ー『君のお父さんは、界放市中に多数存在する、私の隠れ研究所のどこかにいるよ』
ー『隠れ研究所は、それぞれ1人ずつガードマンが守ってくれていてね、イナズマ先生のいる研究所は、そのガードマンの中でもトップクラスの実力を誇る「エニーズ02」と呼ばれる人造人間が付いている』
ー『ではね、ライちゃん。是非イナズマ先生を助けるために、私の隠れ研究所を探してくれたまえ』
春神ライは、嵐マコトの放った、この言葉を決して忘れない。
罠じゃない訳がない。人造人間とか言われても現実味がない。
しかしそれでも、大好きな父が、ほんの僅かな可能性でも帰って来てくれるのであれば、ライはその馬鹿げた挑戦に乗る以外の選択肢がなかった。
******
この数ヶ月、何度も孤独な戦いに身を置いて来たライ。
嵐マコトの隠れ研究所を探しては、そこにいるガードマンと呼ばれる存在とバトルを繰り広げ、勝利し、人造人間エニーズ02ではない事を確認すると、また隠れ研究所を探す行為を幾度となく繰り返して来た。そのせいか、表情や歩き方には、やや疲れが見えて来ている。
だがそれでも、父を救けたいと言う気持ちが、彼女の身体を突き動かしていた。
「み〜つけた」
「……」
「アンタでしょ、ここの、ガードマン。見た目怪し過ぎだし」
「……」
「ダンマリかよ、返事がないのは肯定のサインだぜ、まぁ、今ここにいるのはアンタと私だけだから、他に選択肢はないんだけどさ」
時間帯は深夜、とある嵐マコトの隠れ研究所。その深層にて、潜入した春神ライが、暗闇の中、そこを守護するガードマンらしき風貌の人物を見つけ出した。
黒い布切れを、フードのように深く被っているが、風貌から男性である事がわかる。
「人造人間って事はロボットなのかな、じゃあずっとダンマリしてるこの人が……」
人造人間、エニーズ02かもしれない。
ライはようやくそれらしい人物との遭遇に対しそう思い、胸が高鳴る。
「よし、バトルしよう。私が勝ったら、お父さんの居場所を教えてね」
「……」
うんともすんとも言わない男性だが、バトルをすると言う言葉は伝わったのか、無言のままBパッドを左腕に装着し、展開、己のデッキを装填する。
「よかった、バトルはわかるんだ。そりゃそうだよね、そんじゃま、ミッションスタート、と言う事で」
……ゲートオープン、界放!!
同じくBパッドを左腕に装着したライ、ガードマンとのバトルスピリッツを開始する。その直後、おあつらえ向きに、暗闇を照らすスポットライトが2人に当てられる。
先攻は春神ライだ。目の前のガードマンが、本当にエニーズ02なのかを確かめるべく、そのターンを進めていく。
[ターン01]春神ライ
「メインステップ、マジック、双翼乱舞。デッキから2枚ドロー、バーストをセットして、ターンエンド」
手札:5
バースト:【有】
手札増加用のマジックの使用と、バーストのセットのみで最初のターンを終えるライ。その表情は、自分がバトルで負ける訳がないと言う自信に満ち溢れている。
[ターン02]ガードマン
「メインステップ、創界神ネクサス、アークの秘書・アズを配置」
ー【アークの秘書・アズ】LV1
「配置時の神託、アズにコア+3」
「なんだ、ちゃんと喋れるじゃん」
彼の側に、黒く長い髪の少女を模したアンドロイドが出現。赤く光る瞳孔と、妖艶に微笑むその表情には、紫属性らしい邪悪さを感じさせる。
「続けてネクサス、衛星アークを配置」
ー【衛星アーク】LV1
「配置時効果で3枚オープン、その中の対象カードを手札に加える。対象カード無し、3枚を全てトラッシュへ」
次に配置したのは、地に堕ちた黒い衛星、アーク。その配置時効果が発揮されるが、対象のカードは無し。全てトラッシュへと捨てられた。
「ターンエンド」
手札:3
場:【アークの秘書・アズ】LV2(3)
【衛星アーク】LV1
バースト:【無】
終始無機質な声で淡々とプレイしていくガードマン。2枚のネクサスを配置し、最初のターンを終了する。
[ターン03]春神ライ
「メインステップ、なんかコンピュータとでもバトルしてるみたいだな。パイロットブレイヴ、式波・アスカ・ラングレーを召喚」
ー【式波・アスカ・ラングレー-テストスーツ-】LV1(0)BP1000
「ターンエンド」
手札:5
場:【式波・アスカ・ラングレー-テストスーツ-】LV1
バースト:【有】
フィールドには何も出現しないが、ライは赤属性のパイロットブレイヴ、式波・アスカ・ラングレーを召喚。
強力なブレイヴだが、それだけでは何もできないため、このターンはそのままエンドの宣言。早々にガードマンへとターンを渡す。
[ターン04]ガードマン
「メインステップ、紫のライダースピリット、雷をLV1で召喚」
ー【仮面ライダー雷[2]】LV1(1)BP2000
「ライダースピリットのデッキか」
「召喚時効果でデッキ上から1枚ドロー」
ガードマンが召喚したのは、赤みを帯びた装甲を持つライダースピリット、雷。その召喚時効果により、彼はデッキから1枚のカードをドロー。
着実にアドバンテージを得て行く優れた効果であるが、春神ライは、そのタイミングで発揮できる、カウンターカードを忘れずに挿し込んで行く。
「相手のスピリット召喚時発揮により、バースト発動。赤のモビルスピリット、サザビー・ロング・ライフル」
「……」
「効果により、召喚」
ー【サザビー[ロング・ライフル]】LV1(1)BP8000
ライのフィールドへと飛来して来たのは、深紅の装甲を持つ機械兵、モビルスピリット、サザビー。
以前、ライの親友であるフウからプレゼントされたカードだ。冷ややかな1つ目が、ガードマンを視界に入れる。
「召喚時効果を発揮、ネクサス、衛星アークを破壊」
「……」
「破壊した時、トラッシュのコア3つをサザビーに移動、LV2にアップ」
サザビーは登場するなり、両手に持つロングライフルで、ガードマンの背後にある衛星アークの中心を撃ち抜き、爆発に追い込む。
「流石フウちゃんの選んでくれたカード、センス良い」
「……ライダースピリットゼロワン、フライングファルコンを召喚」
ー【仮面ライダーゼロワン フライングファルコン】LV1(1)BP2000
「召喚時効果によりトラッシュと雷にそれぞれ1つずつコアブースト」
ライのカウンター、バーストカードに怯む事なく、ガードマンは、マゼンタのカラーと機翼を持つライダースピリット、ゼロワン フライングファルコンを召喚し、コアの総数を2つ増加させる。
「ターンエンド」
手札:3
場:【仮面ライダー雷[2]】LV1
【仮面ライダーゼロワン フライングファルコン】LV1
【アークの秘書・アズ】LV2(5)
バースト:【無】
不利な状況に陥っても、ガードマンの感情のない無機質な声が、全くそれを感じさせない。
しかし、それは天才カードバトラーの春神ライにとっては関係のない事、ただ勝利を目掛けてカードを操るだけだ。
[ターン05]春神ライ
「メインステップ、ロケッドラをLV1で召喚」
ー【ロケッドラ】LV1(1)BP1000
「さらに、アスカをサザビーに合体」
ー【サザビー[ロング・ライフル]+式波・アスカ・ラングレー-テストスーツ-】LV2(4)BP18000
背中にロケットを背負った小型ドラゴン、ロケッドラが召喚。サザビーはパイロットブレイヴであるアスカと合体を果たし、強力な合体スピリットと化す。
「バーストをセットして、アタックステップ。さっさと終わらせるよ、サザビーでアタック」
アタックステップに突入するライ。
勝負を早々に決めるべく、アタックしたサザビーの効果を発揮させて行く。
「フラッシュ、サザビーの【ファンネル:12000】を発揮、BP12000まで、相手のスピリットを好きなだけ破壊し、1コストを支払う事で1枚ドロー」
「……」
「雷とフライングファルコンを破壊」
サザビーの背部に備え付けられた6つの遠隔機、ファンネルが飛翔。それらは宙を飛び交い、フライングファルコンと雷に向けてレーザーを照射、爆散へと追い込む。
「さらに合体しているアスカの効果、赤の効果でスピリットを破壊した時、自身を回復させる」
「……」
「つまり、このターン、サザビーは二度目のアタックが可能。ダブルシンボル2回のアタックと、ロケッドラのアタックでジ・エンドだ」
合体したアスカの効果で回復状態となるサザビー。こればかりは流石と言うべきか、ライは僅か5ターンで、相手のライフ5つ全てを破壊し切るリーサルラインを形成していたのだ。
「さぁ、先ずはサザビー1回目のアタック」
「ライフで受ける」
〈ライフ5➡︎3〉ガードマン
「もう一度だ」
「ライフで受ける」
〈ライフ3➡︎1〉ガードマン
ファンネルを巧みに操り、特攻させ、ガードマンのライフバリアを一度に4つ撃破するサザビー。
ロケッドラもアタックするのを今か今かと待ち侘びているのか、クラウチングでスタンバイしている。
「1つさ、聞きたい事あるんだけど、いいかな」
「……」
「貴方は本当に私が探している人造人間、エニーズ02なの?」
更なるアタックを仕掛け、勝負を決めようとした直前、ライはカードに触れる手を止め、ガードマンにそう問いただした。
ここ数ヶ月で何度もこの質問をしたが、その答えは全てNO。それどころか誰もこの名前すら知らなかったし、何故自分らが雇われ、何のために何を守護しているのかも知らされていなかった。
そして、今回のガードマンの反応は………
「エニーズ02……ゼロ、ツー…?」
男の脳裏に浮かび上がって来たのは、緑色の戦士。さらにその背後でBパッドを構えているのは………
「ッ……イ、イチ……あ、あぁぁぁぁぁぁあ!!?!?」
「え、何、どうしたの急に、1じゃなくて2ですけど!?」
「違う、ただ、ただ羨ましくて、ただそれだけだったんだ、最初は……ぁぁぁぁぁあ!!!」
何か嫌な想い出でも想起してしまったのか、これまでの無機質からは信じられない程の声量で発狂するガードマン。
天才を自称するライも、彼の原因はさっぱりわからない。
「……なんだか知らないけど、もういいや、さっさと終わらせるぞ、ロケッドラでアタック!!」
苦しみもがくガードマンにトドメを刺すべく、背部のロケットで飛翔するロケッドラが突撃して行く。
このまま行けばライの勝利で幕を下ろす事になる。だが、ガードマンのカードバトラーとしての本能が、それを許さなくて………
「う、うぅぅ、フラッシュマジック、アークの意志」
「!」
「効果でサザビーのコアを1つのみにし、トラッシュから滅亡迅雷ライダースピリットを復活させる」
ここに来てフラッシュタイミングでマジックカード。それにより出現した紫の霞が、サザビーを覆い尽くし、そのコアをLV1になるようにリザーブへと弾き飛ばす。
さらに、オマケのように発揮される蘇生効果。ガードマンがトラッシュから蘇らせるスピリットは、破壊された雷ではなく、アズの神託でトラッシュに送られた1枚。
「全てを滅せよ、ライダースピリット、滅・アークスコーピオン!!」
ー【仮面ライダー滅 アークスコーピオン】LV2(2)BP10000
ガードマンのフィールドにも現れる紫の霞。それを振り払い、中より出現していたのは、黒く歪で、継ぎ接ぎだらけのライダースピリット、滅・アークスコーピオン。
その内に秘める闇のエネルギーは、このフィールド内で最も強い存在感を示す。
「対象スピリットの召喚により、トラッシュの雷の効果、自身を手札に戻す。さらに召喚時効果、相手スピリット全てのコアを3個ずつリザーブに置く」
「3個ずつ!?」
「オマエの全てのスピリットを滅する」
飛び込んで来たロケッドラを片手で押さえ込み、その手の先から闇の衝撃波を飛ばすアークスコーピオン。
零距離で受けたロケッドラは、当然一瞬にして塵芥と化すが、それはサザビーにも被弾し、爆散へと追い込んだ。
「この効果で消滅させた時、トラッシュにある滅亡迅雷スピリットを復活させる。来い、ライダースピリット、迅・フライングファルコン」
ー【仮面ライダー迅 フライングファルコン[2]】LV1(1)BP2000
敵を滅し、さらにトラッシュから家族を呼び寄せる、アークスコーピオンの効果。鉄の翼を持つ、マゼンタカラーのライダースピリット、迅が召喚される。
「ターンエンド。私のターンでスピリット全滅させただけじゃなくて、2体もトラッシュから召喚するなんて」
手札:5
場:【式波・アスカ・ラングレー-テストスーツ-】LV1
バースト:【有】
突然過ぎる発狂に、唐突過ぎる強烈なカウンター。流石のライもここは返せる手がなく、一度そのターンをエンドとする。
次はフィールド的に優勢にはなっても、未だに微かに蘇った記憶に、もがき苦しむガードマンのターンだ。
[ターン06]ガードマン
「雷を再召喚。効果で1枚ドロー、ライダースピリット、亡を召喚。効果で衛星アークをトラッシュから回収」
ー【仮面ライダー雷[2]】LV1(1)BP2000
ー【仮面ライダー亡[2]】LV1(1)BP3000
トラッシュから手札に戻った雷が、再びフィールドへと投下される。その次に召喚されたのは、長い鉤爪と純白のボディを持つライダースピリット、亡。召喚時効果により、サザビーによって破壊された衛星アークのカードを手札へと回収させた。
「アタックステップ。アークスコーピオンの効果、自身以外の滅亡迅雷スピリット1体につき、紫シンボル1つを追加する」
「ッ……じゃあこの状況だとシンボルが3つ追加されて、4点、クアドラプルシンボルになるって事!?」
滅亡迅雷ライダースピリットの結束の力がオーラとなり可視化され、アークスコーピオンへ集結。
これにより今のアークスコーピオンは、アタック時に相手ライフを4つ破壊できる、見た目通りの怪物となる。
「あぁ、ごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめん、オレが悪かったァァァァ!!!……アークスコーピオンでアタック!!」
本能でバトルを続けるガードマン。蘇ってくる何かの記憶が、彼の心を常に痛めつける。
そして、彼の呼び出したスピリットは、ライのライフを痛めつける。
「……ライフで、受ける」
〈ライフ5➡︎1〉春神ライ
「ぐっ……ぁぁぁぁぁあ!!?」
アークスコーピオンの固い拳が、ライのライフバリアを砕き、残り1枚にまで追い詰める。
その際に発生した激しい激痛が、ライの表情を歪ませ、片膝を付かせる。
「……ハァッ、ハァッ……ライフ減少により、バースト、絶甲氷盾。ライフを回復、コストを支払って、このターンのアタックステップを強制終了」
〈ライフ1➡︎2〉春神ライ
息を切らしながら、辛うじて立ち上がり、震えた指でバーストカードを反転させるライ。
それは最も汎用性の高い白の防御マジック『絶甲氷盾〈R〉』
その効果により、ライフを1つ回復させ、ガードマンのアタックステップを強制的に終了させる。
「ターン、エンド……」
手札:4
場:【仮面ライダー滅 アークスコーピオン】LV2
【仮面ライダー迅 フライングファルコン[2]】LV1
【仮面ライダー雷[2]】LV1
【仮面ライダー亡[2]】LV1
【アークの秘書・アズ】LV2(9)
バースト:【無】
4体のスピリットを並べ、多くのライフを減らし、一気に優勢に立ったガードマン。結果的に3体のスピリットをブロッカーとして残し、そのターンをエンドとする。
次は意味もわからず追い詰められてしまったライのターン。負けられない想いを胸に、それを進めて行く。
[ターン07]春神ライ
「やるな、でも私も負けられない。メインステップ、エヴァンゲリオン新2号機αを召喚し、アスカと合体」
ー【エヴァンゲリオン新2号機α-ヤマト作戦-+式波・アスカ・ラングレー-テストスーツ-】LV1(1)BP14000
ライのフィールドに、豪快な落雷と共に飛来したのは、伝説のエヴァンゲリオンスピリットの1体、新2号機α・ヤマト作戦。
赤と深緑の上下アンバランスな装甲に加え、全身凶器とも呼ばる程の武装を内装する、ライのエースカードだ。
「既に勝利の未来は見えている、さぁ、ラストターンの時間です」
ライの目が一瞬赤く発光する。それはその身に宿る天下無双の力、王者を発動した証拠。
ラストターンを宣言したライの前に、敵はいない。
「アタックステップ、新2号機αでアタック、効果により、先ずはトラッシュのコア全てを自身に追加、LV3にアップ」
トラッシュのコアを巻き上げ、LV1から3に上昇する新2号機α。
そしてこれにより、発揮できるようになる効果が1つ存在し………
「LV2からの効果、BP20000まで、相手スピリットを全て破壊。これで滅亡迅雷スピリットは全滅」
手に持つ巨大なレールガンを掃射する新2号機α。ガードマンのフィールドに存在する4体の滅亡迅雷スピリットを粉塵に変える。
「……オレは、ゴミだ」
「アンタに何があったのか知らないけどさ。そうやって自分を悲観する前に、先ずはその悪い事したっぽい相手にさ、頭下げなよ、そうじゃないと、きっと前に進めない」
「!」
「新2号機αの最後の効果、私の手札を2枚破棄し、相手ライフ1つを破壊」
〈ライフ1➡︎0〉ガードマン
新2号機αの放ったレールガンは、滅亡迅雷スピリットを屠るだけに止まらず、ガードマンの最後のライフバリアまでもを貫いて見せる。
これにより、このバトルの勝者は春神ライだ。ライフを多く欠損してしまったものの、圧巻の勝利を収めて見せる。
******
深夜。鉄華オーカミらの兄貴分、白髪で長身の青年、九日ヨッカ。
嵐マコトを追い続け、ここ最近では滅多に自分の家にも帰宅しない彼だったが、今日は珍しく自分の家で体を休めていた。風呂上がりでちょっぴり湿ったタオルを片手に持っている彼の視線の先は、おそらく就寝しているであろう、ライの部屋。
2人しか暮らしていないにもかかわらず『男子禁制』と言う張り紙がデカデカと張ってある。これは何度か誤ってライの着替えを見てしまったがために張られたモノだ。彼女が来てからおよそ1年と半年、今となっては良い思い出だ。
「ライ……すまねぇ」
ヨッカは自分の不甲斐なさを嘆く。嵐マコトとのあの一件以降、ライとはまともに口を聞けていない。そもそもそう言った時間がなかったのもあるが、最も大きな理由は、今までずっと「春神イナズマが、Dr.Aのかつての部下だった」事を隠していたせいだろう。
ヨッカはきっとショックを受けてしまうだろうと思い、直向きにその事を隠し通そうとしていたが、知られてしまった今は、かえってそれが仇となった。今のライとどう接すればいいわからなくなり、それは知らぬ間に彼の大きな苦悩となっていた。
「……アルファベットさん?」
そんな折、Bパッドに着信。彼が信頼を置く、界放警察の警視、コードネーム「アルファベット」からだ。
「はい、なんすかアルファベットさん」
《九日、嵐マコトの隠れ研究の1つを見つけた》
「ッ……!」
気怠そうに電話に応答するが、その内容で表情は一変して真剣な顔つきになる。
「さ、流石っすね。早く行きましょう、そこにイナズマ先生がいるかもしれねぇんだし」
《……興奮させてしまってすまないが、オレが下調べをした所、そこにはもうガードマンと呼ばれる存在は確認できなかった》
「な、またですか!?」
嵐マコトの隠れ研究所は、ガードマンと呼ばれるカードバトラーが1人ずつ守護している。
だが、アルファベットが折角見つけたそこには既にその存在はいなかったのだと言う。しかも、ヨッカの発言から、これが一度目ではない事が伺えて………
《見つけたのは、奴の研究資料のフェイクだけ、行くだけ無駄だ》
「これで3回目ですよ。あの時の嵐マコトの言葉は、やっぱりオレらを揶揄ってただけなんじゃ」
《それにしては作り込まれた嘘だ。しかもしっかりとフェイクまで用意している。春神イナズマがそこにいると言う言葉に嘘はあっても、隠れ研究所とガードマンの話に嘘はないだろう》
「なら、なんでガードマンがいないんだよ」
《………》
ヨッカの問い掛けに対し、一瞬間を置き、悩んでしまうアルファベット。
だが、今ヨッカが自分の家にいるのもわかっている。確認をさせるなら、今しかないのも事実。聞くしかない。
《九日、今オマエの家に、春神はいるか?》
「ライ?……部屋で寝てると思うけど。ってまさか、ライが!?」
《あぁ、オレの推察だと、春神は、オレ達よりも先に隠れ研究所を見つけ出し、ガードマンを倒して回っている》
「……」
《あの時、嵐マコトに発破を掛けられたのはアイツだ。天才とは言え、まだ13の子供、父親が捕らわれていると聞いて、いても立ってもいられなくなったのだろう》
「ちょ、ちょっと待てよアルファベットさん。まだ断定できないだろそんだけじゃ、あんだけ行くなって忠告したのによ」
《なら、アイツの部屋に入って、確認してみろ。本当にガードマンと戦い続けているのなら、そのタイミングは夜、人目のない深夜しかあり得ない》
「………」
疑われたのは、春神ライ。隠れ研究所には、彼女の父親であるイナズマがいるかもしれないので、真っ先に疑われてもおかしくない人物だが………
「おい、ライ。起きてるならちょっとこっちに来てくれないか?」
返事はない。不安になる。
それでもきっと大丈夫だと謎の自信で壁を張り、ヨッカは恐る恐るライの部屋のドアノブを握った。
「入るぞ……」
ライの部屋に入室するヨッカ。きっとライは部屋にいる。ベッドの上で安らかな表情で寝ているんだと、そう信じて………
「ライ……!?」
だが、アルファベットの悪い予想の方が的中してしまっていた。ベッドの上どころか部屋中どこにもライは存在せず、ただ夜灯が窓越しからそれを哀しく照らし出しているだけ。
ヨッカはこの瞬間、頭から血の気が引いて行くのを感じた。
******
「ふぅ、今までのよりかは、ずっと強かったかな」
一方、ガードマンとのバトルに勝利した春神ライ。
ヨッカらに夜な夜な出歩いている事がバレてしまった事などつゆ知らず、取り敢えず、今日も勝利できた事に安堵する。
「さて、倒れてる場合じゃないですよガードマンさん。本当にエニーズ02なら、私のお父さんの居場所を吐いてもらわないと」
そう告げながら、気を失い、倒れたガードマンのフードに手を出し、無理矢理起き上がらせるライ。
その際、深く身につけていたフードが乱れ、彼の素顔が、ライの目に飛び込んで来た。
「……え」
言葉を詰まらせるライ。
無理もない、不本意で目に焼きついてしまったその顔は………
「確かこの人、ライダー王……レイジ?」
もう廃止されてしまったが、かつての三王制度でライダー王の座に腰を下ろしていた、ライダースピリットの使い手、鈴木レイジその人だったのだ。
これにより、ライは脳内に衝撃が迸ると共に、彼がエニーズ02ではない事、他にまだエニーズ02の候補となるガードマンが存在する事を瞬時に理解して………
******
この広大な界放市のどこかに存在する、嵐マコトの隠れ研究所。
その内の1つ。ガードマンと思わしき男性が、床の上で足を組み、寝そべっていた。いつ敵が襲って来るのかもわからない状況でこの態度、単純に怠惰なだけなのか、自分の実力に相当な自信があるのか、あるいはその両方なのか。
「へい、もしもし」
男のBパッドに着信が入る。彼は己のBパッドに耳を当て、面倒くさそうに応答する。
「あぁ?…ガードマンは残りオレ1人?…他は全滅させられた?…輩にも程があるだろうよ」
男は、自分の見た目の方がよっぽど「輩」足り得る存在だと言う事に気づいていない。
「ゲゲゲ……まぁいい、おもしれぇじゃねぇか。こっちにも来るって言うなら、受けて立ってやるぜ、この最強ガードマン「エニーズ02」様がよぉ」
男が口にしたその名は、春神イナズマを追い求める者達の誰もが探しているモノ。
「さぁ、祭りの始まりだ」
口角を上げ、不気味に笑う男。エニーズ02を探している春神ライは、その内、必ずこの男とも対面しなくてはならなくて………
次回、第51ターン「暗闇のバトル」