気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!   作:味噌村 幸太郎

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159 寸止めを極めると、漢になれる。

 尚もマーブルさんは俺のホットキャンディー……ではなかった、アイスを堪能中だ。

 時折「みゃーん」と可愛らしい鳴き声を上げて、舌先でペロペロする。

 くっ! 可愛すぎだろ……お持ち帰りしてぇ。

 

「猫もいいもんだなぁ」

 そう呟くと、ミハイルが満足そうに頷く。

「だろ☆ オレもにゃんこにおやつあげてみよっと☆」

 ミハイルは床にお尻をつき、ぺったんこ座りしていた。

 えぇ、男であの座り方してるやつ、初めて見たわ。

 

「ほらほらぁ☆ 今からクッキータイムだぞ~ おいでぇおいでぇ!」

 そう手招きすると、散らばっていた猫たちが一斉に集まる。

 

 だが、俺の嫁……じゃなかったマーブルさんは、振り返ることもせず、アイスを食べている。

 さすが、ここのボスだな。

 愛着がわいたので、この天才作家が名前をつけてやろう。

 そうだな、マーブル猫だから、マーラーちゃんってのはどうだ?

 

「なぁ、マーラーちゃんよ?」

 俺がそうたずねると、猫はこう言う。

「みゃあ~」

「そうかそうか、気に入ったか。もっとしゃぶっていいんだぞ? マーラーちゃん」

「んみゃ」

 うむ、癒されるなぁ。

 この空間、好き。

 ネコカフェ、けっこういいじゃない。

 

 そう思いにふけていると、何やら部屋の奥が騒がしい。

 ミハイルの甲高い叫び声が、壁に響き渡る。

 

「イヤァッ!」

 

 俺はビックリして、思わずアイスキャンディーを床に落としてしまう。

 ミハイルの方に視線をやると、そこには驚愕の光景が……。

 

「あんっ! ダメだってぇ! 待ってよぉ! ん、んん!」

 

 猫の大群に金髪の美少女が襲われとる。

 違った、男の子だった。

 

 おやつのクッキーを皿からこぼしたようで。

 彼の身体中に、小さなエサが付着している。

 それ目掛けて猫たちが、集団で飛び掛かった。

 

「んみゃ~」

「チロチロ……」

「フゴロロロ」

 

 猫たちはミハイルのことなどお構いなしに、彼の身体をなめ回す。

 白くて柔らかそうな素肌を、小さなピンク色の舌先で味を確かめる。

 その度に、ミハイルは声を荒げる。

 

「あぁん!」

 

 俺は童貞だ。

 わかっているつもりだった。

 しかし、なんなんだ。これは?

 相手は男の子だってのに、女以上のいやらしい声をあげやがる。

 

「んんっ! もうっ! いい加減にしないと怒るゾ!」

 

 そうは言うが、相手はか弱い小動物だ。

 しかも、彼がなによりも好きなカワイイ生き物、ネコ。

 伝説のヤンキーと言っても、人の子。

 手を挙げたりはしない。

 

 頬を赤くして、吐息をもらす。

 

「ハァハァ……もうダメッ」

 

 俺はただその光景をボーッと眺めていた。

 口を大きく開き、悶えるミハイルを見て自分の中に眠っていた何かが、目覚めそうだからだ。

 この感覚……俺は一体どうしたんだ?

 助けるべきなのだろうが、身体が動いてくれない。

 頭では理解しているはずなのに、心が俺を止めてしまう。

 

 気がつけば、猫の一匹がミハイルのタンクトップの中に潜り込む。

「ひゃっ!」

 それに驚いた彼は、床に倒れ込んでしまった。

 仰向けのまま、猫に身体を許す。

 

 無抵抗なミハイルをいいことに、猫たちは更に勢いをつける。

 

「「「んにゃ~」」」

 

 タンクトップの裾がめくれあがった。

 もう少しで、ミハイルの大事なところが見えてしまいそう。

 俺はそれをいいことに、目に焼きつける。

 こんなエッチなシーンを生で見れることは、童貞の俺にはきっと二度と起きないだろう。

 脳みそのHDDに保存だ!

 

「あっ……いやっ! そこは、らめっ…」

 

 気がつくと、ミハイルの目には涙が浮かんでいた。

 なんてこった。

 俺は寝取られものが嫌いだ。

 だが、相手は猫だ。動物、ドーブツだよ。

 ノーカウント、マブダチの俺が許そう。

 

 タンクトップに潜り込んだ猫はどんどん上へとあがっていく。

 それにつれ、ミハイルの息が荒くなり、聞いたこともないような声で叫ぶ。

 

「あぁっ! らめらって言ってんのに……はっ!」

 

 その瞬間、彼の目が大きく見開いた。

 涙で潤ったエメラルドグリーンの瞳が輝く。

 身体を大きくのけぞり、つま先をピンッと伸ばす。

 頬は紅潮し、小さな唇から唾液を垂らしている。

 彼はしばしの間、固まっていた。

 

「……」

 

 ミハイルの異変に気がついた猫たちはビックリして、一目散にその場を逃げ去っていく。

 

「んっ……」

 

 ひきつけを起こしたかのように、彼の身体は固まっている。

 どうやら、猫の一匹がエサと間違えて、ミハイルのナニかをなめてしまったようだ……。

 恐らく、彼も初めての経験なのだろう。

 俺だってないもん!

 

 パタッと音を立てて、背中を床に下ろす。

 止めていた息を吐きだす。

 

「はぁはぁ……ひどいよ、みんなして……」

 

 泣いていた。

 集団で犯されたようなもんだからな。

 

 一応、フォローしておこう。

 

「だ、大丈夫か? ミハイル……」

 

 声をかけると、彼はめくれあがったタンクトップを直し、ゆっくりと起き上がる。

 いわゆるお姉さん座りで、背中で息をしている。

 猫になめ回された肩や太ももが、唾液で光って何ともなまめかしい姿だ。

 

「なんで、止めてくれなかったの?」

 

 上目遣いで、泣き出すミハイル。

 かわいそうなことをしてしまった。

 だが、見ていたかったんだ……そう言うと怒るよね?

 

「す、すまん。俺もビックリして……」

「グスン……身体中、びしょびしょだよぉ」

 

 艶がかった白い肌が何とも美しい。

 濡れているからこそのいやらしさ。

 このまま直視していると、今度は俺が襲っちまうそうだ。

 

 機転を利かせ、近くにあったタオルケットを手に取る。

 そして、俺は優しくミハイルに話しかける。

 

「ほら、これでふいたらどうだ?」

「ひくっ……うん。ありがと」

 

 猫の毛だらけのタオルで、濡れた身体をふく。

 罪悪感でいっぱいになった俺は、ふと後ろを振り返る。

 マーラーちゃんが、こっちには目もくれず、相変わらずアイスキャンディーをペロペロとなめていた。

 さすが、ボスだ。貫禄が違う。 

 

 そうこうしていると、店のお姉さんが部屋に入ってきて、利用時間の終了を告げる。

 帰る前に俺が、お姉さんに質問する。

 

「すいません、この子。いくつですか?」

 マーラーちゃんを指差して。

「あぁ、まーくんですかにゃん? 2歳ですにゃんよ」

「え……オスだったんすか?」

「はいにゃん♪ 立派なモノがついてますにゃんよ~♪」

 そう言って、マーラーちゃんを抱きかかえると、股間を見せてくれた。

 俺よりもデカい……。

 

「んみゃ~!」

 

 完敗です、負けました。

 あなたのことは今度からマーラー皇帝とお呼びさせていただきます。

 

 

 こうして、初めてのネコカフェ体験は終わりを迎えたのである。

 ミハイルには悪いが、俺だけが癒されてしまった。

 

 

 店を出て、旧三号線の道路をとぼとぼと歩き出す。

 

「なんか色々大変だったけど楽しかったな、タクト☆」

「う、うん……」

 先ほどのなまめかしい姿をフラッシュバックしている俺は、ミハイルに視線を合わせることができない。

「タクト? 可愛かっただろ、にゃんこたち?」

 俺の顔を下からのぞき込む。

「うん、すごく……」

「来て良かった☆ また今度遊びにいこうな☆」

「ぜひともお願いします……」

 

 なぜか前のめりで歩く俺だった。

 

 

 

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