気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!   作:味噌村 幸太郎

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第二十二章 第一次テスト大戦
179 試験前は禁欲が常識


 

 五月も終わりを迎えるころ、自宅に一通の手紙が届いた。

 送り主は、一ツ橋高校の宗像 蘭先生。

 

 なんか久しぶりだな。この人。

 最近はミハイルとキャッキャッやってたから、存在感が薄すぎるわ。

 そうかわいそうに思いながら、封を破る。

 中に入っていたのは、一枚の用紙。

 

 手書きで殴り書きしてある。

 

『次回のスクリーングから春期試験を始める! 二回やるからしっかり勉強しておけ! 尚、出題範囲は返却されたレポートのみ!』

 

「あ、もうそんな時期か」

 

 いわゆる期末試験ってやつだ。

 一ツ橋高校は、レポートとスクリーングの出席。それから期末試験で一定の成績を残すことで、今期の単位が取得できると聞いた。

 スクリーングに行く度に、提出したレポートが返却される。

 大体6枚ぐらいの小テストだ。

 こんなものは暗記するまでもない。

 それに中学生時代のおさらいだしな。下手したら、小学校より低レベルな問題も多い。

 

 

 アホらしいと、俺は宗像先生の手紙をゴミ箱に捨てようとした。

 すると、用紙の裏に何かがクリップで挟んであることに気がつく。

 

「なんだ?」

 

 クリップを外してみると、そこには一枚の写真が……。

 恐る恐る覗いた。

 

 セーラー服姿の宗像先生が、一ツ橋高校いや、三ツ橋高校の教室内で股をおっ開けていた。

 仮にも教師だというのに、日頃全日制コースの生徒が勉強している机の上に、尻を乗っけて、グラビアアイドル顔負けのなまめかしいポーズをとっている。

 紫のレースパンティーが丸見え。

 しかも、自身の唇で襟を掴み、裾をまくり上げている。

 つまりパンティと同系色のブラジャーが露わになってしまうのだ。

 

「おえええ!」

 

 俺は自身の部屋のゴミ箱にゲロを吐いてしまう。

 

 それを聞きつけた妹のかなでが、部屋に飛び込んできた。

 

「おにーさま! どうなされましたの!?」

 涎を垂らしながら、肩で息をする。

「ハァハァ……セクハラテロだ……」

 そう言って、写真をかなでに手渡す。

「あら、この方で使ったんですの?」

「んなわけあるか! 捨てておいてくれ……」

 もう見たくないので、妹に処分をお願いしておいた。

 

「捨てるなんて勿体ないですわ……そうですわ! この写真をネットオークションに出品して、お小遣いにしましょう♪」

 そう言って、かなでは自室のパソコンを起動し、宗像先生をスキャンし出す。

 マジで出品されてて草。

 ざまぁねーな。

 俺は知らん。

 

 

   ※

 

「ま、一応、レポートを見直しておくか」

 気を取り直して、久しぶりに机に座る。

 返却されたレポートに目をやると、全問正解で余裕だった。

 幼稚すぎる問題ばかりだからな。

 こりゃ単位取得も楽勝ってもんだ。

 鼻で笑い、机の引き出しにレポートを直そうとしたその時。

 

 スマホからアイドル声優のYUIKAちゃんの可愛らしい歌声が流れ出す。

 俺のお気に入りソング、『幸せセンセー』だ。

 ああ、癒される。

 

 着信名はミハイル。

 

「もしもし?」

『あ、タクト☆ 捕まってよかったぁ☆』

 え? 俺、逮捕されたの?

「な……なんのことだ?」

『あのさ、宗像先生から手紙きた?』

「きたぞ。試験のことでだろ」

『う、うん……それで困ったことがあってさ…』

 なんだ? まさか試験勉強を一緒にしようってか?

 この低レベルなレポートは勉強するまでもないぞ。

 暗記してオワタ! なんだから。

 

「それで? なにが困ったんだ?」

『あ、あのね……返してもらったレポート。試験に出るって知らないで捨てちゃったの……』

 ファッ!?

「な、なるほど……。つまり俺のを貸してほしいわけか?」

『うん☆ いい、かな?』

 顔を見えんがきっと、ミハイルのことだ。上目遣いで頼みごとをしているのが想像できる。

 ダチだからな。仕方ない。

「構わんぞ。いつ取りにくる?」

 自然と笑みがこぼれる。

 学校以外で会えるってのが嬉しいんだろうな。

『ありがと☆ じゃあ、今からタクトん家に入るね☆』

「え?」

『オレ、今家の下にいるからさ☆』

「な、なに?」

 

 そう言った時には、もう既に足音が階段から聞こえてきた。

 トタトタと子供のような可愛らしい小走りで。

 

 バタン! と音を立てて、自室の扉が開かれる。

 

「タクット~☆ 久しぶり~!」

「お、おう……」

 相変わらずの馬鹿力で、ドアを開けたため、少し歪んでしまった。

 初夏も近づいたこともあり、彼の装いも一層露出が増す。

 薄い生地のタンクトップにショートパンツ。

 思わず生唾を飲みこんでしまう。

 

 先ほどの宗像先生とは違って、俺はリバースしない。

 その美しい姿を学習机のイスに腰をかけたまま、見とれていた。

 

「ねぇ、タクトのレポートってどこにあるの?」

 固まっていた俺を無視し、ミハイルはズカズカと部屋に入り込む。

 俺の机に手をつき、腰をかがめる。

 自ずとタンクトップの襟元が緩み、胸元が露わになる。

 ピンクの可愛らしいナニかが見えそうだ。

 視線をそらす俺に対し、首をかしげるミハイル。

 

「タクト? 聞いてる? オレ、早く帰ってべんきょーしないと……タクトと一緒に卒業したいからさ」

 そう言って、口をとんがらせる。

 もちろん上目遣いだ。

 彼のエメラルドグリーンの瞳がキラキラと輝く。

 クッ! 犯罪的な可愛さだ。

 抱きしめたいぜ、ちくしょうめが。

 

 俺は咳払いしてから、引き出しにおさめようとしたレポート一式を彼に手渡す。

 

「ほれ」

「ありがと☆ この借りは絶対に返すからな☆」

 いや、なんか復讐されそうな言い方やめてね。怖い。

「いらぬ気遣いだ。俺とミハイルの仲だろが……」

 言いながらもちょっと照れくさい。

「だよな☆ オレたち、マブダチだもんな☆」

 太陽のような眩しい笑顔がはじける。

 フォトフレームにおさめたいぜ。

 

「ところでタクトってさ……」

 笑ったかと思うと、急にもじもじし出すミハイル。

 なんだ? 聖水か?

 お花畑なら部屋を出て、廊下の奥にあるぞ。

「あん? なんだ?」

 顔を真っ赤にして、何か言いづらそうだ。

「あのね……タクトの誕生日っていつ?」

「なんだ。そんなことか…」

 

 取材のためにチューしたい! とか言うのかと期待してしまったじゃないか。

 返せよ、俺の心の準備。

 しかし誕生日なんて聞いてどうするんだ?

 俺のぼっちを笑いたいのか?

 

「誕生日は6月7日だよ」

「え!? もうすぐじゃんか! なんでそんな大事なことを早く教えてくれなかったの!?」

 恥ずかしがっていたくせに、急に怒り出す。

「なんでって言われてもな……別に聞かれたことないし。ミハイルになんの関係があるんだ?」

 俺がまた童貞として、一つ年を重ねるだけの哀れな記念日だぞ。

「関係あるよっ!」

 机を叩いて、怒りを露わにする。

 こわっ……。

「いや、なんかごめん」

 俺悪い事した?

 

「あと一週間もないじゃん!」

「確かに五月も終わりだしなぁ」

「こんなことしてられない! オレ、もう帰るよ!」

 そう言い残すと、ミハイルは当初の目的であったレポートを雑に握りしめ、嵐のように去っていた。

 

「なんだったんだ、一体……」

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