ときどき─────思うことがある。
「ノノッ! 今日もバッチリだったなッ!」
「ノノちゃんらしい…………クールなステージだったぞ……」
本当の私はある人のことを忘れていて、その人が手を引いてくれたからここに居るんじゃないのか、って。
アイドル活動に不満はない。個性豊かな戦友、優しい友人、私を輝かせてくれるお仕事、どれをとっても掛け替えのない大切なものだ。でも、なにか足りない。なにかが、ない。
それはきっかけで、始まりで、輝いていて…………とても穏やかで、優しかった。
大事なものなのに、思い出すことが出来ない。インディヴィジュアルズ、ワンステップス、どれもこれも鮮明に思い出せるのにあるところでモヤがかかる。例えばシャイニーナンバーズ、ユニットのみなさんのことはハッキリ覚えてる。だからおかしなことはなにもない。でも他に手を引いてくれた人がいた気がする。ユニットメンバーの方以外に支えてくれた人がいた…………気がする。それに、演劇『さよならアンドロメダ』、私が少年役をやって亜季さんが車掌さんでアナスタシアさんがいて、ちとせさんがいて………………やっぱりもう一人誰かがいた気がする。
思い出せない。いや、そんな気がするだけで思い出すも何もないのかもしれない。
「どうした? ノノ、調子悪いのか?」
「っ!? い、いやちょっと考え事を………………その、美玲ちゃん……唐突なんですけど……私たち……インディヴィジュアルズの初舞台のとき…………楽屋に来てくれたのって誰でしたっけ…………?」
「本当に急だなッ!? そんなこと考えてたのかよッ! あのとき楽屋にきてくれたのは確かまゆだろ?」
「そ、そうですよね…………誰だったか思い出せなくて……えへへ…………」
「意外とウッカリだなッ! それより早く着替えろよッ! プロデューサーが下で待ってるぞッ!」
「へっ!? い、急いで着替えます〜!」
そうだ。美玲ちゃんの言う通り、あのときあの場所にいたのはまゆさんだ。やっぱり思い違いだったのだろう、みんなを待たせるのは申し訳ない。早く着替えて今日は帰ろう。
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「……………………ん、乃々…………?」
冷たい床に頬を付けた状態から目を覚ます。状況を理解するために周りを見回しても、辺りは一面の暗闇。私は確か………………。
「お目覚めですか? 凛ちゃん」
虚空から私の名前を呼ぶ声がする。だが振り向いてもそこには誰も、何もいない。
「誰…………!」
「私のことはどうでもいいんです、それよりもお互い厄介なことになりましたね」
そう喋るそれは依然として見えなかったが、声の端々から零れる吐息や、振り絞ったような声色から満身創痍であることが容易に想像出来た。
「満身創痍なのもお互い様ではないですか? 最期の足止めで相当粘ったようですね」
…………! 考えてることが筒抜けになってる……! それに口ぶりから察するに友紀と未央、それに私と乃々の戦いを知ってる…………!?
「驚くことではありません、私は今回のシンデレラパーティの主催ですから」
「………………乃々はどこ……それに他の脱落者も、どうしてここに私とアンタしかいないの?」
「質問が多いですね…………ではまずここについてご説明しましょうか」
そう言うと主催と名乗るソレは淡々と事務的に説明をし始めた。
「ここは脱落者の集まる場所、本来であれば脱落した者からここで記憶が消され、元いた場所に還る手筈になっていました。が、此度のパーティではシンデレラが生まれずに終わってしまった。それが原因でエラーが生じ、最後に脱落した貴方がここに残されたというわけです」
「…………最後に脱落したのは友紀と未央、もしくは美穂と卯月じゃないの? それに脱落者ではないアンタはなんでここに居るの?」
「その質問には両方とも守秘義務がありますので、お答えすることは出来ません……強いて言うのならそれもまたエラーの影響、と言うべきでしょうか」
「じゃあ乃々は? それもエラー?」
「いいえ、乃々ちゃんは正しく元いた場所に還りました」
「そっか…………良かった」
「────貴方の犠牲の元に…………ね」
その言葉は静かに暗闇に響き渡った。