気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!   作:味噌村 幸太郎

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236 先生とデート3

 

 宗像先生は、ドラッグストアで大量の生活必需品をゲットして大喜び。

 店から外に出ると、もう陽は暮れ、辺りは真っ暗になっていた。

 

「うーん! いい大人のデートが出来たな~ 新宮」

「え、今までのデートなんですか? 大人の中で?」

「あん? そりゃそうだろ……大人ってのは、ガキと違って、必死に毎日を生きるもんだ。それこそ、這いつくばってもな」

 あんた、文字通り、這いつくばって福引券を漁ってたもんな。

 間違ってはないよ。

 

「さ、ショッピングデートは済んだし、次はロマンティックなディナーデートと洒落込むか♪」

「ディナー? どこかで夕食ですか?」

「ああ、私の行きつけの店でな。あそこに行けば、どんな女でもイチコロだぞ♪」

「へぇ」

 なんだろ? イタリアンレストランとかかな。

 

 

 くりえいと白山を出て、赤井駅に戻る。

 駅周辺には、小さな飲食店がたくさん並んでいて、夜だから看板や提灯に灯りがついている。

 主に赤井町の住人やサラリーマンが、仕事帰りに一杯といった感じの大衆食堂や居酒屋が多い。

 俺の住んでいる真島商店街とあまり変わらないな。

 しかし、最近は時代ということもあって、田舎でも若い人々が狭い敷地を活かして、お洒落な店を開店している。

 小規模でも流行れば、充分儲けられるんだから、すごいよな。

 要は工夫だ。

 

 しばらく、先生と一緒に歩いていると、一つの店の前で立ち止まる。

「さ、着いたぞ」

「え……ここですか?」

「はーっははは! しゃれとーだろ?」(洒落ているだろ?)

「いえ、普通ですばい」(普通ですね)

 宗像先生が急にコテコテの博多弁を使ってきたので、俺もエセ博多弁で突っ込む。

 

 店の名前は、『やきとり、鳥殺し』

 酷いな……鳥さんたちに謝れよ。

 

 どこが洒落ているんだ? ただの居酒屋、焼き鳥屋じゃないか。

 

 困惑する俺を無視して、先生は店の赤いのれんをくぐり抜ける。

「おおい! 来てやったぞ! 今日はカレシも連れてきたからな!」

 誰が彼氏だ!

 店内に入ると、がたいの良い若い男性店員が何人もいて、大きな声で俺達をおもてなし。

 

「「「いらっしゃいませぇ~ どうぞ、どうぞ!!!」」」

 

 バカみたいに叫ぶので、思わず耳を塞いでしまう。

 店員たちは、皆同じ色の黒いTシャツを着ていて、黄色の文字でデカデカと店名である『鳥殺し』とプリントされていた。

 

 小さな店だが、活気がある。

 炭で肉を焼いているため、少し煙が目に染みるが、それよりもチリチリと立つ音が心地よく、また店中に漂う旨そうな香りが、腹の音を鳴らす。

 

 俺達は、カウンターに通された。

 

 店員からおしぼりを受け取った宗像先生は、メニューを見もせず、一言。

「いつものくれ、二人分」

 なんて常連ぶりをアピール。

「はいよ! 宗像先生! いつもあざっす!」

 若い大将だ。金髪のお兄さん。まだ20代前半か。

 周りの店員もみな同じぐらい。

 なんていうか、元ヤンって感じの風貌。

 だが、感じは悪くない。

 

「新宮。お前はなにを飲む?」

「え、俺ですか? じゃあ、アイスコーヒー、ブラックで……」

 と言いかけたら、先生に一喝される。

「バカヤロー! そんなもん、居酒屋にあるか! 酒を頼め!」

「い、いや、それは……俺、まだ未成年ですよ?」

「関係ないだろ! 今はデートという設定なんだ! 私と飲め! 大人のデートを味わないとちゃんとお前は小説に還元できないんだろ? じゃあ、飲め!」

 なんて無茶苦茶な発想だ。

 しかも、教師の言う事じゃない。

 

「ですが……法律は守らないと……」

「うるせぇ! タマの小さい野郎だ! もういい。私が頼む。おい、ハイボールを二つくれ!」

 勝手に頼まれてしまった。

 

 俺達の会話を聞いていた大将が苦笑いで「あいよ」とハイボールを作り出した。

 マジで作るの?

 

「お待ちどう!」

 ドンッ! とデカいジョッキがカウンターに二つ置かれた。

 

「キタキターっ! これと焼き鳥が合うんだよぉ~」

 涎を垂らすアラサー教師。いや、ただのアル中。

「これ、マジで飲むんですか……」

「そうだよ! さ、乾杯するぞ!」

 反抗すると殺されそうなので、とりあえず、ここは彼女に合わせ、乾杯してあげる。

 まあ、あれだ。ひと口飲んだ振りして、逃げるしかない。

 

 恐る恐るジョッキに唇を近づけると、なにか違和感を感じる。

 香りだ。

 これは……ジンジャーエール?

 舌で舐めてみる。

 確かにジュースだ。アルコールは感じない。

 

 カウンターの奥で焼き鳥を仕込んでいる大将の方を見つめていると、俺に気がついたようで、ウインクしてきた。

 

 近くにいた別の店員が耳打ちしてくる。

(あのさ、一ツ橋の生徒でしょ? 大丈夫、宗像先生に付き合わなくていいから。それ、ジュース)

(え、まさか。卒業生の方ですか?)

(うん。この店の従業員、みんなそうだよ)

(あ、あざーす)

 

 危うく犯罪を犯すところだった。

 先輩たちに救われたよ……ありがとう。

 

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