第66ターン「怪獣王の咆哮」
日本を代表するバトスピ都市の一角を担う、界放市ジークフリード区。
そこにある、とあるバスターミナルにて、どこからやって来たのか、到着したての大型バスから1人の少年がこの地に降り立つ。
「ここが界放市。やはり、ゲートシティと比べて、随分と田舎くさいな」
ジークフリード区の街並みを見てそう呟き、紫色の長い髪を靡かせる美少年。凛とした気高いその表情は、彼がただ者ではないと教えてくれる。
因みにゲートシティとは、界放市近辺にあり、それと肩を並べる程のバトスピ都市の事。ジークフリード区も相当な大都市だが、彼の口振りからして、ゲートシティはそれ以上の大都市である事が伺える。
『キング、何で自家用ジェット機で来なかったの?』
もう1人、やたら幼い別の声。
だが、少年の近辺にそれらしい人物は誰もいないし、少年以外の人々にその声は聞こえない。この声は、少年の脳内に直接響いているのだ。
まるで、春神ライの契約スピリット、エアリアルのように。
「偶には古風な文化に触れるのも、悪くないと思ってな」
『田舎くさいとか言いながら、バスに乗るのは結構楽しみにしてたんだね』
「行くぞベビー、私達は今日、謎のカード、鉄華団の使い手、鉄華オーカミに会いに行く」
キングと呼ばれる少年。そんな彼の口から出た名前は、我らが鉄華オーカミ。
今、新たなる物語が幕を開ける。
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伝説の悪魔の科学者Dr.A。その孫、徳川フウとの戦いから、実に1年以上の時が流れた。
ここは始まりの地、九日ヨッカのカードショップ「アポローン」……
「なぁオーカよ、ヒバナとイチマルから聞いたぞ。オマエ本当にバトスピ学園に入学しねぇつもりか?」
今日も営業中のアポローン。
トゲトゲした白髪で長身の青年、九日ヨッカが、モップを持って床を磨いている、赤髪の少年、鉄華オーカミにそう質問した。
「うん、しない」
床磨きに集中しながらも即答するオーカミ。
バトスピ学園とは、端的に言うと、バトスピの専門学校。
このバトスピ都市の一角である界放市では、中学卒業後、そのバトスピ学園に入学するのが、誰もが持つ、当たり前の考え。
「んでもって、ここに就職ってのもマジか?」
「マジだよ。オレん家、あんまりお金ないの知ってるだろ。中学出たらしっかり働くって決めてたんだ」
「マジかよ。中学出たらって、もう2ヶ月ねぇじゃねぇか」
だが、その当たり前の考えを持たないのが我らが鉄華オーカミ。あと2ヶ月、中学を卒業したら、バイト中のアポローンに骨を埋めるつもりのようだ。
「それに、バトスピ学園って、バトスピの勉強する学校だろ。それなら別にここでアニキに教えてもらえばいいしな」
「いや、ちゃんと高校で学ぶ学問はやるぞ。悪い事は言わねぇから中卒はやめとけ」
オーカミはあまり考えないし、悩まない。
故に、常に己の気持ちにド直球で真っ直ぐだ。それが他者に正の方へ影響を与える事もあるが、今回ばかりは考えモノである。どう考えてもバトスピ学園、ひいては高校は卒業しておくべきだからだ。
「いいかオーカ。今この時期、15歳になったオマエは、大事な選択を迫られている。一度切りの人生だ。家がどうとかじゃない。自分がそうしたい、楽しそう。そう思える選択をするんだ」
「えぇ、別にここで働くのも楽しいけど」
「最終的にここで働くにしてもだ。先ずはもっと色んな世界を見て来い。自分だけの狭い世界に閉じこもってちゃ、大海は見えねぇぞ」
「……」
正直、オーカミはあまりヨッカの言っている事が理解できなかった。
アポローンで働く。それはつまり、自分がジークフリード区に残ると言う事。ヒバナもイチマルも、バトスピ学園ジークフリード校に通うからジークフリード区からはまだ出ないし、ライだっている。
楽しくないわけがない。いつも通り、いつも通りの至って普通の、楽しい日常が送れるのだ。それの何が行けないのか。
******
「進学か」
あれから少しだけ時が流れ、夕立の刻。
バイト終わり、1人帰路につくオーカミは、シフト中にヨッカに言われた言葉を思い出しながら、そう呟いた。
「バトスピはそりゃ強くなりたいけど。別に学校行って必ず強くなれるとも思わないしな」
これまで、オーカミは自らのセンス、ヨッカによる教え。さらには格上達との激闘により、僅か2年足らずと言う短い期間で凄まじい成長を遂げた。
その実力は、最早界放市で勝てる者がいないのではと疑問を持たれる程だ。
「もっと強い奴がいてくれるなら、話は別だけど」
オーカミが進学したくないもう1つの理由は、自分より強いカードバトラーが、この街にはもういないのではないかと言う疑念があるからだ。
バトスピはもちろん楽しいし、辞めるつもりもない。ただそれ以上に、オーカミは強いカードバトラーとのバトルを求めていた。
「昔のアイツも、こんな感じだったのか」
オーカミの脳裏にふと浮かんで来たのは、己のライバルの1人である獅堂レオン。彼もかつて、ジュニア内どころか界放市最強と呼ばれ、今のオーカミ同様に強い者とのバトルを求めていた過去がある。
今になって、オーカミはそんな彼の気持ちをほんの少しだけ理解した。
「そこの君、少しいいかな?」
「ん?」
突然、背後から聞こえて来た声。オーカミはその声の方へと振り向くと、そこには紫色の長髪を靡かせる美少年がいた。
何かの制服だろうか、白を基準とした正装らしき物を着用している。
「何」
「つからぬ事をお聞きしますが、君はもしや、あの鉄華オーカミ君ではないでしょうか」
「あぁ、うん。そうだけど」
オーカミの返事に「やはりそうでしたか」と美少年。
「なんでオレの事知ってるの」
「中学2年の時にバトスピを始め、その年で界放リーグ準優勝、さらに翌年は優勝。これだけの好成績を短期間で収められるカードバトラーなんて、知らない方がおかしい」
「……」
オーカミは知っている。こんな感じで自分に近寄って来る人物の大半の目的が、自分とのバトルスピリッツであると言う事を。
今年の界放リーグで優勝して以降、その頻度はかなり増した。そして今回、目の前にいる奴も、きっとそう言うタイプの事情があるのだと察した。
「やるならさっさとやろう、バトル。アンタもそれが目当てなんだろ。最近多いんだ、そう言う奴」
「話が早くて助かる。それじゃあお言葉に甘えて手合わせ願おうか」
バトルに同意すると、2人は、河川敷の広場にて、互いに距離を取り合い、懐からBパッドを取り出して左腕に装着。そこに己のデッキを装填し、颯爽とバトルスピリッツの準備を終える。
「先攻と後攻、どうやって決める?」
「君が好きな方を選ぶといい」
「……じゃあオレの先攻で」
「私は後攻か、よかろう」
美少年は、オーカミに先攻と後攻を選択させる。おそらく、それ程までに勝てる自信があるのだろう。
「そう言えば、まだ名を名乗ってなかったね。私の名は『キング王』……よろしく、鉄華オーカミ君」
「なんか変な名前だな」
「ふふ、よく言われるよ。珍しい名前だからね」
「まぁ名前はなんでもいいよ。行くぞ、バトル開始だ」
……ゲートオープン、界放!!
河川敷の広場にて、鉄華オーカミと、謎の美少年『キング王』によるバトルスピリッツが幕を開ける。
先攻は鉄華オーカミだ。早々に終わらせるべく、それを進めて行く。
[ターン01]鉄華オーカミ
「メインステップ、バルバトス第1形態を召喚」
ー【ガンダム・バルバトス[第1形態]】LV1(1)BP2000
「これが鉄華団。紫属性のモビルスピリット、バルバトス」
「召喚時効果でデッキ上3枚をオープン、その中にある鉄華団カード『クーデリア&アトラ』を手札に加えて、残りは破棄」
大地を突き破って現れたのは、鉄華団スピリット、バルバトス第1形態。
その召喚時効果により、手札1枚、トラッシュ2枚を増やした。
「ターンエンド」
手札:5
場:【ガンダム・バルバトス[第1形態]】LV1
バースト:【無】
どんなデッキであっても、先攻の1ターン目でやれる事など、極小数に限られる。
オーカミはバルバトス第1形態の召喚のみでそのターンをエンド。次は実力が未知数であるキング王のターンだ。
[ターン02]キング王
「私のメインステップ、溶岩海のエデラ砦をLV1で配置」
ー【溶岩海のエデラ砦】LV1
キング王の背後に、溶岩に浮かぶ、岩でできた砦、溶岩海のエデラ砦が配置される。
このネクサスは赤属性。どうやら彼は赤属性のデッキを扱うようだ。
「配置時効果でカウント+1し、相手のBP5000以下のスピリット1体を破壊する」
「!」
「バルバトス第1形態を破壊」
砦から放たれるマグマの弾丸。それはオーカミのフィールドにいるバルバトス第1形態に被弾。爆散へと追い込む。
「鉄華団スピリットが、相手によってフィールドを離れる時、手札からグレイズ改弍の効果を発揮」
「……ほぉ」
「自身をノーコスト召喚。召喚時効果で1枚ドロー」
ー【流星号[グレイズ改弍]】LV1(1)BP2000
誰もいなくなったオーカミのフィールドに、すぐさま登場するのは、斧を武器として持つ、マゼンタカラーの1つ目のモビルスピリット、グレイズ改弍。
「成る程、スピリットを破壊されようが、即座に新しいスピリットを展開するか。だが、それだけでは私に及ばない」
「なに」
そう告げた直後、キングは手札からまた1枚、Bパッドへと叩きつける。
そのカードは、彼が強く、尚且つ特別性のあるカードバトラーである事の証明でもあり………
「召喚。我が右腕、契約スピリット、ベビーゴジラ」
ー【ベビーゴジラ】LV1(1)BP3000
「ッ……契約スピリット、ライのエアリアルと同じ」
キングのフィールドに現れた最初のスピリットは、幼く小さいが、伸び代を感じさせる、鮮やかな黒い逆鱗を持つ、怪獣のようなスピリット。
その名はベビーゴジラ。エアリアルと同様、意思を持つカード、契約スピリットの1体にして、赤属性の中の赤属性と言われる『ゴジラ』の1種。
「バーストをセットし、アタックステップに入る。ベビーゴジラでアタック、その効果でカウント+2。この効果発揮後、BP5000以下のスピリット1体を破壊する」
「!」
「グレイズ改弍を焼き尽くす」
ベビーゴジラはグレイズ改弍へ向けて、口内から火炎弾を放ち、それを焼却した。
「アタックは継続中だ」
「……ライフで受ける」
〈ライフ5➡︎4〉鉄華オーカミ
オーカミの眼前まで走り出したベビーゴジラ。その鋭い爪で彼のライフバリア1つを切り裂く。
「ターンエンド」
手札:2
場:【ベビーゴジラ】LV1
【溶岩海のエデラ砦】LV1
バースト:【有】
カウント:【3】
「コイツ、強い」
赤のネクサスと契約スピリットの効果で、オーカミのカードを二度破壊して見せたキング王。
僅か1回のターンで、彼に己の底知れない実力を感じさせつつ、エンドを宣言。
[ターン03]鉄華オーカミ
まさかの契約スピリット。
だけど、その程度で怯むオレじゃない。
ライのエアリアルと同じく契約スピリットを所有していたキング王。契約スピリットが強力な効果を持っているのは十分理解しているが、それに怯む事なく、オーカミは己のバトルスピリッツを貫いて行く。
「メインステップ、創界神2枚、オルガ・イツカ、クーデリア&アトラを配置」
ー【オルガ・イツカ】LV1
ー【クーデリア&アトラ】LV1
オーカミのフィールドには何も出現しないが、2枚の創界神ネクサスが配置される。
神託の効果が発揮され、デッキ上からカードが合計6枚トラッシュ、それぞれ2つずつコアが追加された。
「さらに来い、ランドマン・ロディ。対象スピリットの召喚により、オルガとクーデリア&アトラにコア+1」
ー【ランドマン・ロディ】LV1(1)BP1000
誰もいなくなったオーカミのフィールドに現れたのは、黄ばみ、丸みを帯びた装甲を持つ、小型の鉄華団モビルスピリット、ランドマン・ロディ。
「アタックステップ、ランドマン・ロディでアタック」
オーカミがアタックステップに突入。小さな斧を手に、ランドマン・ロディが駆け出していく。
「フラッシュ、オルガの【神域】を発揮、デッキ上3枚を破棄して1枚ドロー、このターン、アンタは効果でアタックステップを終了できない。クーデリア&アトラの【神域】が誘発、鉄華団カードの効果によって自分のデッキが破棄された時、トラッシュにある紫1色のカード1枚をデッキ下に戻し、デッキ上から1枚ドロー」
「手札とトラッシュを増やすか。紫属性らしい」
鉄華団をサポートする創界神2種によるドロー&トラッシュ肥やしのコンボ。
これにより、オーカミの手札は4枚。トラッシュは12枚まで増加する。紫属性とは言え、二度目のターンでここまでリソースを伸ばせるデッキはそういないだろう。
「アタックはライフで受けよう」
〈ライフ5➡︎4〉キング王
ランドマン・ロディの斧による一撃が、キング王の前方に展開されるライフバリア1つを砕く。
「ライフ減少によるバースト、クリアウォールを発動」
「!」
「効果によりカウント+2、ライフ1つを回復」
〈ライフ4➡︎5〉キング王
前のターンに伏せていたキング王のバーストが、この攻撃で反転し、発動。
効果によりカウントは5まで増加、ライフバリアはたちまち1つ復元される。
「ターンエンドだ」
手札:4
場:【ランドマン・ロディ】LV1
【オルガ・イツカ】LV2(3)
【クーデリア&アトラ】LV2(3)
バースト:【無】
手札とトラッシュの数を大きく伸ばすものの、発動されたバースト効果により、攻撃はプラマイ0。
結局、ライフ5を維持されたまま、再びキング王のターンを迎える。
[ターン04]キング王
「メインステップ、2枚目の溶岩海のエデラ砦をLV2で配置」
ー【溶岩海のエデラ砦】LV2(1)
「配置時効果でカウント+1、ランドマン・ロディを破壊」
2つ目のエデラ砦。前のターンと同様に放たれる火炎弾が、今度はランドマン・ロディを襲い、それを爆散させる。
「ランドマン・ロディの破壊時効果。デッキから1枚ドロー」
ランドマン・ロディもただではやられない。破壊時効果が発揮され、オーカミはデッキから1枚のカードをドロー、その枚数は5枚となる。
「マジック、フォースブライトドローを使用。私のカウントが2以上の時、デッキ上から3枚のカードをドローする」
続けて使ったのは赤属性のドローマジック。その効果でキング王は3枚のカードをドローし、手札の合計は4枚となる。
「ベビーゴジラのLVを2に上げ、アタックステップ、ベビーゴジラでアタック。効果でカウント+2」
「カウント8……どんだけ貯めるつもりだ」
場と手札を整え、アタックステップに直行するキング王。ベビーゴジラの二度目のアタックにより、カウントの合計は8となる。
「アタックはライフで受ける」
〈ライフ4➡︎3〉鉄華オーカミ
オーカミのライフバリア1つが、ベビーゴジラの口内から放たれた火炎弾により1つ粉砕される。
「ターンエンド」
手札:4
場:【ベビーゴジラ】LV2
【溶岩海のエデラ砦】LV2
【溶岩海のエデラ砦】LV1
バースト:【無】
カウント:【8】
キング王は大きな動きは全く見せず、カウントと手札を貯める事に終始し、そのターンをエンドとする。
次はオーカミのターン。2枚の創界神ネクサスに加え、豊富な手札とトラッシュ。彼の鉄華団デッキは、ここから加速して行く。
[ターン05]鉄華オーカミ
「メインステップ、先ずはランドマン・ロディを召喚」
ー【ランドマン・ロディ】LV1(1)BP1000
「対象スピリットの召喚により、オルガとクーデリア&アトラにコア+1」
手始めに呼び出される2体目のランドマン・ロディ。オーカミはさらに己の手札から1枚のカードを引き抜き、それをBパッドへと叩きつける。
「さらに、天空斬り裂け、未来を照らせ、ガンダム・バルバトスルプス、LV3で召喚」
ー【ガンダム・バルバトスルプス】LV3(5)BP13000
天空より降り立つのは、バスターソード状のメイス、ソードメイスを持つ、バルバトスの強化形態の1つ、バルバトスルプス。
「主力の出番か」
「オルガとクーデリア&アトラにコア+1。見せてやる、鉄華団の勝利への道をな、アタック、その開始時に、オルガの【神技】を発揮。オルガのコア4つをボイドに置き、トラッシュから鉄華団のパイロットブレイヴ、三日月・オーガスを召喚、バルバトスルプスに直接合体」
ー【ガンダム・バルバトスルプス+三日月・オーガス】LV3(5)BP19000
創界神ネクサス、オルガ・イツカの【神技】がここに来て発揮。
トラッシュから鉄華団のパイロットブレイヴ、三日月・オーガスを召喚し、それをバルバトスルプスに合体。強力な合体スピリットが僅か1ターンで爆誕する。
「バルバトスルプスでアタック。その効果でデッキ上2枚を破棄、その中にある鉄華団1枚につきコア3個以下のスピリット1体を破壊する」
バルバトスルプスのアタック時効果により、彼のデッキが2枚破棄され、トラッシュに送られる。
そしてその中には当然鉄華団のカードが確認できて。
「ベビーゴジラを破壊だ」
背部のスラスターで地平線を飛翔し、ベビーゴジラの眼前まで迫るルプス。慌ててその場をくるくる回るベビーゴジラを、ソードメイスで叩き潰し、爆散させた。
「鉄華団カードの効果でデッキを破棄した事で、クーデリア&アトラの効果、トラッシュにある紫1色のカードをデッキ下に戻して1枚ドロー」
「破壊されたベビーゴジラは魂状態となり、フィールドに残る」
爆散したベビーゴジラだが、契約スピリットと言う性質の都合により、色を失い、魂状態としてキング王のそばに残る。
「まだあるぞ。三日月の効果でLV1のエデラ砦のLVコストを+1して消滅」
「無駄だ。エデラ砦は相手のカウントが4以下の時、相手の効果を受けない」
「なら追加効果だ。バルバトスと合体している時、鉄華団スピリット1体につき、アンタのリザーブのコア1つをトラッシュに置く」
「!」
「オレの鉄華団スピリットは2体。リザーブのコア2つをトラッシュへ」
エデラ砦の消滅は叶わなかったものの、ベビーゴジラの破壊と、リザーブのコアをトラッシュ送りにする事には成功。
キング王の使用できるコアは、僅か2つとなってしまう。
「フラッシュ、クーデリア&アトラの【神技】を発揮。クーデリア&アトラのコアを5個ボイドに置き、トラッシュにある鉄華団1枚をデッキ下に戻す事で、アタック中のバルバトスルプスを回復させる」
クーデリア&アトラの【神技】も発揮。ルプスは回復状態となり、このターン、二度目のアタックが可能となる。
「合体したダブルシンボルのルプスのアタック2回で4点、ランドマン・ロディのアタックで1点。計5点のライフを破壊できる算段か」
「……」
ほとんどの敵を沈めて来た、鉄華団デッキの必勝パターンとも言えるコンボを決めたオーカミだったが、それを受けても尚、キングは涼しい顔を彼に見せる。
「紫速攻のデッキとしてはかなりの攻撃力だ。しかし足りんな、この程度では」
「……!」
そして、反撃に出るべく、手札のカード1枚を、己のBパッドへと叩きつける。
「フラッシュ【契約煌臨】を発揮、対象は魂状態となったベビーゴジラ」
「ッ……そりゃあるか」
……【契約煌臨】
それはただの煌臨ではない。契約スピリットのみが真の力を扱える特別な煌臨。キング王の持つベビーゴジラもまた、その力を発揮させる。
「全てのスピリットの頂点、破壊の化身をここに呼ぶ。怪獣王ゴジラ、LV1で契約煌臨」
ー【怪獣王ゴジラ(1989)】LV1(1)BP16000
再びフィールドへと足を踏み入れ、小さな咆哮を張り上げ続けるベビーゴジラ。するとその咆哮は次第に爆音へと変化。それに比例し、姿もモビルスピリットを一回りも二回りも超える程の巨大な体躯へと変貌する。
こうしてフィールドへ新たに出現したスピリットの名は、怪獣王ゴジラ。漆黒の逆鱗、結晶体のような背鰭を持つ、全てのスピリットの頂点に君臨する王。
「……コイツは、ヤバそうだな」
フィールドに呼び出されて尚も強烈な咆哮を張り上げ続ける、怪獣王ゴジラ。それがオーカミに与える威圧感は半端なモノではない。
「煌臨アタック時効果。BP10000以下のスピリット1体を破壊し、その後煌臨元に赤のカードがあれば2枚ドローする。この時、怪獣王ゴジラは【OC8】を達成しているため、破壊効果の上限を10000上昇、対象を1体から全体にする」
「なに……!?」
つまりは煌臨アタック時に、BP20000以下のスピリットを全て破壊すると言う事だ。
怪獣王ゴジラは、背鰭を青く輝かせ、エネルギーを体中に溜め込む。そしてそのエネルギーを口内へと集中させ、青白い熱線として、それをオーカミのフィールドへと放出。
青白い熱線に直撃したルプスとランドマン・ロディは耐えられるわけもなく呆気なく焼却。オーカミのターンであると言うにもかかわらず、彼のフィールドからはスピリットが全て消えてしまった。
「くっ……ランドマン・ロディの効果で1枚ドロー。ルプスと合体していた三日月はフィールドに残す。ターンエンド」
手札:5
場:【三日月・オーガス】LV1
【オルガ・イツカ】LV1(1)
【クーデリア&アトラ】LV1(0)
バースト:【無】
一度は勝利に限りなく近づいたと思われたオーカミであったが、それはキング王の僅か一手によって瞬時に瓦解してしまった。
次は、そんなキング王のターン。怪獣王を従えた彼が繰り出す攻撃に、オーカミは耐え抜く事ができるのか……
[ターン06]キング王
「メインステップ、怪獣王ゴジラのLVを2に上げ、2体目のベビーゴジラを召喚」
ー【ベビーゴジラ】LV2(3)BP9000
「2枚目の契約スピリット……?」
小さなゴジラにして、原点。ベビーゴジラの2体目が、キング王のフィールドへと投入される。
さらに怪獣王ゴジラのLVは2に上昇、BPは合体したルプスをも超える20000へ到達した。
「アタックステップ、怪獣王ゴジラでアタック。その煌臨アタック時効果により、三日月・オーガスを破壊し、デッキから2枚ドロー」
「ッ……」
進行を開始する怪獣王ゴジラ。その効果によりオーカミのBパッド上にあった三日月のカードがトラッシュへと誘われる。
「もう1つ、煌臨元となっているベビーゴジラの効果、カウント+2。そしてカウント10となったこの瞬間、ベビーゴジラの真なる力が解放される」
「真なる力……?」
「私のカウントが10以上の時、全てのスピリットに赤シンボル1つを追加する。それが2体分、よって怪獣王ゴジラとベビーゴジラはトリプルシンボル」
「なに!?」
キング王が頑なにカウントを貯め続けて来た理由が、ここに来てようやく判明する。
しかし時既に遅し。キング王のフィールドに存在する全てのスピリットに赤シンボル2つが追加。一撃で3つのライフを砕く事ができるトリプルシンボルと化す。
ダメだ。
この手札じゃトリプルシンボル2体のアタックを止める事ができない。
オーカミの手札には、相手スピリット1体のコアを3つリザーブに置く紫のマジックカード『デスアタラクシア』が1枚ある。
しかし、オーカミも察している通り、それだけではこの状況を覆す事はできない。
「ライフで受ける……」
「勝利は全て我が手の中にある、全てを破壊しろ。ゴジラ……!!」
〈ライフ3➡︎0〉鉄華オーカミ
「うぁぁぁぁあ!!」
怪獣王ゴジラの口内より放たれる青白い熱線が、オーカミの残ったライフバリアを全て砕き、掻っ攫う。
その瞬間、オーカミのBパッドから「ピー…」と言う甲高い機械音が流れ、彼の敗北と、キング王の勝利を告げた。
「くっ……」
「ありがとう。良いバトルだった」
バトルが終わり、フィールドに最後まで残った2体のゴジラがゆっくりと消滅して行く中、勝利したキング王はオーカミにそう告げ、背中を向ける。
「待てよ。アンタ、何者だ」
背を向け、この場から立ち去ろうとするキング王。オーカミはそれを言葉で制止させる。
「鉄華オーカミ。ゲートシティにある『ノヴァ学園』で待っている。レオンと共に」
「ッ……獅堂!?」
キング王の口から出て来たのは、オーカミのライバルの1人『獅堂レオン』の名前。そして、ゲートシティの『ノヴァ学園』………
オーカミは以前、彼がそのノヴァ学園へと進学した事を思い出す。
「ノヴァ学園……」
「次に会う時を、楽しみにしているよ」
オーカミとのバトルで、彼に圧倒的な実力差を見せつけたキング王。最後にそう告げると、彼の元を去って行く。
その底知れない強さは、無意識のうちに、オーカミの新たな目標となって……
******
界放市ジークフリード区にある、とあるバスターミナルセンター。
キング王は、そこのバス乗り場、ベンチに腰を掛け、ゲートシティ行きのバスが来るのを今かと待ち侘びていた。
『どうだった、鉄華オーカミは?』
彼の脳内に、契約スピリット、ベビーゴジラの声が直接響いて来る。
「期待外れだな、取るに足らんカードバトラーだった。正直、我らのノヴァ学園に相応しいとは思えん」
『うわぁ、辛口評価〜』
先程までの丁寧な口調はどこへ行ったのか、やたら鋭く尖った口調へと変わるキング王。おそらくこれが素の彼なのだろう。
「だが、仮にも序列4位の男が認めた奴だ。チャンスはくれてやる」
『チャンス?』
「あぁ、奴が期待通りの男ならば、必ず上がって来るだろう。己の力でな」
その直後、ゲートシティ行きの大型バスが到着。キング王はそれに乗り込み、界放市を後にした。
遂に幕を開ける、オーカミの新たなる物語。彼の次なる試練は、もう目の前まで迫っていて。
次回、第67ターン「ノヴァ学園への切符」
******
新年明けましておめでとうございます!!
今年も王者の鉄華と、そのキャラクター達を何卒よろしくお願い致します!!