「………………それ、どういうこと?」
「これを説明するのはとても心苦しいのですが、仕方ありません…………これは貴方が目覚める前のことです」
「貴方よりも先に目を覚まし、私からここの説明を受けた乃々ちゃんはどうしても、どうしても元いた場所に還りたいと泣いていました。それを痛ましく思った私は彼女に二つの提案を差し伸べたのです」
「一つはここで自然に消滅するまで静かに過ごすか」
「もう一つは貴方の存在を踏み台に還るか」
「詳しい手順は省きますが、どちらか一方が『存在した証』を取っ掛りにすることで強引に還ることが出来るわけです」
…………ここに乃々がいないってことはつまりそれは。
「お察しの通りです、なんの躊躇いもなく彼女は貴方を捨てて還りました。そしてこの方法は非正規の裏技、言わば世界のバグを不正に利用した外法です、当然それに対する代償は存在します」
そう言うと、主催は虚空から現れた水晶玉を私の前に持ってきた。そこには見覚えのある部屋や懐かしい顔ぶれが映っていた。
「これは貴方たちが元いた世界を映したものです、ですが…………この世界に貴方はいなかったことになっています」
「彼女が不正に利用した貴方の存在はボロボロになり、世界からノイズと判定され全てを抹消されました」
「例えばニュージェネレーションズ。あの世界のニュージェネレーションズは初期から二人ユニットとして活動しているよう修正されました。そして、今ここにいる貴方もじきに肉体が薄れて消えるでしょう…………」
水晶玉には、微笑ましく笑う卯月と未央、そして別の水晶玉には一人ステージに立ち、歓声を浴びる乃々の姿があった。
乃々は必死で、泣きながら──────笑っていた。
「──────しかし、助かる道はあります」
「私には僅か、本当に僅かな力が残されています。そして、その力を取っ掛りに短時間だけあの世界に送ることが出来ます、その時間内に貴方の力を奪い返せれば彼女に代わり貴方が戻ることが出来ます」
「復讐と、帰還、両方を一度に果たせるこの方法、貴方はどうしますか?」
その提示に私は、黙って首を縦に振った。
「良いでしょう、期間は一日、十二時の魔法が解ける前に目的を果たしてください…………それでは貴方の願いが叶いますように…………」
主催がそう言うと、身体が光に包まれて再び意識が途切れてしまった。
意識が途切れるその間際、取って貼り付けたかのような笑顔の主催が目に写り、消えていった。