ある<守護戦士>の冒険   作:廓然大公

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第4話

 ヤマトサーバー最大のプレイヤータウン、アキバ

 

 そのシンボルともいえる大銀杏のそびえる中央広場の端には丸い大きなモニュメントが鎮座している。人の背丈の三倍ほどはあるその丸い輪を縦にしたようなオブジェ。材質は青銅のようにも青みが勝った大理石にも見えるような光沢のある木目ののような色合いをしている。側面やその内側に至るまで施された幾何学模様の意匠は眺めているだけで錯覚のように動いているようにも見える。傷はなく、欠けもない。まるで昨日出来上がったばかりにようにも悠久の時を経たようにも見えるその構造物は果たしてそれがいつ作られそして底へと設置されたのか、推しはかることはできなかった。然し、その巨大な輪が設置された台座、石だ民のような小さな台座はあちこちは苔むし、ところどころをの割れも見られた。まさに場違いな工芸品、ともいうべきその建造物。

 

その名は<妖精の輪>

 エルダーテイルがゲームであった時代各都市をつなぐために用いられていたワープゲートの一種だった。その転移先はランダム要素が強く、月齢や様々な要因が大きく絡み合い、ゲーム時代、使用時には攻略サイト等に設けられたタイムテーブルによってその行き先を確認してから用いなければならないほどだった。

 しかし、その<妖精の輪>は大災害以降、その転移先を確認するための外部サイトを閲覧することも出来なければタイムテーブルをスラも代わっているということが確認されていた。どこに出るかの覆博打を望むものは少なく代えることが出来るかも分からないそれは移動手段と言うにはあまりにお粗末なものだった。

 

 日も出ていないようなまだ寝静まっている早朝午後四時。そんな<妖精の輪>の前には幾人かの人影が集まってた。その多くは戦闘にでも赴くように、臨戦態勢を整えたように鎧や杖やローブをその身に纏っていた。

そんな一段の中から一つよくとおるハスキーな女性の声が聞こえた。

 

「チャンと一覧は持ったでしょうね」

 

その声に一人の狐尾族の男が苦笑した。

 

「耳にたこが出来るくらい聞きましたよ、心配性ですね、姐さんは」

 

彼女は手に知っていたバインダーで彼の頭を小突きながら戒める。

 

「文句言うんじゃないの、どこ行くか分かんないんだから心配も準備もしてもしたりない暗いよ、ホラ最終チェックするする」

「へいへい」

 

その言葉に彼らは自分のアイテムバッグを確認していく。

 

「あれ、今日はアマリリスさんもでるんですか、久しぶりですね」

 

そう声をかけてきたのは軽装の小さな少女の姿、他の者たちのように準備をしている様子はない。そして右袖につけられた円卓会議と記された腕章が揺れていた。

 

「ええ、今回は今までの規則性じゃないパターンを試すんですって。だからちょっと慣れた人で固めてるみたい」

「確かに、アマリリスさんも確かグリフィンとか乗れましたっけ。そういわれてみればなかなかの実力者ぞろいのメンバーですね、今回」

「ええ、こいつでもどってこれなくても何とか自力でアキバまで戻って来れること、それが今回の条件だからね」

「精鋭部隊ってことですね」

 

その言葉に小さく笑いを返すと、少女はそうだ、と思い出したように手にしていた紙の資料を見せてきた。

 

「これなんですけど、円卓会議からってことで送られることになっているんですけど、この隊の隊長って、アマリリスさんじゃないんですか、受領のサインとその他マニュアル等説明しておきたいんですけど」

「今回は私じゃないのよ、私は副隊長。体調はあっちにいる青いソーサラーのタージマンって男の子」

「分かりました、ありがとうございますアマリリスさん。それじゃあお気をつけて」

 

手を振りながら去っていく彼女に小さく手を振り返す。

 

「あの子は確か海洋機構の子でしたか」

 

その声に振り替えれば底には薄紫を基調とした神官服に身を包んだ男の姿があった。

 

「アインス、アンタまで見送りとはなかなかどうして根性の別れみたいで嫌だねぇ」

「せっかく来たのにその言い方はあんまりじゃないですか、アマリリス」

 

彼は深いため息とともに小さく笑う。

 

「案外こんな小さいゲン担ぎだって馬鹿にならない物さね、まして今回は行くも帰るも大博打なんだから」

「迷惑をかけます」

 

 

 

 ギルドホネスティより選出結成された彼女たちパーティーに化せられていたのはフェアリーリングの調査だった。アキバの統治機構、円卓会議は都市間トランスポートゲート、<妖精の輪>復旧に向けての各種調査をギルドホネスティに委託していた。ゲーム時代とはまったく異なってしま転移先のタイムテーブルを実際に転移することによって調査するという任務。転移先はランダムであり、仮に戻ろうとしても入ったゲートへと戻ってくる事が出来るとは限らない。転移する場所によっては危機的状況に陥ることも考えられる危険であり人海戦術を必要とする負担の大きい任務。大手戦闘系ギルトとして手練れの多いホネスティがその任務をこなしている。

 彼女たちはその調査団の一部隊としてその門をくぐる事になっていた。

 

 

「アンタの責任じゃないよ、だれの責任でもない。それを勝手に自分の責任にするのは傲慢ってものさ」

 

彼女は彼の額に浮かんだ皺をつまむ。和束に紅くなった彼の眉間から手を離す。

 

「まぁ、そんなに言うなら帰ってきたらとりあえずアインスのおごりで上手いものは食わせてもらうけどね。者ども、帰ってきたらギルマスのおごりでなんでも食べてい行ってさぁ」

 

その声に沸き立つ班員たち。少し困ったように彼は笑い、然し少しうれしそうに受け入れた。

 

「それと、タージマンの事なのですが」

 

アインスは円卓会議の少女と話す青い青年へと視線をやる。

 

「やっぱりそれが本題か。いいよ、足りないところはフォローもするさ」

「ええ、ホネスティとしても調査パーティーをまとめられるリーダー格を増やすことは急務です、毎度毎度貴方のような同じ人に頼むのも負担は大きいでしょう」

「それを教えるのがあたしってのは結局負担の量でいえば変わってないんじゃない、ヤバ、私の負担大きすぎっ」

「痛いところを突く」

「冗談よ、後輩が育つのを喜ばない先輩がどこにいるってのよ」

 

口元を覆い、大げさに驚いたような彼女にアインスも大げさに辟易したように手を振った。

 

「まぁ、お姉さんに任しときな」

 

彼女の言葉にアインスはゆっくりと頷いた。

 

「それじゃあそろそろ出発の確認をするので皆さん集まってくださーい」

 

フェアリーリングの近く、濃い青のローブに大きな灰色のバックパック、そして青い髪と瞳をした青年、タージマンの声がかかり、あたりをうろついていたメンバーたちがそれぞれの別れを終え、終結する。

 

「おはようございます、今回の調査隊、指揮を務めます<妖術師>のタージマンです。よろしくお願いします」

「よっ、ついに昇進したか」

「これで一党独裁が破られた」

「人権宣言の発表だ」

 

少し緊張したような青年の言葉にメンバーたちはニヤリと笑いながら拍手を返す。大げさにさげた頭を上げると青年は彼女へと視線をやる。

 

「指揮補佐をするアマリリスだ。厄介ごとは大体隊長に押し付けるように、私には持ってこないように」

「手放しジャン、酷い副長だなぁ」

「自分で梯子をかけて登らせてから梯子外すもんなぁ」

「流石妖怪アマリリス」

「もみじおろしにされたいか小童ども」

 

茶化すように笑い、メンバーたちがわざとおどけるように怯える。

 

「遊んでないでそろそろ真面目にやりますよ」

 

タージマンの声に彼らは居住まいを正す。

 

「これまでの調査ではゲーム時代におけるタイムテーブルを構成していた要素を元に予測を立てて調査を行ってきました。月齢を基本とし太陽暦、太陰暦、グレゴリウス暦、天文による星の運行など予によって行き先が決定されるという推測に基づくものです」

 

しかし、と続ける彼の表情は少し曇る、その言葉の先をメンバーたちも知っている。彼と同じように僅かな陰りを見せた。

 

「これまでの調査でその推測は完全に破られてしまいました。これまでのような規則性はない、もしくはまったく別の法則に支配されている。」

 

 月齢と時刻によって決定されるテーブルは672通り。碁盤の目のように全国各地へと張り巡らされた<妖精の輪>調査はその所在の確認だけでも時間を取る。

 

「依って、今回はまったくの別のアプローチを行うこととなりました」

「いいよ隊長、もっとまとめてくれちゃっても、もう夜も開けそうだし」

「え、せっかくちゃんとこんなカンニングペーパーまで作って来たんですけど」

「いいよ、長い、太陽上ってきちゃうから手早く手早く」

 

少し不満げに彼は持っていたカンニングペーパーを丸めて投げ捨てた。

 

「つまり、このポンコツがどこ繋がるかわけわからんので人海戦術で入っては行き先を調査します。つまり当たって砕けろ大作戦を敢行します」

「いえーい、もともこもなーい」

「やふーい、理論を投げ捨てたー」

「フェアリーリングはつまり手塚ゾーンだったのか」

 

タージマンの減ったくれもない言葉に彼らは笑った。

 

「<冒険者>なんだから丁度いいさ、先のわからないからこその冒険ってね」

「はいはいー、聞いてくださーい。みんなが静かになるまで一分かかりました。注意事項です。各自死なないように、いや死んでもいいですけど、どこかの街に入らないように、やばそうならコールオブホームで帰ってください、一応今回のメンバーは街に入って底がホームタウンとして認識されても一人で帰ってこられる程度の力量は持っている型ではあるので心配はあまりありませんが何があるか分かりません、気を付けてください。遠足は帰り着くまでが遠足です」

「おお、タージマン、もう隊長が板についてきたね」

「というか、いつもアマリリスさんが隊長の時もこういうの大体僕に投げてきてたじゃないですか」

「そう考えるともうお前は隊長だったのか、ついに取られてしまったか」

「アマリリスさんが面倒だから投げてきたんじゃないですか、アインスさんに言って」

 

アマリリスの適当な口笛にタージマンは慣れた様にため息を突いた。

 

「それともう一つです、ディアーナのプロトタイプが今回円卓から届いています。まだ実験段階ではあるそうで、発動は一回、効果時間は二十五秒ほどだそうです最終手段に使ってください、とのことです」

「まさに切り札ってわけね」

 

彼が指さしたのは五十センチほどの木箱、表面には円卓会議のエンブレム蛾焼き印されていた。

「落としても壊れないかね」

「耐久性は折り紙付きって言ってましたし大丈夫でしょう、やばくなったら使いましょうかね」

 

彼はそういって指を振ると木箱は小さな粒へと解けるように消え、彼の所持アイテムランが一つ増えた。

 

「それじゃ丁度時間ですね」

 

東の空からの折り始めた朝日は朽ち果てたアキバの町からゆっくりと、そしてまっすぐ差し込みその輪へと降り注ぐ。まだ色のない陽光はその石碑へと吸い込まれるように輝きを増し、円形の輪の中央へと注がれる。何男なかったはずのそこには薄い光の奔流が渦をまき始めた。全ての色の光が合一したように白く、光の渦は大きく広がっていく。ゆっくりと、そして着実に。

 太陽が地平に触れその輪全てに陽光が降り注いだころ、その渦は浸食を止めそして彼らを迎える門と化していた。

 

 

 

「これより、第三十二次<妖精の輪>調査を開始するっ、出発っ」

 

 

タージマンの一声に答えるように彼らは進み、そして次元の渦へと落ちていった。

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