ライを賭けた、徳川フウ、嵐マコトとの、戦いから、およそ1ヶ月。
季節は冬。界放市ジークフリード区にも、肌寒い時期がやって来た。
「よぉ、先生」
木々生い茂る、界放市ジークフリード区の児雷也森林。その奥地にて、九日ヨッカは、ポツンと立っている墓石に、そう話しかけた。
墓石と言っても、磨かれ、洗練された物ではない。青年1人がなんとか持ち上げられる程度の、丁度いいサイズの石だ。
そこには、今は亡き、彼の恩師『春神イナズマ』が眠っている。
「すんませんね。本当はちゃんとした所に頼んで、ちゃんとしたお墓を建ててあげたかったんですけど、そうなると、今回の件が表舞台に流れる可能性がある。ライも、またいつエニーズ02の肉体を欲する者が現れるかわからないし。なんで、狭くて申し訳ないけど、ここで我慢してくださいね。なぁに、偶にオレやライがこうして墓参りに来ますよ」
少々雑だが、ヨッカは墓石にポリタンクの水を撒き、清める。
「なぁ先生。後で知ったんですけど、オレとレイジにバトスピを教えたのは、Dr.Aと戦わせるためだったんですよね」
今から13年以上前も昔の話。ヨッカは、元界放市最強のライダースピリット使い、ライダー王のレイジと共に、イナズマにバトスピを教わった。
その教えに偽りはなく、イナズマは、バトルスピリッツの楽しさを、余す事なく、ヨッカ達に伝えた。
だが、その真なる目的は、悪魔の科学者、Dr.Aの対抗馬の育成。イナズマは、ヨッカ達をバトスピ戦士として、ゆくゆくはDr.Aと戦わせる予定だったのだ。まぁ、ライを悪用しようとした嵐マコトから、ライを連れて逃亡しなければならなくなったために、その予定は頓挫したわけだが。
「ちょっぴりショックだった。オレ達の事も戦う道具だと思っていたみたいで。でも違うよな、先生は優しいから、多分、一緒に戦おうとしてた、違いますか?」
返って来るはずもない返答を、ヨッカは待ち続ける。
あくまで自分の奥底での話だし、そうであって欲しいと言う願望も含まれている。だが、それと同時に絶対そうだと言う確信もあった。
「ふ……まぁ、もういいか、なんでも。ライの事は、オレに任せてくれ。貴方のように、命を賭けてでも、護り抜いて見せます」
一生返って来ない返答を待ち続ける自分が、次第に馬鹿らしくなって来た。ヨッカは空になったポリタンクを持ち上げ、墓石から背く。
「最後に、成長したオレの顔、見て欲しかったな。アンタに似て、結構イケメンになりましたよ、オレ」
最後に「じゃあ、また来ます」と告げ、この場を後にするヨッカ。その目には、薄っすらと涙を浮かべていた。
******
「っしゃぁ!!…肩慣らしだ、このオレっちとバトルしやがれ、獅堂レオン!!」
「ハハハ、オレを相手に肩慣らしとは大きく出たな。まぁだがよかろう、貴様如き、軽く捻り潰してくれるぞ、鈴木ゼロマル」
「イチマルだ!!…いい加減名前覚えろよな!!」
場所は変わり、ジークフリード区のカードショップ『アポローン』……
多くのショーケースが陳列し、その中のカードが所狭しと並ぶこの店内にて、鈴木イチマルと獅堂レオンが、今にもバトルを始めようとしていた。そのすぐそばには、一木ヒバナも確認できる。
「そう言えばさ。2人は決まったの、進路」
ヒバナが2人に訊いた。忘れがちだが、イチマルとレオンは中学3年生。来年からは高校生だ。
この街にいる少年少女ならば、大抵の場合、界放市の区の名前を関した6つのバトスピ学園『ジークフリード校』『デスペラード校』『キングタウロス校』『オーディーン校』『ミカファール校』『タイタス校』のいずれかに進学する事になる。
「そんな事、訊かれるまでもないぜヒバナちゃん。オレっちは断然『ジークフリード校』さ。あの芽座椎名や赤羽司を輩出した超名門だからな、家からも近いし」
「後者が主でしょ絶対。まぁ他と比べて株は高いって聞くよね。レオンは?」
訊かれると、レオンは鼻を高くして語りだす。
「フン、よく聞け、オレは界放市ではなく、ゲートシティにあるバトスピ学園『ノヴァ校』に進学する!!」
「え」
「なにぃ!?」
レオンの進学する学園の名前に、ヒバナとイチマルは驚愕する。
「ノヴァ校って、あの入試最難関と言われる最高級のバトスピ学園じゃねぇか」
「卒業できれば、プロ入りはほぼ確定とも言われてるよね。流石レオン、規模が違うわ」
「フフン、そうだ。もっとオレを褒め称えるがいい!!」
「……スゲェ奴なのはわかるんだけどな、やっぱこのスケール違いの自己肯定感の高さが偶に腹立つんだよな」
レオンの進学するバトスピ学園『ノヴァ校』……
界放市から少し離れたバトスピの都市、ゲートシティにあるそのバトスピ学園は、最も大きく、最もレベルの高いバトスピ学園と言われている。
口にはしていないが、なんとレオンはその学園を推薦入試で首席で合格している。やはり仮にも界放リーグ三連覇を成し遂げた男。その実力は伊達ではない。きっと、前にオーカミとバトルした時よりも強くなっている事だろう。
「さぁオーカミよ。貴様もオレを褒め称えるがいい!!」
「バイト中なんだけど。つかオマエ、ウチの店出禁じゃなかったっけ?」
誇らしげな表情のまま、仕事でショーケースの中にカードを並べる作業を行っている、オーカミにも声を掛けた。
先月まで右目が見えず、右腕が動かなくなっていた彼だが、今ではこうしてまともに働ける程度には回復した様子。
「そんな事はどうでもいいだろう。と言うか、貴様もノヴァ校に来い。共にバトルの腕を磨き上げようではないか」
「なんか、いつもより気持ち悪いな。しかもオレ、進学する気ないし」
「え」
「なにぃ!?」
オーカミの進路に、また思わずして、イチマルとヒバナが声を漏らす。
「オーカ、進学しないの!?」
「え、うん。中学出たらここでもっと本腰入れて働く予定だけど」
「何言ってんだオーカミよ。界放市っつったらバトスピ学園だろ、楽しいんだぜバトスピ学園はよ」
「イチマルの言う通りよ、オーカも一緒に進学しよう」
「えぇ……」
ちょっぴり嫌そうな顔をする。これも忘れがちだが、オーカミの家は裕福な方ではない。売れっ子モデルの姉がどうにかやりくりしているような家計だ。
その事を加味して、オーカミは中学卒業後、アポローンで本格的に働くつもりなのだろう。
「お、みんな揃ってるね」
「ライちゃん!!」
そんな折、ライがアポローンを訪れる。あの事件以降、姿を見せなかったライ。ヒバナとイチマルは、懐かしさと嬉しさに心を満たされる。
「おぉライちゃん久し振り、元気だった?」
「まぁね。イチマルも元気そうじゃん。相変わらずヒバナちゃん一筋?」
「おうもちろんだぜ!!」
「また恥ずかしい事を、それにしても本当に久し振りだね、ライちゃん。後はフウちゃんが揃えば、全員集合なんだけど」
「……」
ヒバナに故意はない。夏恋フウが裏切り者で、徳川暗利、Dr.Aの孫であると言う事実は、この場だとオーカミとライしか知らないのだ。
「……いや、フウちゃん、実は転校しちゃって、もう界放市にはいないんだよね」
「え、ウソ!?」
嘘だ。フウは今、どこにいるのかさえ、わからない。
「そんな、オレっち達に何も言わずにどっか行っちまうなんて」
「あっはは、忙しかったみたいで、フウちゃんも残念そうにしてたよ」
ライは、心の傷を覆いつくすように笑い、平常を装う。所謂『強がり』だろう。少なくとも、オーカミにはそう見えた。
「あ、そうそうオーカミ。アンタに用があって来たんだ。ちょっと今時間ある?」
「ない、バイト中。終わってからなら」
オーカミに用があってアポローンまで来たライ。しかしオーカミは仕事中と言う理由でそれをキッパリ断る。
「そ。う〜ん、まぁいいか、じゃあね」
「え、ライちゃんもう帰っちゃうの?」
「うん。ヒバナちゃん達も、またね」
最後にそう告げると、ライは早々にアポローンを去って行った。
この時、この一瞬で、ヒバナは、ライがいつもと違う事を直感した。何か、オーカミに大事な事を話そうとしていたのではないか、そう勘繰り………
「何だったんだアイツ」
「オーカ、今すぐライちゃんのとこに行って」
「え、なんで」
「いいから行く。店番なら私たちがやっておくから」
「えぇ……」
そう言うと、半ば強引にオーカの着用していたエプロンを脱がし、イチマルとレオンの手に肩を置く。
おそらく、オマエら働けと言う意味だろう。
「え、ヒバナちゃん。まさかオレっちも?」
「もちろん」
「オレ、この店出禁なんだが」
「知らないわよそんな事。さ、早くオーカはライちゃんのとこに行く」
「う、うん」
珍しくとんでもないくらい強引なヒバナ。オーカミは戸惑いながらも、アポローンを出て、去って行ったライの元へと向かった。
「アレ、オーカミ。バイトは?」
「なんか終わった。で、オマエの話って何?」
「……」
この場に誰もいない事を確認すると、ライは単刀直入でオーカミに告げる。
「私、明日の朝一番で、界放市を去ろうと思う」
「!」
彼女の言葉に、さっきまで眠たげだったオーカミの目が見開く。
「なんで」
「なんでって、私元々昔からいろんなとこ旅してたしね。それに、またいつフウちゃんみたいな人が私を狙って来るかわからない。もうアンタやヨッカさん達に迷惑はかけられないから」
界放市を去ろうと言うライ。一見真っ当な理由に聞こえるが、オーカミは、その彼女の言葉に、どこか違和感を感じて。
「………それって、オマエの本心か?」
そう返した。ライも顔色ひとつ変えず、返答する。
「本心に決まってるでしょ。この事は、誰にも話してない。もちろんヨッカさんにもね、あの人に言ったら、心配されて止められそうだし」
「……」
「私が出た後、ヨッカさんに伝えて、今までありがとうございましたってね」
「それを言わせるために、オレだけにこの事を話したのか?」
「アンタなら、わかってくれると思ったから」
オーカミにこの事を話したのは、ヨッカに言伝をお願いするため。
黙って出て行くと、それはそれで問題になるのも理由の1つであろう。
「じゃあ、本当にサヨナラだね。今まで楽しかったよ」
「……」
背を向け、オーカミの元を去って行くライ。
この時のオーカミは何を思ったのか、ただ小さくなっていく彼女の背中を見届けていて………
******
翌日。夜の厳しい寒さが僅かばかりに残る冬の朝方。
九日ヨッカの自宅。彼はパジャマからスーツに着替え、これから仕事に行こうと張り切っていた。
「よし、今日もいっちょ頑張りますか。そんじゃライ、留守番よろしく」
「うん、いってらっしゃい、ヨッカさん」
まるで長年付き添って来た夫婦みたいなやり取りを行う2人。
だが、ヨッカが自宅を後にすると、ライは大急ぎでパジャマからいつもの私服、虎の刺繍が入ったスカジャンと白いショートパンツに着替え、寒さを凌ぐためのマフラーを首に巻くと、パンパンに詰まった大きなリュックサックを背負い、彼女もその場を後にした。
ー………
「ごめんヨッカさん。でも私、もうヨッカさん達に迷惑掛けるなんて耐えられない。悪いけど、これからは1人で自由気ままに一人旅させていただきますよっと」
家を出たライが目指していたのは、家から最も近い、ヴルムヶ丘公園近辺のバス停だ。
バスにさえ乗って仕舞えば、広大な界放市と言えど、いつでも抜け出せる。
だが……
「ッ……なんでいるかな」
そのヴルムヶ丘公園近辺のバス停にて、自分を待ち構えていた存在に、ライは表情を歪ませる。
もはやその正体は聞くまでもない。この事をライが教えたのは、たった1人しかいないのだから。
「オーカミ」
「ん、おはよう」
「おはようじゃないわよ、アンタなんでここに」
「アニキの家から最短で界放市を離れるならここだと思ったから。ほい」
「?」
ヴルムヶ丘公園近辺のバス停で待ち構えていた鉄華オーカミ。彼は彼女に会うなり、いきなりコンビニで買ったであろうクリームパンを手渡す。
「朝、多分まだ何も食ってないだろ」
「ふざけんな。なんでアンタがここに来たのかって訊いてんの。まさか私を止めに来たわけ?……悪いけど、私はそれに従う気はない」
「……」
オーカミを突っぱねるライ。そんな彼女に対し、オーカミは少しだけ考えると、また静かに話し出す。
「勘違いするな。オレはオマエを止めに来たわけじゃない」
「!」
「オマエの本心を聞きに来たんだ。本当にオレやアニキと離れたいなら、そうすればいいさ。だけど、それが本心じゃないって言うなら、オレはそれを全力で止める」
「……」
いつも、いつもいつも。
いつもいつもいつも。
この赤いチビ助は、心を見透かしたかのように、核心を突いて来る。こんな、人の人生を狂わせる怪物など、放って置けばいいと言うのに。
「昨日、本心でここを離れるって言ったでしょ」
もちろん、救けてくれたのは嬉しかったし、心から感謝している。
本当に好きだ。この優しい赤いチビ助に恋焦がれている。だけど、だからこそ、これ以上一緒にはいられない。
「仮にそうだとして、止めるって何、私とバトルでもしようっての?」
「必要なら」
「……いいわ。このまま張り付かれても困るし、結局決着もついてなかったしね。最後に私のバトルで、アンタに教えてあげる。絶対に越えられない壁ってヤツを」
「あぁ、臨む所だ」
心を鬼にし、オーカミにバトルを申し込むライ。オーカミも、元からこうなる事を予想していたのか、やる気は十分な様子。
丁度場所も、バトル場があるヴルムヶ丘公園だ。2人はそのバトル場まで赴き、懐から取り出したBパッドを左腕に装着し、展開。そこにデッキをセットし、バトルの準備を整える。
「このバトル、私が勝ったら、私はこの界放市から去る。逆にアンタが勝ったら、アンタの言う事を何でも聞く。OK?」
「いいよ何でも。それでオマエの本心が聞けるならな」
「バカ。アンタが私に勝つ事なんて、あり得ないから……!!」
バトルが始まる前から、カードバトラーの中でも最高峰とも呼べる強い気迫を見せるライ。やはりカードバトラーとしての格は、ライの方が上なのだと、この時点で察せてしまう。
しかし、オーカミも負けてはいない。
「あり得るさ。オレも、あの時のオレじゃない」
「そのセリフ、前にも聞いた覚えあるけど。しかもここで」
「ふ……行くぞ、バトル開始だ!!」
……ゲートオープン、界放!!
譲れない思いがある両者のバトルスピリッツが幕を開ける。
先攻は春神ライだ。1人で旅立つべく、己のターンを進めて行く。
[ターン01]春神ライ
「メインステップ。行くよエアリアル。LV1で召喚」
ー【ガンダム・エアリアル】LV1(1)BP2000
フィールドに出現するのは、風に包まれた球体。それを振り払い、中より全体的に柔和な印象を受ける白いモビルスピリット、春神ライの相棒、エアリアルが姿を見せる。
「ターンエンド」
手札:4
場:【ガンダム・エアリアル】LV1
バースト:【無】
『本当にこのまま彼らの元を去っていいのかい、ライ?』
「何よ、アンタまで。いいってずっと言ってるでしょ、口出ししないで」
『……わかったよ。見届けよう、このバトルの先にある未来を』
ターンエンドの直後、契約スピリット『エアリアル』の声が、ライの脳内に直接響いて来た。
どうやらエアリアルも、ライの事を心配している様子。
そんなエアリアルを、ライが黙らせた所で、次はオーカミの最初のターンが幕を開ける。
[ターン02]鉄華オーカミ
「メインステップ。全力で行くぞ、創界神ネクサス2枚、オルガ・イツカ、クーデリア&アトラを配置」
ー【オルガ・イツカ】LV1
ー【クーデリア&アトラ】LV1
オーカミは最初のターンから、いきなり鉄華団をサポートする2種の創界神ネクサス『オルガ・イツカ』と『クーデリア&アトラ』を配置。
それらの【神託】の効果により、彼のデッキ上から合計6枚のカードがトラッシュへ行き、オルガに2個、クーデリア&アトラに3個のコアが追加された。
「ターンエンド」
手札:3
場:【オルガ・イツカ】LV1(2)
【クーデリア&アトラ】LV2(3)
バースト:【無】
「最初からフルスロットルね。でも残念だけど、そんな創界神ネクサス、私のデッキには通用しないから」
「……」
バトルは一周し、再びライのターンが始まる。
[ターン03]春神ライ
「メインステップ、ミラージュ、株式会社ガンダムをセット」
ライのバーストゾーンに1枚のカードが浮かび上がる。それは、エアリアルの持つ系統「学園」をサポートするためのカードであって。
「株式会社ガンダムのセット中効果。系統「学園」を持つカードを召喚、配置する時、その軽減1つを満たす。これにより、1コストでネクサス『ミオリネ・レンブラン[CEO]』をLV2で配置」
ー【ミオリネ・レンブラン[CEO]】LV2(1)
フィールドには何も出現しないタイプのネクサスカードを配置するライ。それが持つ効果は、オーカミの鉄華団デッキにとってはあまりにも部が悪過ぎるモノであり……
「ミオリネCEOの配置時効果。次の私のスタートステップが来るまで、アンタのコスト3以下のネクサス、創界神ネクサスの効果は発揮できない」
「なに……!?」
そう告げられたオーカミが己のBパッドを確認すると、たった今配置した創界神ネクサスの2枚が途端に氷漬けになり、効果が発揮できない状態となる。
「オルガとクーアトは封じ込めた。これで、アンタのデッキのパワーは半減する」
「くっ……」
新たなネクサス、ミオリネCEOの効果が発揮。これによってオーカミは、次のライのターンが来るまで、ネクサスの効果はおろか、創界神ネクサスの【神技】や【神域】……コアを+するための【神託】でさえ発揮する事ができなくなる。
拘束時間は僅かながら、デッキの出力の大半を創界神ネクサスに依存しているオーカミの鉄華団デッキにとっては、まるで天敵のような効果だ。
「黄のパイロットブレイヴ、スレッタを召喚し、フィールドのエアリアルと合体」
ー【ガンダム・エアリアル+スレッタ・マーキュリー】LV1(1)BP6000
「アタックステップ。合体したエアリアルでアタック、その効果でカウント+1、デッキ下から1枚ドロー」
合体スピリットを作り上げた所でアタックステップに突入するライ。アタックしたエアリアルの効果でカウントを+1して、1枚のカードをデッキ下からドローする。
そして、今のオーカミに、これを防ぐ手段は一切なくて……
「ライフで受ける」
〈ライフ5➡︎4〉鉄華オーカミ
「ぐっ……」
エアリアルが手に持つビームライフルからビームを放射。オーカミのライフバリア1つは、それに貫かれ、ガラス細工のように砕け散る。
「ターンエンド」
手札:3
場:【ガンダム・エアリアル+スレッタ・マーキュリー】LV1
【ミオリネ・レンブラン[CEO]】LV2
バースト:【無】
ミラージュ:【株式会社ガンダム】
カウント:【1】
合体スピリットとメタカードの展開からドローに加えてライフの破壊まで序盤でこなしてしまうライ。一度彼女はそのターンをエンドとするが、オーカミにとってはかなり辛い状況なのに変わりなくて………
[ターン04]鉄華オーカミ
「メインステップ。ランドマン・ロディを召喚」
ー【ランドマン・ロディ】LV2(2)BP3000
オレンジと濁った白の丸みを帯びたボディを持つ、最早お馴染みとなった、小型の鉄華団モビルスピリット、ランドマン・ロディが召喚される。
さらに、オーカミはもう1枚、手札からカードを引き抜いて………
「天空斬り裂け、未来を照らせ!!……ガンダム・バルバトスルプス、LV2で召喚!!」
ー【ガンダム・バルバトスルプス】LV2(2)BP8000
天空より地上へ降り立ったのは、肩部の赤い装甲が特徴的な、バルバトスの強化形態の1種、バルバトスルプス。
エース級のカードが、この第4ターン目にして早くも登場を果たした。
「バーストをセットして、アタックステップ。ルプスでアタック、その効果でオレのデッキ上2枚を破棄」
アタックステップへと突入し、ルプスでアタックの宣言を行うオーカミ。そのルプスの効果によりデッキがトラッシュへと破棄される。
そして、その中には鉄華団カードが1枚………
「鉄華団カードを破棄、よってコア3個以下のエアリアルを破壊する」
バスターソード状のメイス、ソードメイスを構え、エアリアルへと突撃するルプス。エアリアルはビームライフルを連射し、迎撃するが、ルプスの装甲はそれら全てを弾き返す。
ルプスはそのままソードメイスを縦一線に振い、エアリアルを一刀両断。爆散へと追い込んだ。
「……破壊されたエアリアルは魂状態となってフィールドに残る」
爆散したはずのエアリアル。だが、その爆散による爆煙が晴れると、ライの横で片膝をつき、半透明となった状態で復活していた。
「合体していたスレッタも、当然フィールドに残す」
「ルプスのアタックは継続中だ」
「それは、ライフで受ける」
〈ライフ5➡︎4〉春神ライ
ルプスは左腕から滑腔砲を展開し、鉛玉を放出。ライのライフバリア1つを粉砕した。
「私のライフが減った時、ミオリネCEOのLV2効果を発揮。学園カードを召喚、配置する。ネクサス、ニカ・ナナウラを配置」
ー【ニカ・ナナウラ】LV1
「配置時効果で2枚オープン、その中の学園カード、エラン・ケレスを手札に加える」
ネクサスと創界神ネクサスの効果を無力化するだけではない。ミオリネCEOの2つ目の効果により、ライはオーカミのターンだと言うにもかかわらず、新たなネクサスカードを配置した。
「……続け、ランドマン・ロディ」
己のターンでのネクサスの配置など、全く意に介さず、オーカミは更なるアタックの宣言。ルプスに続き、ランドマン・ロディが、ライのライフバリア目掛けて走り出す。
そのアタック時効果により、デッキ上1枚を破棄。それが鉄華団カードならば、コア1個以下のスピリット1体を破壊できたのだが、今回はハズレ。残念ながらフィールドに残ったスレッタの破壊はできなかった。
「そのアタックもライフで受ける」
〈ライフ4➡︎3〉春神ライ
ランドマン・ロディの斧による一撃が、ライのライフバリア1つを破壊。残り3つとなる。
「私のライフが減った時、再びミオリネCEOの LV2効果。今度はデリング・レンブランを配置」
ー【デリング・レンブラン】LV1
またしてもミオリネCEOの効果。これにより、ライのフィールドには何も出現しないタイプのネクサスカードが4枚並ぶ。
「ターンエンド」
手札:1
場:【ガンダム・バルバトスルプス】LV2
【ランドマン・ロディ】LV2
【オルガ・イツカ】LV1(2)
【クーデリア&アトラ】LV2(3)
バースト:【有】
そのターンをエンドとするオーカミ。スピリットを破壊しつつ、一気に2つのライフを砕き、己が優勢となった事に違いはないものの、創界神2種の効果が発揮できない状態だったために、その手札は僅か1枚。
しかも相手はあの春神ライだ。未だ全く油断できる状況じゃない事を理解していて………
[ターン05]春神ライ
ライのターンが再び始まった。それにより、ミオリネCEOの配置時効果が切れ、オーカミの2種の創界神ネクサスは氷漬けの状態から解放される。
だが………
「メインステップ。2枚目のミオリネCEOを配置」
「!」
ー【ミオリネ・レンブラン[CEO]】LV2
「配置時効果により、再びコスト3以下のネクサス、創界神ネクサスの効果は、私の次のスタートステップまで発揮できない」
「……ヤバいな」
まさかの2枚目。オーカミの2種の創界神ネクサスがまたしても氷漬けとなってしまう。これには、流石のオーカミも表情を歪ませる。
「マジック、魔女の覚醒。魂状態となったエアリアルを再召喚」
「!」
「そのままスレッタと合体」
ー【ガンダム・エアリアル+スレッタ・マーキュリー】LV2(2)BP11000
鮮やかで、流れるようなカードの連打。ライの契約スピリット、エアリアルが半透明の状態から色を取り戻し、再びフィールドへと足を踏み込む。
「アンタ、私の本心を聞きたいって言ったわよね?」
「あぁ」
「なら聞かせてあげるわ、私の本心。アンタら、目障りだ」
「!」
「鬱陶しい、鬱陶しくてしょうがない。私が、さっさと1人になりたいって言ってんだ。早くそこを通してよ……!!」
「………」
凄まじい気迫を感じると共に、ほんの僅かに、指先が震えているのをオーカミは理解した。
心を鬼にして、嘘をつき、彼を遠ざけようとしているのがわかる。
「アタックステップ。その開始時、デリングの効果を発揮、ランドマン・ロディをこのターン、ガンダムとして扱い、コア2個をリザーブへ、消滅させる」
「!」
ネクサス効果により、黄属性には珍しいコア除去効果を発揮して来るライ。
フィールドではランドマン・ロディが維持コア不足で消滅。ルプスを残すのみとなってしまった。
「大した覚悟もなく私を邪魔して来るアンタが、嫌いだ!!……エアリアルでアタック。その効果でカウント+1し、デッキ下から1枚ドロー」
嘘というヴェールで包み込んだ怒りと共に、合体したエアリアルでアタックの宣言を行うライ。
このフラッシュタイミングで、さらなるカードを手札から発揮させる。
「フラッシュ、アタック中のエアリアルを対象に【契約煌臨】を発揮」
「!!」
「遥か未来を駆け抜ける、私の相棒!!……ガンダム・エアリアル・ガンビット!!」
ー【ガンダム・エアリアル[ガンビット]+スレッタ・マーキュリー】LV2(2)BP22000
エアリアルのシールドが複数のビット、ユニットとして展開。それらは踊るように宙を舞い、エアリアルの周囲で美麗な球体を描く。
そのユニット、ガンビットを操るエアリアル、エアリアル・ガンビットこそ、エアリアルの真の姿にして、春神ライのエースカードだ。
「煌臨アタック時効果、バルバトスルプスをデッキの下に戻す」
エアリアル・ガンビットが、ガンビットへと信号を送り、指示を行う。
するとそれらは、オーカミのバルバトスルプスに向かって行き、先端から放つレーザー光線でそれを焼き切り爆散へと追い込んだ。
「その後、スレッタがあれば、バトル中シンボルを1つ追加、ダブルシンボルになる。さらに合体したスレッタの効果、敵スピリットを倒した事で、デッキ下から1枚ドロー、さらにソウルコアをリザーブに戻す」
敵スピリットの排除、シンボル追加、ドロー、ソウルコアの回収。とにかくバトルスピリッツにおいて強い効果を幾つも保有しているエアリアル。
その底が知れないカードとしての力が、オーカミと、彼の鉄華団デッキに襲い掛かり始めて来た。
「心にありもしない言葉で、オレが諦めると思ってんの?」
「……」
「いくらオレを遠ざけても、罵倒しても、辛いのはオマエの方だろ」
「うっさい!!……いいから、私に負けてよ!!」
どこまでも強情を貫こうとするライ。オーカミにさらなる追い打ちを掛けるべく、手札からまたカードを切り、それを己のBパッドへと叩きつける。
「フラッシュマジック、エアリアル・ガンビットの効果によって、マジックカードとなった、エラン・ケレスの効果、アタック中のエアリアル・ガンビットを回復」
「!!」
手札にある系統「学園」を持つカード全てに『エアリアル1体を回復させる、マジックカード』として扱う効果を与える、エアリアル・ガンビット。
それにより、自身が回復状態に。このターン、二度目のアタックが可能となる。
「そして、エアリアル・ガンビットの本命のアタック。ダブルシンボルで2つのライフを破壊する!!」
「ッ……ライフで受ける」
〈ライフ4➡︎2〉鉄華オーカミ
「ぐうっ!?」
エアリアル・ガンビットは、ビームライフルを取り出し、それをオーカミに向けて照射。彼を守るライフバリアが一気に2つ貫かれ、砕け散る。
それによって、残りのライフは僅か2つ。回復状態となっている、エアリアル・ガンビットの攻撃をあと一撃でも受けて仕舞えば、その時点でゲームオーバーだ。
「アンタに私は越えさせない。このバトル、勝つのは私だ」
「……」
早くも断崖絶壁、絶体絶命の状況に立たされるオーカミ。
かつてない程の力を発揮するライのバトルスピリッツに、オーカミは果たして勝利する事ができるのか………
次回、第65ターン「魔女の願い」
******
先日行ったヒロイン総選挙の結果発表です!!
・春神ライ【21票】
・一木ヒバナ【2票】
・徳川フウ【3票】
見ての通り、ライがぶっち切りの1位でした( ̄∀ ̄)
たくさんのご投票、誠にありがとうございました!!
次回は『悪魔と魔女編』最終回、どうぞよろしくお願いします!!