バトルスピリッツ 王者の鉄華   作:バナナ 

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第9章 最終決戦編
第91ターン「暗躍、ペルソナスピリット」


 

 

 

500年周期に起こるとされている、救済者太陽王者と破滅者月王者の争い。

 

この世界が未だ破滅せず、平和を保っているのは、太陽王者が月王者に勝利し続けたからだ。

 

そして、それは今回も………

 

 

******

 

 

ノヴァ学園の屋上。校舎の全長すら軽く超えてしまう程の巨躯を誇る最強のゴジラ、ゴジラ・アースの口内より放つ熱線が、オーカミの鉄華団スピリット達とライフバリアを焼き尽くす。

 

ヨッカのためにも負けられなかった、このバトル。結果は惜敗。

 

オーカミはキングに三度目の敗北を喫した。

 

 

「勝利は常に、この私の手の中にある」

「……負けた」

 

 

互いに死力を尽くしたバトルだったため、敗北したオーカミだけでなく、勝利を収めたキングも疲れ果て、息を切らしていた。

 

だが、その中でも心が幸福と解放感に満たされていたのは、当然キングの方で。

 

 

「終わった。終わったのだ全て。ありがとうアース、オマエのおかげだ」

 

 

キングに感謝されたアースは、それに応えるように大きな咆哮を張り上げると、完全に役目を終えたため、この場から消滅して行く。

 

 

「私の勝ちだ。消えよ、月王者。これで世界は救われる」

「!」

 

 

次の瞬間、オーカミは身体の内側から何か大きな力が抜けて行くのを感じた。

 

やがてその大きな力は、目で視認できるようになるが、それはまるで赤い月と呼べる形容をしていて。

 

 

「ッ……ぐ、ぐぉぁぁああ!!!」

 

 

オーカミの身体中に大きく強烈な激痛が迸った。今更ながら「命懸けになる」と告げていたキングの言葉を理解する。

 

ただ、その激痛は、キングも同様で。

 

 

「な、なに!?………ぅ、ぅぁぁぁぁぁあ!!!」

 

 

オーカミの中より放出された、赤い月。おそらく月王者の力の本体であろう代物は、何故かキングの身体の中へと入り込んで来た。

 

太陽王者と言う強大な力を保有している彼に月王者と言う相反する力が流れ込んで来たためか、彼にもまた激しい痛みが走る。

 

 

「な、何が。いったいどうなっている。何故月王者は消えず、私の中に」

「……」

 

 

戦いによる疲弊と、それぞれの中に宿っている王者の力の暴走が、2人を会話すらままならない状況へと追い込む。

 

そんな、互いに何が起こってしまったのかを認知できない2人の前に、とある人物が現れる。

 

 

「辛そうだなぁ、キング、オーカミ」

「コ、コント……!?」

 

 

それは金髪の少年、光裏コント。オーカミにとって、ノヴァ学園でできたただ1人の友人だ。

 

しかし、オーカミは直感的に何かを悟った。今のコントは普通ではない、と。

 

 

「日蝕と月蝕は、ただ負けた方が消えるわけじゃねぇ。負けた方の力が、文字通り食われるのさ」

「!」

「そして、負けた方は力を奪われ、やがて衰弱死。奪った方は王者の力同士が反発し合って肉体が崩壊を始める」

「馬鹿な、光裏コント、何故貴様がそんなことを知っている。我が母、ノヴァ王はそんなこと一言も」

「ハハ、ハーハッハッハッ!!」

「何がおかしい、ッ……貴様」

 

 

キングの言葉に、コントは滑稽だと言わんばかりに口角を上げ、嘲笑う。

 

2つの王者の力が混在する影響による痛みで悶絶しながらも、キングは鋭い剣幕でコントを睨みつける。

 

 

「そうです。一言も言っていませんよ。私は、貴方にそうなってもらうために、嘘をついていたのだから」

「……は」

 

 

鋭い剣幕を見せていたキングの目が思わず丸くなった。

 

無理もない。突然、コントの口から、ノヴァ学園の学園長、己の母の声が聞こえて来たのだから。

 

 

「学園長、母上。貴女なのですか」

「フフ」

「何故光裏コントの口から、貴女の声が。嘘とは、いったいどう言うことなのです!!」

 

 

昂る感情ごと、キングが母に訊いた。

 

 

「言葉の通りですよキング。私の可愛い子。太陽王者と月王者は確かに深い因縁がある。しかし、太陽王者が世界を救済することも、月王者が世界を破滅に導くこともない」

「……!!」

「全てそこの元月王者と共倒れになってもらうための、私の計画なのです。そう、この私、アルカナのね」

「アル、カナ……?」

 

 

コントの身体中から、黒い影が飛び出し、異形じみた女性の形を形成する。

 

おそらくそれがアルカナの本体。影に潜み、暗躍していた、本当の黒幕。

 

 

「ば、馬鹿な。オマエが、我が母、ノヴァ王だとでも言うのか」

「我が母。おかしいですね、貴方の本当の母親は既に死んでいるではありませんか。十年以上も前に」

「……まさか」

「貴方の幼き日。私の来るタイミングがあまりにも都合が良すぎると、疑問に思いませんでしたか?……フフ。そうですよ、貴方の出していた炎は、私の力。つまり、貴方の本当の両親を焼き殺したのは、私なのです。その甲斐あって、貴方と言う名の素晴らしい手駒を手に入れられました」

「ッ……貴様!!」

 

 

キングの人生。そのほとんどが彼女の掌の上だったことが判明する。

 

当然怒りを露わにするキングだが、その荒ぶる感情に肉体の方がついて来てくれない。

 

 

「おいアルカナ。あまり出しゃばるな。コイツらはオレの獲物だ」

「あらあら、ごめんなさいねコント。あとは貴方の好きにしていいわよ。もちろん、この世界もね」

「あぁ」

 

 

アルカナの影がコントの身体の中へと戻って行く。

 

 

「最高だ。これがアルカナの力か……ハハ、ハハハハ、最っ高だァァァァ!!」

 

 

強大な力を得たことで、感情の昂ったコントの猟奇的な笑みは、太陽を完全に隠す程に、周囲の空を黒く染め上げる。

 

範囲はゲートシティ一帯といったところか。

 

 

「コ、コント。オマエ、何やってんだよ」

「あぁ?」

「目を醒ませ」

 

 

身体が凄まじい速度で衰弱していくオーカミが、コントを止めるべく、立ち上がった。

 

 

「目なんてとっくに醒めてるさ。ついでにオマエとの友情ごっこも冷めた」

「!」

「ノヴァ学園に入学して以来、ほとんどのバトルに勝てず、モテず、惨めな醜態を晒し続けて来たが、オレはアルカナの力で生まれ変わった。これからな、なってやるんだよ、オマエの代わりに、この世界の主人公に!!」

「なに言ってるんだ」

 

 

困惑するオーカミ。

 

直後にまた、アルカナの影がコントの身体の中から出現して。

 

 

「私は、コント君の主人公になりたいと言う望みを叶えてあげたのですよ。それが私の力。『欲望の具現化』。つまり、今のコント君は本当にこの世界の主人公、誰にも負けないのです」

「だから、あまり出しゃばるなって」

 

 

コントが主人公。欲望の具現化。

 

オーカミの目から見たら、とてもそうは見えなかった。まるで、コントがアルカナにいいように利用されているだけのような、そんな感じがした。

 

 

「やめろコント。オマエは騙されてるだけだ」

「黙れ悪役が。この主人公、光裏コント様が、オマエを成敗してくれる。さぁ、早くバトルしようぜ」

「……」

 

 

まるで聞く耳を持ってくれない。

 

自分がやがて死してしまうような状況だが、オーカミはどうにかコントを救けようと模索する。

 

しかし……

 

 

「ぐっ……う、はぁ……がっ。クソ。コ、コント」

「鉄華オーカミ!!」

 

 

月王者を抜き取られた反動で衰弱していくオーカミ。遂にその限界が来たか、とうとう気を失い、この場に倒れ込んでしまう。

 

キングがオーカミの名を叫ぶが、彼はもうピクリとも動かない。

 

 

「バカタレ。その程度で気を失いやがって。まぁいいや。死ぬなら勝手に死ね。キングを倒すってぇのも、面白そうだしな」

「……」

 

 

コントの標的がキングに変わる。キングは痛みに耐えながらも立ち上がるが……

 

 

「……」

「なんだ、テメェも死にかけかよ。もうちょいやる気出してもらわないと、こっちもモチベ下がるんだが」

「言わせておけば……ッ」

 

 

もはやキングはBパッドすら碌に装着できない程に弱っている。

 

2人の命運もここまで。

 

そう思われた瞬間だった。

 

 

「キング!!」

「ッ……サンドラ」

 

 

そんなキングに肩を貸した少年が1人。

 

新城サンドラだ。友であるキングを救助しに、自ら赴いて来た。

 

そして、それは他にもいて。

 

 

「アレが伝説の黒き存在、アルカナ。まさかコントに取り憑いていたなんて」

「違うね。この気配、学園長が混ざってる。やはり奴が黒幕か。計画の仕上げに、あのチャラ男を選んだみたいだ」

「ブイ、シグマ」

 

 

サングラスとオレンジ色の髪の毛が特徴的な女性、ブイと、若々しい老婆、シグマの2人も到着。

 

 

「サンドラ。シグマのばっちゃんと一緒に、早くキングを安全な場所へ。オーカミも運ぼう」

 

 

ブイがサンドラに言った。

 

 

「赤色小僧は運ばなくていいよ」

「え」

 

 

シグマが全体に告げる。この発言には全員が驚いた。

 

仮にも教師が、生徒の危機を放っておけと言ったのに等しいのだから無理もない。

 

ただ、シグマにも理由はある。

 

 

「小僧は今、絶賛復活中さ。その内勝手に蘇る」

「ど、どう言うことよ」

「そんなことより、今はキングだ。マフラーボーイ。そいつを医務室に運びな。私が手術してやるよ、保健室と間違えるなよ」

「手術!?…あんた医者なのか」

「元だがね。だけどそいつは死なせやしないよ。ほら、とっとと行きな」

「は、はい。行けるか、キング」

 

 

サンドラがキングに肩を貸し、徐に歩き始める。

 

 

「ブイ」

「わかってるよ。私は、コイツの相手でしょ」

 

 

シグマに名前を呼ばれると、ブイは「自分のやることはわかっている」と言わんばかりに、親指をコントの方へと向ける。

 

 

「死ぬなよ」

「珍しく優し。任せてよ、何回世界救ったと思ってんの」

「フン。期待して待っておいてやるよ、元主人公」

 

 

シグマは最後にそう告げると、サンドラ、キングと共にこの場を後にする。

 

残されたのは、ブイとコントと、衰弱により、うつ伏せに倒れたオーカミのみで。

 

 

「さて、コント。随分と思い切ったイメチェンしたな。最近の女の子は、あんまりそう言う奴は好きじゃないぞ」

「ブイ姉。オレは主人公なんだよ。今は好きじゃなくても、その内周りをオレ色に染めてあげるのさ」

「オマエはアルカナに利用されてるだけだ。アルカナって言うのは、人の善の心の宿敵、悪や醜い心の結晶。それに取り憑かれたってことはつまり、主人公じゃなくて悪役になるってことだぞ」

「な訳ないだろ。小手調べだ。ブイ姉、オレの相手してよ、時間稼ぎなんてしてないでさ」

 

 

ブイが何を言っても、コントの耳には届かない。

 

冷や汗をかきながらも、ブイは「誰を相手にしてるか、わかってないようだな」と、自信満々に告げたのち、Bパッドを装着し、バトルの準備を進める。

 

だが、次の瞬間だった。2人とはまた別の方向から声が聞こえて来たのは。

 

 

「ニッヒヒ。そのバトル、少しお待ちなさいな」

「!」

「徳川フウ」

 

 

何もない空間から出現する黒いワームホールを潜り抜け、不気味な笑い声と共に現れたのは、黒い髪を靡かせる、Dr.Aの孫娘、徳川フウ。

 

 

「フウちゃんじゃん。どうしたの、まさか主人公になったオレに会い来たとか?…悪いけど、ヒロインの枠はライちゃんのために空けているんだよね」

「そんなしょうもない理由じゃありませんわ」

「!」

「私が用があるのは、その身体の中にいるアルカナ、貴方です」

 

 

フウの言葉に反応するように、コントの背後から再び影、アルカナが出現する。

 

 

「あらあら。コントを差し置いて私になんの用でしょう。Dr.Aの孫よ」

「フウちゃんがDr.Aの孫!?」

 

 

アルカナはフウの正体を知っていたようだが、驚いたコントは知らなかった様子。

 

 

「そんな器の小さい男なんかより、私の所に来ませんか?」

「ほぉ」

「人の邪悪な心を糧に生まれたバケモノ、アルカナ。貴方はこの私、徳川フウにこそ相応しい」

 

 

フウが持ち掛けて来たのは交渉。どう言う理由があるのかはまだ知り得ないが、彼女はアルカナの力を欲しているみたいだ。

 

 

「貴方の狙っていた月王者と太陽王者の同士討ち。実は新城サンドラによって回避されかけていたのですよ?」

「……」

「そしてそれを見事防いで見せたのが私。キング王の音声を作り出し、鉄華オーカミを欺いてやったのです。どう、そちらの少年より余程使えるでしょう?」

 

 

己の裏工作を自慢気に語るフウ。

 

確かに、彼女がいなければ、アルカナの目的であった、太陽王者と月王者の無力化はなし得なかったのかもしれない。

 

 

「なるほどなるほど、それは大いに感謝致します。徳川フウ」

「では」

「ですが、それとこれとは話が違います」

「!」

「貴女の願いは概ね復讐と長寿。言え、もはや復讐心の大半は消え失せ、ほとんどが長寿に偏っている」

「なにを、わかった風に」

「そんなくだらない心の影で、私は満たされない。その点コントは素晴らしい。鉄華オーカミへの妬み、眺望。全てが美味。私の相方は、この子を除いて他にいません」

 

 

コントがアルカナの邪悪な力に取り憑かれ、魅力されたように、アルカナもまた、コントの心の影の虜になっていた。

 

アルカナの力を得ることで、短命の宿命から解き放たれようと考えていたフウの計画は水の泡となる。

 

 

「ならば、強引に引き剥がしてあげるまで」

 

 

いや、まだ諦めてはいなかった。彼女はBパッドとデッキを用意し、バトルの準備を完了させる。

 

 

「お、おい徳川フウ。無茶するなよ。相手は何万年も人の心の影を燻り、戦争を起こして来たようなバケモノだぞ」

「知ってます。ですがコレは私が生き残るための戦い、手出しは無用ですよ。お祖父様を斃した、元英雄さん」

「……」

 

 

ブイがフウを止めようとするが、自らの願いのため、見た目以上に無我夢中の彼女が止まるわけもなく。

 

 

「初戦の相手は変わってしまいましたが、関係ありませんね。コント、貴方の力、示して差し上げなさい」

「あぁ、主人公の力、見せてやるぜ」

「小物が、粋がるんじゃありませんよ」

 

 

コントもBパッドを展開し、己のデッキをそこへ装填。バトルの準備を完了させる。

 

そして……

 

 

「行くぜ、バトル開始だ」

「……」

 

 

……ゲートオープン、界放!!

 

 

疲弊、衰弱したオーカミが横たわり、ブイが見守る中、アルカナの力を得たコントと、徳川フウによるバトルスピリッツが幕を開ける。

 

先攻は徳川フウだ。コントからアルカナの力を奪うべく、ターンを進めて行く。

 

 

[ターン01]徳川フウ

 

 

「銀河を支配する魔帝、契約創界神ネクサス、ベリアル銀河帝国皇帝カイザーベリアルを配置!!」

 

 

ー【ベリアル銀河帝国皇帝カイザーベリアル】LV1

 

 

フウの背後に出現したのは、黒に染まった身体に赤いマントを羽織った、邪悪を具現化したかのような姿を持つ魔人。

 

その名はベリアル。かのDr.Aですら手懐けられなかったとされる伝説のカードだ。

 

 

「いいねそのカード。如何にも悪役って感じがして、倒し甲斐がありそうだ」

「真・神託でコア+3。ターンエンド」

手札:4

場:【ベリアル銀河帝国皇帝カイザーベリアル】LV1(3)

バースト:【無】

 

 

初手は契約創界神の配置のみでターンエンドとするフウ。早々にコントのターンとなる。

 

 

[ターン02]光裏コント

 

 

「メインステップ。いきなりかましてやるぜ。契約スピリット、主人公を召喚」

 

 

ー【[S.E.E.S.正式戦闘服]主人公】LV1(1)BP3000

 

 

コントは己の新たな契約スピリットを、高らかに宣言し、召喚。

 

だが。

 

 

「……契約スピリット!?…カードはどこに」

 

 

フウが辺りを見渡すが、フィールドのどこにもそれらしきスピリットは見当たらない。

 

その様子に、コントはニヤリと笑みを浮かべる。

 

 

「何言ってんだ。既にいるじゃねぇかよ、オレと言う、この世界の主人公がな」

「ッ……まさか、貴方自身が契約スピリットだとでも言うの!?」

 

 

刹那。コントの目の瞳孔が影で覆われると、彼の手に一本の剣が握られる。

 

そう。主人公とは、コント自身。今、彼は自らがフィールドのスピリットとなっている。これには、長年多くの戦いを経験して来たブイも「そんなことが」と驚嘆の声をこぼしていた。

 

 

「主人公。やっぱり何度聞いても良い響きだ。アタックステップ、オレでアタック」

 

 

剣を手に、コントがアタック。その瞬間に効果も発揮されて。

 

 

「オレの効果。対象カードを使った時、もしくはオレがアタックした時、カウント+2。デッキから2枚引いて、2枚捨てる」

 

 

コントは、剣を握ったまま、器用にカードをドロー。その後2枚のカードをトラッシュへと送るが、1枚だけはフィールドへと吸い込まれるように移動して行き……

 

 

「破棄されたネクサス、イゴールの効果。自身をトラッシュからノーコスト配置」

 

 

ー【イゴール】LV1

 

 

コントの背後に、小柄で鼻の長い男性が現れる。これもまた、誰も見たことのないカードだ。

 

 

「フラッシュ、カイザーベリアルの【契約技】を発揮。カウント+2し、トラッシュのギエロン星獣を手札へ。そのアタックはライフで受けましょう」

「ならくらいな、主人公の一撃」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉徳川フウ

 

 

「ッ……!!」

 

 

コントの雑な剣撃が、フウのライフバリアに炸裂。先制点を自らの力でもぎ取った。

 

フウはその際に身体から僅かに力が抜けて行くのを感じて。

 

 

「これは」

「お気づきですか?…このバトル、負ければ貴女は私の一部となるので、よろしくお願いしますね」

「アルカナ」

「貴女は私をコントから奪おうとしているのですから、当然ですよね」

 

 

コントの影にして、力の根源、アルカナがフウに告げた。

 

このバトル、フウは勝てば永遠の命だが、負ければ逆に即人生終了らしい。

 

もちろん、今更その程度で臆するような徳川フウではないが。

 

 

「別に文句はないですよ。勝つの、私ですから」

「お、フウちゃんいいねそのセリフ、悪役っぽくて」

 

 

バトルは一周を終え、フウの二度目のターンが始まる。

 

 

[ターン03]徳川フウ

 

 

「メインステップ。レギオノイド2体とギエロン星獣を召喚」

 

 

ー【帝国機兵レギオノイド】LV1(1)BP1000

 

ー【帝国機兵レギオノイド】LV1(1)BP1000

 

ー【再生怪獣ギエロン星獣】LV1(1)BP3000

 

 

両腕がドリルで構成された機兵、レギオノイドが2体と、鳥のような頭部とカッターのような形をした翼を備えたスピリット、ギエロン星獣が、フウのフィールドに召喚される。

 

 

「アタックステップ。ギエロン星獣でアタック。効果で1枚ドローし、カウント+1」

 

 

フウの指示を受け、ギエロン星獣が低空飛行を開始する。

 

 

「ライフで受けるぜ」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉光裏コント

 

 

ギエロン星獣の翼撃が、コントのライフバリア1つを切り裂く。

 

 

「痛ぇな。だが、この痛みが、オレの力に変わる」

「貴方の思っている主人公像、結構古くさいのですね。ターンエンド」

手札:4

場:【帝国機兵レギオノイド】LV1

【帝国機兵レギオノイド】LV1

【再生怪獣ギエロン星獣】LV1

【ベリアル銀河帝国皇帝カイザーベリアル】LV1(1)

バースト:【無】

カウント:【3】

 

 

互いに1つずつライフを奪い、バトルは第4ターン、コントの番を迎える。

 

 

[ターン04]光裏コント

 

 

「メインステップ。先ずはオレにコア1つを追加し、創界神ネクサス、主人公、即ちオレを配置する」

 

 

ー【[月光館学園制服]主人公】LV1

 

 

「今度は創界神ネクサス!?」

「【神託】でコア+3。契約スピリットのオレの効果により、カウント+2。2枚ドロー、2枚破棄。創界神ネクサスのオレの効果により、破棄する枚数を1減らす」

 

 

ターン開始早々、コントは、主人公の創界神ネクサスを配置。

 

フィールドには何も出現しないタイプのようだが、これにより、コントはさらなる効果とシンボルを獲得した。

 

 

「さらにオレを対象に【契約煌臨】を発揮」

 

 

コントは立て続けに、ソウルコアをコストに行える【契約煌臨】を実行。

 

すると、彼の手に一丁の銃が握られて。

 

 

「ペルソナッ!!」

「!!」

 

 

どう言うことか、自身のこめかみにその銃を向け、発泡。

 

だが弾丸はなく、血飛沫の代わりになるように、琴を携えた人型のスピリットが出現していた。

 

 

「契約煌臨、ペルソナスピリット、オルフェウス」

 

 

ー【オルフェウス】LV2(2)BP10000

 

 

「ペルソナスピリット!?」

「これこそ、アルカナがオレに齎した、この世界にはない力だ」

 

 

この場に出現したのは、アルカナが齎した異質且つ未知のスピリット、ペルソナスピリット。

 

誰も見たことがない、前人未到の力が、フウを襲い始める。

 

 

「アタックステップ。頼むぞ、オルフェウス」

 

 

オルフェウスの攻撃。その効果もその瞬間に発揮される。

 

 

「アタック時効果。1枚ドロー、カウント+1。コスト4以下のスピリット1体を破壊」

「!」

「レギオノイドを破壊だ」

 

 

オルフェウスがレギオノイド1体を睨みつけると、それは発火。焼き尽くされてしまう。

 

 

「さらに煌臨元にあるオレの効果。自分のアタックステップ中に敵を倒した時、ターンに一度、回復」

「なに!?」

「ご都合ドローと連続攻撃は、主人公の特権だ」

 

 

契約主人公の効果により、オルフェウスは回復。このターン二度目の攻撃が可能となる。

 

契約カードの効果であるため、これからも乗るであろう契約煌臨スピリット達も同じくこの回復効果が引き継がれて行くことになる。フウにとっては厄介極まりない効果だろう。

 

 

「レギオノイドの効果、相手によってフィールドから離れた時、カイザーベリアルにコア+1。カウント+1。オルフェウスのアタックは、もう1体のレギオノイドでブロック」

 

 

残ったレギオノイドが、両手のドリルを回転させ、オルフェウス迎撃に向かうが、オルフェウスはその攻撃を華麗に躱し、手に持つ琴をレギオノイドの脳天に直撃させ、意図も容易く返り討ちにして見せる。

 

 

「レギオノイドの効果、カイザーベリアルにコア+1。カウント+1」

「オルフェウスで再度アタック。効果で1枚ドロー、カウント+1、ギエロン星獣を破壊」

 

 

ライフを守護したのも束の間、間髪入れずにオルフェウスの第二撃が始動。

 

フウのフィールドで唯一残ったギエロン星獣が、オルフェウスの発火能力により炎に包まれ、爆散。

 

その直後、オルフェウスは琴を構え、フウに襲いかかる。

 

さらにフウのライフが破壊されようとしているこの状況。だが彼女は、こんな状況でも密かに笑みを浮かべていて。

 

 

「怪獣スピリットが相手によって離れる時、手札から怪獣の女王ジャイガントロンを提示」

「!」

「効果により、自身を1コストで召喚」

 

 

ー【怪獣の女王ジャイガントロン】LV2(2)BP13000

 

 

ギエロン星獣の断末魔に応えるように、フウのフィールドへと現れたのは、赤い鱗と翼、長い首を持つドラゴン。

 

 

「怪獣の女王ジャイガントロンの召喚時効果。ターンに一度、このスピリットのBP以下か、コア3個以下のスピリット1体を破壊する」

「……」

「BP10000のオルフェウスを破壊」

 

 

ジャイガントロンの口内から放たれる爆炎が、オルフェウスを焼き尽くす。

 

これでコントのフィールドは0。アタックステップが続行不可となる。

 

 

「ニッヒヒ。フラッシュ、カイザーベリアルの【契約技】を発揮。カウント+2し、トラッシュからこのカード、キメラべロスを手札に戻します」

「へぇ。そんな隠し球を用意してたなんてな。驚いたぜ」

 

 

このカウンターで、戦況はフウの優勢となる。

 

彼女はさらにベリアルの【契約技】でカウントと手札を増やし、次の自分のターンの攻撃に備えた。

 

 

「だが逆境も、主人公の内だ。エンドステップ。創界神ネクサスのオレの【神技】の効果を発揮。デッキから3枚オープンし、その中のペルソナスピリット1枚を手札に加える」

 

 

エンドステップ時に発揮される、コントの創界神ネクサスの効果。それにより、彼は1枚のカードを手札へ加え、残ったカードをデッキの下へ戻した。

 

 

「この効果で回収した時、トラッシュにあるソウルコアを、リザーブかフィールドに戻す。さらにトラッシュの『[明鏡止水]岳羽ゆかり&イシス』の効果、創界神ネクサスのコア1個をトラッシュへ移動させ、自身を手札に戻す」

「ッ……」

 

 

デッキからカードを加えるばかりか、トラッシュのソウルコアとカードも回収し、本来であれば使えるコアにはなれない創界神ネクサスのコア1個をコアブーストに変換までして来たコント。

 

前のアタックステップもそうだが、あまりにも雑で出鱈目なアドバンテージの稼ぎ方に、フウは言葉を詰まらせる。

 

 

「ターンエンド」

手札:8

場:【[月光館学園制服]主人公】LV1(1)

【イゴール】LV1

【[S.E.E.S.制式戦闘服]主人公】(魂状態)

バースト:【無】

カウント:【6】

 

 

場がガラ空きとなったとは言え、大量の手札を抱えつつ、コントはターンエンドを宣言。

 

到底彼とは思えない程の重たいプレッシャーを受けながら、フウはターンを進めて行く。

 

 

[ターン05]徳川フウ

 

 

「メインステップ。メカゴモラを召喚」

 

 

ー【メカゴモラ】LV1(1)BP2000

 

 

「召喚時効果、デッキから3枚オープンし、その中のベリアルを1枚手札に加え、残りを破棄」

 

 

フウが呼び出したのは、機械仕掛けの怪獣、メカゴモラ。その召喚時効果により、手札とトラッシュを増やした。

 

 

「さらに【顕現】で、ベリアル融合獣キメラべロス」

 

 

ー【ベリアル融合獣キメラべロス】LV1(1)BP7000

 

 

契約創界神ネクサスのコアとソウルコアを礎に、新たなスピリットを呼び出す力、顕現。

 

それにより、フウのフィールドに、強力な怪獣達を纏ったベリアル、キメラべロスが現れる。

 

 

「アタックステップ。キメラべロス、力の差を見せつけてあげなさい」

 

 

血のような赤き翼を翻し、キメラべロスが天空を翔ける。

 

 

「フラッシュマジック、白晶防壁」

「!」

「これにより、このターン、オレのライフは1つしか減らない。そのアタックはライフで受ける」

 

 

〈ライフ4➡︎3〉光裏コント

 

 

キメラべロスの口内から放たれる闇の火炎が、コントのライフバリア1つを焼き尽くす。

 

だが直後、白マジック、白晶防壁により、半透明のバリアが出現。これ以上、彼のライフを砕くことは不可能となる。

 

 

「カイザーベリアルの【契約域】を発揮。トラッシュのコア1つをキメラべロスに戻す。ターンエンド」

手札:4

場:【ベリアル融合獣キメラべロス】LV1

【メカゴモラ】LV1

【怪獣の女王ジャイガントロン】LV2

【ベリアル銀河帝国皇帝カイザーベリアル】LV2(3)

バースト:【無】

カウント:【7】

 

 

白晶防壁の効力を失くすため、フウは致し方なく、そのターンをエンド。

 

 

「やるなフウちゃん。Dr.Aの孫なだけあるぜ」

「偉そうに。強いデッキを手にできて、そんなに嬉しいのですか?」

「嬉しいに決まってるだろ。これがあれば、鉄華オーカミではなく、このオレこそが世界の中心、主人公になれるんだからな」

 

 

互いにカウントが蓄積されて来たバトル中盤。コントもいよいよ己のデッキの真骨頂を見せ始める。

 

 

[ターン06]光裏コント

 

 

「メインステップ。オレを対象に【契約煌臨】を発揮。ペルソナ」

 

 

二度目の契約煌臨が発揮。コントは再び銃で己のこめかみを撃ち抜き、そのカード名を宣言して行く。

 

 

「天地を越えて、愚者をも貪れ。死神タナトス、LV2で契約煌臨!!」

 

 

ー【[死神]タナトス】LV3(3)BP19000

 

 

コントの御前に姿を見せたのは、獣のような頭蓋骨を模した仮面に加え、鎖で自身の肉体と繋がっている八つの棺桶。さらには一振りの直刀を手に持つ、処刑人のような出立ちのペルソナスピリット、名をタナトス。

 

これもまた、アルカナの力だ。

 

 

「このスピリットは。まるで本当の死神みたいな」

 

 

フウがタナトスに向かって、率直な感想をこぼした。すると、オルフェウス同様に、タナトスの身体から闇の瘴気が溢れ出てくる。

 

 

「ばっちゃん、私達が想定してた以上に、アルカナはやばいかもしれないぞ」

 

 

ブイがキングの治療に全力を尽くしているであろうシグマに向かって、そう告げた。

 

 

「さぁここからだぜ。主人公の逆転劇はよぉ!!」

 

 

人々の負の感情の結晶体、アルカナの力により心身共に暴走するコント。

 

Dr.Aの孫、徳川フウに勝ち目はあるのか。そしてオーカミとキングの命運は………




次回、第92ターン「悪辣、死神と魔帝」


******


お待たせしました。
遂に王者の鉄華 最終章スタートです。

予定では、この時のコントのデッキは「影時間」を想定していましたが、ちょっとパワー的にアレだったので、見た目だけは悪そうなタナトスを用いる「主人公」に変更となりました。

この日のためにペルソナ3を実況配信やアニメ映画などで勉強して来ましたが、まさか悪役で起用することになるとは思ってもいませんでした。

主人公のカードがコントになると言う描写は、割と賛否が分かれると予想されますが、主人公をあまり悪く見せない工夫でもありますので、ご了承ください。
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