バトルスピリッツ 王者の鉄華   作:バナナ 

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第77ターン「逆転、結束と絆」

ノヴァ学園生の誰もが憧れる舞台、グランロロスタジアムにて、遂に始まった鉄華オーカミと甲子園ダホウによるバトルスピリッツ。

 

ほぼ全ての全校生徒が見守るそのバトルの、第5ターン目。ダホウが動く。一瞬にして大型のスピリットを9体も揃え、パワーフォースたる実力をオーカミに見せつけて………

 

 

******

 

 

「ボールボルボルボル!!……見たか鉄華オーカミ、これぞスーパーダホウタイム。オレ様に掛かれば大型スピリット達の大量展開など朝飯前だぜボゥル!!」

「……」

 

 

沸き上がる歓声の中、オーカミに対して勝ち誇ったように叫ぶダホウ。

 

それもそのはず、今の彼のフィールドのスピリットは、広大なグランロロスタジアムを埋め尽くしてしまう程に多い。この時点で勝利を確信しても、何ら不思議ではない。

 

 

「アタックステップ。ゼットン2体で、疲労しているオマエのスピリット2体に指定アタック」

「ッ……ゼットンのLVを2に上げないのか?」

 

 

疲労しているスピリットに指定アタックできる、初代ウルトラ怪獣のゼットン。

 

LV2から、バトル勝利時に相手ライフ2つを破壊する効果を持っているのだが、何故かダホウはいずれもLV1のままでアタックを仕掛けた。

 

フィールドでは、オーカミのスピリット、漏影とランドマン・ロディに向けて、ゼットンが超高熱の火の玉をバットで殴打。マッハの速度で飛んで行った火の玉は、そのまま漏影とランドマン・ロディに直撃。2体はたちまち爆散してしまう。

 

 

「ランドマン・ロディの破壊時効果、疲労状態のスピリット1体を破壊して1枚ドロー」

「無駄だぜボゥル。ゼットンは自身が疲労状態の時、相手の効果を受け付けない」

 

 

ただカードだけはドローできる。オーカミはランドマン・ロディの効果を発揮させ、デッキ上から1枚のカードをドローした。

 

そして、ダホウが残ったスピリットで総攻撃を仕掛けると見て、己の手札を握り、身構える。

 

だが……

 

 

「ボールボルボルボル、ターンエンド」

手札:6

場:【悪質宇宙人メフィラス星人[初代ウルトラ怪獣】LV2

【悪質宇宙人メフィラス星人[初代ウルトラ怪獣】LV2

【宇宙恐竜ゼットン[初代ウルトラ怪獣]】LV1

【宇宙恐竜ゼットン[初代ウルトラ怪獣]】LV1

【宇宙忍者バルタン星人[初代ウルトラ怪獣]】LV2

【磁力怪獣アントラー[初代ウルトラ怪獣]】LV1

【透明怪獣ネロンガ[初代ウルトラ怪獣]LV1

【透明怪獣ネロンガ[初代ウルトラ怪獣]LV1

【透明怪獣ネロンガ[初代ウルトラ怪獣]LV1

【変身怪人ゼットン星人[初代ウルトラ怪獣]】LV2(7)

【湖に咲く薔薇】LV1

【湖に咲く薔薇】LV1

【湖に咲く薔薇】LV1

バースト:【無】

 

 

「なに」

 

 

ダホウが取った選択は、まさかのターンエンド。

 

基本的には、一度のターンで全てのライフを破壊し切る程のスピリットを用意しなければライフにアタックしない彼だが、今は見ての通りの大所帯。いつもなら間違いなくライフを狙いに行くタイミングであるが……

 

 

「どうした、オマエのターンだぜボゥル」

「わかってる」

 

 

何か他に狙いがあるのか、そう勘繰るオーカミだが、今はとにかく巡って来た己のターンを進めるしかなくて。

 

 

[ターン06]鉄華オーカミ

 

 

「メインステップ。天空斬り裂け、未来を照らせ、ガンダム・バルバトスルプス、LV2で召喚!!」

 

 

ー【ガンダム・バルバトスルプス】LV2(2)BP8000

 

 

天空よりオーカミのフィールドへと降り立つのは、鉄華団の象徴たるモビルスピリット、バルバトスの進化形態の1種、バルバトスルプス。

 

 

「アタックステップ、ルプスでアタック。その効果でデッキ上2枚を破棄。その中にある鉄華団1枚につき、コア3個以下の相手スピリット1体を破壊できる」

 

 

当然破棄されたのは、いずれも鉄華団カード。これにより、2体のスピリットの破壊が可能となる。

 

 

「バルタンとメフィラスを破壊だ!!」

 

 

ルプスは、両腕から砲身を展開し、そこから鉛玉を連射。ダホウのフィールドにいるバルタンとメフィラス1体を撃ち抜き、爆散へと追い込む。

 

 

「クーデリア&アトラの【神域】が誘発。鉄華団の効果でデッキが破棄された時、トラッシュの紫1色のカードをデッキ下に戻し、デッキ上から1枚ドロー」

「ボールボルボルボル、それがどうした。オレ様のフィールドには、まだ7体もスピリットが残ってるぜボゥル。フラッシュ、ゼットン星人の【神域】の効果を発揮」

「!」

「このネクサスのコア3つ、もしくはトラッシュのコア2つをボイドに置く事で、疲労状態の相手スピリット1体を手札に戻す。オレはトラッシュのコア2つをボイドへ置き、アタック中のバルバトスルプスをオマエの手札に戻すぜボゥル!!」

 

 

前のターンの召喚ラッシュによって散々コアが+されたゼットン星人の効果を発揮するダホウ。

 

フィールドでは、ゼットン星人が右手を天に翳すと、ルプスの上空より、輪っか状のビーム光線が降り注ぐ。それに被弾したルプスは、堪らず粒子化し、オーカミの手札へと強制送還されてしまう。

 

 

「これでオマエのスピリットは消えたぜ」

「……フラッシュ、オルガの【神域】を発揮。オレのデッキ上3枚を破棄して1枚ドロー。クーデリア&アトラの【神域】も誘発。トラッシュのカードを戻して、さらにドロー」

 

 

スピリットは消されたものの、残ったフラッシュタイミングで創界神ネクサス達の効果を発揮させるオーカミ。鉄華団デッキの肝となる、手札とトラッシュを同時に増やしていく。

 

しかし、それを見るなり、ダホウは、まるでそのオーカミの行為が愚策だと言わんばかりに、嘲笑を浮かべて……

 

 

「ボールボルボルボル、またデッキを犠牲に手札とトラッシュを増やすか」

「何がおかしい」

「おかしいだろ。デッキはバトルスピリッツの命だからなぁ」

「……ターンエンド」

手札:10

場:【オルガ・イツカ】LV2(4)

【クーデリア&アトラ】LV2(4)

バースト:【有】

 

 

フィールドのスピリットは消されても、内に秘めた闘志は消えないオーカミ。

 

会場全体が完全にダホウの勝ち確ムードになっている中、ターンを終え、その彼へとターンを渡す。

 

 

******

 

 

視点は切り替わり、ここはノヴァ学園が有する土地内にある男子寮。その一室、オーカミとコントの部屋。

 

オーカミが今尚パワーフォースであるダホウへと挑戦しているにもかかわらず、コントは未だ己のベッドの上に寝転がり、黄昏ていた。

 

 

「コントいるか?」

「うおブイ姉ぇ!?……なんで、ここ男子寮ですけど!?」

「なんでって、別にいいでしょ、私この学園の先生なんだし」

「いや、そう言う問題?……まぁ、ライちゃんよかあるか」

 

 

部屋のドアを勢い良く開け、彼の前に現れたのは、担任の若き女教師ブイ。

 

 

「今ちょうど、オーカミもダホウがバトルしてるけど、応援しに行かなくていいの?」

 

 

いつものサングラスを、指先で定位置に戻し、ブイが訊いた。

 

オーカミと言う名前に、コントはまた不機嫌になる。

 

 

「ッ……いいんすよあんな奴、ダホウにボコボコに負けちまえば」

「……」

「そうすりゃアイツも少しは、身の程ってモノを弁えるでしょ」

 

 

コントにそう告げられると、ブイは何を思ったのか、優しく彼に微笑んで………

 

 

「ふふ……苦しそうだな」

「!!」

 

 

静かに、そう言い返す。

 

 

「苦しそうって、どこが!!」

「言動、身振り手振りから全部さ。私、こう見えて結構いろんな奴とバトルして来たけど、今のコントは、自分がオーカミより弱いのは認められない。でも強くなる努力はしたくない、どうしようって感じだ」

「ッ……そんな事」

 

 

ブイの言葉に、コントは言葉を詰まらせつつも、否定の旨を苦しそうに伝える。

 

 

「そんな事あるさ。強くなりたいって思ってる奴が、こんな部屋に引きこもったりするわけない。君は、自力で前に進み続けるオーカミに嫉妬してるんだ。だから最近冷たく当たってる」

「……オレは」

 

 

爽やかな表情だが、なかなか厳しい事を言い続けるブイ。

 

ただもちろん、コントが嫌いだからで言い続けている訳ではない。彼に立ち直って欲しいと言う、愛故だ。

 

 

「でもその気持ち、正直めっっっちゃわかるなぁ!!」

「え」

「子供の頃、どうやってもバトルで勝てない奴がいてさ。しかも当の本人は全然私なんか見てくれなくてね。それが堪らなく嫌で、よく気を引くためにイタズラしちゃってたな。今のコントとほぼ同じだ」

「……」

 

 

オーカミのベッドに横たわりながら、今のコントの気持ちに共感を示すブイ。彼女が脳裏に思い浮かべるのは、昔の記憶、子供の頃の自分。

 

その記憶の片隅には、茶髪で鋭い目つきの少年がいて………

 

 

「でも、部屋で縮こまるのはよくないぞ。そんなことしてると、オーカミはどんどん先に行っちゃうからね」

「……」

 

 

ブイはすぐさまベッドから立ち上がると、コントにそう告げる。

 

ぐうの音も出ないコントは、苦い表情を見せる。

 

 

「そう言うわけだ。いじけてないで、さっさと出て来いよ」

 

 

最後にそう言い切ると、ブイは部屋を後にする。ただ1人残されたコントは、激しい罪悪感に駆られて……

 

 

「オレは……」

 

 

想起する。中学時代、地元で最強だった頃。

 

向かう所敵無しで、人生で1番バトルスピリッツに夢中になっていた、あの日々。

 

 

「いつからだ。こんな余計な事ばっかり考えるようになっちまったのは」

 

 

己ならノヴァ学園で最強になれる。そう思って入学した。

 

しかし現実はパワーフォースに怯え、友人に先を越されて行く毎日。

 

さらには努力もせず、怠惰を極め、その友人を「バカタレ」だと罵る。

 

最低だ。なんて器の小さく、惨めな奴だ。己の未熟さと愚かさにに腹わたが煮えくり返る。

 

 

「バカタレはオレの方だ。そんなの、最初からわかってたのに……!!」

 

 

コントはようやく重たい腰を上げ、ベッドから離れ、部屋を飛び出した。

 

 

 

******

 

 

「フレッフレオーカ、頑張れ頑張れオーカ!!」

 

 

視点は戻り、グランロロスタジアム。オーカミがターンを終え、今まさにダホウが己の第7ターン目を開始しようとしている時だ。

 

スタジアムの観客席で、チアガールの応援服を着用した春神ライは、未だにボンボンを振りながらオーカミを応援していた。

 

 

「……そろそろ疲れない?」

 

 

横にいる帽子を深く被ったライの友人、今をときめく人気Bチューバー桜田メイが、ライに訊いた。

 

 

「疲れた。休むよ」

 

 

そう言われ、いい加減疲れを感じ始めたライは、さっきとはまるで別人のようにテンションを下げ、その場に腰を下ろす。

 

 

「なかなか絶望的な状況だね。正直、オーカミ君に勝ちの目はもう……」

 

 

ダホウのフィールドを埋め尽くしているスピリット達へと視線を送りながら、メイがそう告げる。

 

ここまでの圧倒的に戦力差が広がれば、そう考えるのは当然であり、もちろん勝てる見込みなど、感じ取れるわけがない。

 

 

「勝つよ」

「え」

 

 

ただ、春神ライだけは、鉄華オーカミの勝利を疑っていなかった。

 

 

「どんなに劣勢な時でも、力の限り戦って、最後には勝つ。それがオーカだ」

 

 

ライが脳裏に思い浮かべたのは、およそ2年前。悪の双璧、徳川フウと嵐マコトから、自分を命掛けで救い出してくれた、あの日の出来事。

 

力の限り戦い、食らい付き、最後には勝利を収めて見せた、あの瞬間。

 

 

「後オーカは、私のためなら絶対勝ってくれるんだよね!!」

「それはちょっと重たすぎない?」

 

 

冗談か本気かはさておき、オーカミへの愛情が重たすぎるライ。

 

しかし、2年前の出来事を思い出せば、惚れるなと言う方が無理な話ではある。

 

 

 

ー………

 

 

 

「勝負あったな。オレは彼を買い被りすぎていたようだ」

 

 

一方、同じくオーカミとダホウのバトルを、専用のVIPルールで見届けている、他のパワーフォースの3人。

 

その内の序列2位、新城サンドラが、そう呟く。オーカミに期待していた彼だが、どうやらこの現状を見て失望してしまったらしい。

 

 

「甘いなサンドラ。オーカミの勝負強さはこんなモノではない」

 

 

それに対して、序列4位、獅堂レオンが言い返す。彼もまた、オーカミの勝利を信じて止まない様子。

 

 

「奴の厄介な点は、相手ターンに強烈なカウンターを仕掛けて来る事だ。ダホウが本格的に奴のライフを減らしに掛かった瞬間、会場の空気が一変するぞ」

 

 

今までのオーカミのバトルを思い返して見れば、確かにレオンの言う通り「本日のハイライトカード」などを駆使し、相手ターンにカウンターを決めて逆転する展開が多い。

 

 

「だがそれは、ダホウがアタックし、鉄華オーカミにフラッシュタイミングやバーストの発動タイミングが与えられた場合の話だ」

「なに、それはどう言う意味だキング」

「そのままの意味だ。見ていればわかる」

 

 

笑わない男、序列1位のキング王が、意味深な発言をする。

 

どうやら彼だけは、ダホウの真の狙いを理解しているようであり………

 

 

 

ー……

 

 

 

「このまま一気に決めてやるぜボゥル!!」

 

 

ようやく視点は元に戻り、鉄華オーカミと甲子園ダホウのバトル。

 

パワーフォースとして、序列3位として、会場にいるほぼ全ての生徒らからの期待を一心に背負い、ダホウは第7ターン目を開始する。

 

 

[ターン07]甲子園ダホウ

 

 

「メインステップ。オレはオマエを確実に倒すために、オマエのデッキを隅々まで分析して来た」

「へぇ」

「オマエはカウンター系のカードを多く仕込む傾向がある。トラッシュのカードを見る限り、今回もそうなんだろ?」

「……」

 

 

このターンのメインステップの開始直後、ダホウがオーカミに訊いた。

 

オーカミは無言だが、それは肯定を意味している。事実として、ダホウの言う通り、彼のトラッシュには、バーストカードや、ライフ減少時などをトリガーに手札から使える誘発カードなどが多く確認できる。

 

 

「だがそれも、使えなければ意味がない。見せてやるぜボゥル、オレ様が導き出した、オマエを120%葬る戦術を!!」

 

 

そう宣言すると、ダホウは己の手札から1枚のカードを引き抜き、それをBパッドへと叩きつける。

 

そのカードは、言葉通り、オーカミを倒すためだけに採用した、とっておきの切札であり………

 

 

「機動要塞キャッスル・ゴレム!!……LV1で召喚!!」

 

 

ー【機動要塞キャッスル・ゴレム】LV1(1)BP6000

 

 

「!!」

 

 

地響きと共に地中から出現したのは、まさかの緑属性ではなく、青属性のスピリット。文字通り要塞の如く姿をした巨兵、キャッスル・ゴレム。

 

その名が轟くなり、誰もがダホウのやろうとしている事を理解したのか、会場中からすぐさま歓声と言う名の爆音が響き渡る。

 

 

「ボールボルボルボル!!……どうだ驚いたか鉄華オーカミ。キャッスル・ゴレムはオレのネクサス1枚につき5枚、最大15枚のカードをデッキから破棄する。今のオレのネクサスは4枚、対してオマエのデッキは、散々自分から破棄して来た事で既に15枚を切っている」

「……」

「つまり、つまりつまり!!……オマエのデッキアウトでオレの勝ち確定って事だぜボゥル!!」

 

 

デッキアウトによる勝利を確信し、また奇怪な笑い声を上げるダホウ。

 

己の用意して来た戦略がここまで効果を発揮できて、とても気持ちが良いのだろう。

 

 

「なるほど。ダホウの奴考えたな。鉄華団はその性質上、ターンが進むに連れ、より多くのカードを消耗してしまう。故にデッキアウト戦術なら、鉄華オーカミに反撃の隙を与えず、確実に詰みまで追い詰められるわけだ」

「小癪な手段を取ったなダホウ。見損なったぞ」

 

 

パワーフォース専用のVIPルームでは、サンドラが冷静にダホウの戦術を解析、理解する。逆にレオンは、その戦術に対して嫌悪感を示していた。

 

 

「自分からデッキを破棄しまくったのが災いしたなぁ!!……オマエは今からデッキアウトで敗北し、この学園で恥を晒すのだ。ボールボルボルボル、ボールボルボルボル!!!」

 

 

 

オォォォカミィィィ!!!

 

 

 

「!!」

 

 

ダホウの奇怪な笑い声を、バトルを遮ったのは、ある1人の少年の声。

 

その声の主は、オーカミがよく知る人物であり……

 

 

「コント?」

「ごめんなァァァァ!!!……オレがバカタレだったァァァァ!!!!」

 

 

そう。その人物は、光裏コント。

 

無我夢中で走って来た事で枯れ果てた息。それを振り絞り、彼は涙目になりながらも、叫ぶ。

 

 

「オレ、ドンドン前に進んで行けるオマエが、羨ましくてぇぇぇぇえ!!!」

「……」

「オレを助けてくれたあの時ィィィ!!……オレがオマエよりも前に進んでいる感じが、嫌だったんだァァァァ!!……悔しくて悔しくて、しょうがなかったんだァァァァァァァ!!!!」

「コント……」

 

 

言っている意味がわからないと、周囲の者達がくすくすと笑い始める。

 

ただ、唯一観客達の中で、その言葉の意味がわかっていたライは、貰い泣きで薄らと涙を浮かべていた。

 

 

「今更、オマエがオレの事を許してくれるかわかんねぇ!!!……でもぉ、これだけは言わせてくれぇぇぇぇえ!!!」

「……」

「勝て、勝てよォォォォ!!……こんな所で負けんじゃねぇぇぇぇぇえ!!!……オマエは、オレの、ライバルだろうがァァァァァァァァ!!」

 

 

周囲に笑われる。恥をかく。

 

あれだけ毛嫌いして来た事を堂々と行ってでも、オーカミにエールを送るコントのその姿は、まさに友の鑑であると言える。

 

そして、そんな彼の気持ちに応えないオーカミではない。

 

 

「とんだ大根役者だなぁ。今更応援団が1人増えた所で結果は何も変わらないぜボゥル。キャッスル・ゴレムの召喚時効果を発揮。デッキアウトでオレ様の勝ちだ、ボールボルボルボル!!!」

 

 

遂にダホウは召喚したキャッスル・ゴレムの召喚時効果を発揮。

 

これにより、オーカミのデッキのカード達は全て消し飛び、デッキアウトでダホウの勝ち。

 

 

「それはどうかな」

「なんだと?」

「本日のハイライトカードだ……!!」

 

 

そうなると思われた直後、オーカミは1枚のカードを手札から引き抜く。

 

本日のハイライトカードと称されたそのカードは………

 

 

「マジック、アフターイメージ……!!」

「黄属性だとぉぉぉお!?」

 

 

そのカードに、会場にいるほとんどの者達が驚愕した。そうでないのは喜んでいるライと、不服そうな様子でそれを眺めていたキング王くらいか。

 

それもそのはず。たった今オーカミが使用したカードは、こんな状況でしか使えない、とんでもないピンポイントメタカードなのだから。

 

紫属性ですらない事が、それをよりを助長させる。

 

 

「当然知ってるよな。これは手札から破棄する事で、そのターン中の、相手によるデッキ破棄効果を全て無効化するカードだ」

「馬鹿な、なんでオマエがそんなカードを」

「対戦相手のデッキを分析していたのが、オマエだけかと思ったか?」

「!!」

「オレも、オマエの初代ウルトラ怪獣デッキをずっと分析してたんだ。ドローとコアブーストが得意なそのデッキと、オマエの性格なら、必ずデッキアウト戦術で来ると読んでいた」

 

 

余りにも華麗すぎるピンポイントなカードによるカウンター。オーカミの異常な読みの鋭さに、会場全体が沸き上がる。

 

逆に、対面しているダホウは、明らかな動揺を見せて……

 

 

 

コ、コイツ、紫属性以外のカードを………

 

しかもデッキアウト戦術を予測していただと!?

 

意味がわからん。コイツの頭はどうなってやがる!?

 

 

 

「さっきまでの威勢はどうした。オレに120%勝てるんだろ?……見せてくれよ、オマエの次の戦術を」

「ぐっ……」

 

 

そんなモノ、ありはしない。

 

キャッスル・ゴレムを止められた時点で、ダホウに残された手段は、今いる8体のスピリットで総攻撃を仕掛ける物量作戦のみ。

 

しかし、それを行って仕舞えば、自分で予測していた通り、フラッシュやバーストなどで何をされるかわかったモノではない。

 

 

 

まさかダホウ様が負ける?

 

あのパワーフォースが負けるのか!?

 

ちょっと見てみたいかも〜〜

 

 

 

歓声に混じって、そんな野次が耳に入って来る。

 

その瞬間、彼は焦燥感に駆られ、思考するのを辞めた。

 

 

「パワーフォースに負けは許されない。アタックステップ、ゼットンでアタックだボゥル!!!」

 

 

戦術を読まれた焦りから、残ったコアでLVを上げるのも忘れ、そのままアタックステップへと直行してしまうダホウ。

 

そんな彼の指示を受け、ゼットンは再び超高温の火の玉をバットでかっ飛ばし………

 

 

「ふ……そのアタックを待ってた」

「!!」

「ライフで受ける」

 

 

〈ライフ5➡︎3〉鉄華オーカミ

 

 

真っ赤な炎の打球が、無傷だったオーカミのライフバリアを一気に2つ砕く。

 

しかしその行為は当然、オーカミの予測通りの展開であり………

 

 

「ライフ減少時の手札誘発カード、デスアタラクシア。これを3枚使う!!」

「3枚ぃ!?」

「その効果で、アタックしていないゼットン、メフィラス、キャッスル・ゴレムのコア3個をリザーブに置き、消滅」

 

 

まさかの同名マジック3枚同時使用。オーカミのフィールドより拡散される紫の波動が、ダホウの3体のスピリットの体内にあるコアを消し飛ばし、消滅させる。

 

 

「さらにライフ減少によりバースト発動、ガンダム・バエル!!」

「!!」

「効果により、自身を召喚」

 

 

ー【ガンダム・バエル】LV1(1)BP8000

 

 

追い討ちを掛けるオーカミのバースト。

 

それが勢い良く反転すると、フィールドに、数多の魔を従えし首魁、白き装甲を持つモビルスピリット、ガンダム・バエルが降り立つ。

 

 

「召喚時効果、互いのデッキ上3枚をオープンし、その中にあるコスト6以下の紫のスピリット、ブレイヴをノーコスト召喚できる」

 

 

バエルの効果により、互いに3枚のカードがデッキ上からオープンされる。

 

キャッスル・ゴレムのようなイレギュラーがない限り、基本的に緑のスピリットが大半を占めるダホウのデッキに、紫のスピリットが見つかるわけがないが、オーカミは違う。今回はオールヒット。全てのカードが召喚の対象だ。

 

 

「来い、2体のグシオンリベイク、バルバトス第2形態!!」

 

 

ー【ガンダム・グシオンリベイク】LV1(1)BP6000

 

ー【ガンダム・グシオンリベイク】LV1(1)BP6000

 

ー【ガンダム・バルバトス[第2形態]】LV1(1)BP3000

 

 

バエルを中心に、次々と集結して行く鉄華団スピリット達。

 

次はその結束の力を見せる時だ。

 

 

「グシオンリベイクの召喚時効果、相手フィールドのコア2個をリザーブに置く、それが2回だ。ネロンガ3体から全てのコアを取り除き、消滅させる」

 

 

2体のグシオンリベイクは、手に持つハルバートを大地へ振い、地割れを発生させる。その穴へと落下してしまった3体のネロンガ達は、瞬く間にこの場から消滅。

 

あれだけの頭数を揃えていたダホウのフィールドは、たった一撃を与えてしまったばかりに瓦解してしまう。

 

 

「ぐぐぐっ……ターンエンド」

手札:6

場:【宇宙恐竜ゼットン[初代ウルトラ怪獣]】LV1

【磁力怪獣アントラー[初代ウルトラ怪獣]】LV1

【変身怪人ゼットン星人[初代ウルトラ怪獣】LV2(7)

【湖に咲く薔薇】LV1

【湖に咲く薔薇】LV1

【湖に咲く薔薇】LV1

バースト:【無】

 

 

悔しさに顔を歪ませ、ダホウはコア除去耐性持ちのアントラーをブロッカーとして残すのみでそのターンをエンド。

 

バトルは完全にオーカミのペースとなった。彼は大逆転勝利を収めるべく、巡って来た己のターンを開始して行く。

 

 

[ターン08]鉄華オーカミ

 

 

「メインステップ、ランドマン・ロディ2体を召喚。再び天空斬り裂け、バルバトスルプス……!!」

 

 

ー【ランドマン・ロディ】LV1(1)BP1000

 

ー【ランドマン・ロディ】LV1(1)BP1000

 

ー【ガンダム・バルバトスルプス】LV2(2S)BP8000

 

 

何度も更地にされて来たオーカミのフィールドだったが、ここに来て怒涛の召喚ラッシュ。合計で6体ものスピリット達が横に並び立った。

 

 

「アタックステップ。その開始時にオルガの【神技】の効果を発揮。トラッシュから三日月を召喚し、ルプスに合体」

 

 

ー【ガンダム・バルバトスルプス+三日月・オーガス】LV2(2S)BP14000

 

 

オルガの【神技】の効果が発揮され、トラッシュにあった三日月がルプスと合体。

 

バルバトスの名を持つモビルスピリットと、三日月の合体は、鉄華団の必勝パターンと言っても過言ではなく………

 

 

「ルプスでアタック。その効果でオレのデッキを2枚破棄し、残ったアントラーを破壊。三日月の効果で湖に咲く薔薇1つのLVコストを+1して消滅。効果発揮後、鉄華団スピリット1体につき1つのコアを、オマエのリザーブからトラッシュに送る」

 

 

鉄華団の必勝パターンによって起こるのは、破壊と消滅の嵐。

 

ルプスは、全く無駄なない動きでソードメイスを振り回し、アントラーと湖に咲く薔薇1つを斬り裂いて爆散へと追い込む。

 

 

「パワーフォースであるこのオレが、序列3位であるこのオレが、負けるわけにはいかないんだボゥル!!……フラッシュ、ゼットン星人の【神域】!!……トラッシュのコア2個をボイドに置き、疲労状態のルプスを手札へ」

「無駄だ。第2形態の効果で、鉄華団は手札デッキに戻らない」

「ボォォォォォォォォォォオル!!!!!」

 

 

頼みの綱であったゼットン星人の【神域】の効果も、バルバトス第2形態の効果で完全に無効化。

 

怒り散らかすダホウ。しかし、もはや彼ができる抵抗と言えば、叫んで威嚇する程度で………

 

 

「フラッシュ、オルガの【神域】を発揮。このターン、オレのアタックステップは効果で終了できない。さらにクーデリア&アトラの【神技】!!…トラッシュの鉄華団を1枚デッキ下へ置き、ルプスを回復!!」

 

 

鳴り止まぬ効果の発揮音。

 

ルプスがソードメイスを構え、ダホウの眼前へと迫る。

 

 

「ら、ライフで受ける」

 

 

〈ライフ4➡︎2〉甲子園ダホウ

 

 

ソードメイスを横一線に振い、ルプスがダホウのライフバリアを2つ粉砕。

 

そしてもう一撃……

 

そう言わんばかりに、今度は縦向きにソードメイスを構え直す。

 

 

「ルプスでラストアタック……!!」

「あぁぁぁぁぁあ!!!」

 

 

〈ライフ2➡︎0〉甲子園ダホウ

 

 

縦一線に振るったソードメイスによる一撃が、ダホウの残ったライフバリアを、その後ろにあった湖に咲く薔薇ごと一刀両断。

 

全てのライフを破壊し、オーカミに勝利を齎す。

 

 

「オレ達の勝ちだ……!!」

 

 

オーカミがそう告げると、フィールドに残った全ての鉄華団スピリット達が、凱歌を歌うかの如く、無音の咆哮を張り上げた。

 

それと同時に、これまでとは比較しようがない程に沸き上がる歓声。観客席では、ライとメイが「やった〜」と喜びながら互いの手を合わせ、レオンはその目を見開き「遂に来るか」と微笑んでいた。

 

 

「すげぇ……マジですげぇよオマエ。ホントにパワーフォースの1人を倒しちまった」

 

 

もはや伝説の幕開けとも言えるこの瞬間。己のライバルの凄まじさに、コントは嬉しいを含めた感動で、指先の震えが止まらなかった。

 

 

「馬鹿な馬鹿な、ふざけるなよボゥル!!…認めんぞオレは、こんな敗北……!!」

 

 

屈辱的な敗北。それにより怒り狂い、地面を殴りまくるダホウ。

 

そんな彼の目の前に、学園最強のカードバトラー、キング王が現れて………

 

 

「き、キング!?……ち、違うんだ、この敗北は何かの間違いで……」

「その『何かの間違い』とやらで、無様な敗北を晒すような奴は、我がパワーフォースに不要だ」

「!!」

「早々に立ち去るがいい、ダホウ」

「ぐっ……!」

 

 

ダホウは言い返す言葉もなく、顔を上げることすらできなくなった。

 

キングは直後、今度はオーカミの元へ歩み寄って行き………

 

 

「不本意だがな。これもルールだ」

「?」

 

 

オーカミにそう言うと、今度は声を張り上げて………

 

 

「皆の者、勝敗は決した。序列3位ではなくなった事で、今日よりダホウはパワーフォースを追放。代わりに新たな序列3位となった、この鉄華オーカミを、我がパワーフォースへと迎え入れる!!」

 

 

パワーフォースの一角が崩れ落ち、新たなパワーフォースが誕生すると言う、ノヴァ学園の歴史的瞬間。キングのカリスマ性も相まって、観客の生徒達は、また轟音のような歓声を響かせる。

 

 

「鉄華オーカミ。なるほど、本当にガッチャだな彼は。手合わせするのが楽しみになって来た」

 

 

この光景を目にしながら、新たなパワーフォース誕生に、心からの祝福と言わんばかりに軽く拍手していたのは、序列2位、新城サンドラ。

 

祝福こそしているが、同時にクールな性格に似つかわしくない程に、闘志も燃え上がっているようであり………

 

 

 

******

 

 

 

「オーカミが勝ったか。ま、そうじゃないと面白くないよな」

 

 

グランロロスタジアムの外。爆音と化した会場の歓声と、キングの高らかな宣言で、オーカミの勝利を察したのは、彼の担任の女教師、ブイ。

 

 

「さぁて。折角だし、今日は盛大にご飯でも奢ってやるか……ん?」

 

 

懐にあるBパッドが振動するのを感じたブイ。誰かから電話が来たのだ。

 

Bパッドを取り出し、それが誰なのかを先ずは確認する。

 

 

「自分から掛けるなんて珍しい………はい、もしもし。いつも元気なブイちゃんですよっと」

 

 

電話に出る。

 

それが誰なのかは定かではないが、ブイの知り合いではある様子。

 

そしてその通話の中、ブイは余程大変な話を聞いたのか、慌てふためき出して………

 

 

「え、ちょ、マジ!?……ここ来るの!?……先生として!?……どう言う風の吹き回しだよ。いや私こう見えてちゃんとやってるって!!……あ、ちょ、ばっちゃん!?」

 

 

通話はそこで途切れた。ブイの言葉をそのまま解釈するなら、彼女から「ばっちゃん」と呼ばれる人物が、この学園に新たな先生として訪れるようだが………

 

 

「ま、マジか。取り敢えず帰って部屋片付けよ」

 

 

さっきまではオーカミらにご飯を奢るなどと口にしていたブイだが、通話の内容を聞くなり、その気が失せたのか、一直線に帰路を歩き始める。

 

余程恐い人物なのだろうか。

 

 

 

******

 

 

 

どこかの場所、どこかの空間。

 

目立った物と言えば、燃え盛る暖炉程度しかない、どこかの部屋。

 

 

「………カッカッカ。遂に、アタシの出番のようだねぇ」

 

 

そこに居たのは、顔の皺やほうれい線さえも、まるで若さの一部であるかのような、ファンキーな老婆。

 

彼女は着用しているジャケットの裏側からタバコを、履いているジーパンのポケットからライターを取り出すと、そのライターでタバコに火を灯し、それを吸い始める。

 

 

「え、てことはオレっちも出番!?……あはは、凄く楽しみ〜〜」

 

 

老婆のすぐそばにいたのは、言動と身振り手振りがやたら喧しい、黒い異形。明るく愉快な性格だが、その姿は、まるで悪魔だ。

 

 

「そうだ聞いてくださいよ皆さん。この小説、ちょくちょく令和ライダーをネタにして来たのに、オレっちの出てる作品だけずっとハブってたんだよ、酷くない?」

「バイス、アンタ誰に話してるんだい」

 

 

バイスと呼ばれる黒い異形。誰もいない方向に、よくわからない事を話す。

 

 

「まぁなんにせよ、込み上げて来るねぇ。さて、鉄華オーカミがどれ程強くなったのか、お手並み拝見と行こうか」

「あはは、悪魔対悪魔。コレ絶対神回になるヤツじゃん。皆見てくれよ、オレっちの活躍」

「だから誰に言ってるんだい」

 

 

オーカミの事を既に知っている様子の老婆と異形。

 

彼らがオーカミに齎す影響は、善か、それとも悪か。今の所は、まだ何もわからない。

 

 

 





次回、新章「日蝕と月蝕編」開幕。

第78ターン「悪魔の契約者」……



******



第1回
王者の鉄華 キャラクター人気投票!!
結果発表!!


1位(14票):鉄華オーカミ

2位(7票):春神ライ

3位(4票):徳川フウ

4位(3票):鈴木イチマル

同率5位(2票):ブイ、嵐マコト

同率6位(1票):一木ヒバナ、九日ヨッカ、獅堂レオン、キング王、アルファベット


全部で37票もいただきました!!

思ってた3倍くらい票をいただけて、とても嬉しかったです!!

悪役であるフウや嵐マコトなどにも票が入っていて、ある程度は魅力的な悪役が書けていたんだなぁと感動しております。
一期終盤の活躍もあって、オーカミとライが人気トップなのは納得でしたが、イチマルが人気上位に食い込んで来るのは意外でした( ̄∀ ̄)
最近はなかなか出番のないフウとイチマルですが、折角人気投票上位に食い込んだので、今後また活躍させてあげたいですね。

改めてたくさんのご投票、誠にありがとうございました!!
これからも王者の鉄華と、そのキャラクター達の応援、何卒よろしくお願いします!!
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