バトルスピリッツ 王者の鉄華   作:バナナ 

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第57ターン「ファイター」

時刻は午後。日は間もなく暗くなる事を示すように沈んで行き、青空が琥珀色に染まり始める時間帯。

 

青年、九日ヨッカは、自分の店「アポローン」の中で1人、対戦テーブルの椅子に腰掛け、途方に暮れていた。

 

ライもイナズマと同様に捕らえられ、アルファベットが嵐マコトの手に落ち、データとなって消滅。2人のためにも嵐マコトを追跡、倒さなければならない。

 

だが、肝心の嵐マコトがどこにいるのかがわからなかった。そもそも、アルファベットでさえ勝てなかった敵に、自分如きで太刀打ちできる訳がない。

 

山のように積み上がった難関。ヨッカは、それを1人で到底解決できない事を、理解していて………

 

 

「クソ……!!」

 

 

己の不甲斐なさに腹を立てたヨッカは、テーブルに拳を打ち付ける。

 

 

「何でオレは何もしてやれない。みんな大変だって時にオレは、何してんだよ!!」

 

 

怒りが募った彼は、その鬱憤を晴らすように、立ち上がりながらテーブルをひっくり返す。

 

 

「……!」

 

 

その直後、ヨッカはアルファベットを完膚なきまでに叩きのめした、嵐マコトとクローズエボルのヴィジョンが脳裏を過ぎる。その途端に、指先が震え出す。

 

 

「何震えてんだよ馬鹿野郎。アルファベットさんから託されたんだろ。どうにかして見せろよ、何のためにオレは今まで戦って来たんだ」

 

 

震えた指先を拳として握り締め、己に文句を言いつけても、結局何も答えは出ず、虚しさだけが心に残り続ける。

 

そんな時だ、アポローンの自動ドアが音を立て開いたのは………

 

 

「ゲゲゲ……よぉ、えらくご機嫌斜めじゃねぇか」

「ッ……オマエ、エニーズ02!?……何でここに」

 

 

ヨッカの前に現れたのは、嵐マコトの隠れ研究所でガードマンを勤めていた男。橙色で、チリチリしている髪型が特徴的。

 

彼は数あるガードマンの中でも最強の称号「エニーズ02」が、嵐マコトによって与えられており、カモフラージュとして、ライと戦い、追い詰めた。

 

 

「おいおい、エニーズ02って言うのは、あのガキの事じゃねぇのかよ」

「……」

「オレのはただの称号。雇い主がカモフラージュのためにそうつけたんだろうな。ちな、オレの本当の名前は「蛇澤マツリ」ってんだ。ゲゲゲ、よろしくな」

 

 

エニーズ02、もとい蛇澤マツリは、そう告げながら、アポローンの卓に腰掛ける。

 

 

「で、その蛇澤さんがオレに何の用だよ」

 

 

ヨッカが、怒りと警戒心を併せ持つ表情で、蛇澤にそう言い返した。

 

雇われていたとは言え、相手は大事なライを傷つけた存在。それに、彼の戦闘狂な面も知っているため、何をしでかすかわからないためだ。

 

 

「いや何、ただ教えてやろうと思ってな、雇い主、嵐マコトの居場所を」

「!」

「ゲゲゲ、児雷也森林。その奥地に、奴らはいる」

 

 

どう言う風の吹き回しなのか、蛇澤は、ヨッカに嵐マコトらのいる場所を伝える。

 

 

「正確には、そこに本拠地があるって言った方がいいか。霧深くて見えづらいが、馬鹿デカいぜ」

「……なんでオレにそれを、アンタは嵐マコトに雇われてんじゃないのか?」

「金はもう十分貰った。それに、バランスは取ってやらねぇとな。テメェとアイツらとじゃ、戦いにもなりやしねぇ」

 

 

ニタニタと笑みを浮かべながらそう答える蛇澤マツリ。

 

その行動や言動は、つくづく奇怪で、謎めいている。

 

 

「ふざけるなチリチリ頭、何がバランスだ。そんな事言って、オレを騙そうとしてんだろ」

「この期に及んでまだオレを警戒してんのか。後コレはチリチリじゃねぇ、天パだ。銀魂の銀さんみたいな髪型なんだよ」

「似たようなもんだろ」

 

 

直後、蛇澤マツリは己の天パの中から写真1枚を取り出し、それをヨッカに見せつけるように、テーブルへ置いた。

 

 

「コレは、フウちゃん?……なんでアンタがフウちゃんの写真を、って、横にいるのは嵐マコト!?……いったいどうなってんだ」

 

 

その写真には、春神ライの親友である夏恋フウと、敵である嵐マコトが共に写り込んでいた。

 

まだフウの本性を知らないヨッカは、その異質な写真に困惑を見せる。

 

 

「ゲゲゲ……やっぱコイツと知り合いだったか。これはオレが奴らの本拠地で隠し撮りした写真さ。少なくとも、このメスガキよりかは、オレを信用した方がいい」

「……どう言う事だよ」

 

 

冷や汗が己の顎から雫となって床に落ちる。

 

一瞬、写真の中のフウを見て、嵐マコトに人質に取られたのかと思った。しかし、とてもではないが、そう言う雰囲気ではないし、既に春神イナズマ、春神ライと言う存在を連れ去った今、嵐マコトには、そんな事をする理由がない。

 

しかし、その答えは簡単なモノだ。ただ、ヨッカがそれを受け入れたくないだけであり………

 

 

「コイツは敵。何食わぬ顔で、今までテメェらの横で良い奴を装ってた、悪女だ」

「ッ……!!」

 

 

蛇澤が、ヨッカにその真実を告げる。

 

 

「う、嘘だ。な訳ねぇだろ、フウちゃんはオレらを騙すような事は……」

「奴はあのDr.Aの孫だ」

「!?」

 

 

今までのフウを知っているため、途端に焦燥感に駆られるヨッカだが、蛇澤が間髪入れずに告げて来た更なる真実に、言葉を詰まらせる。

 

 

「ゲゲゲ、結局、奴が何をしたいのかまではわからず仕舞いだったが、きっと碌でもねぇことに違いねぇ」

「ッ……フウちゃんを悪く言うな、誰が何と言おうと、例え本当にDr.Aの孫だろうと、フウちゃんはフウちゃんだ。オレ達を騙すような子じゃない!!」

「馬鹿が、どんだけお人好しなんだよ。テメェがそんなんだから、この事態を招いてるんじゃねぇのか?」

「なに!?」

 

 

必死に蛇澤の言葉を否定するヨッカ。

 

しかし、それはどこまで行っても感情論に過ぎず、根拠にもならない。事実、フウは度が付くほどの悪女、蛇澤の言葉は全て正しい。

 

それを証明するように、もう1人、アポローンへと現れる。

 

 

「残念だけど、そいつの言ってる事は正しいよ、アニキ」

「ッ……オーカ!?」

「アイツの本性は、平気で他人を貶める、悪魔だ」

 

 

そのもう1人は、ヨッカの弟分である鉄華オーカミ。

 

ヨッカはオーカミがここに来た事よりも、彼の全身に血の滲んでいる包帯が巻かれている事に驚いてしまう。

 

 

「おいオーカ、オマエどうしたんだよその怪我!?……誰がこんな」

「そこのモジャモジャ。あの2人が児雷也森林にいるなら、ライもそこにいるんだな」

「あぁ、おそらくな。森に入ったら兎に角北東の方角へ進め」

「ん、ありがとう」

 

 

そこまで淡々と話を進めると、オーカミはアポローンを後にしようとするが、当然、ヨッカはそれをよしとしない。

 

 

「ちょ、待てよオーカ、オマエどこに行く気だ!?」

「どこって、決まってるでしょ、ライのとこ」

「馬鹿野郎!!……そんな怪我で、やめろ、もう動くな」

 

 

ヨッカは直後に、蛇澤に向かって「アンタからも何とか言えよ」と声を荒げるが、当の彼は興味なさそうに両掌を上げる。

 

 

「そのガキがどうしようと、そいつの勝手だろ。行きてぇって言うなら好きにさせればいいじゃねぇか」

「好きにさせれる訳ねぇだろ。オレはもう、これ以上……これ以上」

 

 

ヨッカの脳裏に浮かび上がるのは、目の前でデータ化し、消え去ってしまったアルファベットの顔。

 

彼は、これ以上仲間を失いたくないのだ。あんな恐ろしい瞬間を、二度と迎えたくないのだ。

 

 

「……アニキ、オレとバトルしないか?」

「!」

「オレが勝ったら通すって事で。それなら文句はないでしょ」

 

 

突然、オーカミがBパッドを構えながらそうヨッカに告げてくる。

 

本気の目だ。本気でヨッカに勝ち、ライを助けに行く気なのだ。

 

どの道何も言っても言う事を聞かないオーカミには、最も効果的な行いだ。ヨッカもそれに乗っかる他ない。

 

 

「あぁ、わかったぜオーカ。受けてやるよ、そのバトル。この先、オマエに最悪の未来が訪れるって言うならな、今ここで、このオレが引導を渡してやる……!!」

 

 

ヨッカもまた、Bパッドを左腕に装着し、それを展開。彼の目もまた本気である。

 

 

「フ……じゃあオレはここいらでトンズラするわ。生きてたらあのメスガキによろしく伝えといてくれや」

 

 

2人のバトルには興味が余りないのか、今にもバトルが始まりそうな光景に、蛇澤マツリは鼻で笑うと、この場を後にする。

 

 

「店のバトル場でやるぞ」

「あぁ」

 

 

ヨッカの提案により、オーカミは彼と共に目と鼻の先にある、アポローンのバトル場へと赴く。

 

赴くと、2人は颯爽とバトルの準備を整え………

 

 

「アニキとのバトルは、これで何回目だっけ」

「52回目だ。因みにオマエは最初のバトルしか、オレに勝った事がない」

「ふ……それは知ってるよ」

「笑っていられるのも今の内だけだ。行くぞ、オーカ」

「あぁ、アニキ。バトル開始だ」

 

 

……ゲートオープン、界放!!

 

 

いつものみんなの居場所、カードショップ「アポローン」のバトル場にて、九日ヨッカと鉄華オーカミによる兄弟分対決が幕を開ける。

 

先攻は九日ヨッカだ。オーカミを止めるため、そのターンを進めて行く。

 

 

[ターン01]九日ヨッカ

 

 

「メインステップ、青のネクサス、ビリー・カタギリを配置する」

 

 

ー【ビリー・カタギリ】LV1

 

 

「配置時効果でデッキ上から4枚をオープン、その中にある対象のカード「グラハム・エーカー」と「サキガケ」を手札に加え、残りをトラッシュへ破棄」

 

 

フィールドには何も出現しないが、ヨッカは青属性のネクサスカードを配置。その効果でデッキから2枚のカードを新たに手札へ加えた。

 

 

「バーストをセットして、ターンエンドだ」

手札:5

場:【ビリー・カタギリ】LV1

バースト:【有】

 

 

ヨッカの第1ターンはこれで終了。

 

次は痛々しい程包帯だらけになってしまっても尚、前に進もうとするオーカミのターンだ。

 

 

[ターン02]鉄華オーカミ

 

 

「メインステップ、創界神ネクサス、クーデリア&アトラ」

 

 

ー【クーデリア&アトラ】LV1

 

 

オーカミも同様にフィールドには何も出現しないネクサスカード。配置時の神託の効果により、彼のデッキの上から3枚がトラッシュへ、今回は3枚全てが対象のカードであったため、ネクサスに3つのコアが追加された。

 

 

「ターンエンド」

手札:4

場:【クーデリア&アトラ】LV2(3)

バースト:【無】

 

 

「オルガは無しか、幸先悪いな」

「……」

 

 

オーカミを除けば、おそらく誰よりも鉄華団デッキに詳しいヨッカ。僅か一度のターンで、それが100%回っていない事を理解する。

 

 

[ターン03]九日ヨッカ

 

 

「メインステップ、マジック、ストロングドロー、デッキ上から3枚をドローし、その後2枚をトラッシュへ破棄する。ターンエンドだ」

手札:6

場:【ビリー・カタギリ】LV1

バースト:【有】

 

 

このターン、ヨッカは青属性でお馴染みの手札交換効果を持つマジックカードの使用のみでターンエンドの宣言。

 

 

「アニキも、幸先悪そうに見えるけど」

「オレはいいんだよ。オマエのスピリットが出て来た時が本番だからな、オマエも知ってるだろ」

 

 

ヨッカのデッキは【武士道】と言う効果を持つ、青のモビルスピリット達が軸となるデッキ。

 

【武士道】を持つスピリットは、自分のアタックステップ開始時に、相手スピリット1体と強制バトルでき、勝利した時に追加で様々な効果を発揮できる。

 

その特徴故に、ヨッカのデッキを100%発揮するためには、相手スピリットの召喚が必要不可欠なのだ。

 

 

[ターン04]鉄華オーカミ

 

 

「メインステップ、なら出してやるよ、スピリット。バルバトス第1形態」

 

 

ー【ガンダム・バルバトス[第1形態]】LV1(1)BP2000

 

 

「召喚時効果でデッキ上から3枚オープン、その中にある鉄華団カードを手札へ。オレはランドマン・ロディを加える」

 

 

地中から飛び出して来たのは、始まりの鉄華団、バルバトス第1形態。他のバルバトスと比べ、武装が一切施されていない、初期状態だ。

 

 

「それを待ってたぜ、相手の手札が増えた事によりバーストを発動」

「!」

「青のネクサスカード、阿弥陀如来像。効果でコイツをノーコストで配置だ」

 

 

ー【阿弥陀如来像】LV1

 

 

「配置時効果でボイドからコア1つを追加」

 

 

バルバトス第1形態の効果でオーカミの手札が増えた事により、ヨッカの伏せていたバーストが発動。背後に巨大な仏像が配備されると共に、コアブーストまで行われる。

 

 

「今手札に加えた、ランドマン・ロディをLV2で召喚」

 

 

ー【ランドマン・ロディ】LV2(2)BP3000

 

 

しかしその程度でオーカミは怯まない。丸みを帯びた小型の鉄華団モビルスピリット、ランドマン・ロディを召喚し、さらにそのカードへ手を掛ける。

 

 

「アタックステップ、ランドマン・ロディでアタック。その効果でデッキ上1枚を破棄。これにより、クーデリア&アトラの【神域】が誘発、トラッシュにある紫1色のカードをデッキ下に戻し、1枚ドロー」

 

 

ランドマン・ロディのアタック時効果を、クーデリア&アトラの【神域】によりドローに変換。

 

手札を潤しつつ、ランドマン・ロディでヨッカのライフに攻撃を仕掛ける。

 

 

「ランドマン・ロディのアタックはライフで受けるぞ」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉九日ヨッカ

 

 

ランドマン・ロディは、小型の斧を振り下ろし、ヨッカのライフバリア1つを破壊。オーカミに先制点を齎した。

 

 

「ターンエンド」

手札:5

場:【ランドマン・ロディ】LV2

【ガンダム・バルバトス[第1形態]】LV1

【クーデリア&アトラ】LV2(5)

バースト:【無】

 

 

バルバトス第1形態をブロッカーとして残し、オーカミはそのターンをエンド。オルガ無しでデッキが100%の力を発揮していないとは言え、かなり強力な盤面に仕上がりつつある。

 

 

「オレのターンだな。手は抜かねぇ、オレはもうオマエには戦わせたくねぇんだよ、オーカ」

「……」

 

 

次はヨッカのターン。目の前の弟分、オーカミを倒すべく、そのターンを進めて行く。

 

 

[ターン05]九日ヨッカ

 

 

「メインステップ、青のモビルスピリット、サキガケを召喚」

 

 

【アヘッド近接戦闘型[サキガケ]】LV2(6S)BP8000

 

 

ヨッカが呼び出したのは、マゼンタカラーのモビルスピリット、サキガケ。手には竹刀のような形をしたビームサーベルを構えている。

 

 

「もう一度バーストをセットして、アタックステップだ。その開始時にサキガケの【武士道】を発揮」

「ッ……来たか、アニキの十八番」

「一騎討ちを所望するのは、バルバトス第1形態。サキガケと強制バトルだ」

 

 

アタックステップに突入した直後、サキガケの【武士道】が発揮され、バルバトス第1形態が指定される。

 

バルバトス第1形態で先手必勝と言わんばかりに飛び出し、殴り掛かるが、サキガケはそれを紙一重で回避すると同時に、竹刀の形をしたビームサーベルでその腹部を貫く。

 

それにより、バルバトス第1形態は堪らず爆散した。

 

 

「サキガケの【武士道】勝利時、ストロングドロー効果だ。デッキ上から3枚を引き、その後2枚を破棄。さらにLV2から発揮できる、もう1つの効果。【武士道】で破壊したスピリットを疲労状態でフィールドに残す事により、オマエの創界神、クーデリア&アトラのコアを5個ボイドに置く」

「!」

 

 

爆散したバルバトス第1形態であったが、まるで何事もなかったかのように、オーカミのフィールドに帰還していた。

 

その代わりに、オーカミの創界神ネクサスであるクーデリア&アトラのコアが全て消滅。その強力な効果を発揮できない状態となる。

 

 

「ターンエンド。さぁ来いよオーカ、オマエのターンだぜ」

手札:6

場:【アヘッド近接戦闘型[サキガケ]】LV2

【ビリー・カタギリ】LV1

【阿弥陀如来像】LV1

バースト:【有】

 

 

「………」

 

 

オーカミのライフは砕かず、【武士道】の効果で破壊したスピリットも場に残し、己の手札だけを回していくヨッカ。

 

オーカミはこれまでの経験から、彼が何かを企んでいる事を勘付く。

 

 

「いいぜアニキ。今日オレは、アンタを超えるよ」

 

 

敢えてそれに乗っかるような勢いで、オーカミは巡って来たターンを進めて行く。

 

 

[ターン06]鉄華オーカミ

 

 

「メインステップ、コイツで勝負だ。ガンダム・フラウロスをLV1で召喚」

 

 

ー【ガンダム・フラウロス[流星号]】LV1(1)BP5000

 

 

オーカミのフィールドに呼びだされる3体目の鉄華団モビルスピリット、ガンダムの名を持ち、マゼンタカラーの装甲と、数々の銃火器を備えたフラウロスだ。

 

 

「召喚時効果、コア5個以上のスピリット、サキガケを破壊する」

「!」

 

 

フラウロスは、登場するなり、廃部に備えた二丁のレールガンをサキガケに向け、そこから強力な電撃を放つ。

 

放たれたそれは、地を抉りながらフィールドを駆け抜け、サキガケを瞬く間に貫き、爆散へと追い込む。

 

 

「よし」

「この程度でオレに勝ったと思ったら大間違いだぜ」

「?」

「破壊後により、バースト発動、青マジック、愛と憎しみを超えた宿命」

 

 

オーカミが優勢に立ったと思われた直後、またしてもヨッカのバーストが唸る。

 

発動されたのは、青のマジックカード「愛と憎しみを超えた宿命」………

 

 

「バースト効果により、先ずはトラッシュから、【トップガン】【武士道】を持つスピリット1体をノーコストで復活させる」

「またサキガケ……いや、違うか」

「流石にわかるよな。オレがこの効果で呼ぶのはコイツ、天空をも斬り裂く剣技、青のモビルスピリット、スサノオをLV1で召喚だ」

 

 

ー【スサノオ】LV1(1)BP10000

 

 

効果により、ヨッカがトラッシュから召喚したのは、薙刀を武器とし、黒々とした装甲に、和の甲冑を思わせる頭部を持った、青属性のモビルスピリット、スサノオ。

 

誰もが知る、彼の、Mr.ケンドーのエースカードだ。

 

彼はこのカードをバースト効果で召喚するために、サキガケやストロングドローで手札を入れ替え、トラッシュにコレを破棄していた。

 

 

「来たかスサノオ」

「意気込む前に、先ずは身構えろ、愛と憎しみを超えた宿命の効果により、コスト7以下のスピリット、フラウロスを破壊する」

 

 

スサノオが登場すると、フラウロスは青の光に包まれていき、苦しみながら爆散。

 

さらにまだ、バースト効果は続き………

 

 

「その後、コストを支払いフラッシュ効果を発揮。トラッシュから今度はパイロットブレイヴ、グラハム・エーカーを召喚し、スサノオに直接合体。そして、グラハム・エーカーは転醒し、ミスター・ブシドーとなる」

 

 

ー【スサノオ+ミスター・ブシドー】LV1(1)BP15000

 

 

大型のモビルスピリットだけでなく、それの力を最大限に発揮できるパイロットブレイヴまでもをトラッシュから召喚。

 

バースト効果を持つマジックカード1枚で、強力な合体スピリットを誕生させる。

 

 

「ミスター・ブシドーの転醒時効果により、手札から2体目のスサノオをノーコストで、LV2で召喚する」

「くっ……2体目か」

 

 

ー【スサノオ】LV2(3)BP12000

 

 

パイロットブレイヴの効果により、2体目のスサノオが呼び出される。

 

これにより、ヨッカのフィールドには大型のエースカードが2体。対してオーカミのフィールドには低コストスピリット2体のみ。

 

アレだけオーカミ優勢だったフィールドが束の間、一気に不利な状況へと陥る。

 

 

「流石だな、アニキ。だけどこの程度じゃ、オレの鉄華団は散らない、バーストをセット」

「……バーストか」

 

 

自分のターン中に劣勢になるオーカミだが、冷静さは失わない。迷わず手札にあるバーストカードをセット。

 

 

「バルバトス第1形態のLVを3にアップ。アタックステップに入っても、アタックは無し、ターンエンドだ」

手札:4

場:【ランドマン・ロディ】LV2

【ガンダム・バルバトス[第1形態]】LV3

【クーデリア&アトラ】LV2(1)

バースト:【有】

 

 

……『あのバースト、おそらくこの状況だとグシオンリベイク。だが、今オーカのトラッシュにはブレイヴカードがない。グシオンリベイクはトラッシュにブレイヴカードがないと、その力を十分に発揮できない』

 

ヨッカは頭の中で、オーカミのバーストを予測する。

 

そして、出た結論は、あのバーストでは、自分の攻撃を止められないと言う事。スサノオ2体の制圧力を持ってすれば、次のターン、オーカミは必ず敗北を喫する。

 

 

「オレのターン」

 

 

オーカミのデッキをよく理解しているヨッカ。

 

最後のターンを行うべく、Bパッドに差し込まれているデッキから、カードを引く。

 

 

[ターン07]九日ヨッカ

 

 

「メインステップ、合体しているスサノオのLVを3にアップさせる」

 

 

メインステップに入り、ヨッカはミスター・ブシドーと合体している方のスサノオに4つのコアを追加。そのLVを3に上昇させる。

 

ここから、フィールドに揃った2体で攻撃を仕掛け、トドメを刺しに行く。

 

そう思われたが、ヨッカは肩に籠っていた力を抜き………

 

 

「なぁオーカよ、もうやめようぜ。本当の所、今はオレらでバトルしてる暇なんてない、こんなの時間の無駄だ」

 

 

そう話し出した。

 

今ここでその話を始めた理由はただ1つ。オーカミを諭し、諦めさせるためだ。

 

 

「無駄なんかじゃないよ。オレはただ、仲間のためにできる事をやっているだけだ」

 

 

しかし、オーカミがここでそう簡単に引き下がる訳がない。

 

諦めるどころか、この状況から勝つ気さえいる。

 

 

「……だからってな、オマエがそんな身体になってまでやる事じゃねぇんだよ。ライとイナズマ先生を助けて、みんなでまた元気に暮らす。そう、それがオレの役目で、使命なんだよ」

「……」

「だから大人しく引き下がってくれよオーカ、なぁ!?」

 

 

必死に訴え掛けるヨッカだが、オーカミはそんな彼の言葉を聞いても、眉一つ微動だにさせない。

 

 

「震えてる奴1人には、任せられない」

「!?」

「オレの今の居場所は、アニキに貰ったモノ。なら、アニキの使命は、アニキに恩があるオレの使命でもある」

「い、いやそうはならねぇだろ!?」

 

 

ヨッカは気づく。また己の指先が震えていた事を。

 

これをキッカケにオーカミとの間に心の蟠りができてしまう事を恐れたのか、はたまたこれから戦う事になる嵐マコトのクローズエボルを怖れたのかは定かではないが、ヨッカは確かに心からの訴えの中、震えていた。

 

 

「大丈夫だよアニキ、オレは死なない」

 

 

どこまでも真っ直ぐを見つめて来るオーカミの眼光。それは、ヨッカにとって「畏れ」そのモノだった。

 

本当はわかっている。もうオーカミは弱くない事。自分が必ずしも守ってあげる存在ではなくなっている事。

 

 

「ダメだ。行かせられねぇ」

 

 

だが、アルファベットを失ってしまった瞬間の記憶と、その経験が、ヨッカに「仲間を失う」と言う恐怖を常に与え続ける。

 

それ故に、これ以上の無茶をしようとするオーカミを放って置くわけにはいかなかった。

 

 

「アニキ、バトルを続けよう。オレは勝つよ、このバトルにも、これからのバトルにも。オレを信じてくれ」

「……」

 

 

………『オレは兄貴分失格だ。弟分を信じてやれなくて、何が兄貴分だ』

 

ヨッカはそう思った。オーカミを信じてやれない自分がどんどん嫌いになってしまう。だが、恐いに決まっている、アルファベットに続き、オーカミまで失う可能性がある判断など、彼にはできない。

 

 

「ならここから、勝ってみろよ。アタックステップ、その開始時にスサノオ2体の【武士道】を発揮。バルバトス第1形態、ランドマン・ロディと強制バトル」

 

 

心を鬼にし、バトルへ戻る。2体のスサノオがオーカミのフィールドへと踏み込み、そこにいるバルバトス第1形態とランドマン・ロディを、手に持つ薙刀でXの字を描くように斬り裂き、爆散へと追い込む。

 

 

「2体のスサノオの【武士道】により、オマエのライフに2点のダメージを与えるぞ」

「……」

 

 

〈ライフ5➡︎4➡︎3〉鉄華オーカミ

 

 

スピリットだけでなく、オーカミのライフバリアも斬り裂いて行く2体のスサノオ。

 

これにより、オーカミのライフは残り3。合体したスサノオのアタック一撃で沈むラインに入ってしまう。

 

 

「スピリット破壊後のバースト」

「来るか、グシオンリベイク」

 

 

やはりヨッカの予想通り、このタイミングでバーストカードに手を当てるオーカミ。

 

破壊後のバースト、それは間違いなく鉄華団の守護神グシオンリベイク。

 

そう思われたが………

 

 

「紫のブレイヴ、天冥銃アーミラリー・スフィア……!!」

「なに、グシオンリベイクじゃないだと!?」

「本日のハイライトカードだ。オレだって日々、前を見て成長しているのさ。この効果で合体しているスサノオからコア2つをリザーブへ置き、この効果発揮後、コイツをノーコストで召喚する」

 

 

ー【天冥銃アーミラリー・スフィア】LV1(3)BP3000

 

 

オーカミが発動したのは、グシオンリベイクでも、鉄華団のカードでもない、紫のバーストカード。

 

合体しているスサノオがほんの僅かな時間紫のオーラに包み込まれると、その体内にあるコア2つを弾き飛ばす。これにより、残りコアは3個だ。

 

その後、誰もいなくなったオーカミのフィールドに、紫色の紋章が浮かび上がると、冥府の力纏いし銃、天冥銃アーミラリー・スフィアが出現する。

 

 

「紫のバーストブレイヴ、驚かされたが、それだけならグシオンリベイクの方がまだマシだぜ、アタックステップは継続、合体したスサノオでアタック。そのアタック時効果により、このターン、オレは追加のアタックステップを獲得する」

 

 

意表を突かれた事は間違いないが、ここまで来て、その程度の事で昼間はしない。ヨッカは合体したスサノオで、ブレイヴしか存在しないオーカミのフィールドへと攻め込んで行く。

 

だが、それを見るなり、オーカミは鼻で笑い………

 

 

「ふ……確かにそれだけならマシだよな」

「!?」

「フラッシュ【煌臨】を発揮、対象は【装填(リロード)】の効果を持つ、天冥銃アーミラリー・スフィアだ」

 

 

オーカミが発揮したのは、スピリットを更なる姿へと昇華させる【煌臨】の効果。

 

本来ならばスピリットにしか対象にできないこの効果だが、今召喚したこの天冥銃アーミラリー・スフィアは違う。【装填(リロード)】の効果により、スピリット状態のこのブレイヴも【煌臨】の対象となる事ができるのだ。

 

 

「天空斬り裂け、未来を照らせ、ガンダム・バルバトスルプス、LV2で煌臨!!……【装填】のその後の効果により、煌臨元からアーミラリー・スフィアを合体だ」

 

 

ー【ガンダム・バルバトスルプス+天冥銃アーミラリー・スフィア】LV2(3)BP11000

 

 

「このタイミングで、バルバトスルプスだと!?」

 

 

アーミラリー・スフィアを呼び出した紫の紋章は、消滅間際に新たな存在を、このフィールドへと呼び寄せる。

 

それは鉄華団のモビルスピリットにして、オーカミのエースカードの1枚、バルバトスルプス。右手にソードメイス、左手にアーミラリー・スフィアを装備し、強力な合体スピリットとなって登場した。

 

 

「バルバトスルプスの煌臨時効果、デッキ上2枚を破棄し、その中の鉄華団カード1枚につき、コア3個以下のスピリット1体を破壊」

 

 

破棄されたのは、当然どちらも鉄華団のカード。

 

これにより、コア3個以下のスピリット2体を破壊できる。そして、ヨッカのフィールドにいる2体のスサノオのコアは、どちらも3個だ。

 

 

「破棄されたのは「バルバトス第4形態」と「バルバトスルプスレクス」……よって2体のスサノオを破壊する!!」

「くっ……!?」

 

 

バルバトスルプスは、左手に持つアーミラリー・スフィアから闇の弾丸を連射し、合体していないスサノオに全弾被弾させ、爆散へ追い込む。

 

合体しているスサノオにもまた闇の弾丸を連射するが、合体しているスサノオは、薙刀を回転させ、それら全てを弾き返す。だがその隙に間合いを詰めたバルバトスルプスのソードメイスの一撃の前に沈み、1体目と同様、爆散する運命を辿る事となった。

 

 

「クーデリア&アトラの【神域】によりドロー。これでスピリットは消えた、アタックステップを追加しても、アタックするスピリットがいなかったら、意味ないだろ」

「……あぁ、その通りだ。ターンエンド」

手札:6

場:【ミスター・ブシドー】LV1

【ビリー・カタギリ】LV1

【阿弥陀如来像】LV1

バースト:【無】

 

 

前のターンより強烈なカウンターを受け、ヨッカがこのターンで勝ちを取る事は不可能となる。

 

強くなった弟分に、彼は瞳を閉じながらそれを実感。そのターンをエンドとする。

 

 

[ターン08]鉄華オーカミ

 

 

「メインステップ、2体のランドマン・ロディをLV2で召喚し、バルバトスルプスのLVを3にアップ」

 

 

ー【ランドマン・ロディ】LV2(2)BP3000

 

ー【ランドマン・ロディ】LV2(2)BP3000

 

 

2体のランドマン・ロディが呼び出され、バルバトスルプスが最高LVに到達。そのBPは16000まで上り詰める。

 

 

「アタックステップ、ランドマン・ロディ2体でアタック。その効果でデッキを破棄、それが鉄華団カードなら、コア1個以下のスピリットを破壊。残ったパイロットブレイヴを破壊だ」

 

 

2体のランドマン・ロディが攻撃を開始する。その過程でヨッカの残っていたパイロットブレイヴのカードがトラッシュへと誘われ、クーデリア&アトラの【神域】の効果で、デッキ上から2枚のカードが、新たにオーカミの手札へと加えられる。

 

 

「2体ともライフで受けるぜ」

 

 

〈ライフ4➡︎3➡︎2〉九日ヨッカ

 

 

2体のランドマン・ロディは、小型の斧を振り下ろし、ヨッカのライフバリアを1つずつ破壊。

 

遂に残り2つ。そして、そのトドメには、バルバトスルプスが赴く。

 

 

「アニキ」

「!」

「ありがとう。オレにバトスピを教えてくれて、アニキがいたからオレ、大事なモノができたし、それを守る事ができる」

「……来いよ」

「あぁ、バルバトスルプスで、ラストアタック」

 

 

オーカミが、ヨッカにこれまでの感謝を言葉にすると、バルバトスルプスがヨッカの眼前へと到着。

 

アーミラリー・スフィアの銃口を、彼へと向ける。

 

 

「見事だぜ兄弟。ライフで、受ける」

 

 

〈ライフ2➡︎0〉九日ヨッカ

 

 

全てを受け入れ、トドメの一撃を受ける宣言をするヨッカ。

 

バルバトスルプスの持つ、アーミラリー・スフィアの銃口から放たれた闇の弾丸が、彼の最後のライフバリアを打ち砕いた。

 

その瞬間「ピー……」と言う甲高い機械音が、ヨッカのBパッドから響き渡り、オーカミの勝利を告げる。

 

そうだ、勝ったのだ。この瞬間、鉄華オーカミは、己のバトスピを教えてくれた師匠である九日ヨッカを、超えた。

 

 

「アニキに、勝った……!!」

 

 

その事実に実感が湧いて来たのか、オーカミは珍しくわかりやすい喜び方を見せる。

 

この光景に、ヨッカは遂に根負けして………

 

 

「オレの負けだオーカ、オマエ、ホント強くなったな……!!」

「……うん、アニキのお陰だ」

「負けちまったもんは仕方ねぇ、許可してやるよ」

「あぁ、ありがとう」

「だがオレも行くぞ。オマエとのバトルに、勇気をもらった。ビビってるなんてオレらしくねぇ、もう一度、嵐マコトをこの手でぶん殴ってやるんだ」

「それでこそアニキだ」

 

 

オーカミのライを救けに向かう行為を許すヨッカ。

 

震えていた指先を拳として固く握り締め、決意を新たにする。

 

 

「よし、じゃあさっさとライを救けに行こう、そう言えばアニキ」

「ん、なんだ」

「児雷也森林ってどこ?」

「オマ、何もわからずに行こうとしてたのかよ!!」

「はは、ごめん、あの時は気が立ってたから」

 

 

そこから少し、可笑しな状況に、2人は笑い合う。

 

ヨッカは、きっとコイツはオレの最高の相棒なのだろうと思い、この日々を守るために、戦い抜いて見せようと、静かに誓った。

 

 

「行こうぜオーカ、オレら2人なら、どんな奴にも負けねぇ」

「あぁ、待ってろ嵐マコト、徳川フウ。ライは、返してもらう」

 

 

2人は間もなく、春神ライと春神イナズマを救出すべく、徳川フウと嵐マコトが潜んでいるであろう児雷也森林へ向かう。

 

これから始まるのは、楽しさとは縁のない、常に死と隣り合わせの、本当の戦いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

******

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回、新章『悪魔と魔女編』開幕

 

第58ターン「鉄華団VS鉄華団」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

******

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『イ、ライ……ライ』

「!」

 

 

ふと、目が開いた。

 

春神ライの意識が戻る。

 

 

『よかった、やっと気がついた』

「エア、リアル……?」

『そう。僕はエアリアル。君の1番の相棒さ』

 

 

気がつくと、無限に広がる、電子的な青い空間に居た。ライを蛇澤マツリから助けてくれた謎のモビルスピリット、エアリアルもそこの宙を漂っている。

 

 

「そう、さっきはありがとう、助けてくれて」

『……元気がないね。やっぱり気にしてる?……自分がエニーズ02だった事と、後徳川フウの事』

「………」

『気にしてそうだね』

 

 

それはそうだろう。13年も生きて来て、いきなり怪物を倒すために造られた怪物だと言われ、さらには親友だと思っていた人物が、実は敵だったのだから。

 

今でも、思い出そうとするだけで、動悸が早まってショック死してしまいそうだ。気にならない訳がない。

 

 

『気にするなとは言はないよ。内容が衝撃的過ぎて、そんなの無理だと思うし、でも忘れないで、君は確かに普通の人間とは違うけど、君の事を大事に想っている仲間や友達が、まだ沢山いる事を』

「……」

『もちろん、僕もその1人さ』

「仲間、友達……ヨッカさん」

 

 

自分の事を大事に想ってくれている仲間や友達。

 

ライが真っ先に思い浮かんだのは、他でもない九日ヨッカだ。

 

そして、それと同時に、彼に放ってしまった悪言の数々も想起してしまい………

 

 

ー『触らないで!!』

 

ー『嘘だ。知ってたんでしょヨッカさん。知っててずっと私を怪物だと思ってたんでしょ』

 

ー『突然あなたは怪物ですって言われて、落ち着くもクソもないでしょ、何でだよ、何でずっと黙ってたんだよヨッカさん、何で嘘ついてたんだよ、信じてたのに』

 

 

「私、ヨッカさんに酷い事言っちゃった。そんなつもりなかったのに。黙っててくれてたのも優しさだってわかってたのに………わだし、あんなひどいごといっで……!!」

 

 

ライの目から大粒の涙がポロポロ零れ落ち、後悔と懺悔の気持ちが、その表情を歪ませる。

 

 

「ヨッガざん、おごっでるがなぁ……わだしのごと、もういいやとが、おもっでるのがなぁ……!!」

『泣かないで。大丈夫、九日ヨッカは優しい男だ。ライを見捨てたりしないよ』

 

 

うずくまるライを、エアリアルがその鉄の腕で優しく抱き止める。

 

それによって少しだけ落ち着きを取り戻したか、ライは溢れ出た涙を上着で拭う。

 

 

『よく聞いて、ライ。君も、優しい子だ。本当の怪物はね、そう言った心や感情は持ち合わせてないんだよ、鉄華オーカミも『一緒に泣いて、怒って、苦しんで、笑ってくれる奴が怪物な訳ない』と言ってくれていたね』

「ッ……オーカミ、そうだオーカミはどうしたの、アイツ、フウちゃんとバトルして……」

 

 

エアリアルの言葉で、オーカミの事を思い出すライ。自分のために強大な敵に啖呵を切ってくれていたのは覚えているが、それ以降は記憶がないのだ。

 

 

『そんなに彼が心配?』

「え、まぁ」

 

 

質問を質問で返すエアリアル。その直後にため息をつき………

 

 

『はぁ、やっぱりそうなのか、僕アイツはやめといた方がいいと思うな。ぶっきらぼうだし』

「や、やめといた方がいいって、何を……?」

『好きなんでしょ、彼の事?』

「!!」

 

 

エアリアルの核心をついた言葉に、一瞬にしてライの顔は、耳まで真っ赤っかに染め上げられる。

 

 

「ち、ち、ち、違う!!……そう言うのじゃじゃ……!!」

『フフ、やっぱりライは怪物なんかじゃないよ。僕はバトルの中でしか君を守れないけど、大丈夫、ライならきっと、素晴らしい未来を掴み取る事ができるよ……』

「エ、エアリアル!?」

 

 

突如、青く電子的な空間が、白い光に包み込まれて行く。

 

エアリアルと春神ライもまた、その眩い光に飲み込まれた。

 

 

******

 

 

 

「!」

 

 

ライの目が本当に覚める。

 

おそらく、さっきのは夢で、どう言う原理なのかは定かではないが、エアリアルがその中に入って来ていたのだろう。ライを励ますために。

 

 

「ッ……手枷と足枷、そうか私、捕まったんだっけ」

 

 

入っていた場所は鉄の牢屋。真っ白な囚人服を着せられ、鎖付きで繋がれた、手枷と足枷を嵌められていた。

 

 

「気がついたか、ライ」

「!?」

 

 

すぐ向かいの、別の牢屋。

 

知っている声だった。

 

ずっと求めていた声が、そこにはあった。

 

ライは急いで不自由な足枷を引き摺りながら、向かい側の牢屋まで、できる限り近づいた。

 

 

「……お父さん」

「1年、見ない間に、また大きくなったな、ライ」

 

 

向かい側の牢屋にいたのは、ライの父親、いや、育ての親『春神イナズマ』……

 

彼は、ライと同じく真っ白な囚人服と、手枷足枷を嵌められていた。

 

2人の親子の予期せぬ再会。これを機に、間もなく最悪の最終決戦の火蓋が切って落とされる。

 

 

 

 

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