キングに次ぐ、ノヴァ学園のNo.2、序列2位の新城サンドラ。
断片的にシグマとバイスの会話を訊いた彼は、鉄華オーカミを、キングが話していた、この学園にとっての「脅威」と認識。
その後直ぐにオーカミとバトルを行うと、華麗な戦術で終始翻弄、最後には完封し、完全勝利。「シグマには関わるな」「キングに仇を成すな」などと忠告する。
だが、その言動は、逆にオーカミの闘志をさらに燃え滾らせる結果となって……
******
「来たぞ、シグマ。オレになんか用?」
大きな連休、夏休みの初日。オーカミとライ、コントは、ノヴァ学園内にあるバトル場へと足を運んでいた。
謎多き若姥、シグマに、オーカミが呼出されたからだ。そのシグマの横には、若い女性教師、ブイも確認できる。
「よく来たねぇ赤髪小僧。おや、チャラ小僧。オマエも一緒に来たのかい」
「誰がチャラ小僧だ!!」
コントを「チャラ小僧」と呼称するシグマ。次はライへと視線を移し………
「あと、オマエは……」
「初めまして、春神ライでぇす!!…以後、お見知り置きを!!」
「お気楽ガールか」
コントに続いて、シグマは、掌を見せながら敬礼のポーズを取るライを「お気楽ガール」と呼称する。
「で、オレになんか用があるから呼んだんじゃないの?」
オーカミが、「早くしろよ」と、一緒に言いたげな様子で、シグマに訊いた。
「カッカッカ。相変わらずせっかちな男だねぇ。そんなんじゃ女に嫌われるぞ」
「いいよ別に」
「大丈夫大丈夫。オーカには、この春神ライがいますから!!」
乾いた笑い声を上げながら、オーカミをからかうシグマ。それを聞いたライが自信満々を絵に描いたようなドヤ顔を見せながら、自分の胸に手を当てる。
「ハッ、このタイプの男は面倒だよ、オマエは相当苦労するかもねぇ、お気楽ガール」
シグマはその様子を鼻で笑った直後、懐からある1枚のカードを取り出し、本題に入る。
「受け取りな」
「!」
取り出したカードを、オーカミへ投げつけるシグマ。オーカミは、それを受け取ると、ライとコントと共に、そのカードを確認する。
「ワオ、コレって」
「新しいバルバトスか!?…スゲェ、Xレアじゃねぇか!!」
オーカミよりも先に、彼の横にいる、ライとコントがコメントした。
そう。シグマが手渡して来たカードの正体は、新たなる鉄華団、新たなるバルバトス。その名も「ガンダム・バルバトスルプス[鉄華団]」………
「そのカードは、鉄華団デッキの心臓となり、四肢となる。最後のキーパーツだ」
「最後。もうこれ以上はないってこと?」
オーカミの問い掛けに対し、シグマは静かに頷く。
「だが、そのカードで鉄華団デッキは完成形となる。使いこなせれば、デッキの出力は、今までより数段跳ね上がる」
「たった1枚で?」
「そうさ」
「ねぇシグマ教授。アルファベットさんやブイ姉も、オーカミに鉄華団のカードをあげて来たけど、3人って、なんか知り合いだったりするの?」
今度はライが、シグマに訊いた。
「それなら私が」と、言わんばかりに、そそくさとブイが横入りする。
「えっとね。シグマのばっちゃんは、私とアルファベットが普段からお世話になっている人で、私はアルファベットの妹なんだ」
「えぇ!?…ブイ姉がアルファベットさんの妹!?…うそ、全然似てないんだけど!!」
「ハッハッハ、似てるのはサングラスだけだってよく言われるよ」
アルファベットのことをよく知るライが、思わぬカミングアウトに驚きの表情を見せる。
オーカミも同様にアルファベットのことを知っているはずだが、どうでもよかったのか、大して驚いてはいなかった。
「少し話が逸れたね。赤髪小僧、オマエがそのカードを使いこなせるか、見定めてやろうじゃないか」
「……」
シグマがBパッドを左腕に装着し、オーカミにバトルを要求。その瞬間、彼女の契約スピリット、黒い悪魔、バイスが出現し………
「お!…やっとオレっちの出番ですか、腹が鳴るぜ」
「こう言う時に鳴るのは腹じゃなくて、腕さね。それに悪いねぇバイス。オマエは今日お休みだ。こっちを使う」
「えぇ〜そっち!?…バイスちゃんショック」
そう告げると、シグマはデッキ1つを、己のBパッドに装填。バイスはしょげながら、この場から去るように消滅した。
「で、やるのかい?…やらないのかい?」
シグマが再度オーカミに訊いた。
「やるに決まってるだろ。この間はサンドラに邪魔されたからな」
「じゃあさっさとバトル場に立ちな。始めるよ」
「あぁ」
バトルを挑まれて断るようなオーカミではない。新しいカードを手渡されたのなら、尚更だ。
彼もまた、Bパッドを左腕に装着し、新たな鉄華団を入れたデッキを、そこへ装填。バトルの準備を完了させる。
「さぁこの目に入れてもらおうかねぇ。全てが揃った、鉄華団の強さを」
「行くぞ、バトル開始だ」
……ゲートオープン、界放!!
他の生徒が一切姿を見せない、夏休み初日のバトルスタジアムにて、鉄華オーカミとシグマによるバトルスピリッツが幕を開ける。
先攻はオーカミだ。ライから「頑張れオーカ!」と、力強い声援を受け取り、ターンを進めて行く。
[ターン01]鉄華オーカミ
「メインステップ。バルバトス第1形態を召喚」
ー【ガンダム・バルバトス[第1形態]】LV1(1)BP2000
「召喚時効果。デッキ上3枚をオープンし、その中の鉄華団カード、オルガを手札に加えて、残りを破棄。ターンエンド」
手札:5
場:【ガンダム・バルバトス[第1形態]】LV1
バースト:【無】
このバトルのオーカミの初動は、デッキのシーカー枠、バルバトス第1形態。
彼は、その召喚時効果で、創界神ネクサスのオルガを手札へ加え、ターンを終える。
次はシグマのターンだ。以前の紫青のライダーデッキとは、また違うデッキを使うようだが………
[ターン02]シグマ
「メインステップ。創界神ネクサス、神の化身 呉爾羅を配置」
「ッ……ゴジラ!?」
ー【神の化身 呉爾羅】LV1
シグマの背後に、黒き巨漢を有する怪獣、ゴジラが出現。それは、オーカミとバルバトスを視界に入れるなり、スタジアムごと震撼させる程の大きな咆哮を張り上げる。
オーカミはその外観と名称から、学園最強のカードバトラー「キング王」の顔を思い浮かべて………
「創界神のゴジラ。キング以外にゴジラのデッキを使う奴がいるなんて」
「集めるのに苦労したさ。何せゴジラはその1枚1枚がデッキの切り札になり得る性能を誇る、伝説のスピリット達だからねぇ。神託を行い、創界神ゴジラにコア+2。ターンエンド」
手札:4
場:【神の化身 呉爾羅】LV2(2)
バースト:【無】
ひとまずシグマはそれだけでターンエンド。再びオーカミにターンが回って来る。
違うデッキタイプであるとは言え、キングと同じゴジラデッキを使うシグマに立ち向かって行く。
[ターン03]鉄華オーカミ
「メインステップ。オルガとクーデリア&アトラを配置」
ー【オルガ・イツカ】LV1
ー【クーデリア&アトラ】LV1
オーカミも負けじと創界神を配置。フィールドには何も出現しないが、その2枚は、彼にシンボルと効果の恩恵をもたらす。
「神託で2枚に2つずつコアを+し、さらにランドマン・ロディを召喚」
ー【ランドマン・ロディ】LV1
オーカミの2体目のスピリットは、丸みを帯びた、小型のモビルスピリット、ランドマン・ロディ。
「アタックステップ。ランドマン・ロディでアタック」
このバトル、最初に攻撃を仕掛けたのはオーカミだった。ランドマン・ロディが斧を片手にシグマ側のフィールドへと駆け出す。
だが、彼女の背後に立つ、創界神のゴジラが、それを良しとせず………
「アタシのライフは高くつくよ。創界神ゴジラの【神域】の効果。BP6000以下の相手スピリットがアタックした時、それを破壊する」
「!!」
「よって、BP1000のランドマン・ロディは破壊だよ」
シグマの背後の創界神ゴジラは、大顎を開き、そこから紫色の熱線を放つ。ランドマン・ロディはそれに撃ち抜かれ、溶解。呆気なく爆散する。
「マジかよ。これじゃあオーカミのBP6000以下のスピリットは全て使い物にならねぇじゃんか」
そうコメントしたのはコントだ。
実際のところ「使い物にならない」は嘘だが、最大BP6000以下の低コストスピリットが大半を占めている鉄華団デッキにとっては、相性最悪の相手であることに違いはないだろう。
「ランドマン・ロディの破壊時効果で1枚ドロー。さらにフラッシュ、オルガの【神域】でデッキを3枚破棄して1枚ドロー。クーデリア&アトラの【神域】も誘発。トラッシュのカードをデッキ下に戻して1枚ドロー」
凶悪な効果だが、オーカミは臆さない。ランドマン・ロディの破壊時効果とオルガ、クーデリア&アトラのコンボで合計3枚のカードを手札に引き込む。
「ターンエンドだ」
手札:6
場:【ガンダム・バルバトス[第1形態]】LV1
【オルガ・イツカ】LV2(3)
【クーデリア&アトラ】LV2(3)
バースト:【無】
結果的にドローはできたが、シグマのライフは奪えず。オーカミはバルバトス第1形態をブロッカーとして残し、そのターンを終了する。
[ターン04]シグマ
「メインステップ。ゴジラ第2形態をLV1で召喚」
ー【ゴジラ(2016)第2形態】LV1(1)BP3000
「うげぇ、なんだよコイツ気持ち悪。これがホントにあのゴジラなのかよ」
「まぁこのスピリットは、言うなればゴジラの幼体。これから伝説のスピリットに成長するのさ」
シグマが召喚したのは、ゴジラの名を語るには、余りにもお粗末なスピリット。そのなんとも言えない間抜けな顔は、まるで深海に生息する生き物のよう。
この姿に軽く引くコントだが、彼にブイが、今から立派なゴジラに成長する過程なのだと説明する。
「召喚時効果。3枚オープンし、その中のゴジラカード『ゴジラ(1994)』を回収」
珍妙なゴジラの召喚時効果は、バルバトス第1形態と同様のシーカー効果。シグマに新たな1枚を手札に齎した。
「そして、今回収したこのスピリットを召喚するよ。現れ出でな。ゴジラ」
ー【ゴジラ(1994)】LV1(2)BP7000
ここで真打ちの登場。黒き逆鱗を携えた伝説のスピリット、ゴジラがオーカミの前に、張り上げる咆哮と共に立ちはだかる。
「アタックステップ開始時。創界神ゴジラの【転神】の効果。コア4つを贄とし、このターン、創界神ゴジラはBP20000のダブルシンボル持ちのスピリットとなる」
ー【神の化身 呉爾羅】LV2(0)BP20000
「創界神がスピリットに!?」
シグマの背後で威風堂々と佇んでいた創界神ゴジラは、その巨漢を動かし、フィールドへと乗り出す。
一部の特殊な創界神達が持つ特別な効果【転神】………
これにより、創界神ゴジラは、ダブルシンボルのスピリットとして、オーカミへの攻撃が可能となる。
「ゴジラでアタックし、そのアタック時効果を発揮。相手の場の最もBPの低いスピリット1体を破壊、2つコアブーストを行う」
「!」
「バルバトス第1形態を破壊して、コアブースト。LV2にアップさね」
先に攻撃したのは、スピリットの方のゴジラだ。口内から放たれる赤い熱線が、オーカミのバルバトス第1形態を撃ち抜き、容易く溶解、爆破させる。
「アタックはライフで受ける」
〈ライフ5➡︎4〉鉄華オーカミ
オーカミに迫って来たゴジラが、その鋭い爪で、彼のライフバリア1つを切り裂く。
その瞬間、創界神ゴジラの不気味な眼光が光り輝き………
「続きな、創界神ゴジラ」
「……それもライフだ」
〈ライフ4➡︎2〉鉄華オーカミ
「くっ……」
「フフ。ダブルシンボルで、奪うライフは2つ」
間髪入れずに創界神ゴジラのアタックが飛んで来る。創界神ゴジラは、己が持つ長い尾を捻り、オーカミのライフバリア2つを粉砕。
あっという間に、残りライフ2まで追い詰めてしまう。
「ターンエンド。この瞬間、創界神ゴジラは、ネクサスに戻る」
手札:4
場:【ゴジラ(1994)】LV2
【ゴジラ(2016)第2形態】LV1
【神の化身 呉爾羅】LV2(0)
一旦役目を終えた創界神ゴジラは、フィールドから再びシグマの背後へと戻って行く。
「す、すげぇ。これが伝説のスピリット、ゴジラのデッキ。いいよなぁ、オレもアレくらい強いカード達でデッキ組みたいぜ」
「何言ってんのさ。コントはもっとレアな契約カード持ってんじゃん」
「いやライちゃん。流石にゴジラで固めたデッキの方がレアだろ。あのキングでさえ、デッキの全てのスピリットがゴジラじゃないんだからな」
コントは不思議と、シグマの使うカード達に魅了されていた。意外とミーハーな彼は、今の自分のデッキに、これといった執着は持ち合わせていないのだろうか。
それはまた別の話として、次はオーカミのターンだ。彼が向ける視線の先は、己の手札。その中にいる、新たなるバルバトスだ。
[ターン05]鉄華オーカミ
「メインステップ。先ずはランドマン・ロディを召喚」
ー【ランドマン・ロディ】LV1(1)BP1000
前座として呼び出されたのは、このバトルでは2体目となるランドマン・ロディ。
対象スピリットの召喚による、2種の創界神達の神託を見届けると、オーカミはまた手札にあるカード1枚に手を掛ける。
「オマエの力、早速見せてもらうぞ」
「……来るかい」
シグマが、今から呼び出されるスピリットが何かを察する中、オーカミは手に掛けたカードを、己のBパッドへと叩きつける。
「天空貫け、未来を紡げ。ガンダム・バルバトスルプス鉄華、LV2で召喚……!!」
ー【ガンダム・バルバトスルプス[鉄華団]】LV2(3)BP7000
吹き荒れる砂塵の大竜巻。それを巨大な二振りの剣で斬り裂きながら見参したのは、赤き眼を持つ、新たなるバルバトス。名をバルバトスルプス鉄華。
大きさと性質の異なる2つの剣を携えた、バルバトスルプスのもう1つの進化の形である。
「アレが新しいバルバトス。いったいどんな効果なんだ」
荒々しくも猛々しい、新たなる鉄華団スピリット、バルバトスルプス鉄華。
コントをはじめ、誰もがその活躍に注目する中、早速オーカミは効果を発揮させる。
その効果は、シグマが『鉄華団デッキの心臓となり、四肢となる』と言う言葉に相応しいモノであり………
「ルプス鉄華の召喚アタック時効果。オレのデッキ上2枚を破棄」
上から2枚破棄される、オーカミのデッキ。その中には、当然鉄華団のカードが確認され………
「そこに鉄華団カードがあれば、相手フィールドのコア2個をリザーブに置く。ゴジラと、ゴジラ第2形態から1個ずつだ」
右手に握られたバスターソード、ソードメイスと、左手に握られた身の丈以上の大剣、ヴァルキリアバスターソードを一度大地に突き刺して手放すと、ルプス鉄華は両腕部から小型砲を展開し、それを掃射。
シグマのフィールドにいる2体のゴジラスピリット達に命中させ、体内にあるコアを1つずつ弾き出した。その内の1体、珍妙な姿をした、ゴジラ第2形態は、コア不足により、消滅。残ったゴジラは、挑発されたと見たのか、ルプス鉄華に向かって怒りの咆哮を張り上げる。
「ターンに一度、この効果でスピリットが消滅した時、トラッシュから鉄華団カードを手札に戻す。グレイズ改弍。さらに、クーデリア&アトラの【神域】により、トラッシュのカード1枚をデッキ下に戻し、1枚ドロー」
この効果には、まだ続きがあった。シグマのスピリットの消滅に成功したオーカミは、トラッシュに眠る鉄華団カード「グレイズ改弍」を己の手札へと回収する。
「行くぞ、アタックステップ。その開始時に、トラッシュのバルバトス第2形態の効果を発揮。トラッシュから自身を召喚」
ー【ガンダム・バルバトス[第2形態]】LV2(2)BP6000
トラッシュから召喚できる稀有なスピリット、機関銃を携えたバルバトス、第2形態も援軍として駆けつける。
これでオーカミのスピリットは、合計で3体。フィールドの数で一気にシグマを上回った。
「アタックだ、ルプス鉄華。その召喚アタック時効果を再び発揮。ゴジラのコアを2個リザーブに置く」
手放したソードメイスとヴァルキリアバスターソードを再び装備したルプス鉄華は、ゴジラ目掛けて駆け出す。
迎撃しようとルプス鉄華を視界に捉えたゴジラであったが、瞬きの間の一瞬で、その姿を見失う。
追従しようと、左右を確認するが、電光石火の如くフィールドを走るルプス鉄華は、既にゴジラの頭上で2つの剣を構えていて………
「叩きつけてやれ」
2つの剣で、ゴジラの頭部を叩きつけるルプス鉄華。骨が砕け散るような鈍い音が鳴り響くと共に、ゴジラが大地に叩き伏せられる。
消滅こそしなかったものの、そのLVは1にダウン。大幅な弱体化を許すこととなった。
「クーデリア&アトラの【神域】が誘発。トラッシュのカードをデッキ下に戻し、1枚ドロー。さらにフラッシュでオルガの【神域】を発揮。デッキ上3枚を破棄して、1枚ドロー。もう一度クーデリア&アトラの効果が誘発。もう1枚ドローだ」
「ふむ」
ルプス鉄華が召喚時とアタック時で二度デッキを破棄するため、クーデリア&アトラのバリューが跳ね上がっている。
トラッシュ回収効果や、オルガの恩恵もあり、オーカミの手札は、既に10枚目を迎えた。
「アタックはライフで受けてやろうかね」
〈ライフ5➡︎4〉シグマ
ゴジラを大地に叩き伏せても、尚も止まらないルプス鉄華の勢い。そのまま右手のソードメイスを投げつけ、彼女のライフバリアを粉砕した。
投擲したソードメイスは跳ね返り、再び右手に収まる。
「オレのアタックステップ、終了だ」
召喚時と合わせ、暴れに暴れ回ったルプス鉄華のアタックは、これにて一度終了。
疲労状態となったことで、己のフィールドにて片足をつくそれを見届けると、オーカミはここで2体のブロッカーを残してのアタックステップ終了を宣言。
「何やってんだよオーカミ!!」
「?」
「あの婆さん先生の創界神ネクサスのゴジラは、【転神】でコアを失って、【神域】を発揮できない。今が攻め時だったろ」
外野からオーカミのプレイングに意を唱えたのは、コントだった。
確かに、彼の言うとおり、今、創界神ネクサスのゴジラの【神域】は発揮されていない。BP6000以下の残り2体でアタックすれば、シグマのライフを大きく削ることができる。
だが……
「いや、これでいい」
「え」
「無闇にアタックする必要はない。今はただ、勝利への布石を揃えるだけ。そして、そのためのルプス鉄華だ」
オーカミはコントにそう言い返すと、その雰囲気を、無意識下でより刺々しく変貌させる。
本気モードだ。
「エンドステップ時、バルバトス第2形態の効果を発揮。トラッシュにあるコスト4以下のバルバトス1体をノーコストで召喚できる」
またしてもトラッシュにあるカードを1枚手にし、オーカミはそれをBパッド上へと叩きつける。
「オレが呼ぶのは、2体目のルプス鉄華だ」
「!」
ー【ガンダム・バルバトスルプス[鉄華団]】LV1(1S)BP4000
「ほぉ。コイツ、もうルプス鉄華の性質を見抜いたと言うのかい」
隆起する地盤より出現したのは、なんと2体目となるルプス鉄華。オーカミのこの判断に、シグマは僅かながらの笑みを浮かべる。
強力なルプスの強化形態であるルプス鉄華だが、そのコストは僅か4。小型のバルバトスが得意とする、低コストの蘇生効果でも召喚が可能となっているのだ。
そして当然、このタイミングでも、召喚アタック時効果は誘発して………
「召喚アタック時効果でデッキ上2枚を破棄、ゴジラからコア2個をリザーブへ」
2体目のルプス鉄華は、1体目同様、2本の大剣を大地に突き刺し、手放すと、両腕部から小型砲を展開して弾丸を連射。
ゴジラを撃ち抜き、遂に消滅にまで追い込んだ。
これにより、シグマのスピリットは0。それに対してオーカミのスピリットは4体。形成は逆転となる。
「消滅したことで、トラッシュから『バルバトスルプス』を手札に。破棄された『スネークビジョン』の効果。手札に加わり、オルガにコア+1。さらに、クーデリア&アトラの【神域】でドロー。ターンエンドだ」
手札:13
場:【ガンダム・バルバトスルプス[鉄華団]】LV2
【ガンダム・バルバトスルプス[鉄華団]】LV1
【ガンダム・バルバトス[第2形態]】LV2
【ランドマン・ロディ】LV1
【オルガ・イツカ】LV2(7)
【クーデリア&アトラ】LV2(7)
バースト:【無】
「マジかよ、オーカミの手札、13枚もありやがる!?」
「たった1枚のカードが加わっただけで、ここまで劇的にデッキの動きが変化するなんて。いいなぁ、私のデッキにもあぁ言うのに欲しい」
ようやくオーカミのターンがエンドとなる中、コントとライが、それぞれコメント。
双方、ルプス鉄華の加入が、オーカミのデッキに大きな変化をもたらしていることを理解し始めた様子。
「カードパワー高。私が高校生の頃と比べようがないなぁ、時代感じるわ」
「カードと、それを使うカードバトラーは常に一心同体。時代と共に、様々な戦術を編み出していくカードバトラーに合わせ、カード達は進化し、環境に適していく。世界で最初のカードバトラー、エニー・アゼムが生きていた2000年前から決まっていることさね」
「エニー・アゼム、ねぇ」
今度はブイとシグマが会話する。
小難しい言い回しをするシグマ。盤面的にも手札的にも圧倒的不利な状況へと追いやられてしまっているが、彼女のその表情は余裕そのもので。
[ターン06]シグマ
「メインステップ。ゴジラ第2形態をLV2で召喚」
ー【ゴジラ(2016)第2形態】LV2(4)BP5000
「召喚時効果でデッキ上から3枚オープン、その中のゴジラカード、3枚目のゴジラ第2形態を手札に加え、それを即座に召喚」
ー【ゴジラ(2016)第2形態】LV2(4)BP5000
「召喚時効果発揮。今度はゴジラ第4形態を手札に加え、ターンエンド」
シグマは珍妙な見た目のゴジラ、ゴジラ第2形態の2体目、3体目を連続召喚。
さらなるゴジラを手札に加えるが、それを使えるだけのコアがないのか、はたまた使ったとしても現状を打破できないからか、そのままターンをエンドとしてしまう。
なんにせよ、前のターン、過剰なアタックを行わなかったことが功を奏した。反撃を食らうことなく、今一度オーカミのターンが巡って来る。
[ターン07]鉄華オーカミ
「メインステップ。LV2のルプス鉄華とバルバトス第2形態をLV1にダウンさせることでコアを確保し、グレイズ改弍をLV1で召喚」
ー【流星号[グレイズ改弍]】LV1(1)BP2000
「流星号の名を持つスピリットを召喚しことにより、手札からパイロットブレイヴ、シノの効果が誘発。自身をノーコストで召喚。さらにグレイズ改弍の召喚時効果で1枚ドロー」
ー【ノルバ・シノ】LV1(0)BP1000
マゼンタカラーの装甲に、斧を武器として有する、鉄華団モビルスピリット、グレイズ改弍が参戦。
それに伴い、ルプス鉄華と第2形態のLVが1へダウンしてしまうものの、これでシノと合わせて、鉄華団スピリットは合計で6体。かなり強固な布陣が完成する。
「マジック、スネークビジョン」
「!」
「その効果で2体のゴジラ第2形態のコアを1個になるようにリザーブに送る」
オーカミの放った1枚のマジックカードにより出現した紫の霞が、ゴジラ第2形態達を襲い、その中に宿すコアの大半を弾き出し、弱らせる。
「アタックステップ。その開始時にオルガの【神技】を発揮。トラッシュからパイロットブレイヴ、三日月・オーガスを召喚し、ルプス鉄華と直接合体」
ー【ガンダム・バルバトスルプス[鉄華団]+三日月・オーガス】LV1(1)BP10000
ここに来てオルガと三日月のコンボ。ルプス鉄華は、LV1ながら強力な合体スピリットとなり、このバトルに終止符を齎す存在となる。
「ルプス鉄華でアタック。その効果で2枚破棄し、2体のゴジラ第2形態を消滅」
赤き眼の輝きが、残光として残る程の凄まじい速さでゴジラ第2形態へと迫るルプス鉄華。
ソードメイスとヴァルキリアバスターソードを用いて、流れるように2体を両断。消滅へと追い込む。
「クーデリア&アトラの【神域】でドロー。さらに三日月の効果。鉄華団の数1体につき、相手のリザーブのコアをトラッシュに送る」
今のオーカミの鉄華団スピリットは合計で6体。よって6つのコアがシグマのリザーブから、使用不可となるゾーン、トラッシュへと送られる。
彼女の残ったリザーブのコアは僅か2つ。
これだけでは……
手札に加えたゴジラ第4形態や、マジックカードを使うコアがなくなった。
「潮時かねぇ」
手札のカードは何も使えない。
完全に無防備となったシグマの眼前に、ライフを奪わんとするルプス鉄華が現れ、ソードメイスとヴァルキリアバスターソードを構える。
「オルガの【神域】で、このターン、オレのアタックステップは効果で終了できない。さらにフラッシュ、クーデリア&アトラの【神技】を発揮、トラッシュの鉄華団1枚をデッキ下に戻し、ルプス鉄華を回復」
「そのアタックはライフで受ける」
〈ライフ4➡︎2〉シグマ
2種の創界神ネクサスの効果により、絶甲氷盾のケア、ルプス鉄華の回復を行う。
向かう所敵無し。もはや誰も鉄華団を止めることはできない。
ルプス鉄華は、そのまま一度目の攻撃。右手側のソードメイスを一振りし、シグマのライフバリアを一気に2つ砕く。
「これでトドメだ。ルプス鉄華でラストアタック、三日月の効果でリザーブのコア全てをトラッシュへ」
ラストアタックの宣言。その瞬間、ルプス鉄華のアタック時と同時に、三日月の効果も処理。シグマのコアは全てトラッシュへと弾かれた。
「カッカッカ。及第点だ。ライフで受けよう」
〈ライフ2➡︎0〉シグマ
ルプス鉄華は、Xの文字を描くように、ソードメイスとヴァルキリアバスターソードの両刀を振い、何故か笑うシグマの最後のライフバリアを粉砕。
彼女のBパッドから、無機質で甲高い機械音を鳴らし、オーカミに勝利を齎してみせた。
「これがルプス鉄華。最後の鉄華団で、最高の効果を持つカード」
バトル終了に伴い、消えゆく多くの鉄華団スピリット達を見守る中、オーカミはBパッドに置かれたルプス鉄華のカードを手に取りながら、そう呟いた。
多くの役割を持ち、多様性の塊と言えるルプス鉄華。これから、それをどう活かしたデッキを作ろうかと、心躍らせているのだろう。
「ルプス鉄華、凄いカードだなぁおい!!…こんなんもう向かう所敵無しなんじゃねぇか!?」
ルプス鉄華を駆るオーカミのバトルスピリッツに感激したコントが、オーカミにそう告げて来た。
「デッキを回転させるエンジン的役割と、敵を倒すフィニッシャー的役割を併せ持つ、新しいバルバトス。心臓となり四肢となるって言うのは、そう言うことか」
ライは、このバトルで発揮されたルプス鉄華の特性を分析し、理解する。
血を巡回させる心臓の如くデッキを回転させるだけでなく、敵を貫く四肢ともなるルプス鉄華。今のオーカミにとって、これ以上にない新カードであったことだろう。
「ルプス鉄華を一目見ただけで、ここまで使いこなすとは、中々やるじゃないか、赤髪小僧」
「シグマ」
バトルで敗北しても、シグマの年の功に見合った大きな態度は変わらずだ。
その行動もそれ相応であり、彼女は一服しようと、タバコを咥え、ライターで火を付ける。
「だが、まだ100点満点中80点ってところだねぇ」
「80点?」
タバコで吸った煙を吐き出すと、シグマはオーカミに告げた。
彼女のその言葉からして、ルプス鉄華には、まだ何か大きな役割があるようだ。
「まぁ残りの20点は、この後のバトルの中で考えるんだね」
「え」
「オォォォカミィィィィィィ!!!」
「!」
シグマの意味深なセリフに、オーカミは思考する間もなく、突如スタジアム中にオーカミを呼ぶ怒号が轟く。
その声色だけで誰かを察したオーカミは、めんどくさそうな表情を浮かべながら、声の方へと振り向く。
「しかと見届けてやったぞ。オマエの新たな切り札、新たなバルバトス。貴様との決着は相応しい舞台を用意してやると豪語したが、もう我慢ならん。今すぐこの場で、オレとオレの魂と戦え!!」
「ゲッ……獅堂」
中学生時代からライバル同士の関係である、鉄華オーカミと獅堂レオン。2人の新たなる戦いのロードが、間もなく始まろうとしていた。
次回、第81ターン「ルプスレクスファイナル」
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ルプス鉄華収録からおよそ1年と3ヶ月、ようやく登場させることができました!!
感無量です( ̄∀ ̄)
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今回のバトル、シグマの第6ターン。
意味深にシーカー枠のスピリット2体を出してターンエンドとし、その際の効果で強力なチェンジを持つゴジラ、第4形態を回収していました。
実はシグマ、そのターン中にチェンジ元と共にそれを出し、オーカミの盤面を破壊することはできました。
できましたが、そうなれば多くのコアを使うことになり、オーカミの回収したカード「グレイズ改弍」「ルプス」「スネークビジョン」(シグマにも見えている)で返り討ちにされる上に、まだ他にも大量の手札を抱えていました。
つまり、殴りに行けば、確実に負ける盤面だったのです。それを見越していたシグマは、敢えてターンエンドとし、多くのコアを確保しながら受けに回った、と言うことです。
ルプス鉄華の強みの1つである回収を活かしたバトルを見せたかったのですが、結果的に少々複雑でわかりづらくなってしまい、申し訳ございまません。もうちょっとわかりやすくできるよう、今後とも精進して参ります。