新世紀武闘伝エヴァンゲリオン!!   作:紅乃 晴@小説アカ

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第一話「戦士のゴング響く!シンジよ、今が立ち上がる時だ!!」

 

 

「特務機関NERV?」

 

「そ、国連直属の非公開組織」

 

 

駆けつけたミサトの車。その助手席に乗り込んだシンジは凄まじい速さで過ぎ去ってゆく大都会の光景、そしてビルの摩天楼の中から見える〝使徒〟と軍の戦いをぼんやりと眺めながら言葉を続けた。

 

 

「はぁ。父のいるところ…ですか」

 

「まっねー。お父さんの仕事、知ってる?」

 

「人類を守る、大事な仕事だとか」

 

 

それ以上、ミサトとシンジの言葉は続かなかった。彼は気怠げに後ろへ流れてゆく景色を見つめているだけで、しかしその姿には一切の隙や油断などは感じさせなかった。そのことが、軍属でもあるミサトに僅かな警戒心を抱かせていたのだった。

 

 

(やけに淡々とした子…。それにさっきの出来事。幻覚?偶然?奇跡?そのどれとも言えない威圧感。資料では載ってない側面がこの子にはある…?)

 

 

そもそもの話、N2爆弾の衝撃波を人力で相殺できるなんて見たことも聞いたこともない。ただなる偶然と奇跡が重なり合った結果、奇跡的に自分たちのところにいる場所にだけ衝撃波が来なかったと言われた方が、まだ納得できるまである。

 

しかし、あの衝撃は確実に横にいる少年が拳を構えた瞬間に飛散し、消滅していた。信じられないことであるが、事実がそう示していたのだ。

 

 

「…これから父のところへ行くんですか?」

 

「そうね。そうなるわね」

 

 

思考の流れを断ち切るようなシンジの言葉に応えるミサト。その裏のある物言いを、シンジは鋭敏な感覚で完全に捉えていた。ミサト自身の素性を隠す素振りも含めて。

 

シンジ自身、数多くの〝修行〟をこなし、師匠から受け継いだ〝学〟もある。

 

基礎体力は過去の弟子には劣るそうだが、頭の出来はその倍は良いらしい。体感的に伝授されるよりも、師匠からの理論や東方不敗な在り方から学んだ方がシンジはグッと武闘を身につけることができたように思える。

 

理詰めで武闘を極めようとするシンジは、気が付けば人の感情の動きを手にとるように把握できるようになっていた。

 

長い地下トンネルに入る。

 

 

(碇…ゲンドウ…)

 

 

シンジは心の内で、己を捨てた父の姿を思い返す。もう輪郭はぼやけてはいるが、その姿ははっきりと目に焼きっている。

 

 

「NERVの…父の仕事で、僕が何かするんですか?」

 

 

車ごと余裕で乗るエレベーターに乗ったあたりで、シンジは確信を突くようにミサトへ問いかける。彼女はすぐに返事はせずにどこか口籠った様子だった。

 

 

「そう言うことですか。全く、用もないのに父が僕に手紙をくれるはずない」

 

「そっか…苦手なのね、お父さんが。あたしと同じね」

 

「苦手どころじゃありませんよ」

 

 

そう返して、シンジは暗く奈落へと続くようなエレベーターの行先に気を集中させるのだった。

 

 

 

 

 

 

「あきれた。また迷ったのね」

 

「あ、あら、リツコ…」

 

 

結局、あのあと車から降りて施設の中へと足を踏み入れたわけだが、ミサトの案内の結果大幅に迷う事になってしまった。最終的にシンジが気配を頼りに通路を進み、どうにか司令部にたどり着くことができたのだった。

 

 

「何やってたの、葛城一尉、人手もなければ、時間もないのよ」

 

「ごめん!」

 

「…例の男の子ね」

 

 

白衣の女性、赤木リツコがシンジを値踏みするような目で見つめる。子供相手だからバレないと思ってるのだろうか?シンジは不機嫌な心をしっかりと隠してリツコと向き合った。

 

 

「よろしくね」

 

「どうも」

 

「これまた父親そっくりなのよ、かわいげのないところとかね」

 

 

好き勝手なことを言ってくれるな、減点だな。と心の中でつぶやいていると司令部に通信が響き渡った。

 

 

《繰り返す、総員第一種戦闘配置。対地迎撃戦用意》

 

「ですって」

 

「これは一大事ね。で、初号機はどうなの?」

 

「B型装備のまま、現在冷却中」

 

「それほんとに動くの?まだ一度も動いたことないんでしょう?」

 

「起動確率は0.000000001%。O-9システムとは、よく言ったものだわ」

 

「それって、動かないってことじゃない?」

 

「あら、失礼ね。ゼロではなくってよ」

 

「数字の上ではね。ま、どの道動きませんでした、ではもう済まされないわ」

 

 

渡された小冊子に目を落としながら、シンジは歩いてゆく先を注意深く観察する。なにか大きな気がある。武闘家としての感がシンジにそう告げてきた。

 

 

(さっきから何の話をしているかさっぱりだけど、知らないことを良い事に良からぬ思惑を感じるな…やっぱり、師匠の直感が当たってたのかな)

 

 

父に会うことは良いことだろう。だがな、シンジ。その本質にはただならぬ思惑を感じる。決して油断するのではないぞ。

 

餞別で師匠の「マスタークロス」を受け取った際に言われた言葉だ。油断するつもりはありませんよ、師匠。

 

大きな格納庫に辿り着き、照明が照らされる。眩しさに目を凝らすと、そこには巨大な頭があった。

 

 

(巨大ロボット?)

 

「人の作り出した究極の汎用人型決戦兵器、人造人間エヴァンゲリオン。その初号機。建造は極秘裏で行われた。われわれ人類、最後の切り札よ」

 

 

そんな機密中の機密の場になぜ自分が連れてこられたのか?なぜ、人類の最終兵器、最後の切り札の前に連れてこられたのか。シンジはそこで気がつく。師匠が言っていた思惑が的中したのだ。

 

 

「これも、父の仕事ですか?」

 

「そうだ」

 

 

シンジの問いに応えたのは、はるか素性にあるガラス張りの部屋に立つ男だった。髭面にサングラスを掛け、こちらを見下ろす男。それが誰なのか、シンジにはすぐ判断できた。その気配を忘れたことはなかったからだ!!

 

 

「久しぶりだな…出撃」

 

 

挨拶もおざなりにしてそう言ってのけた司令の言葉にミサトが目を向いて食いつく。

 

 

「出撃?零号機は凍結中でしょ!?まさか、初号機を使うつもりなの!?」

 

「えぇ、ほかに道はないわ」

 

「パイロットがいないわよ!?」

 

「さっき届いたわ」

 

 

そう言ってリツコが頭上にいる父に視線を向けたままのシンジを指さした。

 

 

「…マジなの?」

 

「碇シンジ君。あなたが乗るのよ」

 

「無茶よ!?レイでさえ、エヴァとシンクロするのに7ヶ月もかかったんでしょ!?今来たばかりのこの子にはとても無理よ!」

 

「座っていればいいわ。それ以上は望みません。それに今は使徒撃退が最優先事項です。そのためには誰であれ、エヴァとわずかでもシンクロ可能と思われる人間を乗せるしか、方法はないわ。分かって…」

 

 

リツコがそこまで言って、途端振り返った。ミサトも気配を感じてリツコと同じ方へと向く。その手は腰に備わる銃へと無意識に伸びているのがわかった。

 

リツコとミサト。二人が背中に冷たいものを感じながら見つめるのは、さっきとは比べ物にならない気配となったシンジだった。

 

まるで目にみえるようなプレッシャーを纏うシンジは、平坦な声で見下ろすゲンドウへ問いかける。

 

 

「父さん…なぜ僕を呼んだ」

 

「おまえの考えている通りだ」

 

「じゃあ僕がこれに乗って、さっきのと戦えって言うのかな?」

 

「そうだ。必要だから呼んだまでだ」

 

「なぜ、僕なの?」

 

「ほかの人間には無理だからだ。操縦の説明を受けろ。乗るなら早くしろ。でなければ帰れ」

 

 

ダンっと、その場から一切の動いていないはずのシンジのいる床にヒビが入った。否、シンジは動いていた!目にも止まらぬ速さで足を上げ、そして踏みしめたのだ!たった一撃で格納庫の橋が歪み、亀裂が走ったのだ!!

 

 

「何がおかしい……何がおかしいぃ!いいか!母は死に、父であるお前が僕を捨て、親戚の家で居場所を失った僕はこのザマだ!」

 

 

闘気を漲らせて、シンジは見下ろすゲンドウへ指を刺す。それは怒りであった!師匠から禁じられた怒りによるスーパーモード!その姿へと変貌しているように思えた!!

 

毛は逆立ち、怒りに身を委ねたような闘気が指先からゲンドウへと向けられる。一見、彼は狼狽えはしなかったが、計り知れないパワーと威圧感を前に冷や汗が止まらなかった。

 

 

「碇ゲンドウ!お前に笑われる筋合いは無い!僕はお前を許さない!いつか、お前を叩き潰してやる!!」

 

 

格納庫に響くシンジの声。その直後、NERVの基地が大きく揺れた。釣られていた水銀の照明が激しく揺れている。

 

 

「…奴め、ここに気付いたか」

 

《第1層第8番装甲版損壊!》

 

「シンジ君、時間がないわ!」

 

 

シンジは怒りを収めて、ミサトの声に応じる。だがあんなモノに乗り込むつもりはない。師匠が常に言っていた天然自然を父母とする流派東方不敗とは相容れない存在だとシンジは無意識のうちに感じ取っていたのだ!!

 

その様子に気づいたゲンドウが、すぐさま行動を起こす。

 

 

「冬月、レイを起こしてくれ」

 

『使えるかね?』

 

「死んでいるわけではない」

 

 

わかった、と冬月が答える。すると、すぐにストレッチャーに乗せられた包帯まみれの少女、綾波レイがシンジの前に現れた。ふらふらとストレッチャーから降りるレイに、ゲンドウは抑揚のない声で告げる。

 

 

「レイ、予備が使えなくなった。もう一度だ」

 

「はい」

 

 

それを境に、オペレーターたちも準備へと入った。ふらふらと覚束ない足取りで初号機に向かうレイなど気にもしないで淡々とコンソールを叩いて準備を始めてゆく。

 

 

「初号機のシステムをレイに書き直して、再起動!」

 

「了解。現作業中断。再起動に…」

 

 

そんな彼らを見て、ついにシンジの堪忍袋の緒が切れた。倒れそうなレイを支えると同時に振り下ろされた拳は、ケイジ内のあらゆるものを揺らした。リツコやミサトも想像絶する衝撃と揺れに思わず腰を落とす。

 

ゲンドウは戦慄した。シンジが放った拳によって、彼が立つ位置には大きなクレーターができていたのだ!!

 

 

「貴様…こんな…こんな傷だらけの少女に戦えというんですか!!貴方たちは!!」

 

「シンジくん…?」

 

「やります……僕が乗ります!」

 

 

 

 

 

 

『エントリープラグ注水』

 

「何ですかこれ?」

 

 

エントリープラグ内に乗り込んだシンジの元に赤とも黄色とも言えない色合いの液体が流れ込んでくる。全く動じないシンジの問いかけに、リツコが淡々と説明口調で返した。

 

 

「大丈夫、肺がLCLで満たされれば直接血液に酸素を取り込んでくれます。すぐになれるわ」

 

 

言われるがまま、シンジはせりあがってきたLCLを飲み込んだ。ガバッと気管と気道、肺に水が入る。胸が焼けるような鈍痛が響くが、それよりも嫌な感覚があった。

 

 

「…血の味がするな」

 

 

誰にも聞こえないシンジの独り言。そんな彼が入るエントリープラグ内では映像が瞬き、凄まじい速さで起動準備が進められていた。

 

 

『主電源接続』

 

『全回路動力伝達、問題なし。A-10神経接続異常なし。LCL電荷率は正常。思考形態は日本語を基礎原則としてフィックス。初期コンタクトすべて問題なし』

 

『双方向回線開きます。シンクロ率41.3%』

 

 

叩き出された結果に、リツコは満足そうに目を細める。

 

 

「プラグスーツもなしに、すごいわね」

 

『ハーモニクスすべて正常値、暴走ありません』

 

「行けるわ。発進準備!」

 

 

ミサトの号令が入り、エヴァンゲリオン初号機の出撃準備が進められてゆくを。ロックボルト解除確認。アンビリカルブリッジ移動開始。第二ロックボルト解除、第一拘束具を除去。同じく、第二拘束具を除去され、初号機の体はリフトへと乗せられた。

 

「それにしても、パイロット…素人なんでしょう?全然怖がったり、緊張したりする素振りが見えませんね」

 

 

そういうオペレーターの日向。ミサトやリツコもモニターを見ると、シンジは瞑目するように目を閉じ、呼吸を整えていた。心拍数を見てもとても落ち着いているように思える。

 

 

(まるで精神統一でもするかのような…嵐の前の静けさってやつかしら)

 

1番から15番までの安全装置を解除。解除確認。現在初号機の状況はフリー。外部電源、アンビリカルケーブルが接続された。

 

 

「了解、EVA初号機射出口。進路クリアー、オールグリーン。発進準備完了」

 

「了解。かまいませんね?」

 

「もちろんだ。使徒を倒さぬ限り我々に未来はない」

 

(…碇、本当にこれでいいんだな?)

 

「発進!」

 

 

ゲンドウの許可を得たことで、オペレーター達は発進シークエンスを始め、ミサトの号令の下、拘束具が除去されたエヴァは地表までの射出ルートに乗った。

 

上へ上へと凄まじい勢いで上がってゆく感覚。そして、長いトンネルを抜けるとそこは第三東京市の摩天楼。

 

使徒とエヴァンゲリオンの戦いの場が広がる。

 

 

「シンジくん、今は歩くことだけを…」

 

「はぁあああ!!」

 

 

拘束具から解放された瞬間、初号機は今まで見たことがない軽やかな動きで挙動し始めた。

 

 

「はっ!!せいっ!!でやぁ!!」

 

 

拳を突き出し、手を開き、拳を握る。回転、挙動、全てがシンジのイメージ通りに動く!!

 

 

「はぁああーー…はっ!!」

 

 

ひとしきり、思考と肉体の感覚を確認したシンジは、息を吐いて構えを取った。全てがリンクしている。息遣いも、感覚も、何もかもが!!

 

 

「すごい!思った通り、僕の動きを完全に再現してくれてる!これが師匠が言っていたモビルトレースシステム…!!」

 

「いや、全然違うのだけど」

 

 

ミサトが呆れたようにいう隣で、リツコはたっぷりの粉を入れたコーヒーを一気飲みしていた。残念ながら夢ではない。

 

 

「そうか、お前が使徒か!!ならば!!」

 

 

サキエルもこたえるように指を指す初号機と向き合った!!

 

使徒とエヴァンゲリオン!!

 

人類という種族と、使徒!!

 

種と種を賭けた戦い、それこそがエバーファイトである!!

 

 

「エバーファイトぉおおお!!」

 

「レディイイ!!」

 

「ゴォオーーー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

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