とある休日。街のカードショップ「アポローン」にて事件は起こった。
「おいコラ、ミツバァァァー!!」
アポローンの店長、九日ヨッカが店内のレジ前でアルバイトのミツバに怒鳴りつける。その周囲には真っ二つに砕けたBパッドが転がっている事から、どうやらミツバがBパッドを破壊したようで………
「これは大事な店内用のBパッドだって言ったよな!?…何やってんだオマエ!?…コレないと問屋から商品を発注できないんだぞ!?」
「へ〜…じゃあ今度からは歩いて問屋に行く感じになるんすかね?」
「どの口が言ってんだァァァー!!」
お客が大勢いる中で怒鳴り散らかすヨッカだが、この2人のやり取りにみんな慣れているのか、特に気にする事なく雑談したり、テーブルでバトスピしたりなどしている。
「つーかBパッドなんかどうやって壊したんだよ!!…一刀両断されてるじゃねぇか!?」
「いや。なんかいつ悪漢に狙われてもいいように空手チョップの練習してたら勝手に壊れててさ〜……なんか人間が作ったモノって意外とすぐ壊れるよね〜」
「異世界から来た魔物みたいな事言うな!!……オマエみたいなイカレた女が悪漢に狙われるわけねぇだろ!」
「センパイひど〜い…可愛い後輩であるこの私が消えてもいいんですか?」
「どうでもいいからさっさとBパッド買い直しに行くぞ。ったく、オーカ!!…店番は任せたぞ」
「わかった」
少し離れたところで2人の言い争いをどうでもよさそうに見ていたオーカ。ふとした事でアニキ分であるヨッカに店番を言い渡される。
「別にそのくらい私だけで行きますよ〜」
「……オレが行かなきゃ絶対買わずに逃げるだろオマエ」
「え〜…そんな事しないし、じゃあセンパイだけで行けばいいじゃないですか」
「誰のせいで店内のBパッドがぶっ壊れたと思ってんだ!!」
怒れるヨッカに首根っこを掴まれながら渋々新しいBパッドを買い直しに向かうミツバ。これで店内には数少ないお客とアルバイトの鉄華オーカミだけとなった。
「……店番か。と言っても今お客少ないし、別にやる事もないんだよな………これで給料発生してるのちょっと嫌だけど」
そう言いながらレジ前に腰を下ろすオーカ。特にこれと言ってやる事もないため、少しばかり退屈そうな表情を浮かべている。
しかしバトルスピリッツを始めて以降、バトルスピリッツと言うゲームは彼に暇を与えない。
店内の自動ドアが開き、1人のお客が現れる。
「いらっしゃい……あ、ヒバナか」
「やぁオーカ!」
「うん」
現れたのはオーカの同級生にして大事な友達、一木ヒバナ。
「アレ……ヨッカさんとミツバさんは?…今オーカ1人なの?」
「うん。アニキとアネゴはさっきなんか壊れたって言ってどっか買いに行った」
「へ〜……仲良いよねあの2人」
オーカの言う「アネゴ」とは雷雷ミツバの事。彼女からその呼び方を強要され、断り続けていたが、余りにもしつこかったため、結局そう呼ぶ事になったのだ。
「で。今日はなに?…悪いけど今店はオレ1人だからバトルはできないな」
「あ、うんいいよそれは全然……少しおしゃべりしない?」
「おしゃべり?」
「そう、おしゃべり。なんか喋ろうよ」
「なんかって……別にオレ喋る事なんてないけど」
自分から話すと言う行為は滅多にしないオーカ。そのくらいの歳であれば普通は何の話題がなくても盛り上がる事が当たり前だがそれができない。
しかしそんなオーカの事を好いているヒバナは「うーーん」と唸りを上げながらどうにか話題を考える。すると1つだけそれが出てきて………
「あ、そうだ。オーカのデッキ見せてよ」
「ん……オレの?」
「うん。そう言えば鉄華団のカードまともに見た事ないなーって思ってさ」
「まぁいいけど」
そう言われると、オーカは要求されるがまま、自分のデッキである鉄華団のカード達をヒバナに手渡した。
この間はミツバとの試合前に新調されたカード達をそのまま入れて使ったため、枚数は40枚を超えてしまっていたが、今ではちゃんと40枚に整えられている。
「おぉ……なんかこうしてみると意外と纏まってるね。鉄華団デッキと言うよりかはバルバトスデッキみたいな感じだけど」
「いっぱいいるからねバルバトス」
「これ全部知らない人から貰ってるんでしょ?……ぶっちゃけそれって大丈夫?」
「貰ってると言うよりかは送り付けられてるって言った方が妥当かな。まぁ大丈夫なんじゃない?……多分」
「多分って……」
いったい誰が、何のために、どんな理由で鉄華団のカードを送っているのかは一切わからないが、これと言って多額の金額を要求される事もなく、ただただ渡されているだけであるので、いつの日かオーカはその事を余り気にしなくなっていた。
精々出会ったら「ありがとう」と感謝の気持ちを告げようくらいの認識でいる。
「鉄華団と……バルバトスと出会ってから毎日が楽しいんだ。ヒバナとか、イチマルとかの友達もできたし」
「あっはは……オーカの中ではイチマルも友達の部類なんだね〜…あのお騒がせストーカー……」
「でもまぁ、凄いとは思う。この街の大きな大会でベスト8なんでしょ?」
「あんなのより断然私の方が強いわよ〜!」
鈴木イチマル。仮面ライダーゼロワンのデッキを使うオーカ達よりも一個上の学年の少年。ヒバナは彼によくストーカー紛いな行為をされるため、余りいい思いはしていない。
しかし、ナンパな人間ではあるものの、界放リーグ、ジュニアの部。と言う大会ではベスト8を勝ち取る程の実力者である。
「ヒバナは何位なの?」
「え?」
「イチマルがベスト8なら、ヒバナは何位なの?」
「あーーー……ごめん。私あんまり大きな大会は出ない事にしてるんだ……」
「ふーーん」
オーカの抱いた疑問に対して、どこか上の空な様子で返答するヒバナ。何やら少々訳ありのようだが、オーカは特に気にしないし、それ以上踏み込まない。
「ふふ……でもそっか。オーカは私達と出会えて嬉しいか………私もオーカと出会えて毎日楽しいよ。これからもよろしくね」
「うん」
感情の起伏に乏しい故か、オーカは全くと言っていい程自覚していないが、ヒバナと凄く良い雰囲気、良いムードになっている。
しかし、それを邪魔立てするように店内の自動ドアが開く。新たに来店して来たのはあっても15、6程度の歳の少年。銀色の髪に整った中性的な顔立ち、黒いジャケットが真っ先に印象に残る。
そんな彼は目先にある商品として並んだショーケースのカードには目もくれず、真っ直ぐにレジ前にいるオーカとヒバナの所まで向かい…………
「……見つけたぞ。鉄華オーカミ」
「………誰?」
「この記事を読んだ。オレと戦え。無論、バトルスピリッツでな。早美アオイを倒した力、それをオレにぶつけて来い」
「いや、だから誰?」
「この人……どこかで」
先日高校生プロバトラー早美アオイにオーカが勝利したと言う新聞記事を突き付けながら、彼に宣戦布告する謎の少年。口角を鋭く上げているその様子から余程彼とのバトルを楽しみにしていた事が窺える。
そんな少年の顔にどこか見覚えがあるようなヒバナ。必死に思い出そうとしているが、中々思い出せない。
そして、バトスピを挑まれては断れないと思っているオーカだが………
「ごめん、今は無理。店今オレだけだからさ、やるならアニキとアネゴが帰って来てからにしてくれ」
「なに………せっかくここまで来てやったオレから逃げると言うのか?…オマエに拒否権などない。早くデッキを取れ、そしてオレとデスティニーの渇きを癒せ」
「偉そうだな。つーかデスティニーって誰だよ」
「あ……思い出した。確か獅堂レオン……去年の界放リーグ、ジュニアクラスでぶっちぎりでトップに立った人だよ」
「界放リーグ、ジュニアクラス?……あぁ、イチマルが出た大会の名前か」
ヒバナが思い出した事でようやくその少年の名が判明する。その名は獅堂レオン。この日本一のバトスピ街、界放市で行われる大会、界放リーグ。そのジュニアクラスの大会でトップを獲得した存在。
その情報だけで彼が如何に強いカードバトラーかが理解できる。
それを聞くと少しだけやる気になるオーカだが、レオンの目の先は急に眼前に出て来たヒバナに移って………
「……オマエ、まさか一木ヒバナか?……あの伝説のプロカードバトラー、一木ハナビの娘」
「え………そうだけど」
レオンはヒバナの正体が超有名なプロバトラー、一木ハナビの娘である事が分かると、またニヤリと口角を鋭く上げて…………
「成る程。謎のカード鉄華団を持つヤツと一木ハナビの娘がいるカードショップ。良い店だな………鉄華がバトルできないなら仕方ない、先ずはオマエのバトルで腹ごしらえと行こうか、一木ヒバナ」
「!」
兎に角バトルに飢えている様子のレオン。店の都合でバトルできないオーカに代わり、メインターゲットをヒバナに移す。
今まで感じたこともない威圧感を感じるヒバナであったが、一木ハナビの娘として、挑まれたバトルは逃げられなくて………
「えぇ……わかったわ。じゃあ早速行きましょ、バトル場に」
「フ……話が早くて助かる」
「……なんか毎日変なヤツが来るな、この店」
張り詰めた緊張感の中、バトルを承諾するヒバナ。その後はオーカと共に店内のバトル場へと移動。Bパッドやデッキなどを取り出し、バトルの準備を進めて行く。
「……さぁ、来いよ。オマエが噂通りのカードバトラーであるのならば、オマエのバトルでオレとオレのデスティニーの渇きは癒される」
「デスティニー……確かアナタのエースカードだったわね……正直言っている意味は全然わかんないけど……いいわ、見せてあげる。一木ハナビの娘、ヒバナのバトルを!」
「フ………そうこなくては面白くない。準備は終わった……行くぞ」
「えぇ!」
………ゲートオープン、界放!!
オーカがただ1人見守る中、強い者とのバトルを求め続ける少年レオンと、一木ハナビの娘であるヒバナのバトルがコールと共に幕を開ける。
先攻はヒバナだ。颯爽とそれを進めて行く。
[ターン01]ヒバナ
「メインステップ……ネクサス、勇気の紋章を配置してターンエンド」
ー【勇気の紋章】LV1
「勇気の紋章か。成る程、父親譲りのグレイモンデッキか」
ヒバナの背後に出現したのは太陽の形を模した巨大な紋章。レオンはこのカードの存在から、彼女が生粋のグレイモン使いである事を悟りながら、己のターンを進めていく。
[ターン02]レオン
「メインステップ……モビルスピリット、コアスプレンダーをLV2で召喚!」
「ッ……やっぱり、白のモビルスピリットデッキ」
ー【コアスプレンダー】LV2(3S)BP3000
上空舞う戦闘機のようなモビルスピリット、コアスプレンダーがレオンの場に颯爽と飛来して来る。
そしてこのカードはレオンのデッキの潤滑油となり得るスピリットであり………
「召喚時効果、デッキからカードを2枚オープン、その中から対象のカードを1枚を手札に加える」
オープンされるカード。レオンはその中からカードを選び手札に加え、残りはデッキの一番下へと戻した。
[ターン03]ヒバナ
「メインステップ、マジック、双翼乱舞。デッキから2枚ドロー、勇気の紋章のLVを2に上げて、ターンエンド」
手札:6
場:【勇気の紋章】LV2
バースト:【無】
レオンのモビルスピリットの召喚に対して、ヒバナはドローマジックのみの使用でそのターンをエンド。
[ターン03]レオン
「メインステップ、母艦ネクサス、ミネルバをLV2で配置」
ー【ミネルバ】LV2(1)
空に浮かぶ巨大な鉄の飛行船。その名はミネルバ。母艦ネクサスと呼ばれる、パイロットブレイヴと同様、モビルスピリットのデッキをサポートするカードの1種だ。
「配置時効果でデッキ上から3枚をオープン、その中の対象カード1枚を手札へ。アタックステップ、コアスプレンダー、行け」
「来た……!」
白き戦闘機コアスプレンダーを発進させるレオン。そして、このコアスプレンダーには召喚時以外にももう1つだけある効果を有していて………
「フラッシュ、コアスプレンダーの【零転醒】を発揮……!」
「!!」
「1コストを支払う事で、コアスプレンダーは真の姿なる!……その名はインパルスガンダム!!」
コアスプレンダーの動きに合わせて飛来して来る、機械兵の脚部と上半身。それはコアスプレンダーと言う名のコックピットを間に挟み、合体…………
それらはガンダムの姿なり、ヒバナの前に姿を現した………
ー【インパルスガンダム】LV1(2S)BP4000
「インパルス………さっき言ってたデスティニーってヤツとは違うのか?」
そう呟くオーカ。ビーム銃やシールドと言ったモビルスピリットにしてはメジャーな装備をしている白き機械兵、インパルスガンダムだが、それは飽くまでもレオンのデッキの駒と言ったところ…………
当然ながらこのスピリットは様子見程度の尖兵なのである。
「さぁ一木ヒバナ。インパルスの攻撃を受けろ!」
「ッ……ライフで受ける!!」
〈ライフ5➡︎4〉ヒバナ
インパルスガンダムの銃から放たれるビーム攻撃がヒバナのライフ1つを華麗に撃ち抜く。
だが、ヒバナも負けてはいない。事前に配置していたあのカードの効果を発揮させる。
「甘いわね!…勇気の紋章の効果、私のライフが減った時にBP5000以下のスピリット1体を破壊する!」
「!」
「インパルスガンダムには悪いけど、早々に退場してもらうわよ!」
ヒバナの背後で赤々と光り輝く太陽を模した紋章。その中心部より放たれる炎の弾丸がレオンのインパルスガンダムに直撃。
呆気なく爆散してしまう…………
かに見えたが。
「!」
火炎弾直撃による爆発、それに伴う爆煙の中、まるで何事もなかったかのようにインパルスガンダムは姿を見せる。
「残念だったな。インパルスガンダムの効果、1ターンに一度、効果で場から離れる時、ボイドからコア1つを自身に置く事で場に残る………知っていたさ、勇気の紋章の効果。オレはオマエの父、一木ハナビのバトルビデオを何本も視聴したのだからな」
ー【インパルスガンダム】(2S➡︎3S)LV1➡︎2
「ライフを奪っただけじゃなく、勇気の紋章の効果を逆手に取ってコアブーストまでやるなんて」
「オイオイ。この程度で驚かれても困るぞ、オマエにはオレとデスティニーの渇きを癒してもらわないといけないのだ、ターンエンド」
手札:5
場:【インパルスガンダム】LV2
【ミネルバ】LV2
バースト:【無】
強力な迎撃効果を備えるネクサスカード、勇気の紋章までをも計算の内に入れていたレオン。
流石は現ジュニア内で最高、プロにも通じる腕前があると噂されるだけはある。ヒバナも負けじと帰って来たターンを進めていく。
[ターン05]ヒバナ
「流石はジュニア最強、でも私も負けない!!…メインステップ!!…グレイモンをLV2で召喚!」
ー【グレイモン】LV2(3S)BP5000
ヒバナの場に現れたのは立派な三本の頭角を持つ肉食恐竜型の成熟期デジタルスピリット、グレイモン。颯爽とレオンとインパルスガンダムを威嚇するように咆哮を上げるが、どちらも全く動じない。
「アタックステップ、グレイモンでアタック!…そしてその効果【超進化:赤】を発揮、グレイモンを完全体、メタルグレイモンに進化!!」
「!」
ー【メタルグレイモン】LV2(3S)BP9000
青白い光の中に包まれていくグレイモン。その中で左半身が機械化、背中にはボロボロの翼が新たに生える。そしてその光を解き放ち、改めて現れたのはグレイモンを超えた完全体メタルグレイモン。
デジタルスピリット特有の効果【進化】………
これを繰り返す事でデジタルスピリットはより強い個体へと変化して行く。
「メタルグレイモン召喚時効果、BP12000以下のスピリット1体を破壊する!…対象は当然インパルス!」
「だが、インパルスはターンに一度、自身の効果でコアを増やしつつ場に残る」
ー【インパルスガンダム】(3S➡︎4S)
胸部のハッチを開き、ミサイルを発射するメタルグレイモン。それはインパルスガンダムに直撃し、爆発するが、前のターンと同様、インパルスガンダムは何事もなかったようにそれを耐えていた。
「だけどその効果は1ターンに一度だけ、メタルグレイモンでアタックすれば、そのアタック時効果で今度こそインパルスを破壊できる!」
「成る程」
強力過ぎるが故に、インパルスガンダムの効果にはターンに一度の制限がある。ヒバナはそれを逃さない。このままメタルグレイモンで攻撃し、今度こそインパルスガンダムを破壊する気でいたのだ…………
しかし、相手はあの獅堂レオン。ここで何も手を打たないわけがなかった。彼は手札にある1枚のカードを抜き取り………
「ならばそれを止めるだけだ。フラッシュブラストインパルスガンダムの【換装:シルエットシステム】」
「ッ……専用効果!?」
「この効果でボイドからコア1つをインパルスに追加。そうした時、同じ状態でこのスピリットも入れ替える……!」
ー【ブラストインパルスガンダム】LV3(4S➡︎5S)BP10000
インパルスガンダムの黒いバックパックが離れ、そこにまた別の形をした緑色のバックパックが装着。
インパルスガンダムの装甲は緑色に変化し、新たな姿、ブラストインパルスガンダムに入れ替わった。
「ブラストインパルスは入れ替わった時、相手のLV1、2のスピリット2体を手札に戻すか疲労させる。オレは疲労の方を選択し、メタルグレイモンを疲労させる」
「!」
ー【メタルグレイモン】(回復➡︎疲労)
新たなバックパックにより装備された大きな2丁の機関銃。ブラストインパルスはそれを撃ち放ち、メタルグレイモンに膝を突かせる。
これで、メタルグレイモンはアタックが不可能な状態に陥った。よって、アタック時効果も必然的に不発となって…………
「………ターンエンド」
手札:5
場:【メタルグレイモン】LV2
【勇気の紋章】LV2
バースト:【無】
「ヒバナが翻弄されてる、気がする。アイツ、実力は口だけじゃないのか」
ヒバナとて、一流のプロカードバトラー一木ハナビの娘の名に恥じない実力を有している事は初心者のオーカでも何となくわかる。
だからこそ、より鮮明にあのレオンと言うカードバトラーがどれ程強いのかを彼は悟っていた。
[ターン06]レオン
「メインステップ……母艦ネクサス、2枚目のミネルバを配置!」
「!」
ー【ミネルバ】LV1
「再び配置時効果。デッキからカードを3枚オープンし、対象のカードを手札に加える」
これにより、レオンは対象となったカードを手札に加え、残りはデッキの下へと戻した。
「さらにブラストインパルスのLVを下げ、手札に戻ったコアスプレンダーを再召喚。また召喚時効果でカードを手札に加える………む、ハズレか」
ー【ブラストインパルスガンダム】(5S➡︎2S)LV3➡︎2
ー【コアスプレンダー】LV1(1)BP1000
換装の効果により手札に戻っていたコアスプレンダー。レオンはそれを再召喚し、今一度その効果を発揮させるも、今回は失敗したようだ。
しかし、それでもその余裕の表情は揺らぐことは無い。また淡々とターンを進めていき…………
「バーストを伏せてアタックステップ。コアスプレンダー、ライフを砕いて来い」
罠とも呼べるカード、バーストが裏向きで伏せられると共に発進するコアスプレンダー。肝心のメタルグレイモンが疲労状態であるため、スピリットを使ってのブロックができないヒバナであったが………
ここがエースの出しどころだ。そう思い、手札のカードを1枚切った………
「ここだ!…フラッシュ【煌臨】を発揮、対象はメタルグレイモン!」
「ッ……おぉ、来るか!」
ヒバナが今から何をするのかを瞬時に察したレオン。待ちに待ったそれの登場に喜ぶように目の瞳孔が縮まる。
「究極進化!…現れろ、ウォーグレイモン!」
これでもかと言わんばかりにありったけの咆哮を張り上げるメタルグレイモン。そのままその体を真っ赤な炎で包まれていき、姿形を大きく変えていく。
やがてその中にいるメタルグレイモンだったそれは腕にある鉤爪で周囲にある炎を斬り裂き姿を見せる。
それはデジタルスピリットの中でも最上級の究極体スピリット、竜人型のウォーグレイモンだ。
ー【ウォーグレイモン】LV1(2)BP8000
「やはり、ウォーグレイモン。美しい……!」
「見惚れてる場合じゃないと思うけど?……ウォーグレイモン、煌臨時効果。BP合計15000まで好きなだけスピリットを破壊!」
「!」
「コアスプレンダーとブラストインパルスを破壊!」
登場するなり両掌から身の丈以上の火球を形成していくウォーグレイモン。それを全力でレオンの場へと投げつける。その場にいたコアスプレンダー、ブラストインパルスガンダムは焼き尽くされ、堪らず爆散してしまう。
「スピリットは全滅か。あのウォーグレイモンが相手なのだ。これくらいは必要経費と言ったところか……ターンエンド。次のターン、オマエの全力を見届けてやる!」
手札:4
場:【ミネルバ】LV1
【ミネルバ】LV1
バースト:【有】
「何よ、ずっと偉そうに………でもいいわ。見せてあげるわよ、私の全力!」
常にバトルに刺激を求める獅堂レオンと言う少年。それに応えるべく、ヒバナは回って来たターンを突き進んでいく…………
[ターン07]ヒバナ
「メインステップ……燃え上がる爆炎、打ち鳴らせ爆音!!…異魔神ブレイヴ、真・炎魔神!!」
「………!」
ー【真・炎魔神】LV1(0)BP6000
炎纏う歯車が轟音を鳴らしながら回転。その中より現れいでるのは赤きブレイヴ、真・炎魔神。一木ハナビの家系の者は皆この炎魔神系のブレイヴを所有しているため、この世界では他のブレイヴよりもかなりの知名度を誇っている。
「成る程真・炎魔神か。一木ハナビの娘が持つには妥当なブレイヴだな」
「真・炎魔神をウォーグレイモンに合体!…さらにLVを2にアップ!」
ー【ウォーグレイモン+真・炎魔神】LV2(3)BP18000
真・炎魔神の右手から放たれる赤の光線がウォーグレイモンと真・炎魔神を繋ぎ、強力な合体スピリットとなる。
「アタックステップ、ウォーグレイモンで合体アタック!…真・炎魔神の効果でセットされたバーストを破棄!」
「!」
炎を纏った拳を地面に叩きつける真・炎魔神。纏っていた炎が地面を伝い、レオンのセットしていたバーストカード『ソードインパルスガンダム』を焼き払う。
これにより、レオンの防御手段を剥いだも同然。彼はこの攻撃を受ける他がなくなって…………
「ライフで受ける」
「合体スピリットはダブルシンボル、2点のダメージを食らいなさい!」
〈ライフ5➡︎3〉レオン
ウォーグレイモンの両腕に装備されているドラモンキラーと呼ばれる鉤爪の二撃がレオンのライフを一気に斬り裂く。
さらにこれだけでは終わらない。ヒバナは次にウォーグレイモンのアタック時効果を発揮させて…………
「ウォーグレイモンのアタック時効果、トラッシュにあるソウルコアをウォーグレイモンに置き、相手ライフ1つをボイドに置く!」
「!」
ー【ウォーグレイモン+真・炎魔神】(3➡︎4S)LV2➡︎3
〈ライフ3➡︎2〉レオン
ウォーグレイモンは煌臨時の時よりも遥かに巨大な火球を形成、それをレオンに向けて投擲。レオンのライフバリア1つは一瞬にして燃え尽きてしまい、半数以下となってしまう。
「真・炎魔神の召喚コストにソウルコアを払っていたか………」
「えぇ!…どう?…これが私の実力!…ターンエンド!」
手札:3
場:【ウォーグレイモン+真・炎魔神】LV3
【勇気の紋章】LV1
バースト:【無】
ウォーグレイモンと真・炎魔神。2枚の強力な力により開き出して行くヒバナとレオンの戦力差。
プロバトラーの一木ハナビの娘として申し分ない力を発揮したと言えるヒバナ。この年齢でこれだけの実力を持つ彼女を、近い年代の者達では先ず敵う事はないだろう…………
しかし………
「『どう?』だと?………そう答えなければならないのなら、正直失望した」
「ッ………え」
そんな誇らしげで、自信満々なヒバナに苛立ちを覚えるようにレオンは口を開いて…………
「ウォーグレイモンを持っているならこう使うだろうと言う動きだ。オレの予想の範疇を出ない。この程度の実力でよくあの一木ハナビの娘を名乗れているモノだな」
「なに……!?」
「本当にガッカリしたよ一木ヒバナ。オマエは毎年行われる界放リーグに参加したと言う記録はない。それをオレはオマエが強過ぎるが故だと思っていた。オレと同じ、強さの深みにハマっているからこそ、弱者とのバトルがつまらないのだろうと。だがそれはとんだ勘違いだった」
「何よその勝手な思い込み!!…出るとか出ないとか、そんなの私の勝手でしょ!?」
「オレが思うにオマエは、負ければ一木ハナビの娘なのになどと陰口を叩かれるのが嫌なだけなのだろう?」
「!!」
「………図星か。オマエのような敗北を恐れているだけのただの腰抜けがオレは嫌いだ。こんなバトル、オレとオレの相棒の力でさっさと終わらせてやる」
一木ヒバナは父である一木ハナビの事を誰よりも尊敬している。しかし、その存在が大き過ぎる事もあり、大きな大会に出れば出る程、敗北した時に蔑まれる言葉が跳ね返って来るのだが…………
ヒバナはそれが嫌で、余り大きな大会には出場しない。それがこの街最大のビッグイベント『界放リーグ』なら尚更。
そんな彼女を徹底的に潰すべく、遂にレオンが本気を見せる………
[ターン08]レオン
「メインステップ………時は満ちた。運命をも覆す我が魂!!…デスティニーガンダムッ!!」
「!!」
ー【デスティニーガンダム】LV3(5)BP23000
蔓延る雷雲。そこから放たれる落雷と共に姿を見せるのは、赤き機翼を羽ばたかせる白きモビルスピリット、デスティニーガンダム。
レオンが相棒と呼ぶそれの強さは名前の通り、バトルの運命をも容易く変えてしまう………
「アイツがデスティニー………アレは、本当にヤバいな」
そう呟いたのはデスティニーガンダムの効果を一切知らない鉄華オーカミ。存在するだけで迸るデスティニーガンダムの強さを肌で感じ取っているようだ。
そしてそれは遂にヒバナとウォーグレイモンに向かって動き出して………
「アタックステップ。その身で味わえ、デスティニーの強さを!!……アタックだ!」
躊躇いなく攻撃の指示を送るレオン。デスティニーはそれを聞くなり背後に備え付けられた長めのビーム砲をウォーグレイモンへ向けて取り出し……
「デスティニーのアタック時効果。自身のBP以下の相手スピリット1体を破壊する!」
「な………ッ!?」
「フッ……七光りの雑魚でも気が付いたか。デスティニーガンダムのLV3BPは23000。いくらウォーグレイモンが真・炎魔神と合体していようが、敵う事はない!………やれ」
無慈悲に放たれる強力無比なビーム砲。地を抉りながら突き進むそれは、ヒバナのウォーグレイモンをも容易に貫いて見せる。
倒れるわけには行くまいと立ち上がろうとするウォーグレイモンであったが、力及ばずか、地に伏せ爆散してしまった。場には合体していた真・炎魔神だけが残ってしまう。
ー【真・炎魔神】LV1
「さらに破壊したスピリットのシンボル分、ライフのコアをボイドに置く」
「ッ……キャァァー!!?!」
〈ライフ4➡︎2〉ヒバナ
今度はヒバナの方へ向けて再びビーム砲を放つデスティニーガンダム。ライフバリアが彼女を死守するものの、それは一気に2つ溶解。
圧倒的過ぎるデスティニーガンダムの強さに、ヒバナは手も足も出せない。
「フラッシュ。デスティニーガンダム最後のアタック時効果。系統ザフトのネクサスカードを疲労させる事でこのスピリットは回復する」
「!」
「ミネルバを疲労させ、回復」
ー【デスティニーガンダム】(疲労➡︎回復)
止まる事を知らない進軍。終わらない進撃。
デスティニーガンダムはレオンの場にザフトのネクサスガードがある限り、何度でも起き上がる。もうヒバナのライフを破壊し尽くすまで攻撃を止める事はない。
「どうしたもう手詰まりか?…だったら素直にデスティニーガンダムの本命のアタックを受けるんだな!」
「ッ……ライフで受ける!……ぐうっ!」
〈ライフ2➡︎1〉ヒバナ
今度は巨大なビームソードを取り出し、ヒバナのライフバリアへと向かって一閃。その内の1つを紙切れのように一刀両断して見せる。
これで残りライフは1つ…………
お終いだ。後はレオンがアタックを宣言するだけで終わる。
「デスティニーガンダムでアタック!…効果で真・炎魔神を破壊し、そのシンボル分のダメージを与える!!」
「!」
「散れ。敗北の彼方へと!!」
まるで蝶の羽を連想させるような虹色の光を機翼から噴出させ、上空を華麗に舞うデスティニーガンダム。そしてウォーグレイモンをも容易く撃ち倒したそのビーム砲を、今度は真・炎魔神とヒバナの直線上に向ける。
そして、それは又しても無慈悲に放たれる。
「……そんな………こんな、こんなヤツに………!」
〈ライフ1➡︎0〉ヒバナ
悔しさに拳を握り、歯を噛み締めるヒバナ。だが、いくら悔しかろうが、この結果がもう覆る事はない。デスティニーガンダムから放たれたビーム砲は真・炎魔神とヒバナのライフバリアを諸共撃ち抜いた。
力尽き爆散する真・炎魔神。その間、ヒバナのライフが0になった事により、勝者はこの街の中学生最強とも呼べる実力者、獅堂レオンとなる。
しかし、手応えのないバトルであったからか、勝利しても尚、彼はどこか不服そうな表情を浮かべていて…………
「一木ヒバナ。とんだ期待ハズレだった………余程、甘やかされて育てられたのだろうな………そうでなければあり得ない。こんなヤツが一木ハナビの娘など………!」
「ッ………!!」
追い討ちをかけるように言葉を発するレオン。実力があり過ぎて、至高のバトルに飢えているからとて、いくらなんでも言い過ぎなのは間違いない。
それに対してもう反論する元気もないか、ヒバナは思わずその場で力尽きたように腰を落としてしまう。それを見るなり、透かさずオーカが寄り添いに向かう。
「ヒバナ」
「ごめんオーカ………今は1人にさせて………!」
「………そっか」
立ち上がり、オーカの横を過ぎ去って行くヒバナ。オーカはいつも通りの平然とした無表情で素っ気なく返答するが、彼女の悔しさや悲しさをある程度は理解している。
そして、涙を流しているのも見逃しはしてなくて…………
「…………」
「何をぼんやりしている鉄華オーカミ。次はオマエの番だ………きっと、きっとオマエはオレとデスティニーを癒してくれると信じているぞ」
完全に興味を失ったヒバナに代わり、レオンが目をつけたのは、当初の目的でもあった鉄華オーカミ。
いつも。常に何をしてても、何をやらされても無表情で何を考えているかわからないオーカこと鉄華オーカミ。それは他の者から見れば、ずっとぼんやりしているようにも見える。それはレオンも例外ではなかった。
次にオーカが言葉を言い放つまでは…………
「わかったから早く来いよ。オマエはオレが潰す………!!」
「!!」
変わらぬ表情。だが明らかな怒りを見せ、変貌を遂げた雰囲気を醸し出すオーカ。
無理もない。ヒバナは生まれて初めてできた友達。ヨッカのアニキと一緒に自分にバトスピを教えてくれた恩人でもある。そんなもう自分にとっては欠かせない大事な存在であった彼女を傷つけたレオンが許せるわけもない…………
「フッ………ようやくその気になってくれたか。見せてくれよ………オレに、オレとデスティニーに………オマエの持つ鉄華団、バルバトスのカードを!!」
オーカの放つ殺気に思わず半歩後ずさるレオンだったが、やがてそれも闘争本能の一部になり、逆に笑みを浮かべながらそう告げて行く………
良くも悪くもバトルに飢えた2人。
後に永遠のライバルとなるこの2人の最初の決戦は、まもなくスタートを切る事になる…………
次回、第7ターン「バルバトスとデスティニー」