気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!   作:味噌村 幸太郎

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270 聖女(♂)の行進

 

 ダンスショーを十二分に楽しんだアンナは、終始ご機嫌だった。

「ねぇねぇ、タッくん! 見ててくれた? アンナのダンス☆」

「あ、ああ……」

 見てはいたけど、ドン引きしてました。

 そろそろ、パンパンマンミュージアムはお腹いっぱいだ。

 まだ時間はあるが、居心地が悪い。

 周囲は家族連ればかりだし、アンナはTPOをわきまえないから、相方の俺はしんどい。

 

 俺はどうにかして、彼女をパンパンマン達から遠ざけようと試みる。

「なあ、アンナ。どうだろう? ここらで食事でも取らないか?」

「うーん……食べてもいいけど」

「そうだろ。今ならパンパンマンのレストランも空いているし、早めの昼食でも……」

 と言いかけた瞬間だった。

 

 館内のどこからか、アナウンスが流れ始める。

 

『パンパンマンミュージアムに来てくれたみんな~! 今から“どどんどん”の大行進が、はっじまるよ~ キンキンマンと一緒に元気いっぱい歩いてみよう!』

 

 それを聞き逃さないアンナではない。

 ピクッと耳をウサギのように立てて、うんうんと黙って頷く。

 

「どどんどんと一緒に歩けるんだってぇ☆ タッくんもやろうよ☆」

 緑の瞳をキラキラと輝かせ、ずいっと身を乗り出す。

 逃げられない。

「お、俺もか?」

「うん☆ 取材だよ。これも小説に使えると思うの!」

 えぇ……読者の年齢層が赤ちゃんに下がっちゃうよぉ。

 

   ※

 

「しゅっぱーつ! どしん、どしん! どし~ん、どし~ん!」

 大きな銀色の着ぐるみを先頭に、リズム良く脚を床に叩きつける。

 どどんどんだけではなく、その設計者でもあるキンキンマンも一緒だ。

 その背後にくっつくように、アンナは笑顔で歩き出す。

 女子とは思えないぐらいのガニ股で、手足をブンブン振って「どし~ん、どし~ん」と叫ぶ。

 白い歯をニカッと見せて、満面の笑顔だ。

 俺もその隣りで同様に歩いて見せる。

「ど、しん……どしん……」

 聞こえるか聞こえないかぐらいの小さな声で。

 

 ちょっと、これめっちゃ恥ずかしいんですけど!

 しかも、ちびっ子達よりも、俺とアンナが先頭だから、悪目立ちしてる。

 アンナはお構いなしに、行進を続ける。

「どし~ん! どし~ん! 超楽しい~☆」

 ウソでしょ……。

 公開処刑の間違いだろ、これ。

 

 その証拠に、周囲の親御さんたちが憐れむような目で俺たちを見つめていた。

 

「あらぁ……あの二人、かわいそうねぇ」

「保護者の人はいないのかな? 見ていて心配だよ」

 

 心配しなくても大丈夫です!

 うちのヒロインが暴走しているだけで、僕はやりたくてやってるわけじゃないんで。

 そんな目で見ないでぇ……。

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