バトルスピリッツ 王者の鉄華   作:バナナ 

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第93ターン「哀切、オルギアモード」

 

 

 

ノヴァ学園の屋上で、惜しくもキングに敗れたオーカミ。

 

直後にそれらの戦いが、全て学園長、アルカナによって仕組まれたことだと発覚し、コントがその手に堕ちる。

 

乱心し、暴走するコントを止めるようと立ち上がるオーカミだったが、月王者をキングに抜き取られた衝撃でダウン。完全に気を失ってしまう。

 

そして、次に目が覚めた時には、赤い三日月が照らす草原にいて、さらにそこには、彼の亡き父親、鉄華カグヅチが腰を据えていた。

 

親子の不思議な再会が齎す結末とは………

 

 

******

 

 

「あれ、言ってなかったっけ。オレはオマエの父親、鉄華カグヅチだ」

 

 

赤い三日月が照らす原っぱ。そこで出会った赤い髪の男性は、自らを親指指し、名乗る。

 

そう。彼は昔事故で亡くなったとされる、オーカミの父親、鉄華カグヅチなのだ。

 

 

「アンタが、オレの父親……?」

「あんまピンと来ねぇか。そりゃそうか。オレが死んだのはオマエがまだ3歳の頃だったし、写真も残ってなかっただろうしな」

「……」

 

 

オーカミは、目の前の人物が自分の父親だと徐々に認識して行く中で、1つの感情が芽生え始めた。

 

その拳を固く握り締めると……

 

 

「ぐあ!?」

 

 

全力で父、カグヅチを殴りつけた。生々しい音が原っぱに響き渡る。

 

 

「いてて、自分の父親を殴るなんて、いきなり手荒い真似するじゃねぇか。普通は嬉しさ極まって抱きつくとこじゃない?」

「オマエがいなくなったせいで、姉ちゃんが泣いてた。子供だった頃は、毎晩毎晩。全部オマエのせいだ」

「ヒメ、か」

 

 

姉とずっと2人で暮らして来たオーカミ。姉のヒメが毎晩両親を想い、裏で涙を見せていたことで、彼も知らずのうちに父親に対して少なからず恨みがあったのだろう。

 

 

「まぁ、そんなことより」

「そんなことより!?」

「うん。今はどうでもいいだろ。オレが作った鉄華団、どう?」

 

 

仮にも息子であるオーカミの恨みを「そんなことより」「どうでもいい」などと吐き捨て、カグヅチは自分の作成した鉄華団についてオーカミに訊いた。

 

 

「……」

「無視かよ。でも、最高だったろ。そりゃそうだ。月王者のオマエのために作ったカードだからな」

「いいから。早くここを出る方法を教えろ」

 

 

今度はオーカミが喧嘩腰でカグヅチに訊いた。

 

 

「残念だが、勝手に出て行くことはできない。何せ、向こう側のオマエの本体は今死んでるからな」

「オマエも死んでるのに、オレにルプスレクスファイナルを渡すために外に出て来たじゃないか」

「アレは一度切りの仮の肉体だ。もう使えない」

 

 

オーカミは自分が既に死亡していることには驚きもしない。肝が据わっているのか、もしくはあまり父親を信用していないのかもしれない。

 

 

「人は肉体と魂の2つでできている。オマエは今、肉体から魂が切り離されて、その魂が、自分のBパッドの中にいる。オレと同じでな」

「じゃあ、オレの肉体に魂が戻ればいいってことか」

「その通り。流石我が子。頭が良いな」

 

 

魂のみがBパッドの中に入っていることを説明するカグヅチ。

 

彼は直後に「安心しろ」と言葉を足して。

 

 

「既にオマエは自分の肉体に戻ろうとしている。復活すれば、月王者が無くても生きていける身体になっているはずだろう」

「時間ってどのくらいだ」

「さぁな。オレも初めてのことだからわからん」

 

 

オーカミがあまりにも結論を急ぐせいで説明足らずとなっているが、オーカミが今こうして自分の復活を待つことができているのは、カグヅチの作った鉄華団のおかげだ。

 

本来死んだ魂は天に向かうが、鉄華団のカード達がそれを繋ぎ止めたのだ。

 

 

「つーわけでだ。待っている間暇だし、バトスピでもするか」

「は?」

「いや、だからバトスピでもするかって」

「そんな暇はない」

「今は暇だって。我が子とバトスピするのが夢だったのよ」

「……わかったよ」

 

 

なんとなくで今自分が復活できる状況にあるのは、父、カグヅチであると察していたのか。

 

オーカミは彼とのバトルを承諾。

 

 

「Bパッドないけど」

「この世界はある程度の物だったら望めば手に入るぞ。ほれ」

 

 

カグヅチは想像し、Bパッドを生成。オーカミもそれを真似し、己のBパッドといつものデッキを用意した。

 

 

「よし。じゃあ始めるぞ」

「……」

 

 

……ゲートオープン、界放!!

 

 

舞台はなんとオーカミのBパッドの中。風が吹き抜ける原っぱにて、親子2人のバトルスピリッツが幕を開ける。

 

先攻は、全くもってやる気を見せないオーカミだ。

 

 

[ターン01]鉄華オーカミ

 

 

「メインステップ。バルバトス第1形態を召喚」

 

 

ー【ガンダム・バルバトス[第1形態]】LV1(1)BP2000

 

 

「召喚時効果でオルガを手札へ」

 

 

オーカミが最初に呼び出したのは、バルバトスの第1形態。召喚時効果で手札とトラッシュを増やす。

 

 

「第1形態の召喚に、オルガを回収か。順調みたいだな」

「ターンエンド」

手札:5

場:【ガンダム・バルバトス[第1形態]】LV1

バースト:【無】

 

 

オーカミはそれだけのプレイでターンエンド。使うカードが未知数のカグヅチのターンとなる。

 

 

[ターン02]鉄華カグヅチ

 

 

「メインステップ。こっちは早速行かせてもらおうかな。契約スピリット、アイギスを召喚」

 

 

ー【[S.E.E.S.制式戦闘服]アイギス】LV1(1)BP3000

 

 

「女の子の契約スピリット?」

 

 

カグヅチが召喚したのは、赤いリボンが特徴的な、機械の体を持つ金髪青眼の少女。体格は当然モビルスピリットのバルバトスに大きく劣るが、契約スピリットと言っていたので、その内には秘めた力を宿している様子。

 

 

「おじさんは若い娘さんが好きなの。それに凄いんだぜこの子。なにせ、あのアルカナと同等の力を持っているんだからな」

「……なに」

 

 

動揺したオーカミをよそに、カグヅチは「アタックステップ」と、宣言して。

 

 

「アイギスでアタック。効果でカウント+2」

「ッ……ライフだ」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉鉄華オーカミ

 

 

アイギスは指先に内蔵された機関銃を掃射。オーカミのライフバリアを撃ち抜く。

 

 

「ぐっ……なんだ、この変な感じ」

 

 

ライフ減少直後、オーカミは謎の脱力感に陥る。不思議に思ったが、その答えは目の前にあって。

 

 

「あぁ、言い忘れてたけど、このバトル。オマエ、負けたら魂消えるから」

「!」

「でもって、オレがオマエの身体、貰うよ」

 

 

カグヅチの言葉に、オーカミは衝撃を受ける。

 

共に暮らした時間がない故に、カグヅチに対して父親に向ける情を持ち合わせてはいないオーカミだが、それにしても驚愕のセリフだった。

 

 

「この時を待ってた。ずっと欲しかったんだよね、若い身体」

「オマエ……」

「鉄華団を作り、自身の魂をオマエのBパッドに移植した甲斐があった。協力してくれたシグマ先生にも感謝しないとな。まぁ、あの人は何も知らなかったけど、はっはっはっは!!」

 

 

徐々に本性を表して来たカグヅチ。

 

もはや耳を疑うまでもなく、奴はDr.A、嵐マコトに並ぶマッドサイエンティストだ。

 

 

「サンキューな我が子よ。これからはオレが鉄華オーカミだ」

「ふざけんな。誰がそんなこと」

「ふふ。ターンエンド」

手札:4

場:【[S.E.E.S.制式戦闘服]アイギス】LV1

バースト:【無】

カウント:【2】

 

 

オーカミの身体を奪うために、長年彼のBパッドの中に潜んでいたと言うとんでもない秘密を暴露したカグヅチ。

 

一度ターンエンドを宣言し、オーカミへそれを譲る。

 

 

「オマエ、じゃあ鉄華団も、本当はオレのためじゃなくて、自分のために作ったって言うのか」

「当然だ。じゃないとあんなに強い効果に設定しないよ」

「……」

 

 

怒り心頭したオーカミが、巡って来た自分のターンを開始して行く。

 

 

[ターン03]鉄華オーカミ

 

 

「メインステップ。オルガとクーデリア&アトラを配置」

 

 

ー【オルガ・イツカ】LV1

 

ー【クーデリア&アトラ】LV1

 

 

オーカミはここで鉄華団を支える2種類の創界神ネクサスを同時配置。神託により、オルガに2個、クーデリア&アトラに3個のコアが+された。

 

 

「アタックステップ。その開始時にトラッシュのバルバトス第2形態の効果を発揮。トラッシュからLV2で召喚」

 

 

ー【ガンダム・バルバトス[第2形態]】LV2(2)BP6000

 

 

「不足コストで第1形態は消滅」

 

 

バルバトス第1形態が消滅する代わりに現れたのは、同じくバルバトス、機関銃を装備した第2形態だ。

 

 

「バルバトス第2形態でアタック。そのフラッシュでオルガの【神域】を発揮。デッキから3枚破棄して1枚ドロー。クーデリア&アトラの【神域】が誘発。トラッシュのカード1枚をデッキ下へ戻し、さらにドロー」

 

 

バルバトス第2形態が機関銃の銃口をカグヅチへ向けると、オーカミはいつもの2種の創界神ネクサスによるドローコンボを発揮。手札を6枚まで増加させ、トラッシュも十分肥やした。

 

 

「アタックはライフで受ける」

 

 

〈ライフ5➡︎4〉鉄華カグヅチ

 

 

バルバトス第2形態が放った弾丸が、カグヅチのライフバリアに炸裂。それを1つ砕いた。

 

 

「エンドステップ。バルバトス第2形態の効果、トラッシュからバルバトス第1形態を召喚」

 

 

ー【ガンダム・バルバトス[第1形態]】LV1(1)BP2000

 

 

不足コストの確保により、メインステップで消滅していたバルバトス第1形態が、このタイミングで大地の底より復活。

 

当然、その召喚時効果も使える。

 

 

「召喚時効果でルプス鉄華を手札へ。ターンエンド」

手札:7

場:【ガンダム・バルバトス[第1形態]】LV1

【ガンダム・バルバトス[第2形態]】LV1

【オルガ・イツカ】LV2(4)

【クーデリア&アトラ】LV2(5)

バースト:【無】

 

 

本格的な攻撃に備え、盤面、手札、トラッシュを整えたオーカミ。ターンエンドが宣言される。

 

次はカグヅチの二度目のターンだ。オーカミの身体を奪うべく、ターンを進めて行く。

 

 

[ターン04]鉄華カグヅチ

 

 

「メインステップ。アイギスのLVを2へ上げ、アタックステップ。行きなさい、アイギス」

 

 

LVの上がったアイギスが、オーカミのライフを破壊すべくフィールドを駆け出す。

 

 

「アタック時効果、カウント+2。その後、ソウルコアを使わず、コア1つを支払い、契約煌臨を行う」

「なに、ソウルコア無しで契約煌臨!?」

「ペルソナスピリット。イノセントアタックアテナ」

 

 

ー【[イノセントアタック]アテナ】LV2(3S)BP8000

 

 

アイギスが「ペルソナ」を宣言すると、彼女の背後に巨大な盾と槍をを持つ鎧女神が出現。

 

オーカミは初めて目の当たりにする。これがペルソナスピリット。別次元のカード達だ。

 

 

「ペルソナスピリット!?」

「別世界のカードだ。アルカナはその力を利用し、この世界にやって来たとされている。イノセントアタックアテナの煌臨時効果。相手のバーストを破棄し、最もコストの低いスピリット1体を破壊する。第1形態を粉砕せよ」

 

 

イノセントアタックアテナは、槍の先端部に雷を迸らせ、そのままバルバトス第1形態へ突貫。

 

腹部を貫いて爆散させた。

 

 

「さらにフラッシュ、イノセントアタックアテナのさらなる効果。ターンに一度、このスピリットの煌臨元カード1枚を手札に戻し、ペルソナスピリット1体を回復させる。対象は当然自分自身。そして、契約アイギスは、自分の効果で手札に戻る時、代わりに1コスト支払って召喚できる」

「なに!?」

 

 

ー【[S.E.E.S.制式戦闘服]アイギス】LV1(2)BP3000

 

 

イノセントアタックアテナの煌臨元となっていたアイギスが、このアタックステップ中に新たに召喚。

 

実際のフィールドには元々いたために変化はないが、これでカグヅチは、現在回復状態でアタック中のイノセントアタックアテナと合わせて、合計三度のアタックが可能となる。

 

 

「アタックはライフで受ける」

 

 

〈ライフ4➡︎3〉鉄華オーカミ

 

 

「ぐっ……」

 

 

イノセントアタックアテナの槍の突貫攻撃が、オーカミも襲う。そのライフバリアは1つ貫かれ、残り3つとなってしまう。

 

 

「さぁじゃんじゃん行こうか。もう一度イノセントアタックアテナでアタック。効果で今度はバルバトス第2形態を破壊する」

「それもライフだ」

 

 

〈ライフ3➡︎2〉鉄華オーカミ

 

 

「ぐぁ!?」

 

 

イノセントアタックアテナの雷纏いし槍の突貫が、またしてもオーカミのスピリットとライフを貫通。

 

ライフが一気に半数以下まで追い詰められたが、カグヅチはまだ攻撃の手を緩めなくて。

 

 

「次は契約アイギスでアタック。その効果を再び発揮。カウント+2し、1コストで契約煌臨を行う」

「くっ……」

「ペルソナスピリット、オルギアモードアイギス&パラディオンを契約煌臨」

 

 

ー【[オルギアモード起動]アイギス&パラディオン】LV2(2)BP11000

 

 

アイギスは「ペルソナ」と「オルギアモード起動」を力強く宣言。すると彼女の胸部から青い光が蝶の形を形成するように輝きを放ち、背後に槍を装着した青と金を基調としたカラーリングの戦士、パラディオンが出現する。

 

 

「そして、芽吹け。煌臨時効果。煌臨元の契約アイギスを手札に戻し、手札のコレとメティスをノーコスト召喚」

 

 

ー【[S.E.E.S.制式戦闘服]アイギス】LV1(1)BP3000

 

ー【メティス】LV1(1)BP2000

 

 

「またスピリットが増えた」

 

 

アイギスと共に呼び出されたのは、黒髪赤め黒装甲と、彼女とは正反対のカラーリングのアンドロイド少女、メティス。

 

 

「効果はまだ終わらない。その後、ワイルドカードをソウルコア無しで契約煌臨できる」

「!!」

「来い、アイギス重装!!」

 

 

ー【[対シャドウ特別制圧兵装]アイギス[重装ver.]】LV1(1)BP11000

 

 

三度召喚されたアイギスが、光を纏い、その姿を僅かに変化させる。

 

やがてその光を鋼鉄の手で振り払うと、より重厚な装備を取り付けた、アイギス重装へと進化を果たしていた。

 

 

「アイギス重装の煌臨時効果。煌臨元のアイギスを再召喚」

 

 

ー【[S.E.E.S.制式戦闘服]アイギス】LV1(1)BP3000

 

 

「その後、系統「ワイルド」「戦車」「法王」「永劫」を持つスピリット全てに1つずつコアブーストを行う」

「ッ……」

「オレのスピリットは5体。よって合計で5つのコアブーストだ」

 

 

四度目の召喚を果たすアイギス。直後にそれとアイギス重装、メティス、オルギアモードアイギス&パラディオン、イノセントアタックアテナに1つずつコアが与えられる。

 

 

「どうだ我が子よ、これがアイギスデッキの真骨頂。最速4ターンで走れる超速攻だ」

「……」

「オレにはあと三度のアタックが残されているが、残念ながら今アタックしているオルギアモードアイギス&パラディオンはダブルシンボル。オマエのライフもあと2つ。これで幕引きだな」

 

 

僅か4ターンと言う速さで、オーカミの身体へ王手を掛けるカグヅチ。

 

だが、オーカミがそれを止めないわけがなくて。

 

 

「フラッシュマジック、ネクロブライト」

「むむ」

「効果でトラッシュからコスト3以下の紫スピリット、バルバトス第1形態を召喚する」

 

 

ー【ガンダム・バルバトス[第1形態]】LV1(1)BP2000

 

 

このタイミングで、オーカミはマジックの効果を使用し、トラッシュからバルバトス第1形態を復活させる。

 

 

「召喚時効果。バルバトスルプスを手札へ加える」

「良いのを引き当てるじゃないか」

「【煌臨】発揮。天空斬り裂け、未来を照らせ、バルバトスルプス、LV1だ」

 

 

ー【ガンダム・バルバトスルプス】LV1(1)BP6000

 

 

バルバトス第1形態の召喚時効果を活かし、流れるように煌臨まで繋げる。

 

フィールドでは、バルバトス第1形態が、紫の光を纏い、進化。ソードメイスでその光を掻き消し、中よりバルバトスの強化形態の1つ、バルバトスルプスが煌臨。

 

 

「ルプスの煌臨時効果。オレのデッキ2枚を破棄し、その中の鉄華団1枚につき、相手のコア3個以下のスピリット1体を破壊する」

 

 

デッキから破棄されたのは、2枚の鉄華団カード。よって破壊できる数も2となる。

 

 

「オルギアモードアイギス&パラディオンは、LV2の時、相手スピリット、ネクサス効果を受けない」

「なら、メティスとアイギス重装を破壊」

 

 

背部のスラスターを使い、飛び立ったルプスは、その勢いを利用し、ソードメイスでメティスとアイギス重装へ一閃。

 

破壊へ追い込む。

 

 

「鉄華団でオレのデッキを破棄したことにより、クーデリア&アトラの【神域】が誘発。1枚ドロー。オルギアモードアイギス&パラディオンのアタックは、ルプスでブロック」

 

 

ルプスが次に狙いを定めたのは、オルギアモードアイギス&パラディオン。

 

本体であろうアイギスを狙ってソードメイスを縦に振るうが、それをパラディオンが装着している槍で受け止める。今のうちにと、すかさずアイギスは指先の機関銃でルプスを狙い撃ちするが、その程度の威力ではルプスの装甲は貫けず。

 

 

「オマエ、なんでオレに鉄華団を渡したんだ」

 

 

ルプスとオルギアモードアイギス&パラディオンのBPバトルのさなか、オーカミがカグヅチに訊いた。

 

 

「なんでそんなこと気にする」

「オレの身体が欲しいなら、オレをバトスピで強くする理由なんてなかったはずだ」

 

 

オーカミの意見に、カグヅチは「なるほど」と言い返し、言葉を続ける。

 

 

「まぁそうだな。だがそれはオレの意思じゃない。確かにオレは恩師のシグマ先生に、オマエに鉄華団カードを渡してくれと頼んだ。だけどあの人は、オマエを世界平和のために利用しようと考え、バトルを強くする方針を取った。部下のアルファベットやブイにも協力させてな」

「じゃあ」

「あぁ。本来はもっと弱いオマエと戦う予定だったよ。もっとも、既にオレが勝ちそうだけどな。ほら、ルプス程度、捻り潰してやれ、オルギアモードアイギス&パラディオン!!」

 

 

ルプスのソードメイスによる一太刀を受けていたパラディオンは、槍から電流を流し、ルプスをショートさせると、アイギスがルプスを上へと蹴り飛ばす。

 

垂直落下して来たルプスをパラディオンがトドメと言わんばかりに己の槍でそれを串刺し。ルプスは爆散し、敗北を喫した。

 

 

「契約アイギスで追撃のアタック。効果でカウント+2。契約煌臨は無しだ」

「ライフで受ける」

 

 

〈ライフ2➡︎1〉鉄華オーカミ

 

 

契約アイギスの飛び蹴りが、オーカミのライフバリアをさらに砕き、残り1つへ追い込む。

 

 

「惜しいな、もうちょっとだったんだけど、ターンエンドだ」

手札:1

場:【[S.E.E.S.制式戦闘服]アイギス】LV1

【[イノセントアタック]アテナ】LV1

【[オルギアモード起動]アイギス&パラディオン】LV2(2)BP11000

バースト:【無】

カウント:【8】

 

 

超速攻デッキの特徴を極限まで活かし、オーカミのライフを風前の灯にまで追い詰めたカグヅチ。

 

飄々とした様子でターンをエンドを宣言し、オーカミの様子を伺う。

 

 

「惜しい、か」

「?」

「今のアタックステップでオレを仕留めきれなかったことを後悔するんだな」

 

 

苛烈な攻撃を凌ぎ切ったオーカミの反撃のターンが幕を開ける。

 

 

[ターン05]鉄華オーカミ

 

 

「メインステップ。ランドマン・ロディを2体召喚」

 

 

ー【ランドマン・ロディ】LV1(1)BP1000

 

ー【ランドマン・ロディ】LV1(1)BP1000

 

 

軽減シンボルを稼ぐ要因で呼び出したのは、丸みを帯びた小型モビルスピリット、ランドマン・ロディ。

 

直後にオーカミは本命となる1枚を手札から引き抜く。

 

 

「天空貫け、未来を紡げ。ガンダム・バルバトスルプス鉄華、LV2で召喚……!!」

 

 

ー【ガンダム・バルバトスルプス[鉄華団]】LV2(3)BP7000

 

 

吹き荒れる巨大な砂塵を斬り裂き、中より現れたのは、赤き眼を持つバルバトス、バルバトスルプス鉄華。

 

 

「召喚時効果。イノセントアタックアテナを消滅」

 

 

二振りの大剣を手に、縦横無尽にフィールドを駆け抜けるルプス鉄華。その間、すれ違いざまにイノセントアタックアテナを斬り伏せ、消滅させる。

 

 

「消滅させたことにより、トラッシュから3体目のランドマン・ロディを回収。クーデリア&アトラの効果でドロー後、これを召喚」

 

 

ー【ランドマン・ロディ】LV1(1)BP1000

 

 

ルプス鉄華の追加効果により、トラッシュから手札に回収されたランドマン・ロディが即座に召喚される。

 

 

「アタックステップの開始時。バルバトス第2形態をトラッシュから召喚」

 

 

ー【ガンダム・バルバトス[第2形態]】LV2(2)BP6000

 

 

「オルガの【神技】を発揮。トラッシュから三日月を出して、ルプス鉄華に合体」

 

 

ー【ガンダム・バルバトスルプス[鉄華団]+三日月・オーガス】LV2(3)BP13000

 

 

トラッシュから次々とカードを呼び戻して行くオーカミ。これで合体したルプス鉄華を中心に、合計5体の鉄華団スピリットが揃った。

 

 

「ルプス鉄華でアタック。効果で契約アイギスを消滅」

 

 

メインステップから継続しているルプス鉄華による攻撃。今度は契約アイギスをソードメイスで一閃し、破壊する。

 

 

「クーデリア&アトラでドロー。三日月の効果。オマエのリザーブのコア5個をトラッシュへ」

 

 

5体もの鉄華団が揃っているため、合わせて5個のコアが、カグヅチのリザーブを離れ、トラッシュへ送られる。

 

 

「フラッシュ。オルガの【神域】でドロー、クーデリア&アトラの【神域】でさらにドロー。ルプス鉄華の効果、トラッシュのカードを6枚除外し、回復。ライフを砕け」

「受けよう」

 

 

〈ライフ4➡︎2〉鉄華カグヅチ

 

 

ルプス鉄華は回復しつつ、二振りの大剣をエックスの字を描くように振い、カグヅチのライフを一気に2つ斬り裂く。

 

 

「もう一度頼む、ルプス鉄華。三日月の効果でまた5つ、オマエのリザーブのコアを消す」

 

 

二度目のルプス鉄華のアタック。三日月の効果により、カグヅチのコアは残り2つ。手札も残り1枚しかないため、オーカミの勝利はほぼ確実のものとなる。

 

 

「これで、オレの勝ちだ」

「……」

 

 

ルプス鉄華のトドメの一太刀がライフバリアに刺さる直前。何を思ったのか、カグヅチはニヤリと口角を上げて。

 

 

「あぁ、そうだな。流石は我が子だ」

「!」

「ライフで受けるよ」

 

 

〈ライフ2➡︎0〉鉄華カグヅチ

 

 

そのまま、ルプス鉄華の攻撃をライフで受け止めた。ライフバリアがガラス細工のように砕け散る音が、彼の敗北を告げる。

 

これにより、勝者は鉄華オーカミだ。見事、自分の肉体を死守して見せた。

 

しかし、カグヅチが最後に自分に向けて来た笑みが気がかりで。

 

 

「オマエ、なんで最後で笑ったんだ」

 

 

オーカミがカグヅチに訊いた。カグヅチは先程と同じかそれ以上の笑顔で返答する。

 

 

「そりゃオマエ、我が子の成長は嬉しいだろうよ。それが親ってもんさ」

「親らしいこと1つもしてないのに、よく言えるな」

「手厳しい。オマエのそう言うところは、母さんに似たのかもな」

 

 

カグヅチは僅かに間を開けてまた語り出す。

 

 

「そうさ。親らしいことなんて1つもできなかった。我が子が月王者だと知ってしまった時からな」

「……?」

「月王者と太陽王者の因縁の争い。その前に起こるとされるアルカナの再来。オレは、オマエをとにかく生き残らせるために必死だった」

「……」

 

 

なんだ、さっきまでと発言の趣旨が変わっているような。

 

オーカミはそんな気がした。そして、その違和感は決して気のせいではなく。

 

 

「!!」

 

 

突如、赤い三日月が消滅し、外がまるで折り紙のように変形し、剥がれて行く。

 

オーカミは直ぐにこの場所がもう時期消えてなくなってしまうのだと察した。

 

 

「どうやら、間に合ったみたいだな」

「なにが」

「オマエの魂さ。やっと肉体とリンクできた。よく聞け我が子よ。アルカナは強い。だが、オレの作った鉄華団なら勝てる。信じろ」

「何言って……!?」

 

 

刹那。カグヅチは有無を訊かずに、オーカミをなくなって行く世界から突き落とす。

 

 

「おい、何やって……!?」

「達者でな我が子よ。姉ちゃん、ヒメによろしく」

「馬鹿、オマエ」

 

 

オーカミはこの世界の外側、白い光と一体となり、消滅。

 

消え行く世界の中には、カグヅチ1人だけが残される結果となる。

 

 

「カグヅチよ、これで本当によかったのか」

 

 

突然現れた小さなバルバトスが、カグヅチに訊いた。

 

 

「月王者の意思。いや、もうオーカミの中に月王者はないから、その残滓か」

「オマエ、多分相当奴から嫌われてたぞ」

「だろうな。だけど、別れを惜しんで悲しませるより、嫌われて別れる方が、何かと都合がいいこともある。それに、最後に念願叶ってアイツとバトスピできたんだ。悔いはないさ」

 

 

直後にカグヅチは思い出したように「そう言えば」と言葉を続け、アイギスのカードを手に取る。

 

 

「今のうちに君も手放しておかないとな。別の世界のことを知られて、色々楽しかったよ」

「私の一番の大切は、貴方の側にいることであります」

「ここにいたら、オマエも消えちまうぞ。次はもっと良い男探しな。また我が子に会えたら、その時はよろしく頼む」

 

 

拒まれこそしたが、カグヅチはアイギスのカードをオーカミと同じ場所へ投げ捨てる。事実上、契約解除であると言える。アイギスはまた新たな主人を探す旅に出掛けることだろう。

 

 

「ありがとうな、月王者の意思よ。オレの望みを聞いてくれて」

 

 

カグヅチが小さなバルバトス、月王者の意思に告げた。

 

 

「例を言うのは余の方だ。余を模して作ったバルバトス、鉄華団。非常に愛着が湧いたぞ。2人でオーカミのバトルを見届け続けた日々。楽しかったな」

「あぁ。最後まで見られないのが、ちと残念だけど」

「右に同じだ」

「オマエは今、オレの左にいるけどな」

 

 

2人が思い出にふける中、この空間、世界は間もなく限界を迎えるのか、白い光が徐々に迫り、その強さ、輝きを増して行く。

 

 

「さらばだカグヅチ。太陽王者に負けこそしたが、今までで1番楽しい人生だった。500年後にまた会おう」

「バカ言え。いい加減天に召されてるっての。じゃあな月王者の意思」

 

 

 

じゃあな。

 

我が子。

 

オーカミ。

 

 

 

瞬間。世界は白い光で満たされ、完全に崩壊した。そこにはもう、月王者の意思も、鉄華カグヅチもいなくて………

 

 

 

******

 

 

「私は、今までなんのために生きて来たんだ。愛?友情?…それとも別の何か?…わからない、もう何もわからない」

 

 

舞台は、ノヴァ学園の屋上に戻る。

 

邪悪な影に包まれた空の下で、徳川フウは、自分の愚かな人生に絶望し、気が狂いかけていた。その膝には、己をトドメの一撃から救ってくれたブイ、芽座椎名が気を失い、倒れていて。

 

 

「これが芽座椎名の生命力。ライフ1つ分しか奪っていないと言うのに、なんて強いのでしょう」

 

 

コントの影から伸びる女性の形をした影のバケモノ、アルカナがそう呟いた。今まで幾度となく世界を救って来た英雄、芽座椎名の力を吸えて、大変ご満悦な様子。

 

 

「コント。奴からもっと力を奪うのです。もっと、もっと!!」

「了解。タナトス、ライフは0になったけど、もう一撃くらわせてやれ」

 

 

そんな椎名の生命力をさらに欲するアルカナの指示に、コントは何も疑うことなく二つ返事。

 

無慈悲にも、死神タナトスに指示を送る。タナトスは直刀を手に取り、それをフウに、引いては彼女の膝の上で寝ている椎名に向かって振り下ろす。

 

 

「!!」

 

 

しかし、直撃の直後。

 

その直刀による一撃を、黒き戦棍で阻むスピリットが1体。

 

バルバトス、その第4形態だ。

 

 

「バルバトス、まさか!?」

 

 

コントが察する。

 

そのまさかだ。彼の視線の先には、完全に復活を果たし、Bパッドでバルバトスを召喚した鉄華オーカミの姿が。

 

 

「コント。もうオマエに、コレ以上何も奪わせやしない」

「なんだその主人公みたいな登場の仕方は、鉄華オォォォカミィィィイ!!!」

 

 

コントの叫びが黒き空に響く。

 

戦う理由は違えど、一触即発の2人。その激しき熾烈なバトルスピリッツの火蓋は、まもなく切って落とされる。




次回、第94ターン「愚者、バルバトスとタナトス」


******

最終話まで、残り4話となりました!!

今回、本当はXXの方のオルギアモードを出したかったのですが、鉄華団側の除去力が高すぎて中々活躍できなかったので、耐性持ちの&パラディオンの方を採用しました。バトルも、もう1ターンくらい長引かせたかったのですが、アイギス側にあまり持久力がなくて断念。力及ばずでした。
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