全ての元凶であった学園長、アルカナは、鉄華オーカミが討ち倒し、戦いは終結。
劣等感を刺激され、暴走していたコントは無事オーカミとの友情を取り戻し、キング、フウもシグマによって一命を取り留め、ブイももちろん回復。皆、意外にも早く、それぞれの生活へと戻って行った。
それから、およそ数ヶ月。
******
「フウちゃん、本当にもう行っちゃうの?」
肌寒くなって来た季節。それとは裏腹に熱狂に包まれるノヴァ学園のバトルスタジアム、グランロロスタジアムを背景に、春神ライが、厚着を着込み、リュックを背負った徳川フウに訊いた。その直ぐ側には少しご機嫌斜めな鉄華オーカミも伺える。
「えぇ。もうリハビリも十分にやりましたし、それに、ここに居たら甘えたくなってしまいますから」
「え、誰に。わかった私だろ!!」
「バカ。違いますよ」
「そう言うウソでしょ、照れないでよ」
「ウソ付きキャラで定着させるのやめてくださらない?」
徳川フウの言う「甘えたくなってしまう」と言う対象は、実は彼女の祖母であったシグマのことだ。
「で、どこ行くの?」
またライがフウに訊いた。
「風の向くまま、気の向くまま。好き勝手に世界を渡り歩きますわ」
「しばらく会えないのかな」
「何せ、10年以上の贖罪をしに行くわけですからね」
フウの旅の目的は、己の罪の贖罪。再びライ達と面と向かって会えるようにするためだ。
「帰って来たら、またバトルしよ」
「貴女とはやらないわよ。うるさいし。私そう言うの嫌いなの」
「はいはい、そう言うウソでしょ。待ってるよ」
「全く、貴女と言う奴は。まぁいいでしょう」
過去の経験から、自分の言っていることのほとんどをウソだと認識するライに、フウは呆れるが、おもしろおかしくもあるのか、僅かに笑みを浮かべていた。
「キングと貴方の決勝戦を観れないのが残念ですわ、オーカミさん」
今度はフウがオーカミに訊いた。オーカミはもっと不機嫌になる。未だにフウが嫌いだからだ。
「それこそ嘘だろ。わかったから、もうどっか行けよ」
「ニッヒヒ。つれませんね」
「こらこらオーカ、そんなこと言うなよ」
ライがオーカミのご機嫌を直そうと、彼の肩に両手を置く。
それを見届けると、フウは彼らとは反対の方向に足を向けて。
「じゃあね皆さん。ご機嫌よう」
「うん、絶対また会おう、フウちゃん!!」
「えぇ……ライちゃん」
少しだけ照れくさそうに、フウはライのことを昔の呼び名で呼ぶと、すぐさまそっぽを向き、この場から去って行く。
「……そんじゃ行こうかオーカ」
「あぁ」
「決勝戦頑張って、オーカなら絶対勝てる。私が保証してあげるよ」
「うん」
フウを見届けると、2人は熱狂に包まれているグランロロスタジアムの中へと歩んで行く。
その間、ライはオーカミの腕に手を回した。
******
ノヴァ学園で行われる大きな大会、ノヴァリーグ。
学園の生徒らが、広大な学園敷地内でポイントを賭けて競い合う予選。その上位8名が決勝トーナメントで王者を決めると言うシンプルな構成の催しだ。
そして、今この時は、それの大詰めも大詰め。決勝トーナメントの決勝戦。対戦カードは、序列1位のキング王と、序列2位の鉄華オーカミ、学園最強の2人だ。
ノヴァ学園最大のバトルスタジアム、グランロロスタジアムで、学園中の生徒、他の観客達が、2人の登場を今か今かと待ち侘びていた。
「……」
そのスタジアムの入場口前でスタンバイしていたのは、紫色の長髪の美少年、キング王。
鉄華オーカミとの決戦に備え、己のデッキを再確認中である。
「デッキの調子はどうだ、神童」
彼に声を掛けたのは、マフラーを着こなす親友、サンドラ。
「神童はよせ。もうオレに太陽王者の力は無い。あの日、シグマがオレの命を救うため、月王者と共に切除してくれたからな」
「例え王者がなかろうと、オマエはオレが知る限り、史上最強のカードバトラーだ。勝てよ」
「あぁ。この一戦、これからのオレの人生を左右することになるだろう」
健闘を讃え合い、互いの拳を合わせるキングとサンドラ。
意を決したキングは、左腕に装着したBパッドを展開し、そこへ己の最強デッキを装填。そのまま入場口を出て、スタジアムの中心へと赴く。
ー……
一方、キングとは反対方向にある入場口では、オーカミも待機していた。その直ぐ側には、九日ヨッカとライもいる。
「お、いよいよ現チャンピオン登場って感じだな」
オーカミの兄貴分、九日ヨッカが、キングの入場で、より熱い熱狂に包まれたスタジアムを確認しながら、そう言った。
「ここまで来たなら、必ず勝てよ、兄弟」
「うん」
ヨッカとオーカミもまた、互いの拳を合わせ、健闘を讃え合う。
「あの、さ、オーカ」
「ん?」
「その、あれだ。今日のバトルに勝ったら、その、あれだよあれ」
「どれ?」
ライがオーカミに話し掛けるが、何故だか顔を赤らめていて、とても話し方がぎこちない。
「あれと言ったらあれだよ、ほら、ご、ご褒美、的な?」
「ご褒美?……なんの」
「なんのって、そりゃ」
「ったく、焦れってぇな。好きなら好きって言えよ。そんでチューの1つや2つくらいしろ」
「ちょ、ヨッカさん!?」
ライの顔が羞恥心で爆発する。自分のあまりにも空気の読めない発言に、流石に自覚したか、ヨッカは「あ、ごめん」と軽い謝罪の一言をこぼす。
「あ、いや違うんだよオーカ。いや、違くはないけど、説明むず」
ライがヨッカの失態を誤魔化そうとした、次の瞬間だった。
「……」
「〜〜!!」
ライの唇に、オーカミの唇が当たった。しかも、恋愛的なものにはほとんど無頓着そうな、あのオーカミの方からだ。
彼の思わぬ行動に、ライはもちろん、ヨッカでさえ困惑する。
「ん、これでいいの?」
「え、あぁ、こ、こ、こここここれでいい、かな〜」
「そ。じゃ、オレ行くね」
さも何事もなかったかのように、オーカミはBパッドを左腕に装着し、展開。そこへ鉄華団のデッキを装填すると、キングと同じように、スタジアムの中央へと歩みを始めた。
「や、やっぱすげーよ、オーカは。ライ、生きてるか?」
「や」
「や?」
「やばい。私今、人生で1番幸せかも」
「よかったな」
相変わらず表情からは何も読み取れないが、オーカミからの明らかな愛情表現に、ライは感極まっていた。
だがしかし、オーカミにはずっと好意を寄せ続けて来たのだから、無理もない。
「これで私、今日から鉄華ライになるんだ。どうしよう、今のうちに子供の数考えておかないと。私はできれば男の子1人、女の子1人の2人とかがいいけど、これはオーカの意見も訊かないと行けないし。でも名前候補くらいはいい気がする!!…いや、やっぱ名前も一緒に考えたい。新婚旅行も行きたい〜〜!!…私は無難にハワイとかがいいな〜〜、でもオーカのことだから、「旅行なんてそこら辺でいいだろ」とか言いそう。いや待ってそれホントに絶対言うやつじゃん。その時はバトル大会があるとか適当にウソついて無理矢理にでも連れて行こう。うん、それが絶対いいわ。それからそれから〜……」
「相手はバトルスピリッツの歴史史上最強のカードバトラーと言われる存在。だがオマエなら勝てる。頑張れよ、オーカ」
オーカミの奇行によって、完全に別の世界に行ってしまったライをよそに、ヨッカは入場口と言う最高の特等席で、弟分の試合を観戦すべく、腕を組んで見守る。
ー……
「会場のみんな!!…めっちゃ待たせたね。ノヴァリーグ決勝戦の時間だよ。司会進行はこの私、ブイがお届け」
スタジアムの中央近辺にて、マイクを片手に持った、サングラスの女性。学園の教師でもあるブイだ。
彼女は早速と言わんばかりに、今回の対戦カードを発表して行く。
「さぁさぁ、今年のノヴァリーグ決勝戦。勝ち上がって来たのはこの2人。先ずはこの学園どころか、もはや世界で一番強いカードバトラー、絶対王者、キング王!!」
歩みを進めていたキングが、スタジアムのバトル場で立ち止まり、スポットライトが当たると、一段と力強い歓声が響き渡る。
「2人目は、入学後、パワーフォース達と熾烈な序列争いを繰り広げた、学園切っての挑戦者。その甲斐あって、今は序列2位。最後の頂点を倒すために、今日もやって来た、鉄華オーカミ!!」
歓声の声が、スタジアム中央に密集して行く中、オーカミも現れ、キングと対面する。
「キング」
「鉄華オーカミ」
今から四度目となるバトルスピリッツを行うことになる2人。互いに鋭い視線を送る。
だが。
「先ずは、学園の生徒、いや、全世界の人々を代表して礼を言わせてくれ。アルカナを倒してくれて、感謝する」
「……」
突然キングがオーカミに頭を下げたことで、何も事情を知らない観客達がどよめく。
「アイツは私が呼んだ災厄。本当なら、私がこの手で葬るべきだった」
「できたの?」
「……」
「義母さんだったんだろ?」
アルカナを倒してくれたオーカミに対して、キングは感謝と後悔、2つの感情が渦巻いていた。
ただ、オーカミの言う通り、仮に戦っていたのがキングだったとして、勝っていたかは怪しい。アルカナはキングの義理の母親として接していた時間が長かったが故に、戦っていたら、その隙を突かれて負けていたかもしれないからだ。
「別に誰がどうとか、気にしなくてもいいんじゃない?…今回のはアニキが事故って苛立ってたオレも悪いし」
「そう言うわけにはいかない。第一、オレは本気で貴様が世界を破滅に導く存在だと思ってキツく当たっていたんだぞ。何か償いを」
あの序列1位。学園の支配者キング王が、下げた頭を上げながら、非常に申し訳なさそうな表情を見せる。
「姉ちゃんが言ってた、明日は明日の風が吹く。昨日の風は吹き抜ける」
「!」
「アニキは無事だったし、オレはもうどうでもいいよ。どうしても償いたいって言うなら、このバトル、全力で来い」
「……」
鉄華オーカミとは、ここまで気持ちの良い男だったのか。
と、キングは胸中に感想を抱く。いや、本当は既に知っていた。知っていたが、彼の根底に根付いていた使命がそれを否定し続けていた。
だが、今は違う。
「全力で来ないわけがないだろう。私を誰だと思っている」
「ふ。らしくなって来たな。今日がオマエの敗北記念日だ。覚悟しろよ」
「二度あることは三度ある。ならば四度目も必然。勝利とは常に、この私の手の中にあるものだ。行くぞ」
「あぁ、バトル開始だ」
……ゲートオープン、界放!!
少々ごたつきこそしたが、鉄華オーカミとキング王、2人は最高のコンディションでバトル開始のコール。
大熱狂の中、遂に最後のバトルスピリッツの火蓋が切って落とされる。
先攻は……
「オマエが先攻で来いよ」
「なに?」
前のバトルとは打って変わって、今度はオーカミが、キングに先攻で来いと催促した。
「今日のデッキ、契約創界神なんだろ?…契約は初手確定。ネクサスなら、本当は先に配置できる、先攻が有利のデッキなんじゃないのか?」
「……」
キングは無言だが、オーカミの言っていることは正しい。
今日のキングのデッキは契約創界神のブラフマーデッキ。後攻有利のベビーゴジラのデッキとは対照的な、先攻有利のデッキだ。
「貴様のデッキも先攻有利のデッキのはず。何故だ。いや、訊くまでもないか」
「あぁ。わかったならさっさと来いよ、キング。このバトル、とことん楽しもう」
「よかろう。一瞬で消し炭にしてくれる。私のターンだ」
先攻キング、後攻オーカミでバトルが始まる。先攻を譲られたキングは、オーカミに力の差を思い知らせるべく、ターンを進めて行く。
[ターン01]キング王
「メインステップ。契約創界神ネクサス、ブラフマーを配置」
ー【創聖の契約神ブラフマー】LV1
彼の背後に出現したのは、インドを思わせる赤い服装に身を包んだ青年。その正体は神、ブラフマー。ゴジラをも操る偉大なる存在。
「【真・神託】により、ブラフマーにコア+3。バーストをセット。ブラフマーの【契約技】を発揮、私のカウントを+2」
キングの伏せたバースト。それは彼のカウントが増えた瞬間にすぐさま蠢き、反転して。
「私のカウントが増えたことにより、バースト発動。エンシェントドラゴン・フェブラーニ」
「!」
「さらに手札から提示、ラルヴァンダード。先ずはこれを召喚」
ー【三賢神ラルヴァンダード】LV1(1)BP3000
「効果で1コアブースト&1ドロー。そしてフェブラーニの効果を解決。2枚ドローし、自身を召喚する」
ー【エンシェントドラゴン・フェブラーニ】LV1(1)BP5000
「古竜スピリットを召喚したことにより、ブラフマーにコア+1」
黄金の装飾を纏った、三賢神の1人、ラルヴァンダードと、古より生ける龍、フェブラーニが、僅か1ターンにしてキングのフィールドに集結。
オマケのように3ドローと1コアブーストまで行っており、まるで隙がない。流石はキング王と言ったところか。
「さらに神話ブレイヴ、大神剣アラマンディーを召喚し、ブラフマーに合体。不足コストの確保により、フェブラーニとラルヴァンダードは消滅」
ー【創聖の契約神ブラフマー+大神剣アラマンディー】LV1(2)
「神話ブレイヴもまた、ブラフマーの【真・神託】の条件の1つ。よって再びコア+1」
キングは、呼び出した2体を早々に贄とし、色鮮やかな輝きを放つ神剣、アラマンディーを召喚。
アラマンディーは吸い寄せられるように、ブラフマーの手へと収まる。
「いきなり飛ばして来たな」
「言ったはずだ。一瞬で消し炭にしてくれるとな。ターンエンド」
手札:4
場:【創聖の契約神ブラフマー+大神剣アラマンディー】LV1(3)
バースト:【無】
カウント:【2】
僅か1ターン目にして大量のアドバンテージを獲得したキング。一度エンドを宣言し、オーカミへターンを譲渡する。
「オレのターンだ」
キングの敗北記念日を作るべく、オーカミは巡って来たターンを進めて行く。
[ターン02]鉄華オーカミ
「メインステップ。クーデリア&アトラを配置」
ー【クーデリア&アトラ】LV1
オーカミの初手も創界神ネクサス。ドローと回復の効果で幾度となく彼の勝利に貢献して来た、クーデリア&アトラだ。神託により、その上にコアが3つ+される。
「バーストをセットして、ターンエンド」
手札:3
場:【クーデリア&アトラ】LV2(3)
バースト:【有】
キングと比べ、かなり大人しいターンを送ったオーカミ。その分伏せたバーストカードの存在感が際立つ。
「バースト1つで私とのアドバンテージ差を覆せるか?」
「開けばわかる。さっさと来いよ」
自信満々のオーカミ。キングと互いにニヤリと笑みを浮かべる。
これまでだと考えられない程にバトルスピリッツを楽しむ2人。ターンは2周目、キングの第3ターン目に突入する。
[ターン03]キング王
「メインステップ。ゴジラ1954と六剣輪宝を召喚し、合体」
ー【ゴジラ(1954)+六剣輪宝】LV2(3S)BP9000
キングはここで初めてゴジラを召喚。比較的シャープな形状をしたゴジラ、ゴジラ1954がフィールドに出現すると、それの肩に六方向に伸びた剣、六剣輪宝が装着される。
「さらにブラフマーの【契約技】を発揮。カウント+2。トークン、リグ・アバタードラゴンを出す」
ー【リグ・アバタードラゴン】LV1(1)BP4000
キングのカウントが4に到達すると同時に、ブラフマーが掌の炎で、4つの腕を持つ小型の赤いドラゴン、リグ・アバタードラゴンを生成。
「アタックステップ。ゴジラ1954。奴に裁きの炎を!!」
フィールドに2体のスピリットを従えたところで、キングはこのバトル初のアタックステップへと直行。
この時の解決する効果の量は凄まじくて。
「合体している六剣輪宝の効果、1枚ドロー。ブラフマーの【契約域】、古竜がアタックした時、それのBPを+5000。1枚ドロー。ゴジラ1954LV2の効果。1コアブーストし、ターンに一度回復」
ドロー、コアブースト、回復。
バトルスピリッツにおいて取れるアドバンテージのほとんどを次から次へと確保していくキング。しかもその戦術が速攻なのも強さに拍車を掛けている。
「もう1つ、ゴジラ1954のLV1からの効果。カウント+1。デッキ上から3枚のカードをオープンし、その中のゴジラを1枚手札へ。私は、このカード、ゴジラ・アースを手札へ加える」
「!!」
オーカミがキングとの三度目のバトルで大敗を喫した、最も大きな要因、ゴジラ・アースが、キングの手札へと加えられた。
その存在は、オーカミにとってかなり大きなプレッシャーとなる。
「来たなゴジラ・アース。なら、出される前に終わらせるだけだ」
「その通り。出す前に終わる。貴様の四度目の敗北でな」
「ゴジラ1954のアタックはライフで受ける」
〈ライフ5➡︎4〉鉄華オーカミ
ゴジラ1954の鋭利な爪による一撃が、オーカミのライフバリアを1つ引き裂く。
しかしその瞬間、オーカミの伏せていたバーストカードが輝いて。
「ライフ減少後のバースト発動、ガンダム・バエル」
「!」
「LV1で召喚」
ー【ガンダム・バエル】LV1(1)BP8000
オーカミのフィールドに舞い降りる白い装甲のモビルスピリット、バエル。
鉄華団ではないが、その効果は鉄華団とかなりの高相性を誇る。
「召喚時効果。互いのデッキを3枚ずつオープンし、その中のコスト6以下の紫スピリット、ブレイヴをノーコスト召喚できる」
オーカミとキングのデッキトップが3枚ずつオープン。ほとんどが対象外のカードであるキングは全てハズレだったが……
「やっぱりな。不思議と今日は負ける気がしなかったんだ。ルプス鉄華とグシオンリベイクを召喚」
「なに!?」
ー【ガンダム・バルバトスルプス[鉄華団]】LV1(1)BP4000
ー【ガンダム・グシオンリベイク】LV1(1)BP6000
天に右掌を掲げるバエル。その元に集ったのは、赤き眼を持つバルバトスルプス鉄華と、茶色く重厚な装甲を持つ守護神、グシオンリベイク。
2体とも強力な召喚時効果を持つスピリットだ。
「ルプス鉄華とグシオンリベイクの召喚時効果を発揮」
「私のターンなら、順番は私が決められる。ルプス鉄華から使え」
「ルプス鉄華の効果、デッキ2枚を破棄。鉄華団があれば、相手フィールドのコア2個をリザーブへ」
先にルプス鉄華の召喚時効果が解決。さも当然かのように鉄華団カードが破棄され、効果は有効となる。
「ゴジラ1954から2つ取り除く。クーデリア&アトラの【神域】を発揮。鉄華団の効果でデッキを破棄した時、ドロー。さらにグシオンリベイクの召喚時効果。もう一度ゴジラ1954から2個のコアをリザーブに置き、消滅」
ルプス鉄華の二振りの大剣による連撃、グシオンリベイクのハルバードによる強撃が、ゴジラ1954に炸裂。ゴジラ1954は、たちまち消滅して行き、主人を失った六剣輪宝が、重力に従って大地へと突き刺さる。
「どうだキング」
「運がいいな。だがその程度では私から勝利は奪えない。リグ・アバタードラゴンでアタック。その効果でブラフマーにコア+1。ブラフマーの【契約域】でBP+5000、1ドロー」
残ったリグ・アバタードラゴンへアタックの指示を送り、それによって誘発する効果を解決した後、キングは手札から1枚のカードを引き抜く。
「ボールボルボルボル!!…キング、貴様は最強のカードバトラー、鉄華オーカミなんざ潰しちまえ!!」
グランロロスタジアムの観客席のどこかで、高身長でモヒカン頭、老け顔が特徴的な少年、元パワーフォースの甲子園ダホウの声が聞こえて来る。
キングは一瞥もすることなく、引き抜いたカードをBパッドへと叩きつけた。
「フラッシュ【顕現】を発揮。ソウルコアとブラフマーのコア1つをコストに、零を創造せし龍、創聖神龍ジェネレイタードラゴン・ゼロをLV2で顕現……!!」
ー【創聖神龍ジェネレイタードラゴン・ゼロ〈R〉】LV2(2)BP10000
フィールドを焼き尽くす神聖なる炎。その中より創られたのは、赤い剣を所持する4本腕の神龍、ジェネレイタードラゴン・ゼロ。
「くっ……」
「コイツの効果は既に知っているだろう。ターンに一度、カウント3につき1体のリグ・アバタードラゴンを出す」
ー【リグ・アバタードラゴン】LV1(1)BP4000
「その後LV2の効果、トークンが出た時、その数1つにつき、BP15000以下のスピリット1体を破壊する。ルプス鉄華を焼き尽くせ」
ジェネレイタードラゴン・ゼロは、手に持つ炎纏う刃の切先から、リグ・アバタードラゴンを1体生成。
そのままそれを振い、オーカミのフィールドにいるルプス鉄華を斬りつけ、焼き尽くした。
「再び形成逆転。キングに死角はない」
スタジアムの入場口前でキングのバトルを見守っていた新城サンドラが、笑みを浮かべながらそう呟いた。
「敵に死角がないなら作るのが、我が好敵手、鉄華オーカミだ」
会場のどこかにいる獅堂レオンが、ドヤ顔で嬉しそうにそう告げる。偶然にも遠く離れているサンドラと会話が成立した。
「オレの鉄華団がフィールドを離れた時、モビルスピリット、フラウロスの効果を発揮」
「!」
「コイツをノーコストで呼ぶ」
ー【ガンダム・フラウロス[流星号]】LV2(3)BP10000
「LV2だ。不足コストはバエルとグシオンリベイクから全て取り除く」
「なに、自らスピリットの数を減らすだと?」
流星の如くオーカミのフィールドへと降って来たのは、マゼンタカラーのモビルスピリット、フラウロス。
その際、バエルとグシオンリベイクが消滅。代わりにフラウロスのLVは2となる。
「さらにノルバ・シノの効果。ノーコスト召喚し、フラウロスに合体。そして、コア2個以下のスピリット、ジェネレイタードラゴン・ゼロを破壊」
ー【ガンダム・フラウロス[流星号]+ノルバ・シノ】LV2(3)BP14000
怒涛の誘発連打。オーカミはこのタイミングでパイロットブレイヴも召喚し、合体スピリットを作成する。
フィールドでは、フラウロスが背部のレールガンを掃射。撃ち出された弾丸は、ジェネレイタードラゴン・ゼロを貫き、爆散させた。
「やるな」
「ここからだ。リグ・アバタードラゴンのアタックは、フラウロスでブロック。合体しているシノの効果を発揮。手札1枚を破棄、デッキから2枚ドロー。フラウロスのブロック時効果、コア2個以下のスピリット、バトルしていない方のリグ・アバタードラゴンを破壊」
無謀にも突撃して来たリグ・アバタードラゴン。フラウロスはそれともう1体のリグ・アバタードラゴンをまとめて両手のマシンガンの弾丸で撃ち抜き、撃破。
オマケにシノの効果で、オーカミの手札は3枚まで回復。
「さらに、バトル終了時、オレの手札の鉄華団3枚を破棄することで、オマエのネクサス、創界神ネクサス1つを破壊する」
「なに!?」
「3枚の手札を捨て、ブラフマーを破壊!!」
フラウロスは、両手のマシンガン、背部のレールガンを全弾掃射。キングの背後で大神剣アラマンディーを構えているブラフマーを蜂の巣にし、粉砕。
「ブラフマーは契約カード。魂状態として場に留まる。合体していたアラマンディーも、スピリット状態として場に残る」
爆風によって吹き飛んで来たアラマンディーが大地に突き刺さる。破壊されたはずのブラフマーも色素を失った状態で場に残っていた。
「契約創界神ネクサスは、魂状態の時、自分のメインステップに配置できる。故に、次の私のターンで、ブラフマーは即座に復活。貴様はただ、無駄に3枚もの手札を投げ捨てただけだ」
「だけど、ブラフマーが一瞬でもいなくなることで、オマエのカウントは伸び辛くなる」
「狙いはゴジラ・アースの召喚の遅延か」
「そう言うことだ」
オーカミがわざわざ3枚もの手札を捨ててまでブラフマーを一時的に退かしたのは、ゴジラ・アースの召喚を遅らせるため。
だけでなく、実はもう1つ理由が存在し……
「ついでにトークンがしばらく出なくなる。これで次のオレのターンで一気に決められる」
「なめられたモノだ。ブラフマーがいなくなった程度で落ちる私ではない。ターンエンド」
手札:6
場:【大神剣アラマンディー】LV1
【六剣輪宝】LV1
【創聖の契約者ブラフマー】(魂状態)
バースト:【無】
カウント:【5】
僅か3ターンという短いターン数で、ハイスピード且つ熾烈なバトルを繰り広げる2人。
さらに沸き上がる歓声の中、オーカミの二度目のターンが幕を開ける。
[ターン04]鉄華オーカミ
「メインステップ。漏影を召喚」
ー【漏影】LV1(1)BP3000
オーカミはドローステップにてデッキトップからドローしたカードをそのまま召喚。バスターソードを持つモビルスピリット、漏影だ。
「召喚時効果。オレのデッキを3枚破棄、その後トラッシュから鉄華団カード、オルガを手札に。クーデリア&アトラの【神域】の効果で1枚ドロー。回収したオルガをそのまま配置」
ー【オルガ・イツカ】LV1
鉄華団カード達の効果を巧みに使い、オーカミはオルガのカードを回収しつつ、1枚のカードをドロー。
オルガが即配置されたことにより、鉄華団専用の2種の創界神ネクサスが揃う。
「神託を発揮。オルガにコア+3。アタックステップ、フラウロスでアタック。合体しているシノの効果、手札1枚を破棄し、2枚ドロー。フラウロスの効果で六剣輪宝を破壊」
フラウロスが、今一度マシンガンの銃口をキングのフィールドへ向ける。大地に突き刺さった六剣輪宝を撃ち抜き、破壊した。
「フラッシュ、オルガの【神域】を発揮。デッキ上3枚を破棄し、1枚ドロー。クーデリア&アトラの【神域】も発揮。1枚ドロー」
「0だった手札が4枚に復活しただと」
鉄華団カード達の結束により、オーカミの手札は一気に回復。それと同時に、フラウロスが、マシンガンの銃口を、今度はキングのライフバリアへと向けて。
「フラウロスは合体によりダブルシンボル。ライフを2つもらう」
「フラッシュマジック、ブリザードウォールLT」
「!!」
「このターン、私のライフはアタックによって1つしか減らない。フラウロスのアタックは、ライフで受ける」
〈ライフ5➡︎4〉キング王
フラウロスの銃撃は、キングの放った白マジック、ブリザードウォールLTの効果によって、その威力が緩和。
本来2つ砕かれていたはずのライフバリアは、1つのみ砕かれる。
「ブリザードウォールLTを手札から使った」
「あぁ、すなわち今はトラッシュにいる。これで私は次の貴様のターンにも、トラッシュからブリザードウォールLTを使用できる」
「……」
自分のライフ減少時に、トラッシュから効果を使用できるブリザードウォールLT。
オーカミが忘れもしない、惜敗したキングとの三度目のバトル。その時もこのカードによって勝利への道筋を阻まれた。彼にとっては、ある意味因縁のカードであると言える。
「ターンエンド」
手札:4
場:【ガンダム・フラウロス[流星号]+ノルバ・シノ】LV2
【漏影】LV1
【オルガ・イツカ】LV2(3)
【クーデリア&アトラ】LV2(7)
バースト:【無】
ブリザードウォールLTによって、やることを失ったオーカミは、そのままターンエンドを宣言。
バトルは3周目。キングのターンへと突入する。
「過去一で最高のバトルですね」
サングラスを掛けた青年、コードネーム、アルファベットが、横にいる上司、若々しい老婆、シグマに言った。
「カッカッカ。ひょっとしたらアタシらは、今この瞬間のためだけに、鉄華団をあの赤髪小僧に渡して来たのかもしれないねぇ」
タバコの煙を吐き出しながら、シグマはアルファベットに返答する。
「世界を救うだけじゃ飽き足らず、今度は世界一になろうとしてるのかい?…流石はアンタの息子だよカグヅチ。やること、成そうとすることが、一々無駄にデカい」
シグマは、今は亡きカグヅチに対して、オーカミが強くなったことを遠回しに伝えた。
[ターン05]キング王
「メインステップ。魂状態のブラフマーを再召喚。【真・神託】により、コア+3。さらにフィールドのアラマンディーを合体」
ー【創聖の契約神ブラフマー+大神剣アラマンディー】LV2(3)
迎えたキングの第5ターン。彼は早々にブラフマーを復活させ、その手にアラマンディーを装備させる。
「鉄華オーカミ。貴様の強さは賞賛に値する。これまで、ダホウやレオン、サンドラまでもが貴様に敗北したのが頷ける」
「急になに」
「私は己の使命のため、自らを律し、バトルに励んで来た。だが、今貴様とこうして対面して気がついたよ。バトルスピリッツとは、本来こんなに楽しいモノだったのだな」
「今さらだな」
「フッ。感謝するぞ、鉄華オーカミ」
アルカナによって、自分のカードで両親を殺してしまった思い込まされた幼少期。月王者を倒すと言う使命に従って生きて来た少年期。
これまでのキングにとって、バトルスピリッツは、戦うための手段、武器でしかなかった。
しかし、オーカミとの出会いが、彼に新たな感情を芽生えさせた。彼は今、生まれて初めて、バトルスピリッツを心の底から楽しんでいる。
「メインステップを続行。ゴジラ・フィリウスを召喚」
ー【ゴジラ・フィリウス】LV1(1)BP4000
「召喚時効果。カウント+1。ボイドからコア1つをブースト」
バトルを再開したキングが召喚したのは、他よりも一回り大きな体格を有するゴジラ、ゴジラ・フィリウス。
その効果により、カウント+とコアブーストが行われる。
「続けて2体目のフィリウス。召喚時効果、カウント+1。2体のフィリウスに1つずつコアブースト。さらに3体目。効果でカウント+1、2つコアブースト」
ー【ゴジラ・フィリウス】LV1(2)BP4000
ー【ゴジラ・フィリウス】LV1(2)BP4000
山脈のように連なり、キングのフィールドに並ぶフィリウス。その効果でキングに大量のカウントとコアを齎す。
「ブラフマーの【契約技】を発揮。カウント+2。リグ・アバタードラゴンを出す」
ー【リグ・アバタードラゴン】LV1(1)BP4000
ブラフマーの炎が、リグ・アバタードラゴンを生み出す。
これでキングのカウントは10。大抵の契約デッキであれば、ほとんどのプレイを可能にできる領域にまで到達した。
が、そのカウントを持っても、史上最強のスピリット、ゴジラ・アースの召喚は未だ不可能。
「次のオレのターンをトラッシュのブリザードウォールLTで凌いで、返しのターンで、ゴジラ・アースを召喚して勝つ算段か」
オーカミがそう推測すると、キングはクールな表情を保ちつつも、ニヤリと笑みを浮かべて見せ。
「そんな生温い戦術を私が使うと思うか?」
「!」
「何度も言わせるな。一瞬で消し炭にしてくれる。アタックステップ、1体目のゴジラ・フィリウスでアタック。ブラフマーの【契約域】で1ドロー」
そう宣言すると、キングはフィリウスへアタックの指示。
それを聞き入れた、1体目のフィリウスは、咆哮を張り上げると、オーカミのライフバリア目掛けて走り出した。
「フラッシュ、クーデリア&アトラの【神技】」
「!」
「トラッシュの鉄華団1枚をデッキ下に戻し、フラウロスを回復。ブロックだ」
フィリウスの突進を、フラウロスが身体を張って食い止める。
「ブロック時効果、コア2個以下の相手スピリット、リグ・アバタードラゴンを破壊」
フラウロスは、フィリウスと取っ組み合いながらも、背面のレールガンでリグ・アバタードラゴンを狙い撃ち。見事に撃ち抜いて爆散させて見せる。
「シノの効果。手札1枚を破棄することで、2枚ドロー。ブラフマーの力で強化されていても、BPはフラウロスの方が上だ」
取っ組み合いの末、バトルもフラウロスの勝利。フィリウスを大地へと叩きつけ、爆発させた。
オーカミは、フラウロスを起点に、順調にアドバンテージ差を埋めていく。
「2体目のフィリウスでアタック。ブラフマーの【契約域】で1ドロー」
「それは漏影でブロック」
2体目のフィリウスが突撃。オーカミのフィールドにいる漏影を突き飛ばし、爆散させる。
その光景を目に映すなり、キングは再び口角を上げて。
「フッ。ようやく隙を見せたな」
「なに」
「この瞬間、フィリウスのもう1つの効果を発揮。アタック終了時か、効果で破壊された時、手札にあるゴジラ・アースを、コスト-10して召喚できる」
「ッ……!?」
鳥肌が立った。
オーカミは、一瞬でキングがやろうとしていたことを理解する。
「ゴジラ・アースの本来のコストは30。-10でコスト20となる。これならば、カウント10で十分」
「くっ」
「いくら貴様が策を弄したところで、勝者が変わることはない……!!」
そう告げると、キングは1枚のカードをBパッドへと叩きつける。
「地球と共に生まれしスピリットの王よ、今こそ森羅万象をも焼き尽くし、絶対なる勝利を、我に誓え。君臨せよ。ゴジラ・アァァァァスッッ!!」
グランロロスタジアムの外で起こったのは、まるで惑星誕生の際に起こると言われる大爆発、ビックバン。
その大爆発の後、蔓延する爆煙の中から、広大なグランロロスタジアムよりもさらに巨大なスピリットの影が、オーカミとフラウロスを覗き込む。
ー【ゴジラ・アース】LV3(4)BP50000
ゴジラ・アース。またの名を史上最強のスピリット。
キングは、コレの召喚をオーカミに妨害されていたにもかかわらず、他のカード効果を巧みに操り、それをより早いターンに召喚して見せた。
「出て来たか、ゴジラ・アース。ならしょうがない。今度こそ、倒してやる」
「ヤケになったか?…やれるものなら、やって見るがいい」
互いにライフ4で迎えた最終バトル。
果たして勝利を手にするのはどちらか。
そして、その先で待ち受ける未来は……
次回、最終ターン「ライズ・ユア・フラッグ」
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次回、遂に最終回!!
気合い入れて執筆いたしますので、是非お楽しみに!!