「ねぇアニキ、次は何をすれば良い?」
「よし、じゃあこれを在庫室に運んでくれ」
「わかった」
カードショップアポローン、その店内。時刻は朝早い開店前。
アルバイトの鉄華オーカミは、店長であるヨッカにカードの詰まったダンボールを渡され、両手いっぱいで持ち上げる。
高校生プロバトラーアオイとのバトルが終わり早数日。彼女の本気とバトルをすると言う新しい目標を見つけたオーカは、アポローンでアルバイトをこなしつつ、バトルの腕を磨き続ける日々を続けていた。
「あと少しで開店だからな、急げよ」
「大丈夫」
相変わらずの無表情でそう言うと、ダンボールを両手に在庫室へと向かうオーカ。
しかしそんな折、目の前の自動ドアが音を立てながら開いた。
まだお客が来る時間じゃないはず………
そう思いながらオーカもヨッカもその方角へと首を向ける………
すると、そこにある人物がいて…………
「ヤッホー!…お久ですセンパイ!」
「お……帰って来たか」
「………誰?」
現れたのは170以上はある高身長の女性。金髪のショートヘアが特に印象に残る。
店長のヨッカとは知り合いであるそうだが、当然オーカは知らない。
「はいセンパイ、お土産のマトリョーシカ式モアイ像」
「いや要らねぇよそんな不気味なモノ……つーかバトスピ学園の教員免許取りに行ってただけだろうが、どうだったんだ?」
「モチ。合格以外あり得ないし」
「おぉ……マジで受かったんか、オマエが教員とか世も末だな」
マトリョーシカ式モアイ像と言う奇妙な贈り物を渡す女性。余程天然なのが窺えるが、同時に教員免許を取れる程の頭脳を持ち合わせているようで………
「フフフ……これで私は来年度からバトスピ学園ジークフリード校の教師。こんな古臭いカドショのバイトともおさらばさ」
「悪かったな、古臭くて」
何気ない会話を続けるヨッカと女性。その後、彼女は話を切り替えようと両手を合わせながら「あ、そうそう……」と言葉を発すると………
「そう言えば新しいバイト君って誰?…どの子?……私ひょっとしたらその子の事知ってるかもなんだよね〜」
「あぁ、それなら下を見ればわかるぞ」
「え……下?」
女性がヨッカにそう言われ、言われるがままに下の方へと目線を向ける。そこにはアポローンの新人アルバイト、鉄華オーカミの姿があり、思わずして目が合った。
2人の身長差はおよそ30センチ。女性がオーカの事に気がつかなかったのも無理はない。
「あ……どうも」
「…………」
一応挨拶をしておくオーカ。女性は何を思ったのか、オーカの顔を見るなり寡黙になる。
しかし、その表情は徐々に天からの贈り物でも受け取ったかの如く喜びに満ち溢れていき…………
「お………オォォォカァァァー!!!」
「ぐへ!」
感動の余り半泣きしながらオーカを全力で抱きしめた。豊満なバストの中にオーカの顔が埋まる。
「うわ〜懐かしいな〜まさかアポローンでバイトしてたなんて…相変わらず小ちゃくてかわいいね〜…マジでもう中学生なの!?……私の事わかる?…わかるよね!?……アンタの姉ちゃんの大親友『雷雷ミツバ』!!」
「いや………誰?」
「えぇ!?…覚えてないの!?…あんなに遊んだのに!!…お風呂も一緒に入ったじゃない!!…まぁでもそりゃそうか、オーカあの時は4歳だったからね」
「小さい頃って、あんまり覚えてないんだよな」
雷雷ミツバと言う女性から繰り出される止まらないマシンガントーク。
オーカはなんとかバストの山から抜け出し言葉を発するが、姉の大親友であると言う彼女の事は一切覚えてない様子。
「なんだミツバ、オマエオーカの事知ってたのか」
「モチ。この子の姉ちゃんとは同級生、大親友でね〜…2人揃ってよく『美人2人組』なんて呼ばれてたもんよ」
「まっさか〜…オーカの姉ちゃんは兎も角オマエは……」
「なんか言った?」
「いや別に何も……いいな、美人2人組」
自分に何か言おうとしたヨッカを圧力で黙らせるミツバ。しかし、実際はかなりの美人であり、一般的観点から見ればオーカの姉と揃ってそう言われ続けていたのにも納得はできる。
「ところでオーカはここで働いてるって事はバトスピ始めたの?」
「まぁ、一応」
「へ〜…アンタの姉ちゃんはバトスピ興味なかったから、アンタも興味ないんだと思ってた」
「最初はなかったけど、給料が上がるって言うから初めたら楽しくてハマった、それだけ」
名前さえもまだ登場していないが、どうやらオーカの姉もバトスピには興味がなかった模様。オーカが最初バトスピに毛程も興味がなかったのはどうやら彼女によるオーカの教育が影響していたようだ。
「ねぇねぇ、何のデッキ使ってるの?…お姉さんに教えてくださいな」
「鉄華団」
「て、鉄華団……??」
「まぁそうなるわな。鉄華団ってーのはオーカに送られて来た謎のカードなんだよ」
「何それミステリアスね」
「コイツがバトスピを始めたのはそれのお陰でもあるな」
「ふーーん、鉄華団ね………」
オーカと鉄華団カード達の出会いの話を聞くなり、ミツバは少し考えるように顎の先に指先を添える。
「よしオーカ。バトルしようか、私と」
「アンタと?」
「そうそう。このミツバお姉さんと勝負さ」
「コイツを褒めるのは癪だが、日本有数のバトスピ学園で教師の資格を取れるくらいだ。強さは保証するぞ」
「癪ってなんすかセンパイ」
鉄華団のデッキが気になったのか、オーカにバトルを持ち掛けるミツバ。単純に可愛がっていた親友の弟とバトスピしたいと言うのもあるのだろう。
この街、界放市にある各色に分かれた6つのバトスピ学園。所謂高校の部類であるが、バトスピを学べる数少ない学園であるため、その入試の難易度や倍率は非常に高い。その中でも教師を務める事ができるミツバはこれまでとはまた一線を画した強さを誇る事は先ず間違いない事であった。
しかし………
「よし、やるならさっさとやろう。正直、オレも色んな人とバトルやって腕を磨きたかったから丁度良かった」
「へへ、そうこなくては面白くないよな少年よ」
その返事にNOと言う答えはない。
早美アオイに全力を出させるべく、もっと強くなりたいと願っているオーカにとっては、このバトルの申し込みは願ってもない事。
今すぐバトルが始まるような雰囲気が漂うが、その前にヨッカがオーカに申し出て………
「あ、そうそう忘れてた……オーカ、バトルするならこれも試してみろ」
「……これって」
ヨッカがオーカに差し出したのは1枚の封筒。差出人は不明で、いつも通り「鉄華オーカミ様へ」と達筆な文字が記載されている。
紛う事なき、いつも自分に鉄華団のカードをくれる人の字であった。封筒の中身も当然新しいカードなのだろう。
「……これどこで?」
「この間商品の仕入れ先の問屋から送られてきた商品に貼り付けられてた。悪いがオレも差出人は知らん。まぁ何にせよ、鉄華団はオマエのカードだ、使ってやれ」
「………わかった」
またしてもカードの差出人はわからずじまい。
ただ、わからない事を常々考えても仕方がない。オーカはその封筒を開封すると、中に入っていたカードを躊躇いなくデッキに投入する。これでデッキの総数は50枚を超えたが、新しいカード達を試すのには丁度いい。
「あら?…そのまま使うの?…時間はあるし、ちゃんとデッキの調整してから挑んで来てもいいよ?」
「あぁ、別にいいよ。こうした方がデッキに要らないカードとかわかってくるし」
「成る程、そりゃそうね……よし、じゃあ始めますか」
オーカとミツバはそこまで話すと、店内にあるバトル場へと足を運ぶ。オーカのアニキ分であるヨッカもまた開店前の作業を放ったらかしにして赴く。
その中でオーカとミツバは懐からパッドを展開、己のデッキをセットし、バトルの準備を万全なモノとする。
「まさかオーカとバトルする日が来るなんてね、もうお姉さんワクワクして仕方ないよ」
「あぁ、それはオレもだ………行くぞ、バトル開始だ!!」
………ゲートオープン、界放!!
ヨッカが見守る中、アルバイトのオーカと、就職先が決まったため、後1年程度でここのアルバイトを辞めるミツバによるバトルスピリッツがコールと共に幕を開ける。
先攻はオーカだ。新しいカードを加えたそのデッキを回して行く。
[ターン01]オーカ
「ドローステップ!……ッ」
ターンシークエンスを進めて行く中、ドローでオーカが出会ったのはついさっき投入したばかりの新たな鉄華団のカード。
彼はそれを躊躇いなくBパッドに叩きつける。
「メインステップ……さっそく試してみるか、来いガンダム・バルバトス第2形態!!」
「!」
ー【ガンダム・バルバトス[第2形態]】LV1(1S)BP3000
「バルバトス第2形態が場にある限り、鉄華団スピリットは効果で手札デッキに戻らない」
上空から流星の如く地上に降り立ったのは新たなバルバトス。第1形態でも第4形態でもない第2形態のバルバトスだ。その手に持つ巨大なライフル銃が室内の明かりを反射させる。
「新しいバルバトスか」
「へ〜これが鉄華団のカード……オーカにしては中々イカすんじゃない?」
「ターンエンド」
手札:4
場:【ガンダム・バルバトス[第2形態]】LV1
バースト:【無】
ヨッカや対戦相手のミツバが新しいバルバトスに対して感想を述べて行く中、オーカは一切聞く姿勢を見せずにあっさりターンエンドの宣言。
次は難関のバトスピ学園の教師になれる程の実力を持つと言うミツバのターン。オーカのバルバトスを眺めながらゆっくりとそれを進めて行く。
[ターン02]ミツバ
「メインステップ。ネクサス、焔竜の城塞都市を配置」
ー【焔竜の城塞都市】LV1
ミツバの最初のターン、彼女の背後に巨大な岩山が出現。名前と所々に穴が空いている事から、竜の根城である事が理解できる。
「赤属性のカードか、ヒバナとのバトル以来だな」
「お、ヒバナちゃんとも知り合い?…でもそりゃそっか、あの子ここの常連だもんね〜……ターンエンドだよ」
手札:4
場:【焔竜の城塞都市】LV1
バースト:【無】
互いに一木ヒバナの事を頭に思い浮かべながら、ターンがオーカへと巡って来る。
[ターン03]オーカ
「メインステップ……バルバトス第1形態を召喚!」
ー【ガンダム・バルバトス[第1形態]】LV1(1)BP2000
肩の装甲がない最初のバルバトス、バルバトス第1形態が地中より飛び出して来る。第2形態と並び、モビルスピリット2体の場を形成した。
「召喚時効果、デッキからカードを3枚オープンし、その中の鉄華団カードを1枚手札に加える……オレは創界神ネクサス『オルガ・イツカ』を手札に加え、そのまま配置!」
ー【オルガ・イツカ】LV1
通常のネクサスとは異なる異質なネクサス、創界神を配置するオーカ。背後には何も出現しないが、強力なバックアップがこのバトルで保証された。
「配置時の神託を発揮……対象は1個、ボイドからコア1個をオルガに追加」
「専用の創界神ネクサスまであるのか〜…これはうかうかとバトルしてらんないな〜」
「アタックステップ……行くぞ第1形態、第2形態…アタックだ!」
オルガにコアが溜まる中、未だに呑気な声を漏らすミツバにオーカが攻撃を仕掛ける。第1形態と第2形態はその指示をスムーズに聞き入れ走り出す。
前のターン、ネクサスの配置のみに全力を注いだミツバはこの攻撃を防御する手段はなくて………
「迷いなきフルアタか〜…いいよいいよ、それはライフで受けてせんぜようではないか!」
〈ライフ5➡︎4➡︎3〉ミツバ
バルバトス第1形態の拳が、第2形態のライフル銃による射撃が………
それぞれ軽く巫山戯ているミツバのライフバリアを1つずつ打ち砕き、残り3つまで追い詰める。
「ターンエンド」
手札:4
場:【ガンダム・バルバトス[第1形態]】LV1
【ガンダム・バルバトス「第2形態]】LV1
【オルガ・イツカ】LV1(1)
バースト:【無】
「それじゃあ私のターンだね」
いつも通り、攻めるだけ攻めていきそのターンを終えるオーカ。
ライフ差や場のカード数の差から幸先の良いスタートが切れたと言えるが………
ここからがミツバの本名発揮である。彼女は歳上故にできる余裕の笑みはそのままにオーカに自分の実力を見せつけるべく、巡ってきたそのターンを進めて行く。
[ターン04]ミツバ
「メインステップ!……ふっふっふ、じゃあそろそろオーカに私の本気見せてあげようかな〜」
「!」
ミツバが手札にある1枚のカードに手をかける。その言動と行動から、彼女が自分にとってのバルバトスのような、絶対的信頼を置けるカードを呼び出そうとしているのは明白で………
「天下の轟雷振り翳しちゃえッ!…雷天雷神となりし金色の龍王…!!…宇宙超怪獣キングギドラ・1968を召喚!」
ー【宇宙超怪獣キングギドラ(1968)】LV3(4S)BP13000
ミツバの場に鈍い音を立てながら落雷する雷。そしてそれに伴う爆煙が覆う中、それをバルバトスをも凌ぐ巨大な翼で吹き飛ばして見せたのは、黄金の体を持つ三つ首龍。その名は宇宙超怪獣キングギドラ。登場するなり張り裂けるような咆哮でオーカを威嚇して行く。
デジタルスピリットでもライダースピリットでも、ましてやモビルスピリットでもないが、強力な効果を持つミツバの絶対的エースカードである。
「頭が3つある………」
「ね!…可愛いでしょ!」
「そうかな?」
「気にしなくていいぞオーカ、コイツの話にまともに付き合おうとするだけ無駄だ」
「え〜可愛いでしょ!…センパイの目が変なんですよ!」
巨大で厳ついスピリット、キングギドラを可愛いと評するミツバ。どうやらスピリットの見た目を見る目が感性が普通の人よりも若干ズレているようだ。
そんな彼女はいよいよキングギドラで攻撃を仕掛けていき………
「アタックステップ!…やっちゃいなさいキングギドラ!…アタック時効果でBP10000以下のスピリットを破壊……先ずはバルバトス第1形態!」
「!」
キングギドラが手始めに目を向けたのはバルバトス第1形態。三つの首から電撃を放ち、その鉄の身体を貫通。バルバトス第1形態は堪らず爆散した。
「さらにネクサス、焔竜の城塞都市の効果。自分のアタックステップ中にスピリットを破壊したら1枚ドロー……でもってまだまだあるよ〜……フラッシュタイミング!…ギドラはトラッシュにあるコア1個をギドラ自身に追加する事で、ターンに2回まで回復できる」
「な……じゃあ最初の攻撃と合わせて3回まで攻撃できるって事か!?」
「その通り!…先ずは1回目!…ギドラ回復!」
ー【宇宙超怪獣キングギドラ(1968)】(4S➡︎5S)(疲労➡︎回復)
強烈なアタック時効果を発揮するキングギドラ。使用済みのコアを再び使用可能にすると同時に回復状態に戻る。
オマケにオーカは前のターンによるフルアタックが響き、ここはライフで受けるしかなくて………
「ライフで受ける!」
〈ライフ5➡︎4〉オーカ
バルバトス第1形態を貫いた電撃が今度はオーカを襲う。三方向から来るそれは瞬時に彼のライフバリアを砕いた。
「続きました第二波!…効果でバルバトス第2形態を破壊。焔竜の城塞都市の効果でドローして、さらにフラッシュタイミングの効果でコアを戻し回復!」
ー【宇宙超怪獣キングギドラ(1968)】(5S➡︎6S)(疲労➡︎回復)
止まらない、止められないキングギドラの猛攻。バルバトス第2形態もその電撃に仕留められる。
「これもライフだ!」
〈ライフ4➡︎3〉オーカ
繰り返し放たれる電撃がまたしてもオーカのライフバリアを砕いた。
これでライフ差だけなら同点。しかし、スピリット、手札の差は圧倒的にオーカの不利にされてしまい…………
「ふむ。フルアタは控えるか……3度目のアタックは無し。これでターンエンドだよ〜」
手札:6
場:【宇宙超怪獣キングギドラ(1968)】LV3
【焔竜の城塞都市】LV1
バースト:【無】
「可愛い顔して、相変わらずやる事エゲつねぇな。住む世界が違ったら賞金稼ぎにでもなってたんじゃねぇか?」
「それを言うならセンパイのエースカードの方がやる事エグいでしょ。忘れもしませんよ、面接の時にボコられたの」
「ハッハッハ!…でもオマエもあの時も比べたら随分と立派になったよな!」
ミツバ、キングギドラのタッグを久しぶりに見せられたヨッカはそう感想を述べる。確かにたった1枚だけで劣勢をひっくり返す力はそうそうあるモノではない。
そしてオーカのターンが再び巡って来ようとした直後。3人が聴き慣れた声が店内から聞こえて来て…………
「お疲れ様でーす!」
「あ、ヒバナ。おはよう」
「おはようオーカ!…バトル頑張ってね〜」
「お…いらっしゃいヒバナ!…あれ、つーかもう店の開店時間回った?…まぁレジが遠いだけで問題ないけど」
「相変わらず適当ですねヨッカさん………」
現れたのはオーカの同級生の少女、一木ヒバナだった。常連の彼女が足を運んで来た事で、既に店の開店時間を過ぎている事にヨッカは気が付く。だが特に気にしてもいない様子。
そんな事よりミツバだ。
「おぉヒバナちゃァァァーん!!」
「って…ミツバさん!?…なんでオーカとバトルしてんですか!?」
「私がいない間寂しくなかったかい?」
「そりゃもう凄く!……それで?…バトスピ学園の採用試験どうだったんですか?」
「モチ!…受かったよ〜〜ジークフリード校だってさ!…来年から教師よ教師!」
「えぇ!!…凄!…じゃあ私絶対ジークフリード受けますね!」
「ふっふっふ…ヒバナちゃんが私の生徒になる日は近いな」
アポローンのバイトのミツバとアポローンの常連のヒバナ。同じ女の子同士と言う事もあり、その仲の良さは絶大であったようだ。
「なんか盛り上がってる所悪いけど、そろそろターン進めても良い?」
「おういいとも!…オーカもバトスピ学園ジークフリード校受ける?」
「なんの高校か知らないけどお金かかるから行かない」
黄金の三ツ首龍、キングギドラがミツバの場に聳え立つ中、ようやくオーカのターンが開始される。
[ターン05]オーカ
「メインステップ……鉄華団モビルワーカー2体を連続召喚。オルガに神託」
ー【鉄華団モビルワーカー】LV1(1)BP1000
ー【鉄華団モビルワーカー】LV1(1)BP1000
反撃開始の手始めに銃火器を備えた車両、鉄華団モビルワーカーを場へと呼び出すオーカ。
そしてさらに手札にある1枚のカードに手を掛け、それをBパッドへと叩きつけた。
「大地を揺らせ、未来へ導け!!……ガンダム・バルバトス第4形態!!…LV2で召喚!」
「!」
ー【ガンダム・バルバトス[第4形態]】LV2(2)BP9000
蠢く地の底より、黒い鈍器メイスを片手に飛び出して来たのはガンダム・バルバトス、その第4形態。オーカの持つ最強のカードであり、エースカードも務める。
「ふむ成る程。ここからが本気だってか?」
「オルガに神託してアタックステップ!…その開始時にトラッシュにあるバルバトス第2形態の効果!…コストを支払いトラッシュから復活を果たす!」
「ッ……破壊されても何度でも場に戻る効果」
「LV1で現れろ!…オルガに神託!」
ー【ガンダム・バルバトス[第2形態]】LV1(1S)BP3000
前のターンに破壊されたバルバトス第2形態が再びその姿を見せる。
そして、このターンで一気に勝負を決めるつもりなのか、オーカは創界神ネクサス、オルガ・イツカの上に置かれたコアを取り除き、その効果を発揮させる。
「オルガの【神技】の効果!…コア4個をボイドに置き、トラッシュから鉄華団カードを召喚する!……三日月・オーガスをバルバトス第4形態に直接合体するように召喚!」
ー【オルガ・イツカ】(5➡︎1)LV2➡︎1
ー【ガンダム・バルバトス[第4形態]+三日月・オーガス】LV2(2)BP15000
見た目に変化はないが、パイロットブレイヴのカードが合体した事で、バルバトス第4形態はその性能を格段に上昇させる。
「今度はパイロットブレイヴ。聞く限り初心者だと思ってたけど、なんだ結構やるじゃんオーカ」
「行くぞバルバトス……アタックステップ続行だ!」
鉄華団モビルワーカー2体、バルバトス第2形態、第4形態の計4体のスピリットが揃い、アタックステップを本格的に開始するオーカ。
最初に飛び出したのは当然三日月と合体し、強力な合体スピリットとなっているバルバトス第4形態だ。
「バルバトス第4形態でアタック!…効果でキングギドラからコア2つをリザーブに!」
「2つ?…その程度のコア除去じゃ私の可愛いギドラのレベルは下がらないよ〜」
ー【宇宙超怪獣キングギドラ(1968)】(6➡︎4)
バルバトス第4形態の黒い鈍器の武器、メイスを振るう一撃がキングギドラを襲い、体内のコアが2つミツバのリザーブへと戻されるが、確かにこの程度では消滅はおろかレベルを下げる事もできない。
だが…………
「フ……狙いはそこじゃない。合体した三日月の効果発揮!…このターンの間相手のスピリット、又はネクサスカード1枚の維持コストをプラス1にする」
「!」
「オレはこの効果でアンタのネクサス、焔竜の城塞都市の維持コストを1つ上げ、消滅させる!」
ー【焔竜の城塞都市】(消滅)
場を縦横無尽に駆け巡るバルバトス第4形態が次に目をつけたのはミツバの背後に聳え立つ岩城、焔竜の城塞都市。
バルバトス第4形態は自分の体の何倍もの大きさを誇るそれをメイスの一振りで容易く粉々に粉砕して見せた。
「さらにこの効果発揮後、鉄華団スピリットの数だけリザーブのコアをトラッシュに!」
「くっ………やってる事エグくない?」
「そう言う効果だ」
現在、オーカの鉄華団スピリットの数は4体だが、今のミツバのリザーブのコアは2つ。よってそれだけがトラッシュへと送られた。
「バルバトス第4形態のアタックは続いてる。ダブルシンボルのアタックだ!」
「流石に残りライフ3でそれをまともに受けるわけにはいかないね。ギドラよろしく!」
残りライフが3から1になる事を嫌い、バルバトス第4形態のアタックをエースであるキングギドラでブロックするミツバ。
しかし、そのBPは15000と13000。バルバトス第4形態の方が僅かながらに凌駕しており…………
「やれ、バルバトス!!」
再びキングギドラに接近して行くバルバトス第4形態。キングギドラがそれを近づかせまいと三つの口からそれぞれ電撃を放つが、バルバトス第4形態はメイスでそれを弾き返しながら前進していき………
やがて凄まじい勢いで辿り着いたバルバトス第4形態はメイスを張り上げる一撃でキングギドラの中央の首を刎ねた。首の一つを失ったキングギドラは流石に堪えたか、その場で意気消沈するように倒れ込んでしまう。
「よし……!」
バルバトス第4形態の勝利を確信したオーカ。後は残った鉄華団モビルワーカーとバルバトス第2形態でアタックすれば勝てると思っていたが…………
この一戦、そうそう甘いモノではなかった………
倒したはずのキングギドラの異変に、オーカは気づいて………
「あれ?……倒したのに消えない……?」
そう。通常なら破壊されれば爆発するなり粒子化するなりで消え去るのがバトルスピリッツのスピリットであるのだが、バルバトス第4形態の攻撃で倒れたはずのキングギドラは何故かこの場から消えず留まり続けているのだ。
「残念!…私の可愛いギドラも一度倒れたくらいじゃビクともしない!」
「!!」
これは何かあると勘づくオーカだが、時既に遅し。ミツバはニヤリと笑みを浮かべると、手札にある1枚のカードを己のBパッドへと叩きつけた。
「天の雷操りし黄金の龍王、その不動の魂を不屈の鋼へと昇華せよ!!…鋼鉄雷動の最強龍ッ!!…サイボーグ怪獣メカキングギドラ、LV2で機動ッ!」
ー【サイボーグ怪獣メカキングギドラ】LV2(3)BP15000
キングギドラは再び起き上がると、その身は白銀の光に包まれ始め、中央の首に鋼鉄のパーツが装着され始めると、キングギドラはメカキングギドラへと生まれ変わる。
両サイドの首から放たれる龍の咆哮、そして中心にある鋼鉄の首から発せられる機械混じりの咆哮が不協和音を作り上げる。
「別のスピリットになって復活した!?」
「メカキングギドラの効果。場のギドラが破壊された時、手札からノーコスト召喚できる……そして召喚時効果、相手スピリット1体をデッキの下に戻す、バルバトス第4形態を下に!」
「ッ………無駄だ、バルバトス第2形態の効果で鉄華団スピリット全ては手札とデッキには戻らない」
登場するなり中央の機械仕掛けの鋼鉄の首から放たれるレーザー光線。バルバトス第4形態に向けて放たれるが、その装甲にレーザー光線は効かない。難なく弾き返してしまう。
だが、こんなモノでは進化したギドラの効果は終わらなくて………
「本命の効果はここからだよ。その後、BP10000以下のスピリット2体を破壊する」
「!」
鉄華団モビルワーカー1体とバルバトス第2形態を破壊!」
両サイドの龍の首から放たれる電撃が鉄華団モビルワーカー1体とバルバトス第2形態を貫く。BPの弱いそれらは堪らず爆散してしまう。
「くっ……鉄華団モビルワーカーの破壊時効果でデッキを1枚破棄して1枚ドロー」
残りのアタッカーは鉄華団モビルワーカー1体のみ。ミツバの場にもメカキングギドラと言う強力なブロッカーが出現した。
八方塞がりに見えるこの状況だが、オーカにもまだ打つ手は残っている。今度はアタックを終了したバルバトス第4形態の効果が適用されて…………
「だけどまだだ……鉄華団は止まらない!!……バルバトス第4形態の効果、自分のスピリットがアタックしたバトルの終わりに1コストを支払い、トラッシュから鉄華団スピリットを呼ぶ!」
「ッ……まだそんな効果を」
「1コストを支払い、バルバトス第2形態を復活させる!」
ー【ガンダム・バルバトス[第2形態]】LV1(1)BP3000
場に現れた紫のシンボルが砕け散ると、中より先程破壊されたバルバトス第2形態が姿を見せる。その際、対象スピリットの登場のより神託でオルガ・イツカにコアが増えた。
これでアタックできるオーカのスピリットは2体。まだアタックを行う事ができる。
「バルバトス第2形態でアタック!」
「フルアタックしか脳がないのかな?…でもいいよ、そのしつこさに感服!!…ライフで受ける!」
〈ライフ3➡︎2〉ミツバ
バルバトス第2形態のライフル銃による射撃が彼女のライフをまた1つ撃ち砕く。
遂に残りライフ2つまでミツバを追い詰めるオーカだったが、これもまた彼女の計算内だったか、又しても彼女は手札からカードを引き抜いていき………
「私のライフが減った時、手札からマジックカード『覇王爆炎撃』と『シックスブレイズ』を発揮!…この2枚は私のライフが減った時にノーコストで打てる」
「ッ……フラッシュタイミングじゃないタイミングで手札からマジックの効果を発揮……!?」
「先ずは覇王爆炎撃の効果、相手の合体スピリットかBP20000以下のスピリット1体を破壊!…バルバトス第4形態を破壊かな!」
「くっ……三日月は場に残す」
ー【三日月・オーガス】LV1(0)BP1000
突如として放たれた爆炎がバルバトス第4形態に襲いかかる。キングギドラを討ち破ったバルバトス第4形態も流石に撃沈。堪らず爆散した。
三日月・オーガスのカードはブレイヴの都合上、場に残るが、パイロットブレイヴであるため、その姿は一切見られない。
「さらにシックスブレイズの効果。BP12000まで好きなだけスピリットを破壊、そしてその後の破壊時効果は全て無効!」
「!!」
「バルバトス第2形態、鉄華団モビルワーカー、三日月・オーガス……兎に角残ったスピリット、ブレイヴは綺麗さっぱり焼き払われる!」
今度は六つの業火球が鉄華団モビルワーカーとバルバトス第2形態に直撃。二機は焼き尽くされ、パイロットブレイヴ、三日月のカードもトラッシュへと送られた。
オマケにバルバトス第4形態もやられてしまっては後続のスピリットを召喚する事もできない………
メカキングギドラが場に健在である事を踏まえ、正に絶体絶命である状況に追い込まれてしまったと言えて………
「………ターンエンド」
手札:3
場:【オルガ・イツカ】LV1(2)
バースト:【無】
「流石ミツバさん、相変わらずバトルは隙がないですね……」
「性格は隙だらけだけどな」
バトルを見学するヒバナとヨッカがこのターンの感想を零す。
ヨッカは腕を組み、仁王立ちの姿勢で「ミツバくらいに勝たなきゃ早美アオイの本気に勝つ事なんて夢のまた夢だぞ」と内心でオーカに訴えかける。
そして迎えるのはミツバのターン。メカキングギドラが咆哮を上げ続ける中、それは行われて行く。
[ターン06]ミツバ
「メインステップ!……さてと、私もブレイヴを導入するか…召喚、牙皇ケルベロード!…メカキングギドラと直接合体!」
「ッ……青属性のブレイヴ」
ー【サイボーグ怪獣メカキングギドラ+牙皇ケルベロード】LV2(3)BP20000
現れたのは鎧を着けた黒い獣。今すぐにでも噛み付かんと言わんばかりの気迫を見せるそれは、黒い翼となりメカキングギドラに装備される。
黄金の翼と合わせて4つの翼を得るメカキングギドラは場のスピリットを全て失ったオーカを威嚇するように気高く咆哮を張り上げる。
「それじゃあアタックステップ!…ケルベロードと合体したメカキングギドラでアタック!…ケルベロードの合体時効果でデッキを5枚破棄して回復!」
ー【サイボーグ怪獣メカキングギドラ+牙皇ケルベロード】(疲労➡︎回復)
「回復した……!」
「メカキングギドラは元からダブルシンボルのスピリット、ケルベロードと合体した事により、トリプルシンボルでのアタックだよ」
「!」
四つの翼で羽ばたき飛翔するメカキングギドラ。その体に生えた三つの首が狙うのはオーカの残り3つのライフ。
この攻撃を一度でもまともに受けて仕舞えば敗北が確定してしまうオーカは咄嗟に手札にあるマジックカードを切って………
「フラッシュマジック、リミテッドバリア!」
「!」
「この効果でこのターン、オレのライフはコスト4以上のスピリットのアタックでは減らない………その攻撃はライフで受ける」
〈ライフ3➡︎3〉オーカ
直前に展開されるライフバリアとはまた別の強固な半透明なバリア。それがメカキングギドラの三つの首から放たれる電撃、レーザー光線からオーカのライフバリアを守って行く。
これで少なくともこのターンでミツバの勝利はない。リミテッドバリアの効力を消すためにはここでターンを終えるしかないからだ。
「………まぁ1枚くらいは持ってると思ったよ、防御札。これでターンエンド……残り2つの私のライフ、破壊できるモノならやってみな。その前に先ずはこのギドラをどうにかしないといけないけどね」
手札:3
場:【サイボーグ怪獣メカキングギドラ+牙皇ケルベロード】LV2
バースト:【無】
仕留め損なったものの、メカキングギドラがブロッカーとして残り、かなり余裕な状況でそのターンを終えるミツバ。流石はバトスピ学園の教師になれる程の実力者であると言える。
ただ、当然ながらこの鉄華オーカミもまだ諦めてはいない。ここから大逆転を狙うために巡って来たターンを進めて行く…………
[ターン07]オーカ
「ドローステップ!!………ッ」
「ん?………何か良いのでも引いたかな?」
ターンの道中に行うドロー。それはバルバトス第2形態と同様に新たに追加された鉄華団のカード。
オーカは引いたそのカードに逆転の可能性を感じ、思わず気分が高揚するが、ミツバにもそれを見抜かれる。
ただ、今はドローしたそれを信じてターンを回すしかない。オーカはメインステップまで突き進むと、それをBパッドに向かって全力で叩きつけた。
「メインステップ!!……行くぞ、4を超えたその先で、未来を掴め!!…ガンダム・バルバトス第6形態…LV1で召喚!!」
「バルバトスの第6形態!?」
ー【ガンダム・バルバトス[第6形態]】LV1(1S)BP7000
上空より地へ降り立ったのは新しいバルバトス。その名もバルバトス第6形態。第4形態をも超えた6の数字を冠するスピリットである。
武器であるメイスもレンチメイスと呼ばれる肉食恐竜の顎を象ったような鋼鉄のモノになっており、外装も新たに分厚く白い装甲を与えられている。
知っての通り、今までのバルバトスは第4形態が限界点。それを知っていたヨッカやヒバナはその6と言う存在に驚かざるを得ない。
「対象スピリットの登場でオルガに神託。レベル2にアップ」
「今度は6?…4だったり2だったり1だったり忙しいスピリットだね」
「呑気な事を言ってられるのも今のうちだ。オレはこのターンでアンタに勝つ!……アタックステップ!…トラッシュにあるバルバトス第2形態の効果、コストを支払い、トラッシュから復活!」
ー【ガンダム・バルバトス[第2形態]】LV1(1)BP3000
「またそのスピリットか!…いい加減見飽きたよ!」
「鉄華団は倒れない!…何度打ちのめされてもそれと同じ数だけ立ち上がる!」
鉄華団は倒れない。その言葉を体現するようにバルバトス第2形態はトラッシュから何度でも甦って来る。
そしてオーカもまた倒れない………
「アタックステップ続行!……バルバトス第2形態でアタック!」
「!」
ライフル銃を装備している第2形態で攻撃を仕掛けるオーカ。だが、ミツバの場にはブロッカーとしてメカキングギドラが残っている。
そのBPは実に20000。第2形態どころか第6形態でも遠く及ばない数値であり…………
「自爆覚悟の特攻??……いいねその気概、受けて立とうじゃん。ギドラでブロック!」
ミツバの残り2つのライフを撃つべく、背中のバックパックにあるスラスターで低空を飛行するバルバトス第2形態に立ちはだかるのは最強のメカキングギドラ。
圧倒的な力の差。その3つの首から電撃とレーザー光線を放ち、バルバトス第2形態を木っ端微塵に…………
する予定だった。横からバルバトス第6形態が邪魔をするようにメカキングギドラの頭部をレンチメイスで叩きつけるまでは………
「な……バルバトス第6形態!?…ギドラのブロックを邪魔した!?」
「あぁ。鉄華団は止まらないし、止まらせない……このオレとバルバトス第6形態がいる限りな………バルバトス第6形態の効果、鉄華団スピリットのアタック中、相手は自分のスピリット1体を破壊しなければブロックできない」
「!!」
「ブレイヴの合体が仇になったな、スピリットが2体いないアンタはもうブロックできない!!…行け、第2形態!」
再びバルバトス第2形態を破壊しようと立ち上がるメカキングギドラだが、バルバトス第6形態がそれをさせない。
バルバトス第6形態がメカキングギドラを押さえつけているその間に、バルバトス第2形態がライフル銃でミツバのライフを狙う。
そしてもう彼女にはそれを防ぐ手段はなくて………
「ライフで受ける!………ッ」
〈ライフ2➡︎1〉ミツバ
放たれた銃弾が彼女のライフを1つ撃ち抜いた。これで残り1つ。後は未だにメカキングギドラと戦闘を続けているバルバトス第6形態で決めるだけだ。
バルバトス第6形態はミツバのライフを撃つべく、メカキングギドラを脚部による蹴りで強引に引き離し、そのレンチメイスを彼女に向けて構える………
「終わりだ……行け、バルバトス第6形態!!」
「おぉ……これが鉄華団の結束と絆の力……ライフで受ける!」
〈ライフ1➡︎0〉ミツバ
レンチメイスの顎のような先端を開き、その間にライフバリアを挟みこむバルバトス第6形態。その万力の如き攻撃は、あっという間に彼女の最後のライフバリアをかち割って見せた…………
……ピー………
と、甲高い音がミツバのBパッドから鳴り響く。それは彼女の敗北とオーカの勝利を示す音色。
よって、バトルはオーカの勝ちだ。最後に残ったバルバトス第6形態、第2形態はバトル終了と共に粒子化して消えて行く中、勇ましく誇らしげに己の武器を天に掲げる。
「あちゃ〜…負けたか。本気だったんだけどな」
「勝った……なんかこの勝ちはちゃんと勝ったって感じがする」
勝利を実感すると、この前のアオイとのバトルを思い出したオーカ。やはりあの時の彼女は手加減をしていたのだと改めて感じた。
そんな折、勝利したオーカにヒバナとヨッカが言い寄って来て……
「オーカ凄いね!…バルバトス第6形態!…大活躍だったじゃん!」
「うん。これがあればあの髪の青い人にも勝てるかも」
「いやそれは気が早過ぎるだろ。デッキの調整もしてないのに」
打倒早美アオイのオーカ。ひょっとすればバルバトス第6形態は彼女の対抗策になり得るカードなのかもしれないが、ヨッカの言う通り、まだ気が早過ぎる。
「よぉし!…じゃあ今日はバイトサボって1日中オーカのデッキ調整しようか!」
「おい何堂々とサボろうとしたんだミツバ。自給減らされたくなければ働け」
さり気なくバイトをストライキしてバトル付けの1日を送ろうとするミツバに店長であるヨッカが叱責する。
「センパイ〜…私は後一年で教師よ教師!…公務員!!…エアーズロックの地盤並みに安定した給料を得られるわけですよ。こんなバイトのしょっぱい給料なんて今更減らされたところで」
「じゃあやめろよバイト」
「それはそれで無理。だって私の可愛い弟分、オーカがいるんだもの〜〜!!…これからは私の事「アネゴ」って呼んでいいからねオーカ!」
「ヤダ」
バトルが終わってからと言うモノ、かなりテンションが上がっているミツバ。オーカに抱きつきながら名前の呼び方を提案するが、速攻でオーカに却下される。
「じゃあセンパイ、そう言う事で。私はオーカとヒバナちゃんの3人でデートして来ます」
「待てコラ、この流れでなんでそうなる」
オーカとヒバナの肩を抱き、彼らと共にこの場から勝手に立ち去ろうとするミツバ。
そして直後にオーカとヒバナの関係を単刀直入に聞いて来て………
「あ、ところでオーカとヒバナちゃんは付き合ってる感じ?」
「な……ち、ちちち違いますよ!!…ただの友達です!」
「?」
ザックリ過ぎるミツバの質問に思わず顔を赤くしてしまうヒバナ。あまり意味のわかっていないオーカは頭の上にハテナのマークを浮かべる。
そんな2人の様子からミツバは驚異的な恋愛脳でそれを分析。不敵な笑みを浮かべながら彼らの恋愛事情を全て把握する。
「ははーん♪……意外と隅に置けないんだねオーカ」
「何の話?」
「い、イヤ、いいからオーカ!…ミツバさんの話は気にしなくて!」
「そうなの?」
「そうだよ!」
ミツバの話を理解しようとするオーカ。それを必死にやめさせようとするヒバナ。それを見るだけでミツバにとってはご褒美、「はい、美味しかったです」と言葉を告げると、また2人の肩を抱きしめて………
「じゃセンパイ。3人で遊んで来るから仕事頑張ってね〜」
「それで逃げれると思ったならオマエは真のバカだよ」
「あ……やっぱダメ?」
結局は捕まり、その後もオーカ含めて3人で仕事を熟して行くのだが……
明る過ぎるミツバが店員に加わり、カードショップ「アポローン」の店内はより一層賑やかになる。そして今日もまた平和な1日が幕を下ろしていくのであった………
******
舞台は移り、どこかの場所。どこかの高層ビル。
その屋上の端で宙に足を伸ばしながら座っている1人の少年がいた。銀色の髪が特徴的で、年齢はオーカ達とさほど変わらない程度。
「退屈だ……オマエもそう思うだろ?」
少年の手にはカードが握られており、余程愛用しているのか、返事が返って来るわけもないそのカードに同意を求めた。
そのカードの名は「デスティニーガンダム」……
「ん?」
そんな折、舞い上がったビルの隙間風により飛んで来た1枚の新聞記事を手に取る少年。
その記事の内容は…………
「……『高校生プロバトラーアオイを撃破。勝ったのは名も知れないモビルスピリットを使う少年』………」
オーカがアオイに勝利したと言う内容だった。その日以降、オーカは一躍有名になり、こうしてこの銀髪の少年の目にも留まった。
そんなオーカに興味がそそられたのか、少年はニヤリと口角を上げ、不敵に笑うと…………
「あの早美アオイに勝ったカードバトラー……ソイツならオレのこの渇きを癒やしてくれるのか?」
デスティニーガンダムと呼ばれるカードをデッキに仕舞い、立ち上がりながらそう呟く少年。
どうやらバトルスピリッツはオーカを休ませる気などこれっぽっちもないようだ。
次回、第6ターン「その名はデスティニーガンダム」