全世界を揺るがした、かの大事件「A事変」を引き起こした悪魔の科学者「Dr.A」……
その実の孫である徳川フウが、ノヴァ学園へと編入し、風雲急を告げる中、早くも1週間が経過しようとしていた。
******
「………」
「オーカ、大丈夫?」
「……うん」
「ホント?……目の隈ヤバいけど」
「見間違いだろ」
「いやいや、この私がアンタの顔を見間違えるはずないでしょうが」
朝礼前の教室。白髪の美少女、春神ライの隣の席に腰を下ろす赤髪の少年、鉄華オーカミ。
誰よりも力強く、誰よりも頼もしい彼だが、今日は何故かいつもの眼力は皆無、目下には隈と言った様子で、明らかに疲れ果てていた。
「おいオーカミ。オマエ最近寮に帰ってないよな?…どこをほっつき歩いてんだよ」
「コントには関係ない」
「おい、何だよそれ。オレはこう見えてオマエのルームメイトよ?」
背が高い金髪の少年、光裏コントが口を挟む。オーカミと同じ部屋に住んでいる彼もまた、最近の彼の動向を気にしている様子。
「寮にも帰ってないって。まさかオーカ、フウちゃんのこと警戒して張り付いてるんじゃ」
「……」
当然「うん」とは言えないが、答えは「YES」だ。
正確には張り付いているのはフウではなく、ライだ。オーカミはライがまたフウに攫われないかを見張るために、彼女の後をつけ、常に監視していた。
「もう。シグマのばっちゃんも言ってたろ?…別に気にすることないって」
「……」
「何を、気にすることないって?」
「!!」
「わぁフウちゃん!!…本日も一段と素敵でございます!!」
「ありがとう、コントさん」
突如会話に割って入って来たのは、話題の徳川フウ本人だった。
何も事情を知らないコントは、その美しい容姿にデレデレだが、オーカミはすぐさま気持ちを切り替え鋭い剣幕を彼女に向ける。
「何しに来たんだよ」
「ニッヒヒ。面白いことも言えるのねオーカミさん。私の教室に私が居て何が悪いんですか?」
「……」
「そんなに私がお気に召さないのであれば、排除すればいいじゃないですか。バトルスピリッツで」
フウが懐から己のデッキを取り出しながら、オーカミにそう告げて来た。
ライを脅かす彼女を見過ごすわけにはいかないか、オーカミはこのバトルに応じるべく、己もデッキを取り出そうと、制服のポケットに手を突っ込むが………
「わかった。臨むところ……だ」
「オーカ!?」
「オーカミ!?」
ここ1週間の無茶が祟った。オーカミは疲弊のあまり、デッキを取り出す前に、フウの目の前で倒れてしまう。
「あら。授業も始まってないのに、もう居眠りですか?…ならこのバトル、私の不戦勝ですかね」
コントが倒れたオーカミを担ぐ中、フウは不適に笑った。
オーカミは、意識が遠のいて行く中、フウのその表情に腹を立ていて。
******
スタンドグラスの窓が日の光で鮮やかに輝く、学園長室。
そこには玉座のような座椅子に腰を下ろす学園長と、この学園の序列2位、新城サンドラの姿があった。
「序列2位、私にお話とは、一体何用でしょう」
「キングから全て聞きました。キングの生い立ちと、太陽王者の宿命を」
「…….」
「何故貴女はキングにその使命を教えた。それを知らなければアイツは」
「命を賭けることもなかった。そうおっしゃいたいのですね」
「……えぇ。その通りです。だから、貴女の言葉でキングを止めて欲しい。もうアイツは、オレの言葉に耳を貸さないんです」
キングの義理の母である学園長は、サンドラの友情に熱い性格込みで、キングと彼の関係性を理解している。
ただ、知っているからとは言え、彼女にとってはどうでもいい話で。
「キングから聞いたはずです。月王者は破滅を呼ぶ存在。結局誰かが月王者を止めなければならない。この時代のそれがキングだったと言うだけの話ですよ」
「義理とは言え、自分の息子に、そんな危険な真似……」
「構いません。そのために私はあの子を育て上げた。世界を救うために」
「!!」
サンドラは学園長の言葉に耳を疑った。
命を賭けてまで世界を救わせるためにキングを育て上げたなど、あまりに残酷だ。
「キングは、貴女のことを本能の母のように愛していると言うのに……」
「席を外しなさい序列2位よ。キングの邪魔立てをするのであれば、私は例え貴方と言えども容赦はしません」
「……」
話しても無駄だと悟ったか、サンドラは学園長から背を向け、この場を後にする。
予想はしていたが、やはり学園長も相当狂っている。
ならばもう、鉄華オーカミを直接止めるしか……
去り際、サンドラの脳裏に思い浮かんだのは、序列3位の鉄華オーカミ。
果たして彼は友のため、太陽王者と月王者の争いを止めることができるのか………
******
「!!」
倒れてから起き上がるまでは一瞬。そんな感覚だった。気を失っていたオーカミは目覚め、ベッドから勢いよく起き上がる。
そのすぐそばには、コントがいて。
「お、目覚ましたか」
「コント。オレ、寝てたのか……ライは、フウの奴はどうした」
「おいおい、そんながっつくなよ。今は昼休み。ここは保健室。オマエとフウちゃんに何があったのかは知らねぇけどよ。ライちゃんはブイ姉といるみたいだから、多分安心だぜ」
オーカミにとって、正直ブイは100%信用に値しない。
彼は立ち上がり、ライの元へと向かおうとする。
「ブイは信用できない。ライは今どこにいるんだコント。いや、この際フウを叩き潰しに行ってもいいな」
「物騒!!…やめとけ、賊かよオマエは」
フウのこととなると目がガチになるオーカミ。コントは彼を必死に食い止める。
オーカミとフウとの間に何があったのかを知らない彼だが、その心情は、可愛い女の子と友人が争う姿は見たくないと言う想いでいっぱいだった。
「そんなにフウちゃんのこと嫌いなのか?」
「あぁ。アイツは、ライの……」
「?」
ライの父親を殺した。
なんて言葉、コントには言えなかった。このノヴァ学園でできた友人である彼を、自分とフウの戦いに巻き込むことになるからだ。
「なんかよくわかんねぇけどよ。ちょっとだけフウちゃんが羨ましいわ」
「え」
コントが投げかけた意外な言葉に、オーカミは疑問符を浮かべる。
彼が女の子を羨ましがることなんて、ほとんどないからだ。
「オマエとフウちゃんがライバトル同士の関係なのは見ていてわかる。バトルスピリッツの天才のオマエとライバル関係ってことは、フウちゃんもきっと、飛び切りの天才なんだろ?……羨ましいぜ」
「コントもライバルだよ」
若干解釈違いだが、コントは2人の関係を羨ましく思っている様子。
「オレもオマエのライバルだと思ってた。けど、バトルするたび、オマエのバトルを見るたび、自分がとことん凡才だということに気付かされる」
コントが思い浮かべていたのは、これまでの自分のバトル。オーカミに負け、キングに負け、イチマルにも負け、負け続けて来た記憶。
それなりに努力はして来たのだろうが、近くにいるのがこうも天才的なカードバトラーばかりでは、己の成長や強さを実感できないのだろう。
「本当はオレもオマエみたいになりたいんだけどな」
「……」
やたらネガティヴだ。コントとて、契約スピリットに選ばれたコントラクター。才能なんてないわけがないと言うのに。
フウが編入し、いつ前のように大変なことになってもおかしくない状況だが、オーカミはあることをコントに提案する。
「バトルしよう、コント」
「え」
「普通にやっても楽しくないし、今日は互いのデッキを入れ替えてやるのはどう?」
「オレがオマエの鉄華団を使うのか!?」
「うん」
「いや、でもオレのデッキは契約デッキ。契約カードのΞはオマエに使えないぜ」
「別のカードを埋めて使えばなんの問題もない。いいからやろう。入れ替えバトル、1回アニキとやったことあるんだけど、新鮮で楽しいんだ」
オーカミが提案したデッキ入れ替えバトル。突然の発言に困惑するコントだが、同時に、彼の鉄華団デッキを使えることにワクワクもしていた。
******
その後、2人はバトルをするべく、ノヴァ学園のバトル用グラウンドへと足を運んでいた。
バトル前に、お互いのデッキを入れ替えるべく、手渡しし合う。
「一応組み直したけどよ。こんな感じでいいか?」
「あぁ、問題ない。オレのデッキ、結構回すの難しいと思うけど、コントなら回せるよ」
「買い被りすぎだろ。でも、ちょっとだけ楽しみだぜ。天才のオマエが作ったデッキ」
「一々褒めなくていいよ。早く始めよう」
オーカミのBパッドに閃光のデッキが、コントのBパッドに鉄華団のデッキが、それぞれ装填され、バトルの準備が完了する。
そして……
……ゲートオープン、界放!!
コールと共にバトルスピリッツが幕を開ける。
先攻はコントだ。興奮の詰まったその手で、オーカミの鉄華団のカードを振るう。
[ターン01]光裏コント
「メインステップ。創界神ネクサス、クーデリア&アトラを配置するぜ」
ー【クーデリア&アトラ】LV1
コントの初手は鉄華団の創界神、クーデリア&アトラ。神託の効果によりデッキから3枚のカードがトラッシュへと送られ、合計3つのコアが追加された。
「ターンエンド。新鮮で楽しい、か。確かにこりゃいいぜ。まるでオマエになれた気分だ」
手札:4
場:【クーデリア&アトラ】LV2(3)
バースト:【無】
「だろ。オレのターンだ」
鉄華団デッキとしては幸先の良いスタートを切り、コントはターンを終了。閃光デッキのオーカミへとターンが渡る。
[ターン02]鉄華オーカミ
「メインステップ。バーストでエンド」
手札:4
バースト:【有】
「バーストだけ?…なんだ手札事故かよ」
初手に恵まれなかったか、オーカミの最初のターンは、バーストカードのセットのみで終了。早々にコントのターンへと戻る。
[ターン03]光裏コント
「メインステップ。悪いけどよ、こっちは一気に速度上げてくぜ。バルバトスルプス鉄華、召喚だ!!」
ー【ガンダム・バルバトスルプス[鉄華団]】LV1(1)BP4000
フィールドで発生した砂塵を斬り裂いて現れたのは、2つの大剣を振るう赤い眼のバルバトスルプス、ルプス鉄華。
オーカミが最後に入手した鉄華団カードであり、デッキのメインエンジンだ。
「おぉ、バルバトスを召喚するオレ、カッケェ。ルプス鉄華の召喚アタック時効果。デッキ上2枚を破棄。それに誘発してクーデリア&アトラの【神域】が誘発。トラッシュの紫カード1枚をデッキ下に戻し、1枚ドロー」
ルプス鉄華の召喚に浮かれるコント。そのままアタックステップへと直行する。
「アタックステップ。ルプス鉄華でアタック。同じ効果をもう一度発揮させ、ドローだ」
クーデリア&アトラとのコンボで、召喚時とアタック時にそれぞれ1枚ずつ、2枚のカードをドローするコント。
雑ながらも強力な戦術だが、彼の目には、オーカミのバーストカードが見えていなかったようで。
「アタック後のバースト発動、ペーネロペー」
「!!」
「効果で1コアブースト。その発揮後、自身を召喚」
ー【ペーネロペー】LV3(6)BP15000
音速を超える速度で出現する白い飛行物体。それはルプス鉄華よりも一際大きなモビルスピリットの姿へと変形し、フィールドへと降り立つ。
その名はペーネロペー。Ξガンダムと同じく、系統に閃光を持つモビルスピリットだ。
「し、しまった。そいつかよ」
「ルプス鉄華をブロックだ」
ペーネロペーへ向かって、自身の身の丈程の2つの大剣を振るうルプス鉄華。しかし、ペーネロペーはそれを己の巨腕のみで容易く受け切る。
その後、ペーネロペーは自ら接近して来たルプス鉄華にビームライフルを照射。胸部を貫いて爆散させた。
「くっ……油断した。だけど、何もできないわけじゃないぜ。手札からグレイズ改弍の効果を発揮」
「へぇ。良いカード引いたな」
「このカードは、自分の鉄華団が相手によってフィールドを離れる時、手札からノーコスト召喚できる。頼んだぜ」
ー【流星号[グレイズ改弍]】LV1(1)BP2000
ルプス鉄華の爆散に反応するように、コントのフィールドへと現れたのは、マゼンタカラーが特徴的な一つ目のモビルスピリット、グレイズ改弍。
「グレイズ改弍の召喚時効果、デッキから1枚ドロー。行くぜオーカミ、グレイズ改弍で追撃だ」
性分なのか、オーカミが使っている時以上に序盤からガンガン攻めて行くコント。
オーカミは彼の戦術に「面白い」と思いつつ、それを凌ぐため、1枚のカードを手札から引き抜く。
「フラッシュチェンジ。ペーネロペーファンネルミサイル」
「!」
「効果で場のペーネロペーと入れ替える」
ー【ペーネロペー[ファンネル・ミサイル]】LV2(4)BP12000
「チェンジで入れ替えたスピリットは回復状態、そのままグレイズ改弍をブロック」
ペーネロペーは身体中からファンネルミサイルの発射口を展開し、それを全弾掃射。グレイズ改弍は避け切れずに被弾、爆散する。
「ペーネロペー、そんなに強いカードだったのかよ、ターンエンドだ」
手札:6
場:【クーデリア&アトラ】LV2(5)
バースト:【無】
大して使ったことがなかったのか、ペーネロペーとその関連カードらの強さを認識するコント。一度体勢を立て直すべく、ターンエンドを宣言する。
次は、本領を発揮し出した、オーカミのターンだ。
[ターン04]鉄華オーカミ
「メインステップ。先ずはバースト」
「……またペーネロペーか」
オーカミはこのターンもバーストをセット。コントはセットされたカードが、前のターンに【チェンジ】で手札へと戻って行ったペーネロペーだと直感的に判断する。
「グスタフ・カール00型を召喚」
ー【グスタフ・カール00型】LV1(2)BP2000
「召喚時効果で2コアブースト。2体のLVを上げる」
群青色の装甲を持つ、閃光のモビルスピリット、グスタフ・カールが召喚され、オーカミに2つのコアを齎す。
「アタックステップ。ペーネロペーファンネルミサイルでアタックだ」
オーカミ初のアタックステップ。ペーネロペーは今一度ファンネルミサイルを一斉掃射。
「ライフで受けるぜ」
〈ライフ5➡︎4〉光裏コント
全弾コントのライフバリアへと命中。彼のライフバリアを1つ粉砕する。
「次はグスタフ・カールだ」
「ライフだ」
〈ライフ4➡︎3〉光裏コント
グスタフ・カールの手に持つビームサーベルの一撃が、コントのライフバリアを1つ斬り裂く。
「ターンエンド」
手札:3
場:【ペーネロペー[ファンネルミサイル]】LV3
【グスタフ・カール00型】LV2
バースト:【有】
「やるなオーカミ。初見でΞ抜きの閃光デッキをここまで回すなんてな」
「コントもな」
互いにここまでの健闘を称賛し合いながら、バトルはコントの第5ターンへと移って行く。
[ターン05]光裏コント
「メインステップ。オルガ・イツカを配置だぜ」
ー【オルガ・イツカ】LV1
ここでコントはオルガ。神託で落ちた対象カードは3枚。よって3コアがそこへ追加される。
「ランドマン・ロディを召喚」
ー【ランドマン・ロディ】LV1(1S)BP1000
丸みを帯びた小型の鉄華団モビルスピリット、ランドマン・ロディが戦場へ出陣。対象スピリットの召喚により、2種の創界神にコアが蓄積する。
「軽減シンボルは揃った。オレは2体目のルプス鉄華を召喚!!」
ー【ガンダム・バルバトスルプス[鉄華団]】LV1(1)BP4000
負けじと軽減シンボルを集め、コントが呼び出したのは2体目のルプス鉄華。
1体目はほとんどドローのみの活躍に終わっていたが、オーカミのフィールドにスピリットがいるこの状況であれば………
「召喚アタック時効果。グスタフ・カールを消滅。トラッシュからグレイズ改弍を回収する」
より強力な存在へと化ける。
ルプス鉄華は二振りの大剣を大地へと突き刺し、手から離すと、腕部から砲手を展開。グスタフ・カールに向けて鉛玉を放ち、爆散へ追い込む。
「どうだオーカミ。オレの反撃はまだまだこれからだぜ」
手札誘発カードのグレイズ改弍までもを手札へ加え、勢いづくコント。
だが、オーカミはこの劣勢時でも鼻で笑って見せ……
「ふ。相手の手札増加時のバースト発動。マジック、千枚手裏剣」
「な、ペーネロペーじゃない!?」
「効果で2コアブースト、ルプス鉄華とランドマン・ロディを疲労だ」
「!!」
緑の風が吹き荒れる。その風はオーカミには追い風、コントにとっては向かい風。
オーカミには2つのコアを齎すが、コントのフィールドにいる2体のスピリットは片膝をつき、疲労状態となってしまう。
「ルプス鉄華が疲労、これじゃあアタックできねぇ」
「オマエがデッキに入れてたカードだろ、何驚いてんの」
「いや、この状況ならペーネロペーだと思うだろ普通」
やはり単純なバトルスピリッツの実力はオーカミの方が勝るのか、コントは細々としたテクニックで劣る面が目立つ。
しかし、それは決してコントが弱いという証明ではない。
「大抵のデッキなら、メインステップ中に千枚手裏剣が刺さった瞬間止まっちまうんだけどな。今回のオレのデッキはオーカミの鉄華団、止まんねぇぜ。アタックステップ開始時、トラッシュにあるバルバトス第2形態の効果、自身を召喚する」
ー【ガンダム・バルバトス[第2形態]】LV2(2)BP6000
トラッシュから復活する効果を備えた、機関銃を持つバルバトス、バルバトス第2形態がコントのフィールドに現れる。
「アタックだ。フラッシュでオルガとクーデリア&アトラの【神域】コンボでドローする」
「ライフだ」
〈ライフ5➡︎4〉鉄華オーカミ
コントのバルバトス第2形態によるアタック。前のターンにフルアタックしたオーカミにこれを回避する手段はなく、即答でライフで受けるを宣言。
バルバトス第2形態の機関銃から掃射される鉛玉が彼のライフバリア1つを撃ち抜いた。
「エンドステップ。バルバトス第2形態の効果、このターン中にアタックしていた時、トラッシュからコスト4以下のバルバトスを出す。来い、ルプス鉄華」
ー【ガンダム・バルバトスルプス[鉄華団]】LV1(1)BP4000
「ルプス鉄華の召喚アタック時効果。コアが5個も乗っているペーネロペーファンネルミサイルは除去できないが、クーデリア&アトラの【神域】は誘発、1枚ドローだ」
バルバトス第2形態のコア1つを借り、トラッシュから1体目のルプス鉄華が復活。召喚アタック時効果とクーデリア&アトラの【神域】によるコンボで、コントはまたドローを重ねる。
「ターンエンド!!」
手札:9
場:【ガンダム・バルバトスルプス[鉄華団]】LV1
【ガンダム・バルバトスルプス[鉄華団]】LV1
【ガンダム・バルバトス[第2形態]】LV1
【ランドマン・ロディ】LV1
【オルガ・イツカ】LV2(7)
【クーデリア&アトラ】LV2(9)
バースト:【無】
このターンだけでフィールドにスピリットを大量展開し、創界神ネクサスにコアを蓄積。
日頃からオーカミのバトルをそばで見ているだけあって、それなりに鉄華団デッキを使いこなすコント。
バトスピ学園の中でも最難関と言われるノヴァ学園に入学するだけのことはある。コントはおそらく、世間一般的に見れば強者の部類なのだろう。
ただ……
「流石だなコント。オレ以外で鉄華団を使えるのはオマエくらいだ」
「……オーカミ?」
目の前にいる少年は、彼よりもずっと強者で、ずっとバトルスピリッツの才能に恵まれている。
そして、それはおそらくいくら努力をしたとしても届かないモノで………
「オレも、そろそろ仕上げに行くか」
コントがそれを察してしまった束の間、そよ風が吹き抜け、オーカミの雰囲気がやや刺々しく変貌する。本気モードだ。
[ターン06]鉄華オーカミ
「メインステップ。パイロットブレイヴ、レーン・エイムを召喚」
ー【レーン・エイム】LV1(0)BP1000
「召喚時効果、手札から1コストでペーネロペーを召喚し、2コアブースト」
ー【ペーネロペー】LV1(1)BP7000
オーカミはパイロットブレイヴの効果でペーネロペーを再度召喚。コアブーストも行い、それなりに強力な布陣となる。
「もう1枚、パイロットブレイヴ、マフティ・ナビーユ・エリンを召喚」
「ッ……そのカードは」
ー【マフティ・ナビーユ・エリン】LV1(0)BP1000
しかし、それなりで終わらないのが鉄華オーカミと言うカードバトラーだ。
このタイミングで追加で召喚されたパイロットブレイヴのカードを目にするなり、コントは度肝を抜かれる。
「召喚時効果。残った1枚のカードを破棄し、相手の手札の枚数分カードをドローする」
「オレの手札は、9枚」
「あぁ。よってオレは9枚のカードをドロー」
ここに来てコントが積み上げて来たドローが裏目に出る。オーカミは9枚と言うとんでもない量のカードをドロー。
これだけのカードがあれば戦略は無限大。オーカミはその無限の中から1つの戦術を瞬時に選択する。
「チェンジ、ペーネロペーフライトフォーム。コスト合計8まで、相手スピリットを重疲労させる。2体のルプス鉄華を重疲労だ」
「!」
「この効果発揮後、フィールドのペーネロペーファンネルミサイルと入れ替える」
ー【ペーネロペー[フライト・フォーム]】LV2(3)BP10000
2体のルプス鉄華が重疲労状態となり、大地で倒れ込む中、ペーネロペーファンネルミサイルは形状を変化させ、白木飛行物体、ペーネロペーフライトフォームへと姿を変える。
「マフティをペーネロペーと合体。さらにLV2にアップ」
ー【ペーネロペー+マフティ・ナビーユ・エリン】LV2(3)BP15000
「アタックステップ」
ペーネロペーを合体スピリットとし、攻撃に転ずるオーカミ。
その直後、コントが吠える。
「待てオーカミ。オマエのアタックステップ開始時、オルガ・イツカの【神技】を発揮する。トラッシュから来いよ、最強のバルバトス、ルプスレクスファイナル!!」
コストに関係なく鉄華団スピリットをトラッシュから踏み倒せるオルガの【神技】により、コントのトラッシュからルプスレクスファイナルの影が出現するが……
「!?」
どう言うわけか、ルプスレクスファイナルの姿は影に止まり、そのまま粒子化して消え去ってしまった。
「な、なんでだ。なんでルプスレクスファイナルが出ない!?」
「ペーネロペーフライトフォームの効果。互いのアタックステップ中、相手のスピリットとネクサスのコアは1個以下にできない」
「!!」
「コントのフィールドにいる4体のスピリットは、いずれも1コアしか置かれていない。リザーブが0コアのこの状況だと、オルガの【神技】は無効だ」
コントは、その効果があまりにもマイナー過ぎて忘れていた。スピリットのコアを取り除けない今、彼はほとんどの防御カードを無効にされたに等しい。
「ペーネロペーでアタック。マフティの【合体中】効果、相手のフィールドに6枚以上のカードが存在する限り、アタックしているスピリットのシンボルを3つに固定する」
ペーネロペーがビームライフルとファンネルミサイルを一斉掃射。
持ち得る全ての武装から放たれる攻撃は、コントのライフを一気に3つも砕く渾身の一撃。
「クーデリア&アトラの【神技】を発揮、ランドマン・ロディを回復」
「ペーネロペーは相手よりリザーブの数が上なら、ブロックされない」
「くっ……」
何をしても全てが徒労に終わる。
コントはもう思い知るしかないのだ。鉄華オーカミとの、バトルスピリッツの才能の差を………
「やっぱ追いつけねぇや。ライフで受けるぜ」
〈ライフ3➡︎0〉光裏コント
攻撃は命中。コントのライフバリアは3つ同時に砕け散る。
これにより、勝者は鉄華オーカミだ。コントに、普段はあまり使われないペーネロペー達の力を見せつけた。
「たはぁ、負けだ負けだ。良いところまで行ったと思ったんだけどな。まさかペーネロペーにあんな力があるなんて」
「良いバトルだった。またやろう」
「あぁ」
バトルが終わったことにより、交換していた互いのデッキを返却する2人。
互いが互いのバトルスピリッツを称賛しながら、友情を深めて行く。
「オーカミ」
「ん?」
「その、ありがとうな」
「なにが」
「オレはオーカミみたいにはなれないけど、オレはオレなりに良いところがある。そう伝えたかったんだろ?」
「なんの話?」
オーカミがコントに気を遣ったのか、はたまた本当に気分でバトルをしたのかは彼のみぞ知る。
「オマエは、本当に良い奴だな」
「そんなことより、ブイのとこ行くぞ。アイツにライは任せられない」
「まだそんなこと言ってんのかよ。ブイ姉は良い人だって」
未だにブイのことを心の底から信用できないオーカミ。彼女と共にいる言うライの元へ向かうべく、歩みを進めようとするが………
「……噂をすれば、ブイからの電話だ」
ブイからの着信が入る。オーカミはBパッドの画面をタッチし、それに応答する。
《オーカミ》
「ブイ。そっちにライがいるんだろ?…今行くからどこにいるか」
《落ち着いて聞けよ》
「?」
オーカミが、今どこにいるのか教えろと訊く前に、ブイが別の言葉を発して遮る。当然彼女の表情は見えないが、神妙な面持ちになっているのだけは伝わって来た。
そして、次に彼女の発する一言は、オーカミに明らかな動揺を与えることとなる。
《オマエの兄貴分、九日ヨッカが、事故で意識不明の重体になった》
「……!!」
アニキこと、九日ヨッカの事故の知らせは、鉄華オーカミの物語を、やがて終焉へと導く。
次回、第88ターン「憤怒、逆襲のバルバトス」
******
次回、オーカミVSサンドラ再び。
物語は大きく動き出します。