気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!   作:味噌村 幸太郎

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217 いざ、花火大会へ

 

 花火大会、当日。

 俺は夕刊配達を終えると、シャワーで汗を流す。

 いつも通りの格好。タケノブルーのキマネチTシャツと着慣れたジーパンに着替える。 

 

 朝方、アンナからL●NEで連絡があり、

『午後5時の博多行き列車、3両目で待ち合わせよ☆』

 と約束した。

 

 地元の真島駅に向かうと、異様な光景が。

 カップルばっかり……。

 その他にも、女子中学生や女子高生らしき若い女子達が、みな色とりどりの浴衣を着て駅に集まっていた。

「クソッ、リア充共は死ね!」

 って毒を吐いてみたが。

 あれ? 俺って今年はデートしてない?

 と気がつく。

 いやいや、相手は女装男子。

 まだリア充ではない。

 

 

 駅のホームも夕方なのに、たくさんの若者でごった返していた。

 大半が浴衣女子。

 あとはそれにくっつく彼氏達。

 

 あまりの人混みに酔いそうになる。

 

 こんなに花火大会って人気なんだなぁと、初めて痛感した。

 

 しばらくして、博多行きの列車が見えてきた。

 だが、なんだか様子がおかしい。

 遅い。ホームに到着するからとはいえ、減速ってレベルじゃない。

 のろのろと、まるで老人の歩行速度だ。

 

 その原因は列車内の乗客だ。

 あまりの人の多さに、本来の列車の速度を出せないでいるようだ。

 車体がちょっと斜めに傾いている。

 

 やっとのことで、ホームに到着する。

 プシューと自動ドアが開けば、そこには地獄絵図が。

 人と人が絡み合うように、一切の隙間が与えず、ぎゅうぎゅう詰め。

 こんな満員電車見たことない。

 そして、真島駅には誰も降りないから、質が悪い。

 

「うう……」

「きつい……」

「乗るなら早く乗ってぇ……」

 

 なんてリア充共がほざく。

 

 乗れるのか、これ?

 とりあえず脚を進めるのだが、片脚が車内に入っただけで、それ以上は奥へと進めない。

 困っていると、後ろにいた浴衣女子たちに寄って、無理やり押し込まれる。

 

「むおおお!」

 

 首は天井を向き、右手はなぜか真っ直ぐ伸びて固まる。左手は後ろの誰かの尻に当たっている気がする。きっと男だろう。

 このまま発車するのか?

 

 と思った瞬間。

「タッくん! そこにいるの?」

 

 どこからか、アンナの声が聞こえてきた。

「ああ! ここだ。今日は仕方ないから、博多駅について落ち合わせよう」

 今も顔が変形してしまうぐらい圧迫されて、息苦しい。

 いつものように、仲良く二人で電車には乗れそうにない。

 だが、アンナはブレなかった。

 

「そんなのイヤァ! 初めての花火大会なんだから、二人で行くのぉ!」

 

 車内に響き渡るように叫び声をあげる。

 その直後、ドドッと人々が波のように倒れてしまった。

 もう一つ隣りのドアから、強制的に人々がホームへと叩き出される。

 

「グヘッ!」

「ぎゃあ!」

「痛い!」

 

 そして、残ったのは、1人の浴衣少女。

 

 長い金髪をお団子頭にして、桜のかんざしをさしている。

 紺色の浴衣には、かんざしと同様のピンクの桜が刺繍されていた。

 足もとは茶色の下駄。花尾はこれまた可愛らしい桜だ。

 

「タッくん! みんなが空けてくれたよ☆ こっちにおいでよ☆」

 ファッ!?

 

 お前が馬鹿力で叩き出したんだろ!

 犯罪だよ!

 

 ホームに倒れ込む人々を見ると、何人かの女子が膝をすりむいて、出血していた。

 

「えぇ……」

 

 さすがの俺もドン引き。

 

 俺の周りにいた客たちもバイオレンス美少女に震えあがる。

 こちら側はまだぎゅうぎゅう詰めだというのに、

「どうぞどうぞ」

 と俺をアンナの元へと道を開ける。

 いや、恐怖から無理やり押し出された。

 

「ふふっ、やっと二人になれたね☆」

 アンナが優しく微笑むと、プシューとドアが閉まる。

 あれだけの満員電車だったというのに、俺たちの空間だけ、ガラガラ。

「アンナ……」

「ん、なに?」

 キラキラと輝くグリーンアイズが今日も可愛い。

 だが、他人からしたら、恐怖でしかない。

「今度から花火大会に行くときは、タクシーで行こう……」

 

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