ここは、闇。
一筋の光すら迷い込まない、狭くて寒い、黒い闇だ。
「私はいつまで、こんな暗い場所にいないと行けない」
そこからは、暗闇に怯える1人の少年が啜り泣く声が聞こえて来る。
「私がいったい何をしたと言うのだ。外の人間達は皆今日も幸せを謳歌していると言うのに。なぜ私だけがこんな仕打ちを受けねばならないのだ。私がこの世に生を受けた意味とはいったいなんだ。誰か私に教えてくれ。なぜ、なぜ私は生きているのだ」
涙ながらに少年がそう呟くと、鉄同士が擦り合う金切音と共に、重たい扉が開き始める。中には液体が入っていたのか、開口と共にそれが中から零れ落ちた。
そして、多量の光がそこへと注ぎ込まれて、闇が晴れると、少年はその姿を露わにする。長きに渡り液体に浸かっていたからか、全身はずぶ濡れであり、一糸すら纏っていない。
「おぉ、貴方が」
「誰だ貴様は。なぜ私を解放する」
そんな彼を見て、まるで宝石でも見つけたかのように瞳を輝かせていたのは、藍色の髪をした1人の青年。
「『なぜ』とは愚問ですね。貴方がそう願ったからではありませんか。ここから出たい、幸せになりたい、と」
「……」
「外の人々は良いですよね。きっと今日も飽きることなく、美味なる物を食し、娯楽に心血を注ぎ、そして愛する者と愛を育んでいる。貴方も紛れもない、この世に生を受けた生命体であると言うのに、あまりにも不公平だ」
優雅に舞ったかと思えば、拳を固く握り、熱く外の世界の幸せについて語る青年。
その語られた『幸せ』は、いずれも少年が体験したことがない未知のモノである。
「私が、貴方を幸せにする方法を教えてあげましょう。悪のカリスマ『Dr.A』の最高傑作にして、至高の遺産、エニーズ
全ては己の幸せをこの手で掴み取るため。
少年、エニーズ03は、青年が差し出して来た手を取る。その先に、何が起こるのかも知らずに………
******
ここは、光。
どんな暗闇でさえも眩く照らしてしまう、広くて暖かい、白い光。
「……どこ、ここ」
そこに1人で立ち尽くしていたのは、黄みがかった白髪をサイドテールに束ねている少女、春神ライ。どうやら突然この場所に迷い込んだ様子。
「あ、オーカ!!」
未知の場所に不安だったライだが、そんなモノはすぐさま吹き飛び、笑顔を見せる。
彼女が愛する赤髪の少年、鉄華オーカミの後ろ姿を見つけたからだ。ライは彼の元へと一直線に駆け寄って行く。
「え」
しかし、その背中に触れようとした直後、オーカミは幻となって消滅。ライも同時に笑顔を失う。
「ちょっとオーカ。どこ行ったのよ、オォカァ?」
「ニッヒヒ。良いご身分ね。人工生命体の分際で、人間の彼氏とイチャイチャですか」
「!!」
背後から囁かれた、もう1人の少女の声に、ライは思わず振り向き、身構える。
そうなるのも無理はない。何せ、その声の主は………
「徳川、フウ……」
「あら、もう『フウちゃん』とは呼んでくれないのね。悲しいわ」
そこにいたのは、黒く美しい長髪を持つ少女、徳川フウ。
かつて、短命な己の寿命を延ばしたいがために、ライに極悪非道な行為を何度も立て続けに行った張本人。
ライにとっては、因縁のある相手だ。
「今更何しに来たの」
「別に何もしないよ。放って置いても、私は後1年で死ぬしね」
「……」
「ニッヒヒ。これも全部ライちゃん達のせいだ」
返す言葉が見つからなくなり、沈黙するライ。
そう。結果的にではあるが、徳川フウとの戦いで、彼女の長寿になると言う夢を打ち砕いてしまったのだ。
このまま行くと、彼女は齢16歳という若さでこの世を去ることになる。
「あぁ、やっぱりムカつくなぁ。たかが人語を話す人工生命体如きが、普通の人間と同等、いや、それ以上の幸せを手にしているなんて」
「……」
「私にそんな幸せは一切訪れなかった。世界を絶望に陥れた悪魔の科学者の孫。そのレッテルが、私をそうさせてはくれなかったのよ。あぁ、妬ましい。憎たらしい」
ライに対しての嫉妬、怨恨が、フウに静かで、それでいて深い怒りを齎す。
「私と友達でいた間は?」
「は?」
「私は、貴女と友達でいた時、とても幸せだったよ」
「……」
ライが思い浮かべていたのは、フウと共に親友として過ごして来た毎日。ずっと一緒にいて、ずっと遊んでいた、あの楽しかった日々。
ここでその記憶の話をすると言うことは、今でもライは、フウがあの頃に戻って来てくれると、心の奥底で信じているのだろう。
「キモ。アレは演技だと言ったでしょう?……今でもあの記憶は、私の中の苦い思い出。思い出そうとするだけで吐き気を催すわ」
「……」
「これだけは教えてあげる。人ならざる者の幸せは全て偽り。最後には必ず不幸が訪れる。貴女だけじゃなくて、その周囲にも」
「……」
「ニッヒヒ。じゃあね」
最後にそう告げ、意味深な発言をすると、フウは先程のオーカミと同様、幻となってこの場から消滅する。
また1人残されたライ。その胸の中には、彼女の言葉が重たく突き刺さっていて………
「最後は必ず不幸になる……か」
「そんなことはさせない」
「ッ……誰!?」
また突然、背後から声が囁かれる。今度は少年の声。しかも聞き覚えのない、初めて聞く者の声。
ライがその声の方へと振り向くと、そこにいたのは、間もなくこの眩い光の空間に消されようとしていた、ただの黒い影だった。
「この世に生を受けたからには、幸せになるべきだ。私も、貴女も。もうすぐ、迎えに行こう、我がフィアンセよ」
「え、フィ、フィフィアンセ!?……ちょちょ、それってどう言う……ッ」
光の空間は、その黒い影を消そうと、より強い光を放つ。
それにより黒い影は蒸発するように、この場から消え去る。そしてライも、その光の強さに思わず目を閉じて………
******
「………」
蝉の鳴き声と鳩の囀りがオーケストラのように鳴り響く夏の朝。
ライはノヴァ学園の女子寮の自室にて目を覚ます。その両手には、自作なのか、オーカミを模したであろう大きなぬいぐるみが握られていた。
「……ヤケにリアルな夢だったな」
不思議と鮮明に覚えていた、先程の夢。
徳川フウに好き放題言われ続けると言う内容は、ライにとって、本当に嫌な夢だったに違いない。それに最後に出て来た黒い影も………
「まぁいっか、気にしたってしょうがない。それに、今日は待ちに待った………」
すぐさま気持ちを切り替えるライ。
嫌な夢を見たのは間違いないのだが、それを忘れさせてくれる程のビッグイベントが、彼女を待っていたのだ。
それは………
******
「オリハルコンビーチに、来ぃたぁぞぉぉぉお!!」
ノヴァ学園からバスで約3時間。ゲートシティ南端に位置する、澄んだ青色の波が煌めく、超有名観光地、オリハルコンビーチ。
時期が夏休みと言うことだけあって、多くの観光客達で賑わう中、水着の上に紫色のパーカーを着用したライは、オーカミとここに来れた嬉しさのあまり、大声で叫ぶ。対して肝心のオーカミは、眠たそうに欠伸をしていて。
「いやぁ、まさかあのオリハルコンビーチに来れるなんて。しかも一泊二日、高級ホテル付きだよ。リーゼントさんに感謝感謝だね」
「そうだな」
「テンション低ッ!!……いや、いつも通りか」
ライの言う「リーゼントさん」とは、オーカミに敗北し、地位と名誉を失った元パワーフォース、元序列3位、甲子園ダホウのこと。
その失脚のキッカケとなったバトルの際に取り付けた約束の影響で、今こうして、オーカミとライはこのオリハルコンビーチへと足を運べているのだ。
「そんなことより、じゃじゃあん。どうよ」
ライは突然、これ見よがしにパーカーをはだけさせ、己の身につけているオフショルダーの白い水着を、オーカミへと見せつける。
実際かなり可愛く、本人の抜群のプロポーションと、端麗な容姿と相まって、大抵の男なら悩殺できるだろう。特にダホウやコントなどが見たら勢い余って砂浜に埋まるに違いない。
「あぁ、良いと思う」
だがオーカミは他の男とは違う。
朴念仁極まりない彼は、ライの水着姿を見ても何一つとして動じないし、そもそも動じる気配すら微塵も感じられない。
極論、ライの水着姿を見る目は、呑気な鳴き声を上げる鳩を見る目と全く同じ。それが鉄華オーカミと言う少年なのだ。
「ふふ、そっかぁ、良いかぁ!!……よかった」
オーカミのほんの僅かなリアクション。それが一応プラスな方向の反応であったためか、ライはたいへんご満悦な様子。
「ささ、泳ご泳ご〜〜!!」
「おい、あんまりくっつくなよ。暑いし」
「いいじゃんいいじゃん、偶にはさぁ」
ご機嫌がありえないほど直立したライは、オーカミの腕に手を回し、彼の横を歩く。
因みに「偶には」と言っているが、どこにいても彼女はだいたいオーカミの腕に手を回している。
「アレが、鉄華オーカミ。私の恋敵か」
多くの観光客に紛れ、オーカミとライを鋭い眼光で見つめていたのは、オーカミと同じくらい小柄な、淡い金髪の少年。
『恋敵』と、オーカミをかなり敵視しているのが窺える。しかし、これと言って何かをするわけでもなく、人混みに隠れた次の瞬間には消えていた。
「……ニッヒヒ」
オリハルコンビーチ全体を見渡せる、白く長い灯台。
そこには、オーカミらと、消えた金髪の少年の双方を、その美しき瞳で捉えていた、黒く長い髪の少女が1人。
淡麗な容姿を台無しにしてしまうほどの不気味な笑い声には、どこか聞き覚えがあり………
ー………
その後は2人して楽しく過ごした。水を掛け合ったり、しれっと行われてたビーチバレーの大会に出場して優勝したり、ライが作って来た弁当を食べたり、夕日と海原をバックに記念写真を撮ったり………
今日の出来事は、ライにとって、この上ない、最高に幸せな時間だった。
「……はぁ」
夜。観光客で賑わい、溢れかえっていた昼間とは打って変わって、美しき静寂な海と化したオリハルコンビーチを眺めながら、ライは1人、砂浜に座り込んで、何かを考えていた。
暗い表情と、ため息をついたことから、あまりポジティブな内容ではなさそうで………
「………」
ー『人ならざる者の幸せは全て偽り。最後には必ず不幸が訪れる。貴女だけじゃなくて、その周囲にも』
ライの頭の中に重く突き刺さっていたのは、昨晩の夢に出て来た、徳川フウの言葉。
「私の幸せは全て偽り、周囲の人達も不幸になる……か」
ライとてわかっている。夢で見たのは単なる幻。自分が気に病むことではないと。
ただ、どうしても考えてしまうのだ。彼女はエニーズ02。本来はDr.Aに対抗するためだけに、春神イナズマと嵐マコトによって造られた人工生命体且つ、人造兵器。周囲の者達が必ず不幸にならないと考える方が難しい話だ。
「なんかあった?」
「ッ……オーカ」
そんな折、オーカミが、その手に持っていた缶ジュース2本の内1本をライに手渡しながら横に座る。
「あ、あぁジュース。ありがと」
「コーラでよかった?」
「うん」
「で、なんかあった?」
「い、いや。別になんもないよ」
「………」
普段はすこぶる明るいライが暗い時、それは決まって何かあった時であることを知っているオーカミ。ライに話せと言わんばかりの、無表情且つ無言の圧を掛ける。
やがて、ライはそれに耐えられなくなり、夢の話、自分の悩みを打ち明けて………
「実は、変な夢を見たんだ」
「夢?」
「うん。私の幸せは全て偽りで、いつか必ず、周りの人達も合わせて不幸になるって言われる夢……」
夢の中に出て来た徳川フウに言われたことは、敢えて伏せた。
オーカミにあまり心配は掛けたくなかったのだろう。ライとは違い、彼はフウのことを未だに憎んでいるからだ。
「ライは今日、オレと一緒にいて楽しくなかった?」
「え、な訳ないない!!……めちゃくちゃ楽しかったに決まってんじゃん。これ以上ないってくらい……幸せ、だった」
オーカミの問い掛けに対し、戸惑いつつも、ライは今日、自分が幸せな時間を過ごしていたことを再認識する。
「それが全てだろ。何を気にする必要があるんだ。誰に何を言われようが、ライはライの好きな奴と一緒に過ごせばいい。仮に何かしらの不幸になったとしても、オレはライのせいとは絶対に思えない」
「オーカ」
ライが落ち込んだ時、最善の言葉を投げ掛けられるのが、この少年、鉄華オーカミ。
彼の芯のある言葉にライの心は落ち着き、いつもの笑顔を取り戻して行く。
「ありがと。この程度のことでくよくよするなんて私らしくなかったね」
「あぁ」
「よぉし。もう何も気にしないぞ。私は絶対の絶対に幸せな人生を送る!!……オーカも手伝ってよね」
すっかり立ち直ったライ。立ち上がりお尻についた砂を落とすと、オーカミへと手を伸ばす。
当然オーカミは、その手を取ろうと己もまた手を伸ばす。
しかし、その直後だった。
「ッ……!?」
「ライ?」
「う、ぁぁぁぁぁあ!!!」
「!?」
突然頭を抑え、苦しみ出すライ。いきなりの出来事に、オーカミも僅かばかり困惑する。
「どうしたライ!!」
「頭が、頭が割れるように痛い……ぁぁぁぁぁあ!!!」
頭部の激痛は強くなっていく。ライは両膝をつき、そのまま砂浜で横転する程にもがき苦しむ。
「あ、あ………」
「ライ?」
「……」
「おい!」
だが途端にそれは鳴りを潜める。
ライは苦しみから解放されるも、その瞳の色は失われ、虚な状態でふらふらと浜辺を歩き出す。
オーカミはそれを追うように走り出すが………
「おぉ、なんとお労しい」
「……」
「今は私の腕の中で安らかに眠りにつくといい。エニーズ02」
「……はい」
虚な状態のライを抱きしめ、静かに眠りにつかせたのは、オーカミと同じくらいの背丈の、淡い金髪の少年。
身振りや言動が謎だが、彼女を「エニーズ02」と呼称したことから、それらに関する話を全て知っている人物なのは確かな様子。
そして、その光景を見たオーカミは「コイツはヤバい」と察して……
「誰だオマエ」
「貴様か、我が妃をこのような目に合わせたのは」
「は?」
あらぬ疑いをかけられるオーカミ。もちろんこんなことはしておらず、寧ろオーカミは眼前の少年の方を疑っていた。
「オレは何もしてない。て言うかキサキって誰のこと」
「無論。エニーズ02だ。この者は、幸せのために、我が妻となることが決定している」
「………?」
行っている意味の半分も理解できないオーカミ。
ただ1つ理解しているのは、目の前の彼は、ライを狙っていると言うこと。
「貴様のような野蛮な猿と彼女は釣り合わん。この場から早々に立ち去れ」
「誰かと一緒にいるのに、釣り合うとか関係ないだろ。オマエこそもう消えろよ」
「己の身の程も知らぬとは、猿らしいな。ならばこれで証明してやろう」
「……バトルか」
少年は懐から取り出したBパッドを展開し、己の左腕へとセット。さらにはデッキを装填し、バトルの準備を終える。
バトルで自分を倒そうとしていることを理解したオーカミは、対抗すべく、自分もまた同じようにBパッドを用意した。
「すまぬ我が妻。しばしの間、ここで待っていてくれ」
少年は、抱えていたライをゆっくりと砂浜の上に寝かせる。
そして、セットしたBパッドを、オーカミへと向け、構えて。
「行くぞ。最強のカードバトラー、エニーズ03の名に賭けて、貴様を斬り伏せてくれる」
「エニーズ……03?」
少年の名前「エニーズ03」と言う名に疑問を抱きつつも、バトルの準備を終えたオーカミは、己のBパッドを構える。
……ゲートオープン、界放!!
多くの疑問と謎を残したまま、夜のオリハルコンビーチを舞台に、鉄華オーカミと、エニーズ03と名乗る少年によるバトルスピリッツが幕を開ける。
先攻はオーカミだ。ライを護るべく、そのターンを進めて行く。
[ターン01]鉄華オーカミ
「メインステップ。ガンダム・バルバトス第1形態を召喚」
ー【ガンダム・バルバトス[第1形態]】LV1(1)BP2000
「召喚時効果発揮。オルガを手札へ」
オーカミの初手は、バルバトス第1形態。肩の装甲をなくした機械兵が呼び出されると同時に、その効果で新たなカードをデッキから手にする。
「ターンエンド。エニーズ03ってなに。ライとどんな関係があるんだ」
手札:5
場:【ガンダム・バルバトス[第1形態]】LV1
バースト:【無】
それ以外は何もせず、最初のターンをエンド。その直後に、オーカミはエニーズ03のことを訊くが。
「貴様のような猿に教えることは何もない。我がターンだ」
エニーズ03はその疑問を切捨て、早々に己のターンを開始する。
[ターン02]エニーズ03
「メインステップ。我が契約スピリットをここに呼ぶ、ライダースピリット、ブレイド」
ー【仮面ライダーブレイド[3]】LV2(2)BP5000
エニーズ03が呼び出したスピリットは、契約。
銀色のボディに一本の頭角、武器にはレイピア状の剣を持つ、ライダースピリット、ブレイドだ。
「黄属性の契約ライダースピリットか」
「アタックステップ。ブレイド、斬り裂け」
契約スピリットを召喚して早々それでアタックの宣言をするエニーズ03。
ブレイドはそれを受けて剣を構える。
「ブレイドのアタック時効果。カウント+1。その後、デッキ上1枚をオープン、それが系統に四道をカードであれば、手元に置く」
ブレイドの効果でオープンされたカードは「仮面ライダーレンゲル[3]」………
系統に四道を持つカードだ。
「オープンカードは四道を持つレンゲル。対象カードであるため、手元に置く。そしてこの瞬間、ブレイドの第二の効果が発揮」
「第二の効果?」
「系統に四道を持つライダースピリットが、己の手元に置かれた時、敵スピリット1体のBPをマイナス3000。0になればデッキ下へ葬る。消え去れ、バルバトス第1形態」
ブレイドは、剣に稲妻を迸らせ、飛ぶ斬撃として、それをバルバトス第1形態へと放つ。
バルバトス第1形態は避けきれずに直撃。粒子化してデッキ下へと強制送還させられてしまう。
「その後、ターンに一度だけ、カウント+1。そしてブレイドは貴様のライフを奪う」
「……ライフで受ける」
〈ライフ5➡︎4〉鉄華オーカミ
「ぐぁぁあ!?!」
ブレイドが剣でオーカミの前方に存在するライフバリアを1つ斬り裂くと同時に、オーカミ本人の身体にも同様の衝撃が伝わって来た。
その激しい痛みに、オーカミは片膝をつく。
「な、なんだ」
「私のバトルスピリッツは決闘。故にライフとは文字通り命。その程度で堪えているようでは、死ぬぞ」
「何言ってんだよ」
「まぁもっとも、最初から殺すつもりだがな。ターンエンド」
手札:4
場:【仮面ライダーブレイド[3]】LV2
手元:【仮面ライダーレンゲル[3]】
バースト:【無】
カウント:【2】
どう言う原理かは定かではないが、オーカミにリアルなダメージを与え、エニーズ03はそのターンをエンド。
再びオーカミへとターンが回って来る。ライのため、立ち上がり、それを進めて行く。
[ターン03]鉄華オーカミ
「メインステップ。創界神ネクサス、オルガ・イツカとクーデリア&アトラを配置」
ー【オルガ・イツカ】LV1
ー【クーデリア&アトラ】LV1
オーカミが次に出したのは、創界神ネクサス。フィールには何も出現しないが、この2枚は、彼の鉄華団デッキを極限までサポートしてくれるカードだ。
神託の効果により、デッキ上から6枚のカードがトラッシュに落ち、オルガに2つ、クーデリア&アトラに1つのコアが追加される。
「……ターンエンド」
手札:4
場:【オルガ・イツカ】LV1(2)
【クーデリア&アトラ】LV2(1)
バースト:【無】
だが、序盤のコアの少なさ、バルバトス第1形態が除去されたことが災いし、オーカミはその行動のみで即座にターンをエンド。
エニーズ03の二度目のターンが始まる。
[ターン04]エニーズ03
「メインステップ。ライダースピリット、ギャレンを召喚する」
ー【仮面ライダーギャレン[3]】LV2(2)BP5000
エニーズ03が次に召喚したのは、ブレイドと同じく銀色のボディに、2本の頭角を持つライダースピリット、ギャレン。
「召喚時効果。カウント+1。その後、デッキ上から5枚をオープンし、対象となるカード1枚を手元に置く」
ギャレンの効果が発揮。エニーズ03の手元に「仮面ライダーブレイド キングフォーム[3]」のカードが置かれる。
さらに、他のオープンカードが1枚輝いて………
「オープンされたネクサスカード『BOARD』の効果を発揮。カウント+1、自身を手札に加える。さらにブレイドの効果、系統、四道を持つライダースピリットが手元に置かれた時、ターンに一度だけカウント+1」
エニーズ03は、たった一度の召喚時効果で、新たなカードを1枚ずつ手札と手元に加え、カウントを3つも加速させる。
その間、ブレイドが次のアタックに備え、剣を構えていて………
「アタックステップ。行け、ブレイド。アタック時効果でカウント+1、デッキ上1枚をオープンし、四道のカードなら手元に置く」
二度目のアタック時効果。エニーズ03は、オープンされた「仮面ライダーワイルドカリス[2]]」のカードを手元に置く。
「アタックはライフで受ける」
〈ライフ4➡︎3〉鉄華オーカミ
「ぐうっ……!?」
ブレイドの華麗なる剣撃が、オーカミのライフバリア1つを斬り裂き、リアルなダメージも与える。
「ターンエンドだ。余興はここまでだ。次で仕留める」
手札:5
場:【仮面ライダーブレイド[3]】LV2
【仮面ライダーギャレン[3]]LV2
手元:【仮面ライダーレンゲル[3]】
【仮面ライダーブレイド キングフォーム[3]】
【仮面ライダーワイルドカリス[2]】
バースト:【無】
カウント:【6】
カウントを6まで伸ばし、着実に手札や手元などのアドバンテージを獲得して行くエニーズ03。
次のターンでの勝利を宣言しつつ、そのターンをエンド。オーカミへとターンを渡す。
[ターン05]鉄華オーカミ
「メインステップ。ランドマン・ロディをLV2で召喚」
ー【ランドマン・ロディ】LV2(2)BP3000
逆転すべく始まったオーカミのターン。最初に呼び出したのは、丸みを帯び、濁った白色の装甲を持つモビルスピリット、ランドマン・ロディ。
その召喚直後、さらに手札から1枚のカードを引き抜く。
「天空斬り裂け、未来を照らせ。ガンダム・バルバトスルプス、LV2で召喚」
ー【ガンダム・バルバトスルプス】LV2(2)BP8000
天空より、砂浜の砂を巻き上げる程の勢いで降り立つのは、バスターソード状のメイス、ソードメイスを持つ、バルバトスの未来の姿、バルバトスルプス。
「さらにパイロットブレイヴ、三日月・オーガスを召喚し、ルプスと合体」
ー【ガンダム・バルバトスルプス+三日月・オーガス】LV2(2)BP14000
モビルスピリットのサポートカード、パイロットブレイヴが、ルプスと合体。見た目に変化はないが、強力な効果を多数内蔵した、合体スピリットとなる。
「アタックステップ。ルプスでアタック、その効果で自分のデッキ上2枚を破棄。その中の鉄華団1枚につき、コア3個以下のスピリット1体を破壊する」
ルプスの効果で破棄された2枚のカードは、いずれも鉄華団。よってエニーズ03のフィールドに存在する2体のスピリットを破壊できるが……
「よし、2枚とも鉄華団。よって、ブレイドとギャレンを破壊する」
「ギャレンはブレイドがいる時、相手スピリットの効果を受けない」
「……なら、クーデリア&アトラの【神域】でドローし、ルプスのもう1つの効果。ギャレンのコア2個をリザーブへ置き、消滅させる」
ルプスのソードメイスによる一太刀。横一閃に斬り込まれたそれにより、ブレイドは吹き飛ばされて爆散。色の抜けた魂状態となってしまうが、ギャレンは体格差を物ともせずにそれを受け止める。
だがそれも束の間、ルプスは流れるように右腕部から滑腔砲を展開。そこから鉛玉を射出し、ギャレンを撃ち抜き、ブレイド同様に爆散させる。
「三日月の効果、オマエのリザーブのコア、2つをトラッシュへ」
「……」
「フラッシュ、オルガの【神域】の効果を発揮。デッキ上3枚を破棄して、1枚ドロー。クーデリア&アトラの【神域】でさらにドロー」
スピリットの除去、コアのトラッシュ送り、多重ドロー。オーカミは、それら全てを一度のアタックで行って見せ、エニーズ03に取られたアドバンテージを取り返す。
その上で、ルプスのアタックも健在であり………
「そのアタック、ライフで受ける」
「ルプスはダブルシンボル。2つのライフを破壊する」
〈ライフ5➡︎3〉エニーズ03
ソードメイスを縦に振い、エニーズ03のライフバリアを一気に2つ砕いて見せるルプス。
衝撃で吹き飛ぶ砂浜の砂を見るに、明らかにルプスの一撃も実体を帯びているが、オーカミと違い、エニーズ03は、まるで何事もなかったかのように、涼しい表情を見せている。
「これが未知なるスピリット、バルバトスの一撃か。軽いな」
「……ターンエンド」
手札:5
場:【ガンダム・バルバトスルプス+三日月・オーガス】LV2
【ランドマン・ロディ】LV2
【オルガ・イツカ】LV2(5)
【クーデリア&アトラ】LV2(4)
バースト:【無】
ブロッカーとしてランドマン・ロディを残し、オーカミはそのターンをエンド。
「オマエ、ライを妻にするってことは、ライと結婚するってことか?」
「当然だ。私と彼女は、そう言う定めにある」
「……気に食わないな」
「フ……何を言っても結果は変わらん。今から貴様は私に敗北し、死ぬのだ」
次はエニーズ03の三度目のターン。彼はこのターンに己の勝利を宣言しているが………
[ターン06]エニーズ03
「メインステップ。ネクサス、BOARDを配置」
ー【BOARD】LV1
ターン開始早々、エニーズ03は、前のターンに加えていたネクサスカードを配置。
フィールドには何も出現していないが、その効力は凄まじいモノであり。
「BOARDがある限り、煌臨できるスピリットは、手元からでも煌臨が可能となる」
「なに」
「冥土の土産に、我がエースを見せてやろう猿よ。光栄に思うがいい」
まだ何もしていないと言うにもかかわらず、エニーズ03の放つ強者のオーラは、空気は震撼させ、オーカミに多大なるプレッシャーを与える。
そしてエニーズ03は、自身が「エース」と呼称するカードを、手元から取り出して……
「王者の力が、今ここに列を成す。黄金の輝きを持って、我に勝利を誓え!!!……契約煌臨、仮面ライダーブレイド キングフォーム!!」
ー【仮面ライダーブレイド キングフォーム】LV2(4)BP12000
霊体のような姿、魂状態となっていたブレイドが、金色の鱗粉を纏い、エニーズ03のフィールドへと帰還する。
ブレイドがその鱗粉を気迫のみで振り払うと、その姿は黄金の輝きを持つ絶対王者、キングフォームへと一新されていた。
「キングフォーム……王?」
「そうだ。王者だ!!」
「ッ……オマエ、その目」
キングフォームを呼び出した瞬間、エニーズ03の瞳孔は赤く光り輝き、その涙腺には、同じ輝きの刻印が刻まれる。
「これだけで驚いてもらっては困る。進化せよキングフォーム。奴に真の姿を見せてやれ」
「!?」
エニーズ03が、力強くそう宣言すると、彼のBパッドは金色に輝き、キングフォームのカードテキストに、本来であればなかったはずの【OC】効果を追記して行く。
見たこともない現象に、流石のオーカミも戸惑いが隠せない。
「カードのテキストが変わった!?……何をしたんだ」
「簡単な話。進化させたのだ、私の『オーバーエヴォリューション』の力でな」
「オーバー、エヴォリューション……?」
エニーズ03の口から出た「オーバーエヴォリューション」と言う単語。
それは、この世界ではごく一般的に用いられる単語であるが、そう言ったモノに疎いオーカミは首を傾げる。
「エニーズ02が持つ『王者』の力。初代エニーズが持つ『進化』の力。私は、それら2つを併せ持つ。故に、私は誰にも負けない、史上最強のカードバトラーなのだ」
「……」
オーカミはあまりピンと来ていないようだが、目の前に存在するエニーズ03は、まごうことなきバケモノ。
「進化」の力でカードを好きなように創造し、「王者」の力で己の勝利の未来を導き出す。
正真正銘、無敵にして最強のカードバトラーだ。
「アタックステップ。キングフォームでアタック!!」
遂にエニーズ03のアタックステップ。進化したキングフォームの、脅威的な効果が発揮される。
「キングフォームのアタック時効果、相手スピリット2体をBPマイナス20000し、0になったスピリットをデッキ下に戻す」
「!」
「消え去れ、ランドマン・ロディ、バルバトスルプス!!」
キングフォームは、自身の鎧と同じく黄金に輝く大剣を手に持ち、それを横に振るう。
すると、次元ごと空間が切断され、巻き込まれたランドマン・ロディとバルバトスルプスは塵芥となり、砂浜に溶け込む形で消え去って行く。
「契約煌臨元のブレイドの効果。カウント+1。デッキ上のギャレンを手元に置き、残ったパイロットブレイヴのBPをマイナス3000、デッキ下へ。さらにもう一度カウント+1」
「王者」の力を使っているため、全ての未来を把握しているエニーズ03。デッキトップのカードを確認せずに言い当て、手元に置く。
「キングフォームの【OC】効果。私のカウント4につき1つ、キングフォームのシンボルが追加される。私のカウントは8。よってキングフォームはトリプルシンボル。貴様のライフを一撃で葬り去る」
オーカミの残りライフは3。このままキングフォームのアタックが決まって仕舞えば、エニーズ03の宣言通り、彼の敗北だ。
「フラッシュマジック、デスタメント」
「……」
「効果により、コア3個以上のキングフォームを破壊だ」
当然それは通さない。
オーカミは、紫のマジックカードによるカウンターで一発逆転を狙う。
フィールドでは、淀んだ紫色の靄が、キングフォームを飲み込んで行き、その黄金の鎧を蝕んで行く。
かと思われたが……
「キングフォームのさらなる【OC】効果。このスピリットがフィールドを離れる時、手元のカード2枚を生贄に捧げることで、場に残る」
「なに……ッ!?」
キングフォームの黄金の輝きは、淀んだ紫の靄を寄せ付けず、掻き消してしまう。
これにより、オーカミの起死回生の一手は潰えて………
「これで思い知っただろう。私に貴様のバトルスピリッツは、何一つとして通じぬ」
「くっ……」
「盛大に散るがいい。トドメだ、キングフォーム!!」
縦一直線に振るわれた、キングフォームの黄金の大剣。
それは、オーカミのライフバリアを容易く斬り裂き、オーカミ本人にも………
〈ライフ3➡︎0〉鉄華オーカミ
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁあ!?!」
直撃。凄まじく重たい強烈な一撃が、オーカミを襲い、叫ぶ間もなく気を失って砂浜に倒れ込む。
これにより、バトルは「王者」と「進化」の力を発揮させた、エニーズ03の圧倒的勝利で幕を下ろした。
「……」
「死んだか。まぁ当然だな」
勝利を収めたエニーズ03はその後、寝かしたライの元へ足を運び、彼女を両手で抱き抱える。
「待たせたな、我が妻、エニーズ02よ。さぁ到着するぞ、我らの式場が」
そう告げると、直径にして約200m程度だろうか、海から突如として、巨大な黒い潜水艦が、水飛沫と共に浮上して来た。
「今こそ幸せをつかむ時だ」
「ま、待てよ……!!」
「ッ……!?」
「ライは、オマエなんかに渡さない……!!」
「貴様、キングフォームの一太刀をまともに受けて、まだ息があるというのか」
「もう一度、オレと……戦えよ!!」
エニーズ03が、浮上した潜水艦に乗り込もうと足を運ぼうとした直後、彼のズボンの裾を掴んで止めたのは、他でもない鉄華オーカミ。
ライを護るため、地べたを這いずりながらも、もう一度エニーズ03と戦おうとしている。
「まだわからぬのか。エニーズ02は、この私、エニーズ03といるのが幸せなのだ」
「なわけ、ないだろ!!」
鋭い気迫と剣幕を見せるオーカミだが、所詮は虫の息。もう戦う気力など、微塵も残っていない。
「図に乗るなよ猿が」
「ぐっ……」
「貴様は知らぬのだ。孤独を、闇を。何も見えない、掴めない暗闇の中、7年も1人でいたことがあるのか、貴様に!!!」
エニーズ03は、容易くその手を振り解き、怒りの赴くままに、オーカミの顔を何度も踏みつける。
オーカミの顔が腫れて来る中、エニーズ03が脳内に思い浮かべていたのは、己が体感した、暗闇と孤独。
「はぁ、はぁ……まぁいい。生きていようが、死んでいようが、貴様に我らの式場は特定できない。決してな」
「……」
「ハハハ、ハーッハッハッハ!!!」
ついに本当に気を失ってしまったオーカミ。
エニーズ03は、勝ち誇ったように高笑いし、ライを抱えたまま、式場と称した潜水艦へと飛び移る。
そして潜水艦は再び海へと潜って行く。夜のオリハルコンビーチには、傷だらけになって倒れ込むオーカミが、たった1人取り残され………
「……ニッヒヒ」
ては、いなかった。
潜水艦が遠く離れて行く中、そこには、傷だらけになって倒れたオーカミを見つめながら、不気味且つ奇怪な笑い声を上げる、黒くて長い髪を持つ少女が1人………
******
ここは、闇。
一筋の光すら迷い込まない、狭くて、黒い闇。
ただし、暖かく、優しい闇でもある。
そんな場所に、オーカミはたった1人、ポツンと立っていた。
「どこだ、ここ。オレ、何してたっけ?」
夢でも見ているのか、今のオーカミは記憶が曖昧であり、さっきまでの出来事さえ思い出せないでいた。
「貴様、最近負けが多いんじゃないか?」
「……バル、バトス?」
「我が鉄華団を使っておきながら負け続けるとは、情けない」
背後から聞こえてきた、邪悪で禍々しい魔王のような声。
オーカミが振り返ると、そこにいたのは、自分の身長の半分程度しかない、これでもかとデフォルメされた、小さなガンダム・バルバトス。
それが話しているのを見た途端、オーカミは自覚する。これは夢である、と。
「聞いているのか?」
「聞いてる。オマエ、本当にオレがいつも召喚している、あのバルバトスなのか?」
「あぁ?……バカ言え。アレは余の分身。貴様如きが余を召喚できるものか」
「へぇ」
「ツノを触るな、ツノを!!」
バトスピを始めて以降、自分が最も愛用しているバルバトスが目の前に出て来た事により、オーカミはそれに興味津々。表情はいつもと変わらずほぼ「無」であるが、ツノを思わず触ってしまう程に、そのテンションは上がっている様子。
「Dr.Aの置き土産、エニーズ03か。また厄介な敵を相手にしたな」
「……アンタ」
バルバトスに続いて現れたのは、年齢にして40代前後の男性。オーカミよりも澄んだ赤色の髪が特徴的だ。
「あの時の」
オーカミは思い出す。徳川フウに敗北し、コンクリートの瓦礫の山の下敷きになったあの日のことを。
そこから救い出してくれた人がいたことを。
そして、その人に現在の最強鉄華団スピリット「ガンダム・バルバトスルプスレクス[最終決戦時]」のカードを託されたことを。
あの時は包帯巻きで目が見えなかったが、オーカミには声だけでわかる。今、目の前にいるこの人物こそが………
「よく、覚えていたな」
「なんとなく。アンタ、何者だ。なんで鉄華団を持ってたんだ?」
「フ……今こそ、月王者を覚醒させる時だ」
「?」
男は、オーカミの疑問には答えず、急に意味のわからないことを話し出す。
「なに、月王者って」
「鉄華団に敗北は許されない。次は負けるな」
「あ、おい」
突如、空間が歪み始める。バルバトスと男が立っている位置が、オーカミの立っている位置から遠く離れて行く。
その間に生じた隙間より、眩い光が差し込む。その光は、まるでオーカミをこの場から追い出そうとするかの如く、瞬く間に広がり………
「信じているぞ、オーカミ。オマエは、オレのただ1人の……」
男のその最後の言葉が耳に入って来た時点で、オーカミは、この空間から光と共に弾き出された。
******
「!!」
知らない場所、知らない部屋。知らないベッドの上。
オーカミは目覚め、勢い良く上半身を起こす。頬に湿布、身体に大量の包帯。誰かが自分をここで治療してくれたのだと察した。
「オレ、誰と何してた?」
微かな夢の記憶。何か誰かに大事なことを言われたような気がするのだが、オーカミは闇の空間にいたこと以外は何も覚えていなかった。
「ニッヒヒ。ごきげんよう、オーカミさん」
「!!」
突然聞こえて来た、その不気味な声に鳥肌が立った。
無理もない、オーカミがこの声を忘れるわけがないのだから。
「オマエ、徳川フウ……!!」
「お久しぶりで〜す」
その顔を見るなり、オーカミの怒りは剥き出しになる。
それもそのはず、目の前にいる長い黒髪の少女、徳川フウは、ライを騙し、陥れ、終いには彼女の父親、春神イナズマを殺害した張本人。
あの時のライの絶望と哀しみを、オーカミは決して忘れない。怒るなと言うのが、無理な話である。
「なんでオマエがここに」
「ここは私の隠れ家です。あんまり動くと傷口が開いちゃいますよ。ここまで貴方を運ぶの大変だったんですから」
「ふざけるな。オマエのせいでライが……」
オーカミは、自分の口から自然と「ライ」の名前が出てくるなり、彼女がエニーズ03と名乗る謎の少年に連れ去られたことを思い出す。
それと同時に、居ても立っても居られなくなり……
「そうだ、ライ。助けないと……ッ」
「ほらほら、動くと悪化しますって」
ライを助け出そうとベッドから離れるが、僅か数メートル歩いただけで腹部の傷口が痛み、片膝を突いてしまう。
「うるさい。オマエは早くどっか行けよ」
「あら〜命の恩人に対してなんて冷たいんでしょう。そんなに彼女が大事なんだ〜」
痛みに耐えながら、なんとか立ち上がるオーカミ。ライを探そうと、また歩き始めようとするが……
「どこを探しても無駄よ。貴方にエニーズ03は見つけられない」
「なに」
徳川フウが言葉でその動きを静止させる。声色からして、おふざけではなく、本気の様子。
「エニーズ03は、かつて私のお祖父様、徳川暗利ことDr.Aが秘密裏に研究を行うために造り上げた潜水艦『クロガネ』で太平洋を横断中なのよ?……貴方1人で追いつこうだなんて、到底不可能」
「なんでそんなこと知ってるんだよ」
「お祖父様の研究資料にあったからよ。エニーズ03。かつてお祖父様がクロガネ内部で研究し、造り上げた、進化と王者の力を併せ持つ究極のエニーズ。他のエニーズを操る力もあるそうよ」
「……そうか、だからライはあの時」
オーカミは、浜辺でライが突然頭に割れるような痛みを受けて、虚になったことを思い出す。あれも全てエニーズ03の仕業だったのだ。
「お祖父様的には、己の懐刀にするつもりだったのかしらね。まぁそれは結局引き抜かれることなく、こうして7年もの間、暗闇の中に葬られていたわけだけど」
「……」
徳川フウは、エニーズ03のことを知っていた。
要約すると、エニーズ03は、Dr.Aの置き土産。かつて彼が大暴れした『A事変』が起きるほんの少し前に造られ、そのままクロガネと言う潜水艦に置き去りになっていたのだ。
それがこうして今、怒りの矛先を何故かオーカミへ向け、牙を剥いている。
「オーカミさん。私、個人的にエニーズ03に興味があるんですけれども、ここは1つ、手を組みません?」
「なに」
「私のBパッドにある空間移動装置は、彼の潜水艦、クロガネにも通じている」
「!!」
「2人でクロガネに乗り込みましょう。貴方はあの腐れ人造人間でもなんでも助ければいいわ。そこでの私の行動を全て黙認していただければね」
「……」
フウが持ち掛けて来たのは、取引だ。
要するに、エニーズ03とライのいる潜水艦に連れて行く代わりに、そこでの自分の行いを、良し悪し問わず、全て黙って見ておけと言うこと。
オーカミにとっては願ってもないチャンスではあるのだが、行動を黙認しろと言う条件がどうも引っかかる。
「わかった」
しかし、それでもほぼ即答で賛同の返事。ライを助けに行けるのであれば、手段は問わないと言う彼の気概を感じる。
「お、意外と早いお返事」
「だけど条件がある」
「?」
「オレの仲間に、ライに絶対手を出すな……!!」
オーカミは鋭い剣幕でフウ威嚇し、自らの条件も提示する。
それに対して、フウは涼しい顔を見せながら「はいはい、わかりましたよ〜」とでも言わんばかりに、軽く両手を上げて……
「もちろん。君の大事なモノに手は出さないよ。約束しよう」
「その約束を破ったら、今度こそオマエを消す」
「相変わらず一々物騒だなぁ。1時間後、最低限貴方の傷口が閉じている頃合いだ。それまでに支度しておいてくださいね」
「……」
掌をひらひらと振りながら、フウはこの部屋を後にする。
オーカミはそれを鋭い目つきのまま見届けると、すぐさま己のデッキのカード達をベッドの上で広げ、エニーズ03に勝つためのデッキ構築を開始した。
******
「ん、んん?」
床も壁も天井も、全てが黒鉄で敷き詰められた、広大な空間。
ライはそこでようやく目覚める。しかも何故か知らぬ間に、真っ白なウエディングドレスを着せられていて………
「うわぁ、ちょちょちょ、どこだここぉ!?……なんでウエディングドレス!?」
さっきまでオリハルコンビーチ、海にいたのだから、この状況に驚いても仕方ない。
そんな折、2つの足音が、この空間にこだまして。
「ようやく、お目覚めですね」
「!!」
「眠れたか、我が妻、エニーズ02よ」
その足音の正体は、新郎新婦の如く、黒いタキシードに身を包んだエニーズ03と、藍色の髪を持つ青年。
「だ、誰。なんで私がエニーズ02だって」
「私の名はエニーズ03。貴女との出会いは必然であり運命」
「エニーズ、ゼロスリー?」
エニーズ02のことを知っているのは、極小数の人のみ。エニーズ03に対する、ライの警戒心は強まるばかりだ。
「03様。そう言う接し方だと、警戒されるだけかと」
「なに、問題ないぞアイゼン。もうすぐ私の妻となるのだ。私のことは全て受け入れてもらわねば困る」
アイゼンと呼ばれる藍色の髪の青年が、エニーズ03にそっと伝えるが、彼は全く聞く耳を持たない。
「あの〜〜さっきから私のこと「妻」って呼んでるっぽいけど、え、なに。どう言う状況なんでしょうか」
ライが訊いた。目覚めた直後にこんな状況に陥れば、誰だってこの程度の疑問は出て来るだろう。
エニーズ03は、彼女ならばと、その質問を聞き入れる。
「ここは、我らの式場だ。もうすぐ、ここで式をあげる」
「いや、あの、そう言うことじゃなくて。なんでこう、なんて言うかな、君と結婚することになってるのかな〜的な。私こう見えて心に決めた人がいるんだよな〜的な」
「無論。貴女と私は運命の赤い糸で結ばれているからだ」
「………」
だ、ダメだコイツ、全然話にならねぇ。
ライはそう思った。それと同時に、取り敢えずこのわけのわからない空間から逃げ出してしまおうと考えて。
「あ、あぁそうなんすね。はいはい、じゃあ私はこれで」
「ここは巨大潜水艦クロガネの中。今出れば溺れるだけだ」
「え、潜水艦!?……ちょちょちょマジ!?…じゃあ今私海の中にいるってこと!?」
「お、気に入ってくれたか」
「いや、そう言うのじゃなくて」
さり気なく出て行こうとするが、この中が海中を泳ぐ潜水艦であることを知らされ、またも驚かされる。
「元々ここは10年近く前、Dr.Aが私を開発するために造り上げた物。誰もここを特定することはできんし、来ることもできない。鉄華オーカミであってもな」
「!!」
「くくく、奴め。仮に生きていたとしても、相当悔しがっているだろうな。いい気味だ。
ここで初めてオーカミの名前が出て来る。ライはエニーズ03の口振りから、オーカミに何かあったのではないかと心配するが、それと同時に安心もして………
「来るよ」
「なに」
「オーカは来る。絶対に来る。何がなんでも、死ぬ物狂いで私を助けにやって来る。それがアイツだから」
「……」
エニーズ03は言い返す言葉を失う。
ライにここまで信頼されているオーカミに対して、怒りと嫉妬を覚え、感情がそれだけで充満してしまったからだ。
「だから私帰るよ。アイツに心配掛けたくないんだ。この潜水艦、浮上できる?」
「……」
「どしたん?」
「羨ましい」
「ん?」
「羨ましい。何故アイツ如きが貴女に信頼されている。絆がある。私もそれが欲しい、何故私にはそれを手にできないのだ」
「ちょちょちょ、落ち着きなさいって」
怒りと嫉妬に塗れたエニーズ03の感情が爆発。ライの両肩に両手を置き、何故だと言い放ちながら、それを揺さぶる。
「そうか。信頼される枠はただ1つのみ。つまり、奴の記憶をエニーズ02から消して仕舞えば」
「え」
突如出て来た「記憶を消す」と言う不穏なワードに、ライの表情と身体が硬直する。
「そうだ。私とあろう者が、何故この案を最初から思いつかなかったのだ。ハハハ、ハーッハッハッハ!!」
オーカミが助けに来る間もなく、ライに狂人の魔の手が迫る。
******
「準備はできましたか?」
「あぁ」
一方、ここはどこにあるのかもわからない、徳川フウの隠れ家。
フウの呼び掛けに、オーカミは頬の湿布を剥がしながら応答する。
「フフ、では共に参りましょうか、戦場へ」
そう告げると、フウは己のBパッドを操作し、空間移動装置を起動。眼前の空間に大きな穴を開ける。
その先には、ライのいる巨大潜水艦クロガネの内部が広がっていて。
「約束、守ってくださいね」
「オマエもな」
無駄な会話はほとんどしない。2人は互いに約束の最終確認だけを行うと、すぐさまクロガネへと飛び込んで行った。
「ここにライがいるのか」
「……」
「どした」
「別に、ただ古傷が傷むだけです」
クロガネに突入した直後、フウが震える両腕を支え合うが如く、腕を組む。
オーカミは気づきもしないだろうが、ここはかつて、フウが祖父であるDr.Aに王者の実験台として使われた場所なのだ。
彼女は未だ忘れない、惨たらしく死んだ父母のこと、そしてそれを笑顔で実行する、狂気に満ちた祖父のことを。
「この先にある最深部は、ここよりもっと広い。おそらくエニーズ02はそこにいる。エニーズ03もね」
「わかった」
フウが指を刺した方向に向かって走ろうとするオーカミ。
しかし、それを遮るかのように、とある人物が行手を阻んで。
「おやおや」
「!!」
その人物は藍色の髪の青年。エニーズ03からは「アイゼン」と呼ばれていた男だ。
彼が現れるなり、オーカミは足を止め、フウはその目を鋭く細める。
「大した直感だ。いや信頼と言うべきなのでしょうか。まさか本当に鉄華オーカミがこのクロガネに足を踏み入れようとは」
この時、クロガネの脳裏に思い浮かべていたのは、ライの「オーカは必ず来る」と言う言葉。
「ですが、貴女とご一緒に行動していたのなら、納得のいく結果ですね、徳川フウ様」
「……へぇ、私のこと知ってるんだ」
「それはもちろん。貴女はかの徳川暗利博士、Dr.Aの実のお孫さんなのですから」
「アンタ誰だ」
会話の最中、オーカミが言葉でそれを遮る。
「これは申し遅れました。私の名はアイゼン。エニーズ03様に仕え、従い、幸せへと導く者です」
「幸せ?」
エニーズ03の配下であることを明かすアイゼン。彼の口から出た「エニーズ03を幸せへと導く」と言う言葉に、オーカミは反応を示し。
「まさかその『幸せ』が、エニーズ03とライの結婚なのか」
「えぇ、そのとおりですよ。2人は結ばれる運命。やがて世界は2人だけの物になるでしょう」
「オマエ……」
途端、オーカミが懐から取り出そうとしたのは、エニーズ03を倒すために調整した、己のデッキ。
バトルで彼を倒そうと考えたのだろう。
「ちょっと待ってください、オーカミさん」
「!」
しかし、横にいた徳川フウが、オーカミのその行動を静止させる。
「ここは私に任せて、貴方はお先に行きなさいな」
「なんのマネだ」
「別に味方になったつもりはありませんわ。ただ、さっきの自己紹介で、個人的にあの男に興味が出ただけ。それに言ったでしょう、私の行動には目を瞑れと」
「……わかった」
フウは敵。なんの感謝の言葉をかけない。かける必要がない。オーカミは彼女を置いて、さらにはアイゼンの目の前を通過し、先を急ぐ。
これで、この場に残されたのは、フウとアイゼンのみとなり……
「あら、案外簡単にオーカミさんを通してくださるのですね」
「僭越ながら、私も貴女には興味があったもので。是非、お話をたくさんお聞かせていただきたく存じ上げます」
「フフ、Bパッドを向けながら言うセリフかしら?」
デッキを装填したBパッドを左腕に装着し、バトルの構えを取るアイゼン。
フウもまた、同じようにBパッドを取り出す。
「まぁ、こちらとしても願ったり叶ったり。お相手いたしますわ」
………ゲートオープン、界放!!
かつてDr.Aが使っていたとされる潜水艦「クロガネ」……
その中で、彼の孫である少女フウと、エニーズ03を幸せに導く者だと豪語する青年、アイゼンによるバトルスピリッツが開始される。
先攻はアイゼンだ。
[ターン01]アイゼン
「メインステップ。先ずはネクサス、緑の世界を配置します」
ー【緑の世界】LV1
アイゼンの最初の一手は、緑を使う色なら高い汎用性を発揮するネクサスカード、緑の世界。
彼の背後に、緑の大木が出現する。
「配置時効果でコアブースト。さらに増えたコアで2枚目の緑の世界を配置します」
「へぇ」
ー【緑の世界】LV1
2枚目の緑の世界そうそうに配置するアイゼン。効果によりまたコアが増えるのかと思いきや………
「配置時効果でコアブースト。と、言いたいところですが、ここで最初の緑の世界の効果、コアブーストをドローに変換。よって私はコアブーストの代わりにデッキから1枚ドロー」
特定の系統を持つカードのコアブーストをドローに変換できる緑の世界の隠された効果。それにより、アイゼンはコアブーストではなく、デッキから1枚のカードをドロー。
「これで私はターンエンド。貴女のターンですよ、フウ様」
手札:4
場:【緑の世界】LV1
【緑の世界】LV1
バースト:【無】
いきなり強力なパワーカードを2枚も場に呼び出したアイゼン。余裕の笑みを浮かべながらそのターンを終える。
[ターン02]徳川フウ
「メインステップ。ネクサスカード「シンジくん江」を配置」
ー【シンジくん江】LV1
フウの初手もネクサスカード。フィールドには何も出現しないタイプだ。
「配置時効果、デッキ上から4枚オープンし、その中にある対象のネクサスカード1枚を、全ての軽減を満たして配置する。葛城ミサト」
ー【葛城ミサト】LV1
配置時効果で配置されたのは、創界神ネクサス。これもフィールドには出現しないタイプであるが、世にも珍しい赤と紫のダブルシンボルを持つ創界神ネクサスだ。
その配置の神託により、3つのコアが追加された。
「ターンエンド。少しは楽しませてくださいね」
手札:4
場:【葛城ミサト】LV1(3)
【シンジくん江】LV1
バースト:【無】
フウの言葉に対し、不適な笑みを浮かべながら「もちろんですとも」と答えるアイゼン。
胸中に明らかな企みがある両者のバトルは、やがて2週目を迎える。
******
一方、アイゼンの相手をフウに任せ、先を急いだ鉄華オーカミ。
傷が痛むのを堪えながら、全力で走り続ける彼。そして遂に、フウの言っていた最深部らしき扉を目の前にして………
「アイツが言ってたの、ここか?」
鉄でできたそれを押して、開ける。
中は言われた通り、さっきよりもずっと広い空間が広がっていた。
そして、そこにいた人物も………
「ライ!!」
「!」
ライがいた。なんでウエディングドレスなんて着ているのかはさて置き、彼女を視界に入れるなり、オーカミはそこへと再び走り出した。
「よかった。無事だったんだな……」
「……」
「ライ?」
オーカミがライに近づくと、ライは戸惑った様子を見せながら半歩程彼から遠ざかる。
これは明らかな拒絶だ。こんなこと、普段なら絶対にありえない。彼女の困惑するような眼差しは、逆にオーカミをも混乱させた。
さらに、次に放った一言は、衝撃的なモノで……
「貴方、誰ですか?」
「ッ……!?」
その瞬間、オーカミは計り知れない失望感を味わった。何か大事なモノを失っていることに気がついたからだ。
他人の空似の人違いと言う線も僅かに考えたが、そんなわけないと直ぐに塗り潰される。服が大きく変わっても、オーカミが見抜けないわけがない。目の前にいるのは絶対に春神ライだ。
なら何故。
何故ライはオーカミのことを忘れているのか。
答えは、直ぐ側にあり………
「よもや、こんな所まで来ようとは。本当に命の知らずの猿よ」
「ッ……エニーズ03!!」
オーカミの目の前に現れたのは、エニーズ03。彼を視界に捉えるなり、オーカミは鋭い剣幕を見せる。
だがそれも束の間、オーカミの近くにいたライは、逃げるようにオーカミの元を去り、ウエディングドレスの長いスカート丈を持ち上げながら、エニーズ03へと走って向かい………
「ライ?」
「おぉ怖かったろうエニーズ02よ。もう安心だ。私が来たからな」
エニーズ03の背後に隠れた。オーカミに、僅かな嫉妬の気持ちと、喪失感が芽生える。
「オマエ、ライに何をしたんだ」
「契約スピリット。貴様も知っているだろう。奴らにはこの世の常識では測れない、特別な異能を持つ者もいる」
「……」
会話の最中、オーカミが思い浮かべたのは、ライを護り続けていたとされるエアリアルと、常に実体化しているシグマのバイス。
確かに、契約スピリット達の中には、特別な力を持った者が多い。
「私の契約スピリット、ブレイドもその1体だ。その能力は『封印』」
「!?」
「あらゆる万物、掴めぬモノでさえ、このカードに封印できる。私が今回封印したのは、エニーズ02の、春神ライとしての記憶だ」
「なに……!!」
その瞬間、謎だった事が全て繋がった。
ライは自分を拒絶したのではない。忘れていたのだ。何せ記憶ごと思い出も奪われていたのだから………
エニーズ03のこの卑劣な行動に、オーカミは激しい怒りを覚える。
「エニーズ03!!!……返せ、ライの記憶を、思い出も、今すぐ全部!!」
「そう喚くな。そもそもアレは間違った記憶。これから私と紡いで行く思い出こそが、エニーズ02の本来あるべき記憶なのだ」
「違う。それはオマエが植え付けたいだけだ!!」
珍しく声を荒げる程の怒りを露わにするオーカミ。
その怒号には、ライを守れなかった悔しさと歯痒さ、エニーズ03に対する憎しみが、これでもかと捻じ込まれている。
「いい加減喧しいぞ、野生の猿如きが。自分の考えを押し通したいのであれば、勝って見せろ。無論、バトルでな」
「………」
エニーズ03がそう告げると、オーカミは無言のまま「臨むところだ」と言わんばかりに、Bパッドを装着し、バトルの準備を行う。
「また待たせてしまうな。すまないが、もう少しだけ我慢していてくれ」
「何をですか?」
「………結婚さ」
エニーズ03も同様に、己のBパッドを装着し、バトルの準備を整える。
ライは、その間に言われた彼の一言の意味を理解していないのか、首を横に傾げる。
「これで最後にしてやる。海の藻屑となるがいい」
「それはこっちのセリフだ。行くぞ、バトル開始だ!!」
……ゲートオープン、界放!!
海中を泳ぐ巨大な潜水艦クロガネ。その内部にある最も広大な空間にて、記憶を失ったライが見守る中、鉄華オーカミとエニーズ03によるバトルスピリッツが幕を開ける。
先攻はオーカミだ。ライの記憶を取り戻すべく、そのターンを進めて行く。
[ターン01]鉄華オーカミ
ターン開始直後、いきなり本気モードだ。オーカミの側をそよ風が吹き抜け、その雰囲気をより刺々しく変貌させる。
「メインステップ。オルガ・イツカを配置」
ー【オルガ・イツカ】LV1
オーカミの初手は創界神ネクサス。配置時の神託により、デッキ上から3枚のカードが落ち、その上には2つのコアが+される。
「ターンエンド」
手札:4
場:【オルガ・イツカ】LV1(2)
バースト:【無】
やれることが限られている先攻の第1ターン目は終わり、次はエニーズ03の最初のターンとなる。
[ターン02]エニーズ03
「メインステップ。先ずは創界神ネクサス、アークの秘書・アズ」
ー【アークの秘書・アズ】LV1
エニーズ03の初手も創界神ネクサスだ。その背後に邪悪さを仄かに感じさせる、美しい黒髪の美女が出現する。
配置時の神託により、カード上に3つのコアが追加された。
「アズか」
オーカミはこのカードのことを知っている。以前もこのカードを主軸にしたデッキを使うカードバトラーと戦ったことがあるのだ。
「アズの効果は自身のシンボルの6色化。よって1軽減し、ブレイドを召喚」
ー【仮面ライダーブレイド[3]】LV1(1)BP3000
再び銀色の契約ライダースピリット、ブレイドが、エニーズ03の元に見参する。
「アタックステップ。ブレイドでアタック。その効果でカウント+1、デッキ上から1枚オープン」
ブレイドのアタック時効果が発揮。エニーズ03のデッキ上から「仮面ライダーブレイド キングフォーム[3]」のカードがオープンされる。
「当たりだ。これを手元に置き、さらにカウントを伸ばす」
「……」
エニーズ03の手元に置かれたのは、前のバトルでフィニッシャーとなったカード。
オーカミの警戒心がより強まる中、彼の眼前にブレイドが立ち尽くしていて………
「本命のアタックだ」
「ライフで受ける」
〈ライフ5➡︎4〉鉄華オーカミ
「ぐぁっ……!?」
ブレイドの剣撃が、オーカミのライフバリアを襲う。実態を伴う真のバトルスピリッツにより、またしてもオーカミ自身にも大きなダメージを負う。
「どうした、足元がふらついているぞ」
「ッッ………オレのライフが減ったことにより、手札からマジックカードを発揮する」
「!」
今にも倒れそうになるオーカミだが、ライのため、歯を食いしばり、持ち直すと、手札にある1枚のカードをBパッドへと叩きつける。
「ソーンプリズンLT。これにより、ブレイドを重疲労だ」
「緑のカードだと」
大地より芽吹き、ブレイドを閉じ込めたのは、蔦でできた檻。
これにより、ブレイドは再起動までに2度の回復を有する状態、重疲労状態に陥る。
「これで次のターンはアタックできないだろ」
「紫だけでは私に勝てないと見て、他の色で対抗して来たか。小癪だな」
「ある物は使うのがオレのバトルだ。オマエに勝つためなら何色でも使ってやるさ」
「フン……何をやっても結果は変わらんわ。ターンエンド」
手札:3
場:【仮面ライダーブレイド[3]】LV1
【アークの秘書・アズ】LV2(3)
手元:【仮面ライダーブレイド キングフォーム[3]】
バースト:【無】
カウント:【2】
手元のカードやカウントを溜めるも、オーカミのソーンプリズンLTにより、ブレイドの動きを封じられたエニーズ03。しかし、その言動と態度から、まだまだ余裕がある様子。
[ターン03]鉄華オーカミ
「メインステップ。クーデリア&アトラ」
ー【クーデリア&アトラ】LV1
オーカミは2種目の創界神ネクサス、クーデリア&アトラを配置。その神託により、またトラッシュが増え、カード上に2つのコアが+される。
「バーストをセットして、ターンエンドだ」
手札:2
場:【オルガ・イツカ】LV1(2)
【クーデリア&アトラ】LV2(2)
バースト:【有】
「なんと愚鈍なるプレイングよ。ブレイドを重疲労状態にしたと言うのにもかかわらず、何もしないとは」
「一々長い。いいから、早くターンを進めろよ」
煽り合いの中、ライとエニーズ02を賭けたバトルスピリッツは、もうまもなく第4ターン目へと進む。
******
「舞い上がれ、美しき花びらのように。2、3体目のリリモンを召喚」
ー【リリモン】LV1(1)BP7000
ー【リリモン】LV1(1)BP7000
視点は切り替わり、フウとアイゼンのバトル。第7ターン目、アイゼンは花の妖精と言った姿をした、緑の完全体デジタルスピリット、リリモンを一気に2体召喚。
合わせて3体のそれをフィールドへと揃えた。
「そう言えば、貴方はどうして私などに興味を。やはり、Dr.Aの孫だから?」
バトルの最中、フウがアイゼンに訊いた。
「もちろんそれもありますが、1番は貴女が彼に宿っていた『悪のカリスマ性』を色濃く受け継いでいるから、ですかね」
「悪のカリスマ性、ですか」
意味深なセリフを吐いた直後、アイゼンは「アタックステップ」を宣言。リリモンのカードへと指先を添える。
「リリモンでアタック。その効果でボイドからコアを2つ、自身に置き、ターンに一度だけ回復」
「ライフで受けましょう」
〈ライフ3➡︎2〉徳川フウ
リリモンは、両手で持っている花の形をしたバズーカ砲から、花粉の団子のような光球を射出。
1体もスピリットを従えていないフウは、その攻撃をライフバリアで受ける。これにより、ライフバリアは1枚砕け、残り数は2となる。
「お話は耳にしておりますよ。貴女の悪行の数々、嵐マコトを手なづけ、エニーズ02の心を踏みに弄り、春神イナズマを殺害した。やはり貴女はあのお方の血筋を引く、天性の悪」
「ニッヒヒ。天性の悪だなんて、面白い単語を思い付きますのね」
「ところで、こんなことを考えたことはありませんか?……もしもDr.A様が生きていたら、世界はどうなっていたのかと」
「………」
そんなモノ、フウは毛程も興味はないが、仮にそうであれば、間違いなく世界は混沌を極めていたに違いない。
「私は見てみたいのです。彼が創り上げようとした進化の世界を。2体目のリリモンでアタック。その効果でコアブースト&回復」
「ライフで受けます」
〈ライフ2➡︎1〉徳川フウ
会話の最中に繰り出される攻撃。リリモンが放った光球が、再びフウのライフバリアを直撃し、その残り数は僅か1になるまで追い込んだ。
「かのDr.A様は、ご自身で造り上げたエニーズを大量にばら撒き、世界を混沌に導いた。だから私も是非同じようにエニーズをばら撒きたいのです」
「あぁ、なるほどね。だからエニーズ03を利用したんですか。エニーズ02と子を成させ、いつかエニーズの大群を支配下に置くために」
「素晴らしい。よく私の崇高なる計画を理解しましたね。流石はフウ様だ」
己の野望を口にするアイゼン。要はDr.Aが引き起こした「A事変」と全く同じ悲劇を繰り返してやろうと言うこと。
しかし、それだけではフウと話をする理由にはならなくて………
「気が遠くなるような計画ですね。で、要するに貴方は私に何が言いたいんですか?」
またフウが訊いた。鼻で笑っている辺り、既に若干、アイゼンと言う男に呆れている様子。
そんなことも察せられず、アイゼンはさらに己の胸中を語る。
「では単刀直入に申し上げましょう。フウ様、私は貴女が欲しいのです」
「欲しい?」
「えぇ。これから起こる新たな『A事変』……その顔として、新たなる悪の象徴として、是非貴女に君臨して欲しいのです」
「あら。それは、愉快な話ですこと」
フウの目が徐々に虚になって行く。段々とアイゼンに興味を失って行くのがよくわかる。
「リリモンでラストアタック。これでお終いです。言い忘れていましたが、このバトルで私が勝ったら、無理矢理にでも、私にご協力していただきますからね」
3体目のリリモンでラストアタックを仕掛けるアイゼン。しかも今さら、己の勝利目前で、取ってつけたようなルールを足して来た。最低である。
「貴方は、なんてつまらない方なんでしょう」
「は、私がつまらないだと!?」
唐突に放たれたフウの言葉に、アイゼンはそれを否定するように声を荒げる。
「エニーズ03を解放した人物と聞いて期待しておりましたが、残念。貴方はただのDr.Aオタク。先人の真似事をして偉そうにしたいだけの、ただの小物」
「なんだと」
「しかも。数ある小物の中でも、貴方はさらに下等な小物。だって、貴方はたった1人では何もできないんですもの」
「!!」
「だってそうでしょう。エニーズは繁殖を待つだけ。悪事も全て私と言う打ってつけの存在になすりつけようとして、自分はただそれを傍観しているだけ。なんて小物で、無能な方なんでしょう」
「黙れぇぇぇぇえ!!!」
笑顔のまま次々と煽りの発言を繰り返すフウに、アイゼンは遂に化けの皮を剥がし、己の本性を剥き出しにする。
「さっきから黙って聞いてれば好き勝手いいやがって。Dr.Aの孫だからって言い気になるなよ」
「お生憎様。私は自分がDr.Aの孫であると言う情報は、脅し文句以外で公言したことはありません。そんなクソみたいなレッテル、あるよりない方が百万倍マシですわ」
フウが脳裏に浮かべたのは、Dr.Aの孫だからと言う理由だけで孤独で居続けた過去。皆に蔑まれ、虐げられて来た醜い記憶。
「うるさい。どちらにせよオマエの負けだ。黙ってオレ様の崇高なる計画の一部になればいいんだよォォォ!!!」
刹那。リリモンが花型のバズーカ砲から光球を射出。
それはフウの最後のライフバリアに直撃し、爆散。フウのライフは0となり、このバトルはアイゼンの勝ち。
と、なるわけもなく………
「な、なに!?」
爆発による爆煙が晴れると、そこにはライフバリアが1枚残っているフウと、青紫色の装甲に、不思議な形をした赤い槍を持つ、謎のエヴァンゲリオンスピリットがいた。
突如現れたそれに、アイゼンは驚きを隠せない様子。
「この程度の実力で、本当に勝てると思ってるなんて、ニッヒヒ。お可愛いですね。フラッシュ、葛城ミサトの【神技】の効果。手札からエヴァンゲリオンスピリットを召喚する。私はこの効果でエヴァンゲリオンスピリット、零号機・改をお呼びしてましたわ」
ー【エヴァンゲリオン零号機・改】LV2(2)BP9000
「ッ……創界神ネクサスの効果でエヴァンゲリオンスピリットを召喚しただと!?」
「それだけじゃありません。零号機・改の召喚時効果、手札かトラッシュから、ノーコストで2体まで同族を召喚致します」
「はぁ!?」
「現れ出なさい、2体の弍号機」
ー【エヴァンゲリオン弍号機】LV1(1)BP6000
ー【エヴァンゲリオン弍号機】LV1(1)BP6000
立て続けにフウのフィールドへと見参するのは、布切れをマントとして翻す、赤いエヴァンゲリオンスピリット、弍号機。
「召喚時効果、シンボル2つ以下のスピリット1体を破壊し、その後2枚ドロー。それを2回」
「!?」
「アタックしていないリリモンを2体破壊し、デッキから4枚のカードをドロー」
2体の弍号機は現れるなり、取り出した機関銃を掃射。アタックしていない2体のリリモンがそれに被弾し、爆散へと追い込まれる。
「残ったリリモンのアタックは弍号機1体でブロック。さらにフラッシュタイミングで絶甲氷盾を使用し、このバトルで貴方のアタックステップを終了させます」
「くっ……」
最後に残ったリリモンは、今一度花型のバズーカ砲から光球を放つ。弍号機1体はそれに撃ち抜かれ、爆散してしまうものの、その間に絶甲氷盾が発揮されたため、フウの残り1つのライフバリアを守り抜くことには成功する。
「た、ターンエンド。馬鹿な、私の築き上げたフィールドが」
手札:2
場:【リリモン】LV2
バースト:【無】
「ニッヒヒ。考えが薄っぺらい奴は、バトルも薄っぺらい。そう言えば昔、お祖父様から教わりましたっけ」
完全に己の戦略が瓦解したことにより、項垂れるアイゼン。
フウはそれを見て、嘲笑いながらターンを進めて行く。
[ターン08]徳川フウ
「メインステップ。私は新たな神話となる、エヴァンゲリオン初号機、LV2で召喚」
ー【エヴァンゲリオン初号機】LV2(2)BP8000
ここでフウは、己のエースカードである紫色のエヴァンゲリオンスピリット、初号機を召喚。
カードを見るに、オーカミと以前戦った時とは、また違う物であるようだ。
「アタックステップ。先ずは零号機・改でアタック。その効果でリリモンから全てのコアをリザーブに送ります」
3種3体のエヴァンゲリオンスピリットを従えたフウ。アタックステップに突入し、先ずは零号機・改からアタックを仕掛ける。
零号機・改は、その指示に従い、リリモンに向かって赤い槍を構えて………
「ハハハ、馬鹿。リリモンはコア除去効果を受けない。その効果は無効だ!!」
「この効果は相手の効果で防げませんわ」
「な!?」
「貫け」
投擲された赤い槍は、一直線に飛び行き、上空のリリモンを貫き、それを爆散させる。
完全なフィールドを完成させて気でいたアイゼンであったが、フウが従えるエヴァンゲリオンスピリット達の前では足元にも及ばなかった。
「アタックは継続中」
「ら、ライフだ」
〈ライフ5➡︎4〉アイゼン
爆風で戻って来た赤い槍を再びその手で掴み取り、そのままそれをアイゼンのライフバリアへと振るう零号機・改。
アイゼンのライフバリア1枚は、まるで紙切れのように斬り裂かれる。
「だ、だが私のライフは4。フルアタックを受けてもまだ………」
「あら、ひょっとしてまだ負けないとでも思ってますの?……そんなわけないでしょう。初号機の効果を発揮」
「!?」
「エヴァンゲリオンスピリットが相手のライフを破壊した時、追加でライフ1つを破壊します」
「な、そんな……」
〈ライフ4➡︎3〉アイゼン
零号機・改の動きに合わせて、初号機も動く。どこからともなくナイフを取り出し、それをアイゼンのライフバリアへと投げつけ、突き刺す。
アイゼンのライフバリアはまた1つ砕け散る。
「う、嘘だ。こんなこと」
「弍号機」
「あ、あぁ、ら、ライフ」
〈ライフ3➡︎2〉アイゼン
「初号機の効果」
「い、嫌だ。負け、負けたくない」
〈ライフ2➡︎1〉アイゼン
「うわぁ!?」
弍号機と初号機が連携し、ナイフでアイゼンのライフバリアを斬り裂いて破壊する。
その数は遂に残り1つ。そして、初号機はまだアタックが可能。
「ありえない。ありえない、私の崇高なる計画に亀裂が生じるなど……」
「それでは、消えてください。初号機でラストアタック」
「や、やめ」
笑顔のまま残酷なラストアタックを宣言するフウ。初号機はその声を聞き入れると、ナイフをもう一度、アイゼンのライフバリアへと突き刺す。
それは衝突のインパクトと共に、ひび割れて行き………
〈ライフ1➡︎0〉アイゼン
「う、ァァァァァァァァ!!!」
完全に破壊される。アイゼンは最後のライフバリアが砕けた衝撃によって吹き飛ばされ、そのまま壁に頭をぶつけ、気を失う。
これにより、勝者は徳川フウだ。Dr.Aの血を継ぐ者を感じさせる、圧倒的な力で捩じ伏せて見せた。
「結局、退屈凌ぎにもなりませんでしたわね。使えそうなら手を組んであげようと思っていたのに、がっかりです」
気を失ったアイゼンを通過し、フウもまた、己の目的を果たすべく、クロガネの中を歩き出すのであった。
******
記憶を失ったライが見守る中、オーカミとエニーズ03のバトルは続く。
次はエニーズ03の第4ターン目だ。
[ターン04]エニーズ03
このターンのリフレッシュステップ。エニーズ03のブレイドは回復するが、オーカミのマジック、ソーンプリズンLTにより重疲労状態にさせられていたため、回復状態ではなく、疲労状態となる。
実際のフィールドでは、ブレイドを閉じ込めていた蔦の檻が僅かに朽ちる。次のターンまでには、ブレイドがここを脱出するに違いない。
「メインステップ。契約スピリットが動けぬからと言って、止まる私ではない。ギャレンを召喚」
ー【仮面ライダーギャレン[3]】LV2(2)BP5000
エニーズ03は、ここでブレイドと同系統のライダースピリット、ギャレンを召喚。
「召喚時効果を発揮。デッキ上から5枚オープンし、その中にある対象カードを手元に置く」
ギャレンの召喚時効果により、エニーズ03のデッキ上から5枚のカードがオープンされる。
その中で発見された対象カードは1枚。だが……
「オープンされた『ギャレン キングフォーム』のカードを手元へ。さらにオープンされたネクサスカード『BOARD』の効果、手札に加え、カウント+1、それが2枚。そしてオープンされたマジックカード『ブレイバックル』の効果、これも手札に加える」
「………」
「カードが手元に置かれたことで、ブレイドの効果。カウント+1」
たった一度の効果を起点に、数々の効果が誘発を繰り返して行く。
結果的に、エニーズ03は、カウント+4。手札+3枚。手元+1枚と言う大きなアドバンテージを得る。
「フ……これで私のカウントは合計6。キングフォームの【契約煌臨】の条件は整った。次のターンで終わりにしてやろう」
「次のターン?……そんなもの、あると思ってんのかよ」
「……なに」
その時、まるで、この時を待っていたと言わんばかりに、オーカミが僅かに口角を上げ、笑みを浮かべる。
「契約スピリットのアタック時効果を封じられたら、次は必ず召喚時効果を使って来ると読んでいた。相手の召喚時効果発揮後のバーストを発動!!」
「!!」
「魔界七将ベルゼビートXV!!」
「鉄華団ではないスピリットだと」
「効果により、先ずは自身をノーコスト召喚」
ー【魔界七将ベルゼビートXV】LV1(1)BP6000
オーカミのセットしていたバーストカードが勢い良く反転すると同時に蔓延する闇の瘴気。
それを切り裂き、姿を見せたのは、伝説のスピリット、魔界七将に名を連ねる黒き魔神、ベルゼビートXV。
「そんなカードまで仕込んでいたのか」
「本日のハイライトカードだ。召喚時効果、トラッシュから、カード名の異なる、紫1色のコスト4以下のスピリット3体をノーコストで召喚する」
「3体!?」
「1体目、鉄華団モビルワーカー。2体目、ランドマン・ロディ」
ー【鉄華団モビルワーカー】LV1(1)BP1000
ー【ランドマン・ロディ】LV1(1)BP1000
魔神、ベルゼビートXVが雄叫びを上げると、再び闇の瘴気が蔓延。
その中より、銃火器を備えた車両、モビルワーカー。丸みを帯びた装甲を持つランドマン・ロディの2体が出現。
そして、もう1体。
「3体目は、コイツだ。天空貫け、未来を紡げ!!………ガンダム・バルバトスルプス鉄華、LV1で召喚!!」
ー【ガンダム・バルバトスルプス[鉄華団]】LV1(1)BP4000
闇の瘴気を己の覇気で吹き飛ばしながら、豪快に見参したのは、バスターソード状のメイス、ソードメイスと、自身の身の丈程の大きさを誇る超巨大剣、ヴァルキリアバスターソードの二刀流を携える、赤き眼のバルバトス、バルバトスルプス鉄華。
鉄華団の象徴であるバルバトスの、新たなる進化の形だ。
「このバルバトス、今までと雰囲気が違う」
「ルプス鉄華の召喚アタック時効果。デッキ上から2枚を破棄。その中に鉄華団カードがあれば、相手フィールドのコア2個をリザーブに置く」
2枚の破棄カードの中には、当然ながら鉄華団のカードが含まれている。
ルプス鉄華は、エニーズ03のフィールドにいるギャレンへと狙いを定めて………
「ギャレンのコア2個をリザーブへ叩きつける。消滅だ」
ルプス鉄華は、ソードメイスとヴァルキリアバスターソードの二刀流で、瞬く間にギャレンを斬り刻み、消滅へと追い込む。
「この効果で消滅に成功した時、トラッシュから鉄華団カード、三日月を手札に戻す。さらにクーデリア&アトラの【神域】の効果、鉄華団の効果で自分のデッキが破棄された時、トラッシュにある紫1色のカードをデッキ下へ戻して、1枚ドロー」
ルプス鉄華の仕事は、敵スピリットの除去だけに留まらない。トラッシュのカードの回収と、クーデリア&アトラの【神域】の効果の誘発まで行い、オーカミの手札を潤す。
「どうだ」
「猿如きが、図に乗るな。2枚のBOARDを配置、ブレイバックルをミラージュとしてセット。さらにバーストを伏せてターンエンドだ」
手札:2
場:【仮面ライダーブレイド[3]】LV1
【アークの秘書・アズ】LV1(3)
【BOARD】LV1
【BOARD】LV1
手元:【仮面ライダーブレイド キングフォーム[3]】
【仮面ライダーギャレン キングフォーム】
バースト:【有】
ミラージュ:【ブレイバックル】
カウント:【6】
ベルゼビートXVによって召喚されたルプス鉄華により、アタックできるスピリットを消されたエニーズ03は、手札に溜め込んだカードを大量に吐き出し、結局全く攻撃ができないまま、そのターンを終える。
次はオーカミのターンだ。その身体より溢れる気迫から、ここで決めようとしているのがよく伝わって来る。
[ターン05]鉄華オーカミ
「メインステップ。決めるぞ、三日月を召喚し、ルプス鉄華に直接合体。LVを2にアップだ」
ー【ガンダム・バルバトスルプス[鉄華団]+三日月・オーガス】LV2(3S)BP13000
「不足コストはモビルワーカーのコアを使う」
前のターンに回収したパイロットブレイヴ、三日月・オーガスを召喚。
不足コストの確保により、モビルワーカーが消滅してしまうものの、それはルプス鉄華と合体し、さらなる強化を促す。
「アタックステップ。ルプス鉄華でアタック。その効果でデッキ上2枚破棄、ブレイドのコアをリザーブに置き、消滅」
ブレイドを閉じ込めているソーンプリズンによって作られた蔦の檻。ルプス鉄華は、それごとブレイドを斬り刻み斬殺。消滅させる。
「この効果で消滅させたことで、トラッシュから鉄華団カードを手札に戻す。さらにクーデリア&アトラの【神域】でドロー」
「消滅したブレイドは魂状態となる」
「次は三日月の効果だ。ネクサス1つのLVコストを1上げて消滅。オマエのリザーブのコアを全てトラッシュへ」
三日月との合体により、強力な力を発揮するルプス鉄華。エニーズ03のネクサスだけでなく、使えるコアまでトラッシュ送りにしてしまう。
「フラッシュ、オルガの【神域】で1枚ドロー。クーデリア&アトラの効果でさらにドロー。フラッシュ、ルプス鉄華のもう1つの効果、トラッシュのカードを6枚除外することで、回復する」
度重なるフラッシュタイミング。オーカミはエニーズ03にトドメを刺すべく、それが回って来る度に効果発揮の宣言を行い、徐々に己が有利な状況を形成して行く。
「忙しい奴だな」
「ルプス鉄華はダブルシンボル、オマエのライフを2つ貰う!!」
「あぁ、ライフで受けよう」
〈ライフ5➡︎3〉エニーズ03
目では追従できない程の、凄まじい速度で暴れ回るルプス鉄華。通り際に、一気に2つ、エニーズ03のライフバリアを砕く。
「ルプス鉄華で、もう一度」
「フフフ、フハハハ!!!」
「!!」
回復したルプス鉄華で2度目のアタックを仕掛けようとした直後、突如としてエニーズ03は高笑いする。
その様子は、まるでオーカミのバトルスピリッツを小馬鹿にしているかのようだ。
「つくづく呆れる。貴様はその程度の力で私に勝ち、エニーズ02を奪い去れると思っていたのか……片腹痛いわ。今一度拝ませてやろう、私の進化&王者をな!!」
エニーズ03の叫びが轟く。すると、彼のBパッドから、見ているだけで息苦しくなるような黒いオーラが溢れ出し、その目下から頬を伝い、王者の刻印が刻まれる。
進化&王者。
これより、エニーズ03のデッキのカード達は進化で強化され、それらは全て王者により最善のプレイで使われることとなる。
「ライフ減少後のバースト発動」
全ての力を解放したエニーズ03。勢い良く反転させたバーストカードは、進化の力による影響か、テキストが全く別のものへと変貌を遂げて行き………
「ジョーカー!!……その効果により、ルプス鉄華とベルゼビートXVを疲労させる」
「なに!?」
突如フィールドに蔓延り始める紫の炎。それは瞬く間にルプス鉄華とベルゼビートXVを炙り、片膝をつかせ、疲労状態へと陥らせる。
「その後、バースト発動時に減ったライフの数だけ、オマエのスピリットのコアをボイドに置く」
「!!」
「ランドマン・ロディとベルゼビートXVから1つずつコアをボイドに送り、消滅」
紫の炎は、次第にその火力を増して行く。
炙られ続けたランドマン・ロディとベルゼビートXVは、体内に眠るコアをも焼き尽くされ、敢えなく爆散。
「フ……紫デッキでコアのボイド送りは辛かろう」
「だけどこの瞬間、ベルゼビートXVの【怨呪撃】の効果を発揮。オレのスピリットが相手によってフィールドを離れた時、デッキから1枚ドロー。さらにオマエのライフ1つを奪う」
〈ライフ3➡︎2〉エニーズ03
爆散しても尚、怨念となってエニーズ03のライフバリアに噛み付いて来たベルゼビートXV。1つを噛み砕いた後にようやく完全に消滅する。
「温い攻撃だ。ジョーカーのバースト効果、最後に自身をノーコスト召喚する。現れよ、我が渾身のワイルドカード!!」
ー【ジョーカー】LV2(2)BP12000
紫の炎は、やがてエニーズ03側のフィールドにて凝縮されて行き、1体の黒い怪人のスピリットを形成する。
その名はジョーカー。ルプス鉄華の攻撃をも軽く凌いで見せた、強力なワイルドカードだ。
「貴様のルプス鉄華はジョーカーで疲労させた。よって私にターンが巡って来る」
「くっ……ターンエンド」
手札:8
場:【ガンダム・バルバトスルプス[鉄華団]+三日月・オーガス】LV2
【オルガ・イツカ】LV2(4)
【クーデリア&アトラ】LV2(4)
バースト:【無】
決め切れず、無念のターンエンド。
進化と王者の力を遺憾なく、それでいて躊躇なく発揮して来る、エニーズ03のターンを迎える。
[ターン06]エニーズ03
「メインステップ。我が真の力に震えて永遠なる眠りにつくがいい。【契約煌臨】を発揮!!」
ターン開始早々に、いきなり手元のカードで【契約煌臨】の宣言。
魂状態となっているブレイドが黄金の鱗粉を纏い、光り輝く。
「王者の力が、今ここに列を成す。黄金の輝きを持って、我に勝利を誓え!!!……契約煌臨、仮面ライダーブレイド キングフォーム!!」
ー【仮面ライダーブレイド キングフォーム[3]】LV2(2)BP12000
ブレイドがその鱗粉を気迫のみで振り払うと、その姿は黄金の輝きを持つ絶対王者、キングフォームへと一新された。
「貴様のような猿に、エニーズ02は渡さん。彼女はこの私と幸せになるべきなのだ」
「それをライは望んでないだろ」
「これから望ませてやるのだ。アタックステップ、キングフォームでアタック」
自分勝手なことを吐き散らし、エニーズ03はキングフォームでアタック。オーカミと最初にバトルした時と同様、強力な効果をいくつも発揮して行く。
「アタック時効果、ルプス鉄華のBPをマイナス20000し、デッキ下に送る」
「くっ……」
キングフォームの振るう黄金の大剣。
ルプス鉄華はソードメイスとヴァルキリアバスターソードを盾代わりに身構えるが、黄金の大剣はそれごとルプス鉄華を容易く砕き、爆散させる。
「契約煌臨元のブレイドの効果で1枚を手元に置き、残ったブレイヴも始末する」
オーカミのBパッド上に残った三日月のカードが、ブレイドの効果によりトラッシュへと誘われる。
そしてその間、エニーズ03のカウントは8まで伸びており………
「キングフォームの【OC】を達成。シンボルはトリプルシンボルとなり、手元のカードを2枚生贄にすることで、キングフォームは場を離れない」
絶対的な王者の力を発揮するキングフォーム。
今のオーカミが、彼に対抗する術は………
「知っているぞ、今の貴様の手札には、このキングフォームを止める手段がないことをなぁ!!」
「………」
「失せろ」
〈ライフ4➡︎1〉鉄華オーカミ
「ガッ……ハ」
キングフォームの強烈な一太刀が、オーカミのライフバリアを3つ、斬り伏せる。
その攻撃は、オーカミ本人にも直撃し、彼を鉄の壁へと叩きつける。
「………」
「撃沈したか。そりゃそうだ。ハハハ、ハーハッハッハ!!」
激痛により気を失ったか、倒れ込み、ピクリとも動かなくなったオーカミ。それを見て、エニーズ03は勝ち誇ったように笑い出す。
「負け、ないで」
「!?」
しかし、その時だった。
オーカミに向かって、ライが両手を祈るように握り合わせ、涙ながらに、彼にエールを送ったのは………
「な、何故だ。何故なのだエニーズ02。何故あんな奴を応援する………オマエの記憶は」
そうだ。
間違いなく今のライの記憶は、エニーズ03のブレイドの中にある。
だからないはずなのだ。鉄華オーカミの記憶と、思い出など。故に、彼を応援するわけがないのだ。
「わかりません。ただ、不思議なんです。この人を見ていると、胸が熱くなって、一緒にいたい、離れたくない。そう思ってしまうんです」
「ば、馬鹿な」
バトルにはもうすぐ勝てるというのに、これでもかと敗北感を味わされるエニーズ03。
その煮えたぎった感情を、次第に爆発させて行き………
「奴らは、記憶でも思い出でもなく、魂で繋がっているとでも言うのか。許せん、許せんぞォォォ!!!……貴様のような奴、跡形もなく消えていなくなってしまえぇぇぇぇえ!!!」
怒りのままに、フィールドに残ったジョーカーへアタックの指示をしようとした直前。
どこからともなく、緑の巨大な蔦が、檻を作り出し、そこへジョーカーとキングフォームを閉じ込めてしまう。
「なに、コレは!?」
「ソーンプリズンLT。ジョーカーとキングフォームは重疲労になる」
ライの声援を受け、オーカミが立ち上がった。今にも倒れそうなギリギリの状態であるが、その気迫は、いつも以上に強い存在感を放っていた。
「あ、ありえない。今の一撃を受けて立ち上がれるなど。しかも私は王者を使っている。このターン、貴様は受け札がなく、負けるはずだ。なのに何故マジックをまだ手札に持っていたのだ」
「ごちゃごちゃうるさいよ。オマエにできることは、ターンエンドだけだろ?」
「……ターンエンド」
手札:3
場:【仮面ライダーブレイド キングフォーム[3]】LV2
【ジョーカー】LV2
【アークの秘書・アズ】LV2(4)
【BOARD】LV1
手元:【仮面ライダーギャレン キングフォーム】
【仮面ライダーレンゲル[3]】
バースト:【無】
ミラージュ:【ブレイバックル】
カウント:【8】
王者の力により見た未来が違っていたことに疑問を抱くエニーズ03だが、結果は結果。悔しがりながらも、このターンをエンドとし、次のオーカミのターンを迎え撃つ構えを取る。
貴様、また、死にかけているのか。
声が聞こえて来る。オーカミの頭に、直接響き渡るように。
どこかで聞いたことがあるようなないような、まるで魔界にいる魔王のような、邪悪な声。
フン。仕方ない、カグヅチとの約束もあるしな。今だけ解放してやろう、オマエの本当の力。月王者をな。
「………!!」
突如、オーカミの右目に鉄華団の華のマークが刻まれる。
オーカミの王者だ。だが、今回はそれだけじゃない。今まで一切光り輝くことはなかった左目には、赤い三日月の紋章が刻まれていて………
「な、なんだ貴様。その、目は!?」
「知らない。けど、これだけはわかる。これはオマエを倒すための、力だ」
伝説の力、月王者を発現させた、オーカミのターンが幕を開ける。
[ターン07]鉄華オーカミ・月王者
「メインステップ。バルバトス第1形態を召喚」
ー【ガンダム・バルバトス[第1形態]】LV2(3)BP5000
「召喚時効果、デッキ上3枚オープンし、その中の鉄華団カードを加えて、残りを破棄」
オーカミが呼び出したのは、バルバトスの原点、第1形態。その召喚時効果により、新たなる鉄華団を手札へと加えるが、オーカミはそれ以上に、残って破棄したカードへと目を向けており………
「アタックステップ。その開始時にオルガの【神技】の効果を発揮。トラッシュから鉄華団スピリットを呼ぶ」
「!!」
オーカミは、トラッシュから1枚のカードを手に取り、それを己のBパッドへと叩きつける。
それは、鉄華団史上最強のスピリットであり………
「天地を覆せ、未来よ唸れ。ガンダム・バルバトスルプスレクス最終決戦、LV3で召喚!!」
ー【ガンダム・バルバトスルプスレクス[最終決戦時]】LV3(5)BP18000
このタイミングでオーカミが呼び出したのは、鉄華団スピリットの重鎮、バルバトスルプスレクス。その最後にして、最終形態、ルプスレクス最終決戦。
かつて、フウやライとのバトルでも大きな戦果を上げた、オーカミの最強スピリットだ。ルプス鉄華と同様、獰猛を象徴するかの如く、目が赤く光り輝く。
「召喚アタック時効果、デッキとトラッシュから、合計5枚のカードを除外し、スピリット1体のコア3つをトラッシュに置く」
「トラッシュだと」
「消え去れ、ジョーカー」
ソーンプリズンの緑の蔦でできた檻に収監されているジョーカー。ルプスレクス最終決戦は、背面の剣、テイルブレードを射出し、それを蔦ごと貫いて、無慈悲に爆散させる。
「ルプスレクス最終決戦でアタック。もう一度同じ効果を使って、今度はキングフォームを消滅」
動き出すルプスレクス最終決戦。鋭利な激爪でソーンプリズンの緑の蔦を切り裂き、その先にいたキングフォームを鷲掴みにし、抵抗できる間もなく地面へと叩きつけ、踏みつける。
流石に耐えられなかったか、キングフォームもジョーカー同様に爆散し、散って行った。
「フラッシュ、アズの【神技】を発揮。それにより、ルプスレクス最終決戦のコア2つを除去する」
黒髪の美女、アズが天に手を翳すと、天空より邪気を纏った紫のリングが出現。それはルプスレクス最終決戦を縛り付け、その力を吸収し始める。
だが、ルプスレクス最終決戦は、すぐさまそれを砕いて脱出。LVは下がったものの、エニーズ03にトドメを刺すには十分すぎる程の余力を残している。
しかし、エニーズ03は、そのLVの低下を狙っていて………
「さらにフラッシュ、新たなる進化カード、レンゲル キングフォームの効果を発揮。手元にあるレンゲルをデッキ下へ戻し、1コストで自身を召喚する」
「……」
「並いる王者の、さらにその上!!……レンゲルキングフォームを、LV3で召喚!!」
ー【仮面ライダーレンゲル キングフォーム】LV3(3)BP15000
ジョーカーもキングフォームもいなくなったエニーズ03のフィールドに、一条の光が灯される。その光の先に姿を見せたのは、同じくキングフォームの名を冠する王者のスピリット、レンゲル キングフォーム。
「召喚時効果、最高LVでないスピリット1体をデッキに戻す。消え去れ、ルプスレクス最終決戦!!」
レンゲル キングフォームは、登場するなり、杖を掲げ、そこから黄金の輝きを放つ。
ルプスレクス最終決戦は、それごとレンゲル キングフォームを引き裂こうとするも、その黄金の輝きにより阻まれ、逆に左腕が消し飛んでしまう。
「私の勝ちだ。そこをどけ鉄華オーカミ。エニーズ02の横にいなければならないのは、この私だァァァァ!!!」
「オマエはわかるのか」
「あぁ!?」
「ライの胸の中にある、父親を失った悲しみを、仲間を失いたくないと言う恐怖を、それらを乗り越えて幸せになりたいと言う強い願いを。わかってやれるのかよ」
「貴様如きが彼女の仲間なわけなかろう!!!」
「ライのことを何も知らない奴に、アイツを幸せにする資格はない!!……オレのバルバトスがフィールドを離れる時、手札から2枚目のルプスレクス最終決戦の効果を発揮!!」
「ッ……2枚目!?」
言い合いの中、オーカミが提示したのは、2枚目のルプスレクス最終決戦。
「バルバトスは、敵を完全に砕くまで、何度でも蘇る。効果により、再び召喚。召喚アタック時効果でレンゲル キングフォームのコアを取り除く!!」
半身を失ったルプスレクス最終決戦。しかしその衝撃は、それに新たなる力を呼び起こさせる。
目だけでなく、全身に赤いオーラを纏ったルプスレクス最終決戦は、そのままレンゲル キングフォームの放った黄金の輝きに向かって飛び出し、それを掻き消していく。
そして、掻き消した先に息を潜めていた、レンゲル キングフォームを、残った右手の激爪で貫き、爆散へと追い込んだ。
「し、信じられん。まさか、貴様の王者は私の王者をも凌駕しているのか!?」
「ルプスレクス最終決戦でアタック。その効果、トラッシュの鉄華団を13枚除外。バトル終了時、2点のライフを破壊する」
再度攻撃を仕掛けるルプスレクス最終決戦。その効果により、アタックと効果で、合わせて3点ものライフを砕く状態となる。
「私は、ただ、ただ幸せになりたかっただけ。教えてくれアイゼン。私は、何故幸せになれない……!!」
「人から奪ってなれる幸せは、幸せじゃないだろ。決めろ、バルバトス!!!」
「うぉぉぉぉォォォォ!!!!」
〈ライフ2➡︎1➡︎0〉エニーズ03
悪魔が宿す背面の剣が、エニーズ03のライフバリアに突き刺さり、それを跡形もなく消し飛ばす。
これにより、勝者は鉄華オーカミだ。見事、最強のエニーズ03を相手に、リベンジを果たして見せた。
「!!」
「あ、あぁ、消えていく。ブレイドの封印の力が消えて行く」
バトルが終わり、残ったルプスレクスと第1形態がゆっくりと消滅して行く中、エニーズ03のカードに異変が起こる。
カードから光球が飛び出し、それは瞬時にライの胸の中へと吸収されて行き………
「………アレ、私今まで何を」
「ライ」
「あ、オーカ。よかった、無事だったんだ。て、どうしたのボロボロじゃん。まさか、また私のために無茶を………」
ライの記憶が蘇った。彼女はオーカミのことを認識するなり、彼の汚れ、傷ついた身体に目を向ける。また無茶をしたのだと、察してしまった。
だが、当の本人は、そんなことお構いなしで………
「わ」
「………」
「え、ぇぇぇぇえ!!?……ちょちょちょ、オーカ!?」
ライを優しく抱き締めた。元に戻ってよかったと安堵したからか、それ以外にまた理由があるのか、今のところは何もハッキリしない。
が、彼にとって、ライが大きな存在なのは、間違いないことで………
「………ありがとう」
対してライも、彼の気持ちを理解したのか、同じようにそっと抱き締める。
その光景を、ただ呆然と眺めていたエニーズ03は、底知れぬ敗北感と絶望を味わっていて………
「何故私は幸せになれない。あの男は、他の人間共は皆、幸せであると言うのに。何故だ」
「生きるって大変だよね。どうしても直感的に幸せになりたいと願っちゃうからさ」
そんな彼の横に立ったのは、他でもないライだった。
オーカミは、まだエニーズ03のことを警戒しているのか、鋭い目つきで彼らを眺めていた。
「今さらなんだ。エニーズ02。貴女と結婚できないなら、私は幸せにはなれない。生きる意味など」
「重い重い!!!……幸せってさ、結婚とかだけじゃないと思うんだ、家族とか友達と過ごす時間とか………あ、そうだ。ちょっと思ったんだけど、私が02で、君が03なんでしょ?」
「あ、あぁ」
「なら私達、姉弟じゃない?」
「は、はぁ!?……何を言っているのだ」
「いや絶対そうでしょ。私一人っ子だったから、弟か妹がずっと欲しかったんだよね、よろしく。えと、新しい呼び名も考えないとな、エニーズ03じゃ、ちょっとアレだし」
「待て待て、何を勝手に話を進めている」
己は幸せじゃないと苦悩するエニーズ03に、ライが姉弟になろうと提案。と言うかほぼ強引に彼の姉となった。
これらのやり取りを見て、もう安心したのか、オーカミも警戒を解き、安堵の表情を浮かべる。
「エニーズ03ィィィィィィ!!!」
「!」
響き渡る雄叫び。その発生源にいたのは、藍色の髪が特徴的な青年、アイゼンだった。フウに負けて、気を失っていた彼だったが、復活した様子。
「アイゼン。貴様、今までどこに」
「見損なったぞ」
「は?」
「諦めるのか、エニーズ02との結婚を。オマエの決心はその程度だったのか、あぁん!?」
アイゼンは何を焦っているのか、初対面の時とは異なり、余裕がなく、かなり荒んでいる様子。
「さっさと子を成させろ。エニーズ軍団を率いて、この世を支配しろ。このオレ様を、新たなDr.Aに仕立て上げろォォォォォォ!!!」
「貴様……!!」
己の内に秘めていた野望を、何の躊躇いもなく吐露するアイゼン。その言動もあって、エニーズ03は、ショックと怒りを覚えて………
「私は間違っていた。信じる相手を………貴様こそ、記憶を封印するに値する人物だったようだな、アイゼン」
「な!?……や、やめろ。誰が貴様をここまで導いてやったと思って」
「さらばだ」
「あぁぁぁぁぁぁあ!!!」
ブレイドのカードをアイゼンに向けると、ブレイドはその力でアイゼンの記憶の結晶を吸収。
アイゼンはそのショックで、またしても気を失ってしまった。
「鉄華オーカミ。エニーズ02、いや、春神ライ。すまなかった。私は……危うく取り返しのつかないことを」
「別にいいんじゃない、どうでも」
「どうでもよくはないだろ。いい加減な奴だな」
「どうにかなったなら、いいだろ」
「ふふ、私もオーカが許すなら全然いいよ!!」
アレだけ死闘を繰り広げたと言うにもかかわらず、相変わらず適当なオーカミ。ライの救出に成功したことと、エニーズ03から敵意が感じられなくなったことで、自分の敵意も皆無に等しくなったのだろう。
「クロガネを浮上させ、元の場所へ戻ろう。この件の贖罪は、またいつか」
「贖罪なんていいって別に。私達は姉弟なんだから、ね。サン君」
「サン君!?」
「うん。ゼロスリーだからね。君の名前は、今日から春神サンだ」
ライは、屈託のない明るい笑顔を、エニーズ03、サンに向ける。サンは照れ隠しから目線を逸らしたのち、そっぽを向くが………
「……サンか。悪くない。ありがとう………姉さん」
ライのことを「姉さん」と呼び、感謝の意を伝える。
生まれた環境、悪からの誘い、考え方のすれ違いから、オーカミ達と敵対してしまっていた彼だが、今、只今を持って、和解を果たした。
******
今でも記憶にこびりついている。
ここで行われた、生体実験の数々。お祖父様に酷い殺され方をした両親を。私に植え付けられた、王者と言う名の毒素を。
「……墓参りって、こう言う気分になるのかしらね」
Dr.Aの孫、徳川フウは、クロガネのある一室を訪れていた。
そこは、彼女にとっては忘れもしない、忌々しいDr.Aの研究施設。ここで彼女の両親は死亡し、己の寿命も16歳と言う短命になってしまったのだ。生み出された数々のトラウマは、未だ彼女の中で疼いている。
「考えるな。死んだ者のことなど。自分が生きていれば、それでいい」
己に言い聞かせるように、その言葉を呪文の如く何度も口にしながら、研究施設を徘徊するフウ。
彼女の様子は、まるで何かを探しているようで………
「………見つけた」
捜索の末、フウはテーブルに置かれている赤い小箱を発見し、それを手に取り、開ける。
その中には………
「やはりここにありましたか。かつて、あのお祖父様でさえ、使うことを躊躇ったとされる、魔の契約カード………ベリアル」
1枚のカードが入っていた。彼女の言葉からして、そのカードには、きっと恐ろしい力が秘められているのだろう。
「ニッヒヒ。これさえあれば、私は………」
フウは直後、祖父譲りの奇怪な笑い声を上げながら、姿を消した。
その謎の動向の真意が判明するのは、まだ先の話である。
次回、第83ターン「新生、契約のゼロワン」
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《キャラクターファイル》
【エニーズ03(春神サン)】
性別:男
年齢:8歳
身長:156cm
誕生日:3月3日
使用デッキ:【ブレイド】
概要:かつてDr.Aが造り上げた、史上最強のエニーズ。全てのエニーズを操る力、オーバーエヴォリューションと王者を同時に発揮できる力を持っている。だが、かのA事変で使われることはなく、長きに渡り、巨大潜水艦クロガネに封印されていた。
造られたのが8年前であるため、8歳であるが、背格好はオーカミらと大して変わらない。
【アイゼン】
性別:男
年齢:26歳
身長:176cm
誕生日:8月4日
使用デッキ:【緑デジモン】
概要:エニーズ03の封印を解き放った張本人。基本は物腰が柔らかそうな人物であるが、本性はただのチンピラで、自他共に認めるDr.Aオタク。
彼の描いた未来を見るべく、奔走するが、最終的にはエニーズ03に記憶を奪われる。
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最後までご愛読、誠にありがとうございました。
これにて、超特別編は以上になります。
以前お話しました通り、レインボーガッチャードが来るまでは休載したいのですが、果たして読者の皆様もレインボーガッチャードを心待ちにしているのか、とても疑問に思っています。
もうさっさと更新してくれと思われていたのなら、頑張って無理矢理更新しようかな、などと最近ちょっとだけ悩んでおります( ̄∀ ̄)
割と優柔不断なので、それに関するコメントや感想などで、直ぐに気持ちが変わっちゃうと思います。
なんにせよ、執筆は今後も続けさせていただきますので、これからも是非楽しんでいただけたら嬉しいです!!