気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!   作:味噌村 幸太郎

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第四十六章 男の娘生誕祭
408 プライド高すぎて、何も出来ない野郎


 

 あれから、2週間近く経とうとしていた。

 今年最後のスクリーングだっていうのに、最悪な終わり方。

 

 別に会おうと思えば、いつでも会える関係性だが……。

 どうも俺からは、ミハイルに声をかけることは恥ずかしいというか……申し訳ない思いで連絡さえ出来ずにいた。

 

 勉強もないし、小説もしばらく書かなくて良い。

 そうなると、新聞配達以外は特に何もせず、一日をダラダラと過ごすだけ。

 

 俺自身、クリスマス・イブは……特別な日だと思っていたから。

 今年はアンナと一緒に過ごすものだと、勝手に思い込んでいた。

 

 でも、口約束とはいえ。マリアとイブを共にすることになった。

 嫌ではないけど……。

 あのミハイルの泣き顔を見て、素直に喜べない。

 

 自室の二段ベッドの上にあがり、寝そべる。

 通知なんて何もないのに、スマホの画面と睨めっこ。

 もしかしたら……そんな思いで、俺はずっと着信を期待していた。

 無意味な行為だが。

 

 その時だった。

 永遠の推し、アイドル声優のYUIKAちゃんの可愛らしい歌声が、スマホから流れ出す。

 

 着信名なんて、確認せず。電話に出る。

 

「もっ、もしもし!?」

 しばらく、誰とも口を聞いてないので、痰がらみの声になってしまった。

『あ、DOセンセイですか?』

 思っていた相手と違い、俺は一気に落ち込む。

「なんだ……白金か」

『いや、失礼じゃないですか? 私だとなんか都合が悪いんですか? 仕事の話なんですけど』

 深くため息をついた後、白金の『仕事』という言葉に気持ちを切り替える。

 

「仕事? 原稿ならもう書き終わっただろ?」

『それは、来年発売のマリアちゃん回。4巻のことでしょ? 今週、発売された2巻と3巻の話ですよ』

「ああ……そう言えば、発売日だったか」

 すっかり忘れていた。

『そうなんですよぉ~ めっちゃ発売前から人気でぇ~ もう重版決まってですね。編集部は大忙し♪ 私のお給料も右肩上がりで……』

 落ち込んでいたので、白金には申し訳ないが、電話を黙って切ろうかと思った。

「……」

『あれ? DOセンセイ? 聞いてます?』

「聞いてるよ……」

『元気ないですねぇ~ ラノベ業界って2巻で打ち切りが多いのに、“気にヤン”は久しぶりの大ヒットなんですよ?』

「うん……」

 正直、答えるのもしんどかった。

 胸に大きな穴が、空いているようで……。

 

  ※

 

 俺のテンションが低すぎる……というか、声が死んでいたので。

 さすがの白金も心配してくれた。

 何があったのか、事情を聞かれる。

 

 白金も宗像先生みたいにデリカシーのない大人だから、答えたくなかったが。

 なんか今の気分だと、こいつでもいいかと思えた。

 

 クリスマス・イブをアンナではなく、マリアと過ごすことになったこと。

 それを決めたのは、遊びとはいえ、宗像先生。

 

 俺がそれらを説明すると、白金は受話器の向こう側でゲラゲラと笑い始めた。

 

『なんだぁ、そんなことですか?』

「お前……なんだとは、何だ! こっちは真面目に悩んでいるのに……」

『怒らないで下さいよ~ まあ蘭ちゃんが悪いとしてですねぇ……今年のイブがマリアちゃんになっただけでしょ?』

「は? アンナはどうするんだ? イブってのは女子にとって大事なもんだろう」

 言いながら、あいつは男だと思い出す。

『そうですけどね。忘れたんですか? アンナちゃんにはプレゼントがあるでしょ?』

「あ……」

 クリスマス・イブに先約を入れられたことで、すっかり忘れていた。

 アンナの誕生日を。

 

 そうだ。あいつの誕生日は12月23日じゃないか。

 だからプレゼントも、しっかり用意していたんだ。

 

『ね? マリアちゃんはイブを過ごすけど、プレゼントはなし。取材感覚で会えば良いんですよ♪』

「はぁ……」

『ですので、しっかりと相手の好みも考えて、用意したアンナちゃんは本命と言えるでしょう!』

「つまり?」

『夜景が見えるレストランで、ディナーを楽しめば、イブとか関係なし! その後、酒でも飲ませて酔っぱらったら、ラブホテルへ連れ込めば良いんですよぉ~♪』

「……」

 

 とりあえず、電話は雑に切ってやった。

 しかし白金が言うことは、間違っていない。

 イブも大事な日だが、誕生日を一緒に祝う方が大切かもしれない。

 

 クズみたいな編集だが、ようやく元気が湧いてきた。

 いや、違う。

 正しくは勇気だ。

 

 これで、ようやく彼に連絡が出来る。

 俺はスマホのアドレス帳を開き、古賀 ミハイルの電話番号へ電話をかけることにした。

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