バトルスピリッツ 王者の鉄華   作:バナナ 

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第86ターン「灼熱、ゴジラの炎」

 

 

 

ゲートシティにある、バトスピ学園の最難関校ノヴァ学園。その敷地内には、今ではもう使われていない学園寮が存在する。

 

使われなくなった理由は単純明快、学園内の総生徒数が増え、その寮に収まりきらなくなったからである。故に現在は廃寮。もう誰もこの場所に行き来しない。

 

ただ、今のこの時間だけは、学園最強の2人、序列1位のキング王と、序列2位の新城サンドラが、そこの広場で肩を並べていて………

 

 

「オマエと出会い、やがて10年になるな、サンドラ」

 

 

廃寮に来るまでは終始無言だった2人だが、到着した途端、キングがサンドラにそう告げた。あまり知られていないが、2人は旧知の仲なのだ。

 

 

「懐かしいな。ゲートシティの町内大会で初めてオマエとバトルしたこと、まだ鮮明に覚えてるよ」

「あの時は、オレが勝ったな」

「だが、その次はオレがガッチャな勝利を収めた。ま、成長するにつれ、段々勝てなくなっていったんだけどな」

「そう悲観するな。サンドラ、オマエはオレが認めた唯一のカードバトラーだ」

「はは。かの序列1位、キング王からそのようなお言葉をいただくとはな。ファンの子が聞いたら嫉妬するぞ」

 

 

仲良しな2人。キングの一人称が「私」から「オレ」に変わっていることから、彼がサンドラに対しては心を許しているのが伺える。

 

 

「サンドラ。オレが今から話すことは、それよりも前、オレにとってのオリジンだ。聞けばもう後戻りはできなくなる。それでも聞く気か?」

 

 

キングがサンドラに訊いた。

 

その発言には、シグマとバイスから、話の断片のみを聞いてしまったとは言え、親友であるサンドラを、己の使命に巻き込みたくないと言う気持ちの表れを感じさせる。

 

 

「愚問だな。何度も言わせるなよキング。その程度で臆する者は、ガッチャではない」

 

 

サンドラも覚悟は決まっている。そのことをキングは再確認すると、改めて口を開く。

 

 

「ならば、全て話そう。母との出会い、そしてオレに与えられた使命を」

 

 

今からキングがサンドラに話すのは、彼らが出会うよりも昔の話。キングがまだ齢5歳の頃だ。

 

 

******

 

 

日本ではない、どこかの国、どこかの場所。

 

直径の大きさにして、およそキングとサンドラのいた廃寮程度か。それくらいのサイズのとある教会。

 

親を失ったか、もしくは捨てられてしまった子供達が集うこの場所に、当時5歳程度だったキングはいた。

 

 

「……」

 

 

子供らしく、広場で遊び、大はしゃぎする子供達。キングはその中で唯一輪に入らず、1人ベンチの椅子に腰を下ろし、眺めていた。

 

その瞳は虚で、まるで子供ながらに人生の全てを失ってしまったかのよう。

 

 

「キング」

「!」

 

 

そんな彼に声を掛けて来た心優しい人物が1人。

 

可愛らしいそばかすが特徴的な、黒い修道服を見に纏う女性の聖職者、シスターマリーだ。

 

 

「シスターマリー」

「他の子達と遊んで来ないの?」

 

 

シスターマリーがキングに訊いた。彼女はここ最近この教会に勤めることになった若い女性なのだが、いつも無口で誰とも関わろうとしないキングに疑問を抱いていた。

 

 

「遊んでも意味ないよ。遊んで、親しくなっても、結局みんな、僕のそばからいなくなってしまうのだから」

「あ、ちょっとキング」

 

 

シスターマリーのことを鬱陶しく思ったのか、キングはベンチから立ち上がり、この場を後にする。

 

その際、自分の周囲に存在する物や人々をすべて焼き払う、灼熱の炎を思い浮かべていた。

 

 

「ククク。見つけたぜ、灼熱のカードの持ち主。匂いがするぜ、高額のカードだけが放つ、高貴なる香りがなぁ」

 

 

そんなキングに目をつけていたのは、人相が極めて悪い、ドレッドロックスの髪型の青年。

 

彼は奇妙で甲高い笑い声を上げると、そのまま姿を消した。

 

 

ー………

 

 

夜。この国の夜は、日本よりも暗い。

 

教会にある自分の部屋に篭り、1人眠れずにベッドで横たわるキングのBパッドに、1着の着信が入る。

 

 

「……」

 

 

不審に思いながらも、キングはそれに応答する。

 

 

「はい」

『ククク。よぉガキィ』

「……どなた、ですか」

 

 

聞き慣れない不気味な声に、幼き日のキングは恐れ、震えた。

 

 

『そうビビんなよ。今から指定されたポイントに1人で来い。待ってるぜ』

「……」

『因みに、来ないはなしで頼むぜぇ。もし来なかったら、コイツの命はねぇからな』

『キング、来てはダメです、キング!!』

「ッ……シスターマリー!?」

 

 

聞こえて来たもう1人の声は、間違いなくシスターマリーのものであった。

 

キングは察してしまう。謎の男に拉致され、どこかに囚われているのだと。

 

そして、それを助けられるのは、自分だけなのだと。

 

 

『待ってるぜ。ククク』

「……」

 

 

直後、キングのBパッドに位置情報だけが送られて来た。おそらく2人はそこにいるのだろう。

 

早まる動悸。震える手足。まだ5歳だったキングが背負うには、あまりにも早過ぎて、重過ぎるモノ。

 

だがそれでも………

 

 

「行かなければ、逃げては行けない。屈してはならない」

 

 

なけなしの勇気を振り絞り、キングはデッキを手に持ち、1人教会の部屋を後にした。

 

 

ー………

 

 

教会からそう遠くは離れていない場所に位置する、とある廃工場。謎の男から指定されたポイントはここだ。キングは恐る恐る鉄の扉を開け、突入する。

 

 

「シスターマリー!!」

「キング、なぜ来たのです!!」

「待っててください、今降ろしますから」

 

 

縄で縛り上げられ、吊るされたシスターマリー。そんな彼女を助け出そうと、キングはどこかにあるはずの縄の結び目を捜索するが……

 

 

「ククク。本当に1人で来てくれたんだねぇ。バトルスピリッツの申し子、キング」

「あなたが、シスターマリーを」

 

 

キングの前に現れたのは、おそらく電話の主。シスターマリーを誘拐した張本人。

 

細くも筋肉質な肉体、ボロボロのマント。首に巻いている錆びついた鎖が、幼いキングの恐怖心を仰ぐ。

 

 

「オレの名は鎖鎌レンジ。ここらでは有名な盗賊さぁ。オレには、なぁんでもお見通しなんだぜ。例えば、オマエが伝説のレアカード『ゴジラ』の契約カードを所有していることとかなぁ」

「!」

 

 

レンジは、キングの所有するカードをズバリと言い当てる。

 

この時、キングは幼いながらに、彼の狙いが自分のゴジラのカードであると言うことを理解した。

 

 

「狙いは、僕のカード」

「ククク。物分かりの早い子で助かる。なぁに、おじさんは盗賊だが、無理矢理奪い取る程の悪党でもない。ちょっとした賭けをしようじゃないか」

「賭け?」

「バトルだよ。今からおじさんもバトルして、もし君が勝ったらこの女を解放し、二度と君に手を出さないと誓おう。だがおじさんが勝った暁には……ククク」

「ダメですキング!!…彼にそんなつもりはありません、早くこの場から」

「黙れよ女ぁ」

「ァァァァァァァァ!!!」

「シスターマリー!!」

 

 

レンジから提案されたバトル。だが、そのバトルは、キングの持つゴジラの力を見極めるためのもの。

 

勝敗に否応なくカードを取り上げることを理解しているシスターマリーが、声を荒げ、キングに逃げるよう促すが、レンジは小さなスイッチ1つで彼女を縛り上げている鎖に電流を流し、傷つける。

 

 

「おい落ちぶれ小僧。頭の良いオマエならわかるだろ?…逃げ道なんざねぇ。さっさと応じなぁ」

「……」

 

 

キングは震える手でBパッドを装着。ゴジラのカードが投入されてデッキをそこへと装填し、バトルの準備を行う。

 

 

「ククク。やっぱ物分かりの早い子は良い。やりやすいぜ」

 

 

それを見たレンジもまた、Bパッドとデッキを取り出し、バトルの準備を完了させる。

 

 

「シスターマリー、待っててください、今助けます」

「やめて、キング!!」

 

 

……ゲートオープン、界放!!

 

 

シスターマリーの制止を振り切り、幼き日のキングと、盗賊、鎖鎌レンジのバトルスピリッツが幕を開ける。

 

だが、後の最強カードバトラー、ノヴァ学園序列1位のキング王とは言え、まだ齢5歳程度の少年。紛いなりにも、多くの死線を潜り抜けて来た強豪、鎖鎌レンジに敵うわけがなくて………

 

 

ー……

 

 

「うァァァァァァァァ!!!」

 

 

レンジの操る、強固な外骨格を持つ蛾のようなスピリット、鎧モスラが、キングのスピリットとライフを次々と破壊して行く。

 

その翅が巻き起こす突風は、キングのレンジに対する恐怖心を抉り出し……

 

 

「はぁ……はぁ」

「ククク。どうした落ちぶれ小僧、もう終わりか?」

 

 

バトルダメージは具現化されてない。至って普通のバトルスピリッツ。

 

ただ、目の前に聳える恐怖の存在が、キングの立つ力を奪って行く。

 

 

「もうおやめなさい、何故まだ幼いあの子を傷つけるのです、何のために!!」

 

 

未だ鎖で吊るされているシスターマリーが、レンジに力強く問うた。

 

 

「ククク。そんなの、楽しいからに決まってんだろ」

「!」

「知ってんだぜ。そいつは落ちぶれ貴族。生まれて初めてのバトルスピリッツで、不思議な力を使い、ゴジラの炎を具現化させ、両親を焼き殺し、地位も名誉も失った、哀れな悪魔の子。忌み嫌われる生き物を痛ぶるってぇのは、最高に気持ちがいいんだわ」

「貴方は、なんと醜い心を……!!」

 

 

シスターマリーは悔しさのあまり、血が滲む程に己の唇を噛んだ。

 

知っているからだ。キングが、決してわざと両親を焼き殺したわけではないということを。そして、またそうならないように、彼が常に皆と距離を取り、敢えて孤独になっていることを。

 

キングは悪魔の子ではない。ただ身に余る力に怯えるだけの、普通の子供だ。

 

 

「さぁ、いい加減見せてみろよ、オマエの両親を焼き殺した、灼熱の力を持つ、伝説のゴジラをなぁ!!」

 

 

レンジの指示を受けた鎧モスラが翅を広げると、キングのライフを狙って羽ばたき始める。

 

 

「……」

 

 

迫る鎧モスラに、キングの恐怖心はさらに加速。震える手は、本能が赴くまま、手札にある1枚のカードを握らせる。

 

 

「あ……あ、うァァァァァァァァ!?!!」

 

 

また誰かを巻き込んでしまう、その一心で使って来なかった灼熱のカード。

 

恐怖に堪え切れなくなった彼は、遂にそのカードを解き放ってしまう。

 

 

「!」

 

 

出現したのは、鎧モスラの全長を軽く凌駕する程の体格を有する大怪獣。

 

大怪獣は口内から灼熱の炎を放出。その勢いは凄まじく、鎧モスラを焼き尽くすばかりか、辺り一帯をたちまち火の海へと変えて行く。

 

 

「ク、が……ガァァァァァァァァァ!!」

 

 

広がり続ける灼熱の炎は、やがてレンジを襲い、焼き払う。

 

 

「やめろ、やめろ。やめてくれ。もう僕は、誰も傷つけたくないんだァァァァァァァァ!!!」

「キング!!」

 

 

誰も傷つけたくないと叫ぶキングとは裏腹に、背後の大怪獣は灼熱の炎を放出し続ける。

 

 

「!!」

 

 

そんな折、シスターマリーにも危機が訪れる。灼熱の炎が、彼女を縛り上げていた縄に掛かり、今にも焼き切らんとしていたのだ。

 

そして………

 

 

「キャァァァァ!!!」

 

 

遂に縄は焼き切れ、シスターマリーは、レンジの仕掛けた剣山に向かって垂直落下。

 

仮に運良く当たらなかったとしても、その周囲には灼熱の炎と言う地獄が待っている。先ず命が助かることはないだろう。

 

 

「……!?」

「大丈夫ですか?」

「貴女は」

 

 

しかし、彼女がもうダメかと思った、その矢先。

 

ほんの一瞬、瞬きの瞬間。シスターマリーは長い金髪を靡かせる美しい女性の腕に抱えられ、生還していた。

 

突如現れた美しい女性。この人物こそ、現代のノヴァ学園学園長、本名「ノヴァ王」であった。

 

 

「シスターマリー、逃げて!!」

「ッ……キング!!」

 

 

必死に自分の力を制御しようとするキング。シスターマリーの無事を確認した彼は、歯を食いしばりながら、彼女に逃げるよう催促。しかし、彼女がキングを置いて逃げられるわけがない。

 

 

「あの子は、自分の力を畏れているのです。畏れていては、何も解決しません」

「だ、ダメです。今行っては貴女まで」

 

 

迷いも恐れもなく、学園長は火の海の中へと突入し、その中心にいるキングの元へと向かう。

 

 

「や、やめてください。この力は貴女を傷つけることしかできない。僕は、バトルスピリッツをしてはいけない人間なんだ!!」

 

 

身体の内側から沸き上がり続ける力に振り回されながらも、キングは学園長を制止させようと声を振り絞る。

 

だが、それでも学園長は歩みを止めることはなく、波のように押し寄せる炎をものともせずに、キングの元へと辿り着く。

 

 

「安心なさい。寧ろ逆です」

「!」

「貴方はバトルスピリッツをするために生まれて来た。その力は、世界の全ての人々を救うことができる、太陽の力。貴方は天命に認められた存在なのですよ」

「天命!?…そんな話を信じろと!?…父さんと母さんを焼き払った、この力を信じろと!?」

 

 

幼き日のキングの脳裏に焼きついていたのは、自分の両親を焼き払った、あの日の夜。

 

それ以来、彼にとってバトルスピリッツは呪い。決してしては行けないモノ。そう言う認識だった。

 

 

「このただ熱いだけの炎が何だと言うのです」

「!」

「自分では理解し難い謎の力で、意図せずして誰かを傷つけてしまうのは、さぞかしお辛いことでしょう。ですが、そのせいで縮こまってしまうのは、きっともっとお辛い」

 

 

炎による火傷を気に掛けることもなく、学園長はキングを優しく抱き締める。

 

 

「大丈夫です。そうさせないために私は来ました」

「……」

「私が必ず貴方を、世界を救う救世主へ導いて見せます」

 

 

学園長の持つ確かな人間性、人としての温もりを感じ取ったのか、キングは落ち着きを取り戻し、それに合わせ、背後の大怪獣の消滅と共に炎も消沈。

 

この日から、学園長はキングにとって、何物にも変え難い光となった。

 

 

******

 

 

時は戻り現代。キングは、サンドラに自分の幼き日の出来事を全て話し終えた。

 

 

「その日から、オレは学園長の養子となり、名を『キング王』と改めた。過酷な訓練の末、扱えきれなかった力も、今や全てこの手に収まっている。オマエやダホウと知り合ったのは、その後だ」

「……」

 

 

バトル中に実体化する炎等、一見、作り話のようにも聞こえる彼の過去だが、聞き終えたサンドラの表情には一切の疑いも伺えなかった。

 

キングが冗談を話したり、嘘をついたりする男ではないことを、誰よりも知っているからだろう。

 

 

「今オマエが話した、灼熱の力。その力は、鉄華オーカミの月王者と同様のモノなのか?」

 

 

サンドラが訊いた。まだ太陽王者のことは知らない彼だが、何かと察しが良い。

 

 

「似て非なるモノだ。オレの力は太陽王者。遥古来より伝わりし、救済の力だ。奴の月王者は、逆に破滅を齎すと言われている」

「学園長に、教えてもらったのか?」

「あぁ。月王者を倒すためには、『月蝕』の力を持つ太陽王者しかない。逆に敗北を喫すれば、『日蝕』の力を持つ月王者にオレの太陽王者は奪われ、世界は破滅する」

「……」

 

 

想定していたよりも遥かに壮大な規模の話に、サンドラは絶句。しかもその破滅に導く存在が、あの鉄華オーカミだと言うのだから、冗談でも笑えない。

 

 

「太陽王者と月王者の戦いは、500年に一度の周期に行われる。選ばれた2人は互いに自然と導かれ、世界の存亡を賭けて戦う宿命にあるのだ」

「その周期が今この瞬間で、選ばれた2人が、オマエと鉄華オーカミだと」

「そうだ。オレはこの戦いに勝利し、世界を破滅の危機から救わねばならない」

 

 

救済の太陽、破滅の月。500年に一度、それらに見初められた2人のカードバトラーは、狭間に位置する地球にて雌雄を決さなければならない。

 

偶然にもその2人が、鉄華オーカミとキング王なのだ。

 

 

「話は終わりだ。サンドラ、奴に手は出すな。力の覚醒後、オレが必ず倒す」

「……」

 

 

己が今から向かう地獄の話を終えた直後、キングはベンチから立ち上がり、この場を後にしようとする。

 

 

「オレには」

「?」

「オレには、アイツが世界を破滅に導くような男には見えない」

 

 

それをサンドラが言葉で制止させた。しかもその言葉は、オーカミが脅威であることを否定する旨を含んでいて。

 

 

「仮にオマエが勝利したとして、月王者の力を失った鉄華オーカミはどうなるんだ」

「月王者は力の源。それを失えば待つのは死のみ」

「……なにか、戦いを回避する手段はないのか」

「ない。オレ達はどう足掻いても戦う宿命にある」

「でも少しくらい足掻いてみろよ。戦いを回避できれば、誰も死なずに済むんだぞ」

 

 

どうにかして、誰も死ぬことのない未来を築き上げたいサンドラ。彼の心優しい性格が見て取れる。

 

キングとて、サンドラの気持ちは理解している。だが、戦いから降りる気は一切ない。

 

その証拠に、彼は懐から取り出したBパッドを左腕に装着する。

 

 

「己の意見を通したいのであれば、オレに勝て。ガッチャなオマエなら、わかっていることだろう?」

「キング……」

 

 

キングを動かすには、バトルスピリッツしかないと言うことを思い出したサンドラは、己もまたBパッドを左腕に装着。

 

 

「わかった。オレが勝ったら、戦い以外の道を考えてくれ」

「いいだろう。オレが勝てば、オレの自由にさせてもらうぞ」

「了承した」

 

 

互いに賭けるモノが決まったところで、Bパッドにデッキを装填。バトルの準備を完了させる。

 

そして……

 

 

「行くぞ、キング」

「あぁ」

 

 

ゲートオープン、界放!!

 

 

コールと共に、ノヴァ学園のトップの2人、キング王とサンドラによるバトルスピリッツが、廃寮の広場にて開始される。

 

先攻は……

 

 

「オマエが先攻、オレが後攻だ。どうせオレに選ばせてくれるんだろ?」

「よかろう」

 

 

サンドラが勝手に決定した。キングがいつも対戦相手に先攻か後攻かを選ばせて来るからとは言え、本来は公平に決定すべきである。

 

心優しい彼にしては珍しい行動だが、それだけ勝ちたいと言う気持ちが先行してしまっているとも言える。

 

 

[ターン01]キング王

 

 

「メインステップ。マジック、カウントドローを使用。デッキから2枚ドロー、さらにバーストをセットし、ターンエンドだ」

手札:5

バースト:【有】

 

 

キングの先攻。彼はドローマジックの使用のバーストのセットのみでそのターンをエンド。

 

消極的なプレイだが、アタック時にカウントを増やす契約スピリットのデッキを使用するため、アタックステップのない先攻では当然の行動である。

 

次は同じくアタック時にカウントを増やす契約スピリットのデッキを操るサンドラのターンだ。

 

 

[ターン02]新城サンドラ

 

 

「メインステップ。ネクサス、ゴルドダッシュを配置し、契約スピリット、ガッチャード スチームホッパーをLV1で召喚」

 

 

ー【ビークルケミー ゴルドダッシュ】LV1

 

ー【仮面ライダーガッチャード スチームホッパー】LV1(1)BP3000

 

 

錬金術によって造られた生物ケミー。その内の1体、バイク型のゴルドダッシュと、ケミーらを操り共に戦うライダースピリット、ガッチャード スチームホッパーが、サンドラのフィールドへと見参する。

 

 

「アタックステップ。スチームホッパーでアタック。その瞬間、ゴルドダッシュの効果を発揮、自身を疲労させ、デッキから2枚ドロー、2枚破棄。さらにスチームホッパーの効果でカウント+2」

「アタックはライフで受けよう」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉キング王

 

 

スチームホッパーとゴルドダッシュのコンボ。サンドラは手札の調整とカウントの増加を一度に行う。

 

フィールドでは、スチームホッパーが蒸気の力で飛び上がり、そのままライダーパンチ。キングのライフバリアを1つ破壊する。

 

だが、その瞬間、キングの伏せていたバーストが蠢き………

 

 

「ライフ減少時のバースト、クリアウォール。これを発動する」

「……」

「効果によりカウント+2。ライフ1つを回復」

 

 

〈ライフ4➡︎5〉キング王

 

 

キングの発動したバーストカードは、白マジック「クリアウォール」………

 

その効力により、キングは自身のカウントを進めつつ、ライフを5に戻す。

 

 

「やはりそのバーストか。ターンエンド」

手札:3

場:【仮面ライダーガッチャード スチームホッパー】LV1

【ビークルケミーゴルドダッシュ】LV1

バースト:【無】

カウント:【2】

 

 

できることを失ったサンドラはここでターンエンド。口振りからして、クリアウォールを踏むのは読んでいた様子。

 

バトルは一周し、次はキングの二度目のターンだ。

 

 

[ターン03]キング王

 

 

「メインステップ。我が右腕、ベビーゴジラを召喚」

 

 

ー【ベビーゴジラ】LV1(1)BP3000

 

 

キングもここでようやく己の所有する契約スピリット、小型ゴジラのベビーゴジラを召喚。

 

 

「さらにソウルコアをコストに、【契約煌臨】を発揮、ベビーゴジラをリトルゴジラへと契約煌臨」

 

 

ー【リトルゴジラ[2]】LV1(1)BP4000

 

 

即座に契約煌臨が発揮され、ベビーゴジラはやや逞しくなった姿、リトルゴジラへと進化を遂げる。

 

 

「アタックステップ。リトルゴジラでアタック。その効果でカウント+1、1枚ドロー」

 

 

アタックステップに突入し、リトルゴジラのアタック時効果を発揮するキング。カウントと手札を増やす。

 

そしてこの瞬間、更なるカードを手札から引き抜く。

 

 

「カウントが2以上に増えた時、手札から三賢神ラルヴァンダードの効果を発揮。自身を1コストで召喚し、1コアブースト&1ドロー」

 

 

ー【三賢神ラルヴァンダード】LV1(1)BP3000

 

 

神々しい輝きと共にキングのフィールドへと降り立ったのは、黄金の装飾を持つ、叡智の神、ラルヴァンダード。

 

その効果により、キングにコアとカードを齎す。

 

 

「そして、契約煌臨元のベビーゴジラのアタック時効果。カウント+2し、効果発揮後にBP5000以下、リトルゴジラの【OC:3】の効果と合わせて10000以下のスピリット1体を破壊」

「!」

「スチームホッパーを焼き尽くせ」

 

 

リトルゴジラの口内より放たれる火炎弾が、サンドラのフィールドに存在するスチームホッパーへと被弾。焼き尽くされた後に爆散してしまう。

 

 

「くっ……リトルゴジラのアタックはライフで受ける」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉新城サンドラ

 

 

リトルゴジラの鋭い爪の一撃が、サンドラのライフバリアを1つ切り裂く。

 

 

「ターンエンド」

手札:5

場:【リトルゴジラ[2]】LV1

【三賢神ラルヴァンダード】LV1

バースト:【無】

カウント:【5】

 

 

順調に手札とカウントを増やし、キングはそのターンをエンド。サンドラへとそれを譲渡する。

 

 

[ターン04]新城サンドラ

 

 

「メインステップ。最もガッチャなケミー、ホッパー1を召喚」

 

 

ー【インセクトケミーホッパー1】LV1(1)BP5000

 

 

「ホッパー1の召喚時、カウント+1。その後、魂状態のスチームホッパーを召喚」

 

 

ー【仮面ライダーガッチャード スチームホッパー】LV1(1)BP6000

 

 

サンドラはバッタ型のケミー、ホッパー1を召喚。その効果で魂状態となっていたスチームホッパーを復活させる。

 

 

「スチームホッパーにホッパー1を合体」

 

 

ー【仮面ライダーガッチャード スチームホッパー+インセクトケミーホッパー1】LV1(1)BP9000

 

 

ホッパー1がカードとなり、スチームホッパーのベルトのバックルへと収まる。カードはスチームホッパーにBPの上昇と新たな効果を付与する。

 

 

「マジック、ストロングドロー。デッキから3枚ドローし、その後2枚を破棄」

 

 

立て続けに使用したのは、青の手札入れ替えマジック。サンドラは2枚のケミーカードをトラッシュへと送った。

 

 

「アタックステップ。スチームホッパーでアタック。効果でカウント+2し、自身のコスト以下、即ちコスト5以下のスピリット1体を破壊できる」

「……」

「リトルゴジラを対象、それを破壊」

 

 

スチームホッパーのライダーキックが、リトルゴジラに炸裂。リトルゴジラは堪らず爆散し、契約煌臨元であったベビーゴジラは魂状態となり、キングのフィールドへ残される。

 

 

「さらにゴルドダッシュの効果。疲労させ、デッキから2枚ドロー、2枚破棄。そしてこのフラッシュタイミング、【契約煌臨】を発揮。対象はアタック中のスチームホッパー」

「早くも来るか」

 

 

サンドラもキングと同様に契約煌臨を発揮させる。キングのセリフからして、彼は今から何が呼び出されるのかを察している様子。

 

 

「燃え上がるオレのガッチャ。ファイヤーガッチャード スチームホッパーを契約煌臨!!」

 

 

ー【仮面ライダーファイヤーガッチャード スチームホッパー+インセクトケミーホッパー1】LV1(1)BP11000

 

 

スチームホッパーは、燃え盛る炎を纏い、炎の紋様が刻まれた装甲を持つ、熱きライダースピリット、ファイヤーガッチャードへと進化を果たす。

 

 

「ファイヤーガッチャードの煌臨時効果。場のケミーの数分コアブーストを行う。今のオレのフィールドには、ホッパー1とゴルドダッシュ。よって2コアブースト」

 

 

ファイヤーガッチャードが煌臨時に齎すものは、コア。サンドラは2つのコアを得て、ファイヤーガッチャードのLVを2へとアップさせる。

 

 

「アタックはライフだ」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉キング王

 

 

ファイヤーガッチャードの炎を纏うライダーパンチが、キングのライフバリアにヒット。1つが砕け散り、残りは4つとなる。

 

 

「ターンエンド」

手札:2

場:【仮面ライダーファイヤーガッチャード スチームホッパー+インセクトケミーホッパー1】LV1

【ビークルケミーゴルドダッシュ】LV1

バースト:【無】

カウント:【5】

 

 

有利な後攻を取ったのもあるのだろうが、キング以上にデッキを回転させ、バトルを有利に進めていくサンドラ。次の己のターンのフィニッシュのため、一度そのターンをエンドとする。

 

 

「キング。オマエは何故そこまで鉄華オーカミとの、太陽王者と月王者の宿命に拘る」

「愚問だな。今しがた話したはずだ。月王者は世界を破滅に導く。太陽王者のオレが放っておくわけには行かない」

「鉄華オーカミが世界を破滅に導くと誰が決めた」

「これまでの全ての時代の月王者がそうなのだ。そのたびに歴代の太陽王者に選ばれた者達が勝利し、阻止して来た。奴も覚醒が進むにつれ、破滅の衝動に駆られて行くだろう」

 

 

サンドラ的に言えば、そのキングの考えは「ガッチャ」ではなかった。

 

ややオカルトチックで不明瞭な伝説に沿って、1人のカードバトラーを倒そうとしているのだ。無理もない。

 

彼からしたら、こんなことに命を賭ける必要性が見出せないのだ。

 

 

[ターン05]キング王

 

 

「メインステップ。溶岩海のエデラ砦をLV2で配置」

 

 

ー【溶岩海のエデラ砦】LV2(1)

 

 

悩むサンドラとは裏腹に、なんの躊躇もなくカードを切るキング。彼の背後に溶岩に浮かぶ鋼の砦が配置される。

 

 

「配置時効果、カウント+1。この瞬間、2枚目のラルヴァンダードを提示。1コストで召喚し、1コアブースト&1ドロー」

 

 

ー【三賢神ラルヴァンダード】LV1(1)BP3000

 

 

エデラ砦のカウントアップ効果に誘発し、2体目のラルヴァンダードが、キングのフィールドへと出現。再び彼にコアとドローを齎した。

 

 

「さらに、暴竜アンギラスをミラージュとしてバーストゾーンにセットし、ターンエンド。どこからでも攻めて来るがいい」

手札:4

場:【三賢神ラルヴァンダード】LV1

【三賢神ラルヴァンダード】LV1

【溶岩海のエデラ砦】LV2

【ベビーゴジラ】(魂状態)

バースト:【無】

ミラージュ:【暴竜アンギラス(1972)】

カウント:【6】

 

 

キングは契約煌臨を持つカードが手札になかったのか、攻勢に回ることはなく、敷地を整えるだけでそのターンをエンドとした。

 

 

[ターン06]新城サンドラ

 

 

「メインステップ、仮面ライダーマジェードを2体召喚」

 

 

ー【仮面ライダーマジェード】LV2(2)BP5000

 

ー【仮面ライダーマジェード】LV2(2)BP5000

 

 

「召喚時効果をそれぞれ発揮。合計カウント+2、デッキから3枚ずつオープンし、対象カードを手札に加える」

「……」

 

 

マントを翻す、白き女性のライダースピリット、マジェード。その2体分の召喚時効果により、サンドラのカウントは7となり、手札に彼のエース、「レインボーガッチャード」のカードが加えられた。

 

この瞬間、サンドラのフィニッシュパターン、レインボーガッチャードによるケミーの大量展開が可能となるが………

 

 

 

バトルスピリッツの代表的な防御マジック、「絶甲氷盾」「白晶防壁」……

 

オレのデッキは、ファイヤーガッチャードが絶甲氷盾を、レインボーガッチャードが白晶防壁を、それぞれメタることができる。

 

だが、この状況は、そのどちらかしか使えない。

 

 

 

バトルが終極へと向かう中、サンドラはここで大きな選択を迫られていた。

 

それは、「絶甲氷盾」をケアして、今いるファイヤーガッチャードでそのまま攻めるか、「白晶防壁」をケアして、レインボーガッチャードで決めるかという二択だ。

 

 

 

いや、落ち着け。

 

アイツのデッキに絶甲氷盾は入っていない。何故なら、カウントを加速させるために、類似効果を持つ「クリアウォール」を入れているからだ。

 

ならばここで最もケアを優先すべきは、白晶防壁。

 

 

 

彼の手を知り尽くしているサンドラ。選択に結論を出し、その答えを手札から引き抜く。

 

 

「七色の輝きが、無限の未来を照らし出す。仮面ライダーレインボーガッチャード、LV1で契約煌臨!!」

 

 

サンドラがカードをBパッドに叩きつけると、ファイヤーガッチャードが、七色の輝きで満たされ、新たなる姿となって、フィールドに再練成。

 

 

ー【仮面ライダーレインボーガッチャード+インセクトケミーホッパー1】LV1(1)BP12000

 

 

こうして爆誕したのは、七色の輝きを纏う戦士、レインボーガッチャード。ガッチャードの最終形態にして、最強の姿。

 

 

「来たか、オマエの真のガッチャ」

「コイツでオマエを倒す。レインボーガッチャードの煌臨時効果、手札またはトラッシュから、カード名の異なるケミーを好きなだけノーコスト召喚する。現れよ、クロスホッパー、スチームライナー、ニジゴン、スケボーズ。そしてこのターン、それらは6色のカードとして扱われる」

 

 

ー【インセクトケミークロスホッパー】LV1(0)BP10000

 

ー【ビークルケミースチームライナー】LV1(0)BP6000

 

ー【レインボーケミーニジゴン】LV1(0)BP10000

 

ー【ビークルケミースケボーズ】LV1(0)BP3000

 

 

レインボーガッチャードの放つ七色の輝き。

 

そこからケミーが錬成される。今回は、ホッパー1の進化系クロスホッパー、列車型の大きなケミー、スチームライナー、虹色の小さなドラゴン、ニジゴン、スケボーのような見た目のスケボーズの4体。

 

 

「クロスホッパーとスケボーズの召喚時効果でコアブースト。さらに、スチームライナーとニジゴンをレインボーガッチャードへと合体。トリプル合体スピリットとなる」

 

 

ー【仮面ライダーレインボーガッチャード+インセクトケミーホッパー1+ビークルケミースチームライナー+レインボーケミーニジゴン】LV1(2)BP29000

 

 

スチームライナーとニジゴンがカードとなり、レインボーガッチャードのバックルへと宿る。

 

この瞬間、ほぼ伝説上の存在、トリプル合体スピリットと化したレインボーガッチャード。サンドラはそれを起点に、キングへ攻撃を開始する。

 

 

「ゴルドダッシュのLVを2に上げ、アタックステップ。レインボーガッチャードでアタック。契約煌臨元のスチームホッパーの効果とニジゴンの効果、2体のラルヴァンダードを破壊」

 

 

空に虹が掛かるような速度でキングのフィールドを駆け抜けるレインボーガッチャード。彼の僕であるラルヴァンダード2体を殴り蹴りで吹き飛ばし、瞬く間に爆散へと追い込んだ。

 

 

「スチームライナーの【合体中】効果、エデラ砦をデッキ下へ送る」

 

 

レインボーガッチャードの猛攻はまだ終わらない。大地の土塊から氷の剣を錬成し、それをエデラ砦へと投擲。粒子化させ、消滅させる。

 

 

「レインボーガッチャードの【OC:9】の効果、オレの6色のケミー1体につき、オマエはマジックカードを使用する際、1コスト余分に支払わなければならない」

 

 

今のサンドラのフィールドのケミーは5体。故に5コストだ。キングは5コスト余分に支払わなければ、マジックカードを使えない。

 

コアが多くなる終盤とは言え、ここまでコストに大きな負荷を掛けられて仕舞えば、先ず普通のマジックカードは使うことができなくなる。

 

 

「フラッシュ、ミラージュのアンギラスの【セット中】効果。2コストを支払い、自身を召喚」

 

 

ー【暴竜アンギラス(1972)】LV1(1)BP4000

 

 

「アンギラスの召喚時効果、カウント+2し、ネクサスカード、ゴルドダッシュを破壊、2枚ドロー」

 

 

サンドラが猛攻を仕掛けて来たこのタイミング。キングがカウンターの一手として呼び出したのは、多くの棘を生やした四足歩行の怪獣スピリット、暴竜アンギラス。

 

アンギラスは登場するなり、サンドラの側にあったゴルドダッシュを踏み潰し、破壊する。

 

 

「せっかくのレインボーガッチャードのアタックだが、それはこのアンギラスでブロックさせてもらう」

「それは、ガッチャじゃないな、キング。是が非でも受けてもらう。フラッシュマジック、スプラッシュザッパー」

「!」

「ブロック前のアンギラスを破壊」

 

 

キングが、アンギラスでレインボーガッチャードのアタックを凌ごうとした刹那、サンドラが1枚のマジックカードを使用。

 

破壊系のマジックだ。アンギラスは青いオーラに包み込まれ、そのまま爆散する。

 

 

「レインボーガッチャードはトリプルシンボル。オマエのライフ、3つもらうぞ、キング!!」

 

 

〈ライフ4➡︎1〉キング王

 

 

「ぐっ……」

 

 

七色のロードから繰り出される、レインボーガッチャードのライダーキック。

 

それがキングのライフバリアを一気に3つを砕く。その迫力と勢いには凄まじいものがあり、あのキングでさえ、たじろぎ、半歩後ずさった。

 

 

「どうだキング。オレにはまだ、アタックできるスピリットが4体も残っている。このバトル、オレの勝ちだ」

「……」

 

 

フィールドのカードの枚数からライフの残数、あのキング王から、何もかも優勢に立って見せたサンドラ。

 

勝利は目前。あとはいずれかのカードを捻るだけ。

 

だが、それは彼の錯覚で………

 

 

「ライフが減った瞬間、オレは1枚のカードを提示する。白マジック、絶甲氷盾!!」

「な、なに!?…絶甲氷盾だと!?」

 

 

キングがサンドラに見せたのは、まさかの絶甲氷盾。類似効果のクリアウォールを入れていたことから、このカードの採用はないと判断していたサンドラは、驚愕の表情を見せる。

 

 

「クリアウォールと絶甲氷盾を両採用だと、そんな馬鹿な」

「言ったはずだぞサンドラ。カードバトラーがいる限り、デッキのトレンドは常に変わり続ける。乗り遅れても知らないとな。絶甲氷盾の効果により、このターンのアタックステップを強制終了。手札保護効果により、このカードはレインボーガッチャードの【OC:9】の効果下においても問題なく発揮できる」

「くっ……!!」

 

 

レインボーガッチャードの効果さえもすり抜けて発揮できる絶甲氷盾。

 

その効果により、サンドラのアタックステップが強制終了。強引にエンドステップへと突入する。

 

 

「……ターンエンドだ」

手札:3

場:【仮面ライダーレインボーガッチャード+インセクトケミーホッパー1+ビークルケミースチームライナー+レインボーケミーニジゴン】LV1

【仮面ライダーマジェード】LV2

【仮面ライダーマジェード】LV2

【インセクトケミークロスホッパー】LV1

【ビークルケミースケボーズ】LV1

バースト:【無】

カウント:【10】

 

 

悔しさに表情を歪ませるサンドラ。キングが常に自分のバトルスピリッツよりも大きく先にいることを理解していたとは言え、この状況には辛いものがある。

 

ただ、彼がどんなに辛かろうが悔しかろうが、次はキングのターンだ。

 

 

[ターン07]キング王

 

 

「メインステップ。エデラ砦を2枚配置」

 

 

ー【溶岩海のエデラ砦】LV1

 

ー【溶岩海のエデラ砦】LV1

 

 

「それぞれの配置時効果でカウント+2」

「ッ……カウント10」

「説明するまでもないが、この瞬間より、ベビーゴジラの効果が解放。オレの全てのスピリットに赤シンボル1つが追加される」

 

 

キングはここで2、3枚目のエデラ砦を配置。効果により、カウントは10まで上昇。

 

彼のデッキはここからが本領発揮だ。ベビーゴジラの効果により、彼の操る全てのスピリットに赤シンボルが施されるようになる。

 

 

「マジック、カウントドロー。デッキから2枚ドロー、この効果は、オレのカウント4につき+1枚される。よって、4枚のカードをドローする」

 

 

手札増加マジックを使い、キングはさらに手札を伸ばして行く。

 

序列1位の名に恥じない強さを持つキングが、ここで有効なカードを引けないわけがない。そう思っていたのは他でもない、サンドラだ。

 

 

「荒ぶる大空の厄災、三災獣・空災デスト・ジーズ、LV2で召喚!!」

 

 

ー【三災獣・空災デスト・ジーズ】LV2(2)BP16000

 

 

「な、ここで三災獣だと!?」

 

 

大空から大きな翼を広げ、姿を現したのは、青い巨鳥。

 

その雄々しくも美しい、色鮮やかな翼に惑わされてはいけない。何故ならそれが運んで来るモノは、大空から齎される厄災なのだから。

 

 

「召喚時効果。己のカウント1につき、相手スピリット1体をデッキ下に戻す。この時、装甲系の効果は無効となる」

「!!」

「荒れ狂え、大空の厄災よ……!!」

 

 

デスト・ジーズの羽ばたきは、それだけで強力な暴風を生み出す。それらに飲み込まれてしまったサンドラのフィールドにいる全てのスピリット達は、肉体を引き裂かれ、爆散してしまう。

 

 

「マジェードのLV2効果、手札1枚を破棄することで、そのスピリット1体を疲労状態でフィールドに残すことができる。オレはこの効果でレインボーガッチャードを残す」

 

 

規格外の災害の中、レインボーガッチャードだけは、マジェードの神秘の力により奇跡的生還を果たす。

 

だが……

 

 

「2体目のデスト・ジーズを召喚」

「なんだと!?」

 

 

ー【三災獣・空災デスト・ジーズ】LV2(2)BP16000

 

 

「召喚時効果。今度こそレインボーガッチャードを葬れ!!」

「くっ……合体していた3体のケミーはスピリット状態で残す」

 

 

まさかの2体目。レインボーガッチャードはそれが生み出した二度目の暴風に飲み込まれ、爆散。

 

合体していた3体のケミー、ホッパー1、スチームライナー、ニジゴンは、それぞれカードからスピリット状態となり、サンドラの場に残った。

 

しかし、キングはそれさえも許さなくて。

 

 

「昂る大地の厄災、三災獣・地災ビヒモドス、LV2で召喚!!」

 

 

ー【三災獣・地災ビヒモドス】LV2(2)BP16000

 

 

「2種類目の三災獣!?」

 

 

大地の隆起と共に姿を見せたのは、モビルスピリットよりも巨大な体躯に加え、要塞をその身に宿す、牛のようなスピリット、三災獣の1体、ビヒモドス。

 

 

「召喚時効果。カウント1につき、BP30000以下のスピリット1体を破壊する。残ったムシケラを殲滅せよ!!」

 

 

ビヒモドスは、身体に備え付けられた無数の砲台を、サンドラのケミー達へ向けると、一気にそれをフルバースト。

 

圧倒的火力でケミー達を焼き払った。

 

 

「アタックステップ。ビヒモドス、やれ」

 

 

サンドラのフィールドに存在していたカード達を全て葬り去ったキングは、すぐさまアタックステップへと直行。

 

地にまつわる厄災の力をその身に宿す三災獣、ビヒモドスで攻撃を仕掛ける。

 

 

「ビヒモドスは元よりダブルシンボル。それに加え、ベビーゴジラの効果により赤シンボルが1つ追加されている」

「……そして、バトル終了時に追加でもう1つライフを破壊できる」

「そうだ。即ち、今のビヒモドスは実質クアドラプルシンボル。最大で4つのライフを破壊する」

 

 

巨大な体格で大地を踏み鳴らし、大地震を発生させるビヒモドス。

 

サンドラの残りライフは4。この一撃が完全に通れば、定石通り、序列1位のキングの勝利となる。

 

 

「フラッシュマジック、仮面の魂!!…このターンの間、オレのライフは1しか減らない」

 

 

だが、サンドラはまだ足掻く。加えていた仮面の魂により、三災獣から己のライフを守る構えを取る。

 

しかし……

 

 

「フラッシュマジック、レーザーボレー」

「!?」

「仮面の魂の効果を無効にする」

 

 

キングは、既にサンドラの手には届かない強さを手にいている。それは、彼が思っているよりもずっと遠くて………

 

 

「ら、ライフで受ける」

 

 

〈ライフ4➡︎1➡︎0〉新城サンドラ

 

 

「ぐっ……ぐぁぁぁぁあ!?!」

 

 

ビヒモドスの引き起こした大地震が、サンドラのライフバリアにクリーンヒット。彼から全てのライフを奪い去り、キングに勝利を齎して見せた。

 

 

「勝者は常に、この私だ」

 

 

勝利を収めたキングが高らかに拳を天に掲げると、それに応えるように、三災獣達は咆哮を張り上げた。

 

 

「良いバトルだったな」

「……1つ訊かせてくれ。オレがレインボーガッチャードで攻撃したターン、オマエは白晶防壁を手札に持っていたか?」

 

 

バトルに力を使いすぎたのか、疲れ果ててその場に座り込んだサンドラが、キングに訊いた。

 

 

「あぁ。持っていた」

 

 

素直に答えるキング。残った手札から「白晶防壁」のカードをサンドラへ見せつける。

 

それは、あの場面、第6ターンで、サンドラはファイヤーガッチャードのままアタックを仕掛けていても、結果は同じく敗北だったことを意味する。

 

 

「完敗、か」

「絶甲氷盾か白晶防壁で悩むくらいなら、その両方をケアすればいいだけの話だった」

「!?」

「ガッチャードのデッキは、比較的コアブーストできるカードが多い。それを活かせば、ファイヤーガッチャードとレインボーガッチャードの双方を展開することができたはずだ。しかし、オマエは勝負を急ぐあまり、第4ターンでファイヤーガッチャードを先に出し、無意味なコアブーストを行った。それが最も大きな敗因。オマエはオレに負けたのではない、自分に負けたのだ」

「………」

 

 

サンドラは何も言い返せなかった。キングの口から語られたプレイングは、たらればの話にしてはあまりにも完璧だったのだ。

 

 

「約束だサンドラ。この件、オレの自由にさせてもらう。オマエはもう関わるな」

 

 

キングがサンドラにそう告げて来た。しかし、彼はサンドラがこの程度で引き返すような男ではないことを知っていて………

 

 

「ふざけるなよキング。負けこそしたが、オマエの鉄華オーカミに対しての行為はガッチャではないというオレの考えは変わらない。こんな無益な争い、必ずオレが止めて見せる」

 

 

敗北を喫しても尚、どちらかが死に行く太陽王者と月王者の争いには賛同できないサンドラ。

 

心優しき彼は、立ち上がると、覚束ない足取りで、この場から去って行く。

 

 

「……」

 

 

キングはこの時何を思ったのか、疲弊した友の背中を視界に入れた途端、静かに瞳閉じた。

 

その瞼の裏にいたのは、幼き日の彼とサンドラで……

 

 





次回、第87ターン「眺望、バトルスピリッツの才」


******


次回は久しぶりにオーカミVSコント!!
デッキを入れ替えてのバトル??
乞うご期待です!!
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