バトルスピリッツ 王者の鉄華   作:バナナ 

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第89ターン「決戦、太陽と月」

 

 

ヨッカの事故が、キングと学園長によって意図的に引き起こされたことを知り、オーカミは激情に駆られる。

 

次の犠牲者を出さないため、何よりヨッカの仇を討つため、オーカミはキングの元へ向かうが、序列2位、新城サンドラがそれを阻む。

 

見えぬ陰謀渦巻く中、オーカミ達に齎される未来は果たして光か、闇か。

 

 

******

 

 

パワーフォースルームにて行われている、鉄華オーカミと新城サンドラのバトルスピリッツ。

 

ガッチャードデッキの切り札「レインボーガッチャード」を既に手札に加えた挙句、バーニングゴリラ、マジェード、ヴァルバラド黒鋼の3体のライダースピリットを従えたサンドラは、おそらくこれから始まるであろうオーカミの反撃に対して強く手札を握り、身構えていた。

 

 

[ターン05]鉄華オーカミ

 

 

「メインステップ。ランドマン・ロディを召喚」

 

 

ー【ランドマン・ロディ】LV1(1S)BP1000

 

 

「対象スピリットの召喚により、2種の創界神にそれぞれ神託」

 

 

このターン、オーカミが最初に呼び出したのは、丸みを帯びた小型モビルスピリット、ランドマン・ロディ。

 

コレだけでは、サンドラのライダースピリット達には太刀打ちできないが、真打はこの次で。

 

 

「再び天空貫け、バルバトスルプス鉄華、LV2で召喚!!」

 

 

ー【ガンダム・バルバトスルプス[鉄華団]】LV2(3)BP7000

 

 

発生する砂塵を斬り裂き現れたのは、赤き眼を持つバルバトスルプス、バルバトスルプス鉄華。

 

このバトルでは既に二度目の召喚。今一度その強さが、サンドラのフィールドで猛威を振るう。

 

 

「召喚時効果。デッキを2枚破棄、鉄華団があれば、相手フィールドのコア2個をリザーブに置く」

 

 

息を吸うように鉄華団が破棄され、ルプス鉄華の効果は有効となる。

 

 

「マジェードから全てのコアを外す」

 

 

二振りの大剣の内一本、ソードメイスをマジェードへ向かって投擲するルプス鉄華。

 

それはマジェードの体内に眠るコアを貫き、消滅へと追い込む。

 

 

「消滅に成功したことで、トラッシュから鉄華団カード、ルプス鉄華を手札に戻す」

「また手札に舞い戻るか」

「そしてクーデリア&アトラの【神域】でドロー。アタックステップの開始時、トラッシュにあるバルバトス第2形態の効果、自身を召喚する」

 

 

ー【ガンダム・バルバトス[第2形態]】LV2(2)BP6000

 

 

手札トラッシュの質と量を高めつつ、オーカミが次に行ったプレイは、トラッシュからの召喚。

 

機関銃を装備した低コストのバルバトス、バルバトス第2形態がフィールドに召集される。

 

 

「続けてオルガの【神技】を発揮。トラッシュからパイロットブレイヴ、三日月を召喚し、ルプス鉄華と合体」

 

 

ー【ガンダム・バルバトスルプス[鉄華団]+三日月・オーガス】LV2(3)13000

 

 

オルガの効果も発揮させ、オーカミはここでルプス鉄華に三日月を合体。戦闘態勢を整えた。

 

 

「ルプス鉄華でアタック、その効果で2枚破棄し、今度はバーニングゴリラとヴァルバラド黒鋼を消滅」

 

 

ルプス鉄華は目にも止まらぬ速さで、投擲したソードメイスを拾い上げると、そのまま両脇にいる2体のライダースピリットを切断。消滅させる。

 

 

「クーデリア&アトラの【神域】でドロー。さらに三日月の効果でオマエのリザーブのコア3個をトラッシュへ」

「!」

 

 

フィールドばかりか、サンドラのリザーブのコアまで狙うオーカミ。これにより、サンドラの使えるコアは僅か2個となる。

 

 

「そのコアじゃ仮面の魂は使えないだろ」

「……」

 

 

前のターン、バーニングゴリラの煌臨時によってオープンされ、効果でそのまま手札へ加えられていた、ライダースピリット専用マジック「仮面の魂」の存在を、オーカミは忘れてはいなかった。

 

コアが2個しかないこの状況では、サンドラはどう足掻いてもそれを使うことはできない。

 

ただ、それだけが彼のデッキの防御札ではなくて。

 

 

「侮ってもらっては困るな。魂状態のスチームホッパーを対象に【契約煌臨】を発揮!!」

「ッ……オマエのリザーブにトラッシュはないはずだ」

「あぁ、だがこのカードは、オレのカウントが6以上ならソウルコア無しで【契約煌臨】を行える」

「!」

「さぁ、フィールドにガッチャな輝きを、仮面ライダープラチナガッチャード!!」

 

 

ー【仮面ライダープラチナガッチャード】LV1(1)BP8000

 

 

ルプス鉄華に倒され、魂状態となっていたスチームホッパーが即座に復活。

 

その姿は、シルバーカラーに黄金の装飾が施された新形態。名はプラチナガッチャード。

 

 

「プラチナガッチャードの煌臨時効果。このターンの間、君のスピリットはアタックかブロックする際、リザーブから2コストを支払わなければアタック、ブロックできない」

「なに」

 

 

その効果発揮宣言後、オーカミは己のBパッド上にあるリザーブに目をやる。

 

そこのコアはもちろん0。プラチナガッチャードは効果を事前に知っておかなければ対策のしようがない。

 

 

「ルプス鉄華のアタックはライフで受ける」

 

 

〈ライフ4➡︎2〉新城サンドラ

 

 

既に実行したアタックは有効。ルプス鉄華は二振りの大剣を縦に振い、サンドラのライフバリアを一気に2つ破壊する。

 

 

「エンドステップ。バルバトス第2形態の効果、アタックをしていれば、トラッシュからコスト4以下のバルバトスをノーコスト召喚する。もう1体、ルプス鉄華」

 

 

ー【ガンダム・バルバトスルプス[鉄華団]】LV1(1)BP4000

 

 

プラチナガッチャードの効果により、これ以上のアタックは行えなくなってしまったが、オーカミのターンはまだ続く。

 

エンドステップに突入し、バルバトス第2形態の効果により、トラッシュから2体目のルプス鉄華が召喚される。

 

 

「召喚時効果でプラチナガッチャードを消滅」

 

 

ルプス鉄華の腕部に仕込まれていた滑腔砲が、サンドラのプラチナガッチャードに命中し、消滅へ追い込む。

 

 

「トラッシュからランドマン・ロディを手札へ。クーデリア&アトラの効果でドロー。ターンエンドだ」

手札:9

場:【ガンダム・バルバトスルプス[鉄華団]】+三日月・オーガス】LV2

【ガンダム・バルバトスルプス[鉄華団]】LV1

【ガンダム・バルバトス[第2形態]】LV1

【ランドマン・ロディ】LV1

【オルガ・イツカ】LV2(3)

【クーデリア&アトラ】LV2(6)

バースト:【無】

 

 

「仕留め切れなかったな。このオレを」

「……」

 

 

なんとかプラチナガッチャードを倒しはしたものの、状況はサンドラの思い描いた通りとなってしまった。

 

次のターン、彼のレインボーガッチャードが、再びオーカミに襲いかかる。

 

 

******

 

 

「……」

 

 

ノヴァ学園の有する雑木林の中、黒く長い、美しい髪を持つ少女、徳川フウは、ただ1人、大きな木の根元で腰を下ろしていた。

 

その様子は、まるで何かに困惑し、腰を抜かしたみたいで………

 

 

「なんなのよ、あの女。何故、何故私は」

 

 

「何故空間移動アプリを渡したんだ」と、フウは何度も頭の中でその言葉を反芻していた。

 

そう。フウは春神ライに空間移動アプリを複製し、ライのBパッドにインストールする形で譲渡したのだ。

 

 

「……むかつく」

 

 

反芻される後悔の穴を埋めるように、譲渡後のライの感謝の言葉が頭を過ぎる。

 

今まで何度も他人を欺き、騙し続けて来たフウにとって、彼女のその気持ちはストレスそのもので。

 

 

「……計画に支障はない。あとはただ待つだけ。伝説が本当なら、これで私は永遠の時を生きられる」

 

 

外の気温は高いわけでもないのに、フウの手足は震えていた。

 

それは彼女の残りの寿命が短いことを示している。

 

 

ー『私はフウちゃんを信じる!!』

 

 

「ッ……クソがァァァァ!!!」

 

 

不意にまたライの言葉を想起したフウ。震える手を抑えるため、頭の中の雑念を消し去るため、彼女は自分の背後に聳え立つ木の幹を殴りつける。

 

 

「なんでだ。なんでここまで来て、あんな愛される必要もない作り物如きに」

 

 

震えは収まったが、頭の中の雑念と木の幹を殴りつけた痛みは残る。

 

幼少の頃より、祖父であるDr.A同様、悪の道を突き進んで来た徳川フウ。彼女の心は今、その悪の心と何かが複雑に絡み合っていた。

 

 

******

 

 

視点はパワーフォースルームのオーカミとサンドラに戻る。

 

今一歩届かなかったオーカミは、ターンエンドの宣言をし、次はサンドラの第6ターン。決着をつけるべく、彼はそれを進めて行く。

 

 

[ターン06]新城サンドラ

 

 

「メインステップ。マジェードを召喚」

 

 

ー【仮面ライダーマジェード】LV2(2)BP5000

 

 

「召喚時効果でカウント+1。デッキから3枚オープンし、その中のスチームライナーを手札に加え、残りを破棄。さらにストロングドロー。デッキから3枚ドローし、2枚を破棄」

 

 

2体目のマジェードやストロングドローでデッキを目まぐるしく回転させて行くサンドラ。

 

この過程の中で、彼のカウントは遂に7へ到達。レインボーガッチャード煌臨の準備が整った。

 

 

「行くぞ鉄華オーカミ。これで最後だ。魂状態のスチームホッパーを対象に【契約煌臨】を発揮」

 

 

キングを倒そうと暴走するオーカミを止めるべく、サンドラは無慈悲にもそのカードの【契約煌臨】を宣言する。

 

 

「七色の輝きが、無限の未来を照らし出す。仮面ライダーレインボーガッチャード、LV1で契約煌臨!!」

 

 

ー【仮面ライダーレインボーガッチャード】LV1(1)BP9000

 

 

魂状態のスチームホッパーが、七色のビッグバンによって、新たな姿としてフィールドに再練成される。

 

こうして爆誕したのは、七色の輝きを纏う戦士、レインボーガッチャード。ガッチャードの最終形態にして、最強の姿。そして、サンドラの真のガッチャ。

 

 

「レインボーガッチャードの煌臨時効果。手札かトラッシュにある、カード名の異なるケミー1枚ずつを、コストを支払わずに好きなだけ召喚配置ができる。オレはこの効果で、トラッシュにあるホッパー1、クロスホッパー、スチームライナー、テンライナー、スケボーズ、ゴルドダッシュ、ニジゴンをそれぞれ呼び出す」

 

 

ー【インセクトケミー ホッパー1】LV1(0)BP5000

 

ー【インセクトケミー クロスホッパー】LV1(0)BP10000

 

ー【ビークルケミー スチームライナー】LV1(0)BP6000

 

ー【ビークルケミー テンライナー】LV1(0)BP10000

 

ー【ビークルケミー スケボーズ】LV1(0)BP3000

 

ー【レインボーケミー ニジゴン】LV1(0)BP10000

 

ー【ビークルケミー ゴルドダッシュ】LV1

 

 

レインボーガッチャードから溢れ出る虹色の波動が奇跡を錬成。このフィールドに7体のケミーを誕生させる。

 

 

「スケボーズの効果で1コアブースト。ホッパー1の効果でカウント+1。クロスホッパーの効果でカウント+1と2コアブースト。さらにレインボーガッチャードに、クロスホッパー、テンライナー、ニジゴンを合体」

 

 

ー【仮面ライダーレインボーガッチャード+インセクトケミー クロスホッパー+ビークルケミー テンライナー+レインボーケミー ニジゴン】LV2(3)BP43000

 

 

クロスホッパー、テンライナー、ニジゴンの3体のケミーはカードとなり、レインボーガッチャードのベルトへ収まる。

 

レインボーガッチャードはBPは40000を超え、トリプルシンボルの合体スピリットとなる。

 

 

「まだ終わらんぞ。レインボーガッチャードのLVを下げ、ファイヤーガッチャードを召喚。さらにスチームライナーと合体」

 

 

ー【仮面ライダーファイヤーガッチャード スチームホッパー+スチームライナー】LV1(1)BP18000

 

 

ここでサンドラはレインボーガッチャードのLVを下げつつ、炎の紋様が刻まれた装甲を持つライダースピリット、ファイヤーガッチャードを煌臨せずに召喚。

 

彼としては意外なプレイだが、これには訳がある。

 

 

「君のトラッシュ、絶甲氷盾があるな。オレのレインボーガッチャードを対策して来たのだろう?」

「……」

 

 

オーカミは苦い表情を見せる。

 

事実その通りだからだ。レインボーガッチャードのマジックのコストを重くする【OC:9】の効果は、手札に存在する時に耐性を持ち、それを無効にする白マジック「絶甲氷盾〈R〉」が最も対抗策として優れている。

 

 

「だが、ファイヤーガッチャードはその絶甲氷盾の効果を無効にする。オレのガッチャに、君のハイライトカードは何一つとして通じない」

 

 

これは以前、キングとのバトル後、彼に送られたアドバイスによって生まれた彼の新しい戦術。

 

一度決まって仕舞えば、ほとんどの防御札や誘発を貫通できる。本日のハイライトカードを含め、それらのカードの比率が多いオーカミのデッキにとっては、かなり分が悪い。

 

 

「アタックステップ。ファイヤーガッチャードでアタック。その【OC:7】の効果により、このターン、君はリザーブのコアを4つ支払わなければブロックできず、効果でアタックステップを終了できない」

 

 

始動するサンドラのアタックステップ。ファイヤーガッチャードの効果により、オーカミは絶甲氷盾はおろか、ブロックさえできない状況に陥る。

 

 

「レインボーガッチャードの【OC:9】の効果も発揮されている。君はマジックを使う際、6コスト余分に支払わなければならない」

「アタックはライフで受ける」

 

 

〈ライフ3➡︎2〉鉄華オーカミ

 

 

背部のブースターの逆噴射を利用し、オーカミのライフバリアへ凄まじい速度でライダーキックを叩き込むファイヤーガッチャード。

 

オーカミの残りライフは3から2となり、窮地に追い込まれるが………

 

 

「これがオレのガッチャだ。君では決してオレには勝てない」

「オレのガッチャ…よく言うよ。その戦術、人の考えを鵜呑みにしただけなんだろ?」

「!?」

 

 

全てを見透かしているかのようなオーカミの発言に、サンドラは驚かされる。

 

直後、オーカミは手札のカードを引き抜き、サンドラへ見せつける。

 

 

「自分を信じられないカードバトラーは、その時点で終わりだ。本日のハイライトカード、マジック、ソーンプリズンLT」

「なに!?」

「この効果により、オマエは自分のスピリットを2体選んで重疲労させなければならない。それを3枚だ」

「!!」

 

 

オーカミが放ったのは、緑マジック「ソーンプリズンLT」……

 

1枚で2体のスピリットを重疲労させる効果を持つそのカードを3枚使ったと言うことは、6体だ。サンドラは自分のスピリット全てを強制的に重疲労へ追い込まれることとなる。

 

 

「このカードは絶甲氷盾と同じく、手札にある時に耐性があるだけでなく、貫通効果を持つ。問答無用で重疲労させてもらう」

「ぐっ……」

 

 

サンドラのフィールドに覆い被さる緑の蔦が、彼のライダースピリット達やケミー達の足を絡め取り、重疲労状態へと追い込む。

 

アタックとは、回復状態のスピリットを疲労させることで、初めて実行できる行為。これではサンドラはターンエンドを宣言せざるを得ない。

 

 

「この戦術のさらに上を行く戦術を用意したとでも言うのか!?……ターンエンドだ」

手札:6

場:【仮面ライダーレインボーガッチャード+インセクトケミー クロスホッパー+ビークルケミー テンライナー+レインボーケミー ニジゴン】LV1

【仮面ライダーファイヤーガッチャード スチームホッパー+スチームライナー】LV1

【仮面ライダーマジェード】LV2

【インセクトケミー ホッパー1】LV1

【ビークルケミー スケボーズ】LV1

【ビークルケミー ゴルドダッシュ】LV1

バースト:【無】

カウント:【9】

 

 

己にとっては、キングとの友情の証とも考えていたこの戦術。

 

それをオーカミが容易く飛び越えたことで腹わたが煮えくりかえる思いになりつつも、サンドラは僅かな希望に賭けてターンエンドを宣言。

 

次はオーカミのターン。サンドラが望んでいる僅かな希望を摘んで行く。

 

 

[ターン07]鉄華オーカミ

 

 

「メインステップ。は、もう要らないな。アタックステップだ、ルプス鉄華!!」

 

 

オーカミはメインステップを切り捨て、アタックステップへ直行。ルプス鉄華で攻撃を仕掛ける。

 

 

「アタック時効果でマジェードを消滅。三日月の効果でスケボーズを消滅させ、リザーブのコア2個をトラッシュへ」

 

 

緑の蔦で身動きが取れないマジェードとスケボーズを、ルプス鉄華が強襲。

 

二振りの大剣で斬り伏せ、消滅させる。

 

 

「これでオマエのコアは合わせて2個。仮面の魂は使えない」

「ぐっ……」

「トドメだ……!!」

「こんちくしょうめ」

 

 

〈ライフ2➡︎0〉新城サンドラ

 

 

一欠片の慈悲もなく、ルプス鉄華の二振りの大剣の切先が、サンドラのライフバリアへと突き刺さる。

 

彼の残っていた全てのライフバリアは砕け散り、このバトル、勝者はオーカミとなる。

 

 

「負けた。このオレが。クソ、止めねばならなかったと言うのに」

 

 

バトル後、サンドラは片膝をつき、敗北に大きなショックを受け、己の非力さを悔いた。

 

 

「さっきのオマエのターン。オレの残りライフが3つなら、トリプルシンボルになっていたレインボーガッチャードからアタックするべきだった」

「!!」

「誰から教えてもらったのかは知らないけど、自分のバトルをしなくなったオマエに、オレが負ける訳ない。約束だ、ここは通してもらう」

 

 

オーカミの指摘に、サンドラは先程の盤面を想起する。

 

確かにそうすべきだった。一撃で終わらせるべきだったのだ。いつもの彼ならそうした。

 

なら何故そうしたか。

 

答えは単純。彼の心の根底には、常にキングがいるからだ。

 

 

「この敗北、キングとの友情にこだわり過ぎた、オレの心の弱さが原因か」

 

 

自分が何故敗北したのかを理解したサンドラは、立ち上がり、懐から1枚のカードを取り出し。

 

 

「鉄華オーカミ」

「!」

 

 

オーカミにそれを投げ渡す。オーカミはそれを指先でキャッチするなり、視認すると、そのカードはおそらくサンドラが使っていたであろう青属性のライダースピリットのカードであった。

 

 

「なに急に」

「そのカードを君に託す。そして約束してくれ。必ずキングを止めると」

「言われなくてもそのつもりだ」

「生きて帰って来いよ。君も、キングも」

 

 

サンドラの最後の言葉は耳にだけ入れ、オーカミはパワーフォースルームを後にし、出るなり走り出す。

 

目指すは宿敵キングのいる、ノヴァ学園の屋上だ。

 

 

******

 

 

「ヨッカさん!!」

 

 

ここは界放市ジークフリード区にある大きな病院。その中にある「九日ヨッカ」の名札が貼られてある病室の扉を、春神ライは勢い良く開ける。

 

事故によって意識不明の重体となったヨッカとライは対面する。

 

 

「ライじゃねぇか。どした」

「え」

 

 

病室にいたのは、全身を包帯で巻いたヨッカだった。その横には、サングラスを掛けた界放市の警視、アルファベットも確認できる。

 

重体と聞いていたライは、思いのほか動けて元気な声を発するヨッカに拍子抜けとなる。

 

 

「え、あの、ヨッカ…さん?…事故ったんだよね…?」

「事故ったつーか、誰かに店壊されたんだよな」

「なんでそんな元気なの」

「別にいいだろ元気なことは」

「ついさっき目が覚めたんだ。タイミングが良かったな、春神」

「な、なんだ。ヨッカさん、無事だったんだ」

「死んだとでも思ってたのか?…失礼な奴だなぁおい」

 

 

ヨッカの無事に安堵し、ホッと肩を撫で下ろすライ。そんな彼女に対し、ヨッカは鬼の形相を見せて。

 

 

「ところでオマエ。なんでオレの連絡ずっつシカトしてたんだ?」

「え、あいや。アレはなんで言うか、怒られそうだなぁと思いまして……」

「バカヤロー連絡ぐらい入れろォォォ!!」

「ヒィィィ」

 

 

1つ歳上のオーカミを追いかけ、ヨッカに許可なしでゲートシティに行ったため、およそ半年の間、彼との連絡を取らなかったライ。

 

当然かなり厳しく叱られる。

 

 

「まぁでも、オマエが元気そうで良かったよ」

「!」

「はは。オーカの奴にオマエのこと聞いてもさ、ほらアイツぶっきらぼうだろ?…全然元気かわかんなくてさ」

 

 

説教タイムは束の間だった。やはり心配ではあったのか、ヨッカは変わらず元気溌剌なライの頭の上に手をポンと置く。

 

包帯越しだったが、ライは久し振りにヨッカの優しい手の触感を思い出す。

 

 

「ゔ……ゔわぁぁごべんなざいヨッガざん、ごべんなざい〜!!」

「うおどした急にィィィ!!」

「女を泣かすとは、最低だな九日」

「いや違うんだってアルファベットさん。オレはそんなつもりは」

「ゔわぁぁ!!」

 

 

泣きじゃくり、ヨッカを抱き締めるライ。ヨッカは少々困惑しながらも、大事な妹分に笑顔を向けていた。

 

 

「つかライ。オマエ、ゲートシティにいたんだよな?」

「ゔん?」

「オレ事故ったの今日なんだけど、なんか来るの早くね?」

 

 

ヨッカがライに訊いた。その質問を耳にするなり、ライの涙と鼻水が引っ込む。

 

 

「あぁいや。なんか、偶然チョー特急的なヤツがあってね」

「マジか。流石ゲートシティ。界放市とは技術が違うな、技術が!!」

「……」

 

 

この会話。アルファベットだけはライを怪しんでいた。

 

ライが話せないのも無理はない。

 

何せ彼女は、2年前、散々自分達に酷い仕打ちをした徳川フウの力を借りたのだ。ヨッカに話せるわけがない。

 

 

 

いつか、きっとまたフウちゃんと本当の友達になれたら、このことを話そう。

 

 

 

ライは胸の内で、密かにそう思うのであった。

 

 

 

******

 

 

一方、ゲートシティのノヴァ学園。

 

オーカミはキングが待ち構えていると言う屋上への道、階段を駆け上がっていた。

 

だが、そんな彼の前に、またしても阻む者が。

 

 

「待ちな」

「ッ……シグマ」

 

 

その阻む者とは、タバコを口に咥えた若々しい老婆、シグマだった。

 

彼女は、これまで鉄華団のカードをオーカミに渡すよう手引きして来た張本人。太陽王者と月王者のことも知っている。未だ敵か味方なのかも不明な謎の人物でもある。

 

 

「アンタ、何しに行くつもりだい?」

「そこを退け。屋上にいるキングを倒しに行く」

「アタシの言葉を忘れたのかい?…『負けた方が王者の力を失うから、キングとは戦うな』と言ったはずだよ」

「知るかそんなこと。アイツは踏み込んだら駄目な所に踏み込んで来た」

「だから倒すと?…思春期のガキが。その程度で躍起になるんじゃないよ。その行動ひとつで世界が破滅に繋がってしまう。とっとと引きな」

 

 

太陽王者と月王者。

 

その力に覚醒した者同士の戦いは命懸けだ。負ければ力を失い、力の所有者も命を落とすかもしれない。

 

そんな危険な争いなのだが、シグマは、どうやらその先も見据えているようだ。

 

 

「ライも狙われてる」

「……」

「アイツは、2年前の戦いで散々苦しんだ。だから通せよシグマ。もうアイツにこれ以上苦しい思いはさせたくないんだ」

「それがアンタの本音かい。この場にあのお気楽ガールがいたら、どれだけ喜んでいただろうね」

 

 

シグマは、オーカミの決意が思っていたよりも固かったことを知る。

 

そしてその面影は、元教え子であるオーカミの父親「鉄華カグヅチ」と重なって。

 

 

「この手の馬鹿は、何言っても聞かないからねぇ。ほら、とっとと通りな。世界でもなんでも破滅させて来ればいいさ」

「……」

 

 

道を開けるシグマに対し、オーカミは礼の一言も無しに、無言で通過して行く。

 

 

「全く。オマエと言う奴は、自分の子供も教育できないのかい?…ねぇ、カグヅチ」

 

 

走り去って行ったオーカミが、階段で見切れた頃、シグマは1人、呟き始めた。

 

 

「アタシはもう知らん。どちらにせよ老い先短いんだ。世界がどうなろうと知ったこっちゃないね」

 

 

シグマは直後に「だから」と言葉を続けて。

 

 

「いざとなればアンタがあの子を助けてやるんだよ」

 

 

既に死した鉄華カグヅチに対し、シグマは言い放った。そこには彼など、いはしないと言うのに。

 

 

******

 

 

「……」

 

 

ノヴァ学園屋上。

 

構造上、最も風の強いこの場所は、学園のNo.1、キング王のお気に入りの場所である。

 

こうして風に打たれている時間だけは、己が持つ責任を忘れられるからだ。

 

彼の身に重たくのしかかっている責任。

それは月王者の討伐。

太陽王者を持つ者として産まれた役割りとも言える。

 

全ては月王者を倒すため、幼少の頃より果てしない特訓を続け、その末に太陽王者の力を覚醒させるに至った。

 

そして、それを振るう日は、唐突に訪れることとなる。

 

 

「キング!!」

「……鉄華オーカミ」

 

 

オーカミが屋上に到達した。

 

到着してしまった。鋭い剣幕で睨みつけるオーカミ。キングは直ぐに彼が自分に対して激情を向けていることに気がついた。

 

 

「何の用だ」

「なんでアニキを傷つけた」

「は?」

「ライには手を出すな」

「何の話だ」

「惚けるな……!!」

 

 

オーカミはまた腹を立てる。キングがしらを切ろうとしていると思ったからだ。

 

拉致があかないとも思ったのか、彼はキングにバトルをしろと言わんばかりに、Bパッドを左腕に装着し、そこにデッキを装填する。

 

 

「今直ぐオレと戦え。オレの仲間を傷つけたこと、後悔させてやる」

「……」

 

 

オーカミの溢れんばかりの気迫を目にし、キングは「遂に熟したか」と感想を頭に思い浮かべた。

 

長年待ち侘びた、覚醒した月王者との決戦が、今ようやく彼の眼前に飛び込んで来たのだ。

 

 

「よかろう。だが貴様こそ後悔するなよ」

「なに」

「このバトルは世界を賭けた一戦となる。それに敗北すれば、命の保証はない」

「どうでもいい。オマエにやる気があるなら、さっさと来いよ」

「度胸だけは褒めてやろう」

 

 

キングもそう言うと、己もBパッドを装着。

 

デッキは……

 

 

「今日は本気で相手をしてやる。我が真の力を見るがいい」

「!?」

 

 

直後、キングが手に持っていたデッキが赤く光り輝く。

 

いや、正確には「ベビーゴジラ」のカードだけが光ったのか。オーカミがその現象を理解できぬまま、キングはデッキをBパッドに装填。

 

発光も収まり、バトルの準備を完全に完了させる。

 

 

「なんだったんだ。今のは」

「直ぐにわかる。始めるぞ、それとももう怖気づいたか?」

「な訳ないだろ。必ずアニキの仇は取る、バトル開始だ!!」

 

 

……ゲートオープン、界放!!

 

 

2人のコールが、ノヴァ学園の屋上を戦場に変える。

 

今はまだ大丈夫だが、両者が王者の力を使えば、忽ち世界を賭けた戦いへと変貌してしまう恐ろしい争いだ。

 

先攻は……

 

 

「貴様の先攻で来い」

「なに」

 

 

いつものキングであれば、オーカミに先攻後攻を選択させるが、今回は珍しくキング自ら選択。しかもオーカミに与えられたのは、自分にとって有利な先攻だ。

 

 

「自分から先攻後攻を決めるなんて、どう言う風の吹き回しだ」

「勘違いするな。私は先攻だろうが後攻だろうが勝てる。だが、全身全霊の貴様を倒さなければ、この戦いに意味はない」

「……」

 

 

オーカミにはあまり理解できなかったことだが、この選択は、彼なりのプライドだ。

 

月王者を倒すために修行を積み重ねて来た彼にとって、この一戦はどのバトルよりも重たいことを示唆している。

 

 

「まぁなんでもいいよ。オレはオマエを倒すだけだから」

 

 

オーカミの雰囲気が刺々しく変貌。サンドラ戦と同様、いきなり本気モードでキングから指示された先攻の第1ターン目を開始して行く。

 

 

[ターン01]鉄華オーカミ

 

 

「メインステップ。クーデリア&アトラを配置」

 

 

ー【クーデリア&アトラ】LV1

 

 

今回のオーカミの初手も創界神ネクサス。神託によりデッキから3枚のカードが落ち、その上に2つのコアが追加された。

 

 

「バーストをセットして、ターンエンド」

手札:3

場:【クーデリア&アトラ】LV2(2)

バースト:【有】

 

 

ついでにバーストをセットし、オーカミはターンエンド。次は後攻、キングのターンだ。

 

 

[ターン02]キング王

 

 

「メインステップ。私は」

「……」

 

 

キングのメインステップ。オーカミはここでキングの契約スピリット、ベビーゴジラを頭に思い浮かべる。

 

後攻の彼の最初のターンでは必ず召喚され、アタックを仕掛けて来るからだ。

 

だが……

 

 

「赤き契約創界神、創聖の契約神ブラフマーを配置する」

「ッ……なに!?」

 

 

ー【創聖の契約神ブラフマー】LV1

 

 

キングが呼び出したのは、ベビーゴジラではなく、まさかの契約創界神。

 

彼の背後に、赤い服を着用した好青年が出現する。ただし、それは神のような存在。他の契約カード達とは一線を画す程の力に満ち溢れていて。

 

 

「真・神託。ブラフマーにコア+3」

「オマエ、ベビーゴジラと契約していたんじゃないのか」

 

 

オーカミが訊いた。2枚もの契約カードと契約しているコントラクターなど聞いたことがなかったからだ。

 

 

「ベビーゴジラは、本来別のカード。真の力を隠すための偽りの姿に過ぎない。ブラフマーこそが、私の真の契約カードだ。ブラフマーの【契約技】を発揮。コストとして、コア2個をボイドへ置き、カウント+2。その後、トークン、リグ・アバタードラゴンを出す」

 

 

ー【リグ・アバタードラゴン】LV1(1)BP4000

 

 

「トークン!?」

 

 

ブラフマーの【契約技】が発揮。ブラフマーは掌を合わせ、炎を捻出すると、その炎は忽ち4本の腕を持つ赤い竜へと姿を変える。

 

その名はリグ・アバタードラゴン。デッキ外から呼び出される、世にも珍しいトークンカードだ。

 

 

「さらに私は、赤の神話ブレイヴ、六剣輪宝を召喚し、ブラフマーに合体」

 

 

ー【創聖の契約神ブラフマー+六剣輪宝】LV1

 

 

キングは創界神ネクサスにも合体できる特殊なブレイヴ、神話ブレイヴも召喚。ブラフマーは、切先が六方向に伸びた剣、六剣輪宝を手に取り武装する。

 

 

「アタックステップ。リグ・アバタードラゴンでアタック。その効果でブラフマーにコア+1。赤シンボル1つを追加」

 

 

翼を広げ、リグ・アバタードラゴンが低空を飛行する。その目指す先は、当然オーカミのライフバリア。

 

 

「月王者のライフを砕け!!」

「そう簡単に通すかよ。アタック後のバーストを発動、仮面ライダーヴァルバラド」

「なに、そのカードは!?」

 

 

オーカミが発動したバーストカードに、キングは驚き、サンドラの顔が脳裏を過ぎる。

 

 

「ヴァルバラドの効果。相手のデッキを3枚破棄し、破棄したカードコスト合計以下のコストの相手スピリット1体を破壊する」

「……私のリグ・アバタードラゴンはコスト0」

「問答無用で破壊だ」

 

 

リグ・アバタードラゴンが、4本の腕を活かし、オーカミのライフバリアを砕こうとした直後、それをスパナのような形をした剣で妨げたのは、全体的に黒いビジュアルの上に、マゼンタの装甲が装着されているライダースピリット、ヴァルバラド。

 

ヴァルバラドはそのまま剣を振るい、リグ・アバタードラゴンの腕を全て切り落とし、爆散させた。

 

 

「この効果発揮後、自身をノーコスト召喚する」

 

 

ー【仮面ライダーヴァルバラド】LV1(1)BP7000

 

 

「何故貴様がサンドラのカードを」

 

 

キングがオーカミに訊いた。

 

そう。このヴァルバラドはキングの親友、サンドラのカード。

 

今でこそあまりデッキには入れなくなったが、昔はエース格としてよくデッキに投入されており、サンドラにとっても、キングにとっても思い出のカード。

 

 

「貰った」

「貰った?…戯言を抜かすな。サンドラが貴様如きにヴァルバラドを渡すわけがないだろう」

「は?」

「サンドラをバトルで負かし、奪った。違うか?」

「な訳ないだろ。いいから早くターンを進めろよ」

「……ターンエンド」

手札:2

場:【創聖の契約神ブラフマー+六剣輪宝】LV1(3)

バースト:【無】

カウント:【2】

 

 

猜疑心が晴れず、ヴァルバラドのカードを、オーカミが奪ったのだと勝手に決めつけるキング。オーカミも面倒だったのか、弁解を一切しなかった。

 

2人の心の溝が深まって行く中、バトルは2周目。オーカミのターンだ。

 

 

[ターン03]鉄華オーカミ

 

 

「メインステップ。オルガを配置」

 

 

ー【オルガ・イツカ】LV1

 

 

オーカミはオルガを配置し、2種の鉄華団創界神を揃える。

 

 

「神託でコア+3。ヴァルバラドのLVを2にアップし、アタックステップ。ヴァルバラドでアタック」

 

 

スパナの形をした剣を構え、ヴァルバラドが走り出す。

 

 

「ヴァルバラドの効果。自身か合体スピリットがアタックした時、それに1コアブースト」

 

 

ヴァルバラドは、紫属性の鉄華団にはないコアブーストの恩恵を齎す。

 

 

「フラッシュ、オルガの【神域】を発揮。デッキから3枚破棄し、1枚ドロー。クーデリア&アトラの【神域】でさらにドロー」

 

 

フラッシュではいつもの超ドローコンボを行い、デッキが回転して来た。

 

しかし、キングの方もただ黙って見ているわけではない。

 

 

「フラッシュ、ブラフマーの【契約技】を発揮。カウント+2し、リグ・アバタードラゴンを出す」

「ッ……その効果、オレのターンにも使えるのか」

 

 

ー【リグ・アバタードラゴン】LV1(1)BP4000

 

 

「そのままヴァルバラドをブロック。世界を守るための、尊い犠牲となるがいい」

 

 

ヴァルバラドの剣撃。リグ・アバタードラゴンはそれを4本の腕で受け止めるが、それができたのはほんの僅かな時間だけ。

 

すぐさま呆気なく斬り伏せられ、爆散した。

 

 

「ターンエンド」

手札:5

場:【仮面ライダーヴァルバラド】LV2

【オルガ・イツカ】LV2(3)

【クーデリア&アトラ】LV2(2)

バースト:【無】

 

 

可能な限りのできることを終え、オーカミはこのターンをエンド。再びキングへとそれが巡って来る。

 

 

「結構防戦一方だな。前のデッキの方が強かったんじゃない?」

「戯言の多い奴だ。たかが数ターンでいい気になるなよ。我が真のデッキの本領は、ここから発揮される」

 

 

遂に始まってしまった、太陽王者と月王者を持つ者同士の対決。

 

果たして勝利の女神が微笑むのは太陽か、それとも月か。

 

はたまた、蠢く別の何かか………

 





次回、日蝕と月蝕編、最終回。

第90ターン「終結、地球を制する者」


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