気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!   作:味噌村 幸太郎

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285 アイドルだって人間なんです

 

 成り行きで上映会が始まった。

 俺の後ろには、巨大なテレビモニターが壁に掛けられていて、その下にはDVDプレーヤーが設置されていた。

 右子ちゃんがディスクを挿入し、録画されていた深夜番組『ボインボイン』が始まった。

 俺はあまり見たことないが、福岡のローカル番組だとコマーシャルで存在は知っていた。

 給湯室からおぼんを持ってきたのは左子ちゃん。

 4つのマグカップと小さなお皿に洋菓子を載せて「お、お口に合うかどうか」と遠慮がちにテーブルの上に置く。

「ありがとう」

 と礼を言うと、はにかんで笑う。

 もうこの二人が推しでいいのでは?

 

   ※

 

『さあ今夜も始まりましたよ~! 福岡の23時はボインボイン~!』

 モニターに映し出されたのは、若いローカル芸人だ。

 福岡の芸人はどちらかというと、緩いお笑いが多く感じる。

 なんというか、あまり毒を吐かない。

 ロケ重視で美味しいと噂の飲食店にインタビューする……まあ食レポだ。

 でも、そこからのし上がっていく芸人さんも多い。

 今では東京で大活躍し、全国的に有名な大物芸能人へと化ける人もいるとかいないとか。

 

 そんな福岡芸人の歴史を振り返っていると、画面は変わり。

『今日はレギュラーボインガールの長浜 あすかちゃんがお友達を連れてきてくれたんだよね~』

 司会の芸人がひな壇に座る若い女の子たちへ話を振る。

 全部で10人ぐらいのローカルアイドルが勢揃いだ。

 悪いが誰も知らん。

『そ、そ、そうなんですぅ~ きょ、きょ、今日はぁ~ アタシの所属しているアイドルグループで新曲を歌わせてもらおうと思ってぇ~』

 ガチゴチに固まってるじゃん、長浜のやつ。

『へぇ、そうなんだぁ。あすかちゃんってアイドルだったんだね! では準備できたら歌ってもらおうか!?』

 おいおい、司会までアイドルって知らなかったのかよ。

『は、は、はいぃぃぃ!』

 緊張しすぎだ。

 

 

 そこから右子ちゃんと左子ちゃんが登場。

 ステージと言っても、後ろに司会の芸人とひな壇の女の子が座っている。

 テンポの悪い手拍子の中、BGMが流れ出し、三人がぎこちなくダンスを始める。

 見ていてかなり辛い。

 だって、後ろの芸能人たちが特に興味を示すことなく、死んだ顔で長浜たちを見つめている。

『も、も、もつもつ……ぐつぐつさせ、ちゃ、ちゃうぞ!』

 グデグデやないか!

 もうテレビ消して。

 辛すぎる。おばあちゃん、これ見てまた泣いているんじゃないか?

 

 

 10分間にも満たない映像だったが、すごく胸が痛かった。

 あまりにも不憫で……。

 こんなアイドル売れるわけないだろ。

 

 リモコンでテレビを消した長浜が自信満々にこう言う。

「どうだった! ガチオタ。アタシたちアイドルの本気を見て、萌えたでしょ!? 推したくて課金しまくりたいでしょ!」

「……長浜。お前もうちょっと自分を見つめ直した方がいいぞ?」

「ハァ? 最っ高のステージだったでしょ!?」

 最低最悪のライブでした。

 

 

 苦言を呈した俺が見ても、長浜の自信が折れることはない。

 むしろ、俺の反応に怒っているようだ。

 

 だが他の二人はオドオドして、不安気だ。

「「あの、どこが良くなかったのでしょうか」」

 綺麗に揃えて話すな、この子たち。

 さすがに全部だ、とは言えない。

 

 どこから改善したら良いものか。

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