バトルスピリッツ 王者の鉄華   作:バナナ 

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第70ターン「ガッチャと逆転満塁ホームラン」

「ボールボルボルボル!!」

 

 

早朝、ゲートシティにある最大難関校ノヴァ学園。その数ある校舎の内1つの屋上にて、奇怪な笑い声を上げる、長身でメガネを掛けた、リーゼント頭の男子生徒が1人。

 

 

「さて、今日もかわい子ちゃん探しだ」

 

 

そう呟くと、彼は懐から双眼鏡を取り出し、それを使ってノヴァ学園の敷地内を歩く、通学中の女子生徒らを覗き始める。

 

 

「ボールボルボルボル、やはりオレ様の見立て通り、今年の1年はかなりレベルが高いな。あの子は昨日見た、この子も昨日見た。コイツは微妙だな。この子は初めてだ!!…後で調べてかわい子ちゃんリストに追加しておこう」

 

 

女子生徒1人1人に感想を呟くリーゼント頭の男子生徒。このような行いは、普通ならば軽犯罪に問われる。

 

しかし、仮に彼のこの行いがバレたとしても、特にお咎めなしと言われるに違いない。

 

何故なら彼は………

 

 

「そしてこのオレ、ノヴァ学園の序列3位、甲子園(こうしえん)ダホウ様の女にしてやるのだ。ボールボルボルボル!!」

 

 

そう。彼はこのノヴァ学園で序列3位に位置する男。

 

その名も甲子園ダホウ。

 

この学園では、序列こそが全て。序列さえ高ければ、大抵のことは容認される。

 

 

「さぁ他には………ッ!?」

 

 

意気込んで再度双眼鏡で学園の敷地内を覗き込むダホウ。

 

しかし、突然そこに映り込んだ、黄色がかった白髪をサイドテールに纏めている女子生徒に、彼は言葉を詰まらせる程の衝撃を受ける。

 

 

「な、なんだこの子……かわいすぎィィィィィィイ!!!」

 

 

詰まらせた後に出て来た感想は、それはそれは単純なモノであった。

 

 

「天女、まさに天女!!……ドストライクすぎて、速攻で三者三振。だ、誰だ、どこの子だ。新1年なのは間違いねぇ。カメラカメラ、学園の顔認証アプリ」

 

 

テンションが跳ね上がるダホウ。Bパッドのカメラ機能でその顔をアップして写真に収め、学園の生徒らのデータをまとめたサイトを開き、調べ始める。

 

そしたら、その女子生徒の名前や学園などの情報が出て来て………

 

 

「1年、春神ライ。そうか、ライちゃんと言うのか。ボールボルボルボル!!……今日の狙いは決まったァァァァ!!」

 

 

ノヴァ学園、序列3位の肩書を持つ甲子園ダホウに目をつけられたのは、なんと春神ライ。これは何か一波乱ありそうだ。

 

 

******

 

 

それからほんの少しだけ時が流れて昼頃。ノヴァ学園は昼休みの時間だ。

 

学園の生徒は皆年頃の少年少女。この時間内には何かを食さなければ、午後の授業などやってられない。それが故に、大抵の生徒らはこの時間内に作って来た弁当を食べるか、食堂、購買に向かうかの二択を迫られる。

 

 

「おいオーカミ。食堂行くぞ食堂、オレはもう腹が減ってしょうがねぇんだ」

 

 

鉄華オーカミ達のいる1年の教室。クラスメイトの1人、光裏コントが、呑気に大欠伸している鉄華オーカミを食堂に誘う。

 

 

「大事なことだからもう一度言うぞ」

「いいよ別に言わなくて。悪いけど、食堂は行かない」

「はぁ!?…バカタレかよ。昼飯食わずにどうやって午後を生きて行く気だ」

 

 

オーカミがコントの誘いを断った直後、彼の机に、風呂敷包みの大きな弁当が堂々と置かれる。

 

その置いた張本人は、最近、今年の新入生で1番可愛いと話題の少女である、春神ライ。

 

 

「今日からライに弁当作ってもらう事になったから」

「え」

「腕によりを掛けて作ったぞ。今日の隠し味は唐揚げの中に入れたチーズだ」

「それもう隠し味じゃないだろ。まぁいいや、ありがとう」

 

 

隠し味の情報が入ったところで、オーカミはライの手作り弁当を食し始める。

 

とてもボリューム満点で美味しそうだ。

 

 

「どう、美味しい?」

「うん」

「よかった〜〜……食べさせてあげようか?」

「いや、いい」

 

 

人目を気にする事なくイチャイチャし出す2人に、コントは我慢の限界を迎えて………

 

 

「な、何を見せられてるんだオレは!!」

「コント、食堂行かないのか?」

「行くよ、行く気満々だったよ!!……でもこんなん見せられたら、あぁうわぁいいなぁ、食いてぇよオレもライちゃんの手作り弁当!!」

 

 

取り敢えず、オーカミの羨ましさに胸が張り裂けそうなのがよく伝わって来る。彼としては、オーカミがそれをさも当たり前だと思っていそうなところに、はらわたを煮えくり返しているのだろう。

 

 

「じゃあ私の分ちょっと食べる?」

「え」

「オーカの分作る時に作りすぎちゃってさ。私だけじゃ食い切れないし、どう?」

 

 

天使だ。

 

ここには天使がいた。

 

コントは心の底でそう叫んだ。

 

 

「いる!!!…とてもいる!!!……じゃあ卵焼きからお願いします!!」

「え、食べさせるの?」

 

 

ライの弁当の具から卵焼きを指名し、そのまま口を大きく開けて構えるコント。ライはまさかの注文に困惑する。

 

が、オーカミ程ではないが楽観的な性格の彼女は、すぐさま「まいっか」と、軽く流し、箸で卵焼きを取り、それをコントの口へと近づける。

 

 

「うっひょ〜〜幸せ!!」

「あっはは、まだ食べてないじゃん。はい、あ〜ん」

「あ〜〜」

 

 

その卵焼きが、間もなくコントの口に放り込まれようとした直後。

 

事件は起こる。

 

 

「ボールボルボルボル!!!」

「!」

 

 

突然教室の扉を開け、色気漂う女子生徒らに囲まれながらと共に入室して来た、奇怪な笑い声を上げるメガネもリーゼント頭が特徴的な長身の男子生徒に、この場にいたほとんどの生徒が仰天した。

 

 

「甲子園ダホウ!?」

「誰」

「オマエこの学園に入学したくせにそんな事も知らねぇのかよ。アイツは2年の甲子園ダホウ。現在の序列3位で、この学園を牛耳る、4人のカードバトラー集団『パワーフォース』の1人だ。なんでそんな奴が1年の教室なんかに……」

 

 

何も知らないオーカミに、コントが説明する。

 

教室に入室したダホウは、何かを探すように辺りをキョロキョロと見渡す。そして、オーカミらへその視線を向けると………

 

 

「あ、いた。ライちゃァァァァん!!」

「え」

 

 

視線を向けた先は、オーカミでもコントでもなく、ライだった。彼は発見後、勢い良く駆け出し、鼻息荒く、ライの眼前へと迫る。

 

 

「やっと会えた。近くで見るとより可愛いね」

「あ、あざます」

 

 

ライは困惑しながらも、一応返事。ダホウは動いて喋るライを近くで堪能し、うっとりしている。

 

 

「え〜〜ダホウ様こんなハムスターみたいな子がタイプなの〜?」

「ハムスター……」

「私らの方が良くない?」

「良くねぇ!!……オマエらはもうあっち行け、しっしっ!!」

 

 

ダホウは、ついさっきまで侍らせていた女子生徒らを適当に追い払うと、再びライの方へと熱い視線を向ける。

 

 

「ボールボルボルボル、春神ライちゃん。単刀直入に言うぞ、このオレ様、序列3位にしてパワーフォースの1人、甲子園ダホウ様の女になれ」

「!」

 

 

凄まじく直球ストレートな要求に、この場にいるだいたいの生徒らが驚く。

 

 

「え、嫌です」

「!」

 

 

それを真顔で、しかも即決してお断りするライに、今度はダホウを含めたほぼ全員が驚く。

 

しかし、オーカミの事が好きなライにとって、その返事は当たり前である。

 

 

「ほ、ほう……なんでかな。オレ様はこの学園の序列3位、つまり3番目に強い、学園のトップに立つ存在なんだよ」

「えっと、なんて言うかな。それは凄いと思うんだけど……」

「ま、まさか、他に好きな奴がいる、とか………」

「………」

 

 

無言で目線を逸らし、横で呑気に自分の作った弁当を食べているオーカミの方を見つめ、少しだけ頬を赤く染めるライ。

 

ダホウは、その目線の先に好意を持っている相手がいる事は察せなかったが、ライのその様子に、他に好意を持っている誰かがいる事だけは理解できて………

 

 

「ボォォォォォォル!!!……誰だそいつは、見つけ次第、即刻退学にしてやる」

「え、そんな事もできんのかよ、パワーフォースやべぇ」

 

 

退学にしてやると怒りの炎を燃やすダホウに対し、思わずそう呟いてしまったのはコントだった。彼は「うわヤバ」と思い、口を手で覆うが、今のダホウには、そこら辺の有象無象の言葉など全く耳に入って来なかったか、完全にスルーされて事なきを得た。

 

 

「そいつがいる場所を教えろライちゃん。徹底的に潰してやる。そんで持ってその後君はオレ様の女になれ」

「えぇと、それはちょっと困ると言うか、なんと言うか」

「ボールボルボルボル!!!……いいから来るんだよ」

「え、ちょちょちょ!?」

 

 

徐々に余裕がなくなり、強引な手段に走るダホウ。ライの手を掴み、無理矢理連れ出そうとする。

 

その彼の行為は、決してよろしいモノではない。寧ろ女性の気持ちを全く考えていない、紳士としては最低な行為だ。

 

しかし、何故なら彼は序列3位、パワーフォースの1人。逆らえば何をされるかわからない。が故に、この場にいる誰もが、それを咎め、止める事はできないし、しようともしない。

 

たった1人を除いては………

 

 

「おい」

「!」

「オーカ!!」

 

 

ライを連れ去ろうとしていたダホウの腕を掴み取り、彼を止めたのは、他でもない鉄華オーカミ。その表情は、いつもと変わらないクールなモノだが、雰囲気から、少しだけ怒っているのが伝わって来て。

 

 

「この手、何?」

「あぁん?…んだチビ、離せよ」

「この手、何?」

「いだだだだだだ、離せ、離せ!!」

 

 

オーカミは、彼の腕を万力の如く強く握り締める。あまりの激痛に、ダホウは思わず掴んでいたライの手を離し、解放してしまう。

 

それを見るなり、オーカミも握った手を離す。

 

 

「オーカ!」

「大丈夫?」

「うん、大丈夫」

 

 

ライの無事を確認し、オーカミは取り敢えず一安心。だが、ダホウに対する怒りは消えずに………

 

 

「チビ。なんなんだよテメェは」

「こっちのセリフだ。いきなりなんだ」

「何度も言ってるだろ。その子はな、オレ様の女になるんだよ、いいからそこを離れ………ッ」

 

 

瞬間、ダホウは目にしてしまう。助けられたライが、オーカと呼ばれるチビの後ろにいる事を、そして、その距離の近さが異常である事を………

 

全てを察し、理解する。ライの好きな奴は、目の前のチビなのだと。

 

 

「ボォォォォォォル!!!……許さん、許さんぞチビィィィ!!」

「だからいきなり何」

「序列3位、パワーフォースの権限を持って、貴様を即刻退学にしてやる!!……オレ様に逆らった罰だ」

 

 

オーカミの退学を突如として宣言するダホウ。その状況を見て、流石にマズイと感じたか、コントは後方からオーカミへと助言する。

 

 

「オーカミ、いいから謝っとけ。パワーフォースには逆らうな!!」

「コント」

「この学園は、序列が全て。序列が高ければ大抵の事は容認される。1年で、しかも序列が低いオレらは、そこのダホウ様に従わないと行けないんだよ」

「へぇ」

「ボールボルボルボル、どうやらそこの金髪君はわかってるようだな。そう、この学園は序列が全て。そのトップ、パワーフォースのオレ様に、オマエ達は絶対服従しなければならないのだぁ!!」

 

 

この場で発言するのも、なかなか勇気が必要だったに違いない。コントは怖いモノ知らずのオーカミを止めるために必死であった。

 

 

「なぁオーカミ。彼女がNTRされて悔しいのはわかるけどよ、オマエの退学がかかってんだ。ここは引けよ、なぁ?」

「……」

 

 

コントの言葉に、オーカミは少しだけ考え込むと、またすぐに発言する。

 

 

「コント。序列って、どうやったら上がるんだ?」

「え、オマエそりゃ、お決まりの下剋上システムに決まってるだろ。序列の低い奴が、高い奴を倒せば、その高い奴の数字を手にできる………て、オマエまさか!?」

 

 

気づくのが遅かった。オーカミはもう既に懐から取り出したデッキを手に取っていた。

 

コントは思う。そうだコイツは、とことん怖いモノ知らずなのだと。

 

 

「成る程、この変なのにバトルで勝てばいいって事か。じゃあやろう、バトル」

「………は?」

 

 

やっちまった。

 

コントは滝のように流れる冷や汗を感じながら、心の中でそう呟く。この学園を牛耳る、4人のカードバトラー集団『パワーフォース』の1人を、たった今、オーカミは敵に回してしまったのだ。

 

 

「ボールボルボルボル!!!……オレ様に勝つ!?…何馬鹿げた事抜かしてんだこのチビ、余程痛い目を見たいらしいな、ボールボルボルボル、ボールボルボルボル!!!」

 

 

ダホウはオーカミの愚かな行為に、呆れ果てて笑い出す。他の生徒らも、まるで『何を言っているんだ』と言わんばかりの目線を彼に送る。

 

それ程までに、パワーフォースに逆らうと言う行為は馬鹿げているのだ。

 

 

「いいぜチビ。オレが勝ったらライちゃんはオレのモノだ」

「あぁ来いよ、叩き潰してやる」

「オーカ……?」

 

 

今にも始まりそうな、オーカミとダホウのバトル。

 

ライは、その怒りに満ち溢れたオーカミを見るなり、どこか懐かしい感覚になると同時に、嫌な予感も頭を横切った。

 

 

 

この感じ、フウちゃんの時と同じだ。

 

 

 

オーカミが怒りに満ち溢れながら行ったバトル、ライが覚えている限り、それは徳川フウとのバトル。そのバトルの後、オーカミは右半身付随となり、倒れた。

 

ライは、今回の件も、どこかそれと似たような雰囲気を感じ取った。それならば、このバトル、自分の身を犠牲にしてでも止めなくてはならないと、反射的に思い………

 

 

「オーカ、私なら大丈夫だから、無理しなくてい……」

「その行為はパワーフォースとしてガッチャじゃないぞ、ダホウ」

「!」

 

 

ー『無理しなくていいよ』

 

ライがオーカミのバトルを止めようと、そう声を掛けようとした直後、再び教室の扉が開き、また1人、入室して来た。

 

 

「……サンドラ」

「誰」

 

 

現れたのは「サンドラ」と呼ばれる少年。逆立った水色の髪と、季節外れのマフラーが特徴的である。

 

彼は、入室するなり、ダホウの喧騒などお構いなしで、オーカミらの元へ歩み寄り……

 

 

「鉄華オーカミ、そしてその仲間達。同僚がすまなかったな、悪い奴じゃないんだ、許してやってくれ」

「いや、だから誰」

「失敬、申し遅れた。オレの名は『新城(しんじょう)サンドラ』……2年の、ただのガッチャなカードバトラーだ」

「ガッチャ?」

 

 

『ガッチャ』と言う意味のわからない単語を使用する少年、サンドラ。オーカミとライは知らないようだが、この人物、実はダホウと同じ、もしくはそれ以上の知名度を誇っていて………

 

 

「新城サンドラ……嘘だろ、今度は序列2位、またパワーフォースの1人がこの教室に足を運ぶなんて」

 

 

コントをはじめとした他の生徒らは、またしても仰天していた。

 

そう。何を隠そうこの少年こそ、序列1位のキング王の次に強い、いや、もしかしたら彼に匹敵できる程の強さを持ったカードバトラー、序列2位、サンドラ。

 

 

「サンドラァァァ、何カッコつけてシャシャリ出てんだ。その子はオレ様のモノだ。ドケ」

「この子は無闇に権利と暴力を振りかざす君なんかより、横の少年、鉄華オーカミの横にいる方が幸せそうに見えるが」

「ボォォォォォォル!!!……うるせぇ!!」

「うるさいのは君だろ」

 

 

ダホウとは同僚と言っていたサンドラだが、どうやらその仲は別に良好ではない様子。

 

サンドラは聞き分けを持たないダホウに対して「はぁ」とため息をこぼすと、懐から己のBパッドとデッキを取り出して………

 

 

「仕方ない。ここは学園の中、揉め事はバトルで解決しよう」

 

 

ダホウにバトルを申し込むサンドラ。バトルスピリッツが絶対主義であるノヴァ学園において、バトルで揉め事を解決するのは、当たり前の行為である。

 

 

「ボールボルボルボル!!……いいなそれ、勝てばライちゃんと序列2位の称号、2つも貰えるわけだ。いいぜ受けて立ってやる」

「フ……そう来ないとガッチャじゃないよな。鉄華オーカミ、君の仲間、このバトルに賭けてもいいか?」

「うん、いいよ」

 

 

その気になるダホウ。

 

仲間を勝手に賭けても大丈夫かと言うサンドラの問い掛けに対し、オーカミは即決で了承。これから行われる2人のバトルに、ライが賭けられる事になる。

 

 

「おいバカタレ。何勝手に他人にライちゃんの命運を握らせてんだよ!?」

「大丈夫、なんかアイツは、任せてもいい気がする」

「大丈夫ってオマエ、そりゃ確かにアイツは序列2位だけども」

 

 

オーカミの判断に意を唱えたのはコント。サンドラが負けて仕舞えば、ライがダホウのモノになってしまうため、当然の意見である。

 

 

「私も、オーカが良いって言うならいいよ」

「えぇ、マジかよライちゃん」

「マジマジ!」

 

 

ダホウの女になるのが嬉しいわけないと言うのに、やっぱり楽観的なライ。Vサインを見せながら、コントに全く問題ない事を伝える。

 

 

「と言うわけで頑張って、ガッチャさん」

「あぁ、任せてくれお嬢さん。君を、鉄華オーカミと離れ離れにさせたりはしないさ」

「ボォォォォォォル!!!……ライちゃんに応援されるのは、オレ様の方だぞサンドラァァァ!!」

「フ……」

 

 

当然ではあるが、ライに応援されず叫ぶダホウ。そんな彼を鼻で笑うサンドラ。

 

その後、バトルを行う2人と、オーカミ、ライ、コントの合計5人は、教室を離れ、学園内にあるバトルスタジアムへと移動した。

 

 

******

 

 

移動後、サンドラとダホウは互いにバトル場へ立ち、Bパッドを己の腕に装着、そこにデッキを装填し、バトルの準備を進めて行く。

 

 

「ライ」

「ん、どしたオーカ」

「さっき、ひょっとして『無理しなくていいよ』って言おうとした?」

 

 

その光景を眺めながら、オーカミがライにそう訊いた。意外な質問に、ライは少々困惑して………

 

 

「え、あ、うん。あってるけど」

「オレがアイツに負けるって思ったの?」

「あぁごめん、そう言う事じゃなくてね……うん、そう言う事じゃないんだけどさ」

 

 

ライに信じてもらえてないと思い、少しばかりショックを受けていたらしいオーカミ。

 

だが違う。ライはどんな時でもオーカミは勝ってくれると信じている。それの代償にオーカミを失う事が、余りにも嫌過ぎるだけだ。そんな事を直接伝えられるわけもなく、今はただお茶を濁し続ける。

 

 

「まさか、この目で直に序列2位と3位のバトルを観る事ができるなんてな」

「そんなに凄いのか?」

「凄いだろバカタレがよ。後オマエ、ホントバカタレ。パワーフォースの1人を完全に敵に回しやがって。絶対ただじゃ済まされねぇぞ」

「まぁ大丈夫だろ」

 

 

危機感の全くないオーカミにコントは呆れ、ため息をこぼす。

 

そんな折、遂にバトル場に立つ2人のバトルの準備が完全に整ったようで………

 

 

「鉄華オーカミ。どこかで聞いた事のある名前だと思っていたが、アレか、入学式でキングに喧嘩を売ったアホウの事か。ボールボルボルボル、成る程、コイツは確かに噂通りのアホウだ」

「アホウは君だろ」

「オレ様の名前はダホウだ!!…さっさと始めるぞ、サンドラ!!」

「フ……オレに見せてみろ、君のガッチャ」

 

 

……ゲートオープン、界放!!

 

 

ノヴァ学園内に存在するバトルスタジアムにて、序列2位、新城サンドラと、序列3位、甲子園ダホウによる、春神ライを賭けたバトルスピリッツが幕を開ける。

 

先攻はダホウだ。ライを自分のモノにするべく、そのターンを進めて行く。

 

 

[ターン01]甲子園ダホウ

 

 

「メインステップ。ボールボルボルボル、さぁプレイカードだ。緑属性の創界神ネクサス、変身怪人ゼットン星人を配置」

 

 

ー【変身怪人ゼットン星人[初代ウルトラ怪獣]】LV1

 

 

最初のカード。ダホウの背後に現れたのは、黒いスーツを着こなす黒い怪人、ゼットン星人。

 

鉄華団のオルガやクーデリア&アトラと同じく創界神ネクサスカードの1種だ。

 

 

「配置時の神託でコアを2つ追加。ターンエンド」

手札:4

場:【変身怪人ゼットン星人[初代ウルトラ怪獣]】LV1(2)

バースト:【無】

 

 

ダホウはそれ以外は何も行わず、そのままターンエンド。初ターンでの創界神ネクサスの配置は、かなり良いスタートを切ったと言える。

 

次はサンドラのターンだ。キング王に匹敵する力を持つ彼の実力や如何に。

 

 

[ターン02]新城サンドラ

 

 

「メインステップ。早速だ、君に見せてやろう、オレのガッチャ」

 

 

サンドラは対戦相手のダホウではなく、観戦しているオーカミに僅かな視線を送ると、手札にある1枚のカードを引き抜き、それを己のBパッドと叩きつけた。

 

 

「召喚、契約ライダースピリット、ガッチャード スチームホッパー」

 

 

ー【仮面ライダーガッチャード スチームホッパー】LV1(1)BP3000

 

 

身体中から噴き出る蒸気を纏いながら、サンドラのフィールドへと出現したのは、青色の装甲を持つライダースピリット、ガッチャード。

 

そして、これは世にも珍しい、契約スピリットの1種。しかもライダースピリットである。

 

 

「契約のライダースピリット、初めて見た」

「私も」

 

 

ノヴァ学園入学以降、契約スピリットに見慣れて来たオーカミとライの2人。サンドラの契約ライダースピリットを見ても、そのリアクションは小さい。

 

 

「アタックステップに入る、契約ガッチャードでアタック。その効果でカウント+2、自身のコスト以下の相手スピリット1体を破壊」

 

 

早速アタックステップに突入し、契約ガッチャードでアタックを行うサンドラ。その効果で自身のコスト以下、つまりコスト2以下のスピリットが破壊可能だが、今のダホウのフィールドにはスピリットがいないため、それは不発。

 

しかし、このバトルにおいては、カウントの増加と言う行為に意味があって………

 

 

「オレのカウントが増え、2以上になった時、手札にあるこのスピリットカード、三賢神ラルヴァンダードの効果を発揮。1コストを支払い、自身を召喚」

 

 

ー【三賢神ラルヴァンダード】LV1(1S)BP3000

 

 

神々しく輝く黄金の装飾に黄金の髪を持つ人型のスピリット、三賢神ラルヴァンダードが、腕を組み、サンドラのフィールドへと召喚される。

 

このスピリットは、カウント増加をメインに据えるデッキにとってはお馴染みと言えるスピリットであり………

 

 

「この効果で召喚した時、1コアブースト&1ドロー」

 

 

召喚されたラルヴァンダードの効果により、ボイドからコア1つをラルヴァンダードに追加し、さらには1枚のドローまで行うサンドラ。

 

一見すると大した動きはしていないように見えるが、コアを使い、カードを操るこのカードゲームにおいて、たった1枚でコアブーストとドローを両立できる事は、実はかなりのアドバンテージを得ているのだ。

 

対面しているダホウも、当然それを理解している。

 

 

「初手にラルヴァンか。上振れてんな」

「君程じゃないさ。契約ガッチャードのアタックは継続されているぞ」

「聞かれるまでもない。そいつはライフだ」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉甲子園ダホウ

 

 

契約ガッチャードの重たい拳の一撃が、ダホウの五重に重なっているライフバリアに炸裂。その内1枚がひび割れ、破壊された。

 

 

「ターンエンド。先ずは1点」

手札:4

【仮面ライダーガッチャード スチームホッパー】LV1

【三賢神ラルヴァンダード】LV1

バースト:【無】

カウント:【2】

 

 

「フン、たかが1点でいい気になるな」

 

 

互いに1ターンを終え、サンドラがやや優勢と言った状況で、ダホウの二度目のターンが幕を開ける。

 

 

[ターン03]甲子園ダホウ

 

 

「メインステップ。地底怪獣テレスドンをLV1で召喚」

 

 

ー【地底怪獣テレスドン[初代ウルトラ怪獣]】LV1(1)BP3000

 

 

地底から飛び出して来たのは、巨大な体格を持つ、ウルトラ怪獣のスピリット、テレスドン。

 

さらにダホウは、続けざまに手札のカードをBパッドへ叩きつけて……

 

 

「さらにもう1体、宇宙怪獣ベムラーをLV1で召喚」

 

 

ー【宇宙怪獣ベムラー[初代ウルトラ怪獣]】LV1(2)BP3000

 

 

天空より降り立つ青い球体。それはフィールドと衝突するなり破裂し、中より、巨大で細長い体格を持つウルトラ怪獣のスピリット、ベムラーが出現。テレスドンの横へと並び立つ。

 

 

「ベムラーの召喚時効果、ベムラーとそれ以外の初代ウルトラ怪獣1体に1つずつコアブースト。そしてこの瞬間、創界神ネクサス、変身怪人ゼットン星人の【神域】が発揮。もう1つコアブースト」

「!」

「ボールボルボルボル。つまり合計3つだ。テレスドンとベムラーをそれぞれLV2へアップ」

「コアブーストの数を増やしやがった!?」

 

 

コアブーストする数を増やす効果を持つ創界神ネクサス、変身怪人ゼットン星人。その破天荒な効果に驚いたのは、同じく緑属性のデッキ持つ光裏コント。

 

 

「アタックステップ。テレスドンでアタック。その効果でラルヴァンダードを疲労させ、トラッシュのコア1つをボイドに置く事で、デッキ上から1枚ドロー」

 

 

スピリット2体のLVを上げた所で、攻撃を仕掛けて来るダホウ。テレスドンの甲高い咆哮が空を震撼させ、サンドラのラルヴァンダードに片膝をつかせる。

 

 

「そしてLV2のアタック時効果。疲労状態のスピリットを指定アタックできる。ラルヴァンダードをかっ飛ばせ」

 

 

相手スピリットに直接攻撃を仕掛ける指定アタックの効果を併せ持つテレスドン。

 

かっ飛ばす事はなく、口内から吐き散らした爆炎でラルヴァンダードを焼却。

 

 

「ベムラーを守備で構え、ターンエンド」

手札:4

場:【地底怪獣テレスドン[初代ウルトラ怪獣]】LV2

【宇宙怪獣ベムラー[初代ウルトラ怪獣]】LV2

【変身怪人ゼットン星人[初代ウルトラ怪獣]】LV2(4)

バースト:【無】

 

 

「相変わらず、序盤は徹底してライフを狙いに行かないんだな」

「ボールボルボルボル。そりゃそうさ、それがバトルスピリッツにおける最も強い動きだからな」

 

 

残ったスピリットでサンドラのライフは狙わず、ダホウはそのターンをエンド。再びサンドラのターンが始まる。

 

 

[ターン04]新城サンドラ

 

 

「メインステップ。契約スピリットの真髄を見せてやろう」

 

 

そう告げると、サンドラは手札から1枚のカードをBパッドへと叩きつける。

 

 

「【契約煌臨】発揮。契約ガッチャードを、ガッチャード バーニングゴリラに契約煌臨」

 

 

ー【仮面ライダーガッチャード バーニングゴリラ】LV1(1)BP6000

 

 

契約ガッチャードがベルトのバックルへ2枚のカードを装填。バックルの両サイドを押し込み、新たな姿へと変身。

 

炎の剛腕を持つ、ガッチャード バーニングゴリラへと姿を変えた。

 

 

「バーニングゴリラの召喚煌臨時効果。カウント+1、デッキ上から4枚をオープンし、その中にある系統に「創手」を持つライダースピリットカード1枚を手札に加える。オレはこの中にある「ファイヤーガッチャード」を手札へ、さらにバーニングゴリラのOC効果。オープンされたケミー「ホッパー1」と「スチームライナー」の2枚を手札へ」

「チッ……一気に3枚も手札に加えやがったか」

 

 

煌臨時の効果で大量に手札を増やす事に成功したサンドラ。しかし、前のターンにラルヴァンダードを潰された上、ライフも破壊されていないため、それらを使う余裕は余りなさそうで………

 

 

「バーニングゴリラのLVを2へアップさせ、このままアタックステップへ入る。バーニングゴリラでアタック、煌臨元の契約ガッチャードの効果を引き継ぎ、それを発揮。カウントを+2し、自身のコスト以下のテレスドンを破壊」

 

 

他にカードは使わず、アタックステップに突入するサンドラ。

 

バーニングゴリラのコストは4。契約ガッチャードの効果でコスト4以下のスピリット、テレスドンが破壊の対象に指定され、その炎の剛腕によって上から叩き潰されて爆散させられるが。

 

 

「なに、ブロッカーとして残っているベムラーを破壊しないのか!?」

 

 

コントがまたリアクションする。

 

確かに、普通のプレイングであれば、破壊の対象は、疲労しているテレスドンではなく、回復状態のベムラーで間違いはないが。

 

 

「いや、ベムラーはLV2の時、相手の効果でフィールドを離れる瞬間、手札から初代ウルトラ怪獣をノーコストで召喚できる効果を持ってる。だから破壊はテレスドンでいいんだよ。アタック時にドローもできなくなるしね」

「ッ……そこまで考えてるのかよ」

 

 

それに答えたのはライ。コントに、サンドラのプレイングが間違ってはいない事を伝え、納得させる。

 

 

「その温い攻撃はライフで受けてやるよ。ありがたく思うんだな」

 

 

〈ライフ4➡︎3〉甲子園ダホウ

 

 

バーニングゴリラの剛腕による一撃が、今度はダホウのライフバリアに炸裂。その数は残り3つとなる。

 

 

「ターンエンド」

手札:7

場:【仮面ライダーガッチャード バーニングゴリラ】LV2(3)BP8000

バースト:【無】

カウント【5】

 

 

カウントと手札を伸ばしつつ、ダホウのライフを少しずつ削って行くサンドラ。

 

バトルは次で5ターン目。ダホウのターン、何か大きなモーションがあるのであれば、このターンからであり………

 

 

[ターン05]甲子園ダホウ

 

 

「メインステップ。先ずは2体目のベムラーを召喚」

 

 

ー【宇宙怪獣ベムラー[初代ウルトラ怪獣]】LV1(2)BP3000

 

 

「召喚時でまたまた2個ずつコアブーストだぁ。ボールボルボルボル!!」

 

 

2体目となるベムラーを召喚するダホウ。その効果によってベムラー2体に2つずつ、合計4つのコアブーストを再び行った。

 

 

「さらに増えたコアを使い、最高の監督を呼ぶぜ」

「監督?」

 

 

おそらくカードの事であろうが「監督」と言う単語に、オーカミは疑問符を浮かべる。

 

それが何かを知っているサンドラは、この状況を鼻で笑い「来るか」と、クールに一言。

 

 

「来い、最凶の指揮官、最高な監督。悪質宇宙人メフィラス星人、LV2で召喚」

 

 

ー【悪質宇宙人メフィラス星人[初代ウルトラ怪獣]】LV2(2)BP8000

 

 

どこからともなくフィールドに出現したのは、黒い皮膚を持つ巨大な宇宙人、メフィラス。

 

その効果は、ダホウが「監督」と呼称するのに相応しい効果であり………

 

 

「メフィラス監督の召喚アタック時効果を発揮。デッキ上2枚オープンし、その中にある初代ウルトラ怪獣を好きなだけノーコストで召喚できる」

 

 

これはドラフトを再現した効果だ。

 

メフィラスは何もない空間から四角い箱を作り出すと、そこへ手を突っ込み、2枚のカードを引き抜く。そしてそのカードは、実際にダホウがデッキ上からオープンしたカードと連動しており……

 

 

「ボールボルボルボル、オレがオープンしたのはバルタン星人と、当デッキ4番のエース、宇宙恐竜ゼットン!!」

「フ……良い選手を引き抜けたようだな」

「笑ってる場合じゃないぞサンドラァァァ、オレはこの2体をノーコストで召喚だ」

 

 

ー【宇宙忍者バルタン星人[初代ウルトラ怪獣]】LV2(2)BP10000

 

ー【宇宙恐竜ゼットン[初代ウルトラ怪獣]】LV2(3)BP15000

 

 

メフィラスのドローしたカードがスピリットへと変化。地響きと共に、ダホウのフィールドへと追加で招集されたのは、蝉のような見た目に大きなハサミが特徴的なスピリット、バルタン星人と、無機質な音で鳴く、カミキリムシのようなツノを持つ宇宙恐竜、ゼットン。

 

 

「バルタン星人の召喚時効果。バーニングゴリラを重疲労させ、1枚ドロー」

 

 

バルタン星人は登場するなり、ハサミのような手からエネルギー弾を発射。それに被弾したバーニングゴリラは両膝をつき、二度の回復でようやく回復状態となる、重疲労状態へと陥ってしまう。

 

 

「デッキ上からバカデカスピリットを2体も召喚しやがった!?」

「へぇ、アイツ結構強いな」

「感心してる場合か!!…つかそりゃそうだろバカタレ、パワーフォースなんだから!!」

 

 

サンドラのピンチに呑気なオーカミ、騒ぐコント。

 

そんな中、ダホウは大量に展開したスピリット達で、遂にライフを砕くためのアタックを開始する。

 

 

「アタックステップ。ゼットンでアタックするぜ、ボールボルボルボル!!」

 

 

ダホウの指示に従い、戦闘態勢に入るゼットン。胸部の光体から火の玉を発生させ、それを知らぬ間に取り出した鉄製のバットで打ち放つ。

 

その炎の打球は、真っ直ぐにサンドラのライフバリアへと飛んで行き……

 

 

「ライフで受ける」

「ゼットンはダブルシンボル、ライフを2つ砕くぜ」

 

 

〈ライフ5➡︎3〉新城サンドラ

 

 

炎の打球はそのままサンドラのライフバリアへ直撃。一気に2つも砕け散った。

 

大量展開した後、それらで一斉に攻撃を仕掛ける事を主戦略とするダホウ。このバトルもその例に溺れず、残されたスピリットで追撃を仕掛けて来るに違いない。

 

故に、このまま何もなければ、サンドラの敗北となってしまうが………

 

 

「オレのライフが減少した事により、手札にある絶甲氷盾の効果をノーコストで発揮」

「!」

「このターンのアタックステップを強制終了」

 

 

そんな事はなく、しっかりと白の汎用防御マジックでそれをケア。

 

多数の大型スピリットを並べたダホウだったが、このターンをエンドと言わざるを得なくなった。

 

 

「フン。相変わらず運の良い奴だ。オレはこれでターンエンド」

手札:4

場:【宇宙恐竜ゼットン[初代ウルトラ怪獣]】LV2

【宇宙忍者バルタン星人[初代ウルトラ怪獣]】LV2

【悪質宇宙人メフィラス星人[初代ウルトラ怪獣]】LV2

【宇宙怪獣ベムラー[初代ウルトラ怪獣]】LV1

【宇宙怪獣ベムラー[初代ウルトラ怪獣]】LV1

【変身怪人ゼットン星人[初代ウルトラ怪獣]】LV2(7)

バースト:【無】

 

 

結果的に4体ものブロッカーを残しつつ、ターンエンドの宣言をする事となったダホウ。

 

次は『絶甲氷盾〈R〉』の効果により、この場をライフ2つの減少のみで凌いで見せたサンドラのターンだが………

 

 

「ボールボルボルボル。だが、オマエ自慢の契約ガッチャードは煌臨先共々、バルタン星人の効果により重疲労状態。次のターンを迎えても疲労状態のままだ」

 

 

そう。

 

契約スピリットの重疲労状態。これは、契約スピリットが最も辛いとされる状況なのだ。

 

単純に破壊、消滅、バウンスなどで除去されたとしても【契約煌臨】によって魂状態からの復帰が可能な契約スピリットだが、疲労状態のままフィールドに残ると、その煌臨先も疲労状態になるため、結局そのターンでのアタックは不可能。

 

要するに、重疲労、契約スピリットのアタックを封じる行為が、最も契約スピリットのデッキに対して有効な手なのである。

 

 

「フ……ダホウ、君のガッチャは悪くないが、1つだけ見落としている事がある」

「なに?」

「オレが前のターン、バーニングゴリラの召喚煌臨時効果で手札に加えたカードはなんだったかな」

「……そうか、ホッパー1か」

 

 

しかし、それに対して何かカウンターがあるのか、サンドラは不敵に笑う。

 

ダホウもそれが何かを理解したのか、納得し、そのカード名を口にする。サンドラはそんな彼に対し「御名答だ」とだけ返答すると、巡って来た己のターンを進めて行く。

 

 

[ターン06]新城サンドラ

 

 

「メインステップ。先ずは手札から緑のブレイヴ、インセクトケミー ホッパー1を召喚」

 

 

ー【インセクトケミー ホッパー1】LV1(1)BP3000

 

 

片膝をつくバーニングゴリラのみが存在するサンドラのフィールドに、1匹のバッタ型のブレイヴが姿を見せる。

 

その名はホッパー1。ガッチャードと友好な関係を築いているケミーの1種。

 

 

「緑のブレイヴ?……アイツ、青デッキじゃないのか」

「基本は青さ。だがガッチャードは、ケミーと呼ばれる各色に存在するブレイヴと力を合わせる事で、その真価を発揮する」

 

 

また疑問符を浮かべるオーカミに対して、サンドラがそう言い返すと、彼は召喚したてのホッパー1の効果を発揮させて行く。

 

 

「ホッパー1の召喚時効果。カウント+1、その後、魂状態、煌臨元の契約ガッチャード1枚を1コスト支払って召喚する。オレはバーニングゴリラの煌臨元にある契約ガッチャードを召喚、そのままホッパー1と合体する」

 

 

ー【仮面ライダーガッチャード スチームホッパー+インセクトケミー ホッパー1】LV1(1)BP9000

 

 

バーニングゴリラが光輝くと、まるで幽体離脱の如く契約ガッチャードが抜け出し、新たにフィールドへ召喚。

 

さらにホッパー1はそれと合体。カードと化し、契約ガッチャードのベルトのバックルへと装填された。

 

 

「新たに召喚された契約ガッチャードは、当然回復状態。これで重疲労の呪縛から解き放たれた」

「ぐ……ッ」

「続けて、白属性、ビークルケミー スチームライナーを召喚し、これも契約ガッチャードに合体」

 

 

ー【仮面ライダーガッチャード スチームホッパー+インセクトケミー ホッパー1+ビークルケミー スチームライナー】LV1(1)BP16000

 

 

黒々とした巨大な列車型のケミーブレイヴ、スチームライナー。召喚されるなりカード化され、ホッパー1と同様、契約ガッチャードのベルトのバックルへと装填された。

 

 

「すご、契約スピリットでダブル合体」

 

 

ライがダブル合体に対してそう反応する。確かに、2体のブレイヴと合体できるスピリットなど、滅多にお目に掛かれるモノではない。それが契約ライダースピリットであれば尚更だ。

 

 

「そして【契約煌臨】を発揮、フィールドの契約ガッチャードに、このカード、ファイヤーガッチャードを契約煌臨……!!」

 

 

ー【仮面ライダーファイヤーガッチャード スチームホッパー+インセクトケミー ホッパー1+ビークルケミー スチームライナー】LV1(1)BP17000

 

 

契約ガッチャードは、ベルトに新たなアイテムを装着。それをまた両サイドから押し込み、その姿を、逆巻く炎を思わせる装甲を纏う、ガッチャードの強化形態の1つ、ファイヤーガッチャードに変化させる。

 

 

「ファイヤーガッチャードの煌臨時効果、フィールドの、カード名の異なるケミー1体につに1つ、コアブースト。今いるケミーはホッパー1とスチームライナーの2体、よってコア2つをファイヤーガッチャードに追加し、LV2にアップ」

 

 

ケミーの数分コアブーストを行う、ファイヤーガッチャードの煌臨時効果。それによりLV2へアップ、BPは22000にまで上昇した。

 

 

「アタックステップに入る。ファイヤーガッチャードでアタック。先ずはスチームライナーの【合体中】効果、ホッパー1との合体中なら、相手の創界神ネクサス1つのコアを全てボイドに置く」

 

 

フィニッシュに向けて動き出すサンドラ。スチームライナーの効果により、ダホウの創界神ネクサス、変身怪人ゼットン星人の上に置かれていたコアが全てボイドへと消え去る。

 

そして、当然ながら、ダブル合体したスピリットのアタック時効果がこれだけで終わるわけなくて……

 

 

「ホッパー1の【合体中】効果、スチームライナーと合体中なら、シンボルを1つ追加、さらにコスト7のファイヤーガッチャードとの合体により、もう1つ追加」

 

 

次はホッパー1の効果を発揮。アタック中のファイヤーガッチャードは青のトリプルシンボルとなる。

 

 

「煌臨元の契約ガッチャードのアタック時効果、カウント+2、破壊はなし。この瞬間、ファイヤーガッチャードの【OC7】の条件を満たしたため、効果発揮。このターンの間、相手は効果でアタックステップを終了できず、オレのカウント2につき、リザーブのコア1つをトラッシュに置かなければブロックできない」

「ぐぬぬ……!」

「今のオレのカウントは8。よって君はこのターン、リザーブのコアを4つトラッシュに置かなければ、オレのスピリットをブロックできない」

 

 

要するに、トリプルシンボルでブロックされづらいと言う事だ。

 

今現在、ダホウのリザーブのコアは0。5体もの大群を並べているが、その内の誰もが、今のファイヤーガッチャードを止める事はできない。

 

フィールドでは、ファイヤーガッチャードが背部のX型のブースターを噴射させ、音速を超える速度で突き進んで行く。

 

ダホウの残りライフは3。ファイヤーガッチャードのシンボルも3。この攻撃が決まれば、サンドラの勝利となるが………

 

 

「オレのライフが一度に3つ以上減少する時、手札にあるフェイタルダメージコントロールの効果を発揮」

「!」

「これを破棄し、フラッシュ効果を使う。このターン、オレのライフは一度のアタックでは1しか減らない。ファイヤーガッチャードのアタックはライフだ。ぐぉぉ!!」

 

 

〈ライフ3➡︎2〉甲子園ダホウ

 

 

まだ決まらない。

 

音速を超えたファイヤーガッチャードの体当たりは、そのままダホウのライフバリアを粉砕するが、直前で展開された半透明の別のバリアが緩衝材となり、その減少数は3から1となる。

 

 

「アイツ、サンドラの渾身の一撃を凌ぎやがった!?」

「面白くなって来たな」

「いや面白くねぇよ、アイツが負けたらライちゃんがダホウのモノになるんだぞ!!」

「次のあのリーゼントさんのターンが楽しみだな」

「ライちゃん!?」

 

 

白熱して来た序列2位と3位のバトル。2人の高度なバトルスピリッツに、オーカミとライは釘付けになる。

 

 

「フ……流石だなダホウ。ターンエンドだ」

手札:4

場:【仮面ライダーファイヤーガッチャード スチームホッパー+インセクトケミー ホッパー1+ビークルケミー スチームライナー】LV2

【仮面ライダーガッチャード バーニングゴリラ】LV1

バースト:【無】

カウント:【8】

 

 

一方、渾身の一撃を回避され、逆にピンチに陥ってしまったサンドラ。だが彼は冷や汗1つかかず、寧ろ小さな笑みを浮かべていた。

 

 

「ボールボルボルボル、当然だ。次のターン、オレ様の逆転満塁ホームランを見せてやる、そして序列2位の称号とライちゃんを貴様からもぎ取るのだ」

 

 

攻撃を凌いだ勢いに乗ったまま、反撃のターンを迎えようとするダホウ。

 

しかし、その直後だった。

 

バトルを堰き止めるかのように、どこからともなく、フィールドに1体のスピリットが乱入して来てのは………

 

 

「ッ……コイツは」

「デスティニーガンダム」

 

 

乱入して来たスピリットは、美しい機翼を羽ばたかせるモビルスピリット、デスティニーガンダム。

 

これの使い手を、ノヴァ学園では知らぬ者などいない。オーカミに関して言えば、このスピリットは因縁とも言うべき存在であり………

 

 

「こんな所で何を遊んでいるんだ貴様ら。キング王の呼び出しだ、さっさとパワーフォースルームに集え」

 

 

デスティニーガンダムを操る銀髪の少年。名は獅堂レオン。

 

ノヴァ学園の序列4位にして、パワーフォースの1人。

 

そして、鉄華オーカミのライバルの1人でもある。

 

 

「ゲッ……獅堂」

 

 

オーカミは彼の顔とデスティニーガンダムを視認するなり、嫌そうで面倒くさそうな表情を浮かべた。

 

 




次回、第71ターン「デスティニーガンダム・メサイア」


******


《キャラクタープロフィール》

春神(はるかみ)ライ】
性別:女
年齢:14
身長:154cm
誕生日:7月1日
使用デッキ:【エアリアル】
概要:知らない間に完全にメインヒロインの立ち位置に定着してた凄いキャラ。第1章から1年と半年が経過し、色々女性らしくなった。ノヴァ学園編からは、多くの男性キャラに言い寄られる場面が増えたが、彼女は常にオーカミ一筋。


******


オトナシさんから素敵なイラストをいただきました!!

【挿絵表示】
『鉄華オーカミ(ノヴァ学園編)』

いわゆるファンアートは初めてで、はちゃめちゃに嬉しいです。ありがとうございます!!!
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