気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!! 作:味噌村 幸太郎
160 はじまりのはじまり 161 ワン切りでもいいよって言われて、するわけないだろ
160 はじまりのはじまり
この天才。
新宮 琢人様が、なぜあんなおバカさんたちのガッコウに入学したのか……。
それは俺の仕事にある。
一ツ橋高校への入学も俺の仕事のために入ったようなものだ。
今更……俺はガッコウなんてもん、必要ない。
そう思っていたのに、あのクソ編集のせいで……俺は騙されたのだ。
被害者と言ってもいい。
俺はこの春から晴れて高校生という身分を得たのだが、その前に社会人だ。
未成年ではあるが、仕事は二つ抱えている。
一つは新聞配達。朝刊のみを生業としてもう6年も続けている。
そして、二つめは小説家だ。
別になりたくてなったわけではないのだが、オンライン小説を小学生からやり始め、俺の小説は一部のファンからは人気を得ていた。
そんなコアなファンが勝手に出版社へ打診し、今のクソ編集から連絡があった。
「センセイの小説を本にしてみませんか?」と……。
これが全ての間違いだった。
161 ワン切りでもいいよって言われて、するわけないだろ
今から遡ること四年前、俺が中学二年生の夏だ。
正直、オンライン小説は趣味の一つであり、ライフワークにすぎない。
もちろん根強いファンがついてくれたことは感謝の極みだ。
だが、出版となると抵抗があった。
その理由は金だ。
金が関わると色々と面倒だ。
趣味の範囲内なら何も考えず、自分の書きたいものだけ書けばいい。
正直、それが楽しかったのに、編集にいろいろと口を挟まれるのは俺の美学に反する。
それでも俺の自宅には毎日電話がかかってきた。
『もしもし、先日もお電話しました。博多社の白金と申します』
「興味ない」
『え?』
ブチッ!
次の日……。
『あの! 博多社の……』
「死ね」
ブチッ!
また次の日……。
『あのぉ、白金ですけどぉ……』
「コノ、デンワバンゴウワ、ゲンザイ、ツカワレテオリマセン……」
『いや! ごまかされませんよ!』
ブチッ!
それが連日だ。ストーキング行為はやめてもらいたいものだな。
だが、ある日、タイミング悪くして母さんが電話に出てしまった。
「あ、はい? 出版社の方ですか? え、うちのタクくんがですか? まあまあ……」
母さんの眼鏡からは、輝きを感じる。
「ではお日にちはどうします? はい、はい……。わかりました、タクくんに伝えておきます」
受話器を切ると共に、母さんの眼鏡が輝きを増していく。
「タクくん、今日はお赤飯を炊きましょうね♪」
「いや、俺は女の子ではないぞ」
そう。周りの大人たちの思惑で勝手に作家デビューしたにすぎないのだ。
不本意ながら……。