気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!   作:味噌村 幸太郎

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283 これがトップアイドルのお仕事よ!

 

 長浜の苦労話を聞いた俺は、しばらくハンカチが手放せないでいた。

 よし、なんだか可哀そうになってきたから、ちゃんと取材して自伝小説を書いてやろう。

 俺はぬるぬるアンナ動画計画のため、長浜はおばあちゃんの家を改築するための第一歩として。

 盛りに盛りまくってやろう。

 両親は二人とも遊び人で浮気しまくり、金に汚いやつらで、長浜を虐待する鬼畜。

 しかし、唯一彼女を守り育ててくれたのが、貧乏な祖母。

 うむ。これなら芸能人とか関係なく、小説に興味を持ってくれるかもしれない。

 ただ、今後彼女を可愛いアイドルとして見られなくなるだろう。

 可哀想なアイドルとして応援される。

 特に老人なんかに好かれるかもな。

 

   ※

 

 応接室のドアが2回ほどノックされた。

 扉を開いたのは先ほどの控え目なアイドルの一人だ。

「あ、あの……あすかちゃん。そろそろお仕事しないと納期に間に合わなくなっちゃうよ」

 か細い声で遠慮がちに話す。

 どうやら、俺に緊張しているようだ。

「例の仕事のことね! わかったわ、今行くわ!」

「あ、ありがと……あすかちゃんの分が一番多いから私たちだけじゃ、捌けなくて……」

「フンッ! 当然よ! なんせアタシがグループのセンター! 人気ナンバーワン! この前のグラビアもアタシがソロで何枚も特集されたほどだもの!」

 この我の強さがなければ、もうちょっと可愛げがあるんだけどな。

「そ、そうだよね……あすかちゃんはボンキュッボンで美人だし……」

左子(ひだりこ)! あなたも磨けばアタシに近づける素質あるんだから! がんばりなさいよね!」

「わ、私なんかじゃ……」

 ていうか、この子の名前。左子っていうのか。

 改めて見ると確かに芸能人らしくない風貌だ。

 長浜と同じ黒髪で統一しているが、おかっぱのショートヘアで前髪が長いため、目が見えない。

 芸能人と言われなければ、どこかそこら辺を歩いている一般人に見える。

 うーん……この芸能事務所。大丈夫か?

 

 

 俺は応接室に残って早速文字起こしを始めようとしたが。

 長浜が「まだ取材は終わってない」「今日は一日密着しなさい!」

 と相変わらずの上から目線の命令。

 ため息を吐いて、ノートパソコンを閉じた。

 

 応接室から出て、入口近くの大きなテーブルに通された。

 彼女曰く、滅多にお目にかかれないアイドル活動を見ていけるのだから、感謝しろとのこと。

 絶対にしないけど。

 

 テーブルの上には、大量のCDが山のように重ねられていた。

 先ほどの左子ちゃんともう一人の大人しい子が、なにやらディスクケースに小さなカードを一枚一枚入れ込む。

 気になった俺は「なにを入れているのか?」と尋ねてみた。

 すると、二人が声を合わせて答える。

「「と、特典です」」

 息がピッタリだ。

 しかしも左子ちゃんの隣りにいる子も同じ黒髪のおかっぱ。

 なんか双子みたい。

「特典? あれか? 握手会のチケットとかか?」

 すると二人は顔を真っ赤にさせて、両手をぶんぶんと振って見せる。

「?」

 黙り込んでしまう彼女たちを不振に思った俺は、近くにあったカードを1枚手に取ってみた。

「うっ!?」

 思わず変な声が出てしまう。

 ただのカードじゃなかった。

 

『あすかちゃんが普段履いている生下着♪ 13/500』

 

「……」

 絶句してしまう俺氏。

 それを見た長浜が胸の前で腕を組み、自慢げに語り出す。

「フンッ! さすがガチオタね! それはレアカードよ! アタシがパンツを500枚にハサミでちょきちょきしてバラバラにしたのよ! どうやら欲しくてたまらないようね! 特別にタダであげるわ!」

「長浜……お前のおばあちゃん。この仕事のこと知っているのか?」

「は? 知らないわよ?」

「そうか……このことだけは知らせないであげてくれ、な」

「?」

 ここまで育ててくれたおばあちゃんを泣かせたらあかん!

 寿命を縮めてしまうがな。

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