バトルスピリッツ 王者の鉄華   作:バナナ 

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第85ターン「魔帝、カイザーベリアル」

 

 

 

教室は男子生徒らを中心にとても賑やかだ。黒髪ロングの似合う美少女が転校して来たのだから、当然である。

 

オーカミとライだけが、この不吉なオーラを感じ取っていた。

 

転校生、夏恋フウ。本名「徳川フウ」が放つ、異質かつ異様で邪悪なオーラを。

 

 

******

 

 

「転校生の夏恋フウです。皆さん、これからよろしくお願いします!!」

「オマエ……!!」

「ちょ、オーカ!?」

 

 

徳川フウが、以前名乗っていた偽名を使って、ノヴァ学園へと転校して来た。

 

見た目は清楚で可憐な彼女を、教室の皆は歓迎するが、オーカミは違う。困惑するライをよそに、席を立ち、教団に登り、自己紹介していたフウの胸ぐらを掴み上げる。

 

 

「お、おいオーカミ。オマエどうしたんだよ!?」

「コントは黙ってろ」

「はぁ!?」

 

 

動揺するコントら他の生徒達。当然だ。普段はクールで大人しい、あの鉄華オーカミが激しい怒りを見せ、怒号をあげているのだから。

 

しかし無理もない。皆は知らないのだ。フウが世界を滅亡寸前まで追い込んだマッドサイエンティスト「Dr.A」の孫であると言うことを。そして、ライの父親、春神イナズマを殺害した張本人であるということを………

 

 

「あ、鉄華オーカミさんですね。パワーフォースの現序列3位の!!…この間のダホウさんとの一戦、観てました!!…大ファンなんです、後でサインください!!…あと、大変申し訳ないのですが、胸ぐら掴むのをおやめいただけないでしょうか。この制服、お仕立てたばかりですので」

「ベラベラベラベラうるさい。こんなとこまで来て、なんのつもりだ!!」

「お家の都合ですよ、最近ゲートシティに越して来たんですけどぉ」

「嘘つくな、ホントのこと言えよ!!」

 

 

また平然な顔で嘘をつくフウ。

 

以前は誰もがこの嘘に騙され続けていた。

 

 

「はいはいオーカミ、どうしたの話し聞くよ〜」

「ブイ、なんでこんな奴入学させたんだ!!…コイツは」

「その辺にしときな赤髪小僧」

「!」

 

 

止めに入ったブイにまで噛み付かんとしたオーカミを、言葉で静止させたのは、この二学期から新たにノヴァ学園に勤める若老婆な教師、シグマ。

 

 

「シグマ。まさかオマエが……!!」

「悪いね転校生ガール、気を悪くしないでおくれ。コイツはちょっとばかし、やんちゃなのさ。なんと言っても、思春期の男だからねぇ」

「いえいえ、寧ろパワーフォースの方に目をつけられるなんて光栄ですよ〜!」

 

 

生徒が大勢いる教室であると言うにもかかわらず、タバコを吸い始めるシグマ。食い気味に来たオーカミを無視し、彼がフウにした不手際を軽く謝罪すると、他の生徒らへと顔を向ける。

 

 

「おっと悪い悪い、自己紹介が遅れたねぇ。アタシはシグマ。二学期からこのクラスの副担任になる、しがないババアさ。担当は歴史。わからないことがあったら、気兼ねなく聞いて来な」

 

 

ついでのように自己紹介するシグマだが、オーカミが作ってしまった、この重たい空気の中で歓迎するような声を上げれる者は、誰1人としていなかった。

 

 

******

 

 

始業式の日に、授業はない。午前中に全ての行事が終了する。

 

昼過ぎ、シグマとブイは、ノヴァ学園校舎の屋上に、オーカミとライを召集していた。その内、オーカミは、未だ怒り心頭している様子で。

 

 

「おい、オマエら、なんでフウを学園に入れたんだ。アイツは」

「Dr.Aの実の孫、だろ?」

「!」

「それくらい知ってるよ」

 

 

問い詰めるオーカミに、シグマはフウの正体を初めから知っていた旨を伝える。

 

 

「私達は、アルファベットからオーカミの情報をずっと聞いていたからね」

 

 

ブイが言った。

 

確かに、シグマ、ブイ、アルファベットは共通のグループ。よくよく考えれば、知らないことの方がおかしい。

 

 

「だったらなんで」

「自分から勝手に入って来たんだよ。私が気づいた頃には、手続きもなんもかんも全部済まされてた」

「別に気にすることもないさね。もう嵐マコトはいない。悪のカリスマの孫とは言え、所詮は小娘1人。なんもできんよ」

 

 

以前のように、王者と、人体のデータ化を研究していた、嵐マコトはいない。だから問題もないと発言するシグマ。

 

ただ、実際にフウの恐ろしさを体験しているオーカミが、その程度で安心できるわけがない。

 

 

「そんなことより。赤髪小僧、オマエには言っておかなければならない忠告が1つある」

「あ?」

 

 

徳川フウの話を「そんなこと」と切り捨て、シグマは人差し指を立て、話題を変える。

 

 

「学園最強のカードバトラー、序列1位のキング王。オマエは、奴とバトルしてはならない」

「は?…なんでだよ」

「オマエが月王者で、キングが太陽王者だからさ」

「るな、なにそれ」

 

 

シグマは、遂にオーカミに「月王者」と「太陽王者」のことを話し始める。

 

何も知らないオーカミは、先程のことに対する怒りが収まらないまま、頭の上に疑問符を浮かべる。

 

 

「月王者と太陽王者。ごく稀に発現する、伝説と呼ばれる王者さね。一歩使い方を謝ればその存在はたちまち『脅威』となるが、性能は通常の王者を遥かに凌ぐ。オマエが今まで様々な強敵に打ち勝つことができたのは、その存在が大きい」

「……」

 

 

シグマの説明を受け、即座に理解できたのは春神ライだった。これまでオーカミが起こして来た奇跡の数々。それが月王者によるモノの影響だと知り、密かに納得していた。

 

 

「それとキングとバトルしたらダメな理由に、なんの関係があるんだよ」

 

 

キレ気味にオーカミが訊いた。

 

 

「月蝕と日蝕」

「?」

「覚醒した太陽王者と月王者がバトルする時、どちらか負けた方の力を消し去ってしまうのさ。太陽王者が勝った場合は「月蝕」。月王者が勝った場合は「日蝕」と、それぞれ言われている」

「別にいいだろ。消えても」

「オマエが良くても、こっちはダメなんだよ」

 

 

このシグマの言葉に、オーカミは「なんで」とは訊かなかった。既にどうでもよくなったからである。

 

 

「あと、鉄華団。アレはオマエが月王者の力に取り込まれないように、オマエの父親が開発したカードだよ」

「!」

「え、オーカのお父さん!?」

「あぁ、名は鉄華カグヅチ」

 

 

興味をなくしたオーカミが、屋上を去ろうと考えた直後、シグマは示し合わせたように、また話題を変えた。前にオーカミがシグマとのバトルに勝利したからか、唐突に鉄華団のカードのことについて話し始める。

 

どうやら鉄華団のカードは、今亡きオーカミの父親が作り上げた物らしい。

 

 

「なんで死んだ親父のカードをアンタが持ってたんだ」

 

 

去る考えを一旦捨てたオーカミが訊いた。当然の疑問である。

 

 

「カグヅチはアタシの元教え子でねぇ。縁があったのさ。ところでオマエ、自分の父親についてはどれだけ知ってるんだい?」

 

 

今度は逆に、シグマがオーカミに訊いた。オーカミの父親、すなわちカグヅチについてだ。

 

 

「親父はオレが3歳の頃にお袋と事故で亡くなった。って、姉ちゃんが言ってた。小さい頃の記憶はあんまりないんだ」

「ふむ。そうかい」

 

 

カグヅチと母親が亡くなって以降、オーカミは姉のヒメと児童施設で暮らしていた。オーカミが界放市に来たのは、ヒメが自立し、社会人になったからである。

 

 

「まぁ取り敢えず、キングとのバトルは避けるようにすることだ。バトルすれば、オマエはきっと後悔することになる」

「……行くぞ、ライ」

「う、うん」

 

 

最後、オーカミはシグマを無視すると、ライを連れ、屋上を後にする。

 

残されたのは、シグマとブイだ。

 

 

「あれだけ鉄華団のことを知りたがってたくせに、いざ教えると、こうも態度を悪くするとはね」

「いや、それはばっちゃんが「フウのことは気にすんなぁ」とか、「キングとバトルすんなぁ」とか、色々言ったからじゃない?」

「そんだけでキレるなんて、ガキだねぇ。青臭いねぇ。これだから思春期の男子は」

 

 

2人だけで会話するシグマとブイ。意外とシグマも文句たらたらな様子。

 

 

「にしても、徳川フウ。か」

「なんだ、オマエまであんな小娘を警戒してんのかい?」

「アルファベットの調べによると、昔、Dr.Aの実験台にされた挙句、周囲の人々に彼の孫だからと蔑まれ続けてたみたいなんです。なんか、ちょっと可哀想だなって」

「子供に甘いのが、オマエの弱点さね。そんなんじゃ、いつか足元を掬われるよ」

「……」

 

 

そこまで告げると、シグマはタバコを吸い始める。

 

ブイは、自分の恩人とも言える彼女の忠告を聞いても尚、フウに対する同情の心が消えなくて。

 

 

******

 

 

多くの色彩重なる、鮮やかなステンドグラスが張り巡らされた、神殿を思わせる場所。

 

そこにある豪華絢爛な玉座に腰を下ろしているのは、透き通るような長い金髪を持つ、美しい女性、学園長。

 

彼女の御前には、敬意を表すように片膝をつく、学園最強のカードバトラー、キング王の姿があった。

 

学園内ではあまり知られていないが、2人は義理の親子である。

 

 

「ご存知の通り、二学期が始まりました。これからもパワーフォースのトップとして、責務を全うして参ります」

「そうですか。期待していますよ、キング」

 

 

学園長は直後に「ただ」と告げると、いつもの柔和で温厚そうな様子から一変。険しい表情を見せる。

 

 

「貴方の太陽王者としての素質には、もっと期待していますよ。覚醒した月王者を必ず倒すのです」

「……」

「月王者が鉄華オーカミであることは既に認知しています」

「!!」

 

 

学園長の口から、自分の教えていなかった情報が出て来るなり、キングは珍しく目を見開き、驚く。

 

 

「その様子だと、貴方も知っていたみたいですね」

「申し訳ございません。まだ不確定な情報をお教えするべきではないと」

「構いません。私も知ったのは、つい先日ですから」

 

 

「つい先日」とは言いつつも、3ヶ月も前の話だ。オーカミと初めてバトルをしたあの日、学園長は彼に月王者の力があると見抜いていた。

 

この日まで黙っていたのは、オーカミにまだ覚醒の兆しがなかったからだ。

 

 

「この夏の間、鉄華オーカミはさらに強くなりました。おそらく、ブイ教授とシグマ教授。彼女らの影響でしょう」

「シグマ。奴か」

「月王者が覚醒する日は近い。頼みましたよ、キング。この世界を」

「はい。私は負けない」

 

 

妙な食い違いが発生する。

 

月王者を悪とし、それを持つオーカミと太陽王者であるキングをバトルさせたい学園長。

 

それとは打って変わって、逆にバトルしてはならないと忠告するシグマ。

 

これらの考えが食い違う理由は、一体なんなのか……

 

 

******

 

 

視点は変わり、オーカミとライだ。

 

下校中、寮への帰路。茂みの道を2人は共に歩いていた。

 

 

「オーカのお父さんも科学者だったのかな?」

 

 

歩きながら、ライがオーカミに訊いた。

 

 

「なんで」

「いやだってほら、シグマ教授が鉄華団作ったって言ってたし。気にならない?」

「別に」

「淡白だなぁ。あんなに鉄華団のこと知りたがってたじゃん」

 

 

鉄華団のことを知りたがっていたオーカミ。

 

今回、シグマのお陰で少しだけそれについて知ることができたが、フウを学園に入れてしまったミスや明らかに自分を何かに利用していることを感じたからか、素直に喜べず、かと言って何も言えず、ただただ腹を立てていた。

 

 

「まぁでも、よかったね」

「?」

「鉄華団はオーカのために、お父さんが作ったカード達ってことは、きっとオーカは、お父さんに愛されてたんだよ」

「顔も知らない父親に愛されてもな」

 

 

家にはアルバムさえないため、オーカミは自分の両親について、本当に何も知らない。

 

愛されていたことがわかったとは言え、彼にとってカグヅチは、所詮血の繋がった父親なだけの知らない人。今一番大事なのは、自分の好きな、仲間や友達である。

 

 

「んじゃ、私こっちだから、また明日〜」

 

 

ライは敬礼すると、オーカミと別れ、自分の住む女子寮の方へと向かおうとしたが。

 

 

「ちょっと待てよ」

「ん?」

「ライ。今日はオレの部屋で寝ろ」

「ん、え。ぇぇぇぇえ!!?!」

 

 

思いがけないオーカミの大胆な発言に、ライは驚愕と大興奮。顔から蒸気を出す程に顔を真っ赤にする。

 

 

「ちょちょちょちょい。いい、一体どう言うことかな、オーカ君。いいいきなり同棲と言われても心の準備ががが」

「ドーセー?…つか、なんだよその喋り方。フウがいつまたオマエを狙って来るかわからないから、今日はオレとずっと一緒がいいと思っただけだ」

「あ、あぁ。そう言うことか」

 

 

オーカミから理由を訊いて、納得と落胆のライ。そもそも年頃の男女が共に一夜を過ごすこと自体がアレなのだが。

 

 

「自分の部屋で寝たいならいいよ。オレの方が女子寮に行けば問題ないし」

「そっちの方が問題あるある!!…別にいいよ、私は多分大丈夫だし」

「ダメだ。ライは今、絶対1人にならない方がいい」

「うーん、そう言ってくれんのは嬉しいけどさ」

 

 

頑なにライを1人にしようとしないオーカミ。ライとてそれは嬉しいし、なんならオーカミよりも離れたくない気持ちは強いが、自分の意見を無理矢理通そうとするオーカミは、無茶な行動をしがちであることを理解しているため、素直にYESの返事を出せなかった。

 

 

「ボォォォォォォル!!!」

「!」

「この変な声って」

 

 

2人の耳に突如響き渡ったのは、1人の男の、奇怪な叫び声。

 

この変な声を、2人が忘れるわけもなく。

 

 

「聞いたぞ鉄華オーカミィィィ!!…貴様、オレ様のライちゃんの部屋に無理矢理入ろうとしたな、許さん!!」

「久しぶりだな、アロー」

「ダホウだ!!…一文字も合ってねぇよ!!」

 

 

リーゼント頭と四角いメガネが特徴的な、高身長の少年、甲子園ダホウ。

 

序列3位&パワーフォースメンバーと言う大きな肩書きを背負っていた彼だったが、オーカミとの勝負に敗れ、今はただの一般生徒だ。

 

 

「おぉリーゼントさん!!…この間、オリハルコンビーチ行って来たよ!!…めっちゃ楽しかった、ありがとう!!」

「ライちゃん!!…今度はオレと行こうね!!…鉄華オーカミィィィ!!…ここで会ったが100年目、オレ様と諸々を賭けてバトルだボォル!!」

「オマエと100年も一緒にいないけど」

「言葉の綾じゃアホウ!!…ほれやるぞ!!」

 

 

いきなりバトルを仕掛けて来るダホウ。諸々とは、ライや地位や名誉のことだろう。

 

オーカミは「仕方ないな」と、呆れながらも自分のBパッドとデッキを取り出そうとしたが………

 

 

「そのバトル、少しお待ちください」

「!」

 

 

直後、また声が聞こえて来た。今度は少女の声だ。

 

その声の正体を、オーカミとライがわからないわけがない。

 

 

「フウ!!」

「ニッヒヒ。またお会いしましたね、オーカミさん」

「ウソ言え、オレらをつけて来たんだろ」

「あらあら、人聞きがお悪い」

 

 

声の先にいたのは、徳川フウ。夏恋フウの偽名を使い、この学園にやって来た、Dr.Aの孫にして、オーカミらの仇敵。

 

 

「フウちゃん」

 

 

彼女との対面に、ライはその指先を震わしていた。

 

フウの親友として過ごしていた時間と、父であるイナズマが彼女によって殺害された瞬間を想起してしまったのだろう。

 

 

「私が後をつけて来たのはオーカミさん達ではありません。貴方です、甲子園ダホウさん」

「オレ?」

「えぇ。私の記念すべき1人目のお相手に最も最適な方だと思いまして」

 

 

オーカミ達ではなく、ダホウを追って来たと申告するフウ。それが嘘か誠かはさておき、彼とバトルをしたいと思っているのは、事実な様子。

 

 

「ボールボルボルボル!!…そうか、君が噂の美人の転校生ちゃんか!!…見る目あるな、オレ様のファンと言うのであればしょうがねぇ、そのバトル、受けて立つぜ!!」

「まぁ美人だなんて、ありがとうございます!!」

「おいやめろダホウ、コイツは」

「黙れ鉄華オーカミ。オマエの相手は後でじっくりしてやるよ」

 

 

何が起こるかわからないフウとのバトル。オーカミは止めようとするが、美人に目がないダホウは、聞く耳を持たない。

 

 

「それじゃ始めようか。えぇと、名前は」

「夏恋フウです!!」

「フウちゃんか〜〜可愛い名前だぜボゥル!!」

 

 

デレデレするダホウ。展開したBパッドとデッキを用意し、バトルの準備を整える。

 

フウも同様だ、まるで何かを企んでいるような笑顔を浮かべながら、左腕に装着したBパッドを構え、ダホウへと向けた。

 

 

「とても楽しいバトスピ時間の始まりです」

「さぁ、プレイカードだ!!」

 

 

……ゲートオープン、界放!!

 

 

不安が残るオーカミとライが見守る中、ノヴァ学園敷地内の茂みの道にて、元序列3位の甲子園ダホウと、徳川フウによるバトルスピリッツが幕を開ける。

 

先攻はフウだ。不気味な笑みを浮かべ、ターンを進めて行く。

 

 

[ターン01]徳川フウ

 

 

「メインステップ。早速お見せいたしましょう。私の持つ、契約カード」

「ボル、契約だと?」

「銀河を支配する魔帝、契約創界神ネクサス、ベリアル銀河帝国皇帝カイザーベリアルを配置!!」

 

 

ー【ベリアル銀河帝国皇帝カイザーベリアル】LV1

 

 

フウの背後に出現したのは、黒に染まった身体に赤いマントを羽織った、邪悪を具現化したかのような姿を持つ魔人。

 

その名をカイザーベリアル。この世でも珍しい、創界神ネクサスの契約カードだ。

 

 

「契約の創界神ネクサス!?」

「エヴァンゲリオンスピリットじゃない……」

 

 

この時点で、オーカミとライは前までのフウのデッキとは違うことに気がつく。

 

 

「ベ、ベリアル!?…ベリアルって、あのベリアルかボゥル!?」

 

 

そんな中、フウと対戦しているダホウだけが、全く異なる反応を見せていた。その表情は、まだ自分のターンを1ターンも行っていないと言うにもかかわらず、恐怖で歪んでいて。

 

 

「数多の怪獣スピリット達を操ると言われている、伝説スピリットの1体。その契約創界神……!!」

「ニッヒヒ。流石元パワーフォース、博識なんですね」

「何者だ、何者なんだこの子は!?」

「配置時の【真・神託】で、カイザーベリアルにコア+3。ターンエンドです」

手札:4

場:【ベリアル銀河帝国皇帝カイザーベリアル】LV1(3)

バースト:【無】

 

 

魔帝、カイザーベリアルを従えるフウに戦慄しながらも、ダホウは迎えた自分のターンを開始して行く。

 

 

[ターン02]甲子園ダホウ

 

 

「メインステップ。創界神ネクサス、ゼットン星人を配置」

 

 

ー【変身怪人ゼットン星人[初代ウルトラ怪獣]】LV1

 

 

ダホウの背後にも創界神ネクサス。スーツを着た黒く細長い怪人、ゼットン星人だ。

 

ただし、当然だが、契約のカイザーベリアル程の力はない。

 

 

「【神託】でコア+3。ターンエンドだぜボゥル」

手札:4

場:【変身怪人ゼットン星人[初代ウルトラ怪獣]】LV1(3)

バースト:【無】

 

 

カイザーベリアルの存在が、バトルに緊張感を生む。

 

次は二巡目、フウのターンだ。

 

 

[ターン03]徳川フウ

 

 

「メインステップ。ここでスピリットを投入。再生怪獣ギエロン星獣」

 

 

ー【再生怪獣ギエロン星獣】LV1(1)BP3000

 

 

 

フウのスピリットは、もうエヴァンゲリオンスピリットではない。呼び出されたのは、鳥のような頭部とカッターのような形をした翼を備えたスピリット、ギエロン星獣。

 

前のように、実体化はしてはおらず、通常通りの立体映像となっている。

 

 

「アタックステップ。ギエロン星獣でアタック、効果でドロー&カウント+1」

 

 

ファーストアタックを行ったのはフウ。ギエロン星獣が低空を飛翔する。

 

 

「そして、このフラッシュタイミング。カイザーベリアルの【契約技】の効果を発揮」

「!!」

「自身のコア3つをコストに、カウント+2。その後、トラッシュにある『怪獣』『ベリアル』『ゼットン』のカードを手札に加えます」

 

 

カイザーベリアルが、邪悪の力を右腕に込め、新たなカードを生成。それは吸い込まれるようにフウの手札へと加えられる。

 

これにより、フウは一度のアタックタイミングでカウント+3、デッキとトラッシュからそれぞれ1枚ずつカードを増やした。

 

 

「アタックはライフで受ける」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉甲子園ダホウ

 

 

低空を飛行するギエロン星獣。カッターの形をした翼が、ダホウのライフバリアを1つを、通過と共に切り裂く。

 

 

「ターンエンドですぅ」

手札:6

場:【再生怪獣ギエロン星獣】LV1

【ベリアル銀河帝国皇帝カイザーベリアル】LV1(1)

バースト:【無】

カウント:【3】

 

 

ニヤケ顔を見せながら、フウはそのターンをエンド。未だ冷や汗を拭えないダホウのターンが始まる。

 

 

[ターン04]甲子園ダホウ

 

 

「メインステップ。宇宙怪獣ベムラーを召喚」

 

 

ー【宇宙怪獣ベムラー[初代ウルトラ怪獣]】LV1(1)BP3000

 

 

「召喚時効果で1つコアブースト。創界神ネクサス、ゼットン星人の効果により、そのブースト数を+1。つまり2つのブーストだぜボゥル!!…さらにもう1体を召喚」

 

 

ー【宇宙怪獣ベムラー[初代ウルトラ怪獣]】LV1(1)BP3000

 

 

「効果で2つコアブースト。ゼットン星人の効果で追加で3つ目のコアをブースト!!」

 

 

ザ怪獣と言える見た目のスピリット、ベムラーが2体、フィールドに揃う。

 

 

「2体のベムラーのLVを2に上げ、ターンエンド」

手札:3

場:【宇宙怪獣ベムラー[初代ウルトラ怪獣]LV2

【宇宙怪獣ベムラー[初代ウルトラ怪獣]LV2

【変身怪人ゼットン星人[初代ウルトラ怪獣]】LV2(5)

バースト:【無】

 

 

1ターンで全てのライフを掻っ攫うことができるようになるまでは、一切のアタックを行わない戦略を取ることでお馴染みのダホウ。ここでもアタックはせず、2体のベムラーを残してのターンエンドだ。

 

 

[ターン05]徳川フウ

 

 

「メインステップ。帝国機兵レギオノイドを召喚」

 

 

ー【帝国機兵レギオノイド】LV1(1)BP1000

 

 

フウが呼び出したスピリットは、両腕がドリルで構成された機兵、レギオノイド。

 

低コストながら有力な効果を持つが、カイザーベリアルの【真・神託】の条件を満たしているスピリットではないため、カイザーベリアルにコア+はできない。

 

 

「続けて、魔帝の力、その一旦、ベリアル融合獣サンダーキラー、LV1で召喚いたします」

 

 

ー【ベリアル融合獣サンダーキラー】LV1(1S)BP5000

 

 

「ボル!?…オレ様も知らない怪獣スピリットだと!?」

「フフ。召喚時効果、手札の赤か紫のカードを破棄することで2枚ドロー。この効果で破棄したのがベリアルであれば、カイザーベリアルにコア+1」

 

 

立て続けにフウのフィールドへと出現したのは、電撃を纏う白いボディに鋼鉄の鎧、牛のような二角のツノを持つ怪獣のスピリット。

 

緑の怪獣デッキのスペシャリストとも言えるダホウでさえ、その存在を知らないようだ。

 

 

「アタックステップ。再びギエロン星獣でアタック、効果で1ドロー&カウント+1。フラッシュタイミングでカイザーベリアルの【契約技】を発揮。トラッシュのカードを手札へ」

 

 

アタックステップに突入し、フウは前のターンと全く同じ動きを行う。手札を増やし、カウントは6となる。

 

 

「ベムラーでブロックだぜボゥル」

 

 

低空飛行するギエロン星獣をベムラーが短い手で押さえ込む。そのまま、口内から青白い色の細い熱線を放ち、ギエロン星獣の身体を撃ち抜いて爆散させる。

 

 

「ターンエンドです」

手札:8

場:【ベリアル融合獣サンダーキラー】LV1

【帝国機兵レギオノイド】LV1

【ベリアル銀河帝国皇帝カイザーベリアル】LV2

バースト:【無】

 

 

ギエロン星獣を犠牲にアドバンテージを稼ぎ、フウはそのターンをエンド。

 

次はダホウのターン。彼は、如何にも「増えたコアを使い、反撃に転ずる」とでも言いたげな表情を見せていて。

 

 

[ターン06]甲子園ダホウ

 

 

「メインステップ。ベムラーを1体だけLV1にダウン。ここで、オレ様が鉄華オーカミを倒すために仕込んだ、特別な代打バッターを紹介してやるぜボゥル」

 

 

そう告げると、ダホウは1枚のカードをBパッドへと叩きつける。

 

呼び出される新戦力、その名は。

 

 

「炎のピッチヒッター、双頭怪獣パンドン、LV1で召喚!!」

 

 

ー【双頭怪獣パンドン[初代ウルトラ怪獣]】LV1(1)BP8000

 

 

ダホウのフィールドに出現したのは、棘のある赤い鱗に、2つの頭部を持つ怪獣スピリット、パンドン。

 

炎を操る、ピンチヒッターだ。

 

 

「召喚アタック時効果。ゼットン星人の効果込みで3つコアブースト。その後、相手スピリット2体を重疲労させるか、疲労状態2体をデッキ下に戻す」

「!」

「サンダーキラーとレギオノイドの2体を重疲労だぜボゥル」

 

 

開口されるパンドンの2つの口から吐き出される地獄の炎。それがフウのスピリット2体に片膝をつかせ、重疲労状態へと追い込む。

 

 

「そして、オレ様はこのパンドンをもう1体召喚するぜ」

「おぉ」

 

 

ー【双頭怪獣パンドン[初代ウルトラ怪獣]】LV1(1)BP8000

 

 

「召喚アタック時効果、コアブし、今度は2体をデッキ下に戻す」

 

 

出現する2体目のパンドン。その2つの口から地獄の炎が吐き出され、サンダーキラーとレギオノイドを焼き尽くし、粒子化にまで追い込む。

 

 

「レギオノイドの効果。相手によってフィールドを離れた時、カイザーベリアルにコア+1し、カウントも+1」

「まだ契約創界神のコアとカウントを伸ばすか。だが、これで終わりだぜボゥル。アタックステップ、パンドンでアタック。効果で3つコアブースト」

 

 

6ターン目にして遂に攻撃を仕掛けるダホウ。パンドンが、その2つの口をフウへと向ける。

 

 

「ライフで受けます」

「ダブルシンボル、破壊するライフは2つだ」

 

 

〈ライフ5➡︎3〉徳川フウ

 

 

パンドンの2つの口から放たれる地獄の炎が、今度はフウのライフバリアへと直撃。瞬く間に2つ溶解される。

 

 

「ライフ減少時の手札誘発でも使うか?…だが残念、パンドンのLV2からの効果で、フウちゃん、君はフラッシュタイミング以外でカードを使えない」

「ふむ。なるほどなるほど」

 

 

フラッシュタイミング以外でのカードの使用を全て禁ずる力も持つパンドン。おそらくこの効果は、デッキにカウンター系のカードを多く積むオーカミの対策だと思われる。

 

 

「続け2体目のパンドン。召喚アタック時効果で、またまたコアブースト」

 

 

2体目のパンドンも行く。このアタックが通れば、残った2体のベムラーのいずれかのアタックでダホウの勝利となる。

 

パンドンの効果により、フラッシュタイミング以外でカードが使えないフウが今できる手は……

 

 

「フラッシュタイミング」

「!」

 

 

当然、フラッシュタイミングでのカードの使用だ。

 

 

「【顕現】を発揮」

「け、顕現!?…なんだその効果は」

 

 

ダホウはもちろん、オーカミもライもその効果【顕現】の宣言に驚愕する。

 

 

「顕現。それは、ソウルコアと契約創界神ネクサスから1コストを支払うことで、スピリットをこの場に顕現させる効果。そして、私が今から顕現させるのは、このスピリット……」

 

 

顕現の効果を簡潔に説明すると、フウは8枚もある手札の中から1枚のカードを引き抜き、それを己のBパッドへと叩きつける。

 

 

「果てしなき闇の力で、全ての宇宙を掌握せよ、超銀河大帝アークベリアル、LV2で顕現!!」

 

 

ー【超銀河大帝アークベリアル】LV2(3)BP15000

 

 

出現し、膨張を続ける闇の渦。それを引き裂き、中より顕現したのは、闇と怪獣スピリットの力を取り込んだ、最強にして最凶のベリアル、アークベリアル。

 

現れるなり、背部の緑色の結晶を輝かせ、咆哮を張り上げる。

 

 

「な、なんだこのスピリットはァァァァ!?」

「アレが、初号機に変わる、アイツの新しいエースカードか」

 

 

その、もはや怪獣をも超越した邪悪な姿に開いた口が塞がらないダホウ。

 

このバトルを観戦しているオーカミは、あのアークベリアルこそが、フウの新たなエースカードであると直感した。

 

 

「アークベリアルの顕現アタック時効果。シンボル2つ以下のスピリット1体を破壊できる」

「!」

「ニッヒヒ。アタック中のパンドンを破壊」

 

 

パンドンがやや不意打ち気味にアークベリアルへと炎を放つが、アークベリアルには通じず、たった一度の咆哮で掻き消され、鎮火する。

 

パンドンは、自分の攻撃が効かないことに驚く間もなく、アークベリアルの鋭利な爪による一撃で2つの首を切り落とされ、爆散してしまう。

 

 

「そ、そんな馬鹿な。オレ様のパンドンが」

「これで、このターンでの勝利はなくなりましたね。どうします?」

「ぐっ……ターンエンドだ」

手札:2

場:【双頭怪獣パンドン[初代ウルトラ怪獣]】LV3

【宇宙怪獣ベムラー[初代ウルトラ怪獣]】LV2

【宇宙怪獣ベムラー[初代ウルトラ怪獣]】LV1

【変身怪人ゼットン星人[初代ウルトラ怪獣]】LV2(7)

バースト:【無】

 

 

【顕現】と言う未知のカウンターをくらってしまい、ダホウはなす術なくターンエンドを宣言。

 

次はアークベリアルを従えた、フウのターンだ。

 

 

[ターン07]徳川フウ

 

 

「メインステップ。レギオノイドを2体、サンダーキラーを1体召喚」

 

 

ー【帝国機兵レギオノイド】LV1(1)BP1000

 

ー【帝国機兵レギオノイド】LV1(1S)BP1000

 

ー【ベリアル融合獣サンダーキラー】LV1(1)BP5000

 

 

「サンダーキラーの召喚時効果。赤か紫のカード1枚を破棄、2枚ドロー。カイザーベリアルにコア+1。ネクサス、ベリアル銀河帝国を配置」

 

 

ー【ベリアル銀河帝国】LV1

 

 

ターン開始早々。フウは怒涛のカード展開を見せる。追加でレギオノイドを2体、サンダーキラーを1体呼び出し、背後に美しき惑星を掌握せんとする邪悪な手を描いたネクサスカードを配置。

 

 

「ベリアル銀河帝国は、私の全ての怪獣、ベリアル、ゼットンにバウンス耐性を与えます。これでゼットン星人の手札に戻す効果は無効ですね」

「くっ……」

「アタックステップ。アークベリアルでアタック、顕現アタック時効果で残ったパンドンを破壊します」

 

 

アークベリアルは、背部の緑色の結晶から力を蓄えると、口内から赤黒い光線を放つ。

 

その凄まじい破壊力は、咄嗟に直撃を回避したパンドンを余波だけで消し炭にしてしまう。

 

 

「さらにLV2からの効果。自分のアタックステップ中、アークベリアルが相手スピリットを破壊した時、追加でライフ1つを砕く」

「ボル!?」

 

 

〈ライフ4➡︎3〉甲子園ダホウ

 

 

「ぐぁぁあ!?!」

 

 

アークベリアルの光線は、そのままダホウのライフバリアへと直撃し、それ1つを粉砕。

 

実体化していないアークベリアルの一撃だが、このバトルの中で恐怖が胸に刻まれたのか、ダホウは本当に痛みを受けたかのように、悲痛な叫び声を上げる。

 

 

「アークベリアルのアタックは継続中ですよ」

「ッ……オレを守れ、ベムラー!!」

 

 

ダホウは、破壊に応じてライフを砕く効果を持つアークベリアルのアタック中であると言うにもかかわらず、それよりも圧倒的にBPで劣るベムラーでブロック宣言をしてしまう。

 

恐怖のせいで正常な判断ができなくなったのだろう。

 

フィールドでは、LV1のベムラーが果敢にアークベリアルへと挑むが、首根っこを鷲掴みにされた直後に地面へと叩きつけられ、呆気なく爆散。

 

 

「アークベリアルの効果でライフ1つを破壊」

「!?」

 

 

〈ライフ3➡︎2〉甲子園ダホウ

 

 

「ボォォォォォォル!!!」

 

 

アークベリアルの鋭利な爪の一撃が、ダホウのライフバリア1つを紙切れのように切り裂く。

 

結果的に、アークベリアルは、一度のアタックでダホウの2つのライフと2体のスピリットを破壊へ導いた。

 

だが、今のフウがこれだけで終わるのは、あまりにも生温くて。

 

 

「まだですよ。この瞬間、契約創界神ネクサス、カイザーベリアルの【契約域】の効果を発揮!!」

「!!」

「コスト5以上の怪獣、ベリアル、ゼットンがアタックしたバトル終了時、トラッシュのコア1個をスピリットに置き、相手ライフ1つを破壊する」

「ま、またライフを破壊だとォォォ!?」

「トラッシュのコア1つをサンダーキラーへ。LVアップしつつ、貴方のライフを破壊しますわ」

 

 

〈ライフ2➡︎1〉甲子園ダホウ

 

 

「ボォォォォォォル!?」

 

 

カイザーベリアルが天に掌を掲げると、赤い稲妻がダホウへと落雷。彼のライフバリアは、また1つ砕かれ、遂に残り1つとなる。

 

 

「これでフィニッシュです。サンダーキラーでアタック。LV2からの効果により、残ったベムラーからコアを1つリザーブへ置き、LVダウン」

 

 

フウはフィニッシュと称し、サンダーキラーで攻撃。

 

サンダーキラーは身体全体を帯電させ、そのエネルギーを弾丸として放出。ベムラーに直撃し、体内のコアを1つ弾き飛ばし、LVダウンへ追い込む。

 

 

「ブロックだ!!」

 

 

唯一残ったベムラーでブロック宣言するダホウ。しかし、それに意味はない。

 

サンダーキラーが武装している鉤爪でベムラーの腹部を貫き、爆散させたのを見届けると、今一度カイザーベリアルが動き出す。

 

 

「バトル終了時。カイザーベリアルの【契約域】!!…トラッシュのコアをスピリットに戻し、ライフ1つを破壊!!」

「あ、ぁぁぁぁぁあ!!!」

 

 

〈ライフ1➡︎0〉甲子園ダホウ

 

 

カイザーベリアルの掌より放たれる赤い稲妻が、ダホウの最後となるライフバリアを無慈悲にも粉砕。

 

彼のライフを0とし、フウを勝利へと導く。

 

圧倒的な力だ。元とは言え、パワーフォースだったダホウを軽く捻れると言うことは、彼女は既にパワーフォース並みか、もしくはそれ以上の実力が備わっているのだろう。

 

 

「ボ、ボール、ボルボル……」

 

 

役目を終えたスピリット達が徐々に消え行く中、ダホウは倒れ、意気消沈。恐怖を与えられ過ぎて、精神と気力を失ってしまったものと思われる。

 

 

「元とは言えパワーフォース。もう少しばかり楽しませてくれると思っておりましたが、この程度ですか。やはり、落ちぶれは落ちぶれですね。貴方なら、楽しませてくれますか?…鉄華オーカミさん」

「……」

「ダメだオーカ、バトルは」

 

 

一触即発の雰囲気漂う。目線の間で火花を散らすオーカミとフウ。今にもバトルが始まりそうになる中、ライがオーカミを制止させようと声を荒げる。

 

 

「ニッヒヒ。なぁんちゃって。今日のバトルは、ただの見せしめ。直ぐに貴方とバトルする程、私も愚かじゃありませんわ」

「見せしめ。手の内を晒すだけのバトルに、なんの意味もないだろ」

「そう。貴方はそう言う方でしたね。ただ、この私が、あの雑魚を相手に手の内を全て晒していると、本気でお思いで?」

「……」

「ま。どちらでも構いませんわ。いずれ貴方との決着はつけます。その際に勝利するのは、この私です」

 

 

そこまで告げると、フウは「ニッヒヒ。覚悟しておいてくださいね」と、不気味な笑みを浮かべながら捨てセリフを吐いたのち、Bパッドをタップし、ワームホールを形成、それを潜り抜け、この場を後にする。

 

 

「いつでも来い。叩き潰してやる」

「……」

 

 

殺意さえ感じてしまう程のオーカミの気迫に、ライは不安や心配の気持ちが拭えなかった。

 

 

******

 

 

教師よりも強い権限を持ち、ノヴァ学園を牛耳る序列1位から4位で構成された集団『パワーフォース』……

 

ここは、彼らが集うパワーフォースルーム。

 

今は紫色の長髪が特徴的な美少年、序列1位のキング王と、まだ残暑があると言うにもかかわらず、マフラーを着用した、逆立った水色の髪を持つ少年、序列2位の新城サンドラがいる。

 

 

「二学期の初日からデッキ構築か。流石は学園の頂点、ガッチャだな」

「……」

 

 

デスクにカードを並べ、デッキの構築を練っているキングに、サンドラが声を掛ける。

 

 

「オマエはいいのか?」

「オレのガッチャードデッキは様々なデッキに対応可能だ。今更構築を変える気はないさ」

「カードバトラーがいる限り、デッキのトレンドは常に変わり続ける。その内対応できなくなっても知らないぞ」

「肝に銘じておくよ」

 

 

2人は幼馴染だ。軽口を叩ける程度には仲が良い。

 

もっとも、この学園であのキングに軽口を叩ける男など、サンドラくらいなものだが。

 

 

「キング。オマエは、一体オレ達に何を隠している。以前オマエの話していた学園の『驚異』と言うのは、月王者、鉄華オーカミのことなのだろう?」

「……」

「シグマ教授がそう言っていた。シグマ教授もただ者ではない、悪魔のような黒い存在を従えていた」

「悪魔の契約者か、なるほどな」

 

 

サンドラの言葉に、キングは納得する。彼は以前、ブイの口から「悪魔の契約者」と言う人物がいることを聞いていたからだ。

 

 

「知りたければついて来いサンドラ。ただ覚悟しておけ、地獄を見ることになるかもしれないぞ」

「……脅しても無駄だキング。その程度で臆していては、ガッチャではないからな」

 

 

2人はその後、パワーフォースルームを後にし、別の場所へと向かう。その場所は、今となっては誰も足を運ばない、ノヴァ学園の廃寮だ。

 

 

 

 

 

 





第86ターン「灼熱、ゴジラの炎」


******


超特別編、話を1つに繋げ、時系列順に並び替えました。

次回はキングVSサンドラの序列1位と2位の対決です!!
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