これは、およそ1年前の話。
界放市ではないどこかの村、どこかの家、近所の牧羊から羊達の鳴き声が響き渡る、そんなのどかな雰囲気が流れ出すこの場所に、当時11歳の春神ライはいた。2階のベットの上で、年齢的に不相応なモデルの雑誌を読みながら、ぐうたらと過ごしていた。
しかし、その時………
「うぁぁぁぁぁあ!!?!!」
「!」
40代程度という年齢を感じさせる男性の叫び声が1階の方から響いて来た。ライはそれに対して特に驚く様子もなく、雑誌をベットの上に置くと、階段を使って1階へと降りて行った。
1階に行くと、叫び主であろう男性がキッチンの前にあるフライパンを見て「しまった」と言わんばかりの表情を浮かべていて…………
そのフライパンの上には黒いダークマターみたいなモノがある事から、おそらく、料理に失敗してしまったのだろう。まぁ、ライにとっては、いつもの事だ。
「また失敗したの、お父さん?」
「すまんライ、今度こそと思ってやってみたんだが、いやぁ、やはり料理は難しいな」
「ふ、料理って目玉焼きでしょ?」
「な、笑う事ないだろ」
「ははは!!」
目玉焼き如きの料理に失敗したこの男性の正体はライの父親。40代程度の年齢とは思えない程、外見は若々しい。
「私がやるよ。お父さんは座ってて」
「うむ、面目ない」
エプロンを身に着けながらライが言った。父は後ろめたさを感じながらもリビングにあるソファに身を掛ける。
その後、およそ10分弱で完成した目玉焼きや野菜サラダ、ハムとチーズが挟まれたサンドイッチでランチタイムを始める。
「ライはホント、大きくなったな」
「どうしたの、薮から棒に」
「シンプルに娘の成長を感じてた。もうすぐ12歳だもんな」
食パンを頬張るライを見ながら、父がそう辛気臭い言葉を落とした。
自分は物心ついた時から父と一緒にいたが、父から見たら自分が赤ん坊の頃からずっと見ているのだから、何かきっと感じるモノがあったのだろう。
「今年の誕生日プレゼントは何がいい?」
「あぁ、と言っても別に今欲しいのはないかな。誕生日までに考えておくよ」
この時、ライはもうすぐ12歳の誕生日だった。父はおそらく本人よりも彼女の誕生日を楽しみにしていた。
ー……
しかし、その4日後、誕生日を3日前に迫ったその日、父はある用事ができてしまい、一時ライと離れなければいけなくなった。行き先は「日本の界放市」と言う場所だった。
「ごめんなライ。あまり事情は詳しく言えないが、暫くここを離れる」
「うん、留守番は任せて」
スーツを着込み、いやに真摯な格好をしている父。おそらく余程行かなければならない事情だったのだと、ライは悟る。
「あ、そうだ。オマエに良い物渡しておこう」
「?」
父がそう言いながら、懐から取り出したのはバトスピカード。しかも超レアカードであるエヴァンゲリオンスピリットと呼ばれるカード「エヴァンゲリオン新2号機α」だった。
「これは?」
「ちょっと早いけど、誕生日プレゼントだ。12歳、おめでとうライ!……このカードは、超激レア、世界でたった1つ、オマエだけのカードだ」
「ッ……私だけのカード!?…うわマジ!?…やった〜〜!!」
年相応に大喜びするライ。その様子を見て、父も満足そうな表情を見せる。
「お父さん、ありがとう!」
「うむ。後、これを」
「ん?」
「もしオレが帰って来なかったら、ここに行くんだ。オレの教え子が居る。まぁ、あくまでもしもの話なのだが」
「へぇ、イケメン?」
「あぁ、自慢の教え子だからな、そりゃもうすこぶるイケメンだ」
「マジ?」
追加で1枚の紙切れを手渡す父。そこには彼の教え子の住所が刻まれており、後に判明するが、それは九日ヨッカのモノである。
「じゃ、誕生日までには戻るよ」
「うん、いってらっしゃい」
最後にそう告げながら、父はライの元を去って行った。3日後の誕生日が楽しみになっていたが、まさかこの後、一切父の顔を見ない事になるとは思ってもいなかった。
そして、父の言葉通り、あの紙切れに書かれた住所を頼って、九日ヨッカのいる界放市へと、自身も向かったのだ。
もう一度、父と楽しく暮らすために。幸せな時間を送るために………
******
だが、そんな時間は、もう二度とやっては来ない。
「お父さん、お父さん!!」
時は、現代に戻る。界放市ジークフリード区にある児雷也森林。その北東に位置する巨大な塔。その最上階にて。
ライを庇い、初号機カシウスによる最後の一撃を受け、倒れたイナズマ。今はライの腕に抱かれているが、明らかに即死級の血が、体と口から流れている。
もう長くはないだろう。
「オジさん……!」
その光景を見て、到着したオーカミがそう呟いた。普段は冷静沈着を極めているオーカミだが、間もなく死を迎える人を見るのは初めて。その瞳は僅かに震えていた。
「……邪魔しやがって。でも春神ライのライフは0にした。これで、エアリアルのガードは解けたはず。私の長年の夢、長寿の肉体を得る事ができる。問題は………」
「……!!」
人を殺害したにもかかわらず、特に怯えたり、罪悪感を感じる様子を見せないフウ。おそらく、そう言った事を普段からしているのだろう。
彼女がその目に捉えたのは、先程この場に居合わせた、鉄華オーカミ。オーカミもまた、その視線に気づき、睨み返す。
「何故生きてる。確実にトンネルで生き埋めにしたはずなのに」
オーカミが生存している事に驚きを隠せないフウ。
ライを倒し、生き残ると言う己の夢に王手を掛けた彼女だが、次は彼との戦いに身を投じなければならない事を、直感的に悟って。
「ラ、ライ」
「お父さん!!」
「悪いが、ヨッカに、謝っててくれ。アイツには、悪い事をした。できれば、成長したアイツの顔を拝みたかったが」
「そんな事言わないでよ、一緒に謝ろうよ!!」
吐血しながらも、意識が遠のきながらも、イナズマは、ライに言葉を残そうと、最後の力を振り絞る。
「ライ。オマエは、子供のいない私に、家族を教えてくれた、ありがとう」
「もうやめでよ、そんなごど、言わないで……!!」
死ぬな。死ぬな。
そう願いながら、涙を流し、イナズマの手を優しく握るライだが。もう何をしても、無駄だ。
「泣くな、ライ。オマエにはもう、私は必要ない、ヨッカやオーカミをはじめとした仲間達が大勢いるじゃないか」
「イヤだよ!!…お父さんがいなぎゃ、イヤだよぉぉ……!!」
「生きろ、ライ。世界は悲しい事だけじゃない、もっと楽しく、輝かしい事に満ち溢れている。絆を深めた、仲間や友と一緒に、その世界を見るんだ、お父さんの代わり……に」
「……!!」
死ぬな。
死ぬな、死ぬな。
死ぬな、死ぬな、死ぬな。
ライの願いと叫びとは裏腹に、イナズマは、静かに息を引き取った。最後に娘を守れたのが誇らしく思っていたのか、その表情は満足気で、幸せそうだった。
「あ、あ、ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
悲しさにより、より多くの涙を流し、身体に血が付着する事も厭わず、イナズマを抱き締めるライ。
あの時、エアリアルでトドメのアタックを宣言できていたら、そんな妄想が絶えなかった。どうすればこの結末を回避できたのかと、考えてしまう。もう、後戻りができない事は知っていると言うのに………
「オジさん」
そんな折、涙を流し続けるライのそばで、オーカミはイナズマとの言葉を思い出す。
ー『私に何かあった時、ライを頼む。全力で守ってやってくれ、娘を任せられるのは、ヨッカと君だけだ』
今にして思えば、イナズマはこの状況を予想していたのかもしれない。そう考えると、オーカミは前に踏み出し、フウの眼前に立ち塞がった。
「何、してんのよ」
「ライ」
だが、それを呼び止めるように声を上げたのは、他でもないライ。まるで、生きる力を失ったかのような弱々しい声色だった。
「フウを倒して、オマエを助ける」
「ふざけんなッ!!」
「!!」
「アンタが生きててくれたのは嬉しい。でも、もう帰りなさいよ」
「なんで」
「私に関わった人は、必ず不幸になるからに決まってるでしょ。もうイヤだ、なんで私なんかのために、みんな、みんな……!!」
これ以上、大事なモノを失いたくないと言う、ライの強い想いがオーカミに伝わって来る。
心全体に伝わって来る、優しくて暖かい気持ちだ。尚の事、ここで逃げるわけには行かない。
「勘違いするな。オレは、オマエのためだけに戦うんじゃない」
「!」
「アニキやアルファベット、バトスピで繋がりを持てた友達。後、オマエの父さん。みんなのために、オレは戦う」
「オーカミ……」
「だから今は、そこで待ってろ。オマエがアイツを倒せないって言うなら、オレがオマエの代わりに、アイツを叩き潰す」
ライの制止を振り切り、オーカミはフウへと視線を向ける。その眼光は怒りに満ちており、フウを噛み砕こうとする獣のようだった。
「オーカミさん。まさかあの崩落から生き残るなんて、悪運がお強いんですね」
「……」
「ニッヒヒ。私を叩き潰す?……良い度胸してますね、昨日私にボコられたばかりだと言うのに。そこに転がっているボロ雑巾の二の舞になるだけですよ?」
「ボロ雑巾?」
おそらく、イナズマの事だ。
オーカミの怒りが、さらに募っていく。
「犬死にしただけの哀れな男を、ボロ雑巾と言わずしてなんと呼びますか」
「……」
オーカミの強まった怒りに応えるように、彼の左腕にあるBパッド、そこに装填されているデッキのカード達が赤色に光り輝く。
それに合わせ、オーカミの右眼の瞳が、赤く染まり、そこから血の涙を流す。
「オマエが勝手に決めるな」
「へぇ」
「気に食わない。オレはオマエが、気に食わない……!!」
まだバトルをしていないにもかかわらず、オーカミは己の内に秘める「王者」の力を発揮。
右眼と右腕が動くようになり、あっという間にバトルの準備を終える。
「やはり、貴方を倒さなければ、ライちゃんを渡してはくれませんか。良いでしょう、誰が上なのか、もう一度教えて差し上げますよ」
フウもそう告げ、Bパッドをオーカミへと向け、再びバトルの準備を整える。
そして………
……ゲートオープン、界放!!
鉄華オーカミと徳川フウ。児雷也森林にある巨大な塔の最上階にて、2人のバトルスピリッツが幕を開ける。
これが正真正銘の最終決戦。ライを救けるための、最後の戦いだ。
先攻は鉄華オーカミ。怒りの力で王者をも発動させた彼は、己が気に食わないと称したフウを倒すべく、それを進めて行く。
[ターン01]鉄華オーカミ・王者
「メインステップ、転醒ネクサス、紫の世界を配置」
ー【紫の世界】LV1
「へぇ、紫の世界か」
「配置時効果で1枚ドロー」
オーカミが背後に配置したのは、黒き居城が聳え立ち、常に闇が蔓延する紫の世界。紫属性を扱うデッキならば、どのデッキにも投入を検討できる程の汎用性の高いカードである。
「紫の世界は、オレのネクサスが紫1色の間、オマエのスピリットがアタックした時、そのコア1つをトラッシュに送る。オレはこれでターンエンドだ」
手札:5
場:【紫の世界】LV1
バースト:【無】
「デッキ、ちょっと変えたんですね。でも紫の世界の効果なんて、私のエヴァンゲリオンスピリットの【A.T.フィールド】の前では無力。私に勝つ事なんてできませんよ」
「……」
敵として、オーカミのデッキをある程度分析していたフウ。紫の世界を投入していたとしても、自分に勝つ事はできないと、言語両断する。
そして………
[ターン02]徳川フウ
「メインステップ、私も、紫の世界を配置します」
「!」
ー【紫の世界】LV1
「配置時効果で1枚ドロー。何驚いてるんですか、私も紫デッキなのだから、入れてて当然じゃありませんか、ニッヒヒ」
フウもオーカミと同様に紫の世界を配置。初号機も鉄華団と同じ紫属性であるため、至極当然と言えるかもしれない。
だがこれで、オーカミの紫の世界の効果を無力化できる【A.T.フィールド】の効果を扱えるフウの方が有利になった事に違いはなくて。
「鈴原トウジを配置。効果で相田ケンスケを配置して1枚ドロー。相田ケンスケの効果でパイロットブレイヴ、碇シンジを召喚して1枚ドロー。碇シンジの召喚時効果で1枚ドロー」
ー【鈴原トウジ】LV1
ー【相田ケンスケ】LV1
ー【碇シンジ】LV1(0)BP1000
フウのデッキではお馴染みとなったソリティアコンボ。ネクサス2枚、ブレイヴ1枚の配置、召喚を行いつつ、手札を減らさないこのコンボにより、1ターン目であるにもかかわらず、彼女は大きなアドバンテージを獲得する。
「バーストをセットし、以上、ターンエンドです。さぁ、今度こそ私にお見せくださいよ、鉄華団の真の力」
手札:4
場:【碇シンジ】LV1
【紫の世界】LV1
【鈴原トウジ】LV1
【相田ケンスケ】LV1
バースト:【有】
手札の枚数を維持しつつ、フィールドに4枚のカードを出す事に成功したフウ。余裕の笑みを浮かべながら、そのターンをエンドとする。
[ターン03]鉄華オーカミ・王者
「メインステップ、創界神ネクサス、クーデリア&アトラ」
ー【クーデリア&アトラ】LV1
オーカミが配置したのは、鉄華団をサポートする創界神ネクサスの1枚。その神託の効果により、デッキ上から3枚がトラッシュへ送り込まれ、その上に2つのコアが追加された。
「さらに、ランドマン・ロディと三日月・オーガスを召喚し、合体」
ー【ランドマン・ロディ+三日月・オーガス】LV1(1S)BP7000
「ッ……三日月!?」
オーカミは、丸みを帯びた小さなモビルスピリット、ランドマン・ロディを召喚し、それに紫のパイロットブレイヴ、三日月・オーガスを合体。
LV1のランドマン・ロディのデメリット効果により、本来2つあるはずのシンボル1つが消失してしまうが、フウは、この状況で三日月が呼び出された事の意味を瞬時に理解して。
「バーストをセットして、アタックステップ、ランドマン・ロディでアタック。三日月の効果により、紫の世界のLVコストを+1し、完全に消滅させる」
「くっ……」
ランドマン・ロディは、手に持つ斧をブーメランのように投げ、フウの背後に聳え立つ、紫の世界を切り裂く。
各属性に存在する汎用性の高いネクサスカード、通常『世界ネクサス』……
それらの最も厄介な点は、フィールドから離しても、ソウルコアを置く事で転醒し、生き残る事にある。しかし、三日月によるLVコストの上昇による消滅は、それを許さない。完全に除去する事が可能なのだ。
「ランドマン・ロディのアタックは継続」
「ライフで受けましょう」
〈ライフ5➡︎4〉徳川フウ
今度はマシンガンを手に取り掃射するランドマン・ロディ。フウのライフバリア1つを撃ち砕いた。
「ライフ減少後のバースト、絶甲氷盾。ライフ1つを回復」
〈ライフ4➡︎5〉徳川フウ
だがここで、フウが伏せていたバーストカードを発動。その効果により、ライフ1つを回復。オーカミの攻撃を、実質的な無効とする。
「ターンエンド」
手札:2
場:【ランドマン・ロディ+三日月・オーガス】LV1
【紫の世界】LV1
【クーデリア&アトラ】LV2(4)
バースト:【有】
このターン、できる限り動き、紫の世界の破壊と、バーストカードを発動させたオーカミ。一度それをエンドとし、フウの様子を伺う。
「ニッヒヒ。まぁ、王者を使えば、それくらいの事はしてもらわないとね」
「いいから、早く来いよ」
紫の世界を失ったとは言え、フィールドに2つのネクサスと1つのパイロットブレイヴを有しているフウ。
己の王者はまだ使わないまま、第4ターンを迎える。
[ターン04]徳川フウ
「メインステップ、さぁここからですよ。まさか忘れたわけじゃありませんよね、私のエースカードを……!!」
「……」
「私は今、神話になる。エヴァンゲリオン初号機、LV1で召喚」
ー【エヴァンゲリオン試験初号機-決意の出撃-】LV1(1)BP6000
展開された黒々としたワームホールをこじ開け、フィールドに出現するのは、紫の装甲と一角を持つ、フウのエースカード、エヴァンゲリオン初号機。
「手札から新たなるパイロットブレイヴ、真希波・マリ・イラストリアス」
ー【真希波・マリ・イラストリアス-お待たせ! シンジ君】LV1(0)BP1000
「その効果を発揮。デッキ上から8枚をオープンし、その中の紫ブレイヴ、碇シンジ・シンクロ率∞を回収し、コア2個を初号機に追加。さらに合体」
【エヴァンゲリオン試験初号機-決意の出撃-+真希波・マリ・イラストリアス-お待たせ! シンジ君】LV3(3)BP17000
「ニッヒヒ。マリと合体したスピリットのLVは、1上昇する。よって、今の初号機のLVは3」
ライとのバトルでも見せたパイロットブレイヴを召喚するフウ。その効果により、コア2個をブーストしつつ、強力な初号機の合体スピリットを誕生させる。
「再びバーストをセットし、アタックステップ。初号機でアタック」
今度はフウの攻撃が始動する。初号機が最初に目を付けたのは、オーカミのフィールドにいるランドマン・ロディ。
「アタック時効果により、ランドマン・ロディを指定アタック。そして【転醒】の効果、そのバトルを即座に終了させる事で、コア1つをブーストし、初号機のカードを裏返す」
「……」
「顕現せよ、初号機第1覚醒形態!!」
ー【エヴァンゲリオン試験初号機 擬似シン化第1覚醒形態+真希波・マリ・イラストリアス-お待たせ! シンジ君】LV3(4)BP21000
初号機は突如咆哮を張り上げると、その目は赤く輝き、装甲に刻まれた緑の刻印も、それに合わせて赤く発光を始める。
この形態の初号機は、第1覚醒形態。以前の戦いで、オーカミはこれに苦戦を強いられた。
「転醒アタック時効果でターンに一度回復、そして再度アタック。その効果により、ランドマン・ロディのコア2個をリザーブに置き、消滅、さらにライフ1つをリザーブに置く」
「!」
〈ライフ5➡︎4〉鉄華オーカミ・王者
「ぐっ……!!」
獣のように荒々しくランドマン・ロディを鷲掴みにする初号機第1覚醒形態。そのままそれをオーカミへと投擲し、そのライフバリア1つを砕く。
今までの戦いにより、バトルダメージが蓄積しているのか、オーカミはただその一撃のみで片膝をついてしまう。
「ニッヒヒ。貴方がなんで生きているのかはわかりませんが、ここにいるという事は、マコト先生を倒してきたんですよね。それにその包帯巻きになった体。もう限界なんでしょ、立っているのも」
「ごちゃごちゃうるさいよ、バースト発動、グシオンリベイク」
「!」
「効果により、コイツを召喚」
ー【ガンダム・グシオンリベイク】LV1(1S)BP6000
立ち上がるオーカミ。即座にバーストカードを反転させ、反撃に出る。
地響きと共に大地からフィールドへと見参するのは、鉄華団の守護神。薄茶色の重厚なボディを持つモビルスピリット、ガンダム・グシオンリベイク。
「召喚時効果発揮、第1覚醒形態のコア2個をリザーブに置く」
「くっ……ソウルコアを置く事で【A.T.フィールド】を突破して来ましたか」
マシンガンを両手に取り、それを掃射するグシオンリベイク。それの殆どを被弾してしまった初号機第1覚醒形態は、弾き飛ばされ、フウのフィールドへと強制的に戻されてしまった。
「ですが、まだ第1覚醒形態のアタックは続いてますよ」
「……ライフで受ける」
〈ライフ4➡︎4〉鉄華オーカミ・王者
「グシオンリベイクの効果、バーストで召喚されたこのターン中、コア2個以下の相手スピリットからライフは減らされない」
それでも攻撃する事をやめない初号機第1覚醒形態。これまでよりも大きな咆哮を張り上げ、それによって生まれた衝撃波で、オーカミのライフバリアを砕こうと試みるも、グシオンリベイクがそれを阻む。
「ターンエンド」
手札:3
場:【エヴァンゲリオン試験初号機 擬似シン化第1覚醒形態+真希波・マリ・イラストリアス-お待たせ! シンジ君】LV2
【碇シンジ】LV1
【鈴原トウジ】LV1
【相田ケンスケ】LV1
バースト:【有】
カウント:【1】
【転醒】の力を持つ、エヴァンゲリオン初号機による苛烈な攻撃。前はコレだけで敗北を喫してしまったが、今回は耐え抜いて見せる。
次はグシオンリベイクを従えた、オーカミの反撃だ。
[ターン05]鉄華オーカミ・王者
「メインステップ。大地を揺らせ、未来へ導け、ガンダム・バルバトス第4形態、LV3で召喚」
ー【ガンダム・バルバトス[第4形態]】LV3(4)BP12000
オーカミのフィールドに降り立つのは、鉄華団の象徴であるモビルスピリット、バルバトス第4形態。
黒々とした戦棍、メイスを構え、初号機打倒を目指す。
「第4形態に三日月を合体」
ー【ガンダム・バルバトス[第4形態]+三日月・オーガス】LV3(4)BP18000
前のターンの消滅から生き残ったパイロットブレイヴ、三日月を、新たに第4形態へと合体。鉄華団デッキの伝家の宝刀とも呼べる攻撃態勢が整った。
「バーストをセットして、アタックステップ、第4形態でアタック。そのアタック時効果で真希波・マリ・イラストリアスを破壊して、初号機第1覚醒形態からコア2つをリザーブに置き、消滅」
フウのフィールドへ殴り込むバルバトス第4形態。メイスを縦と横に振い、初号機第1覚醒形態を合体しているパイロットブレイヴごとトラッシュへと葬り去る。
「追加で三日月の効果。碇シンジのLVコストを上げて消滅させ、リザーブのコア2つをトラッシュへ」
伝家の宝刀のコンビネーションで、フィールドのスピリットとブレイヴを壊滅させる。
さらに、バルバトス第4形態は自身のLV3効果によりシンボルが追加、トリプルシンボルとなっていて。
「トリプルシンボル。ライフを3つ破壊する」
「……ライフで受ける」
〈ライフ5➡︎2〉徳川フウ
初号機を倒すだけに飽き足らず、フウのライフバリアまでも、そのメイスによる一撃で3つも粉砕して見せるバルバトス第4形態。
この活躍により、オーカミに勝ちの目が見えて来たが……
「ライフ減少によるバースト、絶甲氷盾。ライフ1つを回復させ、コストを支払い、アタックステップを強制終了」
〈ライフ2➡︎3〉徳川フウ
またしても白のバーストマジック『絶甲氷盾〈R〉』のカード。
これにより、オーカミの追撃は不可能となり、アタックステップは強制的に終了となる。
「バルバトス第4形態の効果。バトルの終了時、トラッシュから鉄華団スピリットを1コストで召喚する。来い、漏影」
ー【漏影】LV1(1)BP3000
「召喚時効果でデッキ上3枚を破棄。その後トラッシュにある鉄華団カード『ノルバ・シノ』を手札に加える。そして、クーデリア&アトラの【神域】も誘発、トラッシュにある紫1色のカード1枚をデッキ下に戻し、1枚ドロー」
バルバトス第4形態が大地にメイスを打ち付けると、大地より、バスターソードを携えた鉄華団スピリット、漏影が出現。その効果とクーデリア&アトラの【神域】のコンボにより、オーカミは2枚の手札を増やした。
「ターンエンド」
手札:3
場:【ガンダム・バルバトス[第4形態]+三日月・オーガス】LV2
【ガンダム・グシオンリベイク】LV1
【漏影】LV1
【紫の世界】LV1
【クーデリア&アトラ】LV2(7)
バースト:【有】
スピリットの展開を行えても、絶甲氷盾を無効化できるわけではない。結局、オーカミは追撃できずにそのターンをエンド。
前のターンから一転して劣勢な状況へと立たされた、フウのターンへと移る。
「DLCにも飽きて来ましたね。そろそろ、終わりにしましょうか、何もかも」
「……」
「さぁ、私の王者と貴方の王者。どちらが強いか、勝負ですよ。ニッヒヒ、結果は目に見えてますけどね」
ここに来て、フウも王者の力を能動的に発動。赤い刻印が、目下から顎まで刻まれる。
[ターン06]徳川フウ・王者
「メインステップ。2枚目の相田ケンスケを配置」
ー【相田ケンスケ】LV1
「配置時効果により、手札から碇シンジ・シンクロ率∞をノーコスト召喚して1枚ドロー」
ー【碇シンジ-シンクロ率∞-】LV1(0)BP1000
「碇シンジ・シンクロ率∞の召喚時効果、2枚ドロー。クーデリア&アトラのコアを6個ボイドへ」
「……」
シンボル並べとドローを繰り返すフウ。オーカミは、この行為が新たなエースカードを呼び出すための布石である事を理解していて……
「私は今、神話を超える。エヴァンゲリオン初号機カシウスの槍。LV2で召喚」
ー【エヴァンゲリオン試験初号機-カシウスの槍-】LV2(4)BP12000
フウのフィールドに現れるのは、新たなエヴァンゲリオンスピリット、新たな初号機。
赤き槍カシウスの槍を携えた、初号機カシウス。通常の初号機をも上回る、フウの第二のエースカードだ。
「まだ行きますよ。新たなる槍、ガイウスの槍を召喚し、これと碇シンジ・シンクロ率∞を、初号機カシウスにダブル合体」
ー【エヴァンゲリオン試験初号機-カシウスの槍-+碇シンジ-シンクロ率∞-+ガイウスの槍】LV2(4)BP24000
「ッ……2体と合体!?」
「ニッヒヒ。ガイウスの槍は、碇シンジと合体しているスピリットに追加で合体ができる特殊なブレイヴ」
通常では不可能なダブル合体を果たす初号機カシウス。その手には天空から降り注いで来た新たなる槍、ガイウスの槍が握られ、カシウスの槍と合わせて2本の槍を同時に構える。
「バーストをセットして、アタックステップ。2体と合体した、初号機カシウスでアタック……!!」
ダブル合体により、トリプルシンボルと、24000ものBP、強力な効果を多く獲得した初号機カシウス。その力が、オーカミへと牙を剥く。
「先ずは合体したガイウスの槍の効果。トラッシュにあるコア1個を私のライフへ戻す」
〈ライフ3➡︎4〉徳川フウ・王者
手始めと言わんばかりに発揮されたのは、ライフ回復効果。これによって、フウのライフは、前のターンにトリプルシンボルのアタックが被弾したとは思えない程の高水準な数値となる。
「さらに初号機カシウスの効果、グシオンリベイクを消滅。手札にあるエヴァンゲリオン1枚を除外し、自身を回復させつつ、バルバトス第4形態を破壊」
「……!」
初号機カシウスは、カシウスの槍、ガイウスの槍を投げ、それぞれグシオンリベイクとバルバトス第4形態の胸部を貫き、爆散へと追い込む。
オーカミのフィールドはこれで漏影のみ。危機的な状況だが、彼は顔色1つ変えずに、手札にある1枚のカードを発揮させる。
「手札にあるグレイズ改弍の効果を発揮。鉄華団がフィールドを離れた時、コイツを手札からノーコスト召喚」
ー【グレイズ改弍(流星号)】LV1(1)BP2000
「召喚時効果で1枚ドロー」
オーカミがすかさず呼び出したのは、小型で、マゼンタカラーの1つ目のモビルスピリット、グレイズ改弍。
その効果でデッキから1枚のカードをドローした。
「だから何?……攻撃は止まりませんよ」
「そのアタックはライフで受ける」
〈ライフ4➡︎1〉鉄華オーカミ・王者
「ぐっ……ぐぁぁぁぁあ!?!」
初号機カシウスによる、カシウスの槍とガイウスの槍を用いた刺突。それがオーカミの3つのライフバリアを、容易く貫通。
残りライフは1つへと追い込まれてしまう。
さらに恐ろしい事に、初号機カシウスは、自身の効果で回復状態となっており………
「くっ……ライフ減少後のバースト、絶甲氷盾を発揮。オレのライフ1つを回復する」
〈ライフ1➡︎2〉鉄華オーカミ
反転するオーカミのバーストは、フウと同様の絶甲氷盾。効果によりライフが回復、その後アタックステップを強制終了させる。
かと思われたが………
「ニッヒヒ……ガイウスの槍の効果で私のアタックステップは終了できませんよ」
「……」
ここでガイウスの槍の更なる効果が発揮。フウのアタックステップは終了する事なく、初号機カシウスは問答無用で再びオーカミに襲い掛かる。
「回復した初号機カシウスで再度アタック。ガイウスの槍の効果で、再びライフ回復。初号機カシウス自身の効果で2枚ドロー。もう1つの効果でエヴァンゲリオン1枚を手札から除外、回復しつつ、グレイズ改弍を破壊」
〈ライフ4➡︎5〉徳川フウ・王者
暴れまくる初号機カシウス。カシウスの槍でグレイズ改弍を一刀両断した。
その間にガイウスの槍の力により、フウのライフは全快。残り1つのオーカミとは随分と差がついてしまった。
「まだだ、この瞬間、鉄華団スピリットがフィールドを離れた時、今度は手札からガンダム・フラウロスの効果を発揮。手札から自身をノーコスト召喚する」
ー【ガンダム・フラウロス[流星号]】LV1(1)BP5000
オーカミは、このタイミングでも同様の効果を持つカードを提示する。
流星の如く勢いで、オーカミのフィールドへと降り立つのは、マゼンタカラーの装甲を持ち、多くの銃火器を携えたモビルスピリット、ガンダム・フラウロス。
「フラウロス。知ってましたよ、知ってたから召喚時効果で破壊されないよう、コアを4個に調整したのです」
召喚時効果でコア5個以上のスピリットを破壊できるフラウロス。フウはそれを見越して、初号機カシウスのコアを4個にしていた。
だが、これだけでは終わらないのが、オーカミの鉄華団デッキであり………
「名前に「流星号」を持つスピリットが召喚された事で、手札にあるノルバ・シノをノーコスト召喚。漏影に直接合体し、そのままLV2にアップだ」
ー【漏影+ノルバ・シノ】LV2(4S)BP9000
フラウロスやグレイズなど、流星号の名を持つスピリットが出た時に共に召喚できるパイロットブレイヴ、ノルバ・シノ。今回はフラウロスではなく、漏影と合体する。
「ニッヒヒ。その程度の雑魚、いくら展開しても無駄ですよ。私のエヴァンゲリオンスピリット、初号機カシウスは全てを駆逐する」
「悪いけど、全てを駆逐するのは、オレの鉄華団だ。【煌臨】発揮、対象は漏影」
このタイミングでソウルコアをコストに【煌臨】を発揮するオーカミ。彼の背後に、重厚な装甲を持つ、巨大なモビルスピリットの影が出現する。
「轟音唸る、過去をも穿つ、ガンダム・グシオンリベイクフルシティ、LV2で煌臨……!!」
ー【ガンダム・グシオンリベイクフルシティ+ノルバ・シノ】LV2(3)BP14000
モビルスピリットの影が、フィールドの漏影と重なり合い、1つとなる。こうして現れたのは、グシオンリベイクの強化形態、グシオンリベイクフルシティ。今となっては、バルバトスルプス、ルプスレクスと並ぶ絶対的エースの内の1体だ。
「煌臨アタック時効果、デッキ上2枚を破棄。その中の紫1色のカード1枚につき、相手フィールドのコア2個をリザーブに置く」
幾度となく危機を乗り越えて来たグシオンリベイクフルシティの煌臨アタック時効果が発揮。破棄された2枚のカードは当然紫1色のカードであるため、フウのフィールドのコアを4個リザーブに送れるが………
「ニッヒヒ。忘れたんですか?……エヴァンゲリオンスピリット達が持つ共通効果【A.T.フィールド】を。初号機カシウスも、その例外じゃない。【煌臨】によってソウルコアをトラッシュに送っている時点で、エヴァンゲリオンスピリットには勝てないんですよ!!」
そう。ソウルコアがなければ、アタック中のエヴァンゲリオンスピリットを倒す事はできない。
フィールドでは、4本の腕からマシンガンを取り出し、一斉掃射するグシオンリベイクフルシティだが、それらは全て初号機カシウスの前方に展開された半透明のバリア、A.T.フィールドによって弾かれてしまう。
だが、この光景を、今のオーカミが見越していないわけがない。
「今破棄された、紫マジック、抱擁の効果を発揮」
「!」
「自身を手札に戻し、クーデリア&アトラにコア+1。さらにこれを使用」
グシオンリベイクフルシティの効果によって破棄されたマジックカード『抱擁』………
これの力を発揮させる。
「デッキ上1枚を破棄。それが鉄華団なら、トラッシュのソウルコアをスピリットに戻す……破棄されたのは、鉄華団カード、バルバトスルプスレクス。よってソウルコアをフルシティに移動!!」
「ッ……ソウルコアを戻した!?……知らない、この未来は、私の知っているモノじゃない……!?」
本性を露わにして以降、初めて困惑する様子を見せるフウ。
しかし、今更何をしても遅い。ソウルコアの力を取り戻したグシオンリベイクフルシティは、初号機カシウスを砕く。
「フルシティでブロック。そしてこの瞬間、第二の効果を発揮。コア4個以下のスピリット1体を破壊、初号機カシウスを破壊だ……!!」
「ぐっ……」
投擲した2本の槍を回収した初号機カシウス。次はフルシティへと狙いを定めてその2本の槍で刺突の攻撃を繰り出すが、フルシティは腰に備え付けられた巨大なハサミのような形をした武装を手に取り、それを防御。
弾き返すと、初号機カシウスの身体を万力の如く挟み込み、圧殺して爆散へと追い込む。
「この効果で破壊した時、トラッシュにある紫1色のカード1枚を手札に戻す。オレが選ぶのは、バルバトスルプスレクス」
強烈なカウンターを炸裂させる事はおろか、オーカミは、トラッシュにあるエース級のカードを手札に加える。
この光景は、とてもではないが、昨日、同じ者に圧倒的な力の差を見せつけられた者が見せる強さではなくて……
「クソ。合体していたシンジ・シンクロ率∞はフィールドに残します。ターンエンド」
手札:2
場:【碇シンジ-シンクロ率∞-】LV1
【鈴原トウジ】LV1
【相田ケンスケ】LV1
【相田ケンスケ】LV1
バースト:【有】
カウント:【1】
回収されたルプスレクスを見てか、フウは、フィールドに残したシンジ・シンクロ率∞にコアをある程度追加。ガイウスの槍は、このまま残してもBP比べでグシオンリベイクフルシティに破壊されるだけなので、破壊された初号機カシウスと共にトラッシュへと送った。
しかし、どんなにプレイの幅を効かせても、アタックできるスピリットがもういない事には変わりない。彼女はここで苦渋のターンエンドを宣言。
王者の力だけじゃない。コイツ、明らかに昨日より数段強くなってる。
まさか、一度戦っただけで私のデッキの特徴を分析し、対策を練って来たとでも言うのですか??
だとしたら危険すぎる。奴にはエニーズ02のように泣脅しも通用しない。消さなくては、今度こそ本当に。
内心でそう考えるフウ。僅かな焦燥感に駆られる中、オーカミを最も邪魔な障害として認知し始める。
当のオーカミは、そんな事知る由も、考える由もなく、決着をつけるために、その手で手繰り寄せた己のターンを進めて行く。
[ターン07]鉄華オーカミ・王者
「メインステップ、決めるぞ。先ずはオルガ・イツカを配置」
ー【オルガ・イツカ】LV1
2種目となる創界神ネクサス。神託の効果により、コアが2個追加される。
「次はコレだ。フラウロスを対象に【煌臨】発揮」
再び発揮される煌臨。オーカミの背後から、新たなるモビルスピリットの影がフィールドへと飛び出して行く。
「天地を揺るがせ、未来へ響け……ガンダム・バルバトスルプスレクス!!……LV1で煌臨。さらに、三日月と合体して、LV3にアップ」
ー【ガンダム・バルバトスルプスレクス+三日月・オーガス】LV3(5)BP22000
フィールドに現れた影は、フラウロスと重なり合い、1つとなる。
こうして誕生したのは、鉄華団の象徴であるバルバトスの最終形態。鋼鉄の剛腕と尾を持ち、身の丈程はある超大型メイスを携えた、最強の鉄華団スピリット、バルバトスルプスレクス。
双璧であるグシオンリベイクの強化形態、フルシティと肩を並べるその姿は壮観であった。
「マジック、抱擁。デッキ上から1枚を破棄、それが鉄華団カードの時、トラッシュのソウルコアをスピリットの上に置く」
2枚目の抱擁。再びクーデリア&アトラの【神域】とのコンボを発揮させつつ、煌臨のコストとなってトラッシュへ送られていたソウルコアを、ルプスレクスの上に戻す。
「アタックステップ。ルプスレクスでアタック、そのアタック時効果により、デッキ上2枚を破棄、鉄華団カードがあるため、ルプスレクスにシンボル1つを追加」
勝負を決めるべく、ルプスレクスで攻撃を仕掛けるオーカミ。1つ目のアタック時効果でクーデリア&アトラの【神域】の効果を誘発させつつ、シンボル1つを追加、トリプルシンボルとなる。
「さらに合体中で、尚且つオレのトラッシュが10枚以上しか使えない効果がある。オマエのスピリット、ネクサス全てのLVコストを1上昇させる……!!」
「ぐっ……!!」
ルプスレクスのもう1つの効果が発揮。フウが並べ続けて来た3枚のネクサスカードがまとめてトラッシュへと誘われる。
「フラッシュ、オルガの【神域】の効果を発揮。デッキ上3枚を破棄して、1枚ドロー、このターン、オマエは効果でオレのアタックステップを終了できない。追加でクーデリア&アトラの【神域】を発揮、紫1色のカード1枚をデッキ下に戻して、もう1枚ドロー」
二度と絶甲氷盾の効果でアタックステップを終了させられないように、オルガの【神域】を発揮。クーデリア&アトラの【神域】とのコンボで手札を合計7枚にしつつ、アタックステップを止められない状況を作り上げる。
「トリプルシンボルのアタック。3つのライフを破壊する」
「ッ……ライフで受ける」
〈ライフ5➡︎2〉徳川フウ
「ぐっ……ぁぁぁぁぁあ!!!」
ルプスレクスは、超大型メイスによる一撃を上から叩き込み、フウのライフバリアを一気に3つ玉砕。
全身に響き渡るバトルダメージの衝撃に、片膝をつくフウ。遂にその残りはライフは僅か『2』にまで追い詰められる。
「後は、フルシティでアタックするだけだ」
目前まで迫った勝利。
後一撃。
後一撃で全てが終わる。正直、勝ったからと言って、ライの心までを救えるのかはわからない。だが、今自分にできる事は、このバトルに勝つ事のみ。オーカミは、最後のアタックを指示するべく、Bパッド上にあるグシオンリベイクフルシティのカードを捻ろうとするが………
「ダメだオーカミ。今のアンタじゃまだ、早過ぎる。どう足掻いても、フウちゃんには勝てない」
父親であるイナズマの亡骸を抱き抱えながら、弱音を吐くライ。
彼女は実力が高い故に、このバトル、どうやってもオーカミに勝ちの目がない事を直感的に理解しているのだ。
それが今、証明される。
「ニッヒヒ。ニィッヒッヒッヒ……!!」
「!」
己の敗北直前だと言うにもかかわらず、立ち上がりながらまた不気味な笑い声を上げるフウ。
その行動は読めなかったか、ラストアタックしようとしていたオーカミの手が思わず止まる。
「先ずは褒めておきますよ。よくまぁ昨日の今日でここまで私のデッキに対応できるようにして来ましたね」
「……」
「ですが、それもここまでです。今から貴方は思い知ります。己の無力さを……!!」
そう告げると、フウは全身、指先にまで力を入れると、王者によって発生していた赤い刻印が、身体全体に広がり、まるで彼女の身体を蝕むように侵食して行く。
「ッ……なんだ」
「驚いたでしょう。私の王者は他でもない、あのDr.A本人が造り上げたモノ。貴方の片目だけしか輝かない、出来損ないの王者など、遠く及ばない」
以前の清楚でお淑やかなイメージなど、一欠片も存在しない。
今の彼女は、『生きる』と言う、己の欲望のためだけに動く、心のない怪物。
「ライフ減少により、バースト発動……!!」
フウはここに来て、三度目のライフ減少時のバーストを勢いよく反転させる。
オーカミの王者で見た未来だと、このカードは『絶甲氷盾〈R〉』……それであれば、オルガの【神域】でほぼ封殺する事ができる。
「コレは……!?」
フウのバーストが反転した瞬間、紫色のガスが、フィールドを漂い始める。
不穏な空気を共に運んで来るそれにより、オーカミは発動したバーストカードが『絶甲氷盾〈R〉』ではない事を瞬時に理解した。
「私は今、神話をも喰らう」
紫色のガスは、次第にフウのフィールドへと密集して行く。
やがてそれらは塊となり、ある1体の巨大な個体を形成する。
「召喚、エヴァンゲリオン初号機G覚醒形態……!!」
ー【エヴァンゲリオン初号機"G”覚醒形態】LV2(5)BP12000
フィールドに顕現したのは、モビルスピリットである、ルプスレクスとフルシティが見上げる程の巨大なエヴァンゲリオンスピリット。
ただ、それは最早エヴァンゲリオンスピリットと言う枠組みに収まるモノではない。黒々とした鱗を半身に纏い、左右非対称となったその姿は、まるで絶望を具現化したかのような、凄惨と言う言葉を飲み込んで宿したかのような………
破壊と絶望の化神そのモノ。
それが今、このフィールドで恐怖の咆哮を張り上げる。
次回、第63ターン「決して散らない、鉄の華」