バトルスピリッツ 王者の鉄華   作:バナナ 

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第52ターン「覚醒の核、その名はエアリアル」

契約スピリット。

 

それは、自我と意思を持ち、時代ごとに使用者を定めると言われている、カード達の総称。

 

それに「相棒」と認められた者は、その先絶対的な力を手にすると言われている。

 

 

******

 

 

複数のスポットライトで照らされる、暗がりのバトル場。ここはそれを内包する、嵐マコトの隠れ研究所。

 

その守護を依頼されただけの最強ガードマンである青年は、生まれて初めて、背筋が震え上がる程の恐怖を感じていた。

 

 

「……テメェ、その光、何だ」

「………」

 

 

しかし、そう感じるのも無理はない。さっきまで散々虐めて来た少女、それの雰囲気が突然変化し、目尻から顎に掛けて青白い刻印が真っ直ぐに刻まれたのだから。

 

極め付けはそれと同じ色に光るBパッド。どう見ても、どう考えてもただ事ではない。

 

 

「私の目には、既に勝利の未来は見えている」

 

 

さぁ、ラストターンの時間です

 

 

少女、春神ライ。突如目覚めた、内なる真の力を操り、巡って来てくれた己のターンを進めて行く。

 

 

[ターン09]春神ライ・王者

 

 

「ドローステップ時、ネクサス、エデラ砦のLV2効果。ドロー枚数を1枚増やし、その後1枚破棄する」

 

 

ライのフィールドに唯一残ったネクサスカード、エデラ砦。その効果で6枚の手札の質をより向上させる。

 

 

「メインステップ……初陣だ、私の相棒、ガンダム・エアリアルをLV2で召喚!!」

 

 

ー【ガンダム・エアリアル】LV2(2)BP7000

 

 

「ッ……モビルスピリット、しかも黄属性だと!?」

 

 

フィールドに出現するのは、風に包まれた球体。それを振り払い、中より全体的に白いビジュアルのモビルスピリット、春神ライの新たな相棒、エアリアルが登場した。

 

 

「さらに黄のパイロットブレイヴ、スレッタ・マーキュリーを召喚し、エアリアルに直接合体」

 

 

ー【ガンダム・エアリアル+スレッタ・マーキュリー】LV2(2)BP11000

 

 

「くっ……確かに奴の目は見えなくなっているはず、何故だ、何故奴はカードを召喚できる」

「見えてはない。ただわかる。教えてくれる、どこに何があって、どうすれば勝てるのかを」

 

 

その殆どがモビルスピリット専用のブレイヴカード、パイロットブレイヴの一瞬であるスレッタ・マーキュリーを追加で召喚。見た目に変化こそないものの、これによりエアリアルは強力な合体スピリットとなる。

 

 

「アタックステップ、エアリアルでアタック。その効果でカウント+1、デッキ下から1枚ドロー」

 

 

アタックステップに突入するライ。魂鬼、オーガモン、ベルゼブモンと言った3体のスピリット達を従えるエニーズ02へと攻撃を仕掛ける。

 

この瞬間、エアリアルの効果により、カウントは1から2へと増加した。

 

 

「だがよぉ、合体しても所詮はシンボル1つ、BP11000のスピリット。その程度じゃオレの4つのライフを掻っ攫うなんて先ず不可能だ」

「今からそれを可能にさせるんだよ」

「なに!?」

「フラッシュ【契約煌臨】を発揮、対象はアタック中のエアリアルだ」

「契約、煌臨……!?」

 

 

ライはBパッドに1枚のカードを叩きつけ、新たなるカードの使用を宣言。

 

その名も【契約煌臨】………

 

未知なる効果の発揮に、余裕綽々だったエニーズ02は、初めて大きな狼狽えを見せる。

 

 

「遙か未来を駆け抜ける、私の相棒!!……ガンダム・エアリアル・ガンビット、LV2で煌臨!!」

 

 

ー【ガンダム・エアリアル[ガンビット]+スレッタ・マーキュリー】LV2(2)BP22000

 

 

スピリットを新たな姿へと昇華させるのが煌臨の効果。

 

しかし、エアリアルの煌臨にその変化は見られない。ただ、シールドが複数のビット、ユニットとして展開。それらは踊るように宙を舞い、エアリアルの周囲で円を描く。

 

 

「ガンビットの煌臨アタック時効果、LV1と2の相手スピリットを1体ずつデッキ下に戻す」

「!」

「先ずは魂鬼を消す」

 

 

エアリアルがガンビットに指示を出すように腕を伸ばすと、ガンビットはエニーズ02のフィールドへ急行、宙に漂う魂鬼をレーザー光線で浄化、粒子化させデッキ下へと追いやった。

 

 

「追加効果で黄色のシンボルを1つ追加し、ダブルシンボルに。さらにスレッタの効果、エアリアルが相手のスピリットを倒した時、デッキ下から1枚ドローし、トラッシュのソウルコアをリザーブへ」

 

 

一撃で二度のライフを破壊できる、ダブルシンボルとなるエアリアル・ガンビット。さらに合体しているスレッタの効果により、またドローを重ねる。

 

さらに、効果はそれだけではなくて………

 

 

「フラッシュ、エアリアル・ガンビットの【OC】効果……手札にある系統「学園」を持つカード全ては「エアリアル」1体を回復させるマジックカードになる」

「!」

「この効果で手札にある『ミオリネ・レンブラン』をマジックカードとして使用。アタック中のエアリアル・ガンビットを回復」

「手札のカードをマジックカードに変えるだと!?」

 

 

エアリアル・ガンビットが内包していた、さらなる効果は、手札のカードをマジックカードに変更させると言うモノ。

 

これにより自身は回復し、このターン、二度目のアタックが可能となった。

 

 

「チィッ……防げ、オーガモン」

「エアリアル・ガンビットのBPは22000。蹴散らせ」

 

 

不動を極めるエアリアル・ガンビットの代わりに、その武装である複数のガンビットが、修羅の如く、エニーズ02のライフバリアへ突撃。

 

その進行方向をオーガモンが遮るが、凄まじい速度で飛んで来たガンビットの体当たりで吹き飛ばされ、宙を舞った瞬間に複数のレーザー光線がその肉体を貫き、一瞬で爆発四散。

 

 

「エアリアルが相手スピリットを倒した事で、スレッタの効果。デッキ下から1枚ドロー。再度アタック、煌臨元のエアリアルの効果でカウント+1、デッキ下から1枚ドロー」

「どんだけドローすれば気が済みやがる」

 

 

エアリアル・ガンビットの二度目のアタック。エニーズ02のスピリットの中で、そのBPに対抗できるのは、同値のベルゼブモンのみだが、肝心のそれは戦闘に参加できない疲労状態。

 

故に今のエアリアルを止める事はできなくて………

 

 

「フラッシュ、エアリアル・ガンビットの効果により、手札にあるニカ・ナナウラを、エアリアルを回復させるマジックカードとして使用。エアリアル・ガンビットを回復」

「くっ……!!」

 

 

二度目の回復。三度目のアタックを可能とするエアリアル・ガンビット。

 

これより、ブロックできるスピリットを失ったエニーズ02に待ち受けるのは、ただの覆しようのない敗北。

 

 

「アンタにはもうブロックできるスピリットはいない。手札に使えるカードもない。なら宣言は1つだけだろ?」

「ライフだ、ライフで受けてやる……ぐおっ!?」

 

 

〈ライフ4➡︎2〉エニーズ02

 

 

美しく宙を舞う複数のガンビットから繰り出されるレーザー光線が、エニーズ02のライフバリア2つを砕いていき、残り2つまで追い込む。

 

間もなく敗北を迎えるエニーズ02が行う宣言はただ1つ。それと同様に、春神ライが行う宣言も、ただ1つだ。

 

 

「これで最後だ、エアリアル・ガンビットで、ラストアタック」

 

 

散々暴れさせたガンビットらをシールドに変え、己の左腕に装備するエアリアル・ガンビット。今度は自身が最後のライフバリアを砕くため、背部のビームサーベルを右手に構え、動き出す。

 

 

「……ライフで、ぐっがァァァァ!?!」

 

 

〈ライフ2➡︎0〉エニーズ02

 

 

エアリアル・ガンビットの振るったビームサーベルによる一撃が、エニーズ02の最後のライフバリアを紙切れのように斬り裂く。抑えきれないバトルダメージの衝撃が、エニーズ02を彼の抱いた恐怖の感情と共にバトル場の壁へ叩きつけた。

 

これにより、勝者は春神ライだ。視界を奪われながらも、突如目覚めた謎の声の導きにより、見事勝利を収めてみせた。そして、役目を終えたのか、彼女のBパッドから放出されていた青白い光と、目尻から顎に掛けて伸びていたそれと同じ色の刻印が、このタイミングで消滅する。

 

さらに丁度この瞬間、扉が開き、ライを追って来た九日ヨッカとアルファベットが到着する。

 

 

「ライ!!……おいライ、無事……!?」

 

 

やや放心気味だが、バトル場に立っているライを視界に入れ、ほんの僅かな時間安堵するヨッカだったが、次に視界に入って来たエアリアルを見るなり、頭の血の気が下がっていった。

 

ヨッカは、それが何かを知っていたのだ。ライを居候として受け入れる前より、師匠である春神イナズマから聞いていたからである。

 

 

「モビルスピリット………え、エアリアル……!?」

「なに、アレが……」

 

 

ヨッカが思わずそう呟くと、アルファベットが察する。彼もまた直前にヨッカのみが知る秘密、引いてはエアリアルの事、春神ライの事を聞いていたため、全て知っているのだ。

 

 

「おいアンタ。倒れるにはまだ早いぞ」

「………」

 

 

ヨッカ達が到着した事を知りつつも、ライはそれをシカトし、Bパッドの電源を切ると、目が見えるようになったのか、エアリアルのいなくなったフィールドを走り、勢いよく壁際で倒れるエニーズ02の胸ぐらを掴んで持ち上げる。

 

彼女が、敗北した彼に望む事はただ1つ。

 

 

「私のお父さんはどこだ。嵐マコトは、エニーズ02がいる所にいるって言ってた。早く出せよ、いるんだろ、ここに、さっさと解放しろよ、おい!!」

「待てライ落ち着け、そいつもう気を失って……」

 

 

我に帰ったヨッカが慌ててライを止めようとするが、その前に、気を失っているはずのエニーズ02の目が開眼して………

 

 

「ゲゲ、ゲッーゲッゲゲ!!!」

「!?」

 

 

突然笑い出すエニーズ02。その笑い声、笑う表情は狂気を極めており、怒りで感情を満たし、我を忘れていたライを一瞬恐怖させる程だ。

 

 

「キャアッ!?」

 

 

その一瞬の隙を突き、エニーズ02はライの足を払い、彼女を押し倒す。逆に胸ぐらを掴まれたライは、何とかそれを振り払おうとするも、彼の力は強く、反撃の隙もなかった。

 

 

「おいおいおいおい、何者だよテメェは。最高だ、今までにない最高の祭りだったぜなぁ?」

「はぁ!?…なんだよ急に」

「もう一度、もう一度だ、オレとバトルしようぜ、今度は卑怯な手なんざ使わねぇ、本気のデッキで、本気のオレと戦え、オマエの本気は見たんだ、オレの本気を見せないとバランスが悪いよな。なぁ?」

「うっさい、いいからお父さんを出せ!!」

「お父さん?……何の事だ」

「ッ……春神イナズマ、私のお父さんの事よ!!」

「あぁ?……知らねぇな。ここにはオレしかいねぇ」

「!?」

 

 

話の食い違いに気がつくライ。嵐マコトの言葉をそのまま受け取るなら、春神イナズマの事を、この男が知らないはずがない。

 

 

「ライから離れやがれ、この変態野郎!!」

「おっと」

 

 

ヨッカがエニーズ02に蹴り掛かるも、彼はそれを華麗に回避。だが、それによりライは解放され、その肩はヨッカの手に収まった。

 

 

「ヨッカ……さん」

「悪りぃなライ、遅れちまった。助けに来たぜ」

 

 

ヨッカにそう告げられると、なんやかんやで彼を心の底から信頼しているライは、怒りを沈め、心を落ち着かせる。

 

 

「オマエが、エニーズ02か」

 

 

アルファベットがエニーズ02に問う。彼はまたケラケラと笑みを浮かべながら答える。

 

 

「ゲゲゲ……あぁそうさ。オレはエニーズ02、最強のガードマンだ」

「オマエの名前の由来はなんだ」

 

 

アルファベットの2つ目の質問に、エニーズ02は笑うのをやめ、頭の上に疑問符を浮かべる。

 

 

「由来?……んなもん知らねえが、依頼者はこう言ってたぜ、オレらガードマンの最強の称号だとな」

「最強の称号?」

「……やはりな」

 

 

その名は最強の称号であると告げるエニーズ02。

 

ヨッカが緊張感に唾を呑み、アルファベットは彼より得た情報から確信を持つ中、唯一ライだけが疑問を抱える事になる。

 

 

「ちょ、ちょっと待って。じゃあアンタは人造人間じゃないの?」

「あぁ?……人造人間?……何寝ぼけた事言ってんだ、アニメの見過ぎだろ。んな事より、早くバトルしようぜ」

「そんなわけない。絶対ここに人造人間エニーズ02がいて、お父さんが幽閉されてるんだ」

「何の妄言だ。オレはレッキとした人間、ただガードマンとしてここの防衛の依頼を受けていただけだ」

「……依頼?」

 

 

話を合わせると、エニーズ02とは単なる最強の称号。目の前にいる彼は人造人間ではなく、ただの人間。

 

別の誰かから依頼を受け、この隠れ研究所に身を潜めていたのだ。

 

そして、その依頼をした人物の候補は、ただ1人しかいなくて………

 

 

「アッアッア……ブラボーブラボー、最強ガードマンである彼を倒すとは、流石は春神ライちゃん。実にエクセレントだ」

「!」

「嵐マコト!!」

 

 

黒髪のポニーテールに眼鏡。白衣を着用した男性、嵐マコトが、手を叩きながらこの場に居合わせる。

 

 

「依頼主じゃねぇか、今日はヤケに賑やかだな」

「嵐マコト、どう言う事だ、何でお父さんはここに居ないんだ、何でだ!!」

 

 

嵐マコトに怒りを露わにするライ。当然だ。

 

 

「アッアッア……ごめんごめん、君を本気にさせたくてね、くだらない嘘をついてしまった」

「嵐マコト、今度は何を企んでいる」

「アルファベット。君との決着はまた今度で頼むよ、今はただ、ライちゃんに真実を告げたい気分なんだ」

「!!」

 

 

嵐マコトのその言葉に最も強く反応したのは、九日ヨッカ。

 

おそらく今から嵐マコトがライに告げる真実は、彼女を悲しませるモノ、言ってはならない禁句。そう思うと、身体が勝手に動き出す。

 

 

「何を言う気だ、やめろ、嵐マコト!!」

「アッアッア」

 

 

自分に向かって殴り掛かってくる九日ヨッカを視界に入れるなり、指パッチンする嵐マコト。

 

すると不思議な事に、今ある風景が真っ白な空間に一変され、瞬間的に嵐マコトと春神ライ以外の人物はこの場から消え去ってしまった。

 

 

「え、ヨッカさん、アルファベットさん!?」

「驚いたかい。本来僕はあらゆるモノをデータ化する研究をしていてね。このくらい朝飯前なのさ。安心したまえ、あの2人は無事さ、時間が経てば元に戻る」

 

 

言っている意味が余りわからない。口振りからして、以前データ化され、カードに取り込まれた獅堂レオンよりはマシなようだが。

 

ただ、どちらにせよしばらくの間、2人はライを助けようとする事はできないみたいだ。

 

 

「さて、邪魔者は消えた。真実を告げようかライちゃん」

「……真実って、何の真実だよ」

「無論。エニーズ02の事だ」

「それならさっきの奴から聞いた、ただの最強の称号なんでしょ、人造人間とか大そびれた嘘つきやがって」

 

 

ライがエニーズ02を名乗っていた男から得た情報を告げる。彼らの依頼主であった嵐マコトは、その名付け親で間違いないだろう。

 

しかし、事はそれだけでは終わっていなくて………

 

 

「アッアッア。いや、正確には全てが嘘なわけじゃない。エニーズ02と言う人造人間は実在するんだよ」

「!!」

「そうだね、先ずは僕と君のお父さん、イナズマ先生の事を話そうか。僕らが本来、Dr.Aの助手をしていた事は知っているよね」

 

 

嵐マコトは、自身と春神イナズマの事を話す。そう、彼らは昔、あの6年前に『A事変』と呼ばれる世紀の大事件を起こした、悪魔の科学者として名高いDr.Aこと徳川暗利の助手を務めていた。そんな事だけなら、ライでも知っている。

 

 

「初めは生き物の持つ進化の力の研究をしていた。しかし徳川先生、Dr.Aはそれに没頭する余り、次第に狂気に走ってしまってね。ついていけなくなった僕とイナズマ先生は、今から25年前、逃げるように彼の研究所を去った」

「……」

「まぁその間にも色々あったんだけどね。今回は割愛しよう。で、エニーズだ。本来アレは、Dr.Aの研究の賜物。カードやデッキの進化、オーバーエヴォリューションを何度でも繰り返す事ができる人造人間、怪物だ」

「Dr.Aが、エニーズを……」

「そう。これは史実では教えてくれない真実さ」

 

 

エニーズと言う人造人間を造ったのは、誰もが知る悪魔の科学者、Dr.Aだった。

 

その真実を知る者は、おそらく両手の指で数えられる程度しかいないだろう。

 

 

「それが伝えたい真実?……だからなんだよ、私に何の関係が」

「ノンノン。まだ話は終わってないよ、ここからが本題だ」

 

 

嵐マコトは人差し指を軽く振ると、話を続ける。

 

 

「今のは『エニーズ』の話。ここからは『エニーズ02』の話だ。Dr. Aから逃げた僕とイナズマ先生。だけどこのままDr.Aを放っておくと、世界は必ず滅亡の一途を辿る。そう考え、僕達はある作戦を決意した」

「作戦?」

「それが、エニーズ02だ」

「!」

「僕とイナズマ先生は、Dr.Aに対抗するために、エニーズを超える人造人間、エニーズ02を開発する事にしたんだ」

「そんな、お父さんがエニーズ02を……」

 

 

いくら悪魔の科学者に対抗するためとは言え、命を造り出すと言う非人道的な行いを、自分の父親がやっていたと言う事実に、ライは大きなショックを受ける。

 

 

「だけど大変だったよ。エニーズを作成するノウハウこそあれど、進化の力を宿らせる事ができたのは、他でもないDr.Aだけだったし、ましてやそれよりも強い存在を造るなんて、不可能の極みだった」

「………」

「でもね、今からおよそ13年前、たった1体だけ完成したんだ。使用者を必ず勝利に導くと言われている天下無双の力『王者』を宿らせる事でね」

「ッ……王者」

 

 

ライをはじめ、鉄華オーカミなどが持つ謎の力「王者」………

 

嵐マコトの言うエニーズ02には、進化の力の代わりに、その力が備わっているのだと言う。

 

 

「完成したエニーズ02の力は凄まじかった。コレさえあれば、Dr.Aに対抗できる、コレさえあれば、僕が代わりに世界を征服できる。そう思った」

「ッ……!!」

 

 

その笑みに、背筋が凍りついた。基本的に仏のような表情を見せ、表向きは善人に見える嵐マコト。その内に秘めていた闇を、ライは垣間見た。

 

 

「だが、それを察知したイナズマ先生が、まだ幼体だったエニーズ02を連れ去ってしまった。何故、何故だ。何故私達の計画を台無しにしたのだ春神イナズマ!!」

 

 

話しながら、その闇は肥大化していく。吐き続ける言葉は、元同僚だった春神イナズマへの恨みばかり。

 

それに対して声を荒げるのは、その娘である春神ライだ。

 

 

「そりゃそうだろ!!……折角悪に対抗するために造ったのに、利用されたら嫌に決まってる」

「………」

「私にはわかる。お父さんはきっと、エニーズ02を造りたくなかったんだ。コレじゃあDr.Aと同じだって、気づいてたんだ」

 

 

きっとそうなんだ。そう思っていたんだ。そう考えてくれていたんだ。

 

ライの心の中はその気持ちでいっぱいだった。

 

自分の信じる父親、春神イナズマは、優しい人。本当はエニーズ02なんて怪物を造る事を嫌悪していたが、Dr.Aに対抗するために仕方なくそうしたのだと、信じていたかったのだ。

 

 

「……なんてノットエクセレントな言葉だ。似てしまったんだね、あの愚か者に」

「私のお父さんは愚か者なんかじゃない、愚か者はアンタだ、嵐マコト!!」

「愚か者さ。そしてその愚か者に育てられた君も愚かだ。君は自分でも気づかない内に、自分の存在を否定しているんだよ」

「……!?」

 

 

最初は、言っている意味がわからなかった。

 

だが、ライは「王者」「13年前」………

 

嵐マコトの話の中で出て来たそう言ったワードから、意味を瞬時に理解する。

 

そうだ、わかってしまったのだ。嵐マコトが何を自分に伝えようとしていたのか、何故自分にだけ話そうとしていたのかを。

 

それは知りたくなかった真実。王者の力を内に内包する、13歳の人間は、たった1人しかいない。

 

 

「頭の良い君ならもう気づいただろう」

 

 

 

 

 

君の本当の名前はエニーズ02。

 

Dr.Aを倒すためだけに造られた……

 

王者の力を持つ、怪物だ。

 

 

 

 

理不尽に突きつけられた残酷な真実に、ライは、いや、エニーズ02は言葉を失った。

 

 

 




次回、第53ターン「本当の黒幕」


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