3000年越しに君へ愛(激重)をお届けに参りました   作:2Nok_969633

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魔法とは身体における魂の欠片 魔力とは魂の痕跡 魂との結合それ即ち愛をも超えるSE

 

 

 

 ふう…やはり暑いとはいえ新鮮な空気は悪くない。

 身体中に汗が吹き出る。クタクタになったシャツは魔術回路を使った事もあって疲労感も重なり余計に重く感じてしまう。魔力もハンカチも無くしてしまうとはこの世界が、「思い知れ己の怠惰を」と情け容赦なく訴えかけているようだ。

 しかし何故ハンカチを無くしたのか未だ疑問が残る。あの少女には渡していない。頬を拭き終わった後、確かに仕舞ったはずなんだが…消えたハンカチ騒動の謎は解けそうに無い。解こうとしたところで何になるというのだ。たかがハンカチだし。

 

 小さな事でクヨクヨするより目の前にあるプリンを食べて落ち着こうではないか。そうだ、そうしよう。そう思いながら開いたドアは思いの外軽く感じた。

 

 「お望みの物を買って参りました。愛しき我が妹よ。」

 

 「チッ。そんなことはどうでもいいっての。早く食べたいから出して、兄貴。」

 

 へーい、と気軽い返事をしつつ渡す。少し機嫌が悪いのか俺を睨みながらもプリンから目を離そうとしない妹はやはり可愛らしい。一緒に食べよう、とテーブルへと誘い、いざ実食の時。いただきます。さて、お味の方は…ほう、ほほーう。

 

 窓からの日差しは少しばかりか傾き、きっと外に住む生き物たちは狭い暗がりから明るみに誘われている事だろう。花々は華やかな色と香りで自らを誘っているに違いない。そんな甘い蜜に誘惑される哀れな私は優しき希望に満ちた柔らかな塊を欲望のままに口に含む。ひと息に飲み干してしまうような豊麗な味はみるみる疲労を和らいで脳髄を幸福へと導いて、ここにあるのは全てを凌駕し天使の唇から歌われた歓喜の歌で満ち満ちているかの如くまろやかなとろみが…。

 

 「…。…貴!兄貴!」

 

 は?!いかんいかん、この魂には刺激が強すぎたみたいだ。なんだこの味は!舌の上で絡み合うHarmony‼︎…なんて、悪ふざけは良くない。いつも通り美味であるが故に偶に食べた時、異様に美味しく感じる時…無い?あの感覚に襲われたわ。こいつ(プリン)、やりおる。

 さて、妹が呼んでいるがどうしたのやら。まさか、口に合わなかったとか?それとも選出ミス?

 

 「な、何?どしたん。」

 

 「…ごめん、今更なんだけど汗臭い。丁度風呂沸かしてたから入って。」

 

 「うぇっ⁈唐突すぎて普通にショック。そんなに?」

 

 「先に言っておけば良かった。ごめん、ちょっと限界。プリンは停止魔法でそのままにしておくからさ。」

 

 「わ、分かった。とりあえず準備してくれた心遣いと今までの匂いで奪われた体力をお詫びとして『ヒール』で回復する?そんな必要ないかあははは!」

 

 「余計な事言ってないではよ洗ってこいバカ兄貴‼︎後、あとであたしも入るからそのままでよろしく。」

 

 「冗談だ。洗ってくるからそっちは停止魔法をよろしく。」

 

 「それで良いのよ。ったく。」

 

 …ごく自然に立ち去ってはいるが、内心身体中に剣で突き刺され続けたような感覚。…これはこれでアリなのでは?罵ってくれる妹に興奮する俺…それあるー!

 まあ実際気遣っての事だと考えればチョロイもんさ。

 

 お湯に混じって流れてくるしょっぱい何かなんて気にしてないんだからね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同刻。魔王城跡地、観測不可の領域にて。

 昔建てられていた城の面影は無い。あるのは空間、そして変哲もないただの鍵穴だけ。

 限られた存在でしか見る事も入る事もできない、穢れなき浄化された世界。この世の理から隔離された『聖域』への入り口。

 少女は触れる。

 鐘が、鳴った。

 すると彼女を招き入れるかのように、目の前に広がる鮮やかな緑と青が触れ合い重なり合う地平線が少女を別次元へと誘う。但しそれはあまりにも無色の大地、完璧なまでに完成された世界とでも呼ぶべきか。透明な異空間だった美しき秩序ある混沌であった世界に描かれた、不秩序の調和という協定の証として描かれた心象風景そのもの。

 かつてここで起きた地獄の具現化はまるで無かったかのように優しく穏やかな世界で少女『魔王 オルタ』は静かに、かつ透き通るような声を響かせる。

 

 - 召集 - と。

 

 次の瞬間。音も気配もなく可憐な少女から放たれる、内に秘められた超越性は只者では無いと感じさせるには十分すぎるほど。自然と流れる風自体が、まるで異物とでも呼ばれてしまうほどに漂う圧迫感は普通の人間では到底耐えることなどできないだろう。

 直後、魔王の側に光と闇の柱が途轍もない力で忽然と現れる。まさしく絢爛たる輝きを露にした神秘そのものは、其々最高神である『オール』。天使軍序列一位『ニア』魔王軍幹部序列第一位『ティア』。

 彼女らは互いに目を合わせることなく静かにその時を待つ。全て地に落ちた白黒の羽を見つめながら静寂な空間に緊張感が芽生えたのも束の間、一斉に現れたのは幾千もの生命達。魔王軍を含めた魔族、神々、天使、精霊、龍、獣人、巨人、幻獣のオンパレード。

 全員が未知なる快楽の為だけにただ希望のみを頼りに、多量の残骸…数多の屍の上に立っている。戦い抜いて今この場に居る。その先に挑むために…と、今回勝ち残った10名が戦士として居座っている。そこには種族も思想もイデオロギーも、ましてや序列やプライドも関係が無いのだろう。燃え立つように炯々と光る双眸の鋭さで求めるのはただ勝利の証として得られる戦利品のみを捉え、その為だけに己の全てを賭けて挑むのだ。

 

 活気か、或いは殺気を肌で感じたのか。彼女らはそれが余りにも素直であると思ったのか、若しくは思わず滑稽だと感じたのかクスクスと笑みを浮かべていたのかもしれない。それほどまでに…幻聴が聞こえてしまいそうなほどに、この場はあまりにも静寂だった。そして、これから放たれる言葉を聞き逃す者はこの場に誰も居ないだろう。今宵目にするのは、今までに類を見ない最大の演説。

 

 今か今かと煮えたぎった欲望は底を知らない。

 

 ここにいる全ての者はとうの昔に我慢は限界を迎えて、未知なる幻惑は臨界点を超えている。これは決して膨張ではない。そんな緊張感に囲まれた彼女は皆の熱意に押され群集に微笑みを向ける。意図して演説は静かに始まった。

 

 

 

 「親愛なる同志達よ。盟友が死んで3000年の月日が流れ、今は無き地獄は滅びを迎えた。

 私たちが起こしたかつての醜い争いが、今も尚…癒されない彼の魂を未だに苦しめているのかもしれない。そんな今を我々は生きている。これまでの闘争は、彼の死と共に終わりを告げた。そこで得たことなど、ひとつしか無いだろう。

 力こそあれど3000年前に作り上げようとした過去は失われた。私たちは…皆、同じ苦しみを味わった。己に対する腐敗も、精神の崩壊も、何もかもを身に染みる程に浴びて…悲劇から学び得て残った唯一は醜さだけだ。それに勝るものは自分に対する嫌悪感のみだった。希望など無いのだと誰もが身に経験したであろう。忘れることなど出来ない程の痛みを、亡くしたものの大きさを…誰もが感じ取ったであろう。

 だが、私たちは生きている。痛みに耐えて…いつまでも己の全てに背負うべき業だけが私たちを生かした。

 欲望のままに責任を持たないまま世界を変えるべく行動した者。

 見て見ぬふりをした者。

 彼を邪魔した者利用した者…キリが無い。彼が死んだ事実だけが残り嘆き悲しむ全てが、自分の生き方が報いとして帰って来たというごく自然な事が襲ってくる未来だけが残されて。

 この中の殆どの者に彼への罪があるだろう。其れ相応の罰を受けただろう。100万、200万、500万、1000万、八百万の神とも呼べる程の多くの者達を含めて…。阿鼻叫喚の様相を呈しても罪は消えず、その者らが逃げたいと一心に思ったであろう。そんな罪深き我らを救ったのは紛れもない、盟友である。我らの罪も罰も、全てを背負い我らに生きる誇りを与えてくれた彼はこの世界に帰ってきた。そう、盟友が蘇ったのだ。」

 

 束の間の息継ぎの時間が訪れる。生命の躍動を皆が感じたのは偶然ではない。復活の象徴が顕現した隙を彼女は見逃さなかった。有り余る生気に続くかのように、幼な子からは到底発せられることのない力量で挙げられる声に瞬く間にこの場は支配される。

 

 「遂に!その時が来たのだ!

 我ら全員の誇りも!愛も!痛みも!唯一も!魂全てを!捧げる時が来たのだ!

 これまで、皆よくぞ生き残った。その事に我ら一同は彼も含め、大いに喜んでいる事だろう!まさに…幸運と呼べよう。

 よって我々は然るべき時の為に、今を以って応える。

 この全てを引き起こした…この全てを!この全てを引き起こしてしまった恥ずべき我らはもう居ない!我らはとうの昔に滅びを迎えた我らの時代を否定し!真なる決別を、最期を迎える‼︎今一度言おう‼︎あの時代は、恥ずべき時代は終わったのだ‼︎各々、自らを含め我ら全ての存在に対する憎しみはこれ以上膨らむことはない‼︎我々は確信した‼︎皆が罪と罰を受け入れる覚悟を‼︎

 

 我らは盟友である彼への最大の恩返しを3000年前のあの日!あの時に!誓ったのは決して間違いなんかじゃない‼︎あの日から我ら全員が抗って今を迎えられているように!我らに3000年の年月を与えてくれた彼に‼︎

 

 然るべき裁きをこの身に受ける為、彼に全てを返す為に‼︎私は誓う‼︎

 

 これは断じて罪滅ぼしの為に行動するのではない‼︎私は、私の意志で‼︎彼のために私の全てを捧げると‼︎諸君らも私と同じ気持ちであるならば‼︎自らの意志で私に同調したならば‼︎彼を愛しているのなら‼︎応えよ‼︎盟友に身も心も、魂でさえも‼︎全てを捧げられる覚悟があるか‼︎」

 

 手に汗握る魔王に同調し、振り絞られた迫力ある歓声が響き渡る。盟約は今をもって成立した。

 

 「ならば諸君‼︎やる事は一つだ‼︎彼の全てを愛し、彼の全てを愛する者に、溢れ出る気持ちを胸に‼︎高らかに声を挙げるのだ‼︎我らは‼︎死して尚‼︎彼を輝かせる‼︎その為に我らの魂を‼︎彼に捧げよ!!!!!!」

 

 緊迫感は頂点に。戦いに意味を見出した戦士らの野望は口角が上がることで見て取れる。手に取る機会を失った者の失望が混ざり合いながらも、皆は背筋を伸ばしている。自分は、彼への愛は負けていないと誰もが自負しているからだ。例えそれが自身より格上の相手だとしても、それだけは譲れない。そこだけは譲ってはならないのだと。

 

 「今宵の宴はその第一歩である‼︎勇者との取引によって手に入れたこれは、その紛れもない証である‼︎見よ!!!!!!!!!」

 

 悪辣とも呼べるタイミングで今回の獲物を翳す彼女の余裕さ、優雅さはまさしく王。視界は一斉に相まって蠱惑的な彼女へ。そして彼女が持つ物に身体が思わず反応してしまうほどに、その代物は余りにも魅惑的で自然と身が奮い立つ。だが戦士を含め、ここにいる全員は理解していた。

 

  - あれは自分の手に余る。手にすればあっけなく壊れてしまうのがわかる…しかし堪らなく欲しい!本能が欲している。今すぐにでも手に入れたいと。 - 

 

 戦いの始まりを告げた鐘の音が聞こえないほどに彼女達は宙を踊るかのように勝利の美酒に酔っている。

 汝らが目にする物、それは彼が放った生命の輝き。目映い宝石にも似た…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 - シコティ -

 

 

 

 「ただいまより!我が盟友から放たれた神聖物質争奪戦を開催する‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夜の事だ。

 宴は無事に終わり多くのものが解散した後のことである。

 ハイライトの無い彼女達に囲まれるも、悠然たる態度で貫いている魔王には思わず感服してしまうだろう。

 聖域にてとある会談、もとい裁判という名の尋問が行われていた。

 

 

 「これより、異端審問会を始めます。被告オルタ。あなたは私たちと協定を結んでいた勇者を惑わせ、取引に私情を挟んだことを認めますか?」

 

 「何の事?ニア。」

 

 「オルタ、下腹部は素直…どうして誤魔化す?」

 

 「匂うのよ、あなた。特に陰部付近から魔術痕跡がプンプンと。帰ってきた時から下腹部の疼きを魔力で防いでいた事なんて私たちには丸わかりよ。彼の魔術形跡を下着に隠すなんて愚行をよくもまあ…しかも漏れ出るほど達したまま隠密しつつ演説を行うなんて…馬鹿な真似を。それにあなた、勇者になんてものを渡したのよ。」

 

 「オルタ様…例えあなた様と言えど、やって良い事と悪いことの判断を持つべきです。」

 

 「少なくとも私たちは気付くと踏んでの行動。余計にたちが悪い。」

 

 「大人しく死を受け入れな。俺はとっとと楽になった方が身のためだ、って言っておくぞ。」

 

 「ねえねえオルタちゃんオルタちゃん、ぶち殺していい?ねえ?いいでしょ?ちょっと、本当にほんのちょびっと。先っちょだけだからさ‼︎」

 

 「…彼の隣に彼女は能わぬ存在である。故に………殺しても我は許さぬ。」

 

 「普段味方してくれる彼女達も敵に…弁明は?」

 

 「構いませんよ。」

 

 「彼と会ったら迷わずする。やる役目が偶々わたしだったってだけ。それに勇者から許可も貰ってるし…やらない道理は無い。あなた達も同じ事をしたはず。ねえ?ティア。」

 

 「…それについては否定は出来ない。」

 

 「ふふん。」

 

 「「「クソがっっ!羨ましい!羨ましいぞ‼︎」」」

 

 「んで…いち早くお楽しみをしていたわけだ、君は。」

 

 「世界中の時間を停止してそれから彼の記憶を改竄中に勇者と接触しに行った。空間の変異も残さず、あの子との取引も上手くいった。世界にバレることはまずないよ。どやどや。」

 

 「誰もそこは聞いてもいませんし、気にしていませんから。ですが私たちに黙って行動した事に加え彼女にあの聖遺物を渡すのは…例え勇者といえど危険すぎです。彼女、終いには廃人になるのでは?」

 

 「大丈夫、聖剣は彼にぞっこんだ。よって彼女が選ばれた。耐えられないならもはや勇者の資格は剥奪される。よもやその事を理解しているからこそ覚悟の上で取引に応じたんだろう。一応妹として潜り込んでいるんだから。」

 

 「だからこそ危険。聖剣の加護が効かないのに人間が耐えられるわけない…ましてや3000年分のブランクがあるのに。」

 

 「はぁ…で、お互いに特級指定聖遺物の交換を済ませたわけね。」

 

 「うん。死ぬ間際の彼の血、体液とその布切れ…彼女に一応…万が一があるといけない時の事を考慮して蘇生薬も大量にサービスし、その代わりに彼の魔力結石に魂の欠片、記憶、今現在の体液と色々貰ってきた。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「因みに全員分のやつ、持ってきているんだけどこれで許してくれるかな?」

 

 

 

 「これにて異端審問会を閉廷します。争い事は惨めなものです。早急に各自解散すると共にこれからも彼の為に全力を尽くすように。」

 

 「…どうする?続けても良い…最も面倒臭いことになるけど。」

 

 「そ、そうだな、ここは穏便に解決するべきだ、うん。」「早く頂戴頂戴頂戴ちょうだいちょうだい‼︎」「流石魔の王、惑わす天才。」「よっ、流石はオルタ様」「くやしい…でも屈しちゃう‼︎」「オルタ様最高っ」「何処までも付いていきます魔王様‼︎」「誉れ高き魔王様に万歳‼︎」「「「万歳‼︎」」」

 

 「「「オルタ様‼︎オルタ様‼︎オルタ様‼︎オルタ様‼︎オルタ様オルタ様‼︎」」」

 

 

 

 「皆の者、そのまま拘束を解かないように。下腹部に隠していたハンカチについては私が処罰を下す。安心して戻るが良い。」

 

 「ちょ、ちょっと待ってオール。許してくれないの?」

 

 「それとこれとは別だ。では後のことは任せる。」

 

 「「「オール様こそ至高。それはそれとして貰えるものは貰うのが流儀であるが故にこれらは我々の恵みとなる。彼に祝福願いて感謝の意を込めて頂く…全ては彼と共にあり。」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「それでオルタ。時に、彼に対して我々の認識はしっかりと阻害されていたか?」

 

 「問題ないよ。記憶が多少戻ったとはいえ全てを取り戻すことはもう不可能になった。9年彼を見守ってきたオール達も、接触してきた私や勇者他含めて。これで私たちの計画に障害も狂いも発生する確率は低くはなった。」

 

 「ならばその布切れについては目を瞑ろう。…私もいよいよ彼と接触する機会が訪れる、というわけか。実に楽しみだ。」

 

 「羽目は外さないで。」

 

 「承知。計画が成功した暁には思う存分たっぷりと味わうのでな。それまでは辛抱だがそのひと時ですら楽しめれば尚の事愉快だろうよ。」

 

 「ならば結構…報告も済ませた。…そろそろ我慢の限界…帰る。」

 

 「こちらも限界だ。では、また逢おう。」

 

 「ん…。」

 

 

 

 然る後、今以上に思い出す彼との幸福な日々に浸かる彼女らが味わった快楽は何千年と時を超えて満ち満ちた。欲望は歪みに歪みまくり、彼女らの魂に彼は植え付けられて…いや、彼に彼女らが寄生したと表現すべきだろうか。

 彼は彼女らの糧となっている。

 苗床に寄生した彼女らが起こすであろう報い。それらは既に彼が死んでしまった時に決められていたのかもしれない。宿主が死んだ寄生生物は新たな寄生先を求めるように失った痛みを抱えてひたすらに進み続ける彼女達は、痛みを感じる度に彼への愛も変わっていった。報いが必ず望みとは直結せずとも、希望だけは胸に秘めて嗚咽を堪えて進まなければならないと言う事を既に知っている彼女らに、失う物はもう何も無い…あるのは愛への飢えのみ。

 いつまでもいつまでも飢えた彼女達の可愛らしくも歪な妖艶の笑みは、収まることなく伝染した。

 

 さっと落ちる水音に彼は気付きもしないだろう。ぺろり、と出された舌は音を立てて、ありとあらゆる穴から漏れ出る液は垂れた唾液までもが混ざり合い、零れ落ちた汗は世界が泣いているかのように雨を降らせている。終焉を鳴らす時計の針が零を振り切れてしまう事など些細な事は気にする訳でもなく彼女らは快楽に身を寄せる。

 

 

 

 雨が降っている。止まない雨がプシャッと降っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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