遂に巨悪「徳川フウ」が、その悪しき本性を見せる。
彼女は、かつて世界を混沌へ導いた、伝説の悪魔の科学者「Dr.A」の孫であり、その元助手である嵐マコトに手を貸していた。
界放市ジークフリード区が、またしても風雲急を告げるが、今回は少しだけ時を遡り、とある休日のお話。
******
暗闇の世界で輝く、無数に広がる星々。その星々の1つ1つが、バトルスピリッツで繋がっている全ての世界。
本来であれば、誰であっても行き来することはできない。たった1人を除いては………
「ふぁ〜〜あ。こうやって1人で世界を渡るってのも退屈ね」
この左目に眼帯を付けた黒髪ロングの女性。
名を「ラ・ヴィ」…………
彼女は自身で開発した、現代で言う所のコピー機程度のサイズの装置に跨り、今日も様々なバトルスピリッツの世界を渡る。
「さて、次の行き先はっと……」
彼女がそう呟き、世界を行き来する装置に手を伸ばした時だった。
その装置から、危険を示すようなアラームが鳴り響いたのは。
「は?……え、何、待って、エンスト!?……嘘でしょ燃料不足!?!」
唯一の移動手段である装置が燃料不足でエンスト。このままでは後5分もしない内に完全に機能を停止してしまう事だろう。
「あぁもう仕方ない、一番近い世界に不時着するしかないわ。頼むから平和な世界でありなさいよね、もう悪役は勘弁なんだから!!」
彼女はそう叫ぶと、行き先を急遽変更、エンストした装置と共に、一番近い世界へと渡った。
その世界とは、我らが鉄華オーカミがいる、あの世界だ。
******
「………」
ラ・ヴィが目を開けると、そこは何の変哲もない、普通の街とも呼べる場所だった。
周囲には住宅街やマンション、スーパーなどの店舗やレストランが立ち並び、朝方なのか、広場から鳩の呑気な鳴き声も聴こえて来る。
「平和だ、凄く呆れ返る程に。なんか逆に腹立って来たわ」
もうちょっとまともではない、野蛮な世界をイメージしていたラ・ヴィ。呆れ返るほどまともな世界に拍子抜けのようだ。
また、コピー機程度のサイズの装置と共にここへ来たため、周囲の人々からの視線も熱い。
「目立ってるわね、とんでもないくらいに。うん、一旦歩こう」
ラ・ヴィは重たそうな装置を片手で軽く持ち上げると、そのまま街中を歩き始める。
そして、それはそれでまた視線を集めた。
「取り敢えず装置のエネルギーを溜めないとね。こんな平和ボケの塊みたいな世界に、強いカードバトラーなんているか怪しいけど………ん?」
今、ラ・ヴィの目の前に聳え立つのは、「カードショップ・アポローン」…………
カードショップがある、と言う事は当然この世界にもやはりバトルスピリッツがある。さらには強いカードバトラーもそこにいるかもしれない。
「しめた、ここなら強いカードバトラーがいるかもしれない。さっきはめちゃくちゃ運が悪かったから、その帳尻合わせが来たわね、やはり運は平等院鳳凰堂」
意味のわからない言葉を吐きつつ、彼女は目の前のカードショップ、アポローンへと入って行った。
「貧相な内装ね。アタシが知ってるカドショより三分の一は狭そう、こんな所に本当に強いカードバトラーなんているのかしら」
入るなりその内装にケチをつける。
一応この店はこう見えてこの街を代表するカードショップの一角なのだが、余程己の知っているショップが凄かったのだろう。
「あの」
「ん?」
「今日はまだ開店作業中だから、悪いけど販売とか転売とかは後にしてくれない、くれません?」
おぼつかない敬語でラ・ヴィに声を掛けたのは、無造作に伸びた赤い髪の少年。骨折でもしているのか、三角巾で右腕を固定している。
ラ・ヴィが抱いた彼の第一印象は「何このガキ、態度腹立つ」だ。
「誰が転売ヤーよクソガキ。そもそもアタシは客じゃねっつーの」
「アレ、そうなの」
「強いカードバトラーよ。兎に角強いカードバトラーとバトルさせなさい、この装置のエネルギーを溜めるために」
「装置、その無駄にデカい奴の事?」
「無駄じゃねぇっつーの!!」
言い方は少々チンピラ臭いし、イマイチその理由もパッとは理解できないが、赤い髪の少年は取り敢えず彼女が強いカードバトラーを欲しているのを理解する。
「あぁ、じゃあオレとやる?」
「はぁ!?……アンタみたいなクソガキの坊やに、アタシの相手が務まるわけ」
「そう言うのは、見た目じゃ判断できないもんだろ」
「……」
ヤケに自信満々な少年。
その透き通った真っ直ぐな眼は、言葉に説得力を乗せ、ラ・ヴィをその気にさせる。
「まぁいいか。少しでも装置のエネルギーの足しになれば、それはそれで構わないし。いいじゃないかクソガキの坊や、かかって来なさいよ」
「よし、じゃあウチのバトル場でバトルしよう」
「おうよ………待って、バトル場って何?」
その気になったのも束の間。今度は自分のわからない名称に疑問符を抱く。
「何って、バトル場はバトル場だろ。そこでBパッドを使ってバトルするんだよ」
「び、ピーパッドってなんだ、異世界人に優しく説明しなさいよ」
「BパッドはBパッドだろ、まさかおばさん知らないのか」
「誰がおばさんよ、このクソガキ!!」
******
それから少しだけ時が経過した。
赤い髪の少年は、ラ・ヴィに軽くBパッドの説明をし、店の貸し出し用のBパッドを与え、ようやくバトル場にて事を構えていた。
「そう言えば名前言ってなかったね、オレは鉄華オーカミ。おばさんは?」
「だからおばさんじゃねえって!!……この美貌を見てお姉さんだとわからんのか。後、アタシはラ・ヴィだよ」
「……なんか、変な名前だな」
「アンタに言われたかねぇよ、オーカミって!!」
自己紹介している内に、ラ・ヴィは自身の左腕に借りたBパッドをセットし、展開。そこに己のデッキを装填し、バトルの準備を進める。
「そういやアンタ、右腕骨折してるみたいだけど、そんな状態でバトルなんてできるのかい?」
「あぁコレね、問題ないよ。始まったら動くから」
「は?」
今までで1番言っている意味がわからなかった。
言葉の通りなら、バトルが始まれば、その怪我が治る事になる。そんな医術、世界中探索しても見つかるわけない。
「行くぞ、バトル開始だ」
オーカミがそう告げると、左腕に元々装着していたBパッドが展開、さらに右腕に血が通い、自由になる。
三角巾を外し、オーカミは予めBパッドに装填していた己のデッキから4枚のカードを、その右手でドローした。
「うん、良い調子だ」
「え………な、何なのアンタ、ホントに右腕が動くようになって、今までのは演技?」
「オレ、バトルする時だけ、動かない右腕と、見えない右目が治るんだよね」
「ッ……盲目でもあるのか、前言撤回、物騒過ぎだろ、この世界」
ある事件から右目と右腕が見えず動かずとなってしまったオーカミ。今ではどう言うわけか、バトルする時のみ、再び自由に見え、動かす事ができるようになる。
「ふ、ふざけるな。ふざけるなよ、盲目キャラは左目に眼帯つけてるアタシだけで十分だろうが!!」
「じゃあ対戦よろしく、ラッキー」
「アタシはラ・ヴィだ!!」
……ゲートオープン、界放!!
カードショップ、アポローンにて、鉄華オーカミと、異世界からの来訪者ラ・ヴィによるバトルスピリッツが開始される。
先攻はラ・ヴィだ。自身の横に置いてある、各世界を行き来する装置のため、ターンを進めていく。
[ターン01]ラ・ヴィ
「メインステップ、初めの始めの第一歩、アタシはウルフ・デッドマンを召喚だよ」
ー【ウルフ・デッドマン】LV1(1)BP2000
「紫のスピリットか」
ガンマンのような衣装を纏った異形の怪人、ウルフ・デッドマンがラ・ヴィのフィールドへと呼び出される。
「召喚時効果、デッキから4枚オープンして、その中の対象カードを手札に加える。アタシはこの効果で『悪の女王アギレラ』を手札へ」
そのスピリットが持つ効果は、多くの3コストスピリットが保有しているサーチ効果。ラ・ヴィはその効果でお目当てのカードを手札へと加えられた様子。
「ターンエンド。さぁ、アンタのターンだよ」
手札:5
場:【ウルフ・デッドマン】LV1
バースト:【無】
1ターン目から幸先の良いスタートを展開したラ・ヴィ。
一度そのターンをエンドとし、次のオーカミのターンを伺う。
[ターン02]鉄華オーカミ
「メインステップ、オレはネクサスだ。オルガ・イツカ、クーデリア&アトラ」
ー【オルガ・イツカ】LV1
ー【クーデリア&アトラ】LV1
「配置時の神託によって、デッキのカードをトラッシュして、コアを追加」
オーカミが配置したのは、鉄華団の二大創界神「オルガ・イツカ」「クーデリア&アトラ」
神託の効果により、それぞれ3つずつコアが追加された。
「アタックステップは何もしない、ターンエンド。てか、バトルするだけで、その装置とか言うヤツ、エネルギー溜まるの?」
手札:3
場:【オルガ・イツカ】LV2(3)
【クーデリア&アトラ】LV2(3)
バースト:【無】
「そりゃ溜まるさ。アンタが強ければね」
ネクサスで足場を固めたオーカミのターンが終わり、再びラ・ヴィへとターンが移り変わる。
[ターン03]ラ・ヴィ
「メインステップ。先ずは前のターンに加えた悪の女王アギレラを配置だよ、2枚ね」
「ッ……同じ創界神が2枚」
ー【悪の女王アギレラ】LV1
ー【悪の女王アギレラ】LV1
「1枚目は神託を使える。今回はフルチャージ、コアを3つ追加」
鉄華団のオルガやクーデリア&アトラなどと同様、フィールドには何も出現しないが、ラ・ヴィのデッキで最も重要な創界神「悪の女王アギレラ」が配置される。
「さらに手札にある、このクイーンビー・デッドマン フェーズ3を召喚する時、アギレラのコアを3つまでボイドに置く事で、送った1つにつき、コストを−1する。アタシはアギレラから3つのコアをボイドに送り、軽減と合わせて0コストでコレを召喚するよ」
ー【クイーンビー・デッドマン フェーズ3】LV1(1)BP5000
「6コストのスピリットをノーコストで召喚……?」
「どうだい、坊やにはあまり聞き馴染みのない言葉だろう。召喚時効果でデッキから2枚ドローするよ」
巫女のような白服を纏う、異形の怪人、クイーンビー・デッドマンがこの場に登場する。
「2枚のアギレラに神託し、アタックステップに入ろうか。アタシは、2体のデッドマンでアタック」
先にアタックステップでアタックを仕掛けて来たのはラ・ヴィだった。
召喚された2体の怪人が、その命令を聞くなり、オーカミの元まで走り行く。
「2つともライフで受ける」
〈ライフ5➡︎4➡︎3〉鉄華オーカミ
ウルフ・デッドマンのライフルから放たれるエネルギー弾と、クイーンビー・デッドマンの蜂の針のような鋭い爪による刺突が、オーカミのライフバリアを一気に2つ破壊する。
「ターンエンド。どうしたんだい坊や、さっきから口ばっかりじゃないか、この程度じゃ装置のエネルギーは溜まんないよ」
手札:5
場:【クイーンビー・デッドマン フェーズ3】LV1
【ウルフ・デッドマン】LV1
【悪の女王アギレラ】LV1(1)
【悪の女王アギレラ】LV1(1)
バースト:【無】
「なんか、テレビの悪役みたいだ」
「もう悪役はやめてるっつーの!!」
遂に本格的に動き始めた2人のバトル。次はオーカミの鉄華団の逆襲だ。
[ターン04]鉄華オーカミ
「メインステップ、ランドマン・ロディをLV1で召喚。オルガとクーデリア&アトラに神託」
ー【ランドマン・ロディ】LV1(1)BP1000
オーカミの場に、濁った白と橙色を基調とした、丸っこい小型モビルスピリット、ランドマン・ロディが召喚される。
さらに、オーカミはここからだと言わんばかりに、更なるカードを手札から引き抜き、Bパッドへと叩きつけて。
「天空斬り裂け、未来を照らせ!!……ガンダム・バルバトスルプス!!……LV3で召喚!!」
ー【ガンダム・バルバトスルプス】LV3(5)BP13000
上空より、空を豪快に斬り裂きながら地上へと降り立ったのは、鉄華団最強のモビルスピリットにして、オーカミの相棒バルバトス。
その進化系統の一種、ガンダム・バルバトスルプス。
「オルガとクーデリア&アトラに神託」
「それがアンタのエースかい。悪役臭い見た目だねぇ」
「スピリットは見た目じゃないだろ?……アタックステップの開始時、オルガ・イツカの【神技】を発揮」
「!」
「コアを4つボイドに置き、トラッシュにある鉄華団をノーコスト召喚。来い、パイロットブレイヴ三日月・オーガス。バルバトスルプスに直接合体」
ー【ガンダム・バルバトスルプス+三日月・オーガス】LV3(5)BP19000
オルガの【神技】の効果により、トラッシュよりパイロットブレイヴ「三日月・オーガス」が蘇生。
見た目は変わらないが、ルプスはより強力な合体スピリットとなる。
「アタックステップ続行、ルプスでアタック、その効果でデッキ上から2枚のカードを破棄」
オーカミのデッキから破棄されたカードは「ランドマン・ロディ」と「ガンダム・フラウロス」………
いずれも鉄華団のカードだ。
「この効果で破棄した鉄華団カード1枚につき、コア3個以下のスピリット1体を破壊する。2体とも破壊だ」
背部のスラスターで飛行するバルバトスルプス。ウルフ・デッドマンとクイーンビー・デッドマンの2体に接近し、弧を描くように、バスターソード状のメイス、ソードメイスを振るう。
強烈な一撃を浴びた2体はたちまち爆散。その爆炎と爆煙の中、バルバトスルプスは次の狙いであるラ・ヴィのライフバリアへ向け、緑の眼光を輝かせる。
「鉄華団の効果でデッキが破棄された事により、クーデリア&アトラの【神域】の効果、トラッシュにある紫1色のカードをデッキ下に戻して1枚ドロー」
オーカミはトラッシュにある要らないカードをデッキの1番下へと戻し、それをドローへと繋げる。
クーデリア&アトラの効果だ。これでより手札とトラッシュの質が向上して行く。
「三日月の【合体中】効果、リザーブのコア2つをトラッシュへ送る」
オマケにリザーブに残っていたコアが、全てトラッシュへと弾き出される。
コレに加えて、迫り来るダブルシンボルの圧は相当なモノだが、この程度のピンチなど慣れているのか、ラ・ヴィは未だ涼しい表情を見せている。
「そのアタックはライフで受けてあげようじゃないか」
〈ライフ5➡︎3〉ラ・ヴィ
ルプスはソードメイスを縦一線に振い、ラ・ヴィのライフバリアを2つ破壊する。
ガラス細工のようにそれが砕け散って行く中、彼女はこのタイミングで使えるカードを手札から引き抜き、使用する。
「ライフが減った事により、手札から絶甲氷盾をノーコストで使用」
「!」
「残念だけど、アンタのアタックステップは強制終了だよ」
最も汎用性の高い白の防御マジック「絶甲氷盾〈R〉」………
その効果により、オーカミのアタックステップは強制的に終わりを迎える事となる。
「ターンエンドだ」
手札:3
場:【ガンダム・バルバトスルプス+三日月・オーガス】LV3
【ランドマン・ロディ】LV1
【オルガ・イツカ】LV1(1)
【クーデリア&アトラ】LV2(5)
バースト:【無】
「成る程、言うだけの事はあるようだね。だが、数々のヒーローを駆逐して来た、アタシの敵じゃないよ」
オーカミの実力をある程度認めるも、次のターンをラストターンにするべく、ラ・ヴィが巡って来た己のターンを進めて行った。
[ターン05]ラ・ヴィ
「メインステップ、悪の女王アギレラからコアを2つボイドに送り、4コストでクイーンビー・デッドマンを召喚」
「2体目……」
ー【クイーンビー・デッドマン フェーズ3】LV2(3S)BP8000
「召喚時で2枚ドロー。さらに対象スピリットの召喚により、またまたアギレラにコアが1つずつ追加されるよ」
2体目となるクイーンビー・デッドマンが参上。
その効果により、手札を潤すばかりか、コストに使ったコアさえ創界神に帰って来る。
「これと同じ事をもう一度行い、アタシは3体目のクイーンビー・デッドマンを召喚するよ」
「!!」
ー【クイーンビー・デッドマン フェーズ3】LV1(2)BP5000
「召喚時効果で2枚ドローと、アギレラに神託」
フィールドに3体目となるクイーンビー・デッドマンが召喚される。
その召喚時のドロー効果により、ラ・ヴィの手札は遂に7枚目へと突入。
「さぁお待ちかねのアタックステップだよ。LV2のクイーンビー・デッドマンでアタック」
強力なクイーンビー・デッドマン2体を並べ、手札を大きく増やしたラ・ヴィ。
今度はアタックステップへと移行し、LV2のクイーンビー・デッドマンでアタックを仕掛ける。
「その効果で、スピリット2体からコアを2個ずつリザーブに送る」
「へぇ」
「ランドマン・ロディとルプスからコアを奪い、ランドマン・ロディは消滅」
クイーンビー・デッドマンが、掌をオーカミのフィールドへ翳すと、地底より闇のエネルギーが噴き上がり、ルプスとランドマン・ロディを襲う。
ルプスはLV3から2へとダウンした程度で済むも、ランドマン・ロディは耐え切れず、塵芥となりこの場から消滅して行った。
「さらにここでフラッシュタイミング【煌臨】!!……対象はアタックしていないクイーンビー・デッドマン」
「ッ……今度は煌臨か」
「これによりアタシのデッキは更なる進化を遂げる。邪神メガロゾーア・第2形態!!」
ー【邪神メガロゾーア(第2形態)】LV2(2)BP14000
足元より湧いて出て来た闇の瘴気が、アタックしていないクイーンビー・デッドマンを取り込んで行く。
闇の瘴気は徐々に形を形成していき、モビルスピリットであるルプスさえも凌ぐ程の巨大な怪物へと変貌する。
その名は「邪神メガロゾーア」………
悪役……を演じられて来た、ラ・ヴィの切り札である。
「煌臨アタック時効果、ルプスのコア2つをトラッシュへ、よってLV1へダウン」
タコのような触手を伸ばし、ルプスを縛り上げるメガロゾーア。
ルプスは背部のスラスターを全力で稼働させ、なんとかそこから脱出するも、その力の大半を奪われてしまった。
「その後、トラッシュからコスト8以下の仇敵スピリットをノーコスト召喚」
「なに、そんな効果まであるのか」
「クソガキの坊やに教えてあげるわ、悪役わね、正義がそこにある限り不死身なのよ。トラッシュにある最初のクイーンビー・デッドマンを召喚!!」
ー【クイーンビー・デッドマン フェーズ3】LV1(1)BP5000
メガロゾーアはルプスから奪った力、エネルギーを使い、前のターンに破壊された1体目のクイーンビー・デッドマンを蘇生。
ラ・ヴィのフィールドにはメガロゾーアと2体のクイーンビー・デッドマン、合計3体の強力な仇敵スピリットが並ぶ。
「召喚時で2枚ドロー。これでアタシの手札は8枚!!」
自慢するように、ラ・ヴィは自分の手札をオーカミに見せつける。
「良い加減、そのロボットには消えて貰わないとね。アギレラの【神技】の効果、手札を1枚破棄する事で、コア2個以下のスピリット、即ちルプスを破壊!!」
「くっ……」
天空から巨大な針のようなモノがルプスに突き刺さる。
これまで二度もラ・ヴィのカード効果から耐え抜いて来たルプスだったが、流石にコレには撃沈。大爆発を起こしてしまう。
「クイーンビー・デッドマンのアタックは継続中よ」
「……そのアタックはライフで受ける」
〈ライフ3➡︎2〉鉄華オーカミ
クイーンビー・デッドマンの針のような鋭い爪が、オーカミのライフバリアへと突き刺さり、それを破壊。
彼の残りライフは2となり、追い込まれる。残りのスピリットで総攻撃を仕掛けられて仕舞えばひとたまりもないが………
その程度でやられるオーカミではない。
「ライフが減った事により、オレもマジック、絶甲氷盾だ」
「うん?」
「このアタックでアンタのアタックステップは終わる」
オーカミも同じく「絶甲氷盾〈R〉」で耐え抜く。
ラ・ヴィのアタックステップは強制的に終了となり、エンドステップへと移行する。
「その少ない手札で絶甲握ってたのかい、主役みたいな引きするねアンタ。でももうお終いさ、アタシの仇敵軍団が、次のターンで完全に征服する。ターンエンド」
手札:7
場:【邪神メガロゾーア(第2形態)】LV2
【クイーンビー・デッドマン フェーズ3】LV1
【クイーンビー・デッドマン フェーズ3】LV1
【悪の女王アギレラ】LV1(1)
【悪の女王アギレラ】LV1(3)
バースト:【無】
「……面白いバトルするんだな、ミッフィ」
「ラ・ヴィだっつってんだろ。卯年だからって何言ってもいいってわけじゃないぞ!!」
「そう吠えるなよ。今度はオレの番だ、見せてやる、鉄華団の、勝利の道をな……!!」
ここまでの試合展開で、お互いの実力を認め合うようになった2人。
バトルは最終局面。オーカミの第6ターン目へと移って行く。
[ターン06]鉄華オーカミ
「メインステップ。大地を揺らせ、未来へ導け、ガンダム・バルバトス第4形態、LV3で召喚」
ー【ガンダム・バルバトス[第4形態]】LV3(5)BP12000
上空より飛来して来たのは、白き装甲を見に纏う、鉄華オーカミの最初のエースカード、バルバトス第4形態。
「さらに手札から【煌臨】を発揮、対象は、今召喚したバルバトス第4形態」
「メインステップ中に煌臨!?」
「あぁ、コイツは、自分のターン中なら、いつでも煌臨できる」
オーカミは【煌臨】を発揮した1枚のカードを、バルバトス第4形態のカードの上へと叩きつける。
それこそ、そのカードこそ。
最強の鉄華団スピリットにして、数々の変化と進化を繰り返して来た、バルバトスの最終形態。
「天地を砕け、未来へ響け!!……ガンダム・バルバトスルプスレクス!!……LV3で煌臨」
バルバトス第4形態に様々な装甲やパーツが装備装着されて行く。
その過程の中、腕部はより巨大化し、頭部の黄色い角は4つに分かれ、王者の王冠を彷彿とさせるモノに変貌する。
こうして新たに現れたのは「ガンダム・バルバトスルプスレクス」………
ー【ガンダム・バルバトスルプスレクス】LV3(5)BP16000
ルプスレクスは、身の丈ほどはある武器、超大型メイスを地に叩きつけ、己の存在をこのフィールド全体に知らしめる。
その風貌、風格はまさしく、鉄華団の王。バルバトスの最終形態。
「三日月をルプスレクスに合体」
ー【ガンダム・バルバトスルプスレクス+三日月・オーガス】LV3(5)BP22000
破壊されずに生き残った三日月の新たな合体先としてルプスレクスを選択。より強力な合体スピリットへと変貌する。
こうなってしまっては、もう誰も手がつけられない。
「アタックステップ。バルバトスルプスレクスでアタック、そのLV1からの効果を発揮」
「!」
「デッキ上から2枚を破棄、その中に鉄華団カードがあれば、シンボル1つを追加」
「なに!?」
オーカミのデッキはほとんどが鉄華団。当然トラッシュにそれが落ち、ルプスレクスのシンボルが追加。三日月と合わせてトリプルシンボルとなる。
「鉄華団の効果でデッキが破棄された事により、クーデリア&アトラの【神域】が誘発。トラッシュのカード1枚をデッキ下に戻して1枚ドロー」
「トリプルシンボルのアタックはヤバい。だが、ブロックして仕舞えばどうとでも……」
「ブロックなんて、させると思うか?」
「ッ……!!」
「ルプスレクスはLV2以上で【合体中】、さらにオレのトラッシュにカードが10枚以上ないと使えない効果がある。そして今、その全ての条件を満たした」
このタイミング、オーカミは条件に厳しい指定がある、ルプスレクスのもう1つの効果を発揮させる。
「行くぞバルバトスルプスレクス!!……効果により、このターンの間、相手のスピリットとネクサス全てのLVコストを+1する」
「なッ……全てのLVコストを!?」
「よってコアが1個ずつしかない、クイーンビー・デッドマン2体は消滅」
ルプスレクスの背部に備わったテイルブレードと呼ばれる鉄の尾。
それが悪魔の嘲笑の如く音を上げながら、2体のクイーンビー・デッドマンへと伸びて行き、それらを串刺しにする。
2体は呆気なく力尽き、やがて爆散へと追い込まれた。さらにテイルブレードは、邪神メガロゾーアへと伸びていき、その触手を1つ残らず切り裂いた。
「最後に三日月の効果。メガロゾーアのLVコストを+1にする。ルプスレクスの効果と合わせて、消滅させる」
触手が無くなった隙を狙い、ルプスレクスが超大型メイスを構え、メガロゾーアの懐へと飛び込んで来た。
体格差などものともせず、超大型メイスを上から叩きつけ、それを爆散させる。
「追加効果でリザーブのコア1つをトラッシュへ。これでルプスレクスのアタックを邪魔する奴は誰もいない」
「アタシの仇敵軍団が全滅」
ふとフィールドを見渡して見れば、さっきまで団欒としていた場が、今では敵陣の修羅のみ。
「い、いやまだだ。このターンさえ凌げばまだ勝ちの目はある」
気持ちを切り替え、このターンを兎に角耐え凌ぐ事のみを考えるラ・ヴィ。
その答えとなる1枚のカードを、手札からBパッドへ叩きつける。
「フラッシュマジック、氷刃血解」
「!」
「このバトルの間、私のライフは減らない。どうだ、このターンはこれで終わりだ。生き残りさえすれば、仇敵軍団は何度でも蘇る」
一度のバトルのみ。ライフダメージを受けなくする白のマジックカード「氷刃血解」………
バルバトスの最終形態であるルプスレクスと言えども、これの影響下ではライフを減らす事はできないが。
それは飽くまで一度のバトルのみであって………
「フラッシュ、クーデリア&アトラの【神技】」
「!」
「トラッシュのカード1枚をデッキ下に戻し、ルプスレクスを回復!!」
「そ、そんな効果まで使えるのか」
「これで氷刃血解を超えて、トリプルシンボルを叩き込める」
超大型メイスを横一線に振るうルプスレクス。それは氷刃血解が発生させた半透明のバリアで防がれるも、二度の攻撃権利を得ているため、もう一度、今度は縦にそれを振るう。
それは直撃し、ラ・ヴィのライフバリアに亀裂が生じて行く。
「効果発揮、シンボルを1つ追加。クーデリア&アトラの効果でドロー………これで最後だ、叩き込め、ルプスレクス!!」
「……負けか。こんな坊やに負けるなんて、アタシもまだまだだねぇ」
〈ライフ3➡︎0〉ラ・ヴィ
最後は勢いのまま、豪快に残った3枚のライフバリア全てを砕く。
これにより、勝者は鉄華オーカミだ。バルバトスルプスレクスで、見事紫ミラーを制して見せた。
「……オレの、勝ちだ」
オーカミが拳を天に突き上げると、バルバトスルプスレクスも、それに呼応するかのように、天を仰いだ。
******
「エネルギーどう、溜まった?」
激しいバトルが終わった直後。アポローンのバトル場にて、オーカミがラ・ヴィに訊いた。
バトルが終わったためか、右目は再び盲目となり、右腕はまた動かなくなり、三角巾で固定している。
「そうだった、それのためにバトルしてたんだった。どれどれエネルギーは………」
大事な事を忘れてしまう程に、バトルに奮闘していたラ・ヴィ。
ずっと横に置いていた装置へと顔を覗かせるが、その装置から、途端にヤカンでも沸騰したのかと錯覚してしまう程の熱を帯びた甲高い音が流れ出して………
「え、何。充電5、500%!?!……や、ヤバい、逃げろクソガキ!!」
「え、なん」
オーカミが「なんで」と言い切る前に、装置は大爆発。
2人は無事ではあったが、頭がチリチリのクルクルになる。それと同じくらい、装置も見るに耐えない姿と成り果てていた。
「………一度のバトルで500%充電させるって、アンタマジ何者なのよ。つーか、どうしてくれるんだい、折角苦労して造った装置が壊れたじゃないか!!……直せ、弁償しろ!!」
「え、そう言われてもな………あ」
チリチリのクルクルになった髪を触りながら、オーカミは閃く。
「機械の事はあんまり詳しくないんだけど、それを直せる人、いるかも」
そう。オーカミは自分の身内の中で唯一、機械弄りが得意な人物の存在を思い出したのだ。
******
ガラクタが散らばる暗がりの部屋。無数に広がる失敗作の数々。
ここは、鉄華オーカミの住まうマンションの部屋のお隣さん「天下メメ」の部屋だ。
忘れてしまった貴方は『第10ターン「守護神グシオンリベイク」』を読んでみよう。
「少年からこのスーパー美少女マッドサイエンティスト天下メメの所に来るとは珍しいなぁ、何かまた直して欲しいのかな?」
「あぁ、うん。この人の何だけど、これを直して欲しいんだよね」
オーカミは20歳前後程度、美人だが、どこか異端さを感じさせるグルグル目の女性、天下メメに、ボロボロになった装置を見せる。
「おぉ〜これはこれは、また大層年季の入ったコピー機だね」
「コピー機じゃなぁい!!……世界を渡る装置だよ」
メメにコピー機と間違えられると、ラ・ヴィが思わずツッコミを入れる。
「世界を渡る?……へぇ、タイムマシンは造った事あるけど、平行世界に行くマシンは造った事ないんですよね。興味深い」
「今なんかサラっととんでもない事言わなかったかい?」
「この人なら直せそうでしょ?」
自分にそう告げて来るオーカミに、ラ・ヴィは「いやいやいや」と、否定の意味を込めて手を振る。
「あの装置は私の血と汗と努力の結晶。どこの馬の骨とも知らないジャリガールがそう簡単に直せるわけ」
「直りました〜〜」
「えぇぇぇぇ!?」
知らぬ間に溶接メガネを掛けたメメが装置を完璧に修理していた。しかも眩しい程ピカピカになるまで。
「い、いったいこの一瞬でどうやって治したって言うんだい。つか本当に直ってんの?」
「直ってますよ、過剰充電によってイカれてたバッテリーは提灯アンコウの頭部で代用してます」
「何してくれてんだァァァ!!!……ちゃんと直せこの天然女!!」
「え〜ちゃんと直ってますよ、ちょっとイジってみてください」
「………」
な訳ないだろと思いつつも、ラ・ヴィは渋々装置へと手を伸ばす。
するとどういう事か、行き先の指定やエンジンの残量表示など、これまでなかった新しい機能が沢山付け足されており、格段に使いやすくなっていた。
「え、ウソ。使いやす」
「でしょ〜〜」
誠に信じ難いが、本当に直っていたのだ。
「因みに壊れた銅線には魚の背骨を代用してますよ」
「やっぱちゃんと直してないだろ!!」
さっきの提灯アンコウと言い、ちょいちょい中身がイカれてるようだ。
「……ツッコむの疲れた。もういい、この場から立ち去れるなら何でもいいわ」
「帰るの?」
装置に手を置き、この世界を去ろうとするラ・ヴィに、オーカミが訊いた。
「帰るって言うか、当てのない旅よ」
「そっか」
「え、何、どうしたんだい坊や。ふふ、まさか寂しいとか言うんじゃないでしょうね……一緒に来るかい?」
ラ・ヴィは最後にオーカミを揶揄うようにそう告げるが………
「え、ヤダ」
「このクソガキ、二度と来るかこんな世界!!」
真顔で言い返されると、キレ気味に装置のスイッチを押し、その装置と共に、この場、この世界から去って行った。
この場に残されたのはオーカミとメメのみ。
「グル目の人、よくあんなの直せるよね」
「なんか賑やかな人だったね〜〜また来るかな?」
「さっき二度と来ないって言ってたけど」
「今度会ったら私特製、タランチュラカレーをご馳走してあげようそうしよう♪」
「それは、多分やめた方がいいかも」
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オーカミらの世界を離れたラ・ヴィは、装置を使い、次元間と呼ばれる、世界間を繋ぐ空間を通っていた。
「全く、酷い目にあったわ。アレね、あの世界はギャグに全振りしてるタイプの世界ね。登場人物が全員バカだもの」
愚痴を愚痴愚痴呟くラ・ヴィ。話せば二言目にはツッコミをしないといけなかったので、辛かったのだろう。
そんなこんなで、間もなく次元間を出る。ここを出て仕舞えば、また次の世界へ彼女は向かう事になる。
「さぁもう直ぐ次の世界。今度こそ、私の探す理想の世界でありなさいよね」
白く、眩い光に包み込まれたゲートを潜り、ラ・ヴィは新たな世界へ………
ー……
「………アレ」
新たな世界へ到着したラ・ヴィ。だが、その世界は先程のモノと変わり映えしない。
スーパーやショッピングモールなどが建ち並ぶ、なんら変哲もない、普通の世界だ。
「ミスったか私、また同じ世界に来るなんて。でもなんか変な感じ」
しかし、違和感もあった。
どこか街並みや技術などが僅かにグレートダウンしているかのような………
「よし行くぞ司。フレイドラモンとデュークモンを召喚!!」
「来い、めざし。今度こそオレの方が強いと言う事を教えてやるぜ」
直ぐ横で、高校生くらいの少年少女が、Bパッドと言う端末を使ってバトルをしている。
その事から、似た世界、もしくは同じ世界である事が推察できるが………
「そこのシャリボーイ&ジャリガール、ちょっといいかい」
「……え、今丁度いいとこなんだけど」
「めざし、オマエの知り合いか、このおばさん」
「おばさんじゃねっつーの!!……私は絶世の元悪役、ラ・ヴィ様だ!!」
彼女はまだ知らない。
世界の次元間を移動する装置が、実は天下メメの手違いによって「タイムマシン」に変えられてしまった事を………
それに気づき、再び次元間を旅するのは、また別のお話。
次回、第57ターン「ファイター」
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今回はリアルでも僕と仲の良いバトスピ小説家の置き物さん(https://syosetu.org/user/237512/)とのコラボ回でした。
たくさんオモローな小説を執筆されておりますので、是非この後ご覧になってみてください!!