バトルスピリッツ 王者の鉄華   作:バナナ 

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第75ターン「ゴジラVS紅の聖騎士」

時は夕暮れ。橙色の光が世界を差し込む。

 

優秀なノヴァ学園の生徒とて、生徒は生徒。遅くまで残り、勉学やバトルスピリッツに励んでいた者達も良い加減下校をし始める、この時間帯。

 

いくつか存在する校舎の中でも最も大きな校舎。その屋上にて、学園最強のカードバトラーキング王と、女教師ブイが対峙していた。

 

 

「よし、ここなら誰も来ないだろ」

 

 

辺りを見渡しながらそう告げるブイ。

 

昼間ならそこそこ人がいる屋上だが、流石に夕暮れのこの時間帯にもなれば誰も足を運ばなくなる。

 

 

「貴女は、何故、太陽王者と月王者の事を知っている」

「おいおい、藪から棒だな。本題に入るの早すぎだって」

 

 

2人のみになるや否や、早速ブイに太陽王者と月王者の事を訊いて来たキング。

 

余程、ブイが何故それを知っているのかが気になる様子。もちろん、聞きたい事はそれだけではないだろう。

 

 

「まぁ気持ちはわかる。聞きたい事もたくさんあるよな。でも、私達はカードバトラーだ。知りたい事は、勝って聞き出せ」

「……」

 

 

ブイが取り出したのは、己のBパッド。その言葉と行動から読み取れる事は、私にバトルスピリッツで勝ってから聞き出せ、と言う事。

 

当然キングはそれに応じ、己もまたBパッドを取り出し、それを左腕へと装着する。

 

 

「自分から呼び出しておいて勝って聞き出せとは、無粋だな。だがよかろう、相手になってやる」

「へへ、流石は学園最強。そう来ないと面白くないよな」

 

 

直後にブイも口角を上げながら、己のBパッドを左腕へ装着。互いにデッキを装填し、バトルの準備を完了させる。

 

 

「私のライフを1つ減らすたびに、1つの質問に答えて上げるよ」

「了承した」

「折角だから良いバトルにしような」

「……」

 

 

……ゲートオープン、界放!!

 

 

ノヴァ学園の校舎の屋上にて、学園最強のカードバトラー、キング王と、若き女教師ブイによるバトルスピリッツが幕を開ける。

 

 

「先攻後攻は、貴女の好きな方で構わない」

「またそれか。正直、生徒相手に教師がハンデを貰うのは気が引けるけど……」

 

 

いつも通り、対戦者に先攻後攻の判断を委ねるキング。

 

ブイは己の初手4枚の手札を確認、僅かな時間思考して……

 

 

「君の場合は強すぎてどっちを取っも、結局対して変わらないしな。わかったよ、じゃあ私の先攻で」

 

 

判断の結果、先攻はブイとなる。

 

今日はいつも本気のデッキを持って来た彼女。キングを相手に堂々とカードをドローして行く。

 

 

[ターン01]ブイ

 

 

「メインステップ、いきなりかますか。創界神ネクサス、松田啓人を配置」

 

 

ー【松田啓人】LV1

 

 

「赤属性、デジタルスピリット専用の創界神ネクサスか」

 

 

ブイが配置したのは、赤属性の創界神ネクサス。フィールドには何も出現しないが、配置時の神託の効果により、彼女のデッキ上から3枚のカードがトラッシュへ送られ、合計2つのコアが上に追加された。

 

 

「私はこれでターンエンド。さぁ次は君のターンだぞ」

手札:4

場:【松田啓人】LV1(2)

バースト:【無】

 

 

ニカニカと笑みを浮かべながらターンを終えるブイ。

 

次は後攻となったキングのターンだ。

 

 

[ターン02]キング王

 

 

「メインステップ、ネクサス、溶岩海のエデラ砦を配置」

 

 

ー【溶岩海のエデラ砦】LV1

 

 

「配置時効果、私のカウントを+1」

 

 

キングの背後に、溶岩に浮かぶ、岩でできた砦、溶岩海のエデラ砦が配置される。その効果により、キングのカウントが1増加する。

 

 

「さらに我が右腕、ベビーゴジラを召喚」

 

 

ー【ベビーゴジラ】LV1(1)BP3000

 

 

キングのフィールドに現れたのは、黒き鱗を持つ小さな怪獣、ベビーゴジラ。カウントが10以上になると、全てのスピリットに赤シンボルを1つずつ追加する強力な効果を有している。

 

 

「バーストをセットし、アタックステップ。ベビーでアタック。その効果でカウントを+2」

 

 

先に仕掛けたのはキング。ベビーゴジラの効果により、己のカウントを3まで伸ばす。

 

 

「早速来たか。よし、ライフで受ける」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉ブイ

 

 

ベビーゴジラは身体を車輪の如く縦に回転させ、そのままブイのライフバリアへ突撃。それを1つ砕く。

 

そして、ブイのライフバリア1つを破壊した事により、キングはブイに1つ質問する権利を得て………

 

 

「ターンエンド」

手札:2

場:【ベビーゴジラ】LV1

【溶岩海のエデラ砦】LV1

バースト:【有】

 

 

「さぁ、たった今君は私に質問をする権利を得たわけだ。私が良い女だからって、エッチな質問は無しだからな⭐︎」

「貴女は何故、太陽王者と月王者の事を知っている」

「……まぁ冗談で言ったんだけどさ。ここまでガン無視されるとちょっと萎えちゃうな」

 

 

最初の質問は「何故ブイが月王者の事を知っているのか」だ。

 

ブイは萎えた心を元に戻しながら答える。

 

 

「私が何故、太陽王者と月王者を知っているのか、か……ふふ、あの人に教えて貰ったから、かな」

「あの人……誰だそいつは」

「残念、質問は破壊したライフ1つにつき1回だけだ。教えて欲しかったら、またライフを破壊しないとな」

 

 

疑問に対し、新たなる疑問を増やしていくスタイルのブイ。

 

キングに新たな疑問を植え付ける中、彼女は巡って来た己のターンを進めて行く。

 

 

[ターン03]ブイ

 

 

「メインステップ、オマエの出番だ、ギルモン」

 

 

ー【ギルモン】LV3(4)BP6000

 

 

「召喚時効果、デッキ上からカードを5枚オープンし、グラウモンのカードを手札に加え、残りはデッキ下へ戻す」

 

 

ブイが召喚したスピリットは、小型の赤き魔竜、赤属性の成長期デジタルスピリット、ギルモン。

 

その召喚時効果により、ブイはデッキから1枚のカードを新たに加える。

 

 

「アタックステップ、その開始時。ギルモンの【進化:赤】を発揮。自身を手札に戻す事で、手札から成熟期スピリット、グラウモンをノーコスト召喚」

 

 

ー【グラウモン】LV3(4)BP7000

 

 

ギルモンが0と1で構成されたデジタルカードに包み込まれ、進化。より強大な存在、グラウモンとなる。

 

 

「グラウモンでアタック。その効果でベビーゴジラを破壊」

 

 

グラウモンの攻撃。口内から溢れんばかりの獄炎を吐き付けて、ベビーゴジラを焼き尽くし、爆散させる。

 

 

「さらに【超進化:赤】を発揮、グラウモンを手札に戻し、完全体、メガログラウモンをノーコスト召喚だ」

 

 

ー【メガログラウモン】LV2(4)BP9000

 

 

今度はグラウモンがデジタルカードに包み込まれて行き、更なる進化形態、胸部に重厚なる武装を施した大型の魔竜、メガログラウモンへと進化を果たす。

 

 

「メガログラウモンでアタック。効果でデッキ上から2枚ドロー」

 

 

咆哮を張り上げ、メガログラウモンがキングのライフバリアを破壊すべく走り出す。

 

その際に発揮されたアタック時効果により、ブイはデッキから2枚のカードをドロー。

 

 

「ライフで受ける」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉キング王

 

 

メガログラウモンは、武装した鉤爪でキングのライフバリア1つを切り裂く。

 

 

「ライフ減少後のバースト、クリアウォールを発動。効果により私のライフを1回復し、カウント+2」

 

 

〈ライフ4➡︎5〉キング王

 

 

キングは白のバースト「クリアウォール」を発動。その効果により、ライフとカウントを増やす。

 

 

「やっぱそれだったか、ターンエンド」

手札:7

場:【メガログラウモン】LV2

【松田啓人】LV2(5)

バースト:【無】

 

 

完全体のデジタルスピリットを呼び出し、効果で多くの手札を確保したブイ。一度ターンをエンドとし、キングの様子を伺う。

 

 

「所でさ。君はどうやって自分が太陽王者だって知ったんだ?」

 

 

ブイがキングに訊いた。

 

 

「答える義務はない」

「私もライフ減らしたしいいじゃ〜ん。バトルスピリッツは皆平等だろ?」

「……」

 

 

何も言い返せないキング。なんて忘却無人な奴だと思いながらも、仕方なくブイの質問に答える。

 

 

「……あの人に教えて貰ったからだ」

「いや、オマエもそれかい」

 

 

ブイの質問に対して、キングが脳裏に浮かべていたのは、まだ幼く、薄汚い自分。学園長に拾われ、名付けて貰った、あの日の記憶………

 

 

「私のターンだ」

 

 

[ターン04]キング王

 

 

「メインステップ、手札からリトルゴジラの【契約煌臨】を発揮。魂状態のベビーを煌臨元とし、煌臨する」

 

 

ー【リトルゴジラ[2]】LV2(3)BP10000

 

 

破壊され、魂状態となっていたベビーゴジラが、白いオーラに身を包みながら、姿を変えてフィールドへ帰還。

 

舞い戻ったゴジラの名はリトルゴジラ。ベビーゴジラが僅かに成長した姿だ。

 

 

「マジック、フォースブライトドロー。私のカウントが2以上の時、デッキから3枚ドロー」

 

 

キングはここで赤のドローマジックを使用し、デッキ上から3枚のカードをドロー。その手札は4枚となる。

 

 

「エデラ砦のLVを2に上げ、アタックステップ。リトルゴジラでアタック、効果でカウント+1、1枚ドロー。煌臨元となっているベビーの効果、カウント+2、効果発揮後、BP5000以下のスピリット1体を破壊、そこにリトルゴジラのOC効果が合わさり、BP10000以下のスピリット1体を破壊」

「へぇ、良い効果だね」

「BP9000のメガログラウモンを破壊する」

 

 

ブイのメガログラウモンへ向けて放たれる、リトルゴジラの火炎弾。

 

それは被弾し、メガログラウモンを爆散させると思われたが………

 

 

「滅龍スピリットが相手の効果の対象となるこの瞬間、手札から赤きブレイヴ、グラニの効果を発揮」

「!」

「1コストで召喚、メガログラウモンへ直接合体」

 

 

ー【メガログラウモン+グラニ】LV2(3)BP15000

 

 

「そうした時、このターン、グラニの対象となったスピリット1体は効果で破壊されず、手札デッキに戻らない」

 

 

被弾直前、リトルゴジラの火炎弾を弾き返したのは、赤き飛行生命体グラニ。ブイのデッキにいる、真紅の魔竜達を強烈にサポートするブレイヴだ。

 

 

「破壊効果を防がれようが、リトルゴジラのアタックは生きたままだ」

「当然それは、ライフで受けるよ」

 

 

〈ライフ4➡︎3〉ブイ

 

 

突然発揮されたグラニの効果に一切驚く様子を見せないキング。

 

彼が従えるリトルゴジラが、そのまま長い尾を振い、ブイのライフバリア1つを砕いた。

 

 

「ターンエンド」

手札:5

場:【リトルゴジラ[2]】LV2

【溶岩海のエデラ砦】LV2

バースト:【無】

カウント:【8】

 

 

このターンは主にドローとカウントの増加に努めたキング。

 

一度ターンを終え、ブイへの質問に移る。

 

 

「2つ目の問いだ。貴女に月王者と太陽王者を教えたのは誰だ」

 

 

キングの2つ目の問いは当然、先程植え付けられた疑問。

 

 

「それを知って何するつもりなの」

「質問を質問で返すな。ライフを減らした時以外の質問は受け付けない」

「怖。う〜〜ん、そうだな……」

 

 

直後、ブイは何かを閃いたかのような表情を見せ、笑みを浮かべて……

 

 

「ふふ……『悪魔の契約者』とだけ伝えて置くよ」

「悪魔の契約者……?」

 

 

不気味な存在である事を連想させる、ブイの発言。彼女の背後には、恐ろしい何かが隠れていると、キングは確信して………

 

 

「名はなんだ」

「そんなの教えても君がわかるわけないだろ。よっしゃ、次は私のターンだな」

 

 

月王者、太陽王者を知っており、さらに背後には『悪魔の契約者』が隠れていると言う、明らかに怪しいブイ。

 

次はそんな彼女の第5ターンが幕を開ける。

 

 

[ターン05]ブイ

 

 

「メインステップ、ギルモンとグラウモンを召喚」

 

 

ー【ギルモン】LV2(2S)BP4000

 

ー【グラウモン】LV1(1)BP4000

 

 

ブイは、前のターン中の進化コンボで手札に戻って行った、真紅の魔竜達を再度召喚する。

 

 

「ギルモンの召喚時効果。2枚目のグラウモンを回収。さらに、グラニの合体先を、メガログラウモンからギルモンに変更」

 

 

ー【ギルモン+グラニ】LV2(2S)BP10000

 

 

赤き飛行生命体グラニが、メガログラウモンの元を離れ、ギルモンをその背中に乗せる。

 

 

「アタックステップ、その開始時に再びギルモンの【進化:赤】を発揮させ、手札から2体目のグラウモンを召喚する」

 

 

ー【グラウモン】LV2(2S)BP6000

 

 

キングに攻撃を仕掛けるべく、アタックステップへと突入するブイ。フィールドではギルモンが進化し、2体目のグラウモンに。

 

その際、合体していたグラニは粒子化、ギルモンと共にブイの手札へと帰還した。

 

 

「当然アタックもするよな。メガログラウモンでアタック。効果で2枚ドロー、もう1つの効果でリトルゴジラを破壊」

 

 

先陣を務めるのは、完全体メガログラウモン。その効果でブイに2枚のカードをドローさせ、胸部から真紅のレーザー光線を放ち、リトルゴジラを焼き尽くした。

 

 

「このターン、君に面白い奴を見せてやろう」

「面白い奴?」

「あぁ、それはそれはもう、飛びっ切りにな」

 

 

そう告げると、ブイは増えた手札の中より1枚のカードを引き抜き、それを己のBパッドへと叩きつける。

 

それは、神童と呼ばれるキングをもってしても、驚かせるには余りに十分すぎるカードであり……

 

 

「【煌臨】発揮、対象はアタック中のメガログラウモン」

 

 

赤き光を纏うメガログラウモン。その中で姿形を竜から騎士へと大きく変化させて行く。

 

 

「来い、赤きロイヤルナイツ、デュークモン……!!」

 

 

ー【デュークモン】LV2(3)BP14000

 

 

赤き光を振り払い、新たに出現したのは、純白の鎧、真紅のマントを翻し、聖なる槍と盾を備えた、赤属性の究極体デジタルスピリット、デュークモン。

 

 

「馬鹿な、ロイヤルナイツ……デュークモンだと!?」

 

 

これまで、どんなにバトルで追い詰められようが、動じなかったあのキングが、それを目の前にしただけで驚愕してしまう。

 

無理もない。何故なら、このカードは世界にただ1枚ずつしか存在しない、伝説の13体のデジタルスピリット『ロイヤルナイツ』の1体なのだから……

 

 

「信じられん。ロイヤルナイツ、デュークモンの現在の所有者は、かの英雄、芽座椎名だ。まさか複製品なのか!?…ロイヤルナイツなどの国宝級に指定されているカードの複製、製造は禁じられている事を知らないのか、この愚か者め……!!」

「違う違う!!……ちゃんと本物だって!!……あ、質問に答えちゃった」

 

 

カードバトラーの風上にも置けないと言わんばかりの鋭い剣幕を見せるキングに、ブイはついうっかり彼の質問に答えてしまう。

 

しかし、いざ目の前のデュークモンを本物だと言われても、にわかには信じ難い。

 

 

「まぁいいや。気を取り直してレッツバトルだ。フラッシュ、創界神ネクサス、松田啓人の【神域】の効果を発揮」

「!」

「ターンに一度、アタックしているデュークモンに、自身のコア5つを追加する事で、相手ライフ2つまでを破壊する」

「なんだと」

 

 

創界神ネクサスの効果がここで発揮。5つものコアがデュークモンへと移動し、そのLVを3に上昇させる。

 

 

〈ライフ5➡︎3〉キング王

 

 

「うおぉぉぉお!!!」

 

 

その瞬間、デュークモンは黄金の輝き、波動を放ち、それがキングのライフバリアを、一気に2つ、消し炭にする。

 

 

 

この一撃、重厚感。まさか本物なのか!?

 

本物のデュークモンだとでも言うのか!?

 

なら、奴の正体は………

 

 

 

「さぁどうした。デュークモンのアタックが終わったわけじゃないぞ」

「くっ……」

 

 

デュークモンと言う、稀有且つ特異なカードを自在に操るブイ。

 

その正体に、キングは薄々勘付き始める。

 

そうだ。目の前で相対するのは、かのDr.Aを屠った………

 

 

「フラッシュマジック、リミテッドバリア」

「!」

「このターン、コスト4以上のスピリットのアタックでは、私のライフは減少しない」

 

 

キングが反射的に発揮させたのは、白マジック「リミテッドバリア」……

 

いくらデュークモンが強力なロイヤルナイツのカードであるとは言え、単体では、この効果を蹴散らしながら勝つ事はできない。

 

 

「フラッシュ、デュークモンのLV2、3のアタック時効果。ターンに一度、トラッシュにある滅龍スピリット、メガログラウモンを手札に戻す事で、回復する」

「デュークモンのアタックはライフで受ける」

 

 

〈ライフ3➡︎3〉キング王

 

 

デュークモンの聖なる槍による刺突が、キングのライフバリアを貫こうとするが、直前で展開された半透明のバリアによって、それは弾き返される。

 

 

「リミバリを持ってたか、流石の引きの強さだ。ターンエンド」

手札:8

場:【デュークモン】LV3

【グラウモン】LV1

【グラウモン】LV1

【松田啓人】LV2(5)

バースト:【無】

 

 

デュークモンもグラウモンも、リミテッドバリアの壁を越えられない、コスト4以上のスピリット。致し方なくブイはターンをエンドとし、キングへとそれを譲る。

 

 

「さて、ライフを2つ減らしたから、2つの質問に答えて貰えるわけだけど……正直、私結構君の事知ってるんだよね」

「なんだと」

「孤児院出身。ノヴァ学園の学園長に養子として迎えられ、バトルスピリッツの英才教育を受ける。そして今は、神童、キング王として、この学園の絶対王者、序列1位に君臨している」

「……」

 

 

無言は肯定を示す。ブイが述べたキングの経歴は、一寸足りとも間違ってはいないと言う事だ。

 

 

「でももちろん、わからない事もある。君の母親、学園長だ」

「!」

「あの人は、何者だ?」

「……」

「推測だと、君に2つの王者を教えたのは彼女だ。私達同様、太陽王者と月王者の存在を知っていて、魔法のような力を使うとまで噂されている。どうも彼女はきな臭い」

 

 

ブイがキングに訊いたのは、彼の母親、己を養子として迎え入れてくれた女性、学園長についてだ。

 

ノヴァ学園の学園長で、基本的に柔和な彼女だが、ブイの発言の通り、魔法のような力を使うなど、人智を超えた噂も多い。故に、ブイに巨悪だと疑われてもおかしくはないのだが……

 

 

「何を疑っている」

「……」

「学園長、我が母は神に選ばれし存在。貴女の言うきな臭さなど、ありはせん」

 

 

君の母が巨悪だと疑っていると言えるわけもなく、質問後は無言を貫くブイ。

 

そんな彼女に対し「我が母は神に選ばれし存在」と、やたらオカルトじみた発言をするキング。

 

 

「悪かったよ。君のお母さんを疑って……質問は1つでいい、君のターンだ」

 

 

キングの発言を理解できていないが、彼の母親を疑った事に対する罪悪感からか、この話を切るブイ。

 

学園最強のカードバトラー、キング王のターンが始まる。

 

 

「貴女が強者である事は認めよう。だが、勝者が変わる事はない」

 

 

[ターン06]キング王

 

 

「メインステップ、魂状態のベビーゴジラを対象に【契約煌臨】を発揮」

 

 

その瞬間、魂状態となっていたベビーゴジラはフィールドへと帰還し、激しい咆哮を張り上げると、その身は爆炎の中へ包み込まれて行く。

 

 

「怪獣の王ゴジラ、その頂点に君臨する苛烈なる帝王!!……バーニングゴジラ、LV2で契約煌臨……!!」

 

 

ー【バーニングゴジラ(1995)】LV2(5)BP22000

 

 

ベビーゴジラを包み込んだ爆炎を熱風として吹き飛ばし、中より出現したのは、胸や背鰭、身体の随所が炎のように赤く燃え上がっているゴジラ、バーニングゴジラ。

 

 

「遂に来たか、バーニングゴジラ」

「煌臨アタック時効果。シンボル2つ以下の相手スピリット1体を焼き払う。消え去れ、ロイヤルナイツ、デュークモン……!!」

 

 

煌臨したバーニングゴジラの口内より放たれる、赤き超高温の熱線。

 

それは瞬く間にデュークモンに直撃し、その純白の装甲を溶解するかと思われたが………

 

 

「滅龍スピリットが対象となった事で、再びグラニの効果を発揮」

「やはりここで使うか」

「1コスト支払って、手札からデュークモンに直接合体。このターン、デュークモンは相手の効果で破壊されず、手札デッキに戻らない」

 

 

ー【デュークモン+グラニ】LV3(7)BP24000

 

 

前のターンにブイの手札へと帰還していた赤のブレイヴ、グラニの効果がここでも発揮。

 

フィールドではグラニがデュークモンの眼前に出現、赤色のバリアを展開し、バーニングゴジラの熱線からデュークモンを守り抜く。

 

 

「効果発揮後、手札から怪獣王ゴジラのカードをバーニングゴジラの煌臨元へ追加。アタックステップ。バーニングゴジラよ、行け」

 

 

キングはこのターンのアタックステップに突入し、バーニングゴジラでアタックの宣言。

 

 

「再び煌臨アタック時効果、シンボル2つ以下のグラウモンを1体破壊」

 

 

二度目の熱線。グラニの加護を受けていないグラウモンは、直撃する直前で溶解し、爆散してしまう。

 

 

「効果発揮後、手札から怪獣王ゴジラを煌臨元に追加」

 

 

キングはバーニングゴジラに計2枚のカードを追加。ベビーゴジラと合わせて3枚となる。

 

 

「煌臨元のベビーの効果。アタック時、カウント+2、効果発揮後、BP5000以下のスピリット1体を破壊する」

 

 

契約スピリットであるベビーゴジラの効果を発揮する、契約煌臨スピリットのバーニングゴジラ。

 

そして、このタイミングで、煌臨元に追加されたカード達が、バーニングゴジラの力の糧となり……

 

 

「バーニングゴジラの【OC】効果。このカードの煌臨元にある全てのゴジラの【OC】効果を得る。煌臨元にある怪獣王ゴジラの【OC】効果、BP破壊効果の上限を+10000し、全体化。それが2回発揮され、このBP破壊効果は25000以下のスピリット全てを破壊するに変更」

「!」

「全てのスピリットを焼き払う」

 

 

その眼光が赤く輝くバーニングゴジラ。すると、先の2回の熱線とは比較しようもない程に強大な爆炎を口内より放つ。

 

放たれた先には、当然ブイのデュークモンとグラウモンがいて……

 

 

「全てを焼き払う?……グラウモンはともかく、グラニの効果を受けたデュークモンはこのターン、効果で破壊されない」

 

 

バーニングゴジラの爆炎が、ブイのフィールドにいる2体のスピリットを飲み込む。

 

グラウモンは呆気なく焼き尽くされ爆散してしまうが、デュークモンだけは前方にいるグラニが発生させている赤いバリアによって難を逃れる………

 

かに見えたが………

 

 

「温い。煌臨元のベビーの更なる効果。私のカウントが8以上の時、アタックしているバトル中、このスピリットの破壊効果は【重装甲】【超重装甲】以外では防げない」

「なに、耐性貫通効果!?」

「バーニングゴジラよ、ロイヤルナイツに裁きの爆炎を下せ……!!」

 

 

キングの命令に応えるかのように、咆哮と共に更に大きく強力な爆炎を放つバーニングゴジラ。

 

グラニのバリアを遂に突破。それをフィールドの遙か上空へと吹き飛ばすと共に、ロイヤルナイツであるデュークモンを爆炎で焼き尽くして見せた。

 

 

「ロイヤルナイツでさえ軽く超えて来るか。グラニはフィールドに残す」

「さらに、私のカウントが10に達したこの瞬間、ベビーの更なる効果が解放。私のスピリット全てに赤シンボル1つを付与。元よりダブルシンボルのバーニングゴジラは、この効果でトリプルシンボルとなる」

 

 

カウントが10になった事で、キングのゴジラデッキの本領が発揮。バーニングゴジラはトリプルシンボルとなり、残り3つのブイのライフバリアを一撃で消し飛ばせる程の火力を得る。

 

 

「トリプルシンボルだろうがなんだろうが、ブロックして仕舞えば関係ないね。生き残ったグラニで……」

「フラッシュマジック、レーザーボレー」

「!」

「効果によりブロック前のグラニを破壊」

 

 

ブイが生き残ったグラニでバーニングゴジラをブロックしようとした直後、キングは1枚の赤マジックを使用。

 

フィールドでは2つの赤いレーザー光線が、グラニを貫き、爆散に追い込んだ。

 

 

「ならこれだ。フラッシュマジック、デルタバリア。このターン、コスト4以上のスピリット、効果では私のライフを0にできない」

「フラッシュマジック、レーザーボレー」

「2枚目だと!?」

「効果により、フィールド以外で効果発揮中の白マジック、デルタバリアの効果を無効化する」

 

 

ならばと使用した白マジック。しかし、キングはそれさえも2枚目のレーザーボレーで無力化してしまう。

 

 

「これで貴女を守るモノは何もない。トドメだ、バーニングゴジラ!!」

「……」

 

 

進行を開始したバーニングゴジラは、ブイの眼前でその脚を止める。

 

 

「ライフで受ける」

 

 

〈ライフ3➡︎0〉ブイ

 

 

そして、咆哮を張り上げながら、その黒き逆鱗纏いし拳で、彼女のライフバリアを一気に3つも砕いて見せた。

 

 

「勝者は常に、この私だ……!!」

 

 

ロイヤルナイツであるデュークモンを操るブイでさえ、難なく倒して見せたキング。

 

フィールドでは、唯一生き残った彼のスピリット、バーニングゴジラが高らかに咆哮を張り上げ、徐々に粒子化し、消滅して行った。

 

 

「ふ、負けたか。流石は序列1位。今までにない、スリリングなバトルだったよ」

「……」

 

 

負けこそしたが、笑みの表情を浮かべるブイ。

 

そんな彼女に対し、キングは、まるで気に食わないとでも言いたげな様子。

 

 

「私は最後、3つのライフを破壊した。よって3つの質問を貴女にできるわけだが」

「おう、どんと来い」

 

 

キングが己の3本の指をブイに見せつけながら、そう告げる。

 

この際だからなんでも答えてやろう。そう意気込んでいたブイだったが………

 

 

「しかし、気が変わった。この質問は預けて置く」

「え?」

 

 

あれだけブイから何かしらの情報を聞き出してやろうとしていたキングの、まさかの発言に、ブイは思わず呆気に取られる。

 

 

「どうしたの急に」

「貴女のバトルからは全く邪気が感じられなかった。それだけの話だ」

「どうしよ、言ってる意味が全然わかんない」

 

 

理由を聞こうとするが、余りにも言葉足らず過ぎてなかなか理解できない。

 

 

「貴女が『悪魔の契約者』と言う輩と何を企てているのか知らないが、1つだけ言っておく。私は月王者、鉄華オーカミには負けん。絶対な」

 

 

宣戦布告をすると、もう用はないと言わんばかりに、キングはブイに背中を見せる。

 

 

「何か勘違いしてない?」

「なに」

「月王者は、君の敵じゃないよ」

「……敵だ。私はそう母に教わったのだ。月王者を持つ者は、いつか世界を滅ぼす。太陽王者は、それを止めるための力だと」

「母に……」

 

 

キングの母、それはこの学園の学園長である。

 

今のキングの話を聞いて、ブイは、やはり学園長は怪しい、きな臭い。そう感じるのと同時に、キングの事が心配にもなった。

 

 

「君は、母の言葉を疑問に思った事はないのか?」

「ない、拾われたあの日から、一度足りとも。そんな事よりも、何故、貴女程のカードバトラーが、こんな所にいるのかと言う事が、余程疑問だ」

 

 

バトル中、ブイは己の質問権を1つ放棄していたからか、彼女の質問にすんなり答えるキング。

 

それを終えると、彼はすっかり夜空を映し出すようになったこの屋上を後にする。

 

 

「一応、報告するか。バイスが出たら嫌だけど」

 

 

1人になったブイ。Bパッドの通話機能を使い、誰かに連絡を取ろうとするが、その相手とは、おそらく何度も話題に上がった『悪魔の契約者』と呼ばれる存在だろう。

 

太陽王者に月王者、ブイに学園長、そして悪魔の契約者。

 

とにかく謎の絶えないノヴァ学園。ただ1つわかる事は、主人公、鉄華オーカミは、これからさらに強くならなければいけないと言う事。

 

 





次回、第76ターン「プレイボール、鉄華団VSウルトラ怪獣」


******


〈補足の鉄華!!〉

この回のキングは、ブイが世界を滅ぼす月王者の力を持つオーカミに加担していると考え、彼女及び彼女の背後にいるであろう何かしらの組織、団体、上位の存在や情報を聞き出そうとしていました。

しかし、彼女の邪気、悪意のないバトルを感じ、悪き事は企んでいないと判断。結局ほとんど質問せずに終わりました。彼女の正体に勘づいてしまったのも1つの理由かもしれません。



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