転生者の夢・・・
―― 一筋の光が星に落ちた。
―― 私はそれを
―― 胸を締め付ける悲鳴が頭に響く。
―― 光が消えて、絶望が世界を包んだ。
***
二つの月が空に浮かぶミッドチルダ。
そこに鎮座する他の建物よりもひときわ高い建物がある。
多くの人間が働く眠らない場所 ―― 時空管理局の地上本部だ。
その地下深くに人知れず生まれた命が産声を上げようとしていた。
地下研究室 ―― そこに培養槽が数多くあった。その中には肉の塊がひとつずつ入っており、その肉片は人の形を模していた。
その中にひとつだけ人間に近い形をした肉片があった。それは、もう肉片とは呼ばずに“人”と呼べよう。
紫色の髪が羊水に揺られ、培養槽のなかで眠る小さな男の子。
完成に近い状態の中で、男の子の意識は覚醒しようとしていた。
―― 私は誰だ?
その疑問に脳内で誰かの静かな声が流れ始める。
《 開発コード:アンリミテッド・デザイア「無限の欲望」 》
―― ここはどこだ?
《 ミッドチルダ地上本部地下最下層 》
―― 私は何故生まれた?
《 時空管理局最高評議会の命令 》
男の子の疑問にひとつひとつ答える声。
脳内に浮かぶ数々の映像。
無限に溢れ出す欲望。
叶えられなかった願い。
叶えたい願い。
それらが導き出すアンリミテッド・デザイアの自我。
肉体が完成し、外に出された。
口を歪ませ、ギラギラと輝かせる双方の金の瞳。
目元を押さえ、産声を上げる。
「あははははははははは・・・・・・!!!!!!」
指の隙間から一筋の涙が床に落ちた。
―― ジェイル・スカリエッティの誕生である。
***
スカリエッティーの奮闘
私の名はジェイル・スカリエッティ。
私は転生者だ。
前世の記憶というべき記憶。または、並行世界の自分の記憶だろうか。
持っているどの自分の記憶も“ジェイル・スカリエッティ”のものだった。
そして、私自身が転生者だと気づく私もいれば、一生気づかないまま終わることもある。
転生者だと気づかない私の末路は、皆も知っての通りだろう。
詳しくは「魔法少女リリカルなのはStrikrS」を見るといい。
ここはあえて言わずにおこう。
さて、私自身が転生者だと気づく場合の例を見てみよう。
ひとつは“夢”。
それはとても悲しく。悲惨な夢だ。
その夢を見た私は、自身を転生者だと気づき、ひどく後悔する。
ひとつは“とある人物”に出会う事だ。
“彼”がこの世界にくれば、一目で分かる。
それだけ、存在が大きいからな。
その代り、頭痛を伴うが―――まあ、ここは我慢しておこう。
すぐに収まるというのもあるが、なにせ、古い友人に会うことができるのだ。
私を理解する人間にな。
彼と出会わなければ、私の人間関係という概念は、億劫で、面倒くさく、意味のないものと考えていただろう。
彼は、私を理解する数少ない理解者で、古い友人と言えるだろう。
夢を見ることも、友人に会うことも、転生者だと気づく切っ掛けにすぎん。
むしろ、気づかない方が幸せなのかもしれない。
なにせ、並行世界を渡る術を持たない私は、後悔の懺悔をすることもできず、友人を助けることも出来ない。
そんな渇望を覚えたままでは、私は欲望に飢えて、死んでしまうよ。
私は無限の欲望なのだから―――