「ずっと、騙してたんだね」
緑生い茂る、界放市ジークフリード区の児雷也森林。そのどこかにある巨大な塔にて、手錠を嵌められた春神ライが、悪魔の血を引く少女、徳川フウに告げた。
「ニッヒヒ、今更だね」
「友達だと思ってたのに」
悲壮感を漂わせるライ。
父親を誘拐され、取り戻すために命懸けでバトルを行い、その中で己がDr.Aを倒すためだけに造られた『エニーズ02』だと知らされ、さらには親友がDr.Aの孫で敵だと来た。
今思い返しても、残酷で、散々な目に遭っている。
「ライちゃんとの友情ごっこ、楽しかったよ」
「……いつから私がエニーズ02だって気づいてたの」
「最初から。知ってた上で近づいた」
「……」
またショックを受ける。フウがライと友達になった後に真実を知ったのなら、まだ少しは心が救われていた。
そうであれば、少なくとも真実を知る前は、本当の友達の関係だったと証明できたからだ。
「何で、私に近づいたの」
「ニッヒヒ、それにはまだ答えられないんだなぁ」
「まだ?」
「さぁ、儀式をやる最上階までもう少しだよ、頑張って」
Dr.Aの実の孫と言う事以外、ほとんどが謎に包まれている徳川フウ。
ライの質問をはぐらかし、彼女と共に、塔の最上階へと歩みを進める。
******
一方外。界放市ジークフリード区にある、緑生い茂、多くの木々が葉を揺らす児雷也森林にて。
かのDr.Aに魅入られ、己に進化の力を施した科学者、嵐マコト。
仲間を助けるためだけに己の身1つでここまでやって来た少年、鉄華オーカミ。
まさに一触即発、この2人のバトルスピリッツが、今にも幕を開けようとしていた。
「アッアッア、最初は、ゼノンザードスピリットの力を試す試験用のカードバトラーとして、獅堂レオン君との二択だっただけの少年が、よもやこの私に歯向かって来るまでになるとはね」
「………」
嵐マコトが、そうオーカミに告げながら、己のBパッドを左腕へと装着し、展開。デッキを差し込んでバトルの準備を完了させる。
「しかしこれまでです。獅堂レオン、鈴木レイジ、早美ソラ、幾度となく強敵を下し、快進撃を起こして来た貴方も、今日ここで、私によって滅ぼされ、命を落とすのです」
「そう言うのどうでもいいからさ、とっとと始めようよ。時間の無駄だ」
ライを奪われた事で怒りが心頭しているオーカミ。前のバトルで展開したBパッドを、そのまま嵐マコトへと向けて、構える。
「アッアッア、アナザーを倒したからといって調子に乗らない方がいい。今の私は、あのDr.Aをも凌ぐ力を持っている、さらにはアルファベットも私が倒した。貴方如きが敵う相手ではないのだよ」
「調子に乗るなって言うのは、オレのセリフだ」
……ゲートオープン、界放!!
緑生い茂る児雷也森林にて、木陰で彩る白昼の中、鉄華オーカミと嵐マコトによるバトルスピリッツが、コールと共に幕を開ける。
先攻は鉄華オーカミだ。目の前の障害物を叩き潰すべく、己のターンを進めて行く。
[ターン01]鉄華オーカミ
「オレからだ、メインステップ、バルバトス第1形態を召喚」
ー【ガンダム・バルバトス[第1形態]】LV1(1)BP2000
「召喚時効果でデッキ上から3枚オープンし、その中にある鉄華団カード1枚を手札へ。オレは『オルガ・イツカ』を手札に加え、残りを破棄」
オーカミの初動は今回もバルバトス第1形態。所謂ゴッドシーカー効果により、オーカミはメインとなる創界神ネクサス『オルガ・イツカ』のカードを手札へと加えた。
「ターンエンド」
手札:5
場:【ガンダム・バルバトス[第1形態]】LV1
バースト:【無】
「私のターンですね、お見せしますよ、圧倒的な力の差を」
オーカミのターンがエンドとなり、次は嵐マコトのターン。最凶のスピリット、クローズエボルを宿したそのデッキからカードをドローし、それを進めて行く。
[ターン02]嵐マコト
「メインステップ、緑の成長期デジタルスピリット、テントモンをLV1で召喚します」
ー【テントモン】LV1(2)BP2000
「召喚時効果で自身にコアブースト」
嵐マコトが初めて召喚したスピリットは、てんとう虫型の小さなデジタルスピリット、テントモン。その効果で1つコアブーストを行う。
「さらにそれを対象として【アーマー進化】を発揮」
「!」
「轟く友情、ライドラモンをLV1で召喚します」
ー【ライドラモン】LV1(2)BP5000
召喚したてのテントモンがデジタル粒子と化し、嵐マコトの手札に戻ると、気高き雄叫びと共に、黒い鎧を纏った青き一角獣、ライドラモンが代わりに彼のフィールドへと現れる。
「その召喚時効果でトラッシュに2個コアブースト」
「これがアーマー進化か」
嵐マコトは、後攻の1ターン目であると言うにもかかわらず、テントモンと合わせていきなり3つのコアをブースト。オーカミとのコアの総数に差をつける。
「アタックステップです。噛み砕きなさい、ライドラモン」
アタックステップに突入し、嵐マコトはライドラモンに攻撃を命ずる。それに従い、ライドラモンが四本の脚でオーカミのライフバリアを目掛けて駆け出した。
「第1形態でブロックだ」
ライドラモンの行く道を、バルバトス第1形態が阻む。体格ではバルバトス第1形態が勝っていたものの、ライドラモンの一角から放たれた青い稲妻によって、その鉄の身体を打ち砕かれ、爆散へと追い込まれた。
これにより、このバトル初のアタックステップは嵐マコトの優勢に終わる………
かに見えた。
「鉄華団の第1形態がフィールドを離れる時、手札からグレイズ改弍の効果を発揮」
「ほお」
「このスピリットカードを、ノーコストで召喚」
ー【グレイズ改弍[流星号]】LV1(1)BP2000
バルバトス第1形態の破壊をトリガーとして、オーカミの手札にある1枚が誘発。彼のフィールドへ、マゼンタカラーの装甲を持つ低コストのモビルスピリット、グレイズ改弍が現れる。
「さらに流星号が召喚された事で、手札のノルバ・シノの効果を発揮。グレイズ改弍に直接合体するようにノーコスト召喚し、コア2個以下のライドラモンを破壊だ」
「やりますね」
ー【グレイズ改弍[流星号]+ノルバ・シノ】LV1(1)BP6000
2枚目の誘発カード。紫のパイロットブレイヴであるシノが、グレイズ改弍へと合体。
さらにグレイズ改弍は、手に持つ斧をブーメランのように投げ、それをライドラモンへ直撃させ、爆散へと追い込む。
「グレイズ改弍の召喚時効果で1枚ドロー」
「アッアッア、まさかそのセットを初手に引き込んでいたとはね。やはり貴方は引きが強い」
「……」
「だが、すぐにわかる。その程度の要素では、この私に勝てない事をね、ターンエンドです」
手札:4
バースト:【無】
最初のターンから痛いカウンターを諸に受けてしまったものの、己のデッキに自信があるのか、余裕な笑みを浮かべる嵐マコト。
その彼の言葉をシカトし、オーカミの次なるターンが幕を開ける。
[ターン03]鉄華オーカミ
「メインステップ、創界神ネクサス、オルガ・イツカ、クーデリア&アトラを配置」
ー【オルガ・イツカ】LV1
ー【クーデリア&アトラ】LV1
「配置時の神託を発揮。オルガに+2、クーデリア&アトラに+1」
「鉄華団スピリット達を支える、2種の創界神ネクサスのご登場ですか」
オーカミが鉄華団の2種の創界神ネクサスを配置。
そして彼の鉄華団デッキは、この2枚が揃った途端に加速して行く。
「グレイズ改弍のLVを2に上げ、アタックステップ。グレイズ改弍でアタック、シノの効果で手札1枚を破棄して、2枚ドロー」
オーカミのアタックステップ。グレイズ改弍でアタックを行うと、そのフラッシュタイミングで、彼はより勝利に近づくべく、己の手札1枚をBパッドへと叩きつける。
「フラッシュ【煌臨】を発揮、対象はアタック中のグレイズ改弍」
スピリットを新たな姿へ昇華させる効果【煌臨】………
その効果を発揮させたオーカミの背後から、白い装甲のモビルスピリットの影が飛び出す。それはフィールドのグレイズ改弍を依代として重なり合い、姿を見せる。
「天空斬り裂け、未来を照らせ、ガンダム・バルバトスルプス、LV2で煌臨」
ー【ガンダム・バルバトスルプス+ノルバ・シノ】LV2(2)BP12000
こうして現れたのは、バスターソード状のメイス、ソードメイスを片手で携えた、鉄華団のバルバトスの1種、ガンダム・バルバトスルプス。
「対象スピリットの煌臨により、2種の創界神ネクサスに神託。バルバトスルプスの煌臨アタック時効果でデッキ上2枚を破棄、クーデリア&アトラの【神域】の効果が誘発、トラッシュにある紫1色のカード1枚をデッキ下に戻して1枚ドロー」
ルプスの煌臨アタック時効果により、クーデリア&アトラの効果が誘発する。
鉄華団カードの効果でデッキが破棄された時に誘発する、クーデリア&アトラの【神域】の効果。トラッシュの要らないカードをデッキに戻しつつ、ドローを行い、オーカミの手札とトラッシュの質を高めて行く。
「フラッシュ、オルガの【神域】を発揮。デッキ上から3枚のカードを破棄し、1枚ドロー。クーデリア&アトラの効果がまた誘発、トラッシュのカードをデッキ下に戻して1枚ドロー」
「これで貴方の手札は6枚ですか」
「ルプスのアタックは続いてるぞ、合体によりダブルシンボル、2つのライフを破壊できる」
大量のドローとトラッシュ肥やしを行い、デッキを加速させるオーカミ。その上で、さらに強力なスピリットである、バルバトスルプスの攻撃が、嵐マコトを待ち受ける。
「そのアタックはライフで受けましょう」
〈ライフ5➡︎3〉嵐マコト
ソードメイスを縦一線に振い、バルバトスルプスが、嵐マコトのライフバリアを一度に2つ破壊する。
「ターンエンドだ」
手札:6
場:【ガンダム・バルバトスルプス+ノルバ・シノ】LV2
【オルガ・イツカ】LV2(3)
【クーデリア&アトラ】LV2(2)
バースト:【無】
強力な鉄華団スピリットと2種の創界神ネクサスを立てつつ、多くの手札とトラッシュを抱えた、限りなく最高に近い初手から、理想の展開を見せるオーカミ。
次のターンで勝ち越す勢いのまま、そのターンをエンドとする。
[ターン04]嵐マコト
「メインステップ、手札に戻ったテントモンを再召喚します」
ー【テントモン】LV1(1)BP2000
「召喚時効果でまたコアブースト」
早くも劣勢に立たされた嵐マコトのターン。前のターンの【アーマー進化】によって手札へと戻っていたテントモンが再召喚される。
それを使い、彼はまた新たな手駒を呼ぶ。
「召喚したテントモンを対象に、再び【アーマー進化】を発揮」
前のターンと同様、テントモンが粒子化し、嵐マコトの手札へと帰還する。
そして、その代わりに出現するスピリットは………
「ロイヤルナイツ、黄金の守護竜、マグナモンをLV1で召喚」
ー【マグナモン】LV1(1)BP6000
テントモンの代わりに現れたのは、黄金の太陽。
それを中より爆散させ姿を見せるのは、堅牢な黄金の鎧を身に纏う青き竜、マグナモン。
「召喚時効果を発揮。相手のフィールドにいる最もコストの低いスピリット1体を破壊します」
「!」
「消え失せなさい、バルバトスルプス!!」
マグナモンの堅牢な鎧から放たれる黄金の波動。バルバトスルプスはそれに飲み込まれ、塵芥となりこの場から消滅してしまう。
「合体しているシノは場に残す」
「アッアッア、私の大反撃はまだ終わりませんよ。テントモンを三度召喚し、効果でコアブースト」
ー【テントモン】LV1(1)BP2000
三度目のテントモンの登場。嵐マコトは、その効果で増えたコアを認識すると、それをコストとして、あるカードを手札から発揮させる。
「ここで、貴方への対策のためデッキに忍ばせていた1枚、6色マジック、ゴッドブレイクを発揮します……!!」
嵐マコトが発揮したのは、世にも珍しい Xレアのマジックカード。
その効果は強力無比で、尚且つオーカミの鉄華団デッキに対する最も有効なメタカードであり………
「その効果で先ずは1枚ドロー、そして創界神ネクサス、オルガ・イツカを破壊します」
「なに?」
ゴッドブレイクの効果により、オーカミのBパッド上にあるオルガのカードは、そこを離れ、トラッシュへと誘われる。
創界神ネクサス、オルガ・イツカの効果により、トラッシュからの展開を得意とする鉄華団デッキにとってはあまりに辛い効果だが、これだけではまだ終わらなくて………
「効果発揮後、ゴッドブレイクはフィールドに残り続け、その間、互いのデッキ破棄効果は無力化され、創界神ネクサスのシンボルは0となります」
「……」
「ルプス、ルプスレクス、フルシティなど、貴方のデッキの大半は己のデッキを破棄して効果を使う。つまり、その破棄自体を止めて仕舞えば、貴方の鉄華団デッキは機能不全に陥ると言う事です」
そう告げられたオーカミが己のBパッドへと目を向けると、残った創界神ネクサス、クーデリア&アトラのカードから、紫シンボルが消失。カードの軽減が行えなくなってしまう。
さらにはオマケのようなデッキ破棄効果の無力化。これが発揮され続けている限り、己のデッキを破棄することで強力な効果を発揮させる事が可能な鉄華団達の効果が、ほとんど使いモノにならなくなってしまったに等しい。
簡潔に言えば、圧倒的劣勢。オーカミは僅か1枚のマジックカードにより、己の戦略、戦力を大きく削がれてしまった。
「アッアッア!!……惨め惨め。粋がってこの私に逆らってしまったばかりに、力の差を見せつけられ、己の弱さに恥を掻き、挙げ句の果てに命を落とす事になってしまうのだから」
「……」
「こう言うのを犬死にって言うのですよ!!……アッアッア、アーアッアッア!!」
響き渡る、嵐マコトの勝ち誇ったような喜びの声。
普通なら、普通の感性を持つ者であれば、心が折れ、絶望してしまうかもしれない。
だがオーカミは………
「わかったから、さっさとターンを進めてくれる?……時間ないんだけど」
「……」
どこまでもブレないオーカミに、嵐マコトは、正直イラついた。
ゴッドブレイクを打たれた時点で、負けは決まったも同然であると言うにもかかわらず、何が「さっさとターンを進めてくれる?」だ、この後に及んで煽るとは、良い度胸をしている。
内心ではそう思ったが、強がりにも見える。嵐マコトはすぐさまイラついた心を落ち着かせ、彼を更なる絶望へ落とすために、己の手札へと手を掛ける。
「アッアッア、鈍感で羨ましいよ。ならばお望み通りさっさとお見せ致しましょう。神の領域に到達した者のバトルスピリッツを。手札から【アーマー進化】を発揮、対象はテントモン」
また【アーマー進化】だ。テントモンが粒子化し、彼の手札へと戻ると、新たなるデジタルスピリットが見参する。
「燃え上がる勇気、フレイドラモンをLV2で召喚します」
ー【フレイドラモン[2]】LV2(2S)BP8000
見参したのは、青き身体に炎模様のアーマーを纏うスマートな竜戦士、アーマー体デジタルスピリット、フレイドラモン。
「貴方は知っていますか?……フレイドラモン、Dr.Aを討ち倒したかの英雄、芽座椎名のマイフェイバリットカードを」
「知らない」
「その召喚時効果により、残ったパイロットブレイヴ、ノルバ・シノを破壊」
召喚されたフレイドラモンの効果により、オーカミのフィールドに残っていた唯一のシンボル、ブレイヴのノルバ・シノのカードがトラッシュへと送られる。
「アタックステップ、フレイドラモンでアタックします。アーマー体がアタックした事により、フレイドラモンの更なる効果、デッキから1枚ドロー」
「ライフで受ける」
〈ライフ5➡︎4〉鉄華オーカミ
「ぐっ……!?」
実体化しているカードによる攻撃。フレイドラモンが拳に炎を纏わせ、オーカミのライフバリア1つを粉砕。
オーカミは砕けたライフバリア越しに骨が軋む程の衝撃を受け止める。
「また行きますよ、マグナモンでアタック。フレイドラモンの効果でドロー」
「それもライフだ」
〈ライフ4➡︎3〉鉄華オーカミ
「ぐうっ……!!」
今度はマグナモンの鉄よりも強固な拳が、オーカミのライフバリアを粉砕。
強い衝撃により、オーカミの額に巻いていた包帯が緩み、解けかける。
「ターンエンドです。さぁ残り数ターン、モルモットらしい悪足掻きを私にお見せください」
手札:5
場:【マグナモン】LV1
【フレイドラモン[2]】LV2
【ゴッドブレイク】
バースト:【無】
「やっとオレのターンか」
アーマー体のデジタルスピリットによってフィールドのスピリットを、マジックカード、ゴッドブレイクによって創界神ネクサスとデッキの根幹を潰されてしまったオーカミ。
逆転の芽を掴むべく、ようやく巡ってきた己のターンを進めて行く。
[ターン05]鉄華オーカミ
「メインステップ、大地を揺らせ、未来へ導け!!……ガンダム・バルバトス第4形態、LV2で召喚!!」
ー【ガンダム・バルバトス[第4形態]】LV2(3S)BP9000
劣勢を打破すべく手札から呼び出したのは、エースカードの1体、黒き戦棍メイスを携える、ガンダム・バルバトス第4形態。
コア不足により、最大のLV3ではなくLV2での召喚だ。
「アッアッア、LV2ですか。ゴッドブレイクのシンボル消失効果が効いているみたいですね」
「……アタックステップ、バルバトス第4形態でアタック」
嵐マコトをシカトし、オーカミはアタックステップへと突入。バルバトス第4形態で攻撃を仕掛ける。
LV3ではないため、シンボル追加効果は発揮できないものの、それ以外の効果は発揮可能だ。
「効果でフレイドラモンのコア2個をリザーブへ置き、消滅」
バルバトス第4形態は、フレイドラモンへ向けてメイスを横一線に振い、吹き飛ばして消滅へと追い込む。
「毛程も痛くありませんねぇ。そのアタックは、ライフで受けましょう」
〈ライフ3➡︎2〉嵐マコト
今度は縦にメイスを振い、バルバトス第4形態は嵐マコトのライフバリア1つを粉砕。
これにより、ライフだけはオーカミの有利となる。
「ターンエンド」
手札:6
場:【ガンダム・バルバトス[第4形態]】LV2
【クーデリア&アトラ】LV2(3)
バースト:【無】
結局、大した反撃もできず、悪い状況を何も変えられないまま、そのターンをエンドとしてしまうオーカミ。
そんな彼の息の根を止めるべく、再び嵐マコトのターンが幕を開ける。
[ターン06]嵐マコト
「メインステップ、一気に畳みかけますよ。マグナモンのLVを3に上げ、テントモン、並びにピコデビモン2体を連続召喚」
ー【テントモン】LV1(1S)BP2000
ー【ピコデビモン】LV1(1)BP1000
ー【ピコデビモン】LV1(1)BP1000
「テントモンの効果でコアブーストし、ピコデビモン2体の効果でデッキから1枚ずつドロー」
4度目の登場となるテントモンに、丸っこいコウモリ型の成長期デジタルスピリット、ピコデビモンが2体出現。
効果によりコアブーストとドローを促進させる。
「己の弱さを痛感するがいい。アタックステップ、マグナモンでアタック」
計4体のスピリットをフィールドに並べ、アタックステップへと突入する嵐マコト。先ずはマグナモンで攻撃を仕掛ける。
そして、このアタックのフラッシュタイミング、彼は遂にあのカードを使う。
「フラッシュタイミング【煌臨】を発揮、対象はアタック中のマグナモン」
スピリットを新たな姿へと昇華させる【煌臨】………
嵐マコトはその効果を贅沢にも、ロイヤルナイツのスピリットを対象に発揮させる。その上に置かれるカードは、当然あの最強最悪のライダースピリット。
「全ての進化の頂点に立つ、破壊の化身。仮面ライダークローズエボル!!……ロイヤルナイツを贄とし、いざ来たれり!!」
ー【仮面ライダークローズエボル】LV3(4)BP20000
突如嵐マコトのフィールドに現れる1つの幻影。それはマグナモンと重なり合い、1体のスピリットへと変化を遂げる。
それは、悪魔の科学者Dr.Aのエースカード、エボルの最終進化系。この世の全てをクローズさせる、最凶最悪のライダースピリット………
その名はクローズエボル。圧倒的王者の風格を纏い、今、この場に顕現する。
「コイツがアニキの言ってた、クローズエボル……」
「来た。来ましたよ、漲る力が私の中で迸る。今の私は、誰にも負けませんよぉ!!!」
クローズエボルが登場するなり、嵐マコトの身体から黒いオーラが滲み溢れる。これはかの悪魔の科学者Dr.A曰く『進化の力』と呼ばれるモノ。
その力は、この世界の誰もが内に秘めているモノだが、かつてのDr.Aや、今の嵐マコトは違う。それらをより多く身体に取り込む事で、無限の力を手にしている。
「アーアッアッア!!……無様無様ぁ!!……クローズエボルの煌臨アタック時効果、コスト8以下のバルバトス第4形態を破壊し、ゲームから除外」
「くっ……」
クローズエボルは、龍の形を模った青色に紫の混ざったオーラを拳に乗せ、空を殴り、それをバルバトス第4形態へと放つ。
その龍のオーラは、忽ちバルバトス第4形態の白き装甲を貪り破り、爆散へ追い込む。
「破壊に成功した時、2枚ドロー。アーアッアッア、アーアッアッア!!……やはり私は既に最強、無敵、神にも等しいカードバトラーとなったのだ。かつてのDr.Aや芽座椎名など足元にも及ばない、私こそが史上最も強いカードバトラーなのだ!!……アーアッアッア!!!」
強い自分が、敵を圧倒的な力で捩じ伏せられる自分が、好きで好きで堪らない嵐マコト。
オーカミを追い詰めて行くたびにアドレナリンと言う名の脳汁が吹き出しているのだろう。
「アンタが最強、無敵、神?……なんか、オレはそう思えないな」
「なに」
強さを誇示する嵐マコトに、オーカミがそう告げた。それに対し、当然のように嵐マコトは意を唱える。
「な訳ないでしょう。このエクセレントな私が、かつて最強だった2人のカードバトラーのデッキを合成して作り上げた無敵のデッキですよ?……神にも等しい強さがあるに決まっているじゃありませんか」
「あー、それが理由か。獅堂的に言うと、全く魂が感じられないってヤツだ」
「!?」
「上手く言葉にできないんだけど、多分、アンタはオレが今まで戦って来たどのカードバトラーよりも、弱い」
「………は?」
何を言う。
たかがバトスピ歴半年程度の分際で………
どこの誰に生意気な口を聞いていると思っているのだ。
「私が弱いとは、大きく出ましたねぇ。なら貴方はこの私に勝てると?……クローズエボルを破り、勝利を収められると?」
オーカミの数々煽りが、遂に嵐マコトの逆鱗に触れる。
だが、残念な事に、オーカミが告げていた事は、その全てが真理であり、真実。
それが今、証明される。
「できるさ。見せてやる、鉄華団の勝利への道をな」
「アーアッアッア!!……それは不可能。私は貴方とのバトルを何度もシミュレーションしてきました、鉄華団のどのカードを使っても、王者を使ったとしても、貴方が私に勝つ確率は、0%なのですよ!!」
オーカミの雰囲気が少し変わり、刺々しくなる。
ここからだ。オーカミと、オーカミの鉄華団達による、大反撃が幕を開け、奴を黙らせる。
「オレはトラッシュにある、仮面ライダーゲンム ゾンビアクションゲーマー レベルXの効果を発揮……!!」
「なに、ライダースピリット!?」
「相手の手札が効果で5枚以上になった時、トラッシュからコイツをノーコストで召喚できる。LV2で召喚」
ー【仮面ライダーゲンム ゾンビアクションゲーマー レベルX】LV2(3S)BP8000
大地に迸る、紫電の沼。その中よりゾンビの如く這い上がり、赤と青の眼光を輝かせる、白いライダースピリットが1体。
その名は、仮面ライダーゲンム ゾンビアクションゲーマー レベルX。
「馬鹿な、モビルスピリットが主体の鉄華団デッキに、ライダースピリットだと!?」
「アンタも、デジタルスピリット主体のデッキに、ライダースピリットを入れてるだろ。デッキの組み合わせは無限大だ。ゾンビアクションゲーマーの召喚時効果を発揮、効果で召喚していた時、相手スピリット1体からコア5個をリザーブへ置く」
「!?」
「対象は当然、アタック中のクローズエボル。消滅させろ!!」
ゾンビアクションゲーマーの両手から放たれた紫電が、嵐マコトのクローズエボルを襲う。
あのエボルの最強進化形態のクローズエボルも、流石にこの状況下のゾンビアクションゲーマーには勝てなかったか、その紫電の前に体内にあった全てのコアが消失、消滅させられる。
「私のクローズエボルが、最強のライダースピリットが、他のライダースピリットに敗れた……モビルスピリットにライダースピリット、なんですか、まるで奴の方がDr.Aみたいではありませんか!!」
「ふ……アニキが言ってた『強いカードはあっても、最強のカードはない。最強があるとすれば、それはどんなカードでも巧みに使いこなす、カードバトラーの頭脳だ』ってな」
「ぐうっ……ターンエンドォ!!」
手札:6
場:【テントモン】LV1
【ピコデビモン】LV1
【ピコデビモン】LV1
【ゴッドブレイク】
バースト:【無】
嵐マコト、ここで苦渋のターンエンド宣言。
己を神だと棚に上げていた彼にとって、格下同然だと思っていたただの少年にしてやられた事は、かなり屈辱であった事だろう。
だが、フィールドのスピリットの数や、手札の数、さらにフィールドに残り続けているマジック、ゴッドブレイクの存在から、未だに嵐マコトが有利な状況にいる事には変わりなくて。
「だが、まだ私の手札には2枚のクローズエボルがある。ゴッドブレイクと3体のブロッカーで次のターンを凌ぎ、今度こそ貴様を屠ってくれる!!」
嵐マコトは、焦りからか己の手札の内の2枚を晒す。
バトルスピリッツに限らず、カードゲームにおいて、それは自殺行為。しかも彼に至っては次の戦略まで丁寧に教えてしまっている。
「ふ……本気でそんな事できると思ってるのか」
「なに!?」
「終わりだ。オレのトラッシュを確認しなかった、アンタの負けだ」
迎えるのはオーカミのターン。これをラストターンとすべく、巡って来たそれを進めて行く。
[ターン07]鉄華オーカミ
「メインステップ、ランドマン・ロディをLV2で召喚」
ー【ランドマン・ロディ】LV2(2)BP3000
オーカミが召喚したのは、全体的に丸みを帯びた、小型の鉄華団モビルスピリット、ランドマン・ロディ。
「さらに手札からパイロットブレイヴ、ユージン・セブンスタークを召喚し、ランドマン・ロディに直接合体」
「ッ……ここに来て私も知らない鉄華団カード!?」
ー【ランドマン・ロディ+ユージン・セブンスターク】LV2(2)BP5000
小型の鉄華団スピリットに、小型のパイロットブレイヴを合体させた所で、準備が完了したか、オーカミはアタックステップへと突入する。
「アタックステップ、ランドマン・ロディでアタック、そして、合体したユージンの効果を発揮」
「!」
「アンタのフィールドにあるマジックカード、ゴッドブレイクを破棄する」
「なんだと!?」
ユージンの効果により、嵐マコトのBパッドから、ゴッドブレイクのカードがトラッシュへと破棄される。
これにより、デッキ破棄効果の無力化効果は抹消。全ての鉄華団スピリット達が力を取り戻す。
「ゴッドブレイクが消えた事で、ランドマン・ロディのアタック時効果が解禁。デッキ上から1枚を破棄し、それが鉄華団なら、相手のコア1個以下のスピリット1体を破壊」
ランドマン・ロディの効果で破棄されたのは、当然鉄華団カード。今回は『バルバトス第1形態』だ。
「鉄華団カード、よってコア1個以下のピコデビモンを破壊だ」
「くっ……!!」
「クーデリア&アトラの【神域】が誘発、トラッシュのカード1枚をデッキ下に戻して1枚ドロー」
小型の斧を振い、ランドマン・ロディが、嵐マコトのピコデビモンを斬り裂いて爆散させる。
これにより、嵐マコトのフィールドのスピリットは残り2体。オーカミはそれらも奪うべく、手札のカードを使用する。
「フラッシュ【煌臨】を発揮、対象はゾンビアクションゲーマーだ」
その効果発揮の瞬間、オーカミの背後から、巨大なモビルスピリットの影が、フィールドへと飛び出して来る。
「轟音唸る、過去をも穿つ、ガンダム・グシオンリベイクフルシティ!!……LV1で煌臨」
ー【ガンダム・グシオンリベイクフルシティ】LV1(2)BP5000
ゾンビアクションゲーマーと、フィールドに現れたモビルスピリットの影が重なり合い、その影は実体を得る。
こうして現れたのは、茶色く分厚い装甲を持つ、バルバトスと双璧を成すモビルスピリット、グシオンリベイクフルシティ。
「フルシティの煌臨時効果、デッキ上2枚を破棄し、その中の紫1色のカード1枚につき、相手フィールドのコア2個をリザーブに置く」
こうして破棄されたカードは、いずれも紫1色のカード。鉄華団デッキなら当然だ。
「よし、全部紫1色。残ったテントモンとピコデビモンから全てのコアを外し、消滅」
「ぬうっ!!」
グシオンリベイクフルシティは、背部にあるもう2つの腕を展開し、合わせて4つの腕でマシンガンを持ち、連射。
嵐マコトのフィールドに残っていた全てのスピリット達が、無慈悲にも散って行った。
「クーデリア&アトラの【神域】が誘発。さらにフラッシュ、今度は【神技】の効果を発揮、トラッシュの鉄華団カードを戻し、アタック中のランドマン・ロディを回復」
手札とトラッシュの質を向上させ続けたクーデリア&アトラの【神技】の効果がここで発揮。ランドマン・ロディが回復し、2度目のアタック権利を得る。
「アァァァ!!!……アタックはライフで受ける」
〈ライフ2➡︎1〉嵐マコト
訳がわからなくなって来た嵐マコト。叫びながらランドマン・ロディのアタックをライフで受ける宣言。
ランドマン・ロディは一度斧を背部へマウントすると、今度はマシンガンを展開、それをグシオンリベイクフルシティ同様連射し、嵐マコトのライフバリア1つを破壊する。
「私のライフが減った事により、手札から覇王爆炎撃の効果をノーコストで発揮、グシオンリベイクフルシティを破壊だ」
負けじと放った手札誘発カード。赤属性のマジックカード『覇王爆炎撃〈R〉』の効果により、天空から吐き出された爆炎が、グシオンリベイクフルシティを焼き尽くし、爆発四散させる。
「そんな事しても無駄だ。ランドマン・ロディで、ラストアタック……!!」
「ッ……!!」
ふと、嵐マコトは今まで思ってもいなかった事が頭の中を過った。
それは、己の敗北。
絶対的且つ圧倒的な力を携えた己が敗北する。考えもしなかった事象だ。それと同時に、アルファベットと対峙した時の言葉を想起してしまい………
ー『嵐マコト、オマエはかつてのDr.Aと全く同じ力を使っているのか?』
ー『アッアッア……そうですとも。これはDr.Aが使った進化の力。今、それが私の全身で縦横無尽に駆け巡っているのです。故に、このクローズエボルも難なく扱える』
ー『……』
ー『最高の力です。まさに神にも等しい』
ー『その力を得たDr.Aの末路を、オマエは知ってるのか?』
ー『は?』
ー『進化の力を増幅させ過ぎたDr.Aは、椎名にバトルで敗北した直後、その負荷に耐えられなくなり、消滅した』
ー『……』
ー『このままだとオマエ、バトルに負けた瞬間死ぬぞ』
負けた瞬間、死ぬ???
誰が、私が??
まさか、嘘だと言ってくれ、頼むから……なぁ?
「最後のライフ、奪って来い、ランドマン・ロディ!!」
「ヒイッ……!?!」
突如迫って来た死の恐怖。それは瞬く間に嵐マコトの背筋を凍り付かせ、足を竦ませる。
「わ、わかった。もう何もしない、春神ライもイナズマも返す、何でもする、だから許してくれ……許してください!!」
「ん?」
突然怯え出した嵐マコトに、オーカミの手が止まる。それに伴い、ランドマン・ロディも、彼の最後のライフバリアを目前に、その足を止める。
「なに急に」
「貴方の強さはわかりました。これ以上バトルしても意味がない、ここは穏便にと思ってね。だからアタックはおやめください」
「……そうやって、油断させる作戦か」
「違います違います。何をしてあげれば許してくれますか?……私はこう見えてお金持ちです。望むだけの金額をお渡しする事も、あぁそうだそれが良い。貴方の家庭はあまり裕福ではなかったでしょう、私が救って差し上げますよ、それでどうでしょう?」
「ソラの時とか、ライの時とか、今まで散々好き勝手やっておいて、何を今更………!!」
オーカミの怒りが募る。その怒りの力は、紫色のオーラとなって、彼のデッキが差し込まれているBパッドへと流れ込んで行く。
やがてそのオーラは、オーカミの背後で、畏怖の象徴たる悪魔の形を形成する。
「ランドマン・ロディ、アイツのライフを破壊しろ……!!」
「あ、あ、アァァァァァァ!?……死ぬんだぞ、私のライフを0にしたら、この私が、僕が!!……人殺しになるだぞ貴様ァァァ!!」
「知らないよ、そんな事」
怒りにより紫のオーラを纏うオーカミが、ランドマン・ロディに改めてラストアタックの宣言。
その残酷で無慈悲な宣言に、嵐マコトはもはや叫び倒す事しかできなくて………
「やれ」
「あ、ァァァ……アァァァァァァァ!!!!?!」
「?」
突如、今にも斧でライフを破壊しようとしていたランドマン・ロディが消え去る。オーカミが何かと思えば、どうやら嵐マコトが咄嗟にBパッドの電源を落としただけみたいだ。
確かに、これなら最後のライフは砕かれず、彼は死なない。ただその行為は、負けを認めたのも同然である。
「Bパッドの電源を切ったのか。アンタ、ホント救えないな」
「……ア、ア」
「もういいからどっか行けよ。アンタじゃ、オレ達の中の誰にも勝てない」
「ア、ア、アァァァァァァァァァ!?!……ア、アァァァァァァ!!!」
死ぬ恐怖を間近で味わった嵐マコト。神を名乗っていた時の態度の大きさはどこへ行ったのか、情けない背中を晒し、涙目になりながらオーカミから一目散で逃げ出した。
「……北東、だったな。待ってろ、ライ」
オーカミの怒りによって湧き出ていた紫色のオーラが消え失せる。彼は、ライを救けるため、今一度蛇澤マコトの言葉通り、北東の方角へと走り出した。
******
「ア、ア、アァァァ!!……何なんだあのクソガキ、何故人様を平気な顔で殺そうとできる、ナメてやがる、腐ってやがる!!」
一方、嵐マコトは息を切らしながら、必死にオーカミから、死から投げていた。
その表情や言葉遣いなどから、小物臭さが垣間見えている。今までのは殆ど演技で、理想の自分を演じて来ていたのだろう。
「復讐だ。復讐してやる、手始めに奴が必死になって取り返そうとしている、あの人造人間のメスを殺して、それから……」
「それから、何をする気だ?」
「!!」
横から響いた声の方へ首を向ける嵐マコト。
その先には………
「アンタは倒す。今ここで、オーカに、ライ、イナズマ先生、アルファベットさんのためにもな」
九日ヨッカがいた。全てを取り返すために、彼もまた、戦いに身を投じる。
次回、第60ターン「誠のカードバトラー」