バトルスピリッツ 王者の鉄華   作:バナナ 

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第60ターン「誠のカードバトラー」

 

 

「おぉ、遂に、遂に完成した。これこそ、僕らが追い求めていた究極の生命体、エニーズ02だ!!」

「……」

「やった、やったんだイナズマ先生、僕らは!!」

「あ、あぁ」

 

 

今から13年も前の話だ。

 

清らかな青の生体液が詰まった、強化ガラスが素材の巨大なフラスコのようなモノ。その中で浮かぶ、小さな赤ん坊。

 

その正式名称はエニーズ02。後に『春神ライ』と名付けられる、バトスピの未来を見通す絶対的な力『王者』を宿し、効率良く使う事ができる、対Dr.A用の人造人間だ。

 

当時の嵐マコトと春神イナズマは、数々の苦闘と苦難の末に、ようやく完成させる事ができた。

 

 

「これで徳川先生を倒す事ができる。世界は、人類は新たな未来を手にする事ができます」

「そう、だな」

「イナズマ先生、どうされました?」

 

 

エニーズ02の完成に大いに喜ぶ嵐マコトだが、それとは対象的に、春神イナズマはどこか戸惑いを感じさせるような浮かない表情を見せていた。

 

 

「なぁマコト、私達が成した事、徳川先生と何が違うと思う?」

「え?」

「自らの手で新たな生命を生み出し、敵と戦わせる。今の徳川先生がやろうとしている事だ。私達は、いったい何になろうとしているんだ?」

 

 

その彼の手は、生命を自らの手で産み出してしまったと言う背徳感と、産まれたての罪もない子に、これから殺害を指示しなければならないと言う恐怖に震えていた。

 

 

「……つまり、イナズマ先生は、僕に何が言いたいのですか?」

「この子は、オレ達の手で、普通の人間の子供として育てるべきだ」

「はぁ!?」

「そして、エニーズを造る技術は、後世に語り継がせない。この技術が受け継がれ、進化して行けば、戦争どころの話ではなくなる」

 

 

春神イナズマは、聡明な男だった。

 

それ故に、気がついてしまった。エニーズを造る技術、引いては『人が人を造る技術』は、戦争の火種になる。それに、エニーズは通常の人よりも強く、賢く産まれる。下手をすれば、人類が滅亡しかねない、と。

 

できれば、完成する前に気が付きたかったはずだ。だが、Dr.Aを倒さなければならないと言う使命があるのも事実。エニーズ02を造る際も、その葛藤に悩まされていた事は、想像に易い。

 

 

「今更、何を怖気付いているのですか!!」

「……」

「貴方が何を言っても、徳川先生、Dr.Aは倒さなければならないのです。そのためのエニーズ02だ。それをただの子供に育てるなど、愚の骨頂。宝の持ち腐れ。それに、エニーズの技術を語り継がせない?……ならば僕らで独占してやればいい」

「!?」

 

 

同じく元Dr.Aの助手にして同僚、嵐マコトの口から突然放たれた言葉に、春神イナズマは驚愕した。

 

 

「そうだ独占ですよ。エニーズ02は、僕達2人が力を合わせないと造る事ができない。ならばそのエニーズ02を大量に生産すれば、徳川先生に代わって僕達が世界の神になるのも夢じゃ」

「ダメだ!!」

「!!」

 

 

春神イナズマは、柔和な顔つきからは想像もできない程の大声で、嵐マコトの考え方を真っ向から否定する。

 

 

「いいかマコト。人は大いなる力を持った時、心のない怪物になる事はできても、神になる事はできない。仮にオマエの言う通り、私達がエニーズ02で徳川先生を倒し、エニーズを大量生産、上っ面だけの神になったとしても、その先に待ち受けているのは、誰もが心を失くした、虚しい世界だ」

「……」

「それこそ、徳川先生と何も変わらない」

 

 

そこまで嵐マコトに告げると、イナズマは研究室を後にしようと、身につけていた白衣を椅子に掛ける。

 

 

「この事は、後でゆっくり話し合おう。徳川先生の件は大丈夫だ、彼に対抗するために、私が新たに強いカードバトラー達を育成する」

「……」

 

 

その言葉を最後に、イナズマは嵐マコトを残して、研究所を後にする。

 

この時の言葉は、彼は自分が目を掛け、バトスピを教えていた『九日ヨッカ』『鈴木レイジ』の事を指していた。彼らは、イナズマと共にDr.Aを倒すためにバトルを教えられていたのだ。

 

 

「何故だ、何故だイナズマ先生。なれるのだぞ、絶対的な力を持った神に。心を失くした虚しい世界を迎えようが、僕らの知った事ではないだろう……!!」

 

 

嵐マコトが、自分以外が居なくなった研究所の壁を殴りながら、そう呟く。彼はこの時から少しずつ狂い始めた。

 

その3日後、エニーズ02は、世にも珍しい契約スピリット『エアリアル』に選ばれ、さらにその1週間後、その力を悪き事に使おうとしている嵐マコトの気概を察知し、イナズマは、エニーズ02を連れ、1人、嵐マコトの前から逃走したのだった。

 

 

 

******

 

 

時は戻り、現在。

 

緑が生い茂る、界放市ジークフリード区、児雷也森林にて。

 

かつてのDr.Aと全く同じ力を宿し、最高のデッキを手にした嵐マコトだったが、鉄華オーカミの前になすすべなく敗北。力の代償により、負ければ肉体が消滅する事を思い出した彼は、オーカミの前から逃走。

 

辿り着いた先で、九日ヨッカと鉢合わせて………

 

 

「九日ヨッカ。ア、アッア、まさか今からこの私にバトルを挑もうと言うのか?」

「あぁ、そうだ。アンタに勝てば、アルファベットさんも元に戻るはずだからな」

 

 

ヨッカがBパッドを構え、バトルの準備をしながらそう告げる。

 

 

「アーアッアッア!!!……何が理由かと思えば敵討ちか、そんな事できるわけないだろう、今の私は神同然の力を所有している。この世の誰が私に勝てると言うのだ!!」

「はっはっは!!……笑わせるぜ、今しがたオレの弟分にタコ殴りにされて、情けねぇ顔で逃げ出したくせによ」

「ッ……見ていたのか、アレはイレギュラーだ、何かの間違いだ、この僕が負けるわけない!!」

 

 

前のバトルで、極限まで追い込まれた嵐マコト。強者を装うために作ったキャラは崩壊。一人称は「私」から「僕」になり、言葉遣いも丁寧ではなくなり、やや乱暴になっている。

 

 

「なら、オレに勝って見せるんだな。オーカにバトルを教えた、このオレに」

「抜かせ愚鈍者が。わかってるぞ、今の貴様は鉄華オーカミよりも弱い」

「テメェもだろうが」

「アァァァァァァァァァ!!!……黙れ、違うと言ってるだろォォォ!!」

「うるさ」

「僕は弱くなァァァい!!」

 

 

己よりも格下だと思っているヨッカに煽られ、奇声を張り上げながら怒り散らかす嵐マコト。直後にBパッドを展開し、ヨッカ同様バトルの準備を整える。

 

そして………

 

 

……ゲートオープン、界放!!

 

 

九日ヨッカ、嵐マコト、2人のバトルスピリッツが幕を開ける。

 

 

 

******

 

 

 

「……あのモジャモジャが言ってた場所はここか」

 

 

一方、嵐マコトに勝利し、先に進んでいた鉄華オーカミ。深い霧の中、遂に蛇澤マツリの言っていた巨大な塔に到着する。

 

その大きさはざっと70m程度か、周囲の木々を纏っているその姿はまるで『魔女の巣』………

 

 

「待ってろ、ライ」

 

 

ライを救出すべく、オーカミは小さな体でただ1人、そこへ乗り込むのだった。

 

 

 

******

 

 

舞台は戻り、始まったヨッカと嵐マコトのバトルスピリッツ。先攻は嵐マコト。先程受けた屈辱を晴らすべく、己のターンを進めて行く。

 

 

[ターン01]嵐マコト

 

 

「メインステップ、テントモンをLV1で召喚」

 

 

ー【テントモン】LV1(2)BP2000

 

 

「召喚時効果でコアブースト」

 

 

嵐マコトが呼び出した最初のスピリットは、てんとう虫型で、緑属性の成長期デジタルスピリット、テントモン。

 

その効果でコア1つを増加させる。

 

 

「さらにそのコアをコストとして支払い【アーマー進化】を発揮。テントモンを手札へ戻し、轟く友情、ライドラモンをLV1で召喚」

 

 

ー【ライドラモン】LV1(1)BP5000

 

 

「召喚時効果でコア2個をブースト」

 

 

テントモンが粒子化し、手札に戻ると、黒き鎧に稲妻のような頭角を身につけた青き獣、ライドラモンが嵐マコトのフィールドへと呼び出される。そして、気高い雄叫びを張り上げると、嵐マコトのトラッシュに、コア2個が追加される。

 

 

「ターンエンド。貴様のターンだ、さっさと進めろ」

手札:4

場:【ライドラモン】LV1(1)BP5000

バースト:【無】

 

 

怒り心頭故に、余裕がない嵐マコト。ヨッカを急かしながら、そのターンを終える。

 

 

[ターン02]九日ヨッカ

 

 

「メインステップ、ネクサス、最後の優勝旗を配置」

 

 

ー【最後の優勝旗】LV1

 

 

「配置時効果により、自身にコアブースト」

 

 

ヨッカの背後に出現したのは、巨大な美旗。風に靡くそれの効果により、コアが1つブーストされる。

 

 

「バーストをセットして、オレのターン、エンドだ」

手札:3

場:【最後の優勝旗】LV2

バースト:【有】

 

 

「それだけで終わりか。なら見せてやるよ、神の領域に到達した、僕の力をなぁ!!」

 

 

すっかり丁寧語や尊敬語を使わなくなった嵐マコト。素の乱暴な言動のまま、迎えた己のターンを進行する。

 

 

[ターン03]嵐マコト

 

 

「メインステップ、テントモンを再召喚」

 

 

ー【テントモン】LV1(1)BP2000

 

 

「効果でコアブースト」

 

 

2度目のテントモン。さらにそれを対象とし、嵐マコトはさらなる【アーマー進化】を発揮させる。

 

 

「テントモンを【アーマー進化】……燃え上がる勇気、フレイドラモンをLV1で召喚」

 

 

ー【フレイドラモン[2]】LV1(1)BP6000

 

 

またテントモンが粒子化し、今度は燃え上がるスマートな竜戦士、フレイドラモンがフィールドへと降り立つ。

 

 

「その召喚時効果で、ネクサス、最後の優勝旗を破壊」

「くっ……!」

 

 

フレイドラモンは拳から炎の弾丸を放ち、ヨッカの背後にある最後の優勝旗を焼き尽くす。

 

 

「まだ行くぞ、テントモンを再再召喚し、コアブースト。そのコアを使ってライドラモンのLVを2へ」

 

 

ー【テントモン】LV1(1)BP2000

 

 

早くも3度目のテントモン。これで嵐マコトのフィールドには2体の強力なアーマー体デジタルスピリットを含めた、3体のスピリットが並び立つ。

 

 

「アタックステップ、ライドラモンでアタック!!」

 

 

このバトル初めてのアタックステップを行ったのは嵐マコト。ライドラモンでアタックの宣言。

 

前のターンをネクサスの配置のみで終えたヨッカは、そのアタックをライフで受ける他ない。

 

 

「ライフで受ける」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉九日ヨッカ

 

 

「ぐうっ!?!」

 

 

ライドラモンの突進。一角がヨッカのライフバリア1つに突き刺さり、木っ端微塵に粉砕される。

 

リアルのスピリットによるリアルなダメージが、ヨッカを襲う。

 

 

「さぁらぁに!!……ライドラモンのLV2効果、アーマー体デジタルスピリットがライフを減らした時、追加で1つのライフを破壊する!!」

 

 

〈ライフ4➡︎3〉九日ヨッカ

 

 

「ぐぁっ!?」

 

 

ライドラモンの一角より放たれし青き稲妻。それがヨッカのライフバリアをさらに1つ砕く。

 

 

「アーアッアッア!!……痛かろう痛かろう、続けフレイドラモン!!」

「……そいつも、ライフだ」

 

 

〈ライフ3➡︎2〉九日ヨッカ

 

 

「ライドラモンの効果ぁ!!」

 

 

〈ライフ2➡︎1〉九日ヨッカ

 

 

「ぐはぁぁぁぁあ!?!」

 

 

フレイドラモンの拳から放たれる炎の弾丸と、ライドラモンの青き稲妻が、ヨッカのライフを一気に2つ粉砕。

 

余りにも強い衝撃と痛みに、ヨッカは吐血し、片膝をつく。

 

 

「アーアッアッア、アーアッアッア!!……終わりだ、死ねぇ、テントモンでアタ」

「その前に、ライフが減った事により、手札からこのカードを提示する」

「!!」

「アルケーガンダム。効果により1コストを支払い、自身をLV2で召喚」

 

 

ー【アルケーガンダム】LV2(3)BP12000

 

 

「なに、アルケーガンダム……!?」

 

 

ライフが減少した事により、ヨッカのフィールドへ出現したのは、赤みを帯びた装甲と大剣を持つ、青属性のモビルスピリット、アルケーガンダム。

 

カードバトラーならば誰もが知る、余りにも強すぎたが故に、デッキに1枚しか入れられない『制限カード』となった存在だ。

 

 

「アルケーガンダムはコスト7以下のスピリットを破壊できる。オマエのアーマー体デジタルスピリットは、コスト7以下が多いからな、仕込ませてもらったぜ。さらにライフ減少後のバースト、選ばれし探索者アレックスだ」

 

 

ー【選ばれし探索者アレックス〈R〉】LV1(1)BP4000

 

 

立て続けに裏向きのバーストが開き、そこから紫色のフードを被る、若い人型のスピリット、アレックスがヨッカのフィールドに召喚される。

 

 

「効果により、オマエのアタックステップは強制終了だ」

「くっ、小癪な。ターンエンド」

手札:3

場:【フレイドラモン[2]】LV1

【ライドラモン】LV2

【テントモン】LV1

バースト:【無】

 

 

アレックスの効果により、嵐マコトのアタックステップは強制終了。

 

痛みに耐え、アルケーガンダムを従えたヨッカにターンが移る。

 

 

[ターン04]九日ヨッカ

 

 

「メインステップ、先ずはアレックスの効果だ。自身を疲労させる事で、1つコアブースト」

 

 

自分のターンになった直後、ヨッカが発揮させたのはアレックスの効果。それにより、コアが1つ増える。

 

 

「馬鹿みたいにボカスカ殴ってくれて助かったぜ。お陰で、早く勝てそうだ」

「何だと!?」

「天空をも斬り裂く剣技、青のモビルスピリット、スサノオ!!……アレックスから全てのコアを貰い、LV2で来い!!」

 

 

ー【スサノオ】LV2(3)BP12000

 

 

薙刀を武器とし、黒々とした装甲に、和の甲冑を思わせる頭部を持った、青属性のモビルスピリット、スサノオ。

 

同じく青のモビルスピリットであるアルケーガンダムと共に、ヨッカのフィールドで肩を並べる。

 

 

「バーストをセットし、アタックステップ、スサノオの【武士道】を発揮。フレイドラモンに一騎打ちを所望する」

 

 

スサノオの【武士道】が発揮。

 

それにより、スサノオはフレイドラモンと対峙。拳のみで戦うフレイドラモンに合わせ、スサノオは一度武器である薙刀を地面に突き刺し、己もまた拳を構える。

 

そして始まる一騎打ち。フレイドラモンとスサノオはボクシングの如く殴り合いを披露するが、モビルスピリットとデジタルスピリットの体格差故か、スサノオの拳が、フレイドラモンにクリーンヒット、フレイドラモンはノックダウンされ、爆散へと追い込まれた。

 

 

「スサノオが【武士道】で勝利した時、オマエのライフ1つを破壊する」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉嵐マコト

 

 

地に突き刺した薙刀を回収したスサノオが、それを横一線に振い、嵐マコトのライフバリア1つを斬り裂く。

 

 

「効かねぇな!!」

「だけどコレは効くだろ。アルケーガンダムでアタックだ」

 

 

アルケーガンダムが天空を飛翔し、嵐マコトのライフ目掛けて急降下する。

 

アルケーガンダムを制限カードたらしめる理由の1つが、フラッシュタイミングで発揮できる、そのアタックブロック時効果だ。

 

 

「アッアッア、アルケーガンダムの効果は使わせない。フラッシュ【煌臨】を発揮、対象はライドラモン」

「!」

 

 

ライドラモンを対象に発揮される【煌臨】の効果。

 

来た。遂に来る。Dr.Aの相棒だったライダースピリット、その最終進化形態が。

 

 

「全ての進化の頂点に立つ、破壊の化身。仮面ライダークローズエボル!!……英雄の僕を贄とし、いざ来たれり!!」

 

 

ー【仮面ライダークローズエボル】LV2(3)BP15000

 

 

突如嵐マコトのフィールドに現れる1つの幻影。それはライドラモンと重なり合い、1体のスピリットへと変化を遂げる。

 

それは、悪魔の科学者Dr.Aのエースカード、エボルの最終進化系。この世の全てをクローズさせる、最凶最悪のライダースピリット………

 

その名はクローズエボル。圧倒的王者の風格を纏い、今、この場に顕現する。

 

 

「来やがったか、クローズエボル。テメェはオレがぶっ倒すぜ」

「ほざけ雑魚が。煌臨アタック時効果により、アルケーガンダムを破壊してゲームから除外」

 

 

クローズエボルは登場するなり、拳から龍の形をした紫と青が混ざったオーラを出現させ、それをアルケーガンダムに向けて放つ。

 

放たれたそれは、アルケーガンダムの赤みを帯びた装甲を貪り破り、爆散へと追い込んだ。

 

 

「破壊した事により、2枚ドロー。アッアッア、制限カードを使おうと、貴様が僕に勝てる要素はない!!」

「ふ……何か忘れてねぇか」

「!?」

「やっちまえ、スサノオ!!」

 

 

アルケーガンダムを倒したのも束の間、今度はスサノオが薙刀を構え、嵐マコトのライフバリアを目掛けて走り出した。

 

そして、この時に発揮できる効果がある。

 

 

「スサノオのアタック時効果、オレのフィールドに【武士道】【トップガン】しかいない時、オレは追加のアタックステップを獲得する」

「まさか貴様、アルケーガンダムを囮に使ったのか!?」

「贅沢はするさ。勝ちたいからなぁ!!」

「ぐっ……ライフで受ける」

「ダブルシンボルだ、2つ破壊する」

 

 

〈ライフ4➡︎2〉嵐マコト

 

 

「ぬおっ!?」

 

 

スサノオは、薙刀でアルファベットの『X』の文字を刻み、嵐マコトのライフバリアを一気に2つ破壊する。

 

フレイドラモン達とは違い、実体化していないスサノオの攻撃だったが、ヨッカのプレッシャー、死ぬ物狂いの勢いもあって、嵐マコトは痛みを受けていないにもかかわらず、痛みを与えられたかのように声が漏れ、半歩後退する。

 

 

「エンドステップ。ここで追加のアタックステップを行い、その開始時、再び【武士道】を発揮し、テントモンを破壊、ライフに1点のダメージ」

 

 

〈ライフ2➡︎1〉嵐マコト

 

 

「ア、アァァァァァァ!!!」

 

 

スサノオは、背部に備えた短剣を投げつけ、テントモンと嵐マコトのライフバリア1つを串刺しにして貫く。

 

これで残りライフは1つ。ヨッカと並んだ。

 

 

「ターンエンド」

手札:1

場:【スサノオ】LV2

バースト:【有】

 

 

クローズエボルを煌臨され、それを除去できなかったものの、アルケーガンダムを囮に、嵐マコトのライフバリアを大きく削ぎ落としたヨッカ。

 

ライフ1つと、バースト、手札1枚で、次の嵐マコトのターンを迎える。

 

 

[ターン05]嵐マコト

 

 

「メインステップ、おのれ、雑魚如きが、最強カードバトラーであるこの僕のライフに傷をつけるなど……!!」

「デッキは確かに強いと思うぜ。でもテメェはプレイが稚拙だ。研究や暗躍ばっかでそんな暇なかったんだろうがな」

「黙れぇぇ!!……このターンで終わりだ、クローズエボルのLVを3に上げ、テントモンをLV2で召喚」

 

 

ー【テントモン】LV2(3)BP3000

 

 

「効果でコアブースト」

 

 

本日2体目となるテントモン。その召喚時効果により、嵐マコトのフィールドに、またコアが1つ増加するが………

 

 

「馬鹿がよ、バーストくらい警戒しろよな」

「な、まさか!?」

「相手スピリットの召喚時効果発揮後により、バースト発動。青マジック、キングスコマンド」

「!!」

「効果により、デッキから3枚ドローし、その後手札1枚を破棄する」

 

 

安易にスピリットを展開した事により、ヨッカの伏せていたバーストカードが発動。

 

その効果により、ヨッカは新たなカードをドローする。そして、それだけでは終わらない。

 

 

「コストを支払い、フラッシュ効果も発揮する。それにより、このターン、オマエはコスト4以上のスピリットでのアタックができない」

「ぐうっ……!!」

 

 

キングスコマンドの効果により、嵐マコトのフィールドを包み込むように、青色のヴェールが出現する。

 

苛立ちによる歯軋りが止まらない。嵐マコトのフィールドにいるクローズエボルのコストは9。強すぎるが故に、キングスコマンドの効果でアタックが不可能となる。

 

 

「だが、テントモンのコストはたったの3。キングスコマンドの影響下でもアタックが可能だ、アタックステップ、くたばれぇい!!」

 

 

キングスコマンドによって出現した青色のヴェールを何事もなかったように潜り抜け、テントモンがヨッカのライフを破壊すべく飛翔した。

 

唯一のスピリットであるスサノオは疲労状態。残り1つしかないライフを守れずに万事休すかと思われたその直後、ヨッカは手札にある1枚を、己のBパッドへと叩きつける。

 

 

「フラッシュマジック、白マジック、スクランブルブースター!!」

「!?」

「対象はスサノオだ。これにより、このバトルのみ、疲労状態でのブロックを可能とする、ブロックだスサノオ!!」

 

 

使用された白属性のマジックカード「スクランブルブースター」の効果により、再び活動を可能とするスサノオ。

 

飛翔するテントモンを薙刀で斬り下ろし、爆散させる。

 

 

「何だと……」

「バトル勝利時、スクランブルブースターの効果で2枚ドロー。どうした、まだまだ来いよ」

「ほざくな雑魚のくせに、ターンエンド」

手札:4

場:【仮面ライダークローズエボル】LV3

バースト:【無】

 

 

背水の陣と言える布陣の中、ギリギリで嵐マコトの攻撃を回避するヨッカ。

 

これで次のターン、嵐マコトが逆に敗北の危機、引いては命の危機に晒される事となるが………

 

 

「手札は……」

 

 

今更全ての手札を確認する。だが、その中には、相手のスピリット2体を指定し、そのターン中はそれからライフを減らされなくなる白マジック『ミストシールド』が確認できて………

 

 

「ア、アッアッア……残りライフは1つしかないが、スサノオの【武士道】でクローズエボルを破壊する事は不可能。まだある、勝てる。わからせてやる、誰が最強なのかを、神なのかを」

 

 

嵐マコトの心に、ある程度の余裕が生まれる中、相棒であるスサノオと共に、ヨッカのターンを迎える。

 

 

[ターン06]九日ヨッカ

 

 

「メインステップ、スサノオのLVを3にアップ。オマエは、オレの仲間を、恩人を傷つけ過ぎた」

「必要事項だ、僕がこの世の頂点に立つためのなぁ!!」

「オレは、みんなとの日々を取り戻すため、心を鬼にする」

 

 

嵐マコトを昇天させる覚悟を決めるヨッカ。手札のカードを引き抜き、Bパッドへと叩きつける。

 

 

「マジック、ストロングドロー」

「青マジック特有の手札入れ替えカードか。だが、今更そんなカードを使った所で、誰もこのクローズエボルを倒せやしな」

「誰がメイン効果を使うって言ったよ。オレが使うのはフラッシュ効果、スサノオのBPを3000アップさせる」

「なに!?」

 

 

基本的に、メインのドロー効果のみが使用される青マジック、ストロングドロー。だが今回、ヨッカが使ったのはフラッシュ効果。それにより、スサノオのBPが16000から19000に上昇する。

 

 

「もう1枚使用だ。スサノオのBPを22000まで上げる!!」

「ッ……クローズエボルのBPを、超えた!?……まさかこれを狙って」

 

 

2枚目のストロングドロー。その効果で遂にスサノオはクローズエボルのBP20000を超えた。

 

これで、スサノオの【武士道】でクローズエボルを突破できるようになる。そして、スサノオは【武士道】で勝利した時、相手ライフ1つを破壊できる。

 

嵐マコトの残りライフはたったの1。

 

お終いだ。このターンで、ヨッカの勝利は確実なモノとなる。

 

 

「アタックステップの開始時に、スサノオの【武士道】を発揮!!……クローズエボルを倒し、オマエの最後のライフも破壊する!!」

「ま、待て、話せばわかる、話せば……!!」

「先生の言葉に、耳を傾けなかったオマエに、話す権利はねぇ!!……スサノオォォォ!!」

 

 

ヨッカの叫びと共に、スサノオは薙刀に青色のオーラを纏わせ、それをクローズエボルへと向けて放つ。

 

その薙刀は、クローズエボルの腹部を貫き、そのまま、嵐マコトのライフバリアも………

 

 

「待て待て待て待ってくれ………ア、アァァァァァァ!!!!!」

 

 

〈ライフ1➡︎0〉嵐マコト

 

 

貫いて見せる。Bパッドの電源を落とすまでもなく、瞬く間に、あっという間に貫かれた。

 

クローズエボルの爆散と共に、嵐マコトは、今度こそ本当に敗北を喫したのだ。

 

 

 

 

 

******

 

 

 

 

ここは界放市ジークフリード区にある、アビス海岸。

 

以前、その浜辺で鉄華オーカミが、王者の力を使い、早美ソラと激闘を繰り広げた事は記憶にも新しい。

 

 

「……やったか、九日」

 

 

砂浜の上で、粒子が密集し、横たわる男性が現れる。

 

それは嵐マコトに敗北し、消滅したはずの界放警察の警視アルファベット。復活するなり、それが九日ヨッカのお陰である事を悟り、そう呟いた。

 

 

 

******

 

 

舞台はすぐさま戻り、児雷也森林。ヨッカは嵐マコトに勝利した。

 

バトルの終了に伴い、最後まで残っていたヨッカのスサノオは消滅。嵐マコトのBパッドから「ピー……」という機械音が鳴り響き、彼の敗北を告げた。

 

 

「ア、ア、アァァァァァァ!?!……身体が、身体が消えて行く、消えて行くゥゥゥ!?!」

 

 

敗北した嵐マコトの身体は、徐々に粒子化していき、今にも消滅しようとしていた。

 

確定事項となった死に、嵐マコトは怯え、泣き叫ぶ。しかし、こればかりは完全に自業自得。今まで多くの者達の人生を狂わせて来た、報いだ。

 

 

「何故だ、何故負けた。僕は最強だった、無敵だった!!……なのに何故!?!」

「確かに、クローズエボルは強かった。だが、効果さえわかれば、対策はいくらでもできる。アルファベットさんがバトル中にクローズエボルの効果を教えてくれたお陰で、オレ達は難なくオマエに勝てたんだ」

「ッ……!?」

 

 

死への恐怖の中、嵐マコトは、結局アルファベットにも戦略的に負けていた事を思い知らされる。

 

もうその事に怒りを示す気力も残っていない。後は間もなく迎える死を待つのみだ…………

 

 

「次は、徳川フウだな。アイツとも、ケリをつけねぇと」

「徳川フウ……フウ様」

 

 

ヨッカが嵐マコトを後にしようとした直後、彼の口から出た「徳川フウ」の名前に、彼は走馬灯として、彼女との記憶が思い浮かび…………

 

 

ー………

 

 

今から5年も前の話だ。

 

エニーズ02を連れて逃亡した春神イナズマを追い掛ける事もなく、Dr.Aも芽座椎名に倒され、嵐マコトは何もできずに、医者としてのうのうと暮らしていた。

 

毎日毎日、何も変わらない、何も感じない。虚無な日々を過ごしていた、そんなある日だ。とある少女の担当医になったのは…………

 

 

「………」

「夏恋フウさんですね。僕がいる限り、もう安心ですよ」

 

 

手入れされていない、傷んだ黒く長い髪、8歳と言う幼い年齢には似つかわしくない、暗い表情。

 

一瞬で子供ながらに辛い人生を歩んで来た事を察した。だから優しくしてあげようと思っていた。少なくともこの時はまだ、嵐マコトにも良心があったのだ。

 

ただ、目の前の少女が放った一言で、その良心は黙らされる事になる。

 

 

「貴方は本当に、このままで良いのですか?」

「……は?」

「本当は思っているのでしょう?……あのDr.Aのようになりたいと。憎いのでしょう?……自分からエニーズ02を奪った春神イナズマが」

「ッ……何故エニーズ02の事を!?」

「その願い、私が叶えさせてあげますよ、このDr.Aの孫、徳川フウが」

「君が、徳川先生の、孫……!?」

 

 

目の前に患者として来客した少女は、あのDr.Aの孫。幼いながらにそのカリスマ性を継いでいるのか、その言葉と圧倒的なプレッシャーに気圧された。

 

 

「叶えたいなら、私に協力しなさい。その内に秘めた良心を捨てる覚悟さえあるのなら、必ず成し遂げられる」

「………!!」

 

 

迷った。迷いに迷った。

 

まだ半信半疑であったし、何よりも、またDr.Aの血筋と関係を結ぶのが怖かったからだ。

 

だが、その考えは、憎き春神イナズマの顔を思い出すと共に滅却される。

 

 

「僕はなりたい、いやなる。Dr.Aのような、誰も寄せ付けない強さを持った、究極の存在に」

「ニッヒヒ」

 

 

こうして、2人の関係性が結ばれた。

 

その2人の計画は、これまで、多くの人々を傷つけて来た。しかしながら、徳川フウは、嵐マコトにとって、己の野望を再出発させた救世主的な存在、この5年間でできた、ただ1人の家族と言う認識があって…………

 

 

ー………

 

 

「フウ様、フウ様、フウ様ァァァ!!!……この散る命、せめて貴女のためにィィィ!!!」

「なに!?……うおっ!?」

 

 

現代に戻り、フウへの想いを馳せ、息を吹き返した嵐マコトは、最後の力を振り絞り、立ち上がると、ヨッカへ向かって特攻。

 

不意をつかれたのもあり、ヨッカは嵐マコトに投げられる。そしてその先には、彼がBパッドを使って開いたワームホールがあって………

 

 

「うあぁぁァァァ!!!!」

 

 

ヨッカはワームホールで強制的にヴルムヶ丘公園へと転送されてしまう。

 

彼が起き上がった後にはもう、そのワームホールは姿を消していた。

 

 

「ア、アッアッア……これで良い。これで良いんだ。もう十分夢は叶った、叶えて貰った。愚かなイナズマとは違い、僕は前に進んだのだ。後は貴女の願いを叶えるのです、フウ……様」

 

 

最後の力を振り絞り、遂に限界を迎えた嵐マコト。

 

7年前のDr.Aと同様の力を使い、敗北した彼は、フウへの想いを馳せながら粒子となって消滅し、その生涯に幕を下ろした。

 

 

「おい、馬鹿野郎、何やってんだ九日ヨッカ、こんな所でもたもたしてんじゃねぇ、護るんだろみんなを、こんな所で止まるんじゃねぇ!!!」

 

 

まさに一瞬の出来事。ヨッカは頭の処理が追いつかなかったが、嵐マコトに、最後一矢報われた事だけは理解できていた。

 

それ故に先ず初めに考えた事は、油断してしまった、己への怒り。行き場のない怒りはやがて拳へと流れ、血が滲む程にそれを大地へと叩きつけた。

 

 

「チクショオォォォ!!!……イナズマ先生、ライ………オォォォカァァァァァァ!!!!」

 

 

夜。月明かりと電灯の光しかない時間帯。

 

不甲斐ない己への怒りを爆発させるように、ヨッカは叫んだ。

 

 

 

******

 

 

 

「……アニキ?」

 

 

児雷也森林にある、樹木で覆われ、煉瓦で構成された巨大な建造物の中。

 

ライを救けるべく、そこを走っていた鉄華オーカミは、アニキと慕う九日ヨッカの声が聞こえた気がして、思わずその足を止めてしまう。

 

 

「な訳ないか。その内追いついて来るだろ」

 

 

アニキなら大丈夫。そう信じ、オーカミはまた走り出そうとするが…………

 

 

「待ちたまえ、そこの少年」

「ん?」

 

 

右。声のする方へ、身体ごと首を向ける。

 

そこにあったのは牢屋。そして声の主は、その中にいた鼠色の囚人服を来た男性。

 

 

「アンタ誰?」

「私は、春神イナズマ。ライの父親だ」

「!」

「君は鉄華オーカミだろう?……生きていたんだな」

「ライの父さん。アニキの師匠、なんでオレの名前を」

 

 

牢屋の中にいた男性の名前は春神イナズマ。ライとヨッカが助けたがっていた人だと言う事を、オーカミは思い出す。

 

 

「名前くらい知ってるさ。ヨッカと一緒に娘を護ってくれていたんだろ?……ありがとう」

「………」

「だが、そう話してもいられない。ライは徳川フウに連れられ、この塔の最上階へと移動してしまった」

「最上階」

「頼むオーカミ。この鍵を使って、私をこの牢屋から解き放ち、手錠を外してくれ」

 

 

イナズマが懐から牢屋の外にいるオーカミへと向けて投げたのは、牢と手錠の鍵。第三者がいなければ脱出できないが、こんな事もあろうかと作成しておいた物だ。

 

 

「……ライは、フウと何をしに最上階へ向かったんだ?」

 

 

足元に落ちた鍵を手に取りながら、オーカミはイナズマに訊いた。

 

 

「バトルをするためだ。徳川フウの計画のために」

「………」

 

 

オーカミはほんの僅かな時間考えると、また口を開く。

 

 

「じゃあもう別に無理して救けなくていいや」

「……は?」

 

 

イナズマは、彼の言っている事が理解できなかった。無理もない、折角ここまで足を運んだと言うのに、ライを救けないと口にしたのだから。

 

 

「な、何故そんな事を言う!?……救けなければ、ライは確実に死ぬ!!」

「アイツはオレが戦って来たカードバトラーの中でも、ぶっちぎりで一番強い。負ける訳ない。アイツはきっと、自分で決着つけたいんだろ?……じゃあもうオレが出る幕じゃない」

「……」

「父親なら、信じてやれよ。アイツの勝利を」

 

 

そう告げるオーカミだが、彼の意見を真っ向から否定すべく、イナズマは牢屋越しから彼の両肩を掴み………

 

 

「信じてるさ、ライは強い。でも、それでもダメだ」

「なんで」

「あの子は、あの子は優しすぎる……!!」

「?」

 

 

言っている意味がわからなかったオーカミだったが、その後直ぐにイナズマから事情を聞くなり激怒する事になる。なんで初めからそれを言わなかったのだと…………

 

そう、間違いない。

 

ライは、フウに負ける。

 

 

 

******

 

 

ここは塔の最上階。煉瓦でできた、巨大な円柱の空間。

 

そこでBパッドを構える両雄、春神ライと、徳川フウ。

 

 

「ニッヒヒ、どうライちゃん?……この空間、私達が決着をつける場所にはもってこいじゃない?」

「……」

「む〜つれないな〜……何か喋ってくれないと楽しくないぞ」

「約束、忘れてないよね。私が勝ったら、もう二度と、私の大事なモノに手を出さない事」

「なんか拡大解釈な気もするけど、ニッヒヒ……えぇ、忘れてないですよ」

 

 

構えたBパッドへ己のデッキを装填しながら、フウに確認するライ。このバトル、何が何でも勝たなければならないと、気持ちが引き締まる。

 

 

「フウちゃん。私は、負けないよ」

「そうそうその顔。バトスピする時のライちゃんはそうでなくちゃ」

「さぁ、バトスピタイムの始まりだ」

 

 

……ゲートオープン、界放!!

 

 

児雷也森林の北東にある巨大な塔、その最上階にて、春神ライと徳川フウ、自由を賭けた2人のバトルスピリッツが幕を開ける。

 

 

 





第61ターン「家族のために、エアリアルVS初号機」
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