バトルスピリッツ 王者の鉄華   作:バナナ 

74 / 101
第74ターン「禁断、アンリミテッドバトル」

ノヴァ学園の第二バトルスタジアムで行われた、鉄華オーカミとキング王のバトル。

 

結果は、序列1位、キングの圧倒的完勝。オーカミはなす術なく敗れ去ってしまう。

 

久しぶりとなるキングのバトルと言うだけあって、ノヴァ学園に在学する多くの生徒達はその話で持ち切りとなっていた。そしてそれから1週間、ようやくその熱りが冷めて来た、とある日。

 

 

******

 

 

「聞きましたよキング。また他の生徒を退学させようとしたのですね」

「……」

 

 

多くの色彩重なる、鮮やかなステンドグラスが張り巡らされた、ノヴァ学園内にあるとある一室。

 

その神殿を思わせる場所には、豪華絢爛な玉座に腰を下ろす、透き通るような長い金髪を持つ、1人の美しい女性と、彼女に対して敬意を表すように片膝をつく、学園最強のカードバトラー、キング王の姿があった。

 

 

「あれだけ言ったというのに、何故ですキング。何故貴方はそうまでして生徒を退学させようとするのですか」

 

 

女性がキングに問うた。キングは顔を見上げ、答える。

 

 

「お言葉ですが学園長。前もお話しした通り、私はこの学園にはそぐわない弱者を排斥しているだけです。全てはこのノヴァ学園のため、どうぞご理解いただきたい」

「……」

 

 

キングに「学園長」と呼ばれる女性。

 

そう、彼女こそこのノヴァ学園を真に統治する学園長である。

 

 

「……何度やってもその話ですね。ずっと平行線で、私はもう疲れました」

 

 

ため息を吐くと、学園長は「話を変えましょう」と告げると、次の話題に移る。

 

 

月王者(ルナレクス)は見つかりましたか?」

「……」

 

 

学園長の口から出た言葉は、キングが意味深に探し求めていた「月王者」………

 

先日、教師のブイから、その正体が「鉄華オーカミ」である事が判明したのだが。

 

 

「……いえ、まだ」

 

 

キングは嘘をついた。本当は既に見つけている。

 

ただ、それはブイの言葉を鵜呑みにした場合であり、オーカミがその力を使っていなかったのもあって、実際の所は未だ不確定である。

 

 

「……本当ですか?」

 

 

学園長は、返答するまでのほんの僅かな間に疑問を抱き、キングを鋭い視線で睨みつける。

 

それでもキングは、己は何1つとして嘘はついていないと主張するかの如く、真剣な眼差しを学園長に向け返していた。

 

 

「……そうですか。月王者は危険な存在。見つけ次第、必ず始末なさい。これはノヴァ学園のためではありません、この世界のためです」

「……」

「それが、太陽王者(ソルレクス)として生まれて来た、貴方の使命なのですよ、キング」

 

 

納得した学園長がそう告げると、キングは立ち上がり、彼女に対して一礼。無言のまま、この場から立ち去って行く。

 

 

「困った息子です」

 

 

キングが立ち去った直後、学園長がそう呟いた。どうやら2人は親子の関係でもあるようだ。

 

 

「それにしても、あの子がこの間戦った鉄華オーカミと言う生徒」

 

 

学園長は己のBパッドの電源を入れると、先日のオーカミとキングのバトル映像を再生。その美しい瞳で、バトル中のオーカミを見つめる。

 

 

「少しだけ、気になりますね」

 

 

瞬間、学園長は不適な笑みを浮かべながら、玉座から立ち上がった。

 

 

******

 

 

「おいコント、今日バトルしてくれない?」

「ん?」

 

 

放課後。それを告げるチャイムがノヴァ学園に流れる頃。

 

早々に教室から立ち去ろうとする光裏コントをバトルに誘うのは、他でもない鉄華オーカミ。そのすぐそばには春神ライも確認できる。ただ、それに対する反応はあまり良くなく………

 

 

「んだよ」

「キングに負けてから新しくデッキを作り直したんどけど、試運転したくて」

「ならキングとやればいいだろ。オレはもうオマエとは関わらなぇ、一生な」

 

 

オーカミを突っぱねるようにそう言い返すと、コントはそのまま背を向け教室を後にする。

 

 

「コント、あれからずっとこんな感じだね」

 

 

ライが言った。

 

キングとの一件以降、オーカミに助けられた側であるにもかかわらず、何故かコントは彼に苛立ち、遠ざけていた。

 

 

「オレ、なんかしたかな」

「しょげんなしょげんな」

「しょげてない」

「気にしてもしょうがないって、コントの事だから、その内機嫌直してひょっこり戻って来るでしょ」

 

 

珍しく落ち込むオーカミ。それを励ますライ。

 

キングとの一件がキッカケで荒れている事は、先ず間違いないとわかっているのだが、2人してイマイチ彼の心の中を理解しきれていなかった。

 

 

「お友達と上手くいってないようですね」

「わ、え、誰?」

「……」

 

 

突然背後から聞こえて来た、透き通るような美しい声。

 

その声の主、知らぬ間にオーカミとライの背後に立っていたのは、金色の髪を靡かせる、1人の女性。その凛とした佇まいや、豪華絢爛な衣装から、生徒でも教師でもない事が伺える。

 

 

「フフ、ごめんなさいお嬢さん。驚かせてしまいましたね」

「アンタ誰だ。生徒って年齢には見えないし、教師にしては服が変だ」

「え、そんなに変?」

 

 

オーカミが女性に訊いた。女性は服が変と言われて若干ショックを受けるが、ここで言う服が変は、ファッション的な話ではなく、あくまで教師らしくない服であると言う意味合いである。

 

 

「まぁいいでしょう。それくらいは大目に見てあげるのが、学園長と言うものです」

「え、学園長!?」

 

 

サラッと自己紹介する学園長。その正体にライが驚く。

 

 

「フフ、お嬢さんは良いリアクションを取ってくれますね。そう、何を隠そうこの私こそ、ノヴァ学園の学園長でございます。因みに年齢は42歳」

「凄い、若い!!……学園長って事は、校長先生よりも偉いんですか!?」

「もちろんです。私がその気になれば、校長先生の首も切れます」

「ヤバ、ウケる!!」

 

 

食い気味によくわからない質問をするライ。初めて学校を通う事になった彼女にとって、偉い先生の話そのものが新鮮なのだろう。

 

 

「で、その校長先生の首も切れる学園長が、オレらに何の用があって来たの」

 

 

オーカミが学園長に訊いた。ライとは違って、その眼差しは真剣だ。

 

無理もない。普段は表に出ない、あの学園長が、何故か一生徒に過ぎない自分らにわざわざ会いに来たのだ。何か理由があると思うのは当然である。

 

 

「失礼しました。実は最近噂になっている貴方達カップルを一眼見たくて」

「カップル?……誰が」

「え、それはもちろん。鉄華オーカミ君と春神ライさん。貴方達お2人ですよ。今学園中で噂になっています、素敵なカップルだと」

「いや、オレとコイツは別にそう言う関係じゃ……」

「ま、まぁいいじゃないオーカ、そそそそう言う事にしときましょ!!」

 

 

ライが慌てて誤魔化す。

 

言えない。自分がBチューバーである桜田メイに「オーカミの彼女です」とはっきり宣言したばかりに、このような噂が流れてしまったなど。

 

 

「特に彼氏さんの鉄華オーカミ君。あのキング王にバトルを挑む度胸と、それに見合った技量。是非ともノヴァ学園の学園長であるこの私にも見せて欲しいと思いましてね」

「へぇ……学園長もバトルできるの?」

「当然です。私はノヴァ学園の創設者ですからね。そんなに強くはありませんが」

 

 

会話の流れから、学園長が自分にバトルを申し込むためにここまで来た事を察するオーカミ。ライとの噂が流れている話を完全に忘れ、その口角を僅かに上げる。

 

 

「教室ではバトルできませんね。とっておきの場所へ行きましょう」

「!!」

 

 

学園長がそう呟き、指を鳴らすと、不思議な事に、一瞬にして場所が教室からステンドグラスが張り巡らされた広い空間へと切り替わった。

 

 

「え、どこここ。私達、今どうやってここに来たの」

「フフ。またまたライさんを驚かせてしまいましたね。ここは学園長室。この広さなら、バトルをするのに申し分ないでしょう」

「……」

 

 

よくわからないけど、何でもいいや。

 

オーカミがそう思い、懐から取り出したBパッドを左腕に装着。そして学園長も同じように己のBパッドを装着すると、また1つ口を開く。

 

 

「1つだけ提案があります」

「提案?」

「このバトル、普通のバトルではなく、禁止制限のリミッターを外した『アンリミテッドバトル』にしませんか?」

「!」

 

 

学園長が提案したのは、特別ルール「アンリミテッドバトル」……

 

それは、普段は効果が強力過ぎるが故に1枚しか使えない「制限カード」と、凶悪過ぎて1枚も使えない「禁止カード」達のリミッターを外し、フルで使えるようにするというとんでもないルール。

 

 

「アンリミテッドバトル!!……普段封印されたカード達を存分に使えるバトルか。いいなオーカ、私もやりたい!!」

 

 

ライが目をギラギラと輝かせる。やったことのない特別ルールに興味津々な様子。

 

 

「では、ライさんとも後でやりましょう」

「やた!!…流石学園長、太ももがデカい」

「太ももはデカくありません。で、オーカミさんはどうします?……やりますか?」

「いいよ。禁止制限のカード達であろうと、オレの鉄華団は負けない」

「フフ。良いお返事です」

 

 

直後に2人は装着したBパッドに己のデッキを装填。バトルの準備を整える。

 

 

「では見せてください。貴方とデッキの強さを」

「あぁ、バトル開始だ」

 

 

……ゲートオープン、界放!!

 

 

スタンドグラス輝く学園長室にて、鉄華オーカミと学園長によるバトルスピリッツが、コールと共に幕を開ける。

 

先攻は学園長だ。自分から「アンリミテッドバトル」を仕掛けて来たため、彼女のデッキは、それらをふんだんに詰め込んだ、強力且つ凶悪なデッキである事が予測できるが………

 

 

[ターン01]学園長

 

 

「メインステップ、私はタマムッシュをLV1で召喚致します」

 

 

ー【タマムッシュ】LV1(1)BP2000

 

 

「召喚時効果。タマムッシュのLVの数だけ自身にコアブーストを行います」

 

 

つまりは1つだ。学園長は玉虫型の緑スピリットを召喚し、その効果で1つコアをブーストさせる。

 

タマムッシュ。今でこそ解放されてはいるが、かつては制限カードとして名を連ねていた強力なスピリットの一角である。

 

 

「ターンエンド。さぁどうぞ」

手札:4

場:【タマムッシュ】LV1(2)BP2000

バースト:【無】

 

 

「頑張れオーカ!!」

 

 

学園長はそれだけでそのターンをエンド。ライの声援が響く中、オーカミの最初のターンがスタートする。

 

 

[ターン02]鉄華オーカミ

 

 

「メインステップ。バルバトス第1形態をLV1で召喚」

 

 

ー【ガンダム・バルバトス[第1形態]】LV1(1)BP2000

 

 

「召喚時効果でデッキ上を3枚オープンし、その中のランドマン・ロディを手札に加えて、残りは破棄」

 

 

オーカミのフィールドに最初に姿を現したのは、白き装甲と黄色い角を持つ、鉄華団のモビルスピリット、バルバトス、その第1形態。

 

その効果でオーカミに新たなカードを齎した。

 

 

「ターンエンド」

手札:5

場:【ガンダム・バルバトス[第1形態]】LV1

バースト:【無】

 

 

アタックはせず、こちらもスピリットの召喚のまでそのターンをエンド。

 

次は再び学園長のターンだ。

 

 

[ターン03]学園長

 

 

「メインステップ、マジック、フェイタルドローを使用致します。効果でデッキ上から2枚ドロー。ターンエンドです」

手札:6

場:【タマムッシュ】LV1

バースト:【無】

 

 

二度目となる学園長のターンは、赤属性のドローマジックの使用のみで終了。早々にオーカミへとターンが移る。

 

 

[ターン04]鉄華オーカミ

 

 

「メインステップ、創界神ネクサス、クーデリア&アトラを配置」

 

 

ー【クーデリア&アトラ】LV1

 

 

オーカミの二度目のターン。彼は創界神ネクサスを配置。フィールドには何も出現しないが、その配置時の神託により、コアが2つ追加された。

 

 

「続けてランドマン・ロディをLV1で召喚」

 

 

ー【ランドマン・ロディ】LV1

 

 

その後オーカミは小さく、丸みを帯びたモビルスピリット、ランドマン・ロディを召喚。

 

対象スピリットの召喚により、クーデリア&アトラにコアが+1される。

 

 

「バルバトス第1形態のLVを2にアップ、バーストをセットして、ターンエンド」

手札:3

場:【ガンダム・バルバトス[第1形態]】LV2

【ランドマン・ロディ】LV1

【クーデリア&アトラ】LV2(3)

バースト:【有】

 

 

バーストのセットで守りを固め、そのターンをエンド。

 

お互いに堅実な滑り出しを見せながら、バトルは第5ターン目へと突入して行く。

 

 

 

******

 

 

「……」

 

 

一方、寮に帰宅したコント。

 

当然ながら、ルームメイトであるオーカミはまだ帰宅しておらず、今はたった1人。

 

無言のまま、手提げ鞄を投げ捨て、そのままベッドにダイブする。

 

 

「……」

 

 

仰向けになると、キングに負け、その後ブイが自分のデッキを渡しに来てくれた事を思い出す。

 

 

ー『ほい、コント、君のデッキだ』

ー『な、なんでブイ姉がこれを、まさか勝ったのか、オーカミが、キングに!?』

ー『な訳ないだろ。コテンパンだったよ。これは私がコウミョーな話術で取り返して来たのさ。当然、君らの退学の話もなくなった』

 

 

デッキが返って来た事で、オーカミが勝利したと勘違いし、驚くコントだったが、本当の結果はその真逆。

 

次第にコントの機嫌は悪くなって行き………

 

 

ー『んだよ、結局負けたのかよ。恥をかくって忠告までしてやったのによ。惨めだぜ』

ー『コント?』

 

 

ブイに対して礼も言わず、頭も下げず、背中を見せて去って行くコント。

 

この日から、彼はオーカミの事が嫌いになった。その理由は、彼本人ですら、まだわかっていない。

 

 

「クソ、なんでだよ。なんでこんなにクソムカつくんだ」

 

 

寮で1人、ぼやくコント。これも全てオーカミのせいだと、心の中で悪口を言うのであった。

 

 

******

 

 

視点は戻り、オーカミと学園長のバトル。

 

学園長の第5ターン目が始まる。

 

 

[ターン05]学園長

 

 

「メインステップ、もう1体、LV2でタマムッシュを召喚致します」

 

 

ー【タマムッシュ】LV2(4)BP5000

 

 

「召喚時効果。今度は2つコアブースト」

 

 

2体目のタマムッシュを召喚する学園長。効果でコアを2つ増やす。

 

 

「行きますよアタックステップ、手始めにLV1のタマムッシュでアタックです」

 

 

先に動き出したのは学園長。最初に召喚したタマムッシュで攻撃を仕掛ける。

 

 

「バルバトス第1形態でブロック」

 

 

それを阻むのは、バルバトス第1形態。迫り来るタマムッシュを鷲掴みにし、地面に叩きつけて爆散へと追い込む。

 

 

「もう1体、LV2のタマムッシュでアタック」

「それはランドマン・ロディでブロック」

 

 

間髪入れずにもう1体のタマムッシュで仕掛けて来る学園長。オーカミはそれをランドマン・ロディでブロックする。

 

しかし、ブロックしたランドマン・ロディのBPは僅か1000。タマムッシュの体当たりによって吹き飛ばされ、爆散してしまう。

 

 

「ランドマン・ロディの破壊時効果。疲労状態の相手スピリット1体を破壊し、1枚ドロー」

「なんと」

「タマムッシュを破壊だ」

 

 

ランドマン・ロディが吹き飛ばされる直前に残していた爆弾。それがタマムッシュの眼前で爆発。それを破壊する。

 

二度の攻撃、二度のバトル。結果的には、防御側のオーカミがやや優勢になった。

 

だが、このバトルが伝説達を解禁した、アンリミテッドバトルだと言う事を忘れてはならない。

 

 

「スピリットが破壊された時、もしくはライフが減少した時、手札からアルケーガンダムのカードを提示します」

「!」

「来たよオーカ、制限カードだ」

 

 

学園長がこのタイミングで手札から提示したのは、今でも制限カードに名を連ねるモビルスピリット、アルケーガンダム。

 

それが今、舞い降りる。

 

 

「効果により1コストを支払って召喚致します」

 

 

ー【アルケーガンダム】LV2(3)BP12000

 

 

赤みを帯びた装甲と大剣を持つ、青属性のモビルスピリット、アルケーガンダムがフィールドへと舞い降りる。

 

 

「来たな制限カード」

「アルケーガンダムでアタック。そしてこのフラッシュタイミング、アタック時効果が発揮されます」

 

 

アルケーガンダムの召喚に成功した学園長。効果を発揮させ、更なる追撃を仕掛ける。

 

その効果は、アルケーガンダムが制限カードであるが故に有名なモノであり………

 

 

「3コストまでを支払い、支払ったコストの数だけ効果を発揮。私は3コスト全てを支払い、アルケーガンダムの力を全開放致します」

「くっ……」

「1コストを支払った事により、コスト7以下のスピリット、バルバトス第1形態を破壊。2コストを支払った事により、アルケーガンダムを回復。最後に3コストを支払った事により、ターンに一度、相手の手札をランダムに1枚破棄、相手ライフ1つを破壊、相手のデッキを上から6枚破棄」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉鉄華オーカミ

 

 

大剣を縦一線に振るうアルケーガンダム。するとそこから生まれる衝撃波は、バルバトス第1形態を両断し、爆散。さらにはオーカミのライフバリアに直撃、それを1つ破壊。

 

そしてその余波は、オーカミの手札1枚とデッキ6枚を消し飛ばす。

 

余りにもイカレているアルケーガンダムの効果。この上でさらに回復もしているのだから、使用されている側からしたら堪ったものじゃないだろう。

 

だがオーカミも、負けじと手札にあるカードを1枚提示し………

 

 

「オレのライフ減少時、手札にある紫マジック、デスタメントを提示。この効果でコア3個以上のアルケーガンダムを破壊だ」

 

 

カウンターとなる手札誘発カード。これでアルケーガンダムを破壊し、またオーカミの優勢となる。

 

かに見えた。学園長も手札のカードを1枚提示するまでは………

 

 

「なら、私はこのタイミングで2枚目のアルケーガンダムを提示」

「!?」

「解決の順番は、ターンプレイヤーである私にあります。よって私の提示したアルケーガンダムから先に効果を解決。1体目のアルケーガンダムからコアを払い、LV1で召喚」

 

 

ー【アルケーガンダム】LV1(1)BP8000

 

 

「その後、貴方のデスタメントの効果が解決。フフ、しかし今の私の場にはコア3個以上のスピリットはいませんね」

「……」

 

 

アンリミテッドバトルの本領が発揮。フィールドに、本来ならばあり得ない、2体目のアルケーガンダムが呼び出される。

 

今この場で何が起こったのかを説明すると、アルケーガンダムやデスタメントなど、誘発カードを、同じタイミングで両プレイヤーが使用する場合、先ずは防御側のプレイヤー(オーカミ)から提示、見せなければならない。

 

その後、攻撃側のプレイヤー(学園長)がカードを提示、及び同時に発揮させたカードの効果を発揮させる順番を決める事になる。

 

要するに、攻撃側は、防御側の誘発カードを見てから、自分の誘発カードを使うか使わないかを選ぶ事ができると言う事。学園長はこのルールを利用し、オーカミの発揮させた、コア3個以上のスピリットを破壊するデスタメントを不発にして見せたのだ。

 

 

「おぉ、アルケーガンダムが2体。なんか久し振りの光景かも!!」

 

 

アルケーガンダム2体が並び立つ光景に、ライのテンションも跳ね上がる。

 

 

「まだだ。デスタメントは不発になっても、バーストカードはそれよりも後に発動できる」

「フフ、使いますか」

「ライフ減少により、バースト発動。ガンダム・バエル」

 

 

効果発揮、それに伴う派生効果の解決後は、バーストの発動タイミングだ。

 

オーカミは2体のアルケーガンダムが並び立った瞬間、己の伏せていたバースト、ガンダム・バエルを発動する。

 

 

「効果により、自身を召喚。数多の魔を従えし首魁、長き眠りから目覚め、混沌の世に覇を唱えよ!!……ガンダム・バエル、LV1で召喚」

 

 

ー【ガンダム・バエル】LV1(1)BP8000

 

 

神々しい輝きを放つ天空。そこより舞い降りて来たのは、白銀の装甲に身を包んだ、スマートなモビルスピリット、ガンダム・バエル。

 

 

「召喚時効果、互いのデッキ上から3枚をオープンし、その中のコスト6以下の紫カードをノーコスト召喚できる」

 

 

オーカミと学園長のデッキがそれぞれ3枚ずつオープン。学園長のカードは全てハズレだったが、オーカミのカードの中にはあたりのカードが1枚存在していて………

 

 

「よし。オレはこの中にあるフラウロスをLV2で召喚」

 

 

ー【ガンダム・フラウロス】LV2(3)BP10000

 

 

バエルの効果によってオーカミのフィールドへと出現したのは、マゼンタカラーの装甲と、多くの銃火器を装備した、鉄華団のモビルスピリット、フラウロス。

 

 

「アタック中のアルケーガンダムのアタックは、そのままフラウロスでブロック。そのアタックブロック時効果で、アタックしていない方のアルケーガンダムを破壊、BPバトルでもう1体も破壊だ」

 

 

フラウロスは、背部に備え付けられたレールガンを展開し、そこから電磁砲を放出。それはアルケーガンダム2体を貫き、爆散へと追い込む。

 

 

「制限カードであるアルケーガンダムを2体破壊。流石にやりますね。ですが、私はスピリットが破壊された事で、3枚目のアルケーガンダムを提示」

「なに」

「1コストで召喚します」

 

 

ー【アルケーガンダム】LV1(1)BP8000

 

 

2体を破壊したと思えば、まさかまさかの3体目。

 

学園長は3体目となるアルケーガンダムをフィールドへと投下した。

 

 

「3枚も待ってたのか。でも、アンタのコアはフィールドのアルケーガンダムに置かれたコアが1つだけ。それじゃ効果は使えない」

 

 

だが、よく見てみると、もう学園長に残されたコアは僅か。

 

オーカミの言う通り、このままでは3体目のアルケーガンダムの効果はフルで使えない。

 

しかしその瞬間、学園長は不敵に笑う。

 

 

「フフ……貴方はこのバトルがアンリミテッドバトルである事をお忘れですか?……アルケーガンダムでアタック」

 

 

3体目のアルケーガンダムで攻撃を仕掛ける学園長。

 

そしてこのタイミングで手札にある1枚のカードをまた引き抜く。

 

それは、バトルスピリッツ史上最凶にして凶悪の効果。

 

 

「私は手札から烈の覇王セイリュービの【烈神速】を発揮致します」

「!!」

「私のトラッシュにコアが5個以上ある時、それら全てをフィールドかリザーブに置く事で、セイリュービを召喚。現れなさい、禁じられし覇王よ」

 

 

ー【烈の覇王セイリュービ】LV2(4)BP10000

 

 

フィールドに出現する大竜巻。それを引き裂き、中より現れたのは、蒼き甲冑と、二振りの剣を持つ、緑の龍。

 

その名も烈の覇王セイリュービ。

 

本来であれば、デッキに1枚たりとて投入する事ができない禁止カードの1体。その強さは最早伝説であると言える。

 

 

「うぉぉぉぉセイリュービ!!……初めて見た!!」

 

 

またまたテンションが跳ね上がるライ。しかしこの状況、彼女が好意を寄せるオーカミにとってはかなり危険な状況だ。

 

 

「フフ。今の【烈神速】でアルケーガンダムのLVは3。効果を使えるだけのコアが帰って来ました」

「くっ……」

「フラッシュ、アルケーガンダムのアタック時効果を発揮。セイリュービから3つのコアを支払い、全ての効果を適用致します」

 

 

セイリュービの代名詞たる効果【烈神速】……

 

この効果でトラッシュのコア全てを回収した学園長は、アタック中のアルケーガンダムの効果をフルで発揮させる。

 

 

「コスト7以下のフラウロスを破壊。アルケーガンダムを回復。相手の手札1枚をランダムに破棄。ライフ1つを砕き、デッキ上から6枚のカードを破棄」

 

 

アルケーガンダムは大剣を振い、衝撃波を放つ。それにフラウロスは両断され、オーカミは手札、ライフ、デッキを同時に失ってしまう。

 

 

「これで私の勝ちは決まったみたいですね。アルケーガンダムのアタックは継続中!!」

 

 

アルケーガンダムの効果は、3コストの効果のみがターンに一度、2コストまでの効果であれば何度でも発揮できる。

 

つまり、2コストを支払い続ければ、何度でもアタックが可能と言う事。バエルの存在を加味しても、このターンでオーカミは負けてしまう。

 

 

「フラッシュマジック、抱擁。オレのデッキ上1枚を破棄。それが鉄華団なら、トラッシュのソウルコアをスピリットに置く」

 

 

オーカミがなけなしの手札で放った、1枚のマジックカード。この効果で破棄したカードは当然鉄華団のカード。

 

よって、トラッシュのソウルコアがバエルへと移動する。

 

 

「今更その程度のコア回収効果でアルケーガンダムは止まりませんよ」

「わかってる。この瞬間、クーデリア&アトラの【神域】が誘発。鉄華団の効果でオレのデッキが破棄された時、トラッシュにある紫1色のカード1枚をデッキ下に戻し、デッキ上から1枚ドローできる」

 

 

オーカミはこの効果で「ガンダム・バルバトス[第1形態]」のカードをデッキ下に戻し、カードを新たにドロー。

 

 

「アルケーガンダムのアタックはライフで受ける」

 

 

〈ライフ3➡︎2〉鉄華オーカミ

 

 

接近して来たアルケーガンダムが、大剣でオーカミのライフバリア1つを一刀両断。

 

追い詰められるオーカミだが、ここでさっきドローしたカードを提示して……

 

 

「オレのライフ減少時、手札から絶甲氷盾の効果をノーコストで発揮。アタックステップを強制終了させる」

 

 

クーデリア&アトラの効果によって寸前でドローしていた防御マジック「絶甲氷盾〈R〉」の効果が発揮。

 

いくら禁止制限のカード達と言えども、対抗効果がない限り、それを超える事はできなくて………

 

 

「ターンエンド。フフ、なかなかしぶとい。学園に入学するだけの事はありますね。しかし次のターン、今度こそ私のアルケーガンダムとセイリュービがトドメを刺します」

手札:2

場:【アルケーガンダム】LV3

【烈の覇王セイリュービ】LV1

バースト:【無】

 

 

絶甲氷盾の効果でアタックステップが強制終了した事で、アルケーガンダムとセイリュービをブロッカーとして残し、長く続いたターンを終える学園長。

 

フィールドのスピリットはバエルのみ、手札が残り1枚と言う絶体絶命の状況に立たされたオーカミだが………

 

 

「このアンリミテッドバトルで、なに生温い事言ってんだ」

「!?」

 

 

その瞬間、オーカミの雰囲気はやや刺々しくなり、本気モードとなる。

 

 

「行くぞ」

 

 

[ターン06]鉄華オーカミ

 

 

「メインステップ、マジック、フォビドゥングレイブを使用」

「フォビドゥングレイブ!?……何故貴方がそのカードを!?」

 

 

オーカミがメインステップ開始早々に使用した、紫属性のマジックカード。その存在が学園長を驚かせる。

 

無理もない。

 

これはかつて、あの伝説のカードを呼び出すために使われていたカードなのだから………

 

 

「当然、これがアンリミテッドバトルだからだ。フォビドゥングレイブの効果により、トラッシュから来い、本日のハイライトカード、アルティメット、極土の四魔卿マグナマイザー……!!」

 

 

ー【極土の四魔卿マグナマイザー】LV4(3)BP25000

 

 

フィールドに刻まれる、紫に輝く魔法陣。そこから飛び出し、出現したのは、西洋風な鎧を身に纏った闇の騎士。

 

獄土の四魔卿マグナマイザー。セイリュービと同様、余りにも凶悪過ぎたために禁止カードなった存在だ。

 

 

「いつの間にこんなカードをデッキに……」

「バエルのLVを2に上げて、アタックステップ。マグナマイザー、アタックだ」

 

 

颯爽とアタックステップへ突入。オーカミは、召喚したマグナマイザーでアタック。

 

そして、その禁断の力を解放する。

 

 

「伝説のアタック時効果【TU(トリプルアルティメット)トリガー】を発揮。アンタのデッキ上から3枚のカードをトラッシュに置く。それらがマグナマイザーのコストより低ければヒットとなる」

「ッ……!!」

 

 

マグナマイザーの眼光が赤々と輝くと、学園長のデッキ上から3枚のカードがトラッシュへと送られる。

 

そのカード達は、いずれもマグナマイザーのコスト8よりも低いコストを持つカード達であり………

 

 

「トリプルヒット。先ずはヒットした数1つにつき、相手のスピリット、アルティメットのコアをトラッシュへ。アルケーガンダムとセイリュービから計6つのコアをトラッシュへ送り、消滅させる」

 

 

マグナマイザーは4本の脚で駆け出すと同時に、剣に闇の炎を纏わせ、アルケーガンダムとセイリュービに向けて、それを一太刀。

 

斬撃と共に飛んで行った闇の炎は2体に命中。その瞬間に石化、崩れ落ちて土へと還った。

 

 

「ダブルヒット時効果。相手ライフ1つを破壊する」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉学園長

 

 

「トリプルヒット時効果。相手の手札をランダムに2枚破棄する」

 

 

マグナマイザーの眼光がまた赤く輝くと、学園長のライフバリア1つが砕け散り、残った2枚の手札全てを捨てさせる。

 

これこそ、マグナマイザーが禁止カードになってしまった由縁。当時のカードバトラーは、誰もがこの効果を恐れていた。

 

 

「マグナマイザーのアタックは継続中」

「……ライフで受けましょう」

 

 

〈ライフ4➡︎3〉学園長

 

 

マグナマイザーが剣を振り下ろし、学園長のライフバリア1つを斬り裂く。

 

 

「ターンエンド」

手札:1

場:【ガンダム・バエル】LV2

【獄土の四魔卿マグナマイザー】LV4

【クーデリア&アトラ】LV2(4)

バースト:【無】

 

 

バエルをブロッカーとして残し、オーカミはそのターンを終了。

 

学園長のターンが回って来るが……

 

 

[ターン07]学園長

 

 

「メインステップ。フフ、スピリットも手札も失っては、もう成す術無しですね。ターンエンドです」

手札:1

バースト:【無】

 

 

学園長はドローステップで引いたカードだけでは何もできず、敗北を悟って、そのままターンを終了。

 

オーカミは完全にこのバトルを制圧、支配した。最早負ける事などあり得ない。

 

 

[ターン08]鉄華オーカミ

 

 

「メインステップ、バエルのLVを3に上げて、アタックステップ。もう一度頼むぞ、マグナマイザー。【TUトリガー】を発揮」

 

 

オーカミのターン。彼は再びマグナマイザーでアタック。

 

それと同時に【TUトリガー】が発揮。今度も3枚全てがマグナマイザーよりもコストの低いカード達だ。

 

 

「トリプルヒット。アンタの手札とライフを破壊する」

 

 

〈ライフ3➡︎2〉学園長

 

 

「アタックはライフで受けます」

 

 

〈ライフ2➡︎1〉学園長

 

 

マグナマイザーが剣から放つ闇の炎が、学園長のライフバリアと手札を次々と破壊して行く。

 

そして、その残りのライフは1つ。オーカミのアタックできるスピリットも1体だ。

 

 

「バエルでラストアタック!!」

「……なんと優雅な。やはり、私の学園のカードバトラーはそうでなくては。潔く、ライフで受けます」

 

 

〈ライフ1➡︎0〉学園長

 

 

トドメはバエル。二振りのブレードで学園長の最後のライフバリアを切断。マグナマイザーと共にオーカミを勝利へと導いて見せた。

 

 

「オレ達の勝ちだ……!!」

 

 

オーカミがそう告げると、最後までフィールドに残ったバエルとマグナマイザーが無音の咆哮を張り上げる。

 

直後に学園長のBパッドから「ピー……」と言う無機質な機械音が鳴り響き、彼の勝利を讃えた。

 

 

「やるじゃんオーカ。マイザーは流石に鬼畜だぞっと」

「いや、アルケーとリュービの方がヤバいと思うんだけど」

 

 

バトル後、ライと会話するオーカミ。飄々としていたが、アルケーガンダムとセイリュービのコンボは、ちゃんとヤバいと思っていた様子。

 

 

「良いバトルでしたよ、鉄華オーカミ君」

「学園長」

「噂通りお強いんですね。これからも妥協せず、精進してください」

「……うん」

 

 

学園長の言葉に、オーカミはいつもの無表情のまま、小さく頷く。

 

 

「あと最後に、アドバイスを1つ。お友達は大切にするように。知らぬ間に、自分の手から離れてしまうかもしれませんよ?」

「え」

 

 

学園長は最後に意味深な事をオーカミへ告げると、再び指を鳴らし、この場を学園長室から、オーカミ達の教室へと戻した。

 

唯一変わったのは、学園長だけが消えたと言う事のみ。

 

 

「あ、アレ。教室に戻っちゃった。つーか学園長は!?……私にもアンリミテッドバトルさせてあげるって約束したのに!!」

「別にいいだろ。帰ろう」

「ダメ!!……絶対やる」

「そんな事言われてもな。学園長どっか行ったし、学園長室もどこかわかんないし」

「じゃあオーカが代わりにやってよ!!」

「えぇ、オマエとやったらエグい事されそうだから嫌だ」

 

 

と言いつつも、数分後、なんやかんやでライとアンリミテッドバトルをする事になるオーカミ。

 

その際に、言葉では言い表しようのない、エグいワンキルコンボを食らってしまうのは、また別の話。

 

 

******

 

 

時を同じくして、ここはノヴァ学園の職員室。

 

日々一風変わった生徒達の相手をさせられる、ノヴァ学園の教師達にとっては、数少ない憩いの場である。

 

 

「失礼します」

 

 

しかし、その平穏は脅かされる。

 

あのキング王が入室して来たのだ。バトルスピリッツの勝敗こそが絶対ルールのこの学園。教師らよりも強い権限を持つ彼は、当然畏怖の対象だ。

 

そんなキングが真っ先に向かったのは、己のデスクで腰を下ろしている、ある1人の女教師。

 

 

「そろそろ来る頃だと思ってたぞ、キング」

 

 

その女教師とは、オーカミらの担任でもある、サングラスとオレンジの髪が特徴的な女性、ブイ。

 

 

「………」

「へへ、ここで話すのもなんだ、ちょっとツラ貸せよ」

 

 

ブイは立ち上がると、キングと共に教室を後にする。その後に何があったのかは、他の教師達にもわからない。

 

 





次回、第75ターン「ゴジラVS紅の聖騎士」


******
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。