バトルスピリッツ 王者の鉄華   作:バナナ 

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第92ターン「悪辣、死神と魔帝」

 

 

 

学園長の正体は、人の負の感情の結晶、アルカナだった。

 

アルカナは、自身を倒す力を持つオーカミとキングを同士討ちをさせ、仕上げにコントの負の感情を刺激し、彼に己の力を与え、暴走を促す。

 

そんな彼と相対したのは、長寿のためにアルカナの力を欲していた徳川フウ。

 

2人のバトルは、やがて終盤へと差し掛かる。

勝利するのは果たして………

 

 

******

 

 

ここはノヴァ学園の医務室。保健室では手に負えないような重篤となった生徒達を速やかに治療を施すための施設だ。その設備は、下手な病院よりも整っている。

 

そんな医務室に運ばれて来たのは、月王者に勝利したことで、2つの王者を宿し、それに伴う身体への大きな負担によって、今にも命を落としそうな程に弱り切ったキング王。

 

親友、新城サンドラの手から離れ、ベットに横たわる。

 

 

「さて。治療するかね」

 

 

今からキングを治療するのは、若々しい老婆、シグマだ。

 

 

「治療と言っても、一体何をするんだ?…何かオレに手伝えることは」

 

 

親友の重篤さに居ても立っても居られないサンドラが、シグマに訊いた。

 

 

「別になんもしなくていいさ。そこでコイツの無事を祈ってるんだね」

 

 

シグマがゴム手袋をしながら返答。

 

すると、寝ていたキングは震えながらも口を開いて……

 

 

「そ、その前に、1つ答えろ」

「キング、今は無理しないほうが」

 

 

無理に体を動かすキングに対し、サンドラがそれを寝かそうと肩に手を置く。

 

 

「アルカナとはなんだ。私は一体何に騙されていたんだ」

「……」

 

 

シグマはキングの問い掛けにだんまりしていたが、直ぐに気が変わったのか、答え始める。

 

 

「アルカナとは、人々の善の心の宿敵。悪意の塊でできた伝説上のバケモノ。500年周期に現れては、人々から善の心を剥ぎ取ろうと奔走する、厄介な奴さ」

「500年周期……まさか」

「あぁ。太陽王者と月王者の争いと同じさね。奴の言う通り、確かに、太陽王者と月王者は戦う宿命にある。事実、オマエとあの赤髪小僧は、アタシらが何も干渉するすることなく、自然と出会い、戦った」

「……」

 

 

これまでの鉄華オーカミとの戦いを想起し、キングは、アルカナの言っていたことが全て嘘ではなかったことを理解する。

 

 

「だが、その前に1つだけ役目があった。それがアルカナの討伐」

「……」

「その討伐をなしえなかった場合、お先500年は人々から善の心が失われてしまう。今回、奴は予め太陽王者と月王者を探し出し、互いに嘘の情報を流し込むことで、戦わせた」

「……」

 

 

キングは、オーカミの「何故アニキを傷つけた」と言う言葉を思い出し、あれもアルカナが仕組んだことなのだと察した。

 

 

「結果はこのザマだ。事態は最悪と言っていいだろうね」

「……すまない。私があんな者にまんまと利用されたばかりに。取り返しのつかないことをしてしまった」

「己を卑下するなキング。とにかく、今は安静にしていてくれ」

 

 

サンドラにそう言われると、キングは大人しくベッドに横たわる。

 

アルカナに唆され続け、鉄華オーカミの月王者をこの世から消そうと奔走していたのだから、キングが己を責めるのも無理はない。

 

しかし、これは彼が幼少の頃からアルカナによって仕組まれた罠。敵が巧妙だっただけで、致し方ないとも言える。

 

 

「マフラーボーイの言う通りさね。取り敢えず今は生き残ることに専念しな。大丈夫、オマエを死なせたりはしないさ」

「……頼む」

 

 

ここまでなんとか口を開け、話し続けて来たキング。遂に限界を迎えたか、2つの王者の力が身体中で刺激し合う激痛から、気を失ってしまう。

 

 

「さぁて。腕の見せ所だね」

「キングのこと、よろしくお願いします」

「あぁ。任せな」

 

 

キングの命を繋ぎ止めるため、シグマの孤独な戦いが始まった。

 

 

******

 

 

この世の終わりだと告げるように、黒い闇で覆われた空。広大な敷地を有するノヴァ学園の屋上を舞台に、コントとフウのバトルスピリッツは続く。

 

己こそが、この世界の主人公だと主張するコントは、遂に第6ターン目。エースカード、死神タナトスをフィールドに煌臨させた。

 

 

「タナトス。オマエに会いたかったぜ」

 

 

タナトスに向かって、コントがそう告げる。主人公らしいセリフだが、タナトスはそれを無視。

 

 

「……」

 

 

死神タナトスを目に映したフウは、祖父であるDr.Aに両親を殺害されたこと、実験台にされたこと、彼の孫だからと言う理由だけで迫害、蔑まれて来たことなど、己の苦々しい過去の数々を想起し、「何故今こんな忌々しい記憶を思い出す」と、己自身に訴えた。

 

 

「死神タナトス。オーカミさんのバルバトスにちょっと雰囲気が似てますね。やっぱり、意識していたりするんですか?」

 

 

喧しかった記憶が落ち着き始めると、彼女は再びバトルに集中。対面のコントに、彼が最も妬んでいるであろう鉄華オーカミのカード「バルバトス」とタナトスを比較し、煽り出す。

 

 

「……なんでそこでバルバトスが出て来る。このタナトスはバルバトスより優れている。今からそれを証明してあげるよ」

 

 

案の定コントは、フウの口から出た「バルバトス」と言う言葉に強い嫌悪感を抱いた。

 

そのせいか、ほんの僅かに、彼の瞳孔や身体から溢れ出ている闇の瘴気が強まって行く。

 

 

「タナトスを呼んだが、オレのメインステップはまだ終わってないぜ。戦闘服ゆかりをLV2で召喚」

 

 

ー【[S.E.E.S.制式戦闘服]岳羽ゆかり】LV2(2)BP4000

 

 

「召喚時効果。カウント+1。契約スピリットの主人公の効果、カウント+2。デッキから2枚ドローし、2枚を破棄。この時、創界神ネクサスの主人公の効果で破棄枚数を1減らす」

「またドロー。ご都合ドローとはよく言ったものね。これだけ引けば、良いカードを引けて当然でしょうに」

「さらにミラージュ、戦闘服美鶴をセット」

 

 

メインステップを再開したコントが召喚したのは、弓矢を装備した、高校生程度の少女。

 

その効果により、カウントがアップ。主人公の効果と合わせ、コントのカウントは9まで蓄積された。

 

 

「アタックステップ」

「来るぞ徳川フウ、気をつけろ」

「貴女に言われるまでもなくわかってるわよ、英雄さん」

 

 

コントのアタックステップ宣言。彼女の身を案じたブイが声を荒げる。

 

 

「タナトスでアタック。その効果、相手スピリット全てのコアを1個にする」

 

 

直刀を振い、青と紫の飛ぶ斬撃を放つタナトス。

 

フウのフィールドのスピリット達、メカゴモラはそれを回避するが、ジャイガントロンとキメラべロスは、それに直撃。2体とも、コアが1つずつ取り除かれた。

 

 

「フン。スピリットを倒せない効果に何の意味が」

「まだあるぜ。LV2からの効果、コア1個の相手スピリット1体を破壊し、1点のダメージを与える」

「なに!?」

「ジャイガントロンを破壊、タナトスよ、敵の命を刈り取れ」

 

 

〈ライフ4➡︎3〉徳川フウ

 

 

「ぐぁぁ!?」

「さらに契約スピリットのオレの効果で、タナトスは回復する」

 

 

タナトスがフウのフィールドへ突入。ジャイガントロンの長い首を掴み、直刀でそれを切断。爆散へ追い込む。

 

そしてその爆風が、フウのライフバリアを巻き込み、破壊。オマケにタナトスは契約スピリットの効果で回復状態となり、このターン、二度目の攻撃権利を得た。

 

 

「ウフフ。わかっていますよね徳川フウ。このバトル、貴女が負ければ」

「貴方の一部になって死ぬんでしょ。そんなの真っ平ごめんよ。フラッシュマジック、白晶防壁。効果により、このターン、私のライフは1つしか減らされない。アタックはライフで受ける」

 

 

〈ライフ3➡︎2〉徳川フウ

 

 

「ぐぅっ!?」

 

 

コントの影となっているアルカナがフウに告げると、彼女は応戦するように、手札から白の防御マジック、白晶防壁を使用。これでこのターン、彼女のライフは2からは減少しなくなる。

 

フィールドでは、タナトスが直刀を縦に振い、フウのライフバリア1つを破壊。直後に彼女を守るように半透明のバリアが出現した。

 

 

「君も白晶を持ってたか。だが、残りのスピリットは刈らせてもらうぜ」

「!」

「回復したタナトスで再度アタック。効果でキメラべロスを破壊」

 

 

ライフを破壊できないとわかっていても、コントはタナトスにアタックの指示。標的をライフからスピリットに変えたのだ。

 

タナトスは指示通り、キメラべロスを直刀で両断し、破壊へ追い込む。

 

 

「そしてフラッシュ、【契約煌臨】を発揮。対象となる戦闘服ゆかりの効果により、この煌臨にソウルコアは不要となる。来い、明鏡止水ゆかり&イシス」

 

 

ー【[明鏡止水]岳羽ゆかり&イシス】LV2(2)BP17000

 

 

コントのフィールドにいるゆかりが、「ペルソナ」を力強く宣言しながら、銃で自身の眉間を撃ち抜く。

 

すると、不気味な女神像のような姿を持つペルソナスピリット、イシスが出現する。

 

 

「明鏡止水ゆかり&イシスの効果。全てのスピリットを回復させ、1つずつコアブースト」

「ッ……またタナトスが回復した」

 

 

驚きの声を上げたのは、フウではなく、ブイの方だった。

 

これでタナトスは三度目の攻撃が可能。フウのフィールドのスピリットは全滅が確定する。

 

 

「三度目のアタックだタナトス。効果でメカゴモラ、粉砕」

 

 

タナトスは直刀でメカゴモラの三日月のような形をしたツノを切り落とし、最後は腹部を切断。爆発へ追い込んだ。

 

 

「エンドステップ。創界神ネクサスのオレの効果でデッキ上からペルソナスピリットを回収し、ソウルコアをリザーブへ。ターンエンド。どんな困難も、信頼できる仲間と共に乗り越える、それこそ主人公の力だ」

手札:6

場:【[死神]タナトス】LV2

【[明鏡止水]岳羽ゆかり&イシス】LV2

【[月光館学園制服]主人公】LV1(0)

バースト:【無】

ミラージュ:【[S.E.E.S制式戦闘服]桐条美鶴】

カウント:【9】

 

 

「そう。まるで、鉄華オーカミと鉄華団のような関係ですね」

「ッ……あんな奴と一緒にするな。オレが、主人公だ!!」

 

 

フウの発言に、コントは怒りを露わにする。

 

おそらく、今の自分とオーカミが比べられるのが嫌なのだろう。

 

 

「落ち着いてコント。貴方は立派な主人公よ」

「アルカナ」

「貴方がライフを砕いてくれたおかげで、徳川フウの生命力がどんどん私の中に流れ込んで来ている。この調子で頑張って」

「あぁ、任せてくれ。主人公は負けない」

 

 

アルカナの甘い言葉には全く疑わなくなってしまったコント。

 

肉体的、精神的にも、徐々に狂い始めて来た彼をよそに、フウは巡って来た自分のターンをスタートする。

 

 

[ターン07]徳川フウ

 

 

「メインステップ。何にせよ厄介ですね、ペルソナスピリット。ニッヒヒ、なら、お遊びはここまでですよ」

「!」

「貴方からアルカナの力、頂戴いたします」

「ッ……王者!?」

 

 

勝負に出たか、フウはここで王者を発動。瞳孔は赤く輝き、同じ色の刻印が身体中に刻まれる。

 

寿命と引き換えに、Dr.Aに無理矢理与えられた力だ。その出力は他の通常の王者を大きく上回っており、かつて、覚醒前だったとは言え、月王者のオーカミでさえもコレに苦しめられた。

 

この力を持ってすれば、アルカナの力以外何も持たないコントには確実に勝てる。

 

そう、彼女は思っていたのだが………

 

 

「……ない」

 

 

王者の力を使い、己の勝利の未来を探るフウだったが、直ぐに慄くこととなる。ただ1つとして、それが見つからなかったからだ。

 

 

「な、何故。私の勝利の未来が見えない。王者の不具合!?…所詮はお祖父様が作った模造品だからか」

「いいえ、違いますよ徳川フウ」

 

 

困惑するフウ。彼女の疑問に答えるように、またコントの影からアルカナが現れる。

 

 

「理由は単純にして明快。今のコントが強すぎるからです」

「!!」

「王者とは、例え勝利の確率が0.1%であっても、それを手繰り寄せ、勝利を齎す力。しかし、それが完全に0%なら、話は違います。圧倒的な力の前では、王者など無いに等しい」

 

 

天下無双の力を持つとされる王者。

 

しかし、実力差がありすぎて、勝ち筋が1つも見えない者を相手にする時、その力は突然無意味と化す。

 

一見拮抗しているように見えたコントとフウのバトルだったが、本当はコントの方がフウの力を完全に凌駕していたのだ。

 

簡潔に今の状況を説明すると、今からフウコントに負けて、死亡する。

 

 

「逃げろ徳川フウ、あとは私がなんとかするから」

「喧しい!!」

「!」

「メカゴモラを召喚」

 

 

ー【メカゴモラ】LV1(1)BP2000

 

 

状況を理解したブイが、声を荒げ、フウに逃げるよう促すが、フウはそれを断固拒否。

 

己の力が通じないわけがないと内心で叫びながら、プレイを続行。フィールドに2体目のメカゴモラを召喚する。

 

 

「ここまで来て、そんな馬鹿なことがあっていいはずがない。召喚時効果。デッキから3枚オープンし、アークベリアルを手札に、残りを破棄。アタックステップ、メカゴモラでアタック」

 

 

焦燥に駆られるがまま、フウはメカゴモラでアタックを宣言。それ単体では貧弱なスピリットだが、彼女の本命は、今手札に加えたカードだろう。

 

 

「【顕現】を発揮。果てしなき闇の力で、全ての宇宙を掌握せよ、超銀河大帝アークベリアル、LV2で顕現!!」

 

 

ー【超銀河大帝アークベリアル】LV2(3)BP15000

 

 

出現し、膨張を続ける闇の渦。それを引き裂き、中より顕現したのは、闇と怪獣スピリットの力を取り込んだ、最強にして最凶のベリアル、アークベリアル。

 

現れるなり、背部の緑色の結晶を輝かせ、咆哮を張り上げる。

 

 

「いいね。如何にも悪って感じだ」

「その軽い口を、いい加減黙らせてやる。顕現時効果、タナトスを破壊し、もう1つの効果で1点のダメージ!!」

 

 

〈ライフ3➡︎2〉光裏コント

 

 

アークベリアルは口内より闇の火炎を放出。タナトスはそれに焼き尽くされ、爆散。その爆風がコントのライフバリア1つも粉砕する。

 

 

「アークベリアルはアタック時にも同様の効果を発揮する。これで終わりです」

 

 

いや、終わらない。

 

性格はともかく、今のコントは主人公。

 

主人公は決して悪には負けない。

 

 

「フラッシュ、戦闘服美鶴のミラージュ効果」

「ここでミラージュ効果!?」

「自身をノーコスト召喚し、対象のスピリットをソウルコア無しで契約煌臨する。来い、ペンテシレア」

 

 

ー【ペンテシレア】LV2(3)BP10000

 

 

効果を巧みに使い、コントがこのフィールドに呼び出したのは、鎧を纏う女帝、ペンテシレア。タナトスやオルフェウス、イシスと同様、ペルソナスピリットの1体だ。

 

 

「ペンテシレア、煌臨時の効果。カウント+1。このバトルが終了した時、アタックステップを終了させる」

「!」

「メカゴモラのアタックは、このペンテシレアで迎え撃つぜ」

 

 

突進して来るメカゴモラを、ペンテシレアが二振りのレイピアを用いて迎え撃つ。

 

BP差は圧倒的なため、十中八九ペンテシレアが勝つであろうこのバトル。フウはそれを見越して、視線を背後にいるカイザーベリアルへと向ける。

 

 

「カイザーベリアルの【契約技】を発揮」

「お?」

「カウント+2。トラッシュから怪獣の女王ジャイガントロンを手札へ戻す。そして、このBPバトルは、メカゴモラの敗北」

 

 

フウの宣言通り、メカゴモラはペンテシレアのレイピアによって斬り刻まれ、爆散。

 

だが、その瞬間。たった今彼女の手札へと戻って行ったジャイガントロンのカードが光を放ち。

 

 

「ジャイガントロンの効果。怪獣が相手によってフィールドを離れた時、1コストで召喚」

 

 

ー【怪獣の女王ジャイガントロン】LV2(2)BP13000

 

 

「召喚時効果で明鏡止水ゆかり&イシスを破壊」

 

 

赤き翼を翻し、フィールドへ復活を果たしたジャイガントロン。その口内より放たれし爆炎が、ゆかり&イシスを焼き払い、破壊した。

 

 

「フフ。だが、どのみちペンテシレアの効果で君のアタックステップは終了だ」

「……ターンエンド」

手札:4

場:【超銀河大帝アークベリアル】LV2

【怪獣の女王ジャイガントロン】LV2

【ベリアル銀河帝国皇帝カイザーベリアル】LV2(2)

バースト:【無】

カウント:【9】

 

 

ペンテシレアの効果により、ここでフウはターンエンドの宣言。

 

小物だと思っていたコントに苦渋を飲まされ、さぞかし腹立たしかったことだろう。

 

 

「ッ……ゴホッゴホッ……ぐっ!!」

「徳川フウ、大丈夫か!?」

「う、うるさい。貴女は黙ってろ」

 

 

フウの手足が小刻みに震え、それと同時に血の混ざった咳を込み、目眩で視界が覚束なくなる。

 

これは、このバトルによるダメージのモノではなく、彼女の残りの寿命が短いことを示唆している。

 

 

「勝たなくては、早く。私には時間がない。さっさとターンを進めろ、光裏コント!!」

 

 

バトルで敗北する現実を突きつけられても尚、もはや逃げ道など存在しないかるか、フウは逃げず、これまで以上に凄まじい気迫を見せつける。

 

 

「へいへい。よくわからないけど、瀕死だからって手は抜かないぜ、バトルだからな」

 

 

今度は主人公らしくないセリフを吐き捨て、コントは迎えた己のターンを進めて行く。

 

 

[ターン08]光裏コント

 

 

「メインステップ。今度はペンテシレアを対象に【契約煌臨】を発揮、現れよ、断罪の刃美鶴&アルテミシア」

 

 

ー【[断罪の刃]桐条美鶴&アルテミシア】LV2(3)BP22000

 

 

ペンテシレアが光の粒子となって消え失せると、フィールドには赤く長い髪を靡かせる麗しき女性が代わりに現れる。

 

彼女もまた「ペルソナ」の宣言と共に、銃で己のこめかみを撃ち抜くと、ペンテシレアの強化形態、棘鞭を武器とするペルソナスピリット、アルテミシアが出現。

 

 

「次から次へと」

「オレの効果でカウント+2。2枚ドロー、1枚破棄。アタックステップ。断罪の刃美鶴&アルテミシアでアタック」

 

 

また新たなペルソナスピリットを呼び出したコント。颯爽とそれにアタックの指示を送る。

 

そしてこの時、その凶悪な効果が発揮されて。

 

 

「アタック時効果。アークベリアルとジャイガントロンの2体をデッキ下へ」

「なに!?」

 

 

アルテミシアは棘鞭に紫の光を纏わせ、それでアークベリアルとジャイガントロンの2体を拘束すると、そこへ美鶴が剣で一閃。

 

2体は立ち所に影となり、姿を消した。

 

 

「そしてもう1つ。このスピリットの煌臨元カード2枚を破棄し、次の君のターン、君はアタックステップは行えない」

「は、アタックステップが行えないですって!?」

「断罪の名は伊達じゃないってことさ」

 

 

美鶴&アルテミシアの本領が発揮。アタックステップが無くなるということは、次のターンのフウの勝利はなくなるに等しい。

 

フウが勝つには、このターン含め、2ターン分のコントのアタックステップを乗り切る必要がある。

 

ただ、強力な効果を持つペルソナスピリット達の猛攻を2ターン分など、耐えられるわけもなくて。

 

 

「そしてこのスピリットはダブルシンボル。ライフを2つ破壊する」

「フラッシュマジック、白晶防壁」

「2枚目か」

「このターン、私のライフは1つしか減らされない。そのアタックはライフで受ける」

 

 

〈ライフ2➡︎1〉徳川フウ・王者

 

 

「あ、ぁぁぁぁぁあ!!!」

 

 

美鶴の華麗な剣撃が、アルテミシアのしなやかな棘鞭が、フウのライフバリアへと刺さる。

 

2枚目の白晶防壁によってことなきを得たが、これで彼女の残りライフは1。遂に限界を迎えた。

 

 

「焦らすね。エンドステップ。トラッシュにある明鏡止水ゆかり&イシスの効果。創界神ネクサスのオレのコア1つをトラッシュへ置き、手札へ戻る。ターンエンド」

手札:7

場:【[断罪の刃]桐条美鶴&アルテミシア】LV2

【[月光館学園制服]主人公】LV1(1)

バースト:【無】

カウント:【12】

 

 

強力なアルカナのペルソナスピリットカード達を操るコント。余裕綽々でターンエンドを宣言。

 

 

「まだだ。目の前にあるんだ、永遠の命が、もう少しでこの私の手に届くんだ!!」

「徳川フウ……」

 

 

満身創痍となったフウ。だが、長寿を得て、己の中のDr.Aの呪いを断ち切るため、立ち上がり、ターンを進めて行く。

 

その異常とも言える彼女の執着に、何を思ったのか、ブイは握り拳を強く握った。

 

 

[ターン09]徳川フウ・王者

 

 

「メインステップ。サンダーキラーを召喚」

 

 

ー【ベリアル融合獣サンダーキラー】LV1(1)BP5000

 

 

フウが呼び出したのは、雷と装甲を纏う白き怪獣、サンダーキラー。

 

 

「召喚時効果。手札を1枚破棄し、2枚ドロー。さらにレギオノイド、ギエロン星獣、スカルゴモラを召喚」

 

 

ー【レギオノイド】LV1(1)BP1000

 

ー【再生怪獣ギエロン星獣】LV1(1)BP3000

 

ー【ベリアル融合獣スカルゴモラ[2]】LV1(1)BP4000

 

 

「スカルゴモラの召喚時効果。カウント+1。ネクサスのイゴールを破壊」

 

 

両腕がドリルとなっている機兵、レギオノイド。翼がカッターのように鋭利な怪獣、ギエロン星獣。三日月のようなツノと、岩のような外骨格を持つ怪獣、スカルゴモラを一挙に召喚するフウ。

 

普通なら、この状況での大量召喚は一種の勝ちフラグ。並大抵のことで負けることはないだろう。

 

しかし……

 

 

「忘れてないかい?…断罪の刃美鶴&アルテミシアの効果で、君はこのターンアタックステップを行えない」

「……ターン、エンド」

手札:1

場:【ベリアル融合獣サンダーキラー】LV1

【ベリアル融合獣スカルゴモラ[2]】LV1

【再生怪獣ギエロン星獣】LV1

【帝国機兵レギオノイド】LV1

【ベリアル銀河帝国皇帝カイザーベリアル】LV2(6)

バースト:【無】

カウント:【10】

 

 

今は違う。断罪の刃美鶴&アルテミシアの効果により、このターンのフウのメインステップ終了後は、エンドステップ直行を意味する。

 

そのため、フウはアタックできずにターンエンドを宣言。4体のブロッカーが残った。

 

 

「終わりだ。行くぜ、オレのターン!!」

 

 

どこまでも主人公を意識するコント。またカッコをつけ、ターンを進めて行く。

 

 

[ターン10]光裏コント

 

 

「メインステップ」

「私のライフは後1つ。だが、ブロッカーは4体もいる。早々飛び越えられてなるものか」

 

 

スピリットの質では劣っているが、量では勝っているフウ。

 

しかし、ペルソナスピリットのデッキは、その程度の差で勝てる程甘くはなくて。

 

 

「残念だけどフウちゃん。主人公のこのオレが終わりだと言ったら、終わるんだよ」

「!」

「魂状態のオレ自身を対象に【契約煌臨】を発揮。再び愚者を貪れ。ペルソナァァァァ!!…死神タナトス!!」

 

 

ー【[死神]タナトス】LV2(3)BP19000

 

 

コントは再度自分のこめかみに銃口をつけて発砲。その衝撃と共に、背後から2体目となる死神タナトスが煌臨する。

 

 

「タナトスの効果は、覚えてるよな」

「……コア1個以下の相手スピリット1体を破壊し、1点のダメージを与える」

「そう。つまり、いくらブロッカーを並べても、これでフィナーレってことさ」

 

 

そう。コントがタナトスを煌臨させたこの時点で、フウの敗北は確定した。

 

その後、すぐさまコントは無慈悲にも「アタックステップ」を宣言して。

 

 

「タナトスでアタック。効果でサンダーキラーを破壊して、1点のダメージだ」

 

 

や太い咆哮を張り上げたタナトスは、直刀を横一閃に振い、フウのサンダーキラーを切断。爆散させる。

 

そして、次にフウの残り1つのライフバリアへと狙いを定めて。

 

 

「ふざけるな、私の人生を」

 

 

タナトスは、今度は直刀を縦に一閃。フウの最後のライフバリアを砕こうと襲いかかって来る。

 

その刹那。フウはこれまでの自分の人生を思い出していた。それは、Dr.Aの孫として生まれ、それに両親を殺され、自身も短命にされた挙句、周囲から迫害されて来た孤独な過去。

 

 

「私の人生を、一体なんだと思っている。ここで、こんなところで、くたばってなるものかァァァァ!!!」

 

 

ライフバリアにそれが届こうとした直前、それら凄惨な過去を塗り替えるようにフウの脳裏を横切ったのは、春神ライの笑顔。己を嘘で塗り固め、親友を演じて来た、あの身体が痒くなるような日々。

 

何故、最後にそれが出て来たのか、フウは困惑する間もなく………

 

 

「何故、何故この世界は私の思い通りにならないんだァァァァ!!!」

 

 

〈ライフ1➡︎0〉徳川フウ・王者

 

 

ライフが砕かれた。その最後のインパクトが、彼女を襲う。

 

はずだった。

 

 

「……え」

「ぐっ!?」

 

 

咄嗟にフウの眼前に飛び出し、彼女を庇った人物が1人。

 

ブイだ。あまりに衝撃的な出来事に、フウは開いた口が塞がらなかった。

 

 

「ブイ姉?」

 

 

ブイの行動に、コントも疑問を持つ。だが、暴走しているからか、彼女を傷つけたことに関してはなんとも思っていない様子。

 

 

「ぐっ……良かった、無事みたいだな」

「ば、馬鹿め。何故私を庇った、芽座椎名!!」

 

 

ブイのサングラスが砕け、その素顔が明らかとなる。

 

彼女の正体は芽座椎名。かつてフウの祖父、Dr.Aを倒し、世界を救ったとされる英雄だ。

 

 

「何故って言われてもなぁ、生徒を庇うのが先生だし。それに、見過ごせなかった。苦しい人生ばかりだって聞いたから」

「!」

 

 

フウの目に、ほんのりと涙が浮かび上がって来た。

 

 

「子供は元気にバトスピするのが1番なんだからさ。そんな苦しいだけの人生で終わるなんて、辛過ぎるよ」

「知った風に言うな。私は徳川フウだ、Dr.Aの孫だぞ。生まれてはいけなかった忌子を助けて一体何の徳がある。英雄英雄と持てはやされているからと、英雄を気取るな!!」

「……」

「私を庇ったところで、私の心に巣くう憎しみは消えない。オマエのやったことは、全部無駄なんだぞ!!」

 

 

苦し紛れに言い返すフウ。椎名はそんな彼女を目に映し、笑みを浮かべて。

 

 

「知ってる?…『憎しみ』の反対は『愛する』なんだよ」

「!」

「また知った風に言うなって言うかもしれないけど、私にはわかる。きっと君は、受けた憎しみと同じくらいの大きさの愛を求めてる。だから、長く生きたいって思ってたんだ」

「うるさい。うるさい、うるさい!!」

 

 

心が何かで抉られるような妙な衝動に、フウは怯え、困惑する。

 

彼女はまだ気がついていない。抉られているものが憎しみで、その空いた穴には誰かの愛が詰まっていっていることを。

 

 

「私、まだ死ぬ気はないからさ。君もこの戦いを死ぬ気で生き残って、終わったら、私とバトスピしよ……う」

 

 

やがて椎名の意識は遠のき、気を失ってしまう。

 

椎名の言葉、ライとの思い出、記憶が交差していき、フウを混乱させる。

 

 

「何故、どいつもこいつも、私を。Dr.Aの孫であるこの私を。う……あぁ、ぁぁぁぁぁあ!!!」

 

 

自分では理解し難い優しさ、愛を受け、それに押し出された行き場のない憎しみが、彼女を叫ばせる。

 

憎しみの中だけで生きて来た者の悲痛な叫びは、太陽を包み込む、黒い空まで響き渡って………

 

 

******

 

 

「!!」

 

 

ふと、鉄華オーカミは目を覚ますと、そこは赤い三日月の月明かりによって照らされている原っぱの中だった。

 

 

「どこだここ、キングは、コントはどうなった!?」

 

 

辺りを見渡すが、そこには草と月、空以外は何もない。

 

オーカミはアルカナによって暴走させられたコントの身を案じ、一刻も早くノヴァ学園に戻ろうと、右も左もわからぬまま足を一歩、前へと踏み出す。

 

 

「どこへ行こうと言うんだ」

「!」

「ここはオマエのBパッドの中だ。歩きじゃ元の場所には帰れない」

 

 

オーカミと別に、もう1人この場に人がいた。40代前後の男性で、髪色はオーカミのよりも濃ゆい赤だ。

 

初見の知らない人物のはずだが、オーカミは不思議と、この人物には見覚えがあって……

 

 

「アンタ、確かルプスレクスファイナルをオレに渡した」

「あぁ、あの時のおじさんだ」

 

 

オーカミの直感は的中。

 

目の前の男性は、オーカミが初めて徳川フウとバトルし、敗れた後、傷ついた彼に応急処置を施したのち、最強の鉄華団「バルバトスルプスレクスファイナル」を譲渡した人物であった。

 

 

「なんでまたオレの前に。て言うか、Bパッドの中ってどう言う」

「まぁ落ち着け。確かに事態は一刻を争うが、今は待つしかない。生まれて初めての親子水入らずといこうじゃないか」

「……親子?」

 

 

男性の「親子」と言う言葉に、オーカミが首を傾ける。

 

 

「あれ、言ってなかったっけ。オレはオマエの父親、鉄華カグヅチだ」

「!!」

 

 

親指を自分に向けながら、男性は自分が鉄華オーカミの死んだ父親、カグヅチだと名乗る。

 

突拍子もなく再開した父と子。その再開は、やがて全ての謎が紐解かれるキッカケとなって………

 




次回、第93ターン「哀切、オルギアモード」


******


王者の鉄華、次回を含め、残り5話となりました。
最後まで全力で駆け抜けて行きたいと思っております。
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