バトルスピリッツ 王者の鉄華   作:バナナ 

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第76ターン「プレイボール、鉄華団VSウルトラ怪獣」

「ボールボルボルボル!!」

 

 

バットやグローブ、プロ野球のホームランボールが飾られている、とある寮の一室。

 

ここは、あのノヴァ学園序列3位の男子生徒、リーゼントと四角いメガネが特徴的な長身の少年、甲子園ダホウの部屋だ。

 

 

「遂に、遂に完成したぞ。あの憎き鉄華オーカミを倒すためだけに作った、オレ様史上最高の球団を!!」

 

 

いつにも増してテンションの高いダホウ。時折り野球用語を用いる彼、ここで言う「球団」とは、おそらくデッキの事だろう。

 

 

「ボールボルボルボル、今に見ていろ鉄華オーカミ。ライちゃんはもうすぐオレの女になるのだァァァ!!」

 

 

打倒鉄華オーカミ。望む報酬は春神ライ。

 

甲子園ダホウによる魔の手が、2人に迫ろうとしていた。

 

 

 

******

 

 

 

「……」

 

 

時刻は朝方、ホームルーム前。ノヴァ学園にある1年の教室にて、鉄華オーカミは、自分の机に鉄華団達のカードを並べ、沈黙で黙々とデッキを練っていた。

 

全てはこの学園の最強カードバトラー、序列1位のキング王を超えるためだ。

 

 

「お〜いオーカ〜……」

「……」

「お〜い」

 

 

すぐ横で呼び掛けるライに気づかず、己のカード達に夢中のオーカミ。

 

ライはそんな彼に対して頬を膨らませて。

 

 

「むぅ、またこれ?……最近ずっとこんな感じじゃん。折角弁当の味変えて見たから食べさせてあげようと思ったのに」

「フフ、よければライちゃん、このオレが代わりに食してあげようか?」

「あ、コント」

 

 

そんなライに、今度は光裏コントが声を掛けた。彼は今、オーカミと絶賛仲違い中である。最も、当のオーカミはコントの事は全然嫌いではなく、コント側から一方的に嫌っているだけなのだが………

 

 

「ほらほらオーカ〜〜…アンタがこのまま放って置くと、弁当コントが食べちゃうよ〜〜」

 

 

この状況を餌に、オーカミを釣り上げようとするライ。オーカミの事が気に食わないが、ライの事は好きなコントにとって、その光景はただただ見るに堪えないモノであり………

 

 

「ライちゃん、もうこんなバカタレ放って置いて、オレと楽しくお喋りしようぜ、な?」

「え、嫌だけど」

「言葉鋭!!…大体ライちゃん、コイツのどこがいいんだよ、こんな仏頂面で朴念仁で根暗で………」

 

 

止まらないオーカミの悪口。最後に「クソしょうもない奴」と言い掛けたその時、彼は何かに気づいて………

 

 

「うお危ねえぇ!!」

「!!」

 

 

その刹那、オーカミの顔面目掛けて豪速球で飛んで来たのは、掌に収まる程度の白球、野球ボールだ。

 

コントがそれを反射的に飛び出し、片手でキャッチして見せる。オーカミもようやく周囲に目が行くようになった様子。

 

 

「ボールボルボルボル!!…顔面にストライクならずか、残念だぜ」

「オマエ、甲子園アホウ」

「アホウじゃない、オレ様の名前は甲子園ダホウだボォォォル!!」

 

 

騒然とする教室の中、オーカミに向かって豪速球を投げつけたのは、この学園の序列3位、リーゼントとメガネが特徴的な長身の少年、甲子園ダホウ。

 

カッコつけて登場したはいいものの、オーカミに名前を間違われ、出鼻を挫かれる。

 

 

「この野球ボール、なんか書いてやがる……果たし状??」

 

 

ダホウがオーカミへ向かって投げた豪速球。コントがその野球ボールを確認すると、そこには果たし状の黒い文字が刻まれており、コントは思わず「これは最早果たし球では」とコメント。

 

 

「ボールボルボルボル、待たせたな鉄華オーカミ、オマエに決闘を申し込みに来た」

「!!」

「へぇ」

 

 

ダホウの決闘宣言に驚く皆の衆。ただ、挑まれた本人であるオーカミだけは、いつも通りの無表情を見せる。

 

 

「決戦は明日の明朝10時。場所はこの学園で最大級のスタジアム、グランロロスタジアムだ」

「グランロロスタジアム!?……卒業生の成績最優秀者上位2人だけが立ち入れるって言うあの!?」

「ボールボルボルボル、パワーフォースのオレ様に不可能はないのだ」

 

 

グランロロスタジアム。その名前を耳にするなり、コントが驚愕する。

 

そのスタジアムでバトルを行う事は、全ノヴァ学園の生徒達の憧れ。意図も容易くそれができてしまうダホウを見れば、そんな反応になるのも無理はないか。

 

 

「ライちゃァァァん!!……やっと君をお迎えできるよ。こんな奴けちょんけちょんにしてやるから、待っててね」

「あっはは……」

 

 

鼻息荒くライの元へ駆け出したダホウ。その手を握り、オーカミに勝つ事を誓う。そんな彼に対し、ライは苦笑いで流す。

 

 

「既にこのゲートシティの名所、オリハルコンビーチにある高級ホテルを予約してある。もうすぐ来る夏休み、是非2人でオリハルコンビーチを観光しよう」

「オリハルコンビーチ……海、か」

 

 

用意周到なダホウ。オリハルコンビーチと言う世界的にも有名な煌めきの海を構える名所、その近辺にある高級ホテルを予約しているのだと言う。

 

しかし、それが今回は裏目に出る事になる。海と連想したライは、自然とオーカミと水着になり、恋人繋ぎで浜辺を歩くイメージをして………

 

 

「ありかも」

「でしょ!!…絶対行こう」

「ねぇ、リーゼントさん。バトルでオーカが勝ったら、逆に私とオーカだけでそこに行ってもいいですか?」

「え?」

 

 

ライの図々しくも斜め上過ぎる返答に、ダホウは思わず呆気にとらわれる。

 

 

「だめ?」

「ぐぬぬ……!!」

 

 

困るダホウ。大好きなライの言う事は聞いてあげたいのは山々だが、もし仮に万に一つとして自分が負けた場合、最悪の事態になってしまうからだ。

 

 

「い、いいよ」

「やった、ありがとう!!」

 

 

断腸の思いでそれを承諾。ライは諸手を上げて大喜びする。

 

 

「オーカ、明日のバトルで勝ったら夏休み海だぞ、頑張って!!」

「テンション高くない?……つか、オマエだけはどっちが勝っても行けるだろ、ずるくない?」

「ずるくない。オーカと一緒にビーチか、楽しみだな〜」

 

 

まだオーカミが勝つかもわからないと言うのにもかかわらず、既に彼と共にオリハルコンビーチに行く気満々のライ。

 

ダホウは少しだけ心にダメージを受けたものの、メガネを指先で定位置に戻しながら、気を改める。

 

 

「ボールボルボルボル!!……と言う訳だ。精々明日までに良い球団を作って置くんだな。ま、何をしても、オレ様には勝てないだろうが」

「その言葉、そっくりそのまま返してやる。序列が下がる覚悟を決めておけ」

 

 

バトルは明日だと言うのにもかかわらず、互いに火花を散らし、煽り合う2人。おそらく明日は凄まじいバトルになる事は間違いないだろう。

 

 

「……なんでこの場でバトルするのはオレじゃないんだよ」

 

 

そのよそで、表情を暗くしていたコント。小さくその不満を呟いた。

 

 

******

 

 

パワーフォース。それは、序列1位から4位の生徒らで構成された、この学園の実質生徒会とも呼べる存在。

 

ここは、そんな彼らが集う、パワーフォースルーム。最も、今いるのはキング王と新城サンドラの2人だけであるが………

 

 

「ダホウが、鉄華オーカミにバトルを仕掛けたそうだ。決戦は明日、場所はあのグランロロスタジアム。観て行くか?」

 

 

新城サンドラが、序列1位、ノヴァ学園の頂点、キング王に訊いた。

 

既にネットニュースなどにもなっている明日の対戦カード。当然パワーフォースである2人の耳にこの情報が入って来ない訳がない。

 

 

「興味はない。が、行く予定だ。他のパワーフォースの戦いを見届けるのも、私の責務だからな」

「固いな。友のバトルを観るのに、ガッチャな理由なんて要らないだろう」

 

 

責務。などと誠実極まりない発言をするキングに対し、サンドラが親しげな笑みを浮かべながらそう告げる。

 

序列1位に最も近い存在であるサンドラ。実はキングとは幼馴染であり、彼にとっては数少ない友人である。

 

 

「明日のバトル、どっちが勝つと思う?」

「オマエにしては珍しい質問だな。まさかダホウが負けるとでも?」

「普通の生徒ならそうは思はないが、相手が鉄華オーカミなら話は別だ。アイツならダホウを倒しかねない」

「やけにアイツに肩入れするな。何かあったか?」

「肩入れはオマエの方だろ。オマエが鉄華オーカミとバトルしたあの日、ブイと言う女教師に何を吹き込まれた。オマエが除籍を取り消すなんてよっぽどだ」

「………」

 

 

奴が月王者だったなどと、口が裂けても言えるはずがない。

 

一度話して仕舞えば、自分の素性も、いつか鉄華オーカミが世界を滅ぼす存在になるかもしれない事も伝えねばならない。そうなったら、このガッチャな友人は全力で力を貸し、命すらも容易に投げ出してくるに違いない。

 

それが堪らなく嫌なのだ。

 

 

「ダンマリか。まぁいつか話したくなったら話してくれ。明日は9時、パワーフォース専用の特別席で現地集合な」

 

 

最後にそう告げ、サンドラはパワーフォースルームを去って行く。完全に見送った後、キングは「すまない」とだけ呟いた。

 

 

******

 

 

時刻は流れ、日は沈み、夜となった。

 

ノヴァ学園の学生寮。そのとある一室にて、鉄華オーカミが、自分のデスクに向かってカードを並べ、黙々と明日に向けてのデッキを構築していた。

 

同じ部屋を共有している光裏コントは、何のアドバイスも、見る事もせず、ただただ自分のベッドでくつろいでいて……

 

 

「なぁコント。明日のオレのバトル、観に来る?」

 

 

オーカミが、カード達と向き合いながら、寝そべっているコントに訊いた。

 

 

「行くわけねぇだろバカタレ」

 

 

顔も合わせず、即答するコント。キングとバトルしたあの日から、2人の距離感はずっとこんな感じだ。

 

 

「そっか、まぁ気が向いたら来てくれ。あ、そう言えば、今日ボールから守ってくれてありがとう」

「……」

 

 

柔らかい笑みを浮かべ、そう告げるオーカミ。コントは僅かな時間の間だけオーカミの方へと首を向け、何か言おうとするが、結局何も言わず、再びベッドで寝そべった。

 

 

 

******

 

 

翌日。照りつける太陽の下、オーカミはノヴァ学園内にあるスタジアムの中で最も巨大で、全ての生徒の憧れであるグランロロスタジアムの入り口前に立っていた。

 

入場する前だが、多くの歓声がそこから聞こえて来る。生徒ら含め、多くの人達が続々とスタジアムに入って行く様子を見る限り、おそらく相当な数の観客が集まる事が予測できる。

 

 

「遂にダホウとの決戦だな。勝てよオーカミ。そしてオレと同じパワーフォースになるのだ」

「獅堂、なんでオマエがいるんだよ」

 

 

知らないうちにオーカミの横で偉そうな態度を取っていたのは、序列4位にしてパワーフォースの1人、獅堂レオン。

 

オーカミの中学生時代からのライバルだ。

 

 

「無論。オレが貴様のライバルだからだ。わかったか」

「聞くだけ無駄な事だけはわかった」

 

 

相変わらずオーカミのライバルである事を主張し続けるレオン。会話にならないと見たオーカミは、直ぐにこの話題を切り捨てる。

 

 

「オーカミよ。ダホウは見た目と言動こそふざけた奴だが、そのバトルの腕前だけは確かだ。心してかかれ」

「なに急に。まさかわざわざそんな事言うためだけにオレに会いに来たのか?」

「わっはっは、そうだ。オレは貴様のライバル。こんな所で負けてもらっては困るからな」

 

 

直後に緊張感のない欠伸をするオーカミ。そんな彼を見て、レオンは薄く笑みを浮かべて………

 

 

「ふ……だが、取り越し苦労だったか。勝てよ、勝って序列3位に来い。貴様が上にいる方が、オレは燃える」

「あっそ。じゃあな」

 

 

ライバルらしくそれっぽい事を言ってこの場を後にし、会場へと入って行くレオンに対し、なんとも興味なさげな言い方で返答するオーカミ。相変わらずレオンに対しては異常に冷たい。

 

 

「……それじゃ、行くか」

 

 

気を取り直そうと、軽く腕を伸ばし、肩甲骨を動かすストレッチを行うオーカミ。

 

その直後、気合いを入れ直し、己もまたグランロロスタジアムへと足を踏み入れるのであった。

 

 

 

******

 

 

ノヴァ学園の敷地内にある寮の、オーカミとコントの部屋。

 

もう間もなくオーカミとダホウの試合が始まろうと言うのに、コントは未だに自分のベッドの上で寝そべっていた。

 

 

「コント、いる?」

「え……うおライちゃん!?」

「あ、いたいた。なんで驚いてんの」

「そりゃ驚くでしょ、ここ男子寮だぜ!?」

「別に良いでしょ、ここも学園の一部なんだし」

 

 

そんな折、勝手にドアを開けて入室して来たのは、まさかの女子、春神ライ。

 

彼女は全く気にせずコントの部屋に来たが、寮長などに見つかって仕舞えば、流石に大目玉は固いだろう。

 

 

「まぁそんな事よりさ。もうすぐオーカとリーゼントさんのバトルが始まるぞ」

「!」

「私今日のために用意した特別なコスあるんだ。一緒にオーカの応援しよ」

 

 

どいつもこいつも、口を開ければ「オーカ」か「オーカミ」……

 

そんな環境に、コントは嫌気がさして。

 

 

「どいつもこいつも、オーカだのオーカミだの………しねぇよ、アイツの応援なんて。オレはアイツの友達でもなんでもねぇんだ」

「……右手怪我してまで、ボールからオーカを守ってくれたのに?」

「!!」

 

 

寝そべった体制のまま、思わずダホウの豪速球を受けて包帯巻きになった右手を、掛け布団の中へ隠す。

 

 

「最近わかったんだけどさ、コントって凄く負けず嫌いだよね」

「……」

「あの時もそう。オーカに助けられて嫌だったんでしょ?」

「……」

 

 

言い返す言葉が見つからなかった。

 

コント的にはそんな事はないと考えていたが、思っていた100倍、ライの言葉は的を射ていたのだ。

 

 

「それじゃ、観客席、空けて待っておくから、来いよ」

「……」

 

 

結局何も言い返せないまま、ライはコントの元を去って行く。

 

彼女に「来いよ」と言われたコントだが、その後も身動きを1つとして取ろうとせず、ベッドで寝そべったままだった。

 

 

 

******

 

 

ノヴァ学園最大のバトルスタジアム、グランロロスタジアム。

 

明朝10時。そこに集結するほぼ全ての全校生徒、教師。彼らが巻き起こす大きな歓声。

 

そんな皆の視線を釘付けにし、熱狂させているのは、スタジアムの中央で相まみえ、睨み合う甲子園ダホウと鉄華オーカミの2人だ。

 

 

「ボールボルボルボル、よく逃げずに来たな鉄華オーカミ。それだけは褒めてやる」

「逃げないさ。オマエとのバトル、楽しみだったからな」

「楽しみぃ??……笑わせるなよボォル。宣言しよう、鉄華オーカミ、オマエがオレに負ける確率は、120%だ」

 

 

ダホウはこの日のために組み上げた己のデッキをオーカミへ見せつけると、それを左腕に装着したBパッドへ装填した。

 

 

「遂に始まるな、ガッチャなバトルスピリッツが」

「あぁ、そしてもうすぐ、貴様の言うガッチャなカードバトラーがこのパワーフォースに入って来るぞ」

「フ……嬉しそうだな、レオン」

 

 

他のパワーフォースの者達が観戦する、特別なVIPルール。

 

そこでサンドラとレオンが会話していた。レオンは、オーカミがダホウに勝ち、彼の代わりに序列3位としてパワーフォースのメンバーに加わるのを楽しみにしている様子。

 

 

「貴様はどう思うキング」

「……強い方が勝つ。それだけだ」

 

 

キングは、スタジアムにいる鉄華オーカミへ鋭くも冷たい視線を送りながら、レオンにそう言い返す。

 

 

 

鉄華オーカミ。

 

貴様が月王者であるのなら、ダホウに見せてみろ。

 

世界を破滅に導く、その力を………

 

 

 

キングが、オーカミへ向けていた感情は、太陽王者を持つが故の対抗心。

 

それももっと複雑で、歪な………

 

 

「ライちゃん遅いなぁ。もうすぐオーカミ君のバトル始まっちゃうよ」

 

 

一方生徒らと教師が入り混じる通常の観客席。

 

今をときめく人気Bチューバー、桜田メイは、正体を悟られないよう、帽子を深く被り、そこへ着席していた。友人であるライを待っていたのだが………

 

 

「お、いたいたお待たせ〜〜!!」

「あぁライちゃん、どこ行ってた……の?」

 

 

ようやく登場したライ。しかし、メイはその衣装に度肝を抜かれる。

 

 

「え、何その衣装……!?」

「何って、チアコスに決まってんじゃん。今日はこれ着てウチのオーカの応援します!!……頑張れ頑張れオーカ、ファイトファイトオーカ!!」

「この光景を動画にしたらめちゃくちゃ伸びそうだな」

 

 

ライが着用していたのは、全体的に赤が多めな、フリフリのチアガールコス。

 

色んな意味で目立っているが、そんな事はお構いなしで、手につけたボンボンをそれっぽく適当に振り回し、オーカミを応援する。

 

 

「何やってんだ、ライの奴」

「ウッヒョォォォ!!!……ボールボルボルボル、ライちゃん、わざわざオレのためにこんな素晴らしい衣装を着てくれるなんて!!」

 

 

ライの応援に大興奮のダホウ。対して、本当に応援されているオーカミは呆れた表情。

 

 

「まぁなんでもいいや。始めようダホウ、オレと、オレの鉄華団がオマエを倒す」

 

 

そう告げると、オーカミは己のBパッドを左腕に装着。デッキをそこへ装填し、バトルの準備を完了させる。

 

 

「だからオマエは120%オレには勝てないんだよ、行くぞボォル!!」

「あぁ、バトル開始だ!!」

 

 

……ゲートオープン、界放!!

 

 

大歓声の渦の中、その中心で鉄華オーカミと、序列3位、パワーフォースの甲子園ダホウによるバトルスピリッツが、コールと共に幕を開ける。

 

先攻はダホウだ。ライを自分のモノにするべく、ターンを進めて行く。

 

 

[ターン01]甲子園ダホウ

 

 

「さぁプレイカードだ。メインステップ、緑ネクサス、湖に咲く薔薇を配置」

 

 

ー【湖に咲く薔薇】LV1

 

 

ダホウが初手で使ったのはネクサスカード。彼の背後に不気味で巨大な赤い薔薇が咲き誇る。

 

 

「ターンエンド」

手札:4

場:【湖に咲く薔薇】LV1

バースト:【無】

 

 

それ以外の行動は何もせず、ダホウはそのターンをエンド。

 

次はオーカミの最初のターンだ。

 

瞬間、彼の横を風が通り過ぎると、途端にその雰囲気は刺々しくなり、本気モードとなる。

 

 

[ターン02]鉄華オーカミ

 

 

「メインステップ、創界神ネクサス、クーデリア&アトラを配置」

 

 

ー【クーデリア&アトラ】LV1

 

 

「配置時の神託。デッキ上3枚をトラッシュへ送り、その中の対象カード1枚につき、クーデリア&アトラにコア+1」

 

 

オーカミの初手は、鉄華団を支える創界神ネクサス、クーデリア&アトラ。配置時の神託の効果により、デッキを犠牲にコアを1つ追加する。

 

 

「バーストをセットして、ターンエンド」

手札:3

場:【クーデリア&アトラ】LV2(1)

バースト:【有】

 

 

さらにバーストを構え、そのターンをエンドとするオーカミ。

 

互いに静かな滑り出しを切り、バトルは2周目に突入する。

 

 

[ターン03]甲子園ダホウ

 

 

「メインステップ、湖に咲く薔薇を新たに2枚追加だ」

 

 

ー【湖に咲く薔薇】LV1

 

ー【湖に咲く薔薇】LV1

 

 

二度目のターン、ダホウが行ったのは、足場の追加。

 

背後に2、3本目となる巨大な薔薇が咲いた。

 

 

「さらに創界神ネクサス、変身怪人ゼットン星人を配置だぜボゥル!!」

 

 

ー【変身怪人ゼットン星人[初代ウルトラ怪獣]】LV1

 

 

追加で配置したのは、クーデリア&アトラと同じ創界神ネクサス。黒いスーツを着こなす黒い怪人、ゼットン星人が、ダホウの背後に姿を見せる。

 

 

「配置時の神託は無しだ。ターンエンド」

手札:2

場:【変身怪人ゼットン星人[初代ウルトラ怪獣]】LV1

【湖に咲く薔薇】LV1

【湖に咲く薔薇】LV1

【湖に咲く薔薇】LV1

バースト:【無】

 

 

「創界神にコアを置かないのか?」

「ボールボルボルボル。オレ様のデッキは後から死ぬ程召喚してコアを貯めれるからな。やる必要がないのさッ!!」

「……」

 

 

前のサンドラとのバトルでは確かに創界神ネクサスの配置時の神託の効果を発揮させ、トラッシュとコアを+していたダホウ。

 

オーカミはこの行動に疑問を抱きながらも、回って来た己のターンを進めて行く。

 

 

[ターン04]鉄華オーカミ

 

 

「メインステップ、漏影をLV1で召喚」

 

 

ー【漏影】LV1(1)BP3000

 

 

スピリットを初めて召喚したのはオーカミ。

 

彼のフィールドに1つ目でバスターソードを所持した鉄華団のモビルスピリット、漏影が召喚される。

 

 

「召喚時効果、オレのデッキ上3枚を破棄、その後トラッシュから鉄華団カード1枚、手札に戻す。オレはこの効果でオルガを手札へ」

 

 

漏影の召喚時効果が発揮。オーカミは、トラッシュからもう1つの創界神ネクサス、オルガ・イツカのカードを回収し、手札に加えた。

 

 

「クーデリア&アトラの【神域】の効果。鉄華団の効果で自分のデッキを破棄した時、トラッシュから紫1色のカードをデッキ下に戻し、1枚ドロー」

 

 

漏影の召喚時効果に、クーデリア&アトラの【神域】が誘発。オーカミは要らないトラッシュのカードを1枚デッキ下に戻し、1枚のカードをデッキ上からドロー。

 

 

「今加えたオルガ・イツカを配置」

 

 

ー【オルガ・イツカ】LV1

 

 

「配置時の神託。デッキ上を3枚トラッシュへ。オルガにコア+2だ」

 

 

2種目の創界神ネクサスを配置。鉄華団デッキにおいてのアドバンテージ、トラッシュを肥やしつつ、コアを+する。

 

 

「さらにランドマン・ロディをLV1で召喚」

 

 

ー【ランドマン・ロディ】LV1(1S)BP1000

 

 

追加で呼び出したのは、丸みを帯びた装甲を持つ、小型のモビルスピリット、ランドマン・ロディ。

 

 

「アタックステップ、漏影でアタック。そのフラッシュタイミングでオルガの【神域】の効果を発揮。オレのデッキ上3枚を破棄する事で1枚ドロー。クーデリア&アトラの【神域】が誘発し、トラッシュのカード1枚をデッキ下に戻して、さらにドローだ」

 

 

アタックステップに入るオーカミ。漏影でアタックしたフラッシュタイミングで、オルガとクーデリア&アトラのドローコンボが炸裂。

 

大量ドローに加え、トラッシュのカードの枚数を大きく伸ばす。

 

 

「ボールボルボルボル!!……アタックはライフで受けてやる」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉甲子園ダホウ

 

 

漏影がバスターソードを振い、ダホウのライフバリアを玉砕。オーカミに先制点を齎す。

 

 

「ターンエンドだ」

手札:5

場:【漏影】LV1

【ランドマン・ロディ】LV1

【オルガ・イツカ】LV2(3)

【クーデリア&アトラ】LV2(3)

バースト:【有】

 

 

フィールドにカードを展開しつつ、手札とトラッシュを増やしたオーカミ。

 

一度そのターンをエンドとし、ダホウの様子を伺う。

 

 

[ターン05]甲子園ダホウ

 

 

「ライフを中途半端に破壊するとは、愚の骨頂だなボゥル。メインステップ、さぁここからはスーパーダホウタイムだ!!」

 

 

ダホウが「スーパーダホウタイム」を宣言すると、彼は1枚のカードを手札から引き抜き、それを己のBパッドへと叩きつける。

 

 

「最凶の指揮官、最高な監督。悪質宇宙人メフィラス星人、LV2で召喚」

 

 

ー【悪質宇宙人メフィラス星人[初代ウルトラ怪獣]】LV2(2)BP8000

 

 

どこからともなくフィールドに出現したのは、ダホウが「監督」と呼ぶ、黒い皮膚を持つ巨大な宇宙人、メフィラス。

 

 

「来たな、デッキの中核」

「メフィラス監督の召喚アタック時効果……と言いたい所だが、その前にネクサス、湖に咲く薔薇の効果を発揮。コスト4以上の緑のスピリットを召喚した時、自身に1つコアブーストする。それが3つだ」

「なに」

「ボールボルボルボル!!…コアを3つブーストだぜボゥル!!」

 

 

先に配置していた湖に咲く薔薇の効果がここで発揮。コアが湖に咲く薔薇に1枚ずつ、計3つが追加される。

 

とどのつまり、ダホウは、コスト4以上の緑のスピリットを召喚する度に、コアを3つも増加できると言う事。これを3つも配置した時点で、コアはほぼ無限に存在すると言っても過言ではなく………

 

 

「さらにここでメフィラス監督の召喚アタック時効果、ターンに一度、デッキ上2枚オープンし、その中にある初代ウルトラ怪獣を好きなだけノーコストで召喚できる」

 

 

メフィラスは何もない空間から四角い箱を作り出すと、そこへ手を突っ込み、2枚のカードを引き抜く。そしてそのカードは、実際にダホウがデッキ上からオープンしたカードと連動しており……

 

 

「ボールボルボルボル、オレ様が引いたのは初代ウルトラ怪獣、アントラーとネロンガ。よってこの2体をノーコスト召喚だぜボゥル!!」

 

 

ー【磁力怪獣アントラー[初代ウルトラ怪獣]】LV1(1)BP5000

 

ー【透明怪獣ネロンガ[初代ウルトラ怪獣]】LV1(1)BP5000

 

 

メフィラスの引いたカードが変化し、スピリットとなる。クワガタ虫のような大顎を持つアントラーと、牛のような角に電気を纏わせるネロンガが、ダホウのフィールドへと姿を現した。

 

 

「新たなスピリットを召喚した事により、再び湖に咲く薔薇の効果で3つコアブースト。アントラーの召喚時効果、ゼットン星人の効果と合わせ、自身に3つコアブースト。さらにネロンガの召喚時効果、トラッシュのコアをボイドに置く事で、オレはデッキから2枚のカードをドロー!!」

 

 

ダホウはアントラーとネロンガの効果をそれぞれ発揮。アントラーの効果で3つのコアを増やし、ネロンガの効果で2枚のカードを得た。

 

 

「まだまだ終わらないぜボゥル。2体目のメフィラス監督を召喚だ」

「!」

 

 

ー【悪質宇宙人メフィラス星人[初代ウルトラ怪獣]】LV2(2)BP8000

 

 

ダホウは手札から2体目のメフィラスを召喚。

 

オーカミは一瞬で察する。また同じ事が繰り返される、と。

 

 

「湖に咲く薔薇の効果でコアブーストし、メフィラス監督の召喚アタック時効果!!」

 

 

再びダホウのデッキ上から2枚のカードがオープンされる。

 

そのカードはまたしても両方、初代ウルトラ怪獣のカード達で………

 

 

「ボルボルボルボゥル!!…… オレがオープンしたのはバルタン星人と、当デッキ4番のエース、宇宙恐竜ゼットン!!……2体をノーコストでボゥル!!」

 

 

ー【宇宙忍者バルタン星人[初代ウルトラ怪獣]】LV2(2)BP10000

 

ー【宇宙恐竜ゼットン[初代ウルトラ怪獣]】LV1(1)BP12000

 

 

地響きと共に、ダホウのフィールドへと招集されたのは、蝉のような見た目に大きなハサミが特徴的なスピリット、バルタン星人と、無機質な音で鳴く、カミキリムシのようなツノを持つ宇宙恐竜、ゼットン。

 

 

「湖に咲く薔薇の効果でコアブースト、バルタン星人の召喚時効果。漏影とランドマン・ロディの2体を重疲労させ、2枚ドロー」

「くっ……」

 

 

バルタン星人は登場するなり、ハサミのような手からエネルギー弾を発射。それに被弾した漏影とランドマン・ロディは両膝をつき、二度の回復でようやく回復状態となる、重疲労状態へと陥る。

 

 

「さらにさらにボゥル!!……2体目のネロンガを召喚。湖に咲く薔薇の効果でコアブースト、ネロンガの召喚時効果で2枚ドロー。3体目のネロンガを召喚。湖に咲く薔薇の効果でコアブースト、ネロンガの召喚時効果で2枚ドロー」

 

 

ー【透明怪獣ネロンガ[初代ウルトラ怪獣]】LV1(1)BP5000

 

ー【透明怪獣ネロンガ[初代ウルトラ怪獣]】LV1(1)BP5000

 

 

止まぬ展開。止まぬコアブースト。

 

通常のスタジアムよりも遥かに広大な敷地を有する、このグランロロスタジアムに、次々と巨大な怪獣スピリット達が敷き詰められ、窮屈に感じてしまう程に圧迫されて行く。

 

 

「仕上げに2体目のゼットンを召喚だボゥル!!」

 

 

ー【宇宙恐竜ゼットン[初代ウルトラ怪獣]】LV1(1)BP12000

 

 

増えた手札とコアを使い、ダホウは2体目となるゼットンを召喚。このタイミングでも湖に咲く薔薇の効果が発揮され、3つのコアブースト。

 

これで彼のフィールドには、合計で9体のスピリット、野球ができる人数が揃った。

 

 

「コアブーストとドローを繰り返し、1ターンで大量にスピリットを展開する。初めて見た、これがノヴァ学園の序列3位、パワーフォースの1人、甲子園ダホウの必勝パターン……!!」

「フレフレオーカ!!……頑張れ頑張れオーカ!!」

 

 

ダホウの大量展開に会場がさらに沸き上がる中、その恐ろしい戦法に戦慄したメイがそう呟いた。

 

その横で、ライは何の緊張感もなく、未だにボンボンを振ってオーカミを応援している。

 

 

「……これがオレを120%倒せる戦術か?」

「な訳ないだろ。まだまだこんなモンじゃない。お楽しみはこれからだぜ、ボールボルボルボル!!」

 

 

大量のスピリットを従えたダホウの、勝ち誇ったような奇怪な笑い声がこだまする。

 

まだ何か別の戦術を隠し持っているであろう反応を見せる彼。このバトル、どうやら一筋縄では行かないようだ。

 

 





次回、ノヴァ学園編最終回、第77ターン「逆転、結束と絆」




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