気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!   作:味噌村 幸太郎

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209 ヤンキー、腐女子に告白してみた

 

 成り行きで、俺とアンナは、後ろから、一連の行動を見届けることにした。

 というか、アンナが悪ノリして「ねぇ、あの二人。いい感じだって、ミーシャちゃんから聞いたよ☆ 応援してあげようよ☆」と提案したからだ。

 だから、今の俺たちは、大きな柱の裏で姿を隠している。

 首だけ出して。

 上からアンナ、俺の順番で、目の前のソファーをのぞきこむ。

 完璧ストーカーじゃん。

 

 

「あの、千鳥くん……。話ってなに?」

 どことなく、ぎこちないほのか。

 それに対して、リキは前のめりで興奮した様子だ。

「わ、わりぃな。ほのかちゃん。こんな夜中に呼び出してよ」

 ツルツルのスキンヘッドが汗ばんでいて、蛍光灯の明かりに照らされる。

 ピカピカでよく目立つ。

「いいけど……」

 いつものほのかとは、どこか様子が違う。

 なにか警戒してるように見える。

 

 

「いけいけっ! 今だよ、リキくん☆」

 頭上でめっちゃ楽しそうなアンナちゃん。

「しかし、この感じ。まだ時ではないんじゃないか?」

「ダメだよ、タッくん! そんな弱気じゃあ! この恋、絶対に死んでも、相手を殺してでも成就させないと!」

「え……」

 それ、もう心中じゃん。

 死んだら相思相愛になれないでしょ。

 彼女の発言に呆れはしたが、俺も見ていてドキドキしてきた。

 他人が告白するシーンなんて、滅多に拝めないからな。

 

 

「あの……そのよ。俺、実は一ツ橋高校に入ってさ。あんまり、自信なかったんだよ。この高校にずっといれるかってさ。前の高校はケンカで中退しちゃって……」

 うわぁ、なんか思ったより、重めな感じの告白だわ。

 てか、ケンカで退学かよ。マジでヤンキーじゃん。

「うん」

「でも、ほのかちゃんと出会って、学校が楽しくてさ。ちょっとずつだけど、勉強とかスクリーングもやる気出てさ。卒業まで頑張れそうなんだよ……だからさ、だから……」

 男らしくねぇな。バシッと言っちまえよ。

「うん……」

 ほのかのテンションはどこか落ちているな。

 嫌な予感がする。

「ああ、ごめん! 俺、ちょっとなに言っているか、わかんねーよな……」

「私も中退したから、気持ちはわかるよ」

 真剣な顔でリキを見つめるほのか。

 だが、彼も負けじと、じっと見つめ返す。

 

「シンプルに言うわ! 俺、ほのかちゃんが好きだ! もし良かったら、付き合って欲しい!」

「……」

 

 

 静まり返るロビー。

 なんだ? こっちにまで重たい空気が漂ってくる。

 真夏だというのに、急に寒気が。

 

 

 リキの男らしい告白に、黙ってうつむくほのか。

「どうかな? ダチからでもいいんだ?」

 沈黙が続くためか、彼は場を和ませようと必死だ。

「……あのね、嬉しいんだけど」

 視線は床に落としたまま、喋り出すほのか。

「う、うん! お、俺じゃ、やっぱりダメかな?」

「この際だから、千鳥くんにもハッキリ伝えておくね……」

 そう呟くと、何を思ったのか、彼女は急に立ち上がる。

 ソファーに残されたリキは、驚いた顔でほのかを見上げていた。

「え?」

 

「私ね……ずっと黙っていたの。宗像先生。琢人くんやミハイルくん。あの人たちには、なぜか自然と本当の自分をさらけ出していられるけど。普段は、隠しているの」

「な、なにを?」

 グッと拳を作ると、ソファーに座っているリキを鋭い目つきで睨みつけた。

 

「私は……今。夢で忙しいの! 絡めることしか、考えてないの!」

「か、からめる? えっ? えっ……」

 言葉の意味を理解できてないリキ兄貴。

 

 

 柱の後ろで聞いていた俺も思わず……。

「ブフーーーッ!」

 大量の唾を吹き出してしまった。

 なに言ってんだ、ほのかのやつ。

 あれじゃ、断ったことに気がついてないぞ!

 

 俺とは違い、アンナは至って冷静で。

「チッ! 失敗しやがって、リキめ」

 おいおい、ミハイルくんが漏れてるよ。

 

 

 腐女子をカミングアウトしたほのかの目に、生気が湧き出す。

「千鳥くんには悪いけど、私。ショタっ子とおじさんでめっちゃ忙しいの!」

 そう言い残すと、彼女は満面の笑みで、その場を去っていった。

「え、え、え? どういうこと?」

 一人取り残されたリキは、困惑した様子で、やんわり断られたことに気がついてない。

 

 ほのかがこちらに近づいてきたので、俺はアンナの手を引っ張って、別の柱にコソコソと逃げ移る。

 エレベーターに向っていくほのかを、確認し終えると、リキの後ろ姿が目に入った。

 

「からめる? キャラメルのことか? しょうた? おじさん? なんなんだ?」

 リキ兄貴、かわいそう!

 

 だが、ここで俺が声をかけるのも、なんだか彼のプライドを傷つけそうだ。

 そっとしておこう……と、思ったら、隣りにいたアンナが、ずいっと身を乗り出す。

 なにを思ったのか、リキの方向へとツカツカと音を当てて、歩き始めた。

 

 

「ねぇ、リキくん」

「え……だれ?」

 真っ青な顔したリキに対して、アンナは優しく微笑む。

 てか、マブダチのくせに、女装がバレてない。

「はじめまして。私、古賀 アンナって言います。ミーシャちゃんのいとこです」

 ファッ!?

 あいつ、自ら墓穴堀りに行きやがった。

 

 予想外の行動に俺もソファーに駆け寄る。

 急いで止めないと、アンナの正体がバレてしまう。

 

「おい、アンナ! リキとは初対面だろ? 失礼じゃないか……」

 設定を守れよ、と彼女の肩を掴むが、逆に冷たい視線で睨みかえされた。

「タッくんは黙ってて」

「は、はい」

 こ、怖えぇ……。

 

 

「俺、フラれたのかな……」

 ツルピカ頭を抱え込む剛腕のリキ。

「ううん! まだフラれてないよ☆」

 ファッ!?

 嘘つく気かよ。そこまでして、あの二人をくっつけたいのか!

「え、マジなの。アンナちゃん?」

「同じ女の子だから、あの子が言っていた意味がわかるよ☆」

 お前は男だろ!

「ほ、本当に?」

 すがるようにアンナの手を掴む、リキ。

「大丈夫、安心して☆ あの子が言いたいのは『絡めたい』てこと、つまり男同士の恋愛マンガを描きたいから、今は忙しいってことなんだよ☆」

 間違ってはないけど……。

 

「つまり、どういうことなんだ?」

「リキくんが取材をすればいいんだよ☆ あの子が喜ぶこと」

「やるよ、なんでもやるから、頼む! 教えてくれ!」

「それはね……リキくんが知らないおじさんと仲良くなることだよ☆」

 

 もうやめてあげてよ、俺のマブダチなんだからさ。

 

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