ジェイル・スカリエッティの奮闘   作:灰恵

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第05話 “無限書庫”

なのはの元から立ち去った男―― ジェイル ――は、少し離れた木陰へと歩み寄った。

 

「――・・・・彼女はまだ、君の事を覚えていたよ・・・――」

 

優しく、憐みが含んだ声で、木陰へ話しかける。

一見してみると、独り言のようにも聞こえる言葉は、誰かに話しかけているようにも見える。

その木陰には影を薄くした少年が、木に手をそえて立っていた。

かすかに存在を残した少年が、虚ろな表情で彼女たちを見守っている。

 

 

『――・・・・――』

 

 

“覚えている”と伝えると、少年は無表情ながらも、わずかに反応を示した。

 

ジェイルは視線をなのはたちに移した。

彼女たちは楽しそうに会話をしている。

再び視線を移し、木陰へと向ける。

転生者であるジェイル以外には、存在自体が消えかかった少年に気づくものなど、いないだろう。

消えていく少年を見守ることしかできない自分に、唇をかみしめた。

 

「――すまない」

 

ジェイルは謝った。

その声に、少年はゆっくりと顔を上に向ける。

 

 

『――・・・・――』

 

 

じっと、彼の顔を見つめ、首を振った。

先ほどよりも強い反応を示した少年に、ジェイルは目を開く。

 

 

『―― ありがとう ――』

 

 

小さなか細い声で答えた少年は、始めからそこに居なかったかのように消えた。

 

「!! ・・・っ」

 

思わず手を伸ばしたその手も、消えたことで(くう)をつかんだ。

 

 

 

――― ユーノ(・・・)スクライア(・・・・・)という存在は、手紙と共に消滅した ―――

 

 

 

 

***

 

 

 

 

無限書庫

 

 

司書たちは通常よりも、忙しなく働き、書庫の整理をしていた。

さらに、司書たちの精神を削るように通信が鳴り響く。

 

「―― 期限はとっくに過ぎているだろう。いつまで待たせるつもりなんだね? 君たちは」

「申し訳ありません。当初、予定していたよりも作業が難航していまして・・・」

御託(ごたく)はいい。他の部署よりも先に、こちらを優先してもらうからな ―――」

 

担当した司書はペコペコと他部署の上官に頭を下げていた。

ブクブクに太った局員はねちっこく嫌味をたっぷり言って、通信を切った。

通信が終わると、ゲッソリとした様子で書庫の整理と依頼をこなし続けた。

 

「もう、やだ・・・・なんで、一介の司書がこんなことしなきゃ、なんないのよ」

目に涙を溜めて、愚痴った。

 

彼女だけではない。他の司書も似たような状態だ。手が空いている司書など一人もいない。そのため、担当した依頼は自分で解決しなければならないのだ。

この無駄にだだっ広い空間を持つ無限書庫で、複数の依頼を抱え込んだまま、従来の書庫整理も並行して行うのには無理があった。

ほんの数ヶ月前まで、こんな依頼は、予定期間のうちに集められたのだ。

それなのに、ここ一ヵ月ほどで、坂道の石が転がるように悪い方向へ劇的に変化していた ―――

 

「やめちゃおうかな・・・」

司書はぐすんと鼻を鳴らして、ネガティブ思考から抜け出せずにいた。

 

――― そして、どういう訳だか、部署と成り立っているにも関わらず、リーダーがいない。

 

同じ依頼が来ているのに、それに気が付かないまま、別々の司書が担当していたり。

やっと整理し終えたと思っていた場所を、別の司書が整理し始めるたり、

更に追い打ちをかけるように、先ほどのようなクレームが後を絶たない。

そのうえ、増え続ける依頼数や度重(たびかさ)なるストレスで次々にやめていく司書たち。

 

仕切るものが居ないために、悪循環が続いていた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

人事部

 

 

 

レティは頭を抱えていた。

今、度重なる問題が多発している無限書庫についてだった。

 

「あら、レティ。どうしたの? 難しい顔しちゃって」

「リンディ」

 

綺麗な顔が台無しよ?

余計なお世話よ。

 

レティは人事部にリンディがいることに少なからず、驚いた。

疲れた頭は、自分はリンディを呼んだ覚えがあっただろうか? と考えてしまったほどだ。

 

「だいぶ、お疲れの様ね」

 

リンディはラウンジで買ってきたコーヒーを彼女に渡した。

レティは気が利く友人に、「ありがと」と言って受け取る。

さして気にすることなくカフェオレだと思って飲んだ瞬間、強烈に舌を爆発させた甘さに、くらくらした。

震えた手でこぼれない程度にコップを握りしめ、もう一方でこめかみを押さえる。

 

「まぁね」

 

異なる二つの問題に頭を抱えた。

 

「ところで、リンディ。私、貴方を呼んだかしら?」

 

呼んだ記憶がないのだけど。

 

「あら、呼ばれてないわ。 私が個人的にあなたに聞きたくて、直接来たんだもの」

 

リンディはあっけらかんとして答えた。

 

「聞きたいこと?」

 

直接聞きに来るほどだ。余程の事だと解釈して、頭を切り替えた。

リンディは真剣な表情に変わり、質問した。

 

「無限書庫のことよ。クロノに聞いたのだけど、無限書庫の対応が著しく低下したって」

「さすがに、情報を得るのが早いわね」

 

そういえば、無限書庫(・・・・)の価値をいち早く気づいたのはクロノ君だったわね。

 

「クロノが心配してたわ。無限書庫のシステムを提案したのは自分だからって」

 

リンディは母親として純粋に息子の心配をしていた。

レティも息子がいるため、解らなくはないが、いかせん、噂が広まっているとはいえ、機密事項だ。迂闊に話せば信頼関係に差支(さしつか)えてしまう。

そうでなくとも、無限書庫の人員を派遣している人事部の選抜に不満を覚える者も少なくない。

しかし、リンディが言っていることもまた、一理ある。

責任感の強い彼だ。

自分が提案したシステムが受諾されて二年。

そろそろ、成果が出てもおかしくはない。

それが悪い状況なら、なおさらといえるだろう。

 

レティはため息をつくと、話し始めた。

 

「次の議会に出す予定だから、まだ確定ってわけじゃないけど。もう、回復できないほど打撃を受けているわ」

「そんなにひどいの?」

「ええ。でも元々、仮部署、お試し部署として予算と人員を()いたんだもの。失敗することもあるわ」

 

レティは肩を落した。こればかりは、人事部だけの問題ではない。

 

「でも、ついこの前まで、そんなことなかったじゃない。クロノだってよく利用していたぐらいだし。あなただって絶賛してたじゃない」

「そうなのよ。劇的な変化が見られるのはここ一ヵ月の間なの。これを見て」

 

レティは部屋を暗くすると、フェイルから図表を取り出した。

 

「これは!」

 

リンディはそれを見て驚愕した。

 

「――― 二年前に、クロノ君が提案して、部署として建てられた“無限書庫”。 それが、ついこの前 ―― 正確には二週間前まで ―― 運営がうなぎ上りだったのよ。対応もしっかりしてるし、無限書庫(・・・・)の活躍で、今まで埃をかぶっていた資料が見つかって、救われた命は数がしれない」

 

図表に書かれたグラフには依頼数と、それのこなした数。

それから、書庫で明確となった整理した本の数が、一目でわかった。

 

「それが、目を見張るように変化している。それも、悪い方向に」

 

もう一つのグラフは、無限書庫へ送られた御礼の件数と、苦情の件数。

苦情よりも上回っていた御礼の件数が、二週間前のピークを境に、逆転している。その上、今もなお、苦情が後を絶たない。

 

「当事者たちも困っているみたい。今までのように回らないって言ってね」

 

人事部もこの変化に調査していた。

 

「どうして、ここまで・・・」

 

リンディは開いた口が塞がらない。

 

「それにストレスが重なって、次々と司書が辞表届を出してくるわ」

 

レティは先ほど受け取った司書の辞表届を含めた、机の上に置かれたその山を見て、ため息をついた。

 

「原因はなんなの?」

「わからない」

「え?」

 

ここまで調べているのに、わからないとはどういうことなのかしら? とリンディは目を丸くした。

 

「本当にわからないのよ。その原因を調べようにも、頼みの無限書庫がこんな状態だもの。調べるだけでも、難航しているわ」

 

レティが頭を抱えているのは、まさにそこだった。

 

「でも、不審な点はいくつかみられるの」

「それは?」

「一つは、ある時期を境に、悪循環が続いていること。もう一つは ―――」

 

これも曖昧なものなんだけど。と付けたした。

 

「いる筈の人間がいないこと」

 

リンディはその問題をしばらく考え、意見を言った。

 

「誰かが、無断で休んでいる。もしくは、失踪した?」

「そう考えるのが、普通でしょうね」

 

レティも一度は考えたことだ。

 

「違うのね」

「ええ」

 

レティは頷いた。

 

「やめた人数と派遣した人数は一致しているわ。あと、今も司書として働いている人数もね。それに誰それが失踪したなんていう、話は聞かない。なのに、曖昧な証言として、司書たちは違和感を覚えるそうよ」

「違和感?」

「“子供が現場を仕切っていた”」

「え?」

 

リンディは首を傾げた。

人で不足で低年齢化が進みつつあるとはいえ、責任者はキャリアをもつものか、よっぽどの才能がなければ責任者になることはない。

 

「それも、ちょうど、はやてさんと同じぐらいの子供が仕切っていたような気がするっていう証言が、たびたび、浮上しているの」

 

ずいぶん曖昧(あいまい)ね。

そうなのよ。

 

「それはどういうことなの? こちらが認識していないだけで、協力者がいるっとこと?」

「それも考えたわ。でも、顔も名前も解らない相手を協力者っていえるのかしら」

「というと?」

「彼らの証言から、その子供と面識があるそうよ。“何か”を話した記憶もある。でも、“何”を話したのか。どういう人物だったのかは覚えていない。むしろ、日に日に、証言すらできない状態になりつつあるの」

 

妙ね。

ええ。

 

「それに現場の監視カメラやその周辺を調べてみても、そう言った子供は見られないのよ。まるで ―――」

 

リンディは背筋に嫌なものを感じた。

 

そう、まるで。

 

「――― 亡霊が無限書庫を動かしていたような」

 

 

 

 

くす、

 

あははははは・・・・

 

 

 

真面目な顔で告げた言葉に、リンディは吹き出してしまった。

 

「ちょっと、リンディ。笑う事ないじゃない!」

「ごめんなさい。あまりにも、内容が内容だったから・・・」

 

リンディは生理的に浮かんだ涙を指で払う。

 

「こっちは真剣に悩んでいるのに」

 

まったく。

ごめんごめん。

 

「でも、そう考えた方がしっくりくるのよ。魔法が使われた痕跡がないんだもの」

「魔法じゃないの?」

 

「ええ」とレティは頷く。

 

「魔法以外に考えられるとしたら、そういう考えに行きついてしまうの」

 

なるほどね。とリンディは答え、再び意見を言った。

 

「禁忌魔法を使用している可能性は?」

「その可能性もあるわね」

「でも、調べるのにも限界がある・・・のよね?」

「そういうことよ」

 

本当に、『もどかしい』の一言に限る。

 

「まあ、無限書庫の機能が低下した。といっても、以前に戻ったと思えば、対して違わないんでしょうけど」

「一度、便利になったからと言って、扱いきれないのなら、意味がないものね」

 

レティは肩を落し、リンディも頷いた。

レティは広げた資料をしまうと部屋が明るくなった。

リンディはおもむろに立ち上がると、礼を言った。

 

「ありがとう、レティ。いろいろわかったわ」

「どういたしまして。と言っても対して力になれなくて、ごめんなさい」

 

「ううん」とリンディは首を振る。

 

「私たちは欲を出しすぎたのよ。それだけのことだわ」

「そうね」

 

レティは(うれ)いな薄笑いを浮かべた。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

レティの所から出てきたリンディは無限書庫へ向かっていた。

他人の口から聞いた話だけでは、見えない部分も多いからだ。

 

「あら、はやてさん、ヴィータさん。こんにちは」

「こんにちは。リンディさん」

「こんにちは」

 

途中ではやてとその隣で困り顔のヴィータに出会った。

 

「珍しいわね。こんなところで出会うなんて」

「ホンマに」

 

二人は笑い、ヴィータもつられて笑った。

 

「今日はどちらに行くの?」

「無限書庫まで。本を返しに行くんです。その後は、なのはちゃんのところにお見舞いに」

 

行き先を聞いたリンディは驚いた。

 

「あら、無限書庫まで? 奇遇ね。私も丁度、行こうとしていたところなのよ」

「なら、一緒に行きませんか? だいぶ、慣れたとはいえ、まだ、本局で迷子になることも多くて」

 

はやては恥ずかしそうに、照れ隠しに舌を出す。ヴィータははにかんだ。

その様子にリンディも笑う。

三人は無限書庫に向かいながら、雑談を始めた。

 

「そうね。良く分かるわ。私も若いころ、良く、迷ったもの」

「そうなんですか?」

「へ~。以外です」

 

はやてもヴィータも、彼女の意外な一面があることを知り驚いた。

 

「若い局員にありがちなの。別に珍しいことじゃないわ」

 

本局は丸々、街一つ分が入る広さを誇る。

案内表示があるとはいえ、絶対に迷わないということはないのだ。

 

「よかったぁ。私らだけじゃないんですね」

「よかった」

 

はやてとヴィータはホッと息をついた。

その様子にリンディはやっぱり迷っていたのね。と理解した。

 

「自力で、無限書庫に向かっていたのなら、あながち、この道で間違いないわ」

「ホンマですか!? ほな、ヴィータ。良かったなぁ」

「うん!」

 

それを聞いたはやては、ヴィータの頭を撫でて褒める。

何度か来たことがあるヴィータが先導していたこともあり、間違っていないことを知り、ホッとして元気が出た。

 

「ところで、本を返しに来たって言っていたけど?」

 

リンディははやてが大事そうに抱えた本に視線を移す。

 

「はい! そこの司書さんがとても親切で、こういう本が読みたいって言ったら、直ぐに貸してくれたんです」

 

はやては嬉しそうに話す。

はやての横顔を見るヴィータも、その様子に嬉しそうに笑った。

 

「あら、それっていつごろに借りたの?」

 

リンディはここ最近の無限書庫の様子の一部を知っているため、彼女がすんなり借りれたという時期が気になった。

 

「んー・・・と、2週間ぐらい、前でしょうか?」

 

「確か、そんくらいだったよな?」とはやてがヴィータに聞くと、

「うん。そんくらいだったよ」とヴィータも頷いた。

 

「そう・・・二週間前ね・・・」

 

やはり、二週間前まで、無限書庫の状態は良好だった。

なら、なぜ、その日を境に、激変しちゃったのかしら?

 

考え込んでしまったリンディに、二人はお互いに目を合わせ、首を傾げた。

 

「あの、どうかなさったんですか?」

「ええ・・・―――実はね」

 

 

 

 

――― エントランスホールを抜けようとした三人の脇を、大きなキャリーケースを引いた局員が通り抜けた。

その局員はひどく、やつれていた。―――

 

 

 

 

「そんなことになっとるんですか!?」

「うわ~」

 

リンディは機密事項は伏せて、大まかな無限書庫の状態を二人に話した。

 

「この前、来たときは、全然そんなことなかっったのになぁ」

「うん。あたしも何度か来たことあるけど、そんな素振りなかったよ」

 

ふたりも状況が悪化してからの無限書庫に行くのは初めての様だ。

 

「なのはちゃんやフェイトちゃんは、このこと知っとるんかなぁ?」

「たぶん、知らねぇんじゃねーか?」

「そう思うか?」

「だって、知ってたら言うだろ」

「そうやなぁ」

 

うんうん。と頷きなずくはやて。

 

「なのはさんやフェイトさんも、良く利用していたの?」

 

身内でクロノ以外にも無限書庫を利用していたことに驚いた。

 

「ええ。無限書庫(・・・・)の話なら、二人から良く聞きますよ」

 

はやてが頷いた。

 

「特に、なのはがな」

 

ヴィータは、無限書庫(・・・・)の話をしているなのはを思いだし、呆れた顔をした。

はやてはくすりと笑う。

 

「なのはちゃん、ホンマに好きやもんねぇ」

「あれはもう、病気だぜ?」

「恋は盲目っていうもんなぁ」

 

リンディは首を傾げた。

深刻な無限書庫の話をしているはずなのに、恋愛話になっていることに違和感を覚えた。

 

「ねぇ、二人とも。無限書庫の話をしているのよね?」

「ええ、そうですよ?」

「おう」

 

二人はどうしてそんなことを聞くのかと、不思議そうな顔をした。

 

「なのはさんは具体的に無限書庫で何をしていたのかしら?」

「え? あれ? そういえばどうなんやろ。 無限書庫(・・・・)の話はよく聞くのに、そこで何をしてるまでは聞いた時あらへんな。 ヴィータはどうや?」

「あたしもねーな」

 

あれ? と二人はお互いに目を合わす。

何か、とてつもなく大きな誤解をしているのではないかとリンディは感じた。

同時に背筋が凍る。

 

 

 

彼女が感じ取った戦慄は、この時にはすでに、現実のものとなっていた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

本局医療区画

 

 

 

「えぇ!? それ、本当!?」

「ホンマ、ホンマ。 なぁ、ヴィータ」

「ああ。マジだぜ」

 

お見舞いに来たはやてとヴィータは、無限書庫での出来事をなのはに話した。

実際、この目で無限書庫の現状を見たとき、目を疑ったものだ。

アットホームと化していた、親しみやすかったかつての風景は消え去り、混沌とした暗闇と、漂う殺気が充満した無限書庫で働く、やつれ果てた司書たち。

かつての姿からは想像もつかないほど、激変していた。

 

「私、ここ最近、なのはの所に来てたから、無限書庫がそうなってるなんて知らなかった」

 

フェイトも驚いた。

彼女も、執務官の勉強の資料を取りに行くのに良く利用していたのだ。

 

「やっぱり、ふたりとも知らんかったかぁ」

「まあ、あれだけ、激変してるんだ。知ってたら、話題に上がらないってことねーもんな」

「クロノが無限書庫の対応が遅いって愚痴ってたけど。そこまで、ひどいとは思わなかった」

「それより、ショックだよぉ。私、無限書庫(・・・・)のこと好きだったのに・・・・」

 

なのはは膝をついて、落ち込んだ。

 

「そいえば、なのはちゃん」

「・・・なに? はやてちゃん」

 

目に涙を溜めたまま、顔を上げる。

それにはやては、相当、なのはが落ち込んでいることが見て取れた。

 

「リンディさんが言っとたんやけど」

「?」

 

無限書庫に向かう途中で、リンディさんに会っていることはすでに、二人に伝えてある。

その時、リンディさんが妙な事を言っていたことを思い出し、はやてはなのはに聞いてみることにした。

 

「なのはちゃんは、無限書庫にある本が好きだったん? それとも、そこで働いてる司書が好きだったん?」

「え? 両方・・・」

 

だよ? と言いかけて、ふと、無限書庫で過ごした記憶があいまいなのに気が付いた。

「あれ?」と首を傾げて、いぶかしい表情を浮かべる。

 

私は無限書庫をよく、利用してた。

うん。これは間違いない。

よく行ってた記憶もあるし。

あれ? でも、そこで何をしてたんだっけ?

本を借りて読んでたのかな?

でも、いくらミッド語がだいぶ読めるようになったからと言って、ベルカ文字で書かれた本とかが混じった書庫で、正確に探し出して、読みたい本が読めたのかな?

 

「え!? なのは、好きな人いるの!?!?」

 

フェイトがびっくりして、なのはに詰め寄った。

フェイトには寝耳に水だ。

 

「ふぇ? あ・・・ち、違うよ!」

 

なのははフェイトの勘違いに慌てて、否定した。

はやてはその様子をニヤニヤとした顔で、更に拍車をかける。

 

「なのはちゃんは~、その司書さんにぞっこんなんやもんね」

「!! 誰!?」

 

はやてちゃんのイジワル~~!

 

涙目になりながら、興奮して詰め寄るフェイトをなだめながら、なのはは答えた。

 

「違うよ! フェイトちゃん! 私は、無限書庫のあのアットホームな雰囲気が好きだったの!!」

 

それを聞いたフェイトは、ハタッと自分の勘違いに気が付き、顔を赤くした。

自分の知らない間に大好きななのはが、好きになった人の顔を拝もうと思っていたのにと、少し落胆したと同時に少しホッとした様子を見せた。

 

「え? あ・・・そ、そうなんだ・・・」

 

落ち着いたフェイトに、なのははホッとため息をつく。

はやては、つまらなさそーに「な~んだ」とチューと音を立ててジュースを飲んだ。




題名が「ジェイルスカリエッティの奮闘」でいいのかな?とか、最近書いてて思う。
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