとのバトル、楽しみだ」

手札:4

場:【ランドマン・ロディ】LV2

バースト:【無】

 

 

「ホンマに腕動くんかい、三角巾は飾りかいな」

 

 

なぜか動くようになったオーカミの腕に気を取られたのはほんの一瞬。すぐさま気にしなくなり、ヘラクレスは己のターンを開始する。

 

 

[ターン02]緑坂冬真

 

 

「メインステップ、緑の成長期デジタルスピリット、テントモンを召喚」

 

 

ー【テントモン】LV1(2S)BP2000

 

 

「やっぱりデジタルスピリット、緑のカードか」

「せや、召喚時、テントモンの上にコア1つをブーストし、LV2にアップ」

 

 

ヘラクレスが召喚したのは、てんとう虫型の小さなデジタルスピリット、テントモン。その召喚時効果により、コアが1つ増える。

 

 

「早速行くでぇ、テントモンの【進化:緑】……テントモンを手札に戻し、成熟期、カブテリモンをノーコスト召喚や!!」

 

 

ー【カブテリモン】LV2(3S)BP8000

 

 

テントモンの身体に、0と1で構成されたデジタルコードが巻き付けられて行く。テントモンはその中で肉体を大きく変化させて行き、緑の成熟期スピリット、甲殻を持つカブテリモンへと進化を果たす。

 

 

「カブテリモンの召喚アタック時効果、ランドマン・ロディは疲労や」

「!」

 

 

登場したカブテリモンの羽ばたきが、オーカミのフィールドにいるランドマン・ロディに片膝を突かせる。

 

 

「アタックステップ続行、カブテリモンでアタック、もう1つのアタック時効果により、疲労状態のランドマン・ロディを手札へ!!」

 

 

カブテリモンは小さな一本の頭角から電撃を放ち、それをランドマン・ロディへと直撃。そのまま粒子化し、手札へと強制送還されてしまった。

 

だが、やられても、ただでは転ばないのが、鉄華オーカミの鉄華団スピリットだ。

 

 

「鉄華団スピリットが、相手によってフィールドを離れる時、手札にあるグレイズ改弍の効果を発揮」

「!」

「自身をノーコスト召喚」

 

 

ー【グレイズ改弍[流星号]】LV1(1)BP2000

 

 

「さらに召喚時に合わせて、パイロットブレイヴ、ノルバ・シノを提示、ノーコスト召喚してグレイズ改弍に直接合体。グレイズ改弍の召喚時効果で1枚ドローだ」

 

 

ー【グレイズ改弍[流星号]+ノルバ・シノ】LV1(1)BP6000

 

 

消え去ったランドマン・ロディと入れ替わりになるように、流星の如く、オーカミのフィールドへと飛来して来たのは、マゼンタのカラーが施された、一つ目のモビルスピリット、グレイズ改弍。

 

さらにパイロットブレイブを合わせて効果で召喚し、即座に合体スピリットを作り上げる。

 

 

「知っとったで、鉄華団は手札とトラッシュからスピリットを大量展開し、カウンターも得意とするデッキっちゅう事をな」

「!」

「だけどな、その程度のカウンター、このヘラクレス様には通じんねん、カブテリモンの【超進化:緑】を発揮、自身を手札に戻し、緑の完全体デジタルスピリット、アトラーカブテリモンを召喚」

 

 

ー【アトラーカブテリモン】LV2(3)BP13000

 

 

ここでさらに進化を重ねるヘラクレス。カブテリモンはテントモンと同様に、デジタルコードが巻きつき、その中で進化を果たす。

 

こうして、新たに現れたのは、巨大な一角の頭角を持つ、甲虫型の完全体デジタルスピリット、アトラーカブテリモン。

 

 

「召喚アタック時効果、スピリット2体を疲労させるか、疲労しているスピリット2体を手札に戻す。今回はもちろん前者、グレイズ改弍は疲労や」

 

 

アトラーカブテリモンの巨大な一角から放たれし電撃が、オーカミのグレイズ改弍に直撃。片膝を突かされ、疲労状態となってしまう。

 

 

「まだ終わらん。アトラーカブテリモンでアタック、今度は後者の方を選択し、グレイズ改弍を手札へ戻す」

「ッ……シノはフィールドに残す」

 

 

直撃後も頭角から絶え間なく放たれる電撃。グレイズ改弍はそれに何度も被弾してしまい、遂に粒子化。オーカミの手札へと強制送還されてしまう。

 

見たままでは、オーカミのフィールドは全滅だが、姿形がないだけで、パイロットブレイブであるノルバ・シノのみが残った状態となった。

 

 

「折角の鉄華団とのバトル、出し惜しみは無しや、最後に【煌臨】を発揮、対象はアタック中のアトラーカブテリモン」

「完全体に煌臨、って事は」

「察しがえぇな。そう、オレが今から呼ぶのはデジタルスピリットの頂点、究極体や!!……アトラーカブテリモン、究極進化!!」

 

 

ヘラクレスの宣言と共に吹き荒れる暴風壁が、アトラーカブテリモンの巨大な身体を包み込んで行く。

 

 

 

「赤き甲虫よ、今こそ黄金の甲虫王者となり、眼前の敵をひねり潰せ……究極進化、ヘラクルカブテリモン!!」

 

 

ー【ヘラクルカブテリモン】LV1(2)BP12000

 

 

包み込まれた暴風壁を弾き飛ばしたのは、アトラーカブテリモンではなく、さらに進化を果たした、黄金の甲殻、三本の巨大な頭角を持つ緑属性の究極体デジタルスピリット、ヘラクルカブテリモン。

 

 

「緑属性の究極体デジタルスピリット、初めて見た、楽しみだ」

「へっ…余裕ぶっこいてられるのも今のうちやで、ヘラクルカブテリモンの煌臨時効果、煌臨元のアトラーカブテリモンを手札に戻す事で、コア3個をブースト」

「!」

 

 

アトラーカブテリモンのカードが手札に戻り、ヘラクルカブテリモンにコアが追加。そのLVは2となり、BPは18000にまで到達した。

 

 

「わぁ〜〜凄いです、これがデジタル王のデジタルスピリット、究極体のエースカード、生で見れて感激です!!」

 

 

このバトルを唯一目撃しているフウが、声に感動を混じらせる。

 

そんな中でも、ヘラクルカブテリモンのアタックは継続中。今のオーカミに、これを凌ぐ手段はなくて………

 

 

「そいつの攻撃は、ライフで受ける」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉鉄華オーカミ

 

 

突進して来たヘラクルカブテリモンが、三本の巨大な頭角で、オーカミのライフバリアを1つ貫き、砕いた。

 

 

「ターンエンド。オレ自慢のヘラクルカブテリモン、突破できるもんならやってみろや」

手札:4

場:【ヘラクルカブテリモン】LV2

バースト:【無】

 

 

僅か2ターン目で凄まじい展開と突破力を見せつけたヘラクレス。己のエースカードであるヘラクルカブテリモンをフィールドに残し、このターンをエンドとした。

 

次は、久しぶりの強敵に胸が高鳴る、オーカミのターンだ。

 

 

[ターン03]鉄華オーカミ

 

 

「メインステップ、創界神、オルガ・イツカ、クーデリア&アトラを配置」

 

 

ー【オルガ・イツカ】LV1

 

ー【クーデリア&アトラ】LV1

 

 

オーカミが配置したのは、鉄華団のサポートを行う、お馴染みの創界神ネクサス2枚。その配置時の神託により、計6枚のカードがトラッシュへ落ち、オルガに3つ、クーデリア&アトラに2つのコアが追加された。

 

 

「ランドマン・ロディ2体をLV1と2で召喚し、1体にシノを合体する」

 

 

ー【ランドマン・ロディ】LV1(1)BP1000

 

ー【ランドマン・ロディ+ノルバシノ】LV2(2S)BP7000

 

 

フィールドに召喚される2体のランドマン・ロディ。その内1体はシノと合体を果たし、合体スピリットとなる。

 

 

「アタックステップだ。合体したランドマン・ロディでアタック、その効果でオレのデッキ上から1枚を破棄、それがトリガーとなって、クーデリア&アトラの【神域】の効果が発揮、1枚ドロー、さらにシノの【合体中】アタック時効果、手札1枚を破棄して、2枚ドロー」

 

 

ランドマン・ロディで攻撃を仕掛ける。

 

その効果を使い、オーカミの手札は2枚から4枚へと増加。さらにこれだけでは終わらない。

 

 

「フラッシュ、オルガの【神域】を発揮、オレのデッキ上3枚を破棄、1枚ドロー、クーデリア&アトラの【神域】で、さらにドロー」

「おぉ、この僅かなターンで、手札とトラッシュの数をここまで伸ばすか」

 

 

鉄華団の効果で自分のデッキが破棄された時に、デッキからドローできる、クーデリア&アトラの【神域】を軸に、大きく手札とトラッシュを増やして行くオーカミ。

 

その上で、合体の影響でダブルシンボルとなっているランドマン・ロディのアタックは継続中である。

 

 

「えぇで、ライフで受けたるわ」

 

 

〈ライフ5➡︎3〉緑坂冬真

 

 

ランドマン・ロディは、アックスでヘラクレスのライフバリアを叩きつけ、それを一気に2つ破壊する。

 

 

「ターンエンド」

手札:6

場:【ランドマン・ロディ+ノルバ・シノ】LV2

【ランドマン・ロディ】LV1

【オルガ・イツカ】LV2(5)

【クーデリア&アトラ】LV2(4)

バースト:【無】

 

 

合体していない、LV1のランドマン・ロディ1体をブロッカーとして残し、そのターンをエンドとするオーカミ。

 

得意の手札とトラッシュを大量に増やす戦法が決まったこのターンだが、強大なデジタルスピリット、ヘラクルカブテリモンは未だヘラクレスのフィールドに存在しており………

 

 

「どんなに手札とトラッシュ増やしても、ヘラクルカブテリモンをこのターンで処理できひんかった時点でオマエの負けや。行くで、オレのターン」

 

 

大エース、ヘラクルカブテリモンに絶対の自信があるプロバトラー、デジタル王ヘラクレス。

 

オーカミにトドメを刺すべく、巡って来た自分のターンを開始して行く。

 

 

[ターン04]緑坂冬真

 

 

「メインステップ、先ずはバーストをセット、カブテリモンを再召喚」

 

 

ー【カブテリモン】LV1(1)BP5000

 

 

「召喚時効果でランドマン・ロディを疲労」

 

 

【超進化】の効果により手札に戻っていた緑の成熟期スピリット、カブテリモンが再びフィールドへ、その召喚時効果により、4本の腕から電撃を放ち、オーカミのランドマン・ロディ1体に片膝を突かせる。

 

 

「続けて、青のブレイヴ、コノハガニンを召喚し、ヘラクルカブテリモンに合体や」

 

 

ー【ヘラクルカブテリモン+コノハガニン】LV1(3)BP15000

 

 

青属性の異形のブレイヴ、コノハガニンがフィールドに出現し、ヘラクルカブテリモンの背部に装着。BPが3000上昇し、緑と青、2つのシンボルを併せ持つ合体スピリットとなる。

 

 

「メインステップは終了、ここからアタックステップに入るで」

「その開始時のタイミング、貰うぞ」

「!」

「創界神ネクサス、オルガの【神技】の効果、オルガの上からコアを4つ、ボイドに払い、トラッシュにある鉄華団スピリットを呼び覚ます……来い、バルバトス第4形態」

 

 

ー【ガンダム・バルバトス[第4形態]】LV1(1)BP5000

 

 

ヘラクレスのアタックステップ開始時。オーカミの創界神ネクサス、オルガ・イツカの効果が発揮。地中より、白き装甲に黒き戦棍メイスを携え、ガンダム・バルバトス第4形態が飛び出して来る。

 

 

「凄いです、またヘラクレスさんのターンにブロッカーを呼び出した!」

 

 

ヘラクレスのターン中でのスピリット召喚に、バトルを観戦しているフウがそう言葉を発する。

 

しかし、デジタル王であるヘラクレスにとっては、その程度はたかが知れており………

 

 

「だから意味ないっちゅうねん。このオレのヘラクルカブテリモンを前に、ブロッカーは紙切れ同然や。ヘラクルカブテリモンでアタック、合体しているコノハガニンの効果により、LVを1つ上のものとして扱い、【連鎖:緑】により、コア1つをヘラクルカブテリモンに追加」

 

 

バルバトス第4形態が召喚されても尚突き進むヘラクレス。コノハガニンの効果により、ヘラクルカブテリモンのLVは最大の2へ、BPは21000にまで及ぶ。

 

 

「フラッシュ、ヘラクルカブテリモンの効果を発揮」

「ッ……フラッシュで使える効果」

「このスピリットのコアを3つ支払い、バルバトス第4形態を疲労、逆にヘラクルカブテリモンは回復する」

「!」

 

 

鋼鉄が擦れるような咆哮を張り上げるヘラクルカブテリモン。それに合わせて強風が吹き荒れ、それがバルバトス第4形態に片膝を突かせ、反対にヘラクルカブテリモンには力を与え、回復状態となり、このターン中に二度目のアタックが可能な状態となった。

 

 

「いくらブロッカーを並べようとも、このヘラクレス様相手には壁にもならんで、さっさとダブルシンボルのアタックを受けな」

「……ライフで受ける」

 

 

〈ライフ4➡︎2〉鉄華オーカミ

 

 

羽音を鳴らし飛び立つヘラクルカブテリモン。そのままオーカミのライフバリアに突撃し、それを2つ貫き、粉砕。

 

これにより、残り総数はたったの2。回復したヘラクルカブテリモンで再度アタックされて仕舞えば、一溜まりもないレッドゾーンと化してしまう。

 

 

「これでトドメや、ヘラクルカブテリモンで……」

「な訳ないだろ。オレのライフが減った事で、手札にある絶甲氷盾の効果を発揮」

「ッ……なんや、ちゃんとしぶといやないか」

「効果により、アンタのアタックステップを強制終了させる」

 

 

オーカミが発揮したのは、最も汎用性が高いと言われている、白のマジックカード『絶甲氷盾〈R〉』………

 

その効果により、ヘラクレスのアタックステップは強制的に終了となった。肝心のヘラクルカブテリモンも、アタックステップが終わって仕舞えばアタックはできない。

 

 

「ターンエンド。やるやないか、前のターンの大量ドローも無駄やなかったみたいやな」

手札:2

場:【カブテリモン】LV1

【ヘラクルカブテリモン+コノハガニン】LV1

バースト:【有】

 

 

「あぁ、オレのデッキも、ようやく温まって来た」

「抜かしおる、次はオマエのターンや、凄いの期待しとるで」

 

 

この僅かなターンの間に、互いの実力を認め合った2人。強い相手と戦えてご満悦な様子。

 

次はオーカミのターンだ。疲労させられ、回復状態となろうとしている3体のスピリットと共に、それを迎える。

 

 

[ターン05]鉄華オーカミ

 

 

「メインステップ、先ずはパイロットブレイヴ、三日月・オーガスを召喚し、バルバトス第4形態に合体、さらにLV3へアップ」

 

 

ー【ガンダム・バルバトス[第4形態]+三日月・オーガス】LV3(5)BP18000

 

 

ブレイヴとの合体とLVアップにより強化されるバルバトス第4形態。

 

この時点でもかなり強力なスピリットへ仕上がっているが、ここから、さらなる進化を遂げて行く。

 

 

「【煌臨】発揮、対象はバルバトス第4形態」

「おぉ、メインステップ中に煌臨か」

 

 

ソウルコアをコストに発揮される【煌臨】の効果。ヘラクレスのヘラクルカブテリモンと違い、オーカミはそれをメインステップ中で使用する。

 

フィールドでは、バルバトス第4形態に強固な装甲が装着。頭部の黄色い角は、まるで王の冠と言える大きさまで変化を遂げる。

 

 

「天地を揺るがせ、未来へ響け……ガンダム・バルバトスルプスレクス!!」

 

 

ー【ガンダム・バルバトスルプスレクス+三日月・オーガス】LV3(5)BP22000

 

 

こうして誕生したのは、鉄華団の力、バルバトスの最終進化形態、バルバトスルプスレクス。

 

超大型となったメイスの矛先を下に構え、無音の咆哮を張り上げ、己の存在感をより強く示して行く。

 

 

「アレが、オーカミさんの新しいバルバトス、ルプスレクス!!」

「コスト8の超大型鉄華団スピリット、なるほどな、コイツを煌臨させるためにわざわざオレのターンに第4形態を復活させたんか」

「そう言う事だ」

 

 

フウがオーカミのバルバトスルプスレクスの存在に、感動で声を震え上がらせる。

 

そして、互いのエースであるルプスレクスと、ヘラクルカブテリモンの睨み合いが続く中、その競り合いが幕を開ける。

 

 

「ルプスレクスでアタック、1つ目のアタック時効果、オレのデッキ上2枚を破棄して、鉄華団カードがあれば、ルプスレクスに紫シンボルを1つ追加」

 

 

発揮される、ルプスレクス1つ目の効果。オーカミのデッキは大半が鉄華団カードで固められているため、当然それがトラッシュに送られる。

 

 

「効果成功、さらにルプスレクスには、LV2、3の時【合体中】で、尚且つオレのトラッシュが10枚以上ある時しか、使えない効果がある。それにより、このターンの間、アンタのスピリットとネクサス全てのLVコストを+1」

「なんやと!?」

 

 

相手のフィールドにある全てのスピリットとネクサスのLVコストを上昇させ、LVダウンと消滅を誘発させる、ルプスレクスの2つ目の効果。

 

残念な事に、今のヘラクレスの場にいるカブテリモンとヘラクルカブテリモンは、どちらもコア1つしか乗っていないLV1。この効果の恰好の獲物となる。

 

 

「虫を蹴散らせ、ルプスレクス!!」

 

 

ルプスレクスは背部に装備しているテイルブレードを伸ばし、手始めにカブテリモンを串刺しにし、消滅へと追い込む。

 

それを間近で見たヘラクルカブテリモンは激昂し、ルプスレクスへと襲いかかる。だが、ルプスレクスは、走り迫るヘラクルカブテリモンに巨大メイスを叩きつけ、一撃の元で粉砕、カブテリモンと同様、難なく瞬殺して見せる。

 

 

「くっ……合体していたコノハガニンはスピリット状態で残す」

「そいつも逃さない、三日月の効果でLVコストを+1にして消滅、追加でリザーブのコア2つをトラッシュへ」

 

 

瞬殺され、爆散したヘラクルカブテリモンから逃げるように飛び出したコノハガニン。

 

しかし、ルプスレクスはそれさえも逃さない。腕部からバルカンを展開、連射し、撃ち抜いて爆散させる。

 

 

「バケモンみたいな効果しとるな。アタック後のバースト、覇王爆炎撃、ランドマン・ロディ2体を破壊するで」

 

 

セットしていたヘラクレスのバーストカードが反転、3つの火炎弾が、オーカミのフィールドにいる3体のスピリットを襲う。

 

ランドマン・ロディ2体はそれに耐え切れず爆散してしまうが、ルプスレクスはメイスで軽く振り払い、生き残る。強力な破壊効果を持つバーストカードも、結局はルプスレクスが生き残って仕舞えば無意味に等しい。

 

 

「ランドマン・ロディの破壊時効果で1枚ずつドロー………アタックしているルプスレクスはトリプルシンボル、ライフを3つ破壊する」

「フ……他の三王が負けるわけやな。ライフで受けたるわ」

 

 

〈ライフ3➡︎0〉緑坂冬真

 

 

ルプスレクスは超大型メイスを振り下ろし、ヘラクレスのライフバリア3つを一気に粉砕。鉄華オーカミを勝利へと導いた。

 

 

******

 

 

「ありがとうな、えぇバトルやったで。まさか、このオレが負かされるとは」

「またやろう。次もオレが勝つよ」

「抜かしおるわ、このクソガキ。次はオレが勝つっちゅーねん」

 

 

バトルが終わり、談笑タイム。

 

今回のバトルで、オーカミは三王全員に勝った事になる。本人に自覚はないが、バトスピをはじめて半年程度でこの偉業は異常である。

 

 

「にしてもオマエのバトル、知り合いにごっつ似とったな。芽座椎名って知っとるか?」

「知らない」

「だと思うたわ」

 

 

ヘラクレスの口から出た名前は、この世で最も有名なカードバトラーの名前。しかし、著名人に疎いオーカミは、当然それが誰かわからない。

 

 

「えぇ、オーカミさん、芽座椎名様もわからないんですか!?」

「様?」

「芽座椎名様は、世界を何度も救って来た伝説のカードバトラー、そのバトルの才能は一級品どころか神級品。バトルスピリッツの申し子とも呼ばれてるんですよ〜!!」

「ふ〜ん」

 

 

テンションの上がったフウが、オーカミにそう説明する。いつもの事だが、有名人に興味のないオーカミは、とてもどうでもよさそうなリアクションを見せる。

 

 

「で、そいつとオレが似てるの?」

「バトルの仕方がな。引きもアホみたいに強いし、オマエがフウちゃんみたいな可愛い女の子やったら完璧やった」

「そっか」

「でねでね、その椎名様なんですけど」

「まだ話すの」

 

 

芽座椎名のファンなのか、フウはまだまだ彼女の事を話そうとする。余程好きなのだろう。

 

しかしそんな折、ショップの自動ドアがまた開いて………

 

 

「おっす〜〜ライが来ました〜〜」

「あ、ライちゃん!!」

 

 

天真爛漫な声を発しながらアポローンに来たのは、黄色がかった白髪のショートヘアの少女、春神ライ。

 

オーカミとは、空港にて行われた、アルファベットとのバトル以来の再会である。

 

 

「フウちゃんホントにヨッカさんの店でバイト始めたんだ」

「始めたって言うか、ゼウスから移転的な感じなんだけどね」

「コイツ、ちゃんと仕事してる?」

 

 

ライは肘でオーカミをつつきながら、そう告げる。

 

 

「そうオーカミさん、凄いんです!!……さっきデジタル王のこのヘラクレスさんに勝っちゃったんだよ!!」

「デジタル王?…あぁ三王の、確かもうすぐ普通のプロに戻るんじゃなかったっけ」

 

 

またテンションの上がったフウが、目の前のヘラクレスをライに紹介する。

 

だが、何故か当のヘラクレスは何も言わず呆然と立ち尽くしていた。この状況、いつもならライと言う美少女に猛アピールをすると言うのに。

 

 

「ん、どうしたのヘラクレス、静かだね」

「あ、あぁ、いや、天女みたいに可愛い子やったから、つい言葉を失ってもうた、すまんな」

 

 

オーカミの言葉で我を取り戻したヘラクレス、慌ててこの場を取り繕う。

 

顔に出てる冷や汗からして、どう見ても何か別の事を考えていたのは明白だったが、ライは「可愛い」と言われたのが、兎に角嬉しい様子。

 

 

「マジすか、流石私、バトルも強ければ顔も良い!!」

「はは、いや〜〜今日はこんな可愛い女の子2人に巡り会えて、幸せな1日やったな〜……ほんじゃオレはここで、またテレビ越しで会おうな」

「はい、これからの活躍、期待してます!!」

「ありがとうな、フウちゃん」

 

 

ヘラクレスは最後にそう告げると、この場からそそくさと退場する。

 

その直後、今まで何も気にしていなかったライの顔が、オーカミの目にふと入いる。彼が直感的に感じ取った事だが、今のライはどこか………

 

 

「ライ、なんかオマエ疲れてないか」

「ん、疲れ?……な訳ないだろ、私は春神ライ様だぞ」

「……そっか」

 

 

疲労が溜まり、疲弊しているように見えたのだ。

 

一見無尽蔵の体力を持ち、ピンチになる事など想像もできないようなライだが、この時ばかりは、オーカミも少しだけ心配になった。

 

 

******

 

 

一方でヘラクレス。早々にアポローンから立ち去った後、大きな街に繋がる人気の少ない道を歩いていた。

 

 

「……驚いた、ヨッカの店に来たあの娘、どことなく雰囲気がめざっち、芽座椎名に似とった。考え過ぎはあかんか、きっと他人の空似かなんかやろ、Dr.Aはもう死んだんや」

 

 

意味深な言葉を残すヘラクレス。そんな彼は、プロとしてさらなる活躍をするために、明日、海外へと経つ。

 

 

******

 

 

今は夜。この間まで少しだけ残っていた残暑も消え去り、やや肌寒くなって来た、僅かな光と暗闇の時間。

 

大抵の市民が寝静まるこの深夜の時間帯に、春神ライは外出していた。しかも、黒の帽子と黒猫のマークが入った半袖、黄色のショートパンツと、かなりの軽装である。

 

 

「……嵐マコトの隠れ研究所、良い加減数えるのも面倒くさくなって来たわ」

 

 

目の前にあるのはカードの製造工場。しかし、それは名ばかりで、本当は父である春神イナズマを誘拐した張本人、嵐マコトの隠れ研究所。

 

 

「待っててね、お父さん。今救けるから」

 

 

以前嵐マコトに言われた言葉を気に、それが罠だとわかっていながらも、この1ヶ月で数多の隠れ研究所を調べ上げ、その中にいる「ガードマン」と呼ばれる存在と、バトルと言う名の死闘を何度も潜り抜けて来た春神ライ。

 

そんな彼女の願いは、父との再会、ただ1つだ。

 

 




次回、第50ターン「エニーズ02を探せ」
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