気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!   作:味噌村 幸太郎

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409 生まれて来てくれて……ありがとうっ!(推しのお母さまへ)

 

『トゥルル……おかけになった電話は現在、繋がらない状態か、電源を入っていないため……』

「またか」

 

 ミハイルに電話する勇気が出たのは良い事だ。

 しかし、肝心の本人が電話に出てくれない。

 

「やはり、怒っているのか……」

 

 この前のスクリーング。

 クリスマス会での、アームレスリングにおいて、マリアが語った過去。

 アンナとした初デートが、実はマリアとの定番デートだったこと……。

 その事実にミハイルは動揺し、完敗。

 

 更に追い打ちをかけるように、マリアがほっぺチュー事件を起こしてしまう。

 嫌なことが重なり。彼は現在……心を完全に塞いでいるのかもしれない。

 

 だが、それじゃダメだ。

 クリスマス・イブのデートは、一緒に過ごせない。

 それでも、俺はあいつを……アンナを祝いたいんだ!

 

 ちょっと意地の悪いやり方だが、こうなれば、方法は選んでいられない。

 仕方ないので、『もう1人』に連絡をすることにした。

 

 唯一、俺がL●NEでやり取りをしているあの子。

 ミハイルとは別人格だから、取材相手として、連絡がとれるかもしれない。

 

 とりあえず、メッセージを使って、軽く挨拶をしてみる。

 

『アンナ。久しぶりだな。良ければ23日に取材をしてくれないか?』

 

 すぐに既読マークがついたが、スルーされたようだ。

 クソッ……これでもダメなのか。

 だが、俺も後には引けない。

 

『すまない。取材というのは、噓……いや、照れだ。アンナの誕生日を祝いたいんだ。頼む』

 

 彼女に無視されたくない一心で、包み隠さず本音で伝えてみた。

 すると……。

 

 既読マークがついた途端、スマホから着信音が流れ出す。

 相手は、アンナ。

 

『タッくん☆ 久しぶり~☆ メッセージ見たけど、ホントなの!?』

 めっちゃテンション高いですやん。

 なら、さっさと電話に出ろよ。

「ああ。前々から考えていたことだ。その……ミハイルからクリスマス・イブのことは、聞いているか?」

『う、うん……なんか罰ゲームで、マリアちゃんと一緒に過ごすんでしょ』

 誰も罰とは言ってないのに。

「そうだ。でも、それは取材だ。仕事にすぎん」

 言っていて、苦しい言い訳だと思う。

『おしごと?』

「ああ、今年のクリスマス・イブは仕事で埋まってしまった。しかし、23日はお前の誕生日だ。その日は完全にオフ。俺が純粋にアンナを祝いたいから、やる。つまり特別な日にしたい……」

『特別……アンナの誕生日が?』

「そうだ。半年前、俺へしてくれたように……」

 

 しばしの沈黙のあと、彼女は照れくさそうに答える。

 

『タッくん……嬉しい。イブを一緒に過ごせないのは、残念だけど。誕生日を2人で過ごせるなら、アンナは大丈夫☆』

「ほ、本当か!?」

『うん☆ 元気が出てきた☆ 今から何を着るか、楽しみぃ~☆』

 良かった。だいぶ声が明るくなった気がする。

「ああ。待ち合わせはいつも通り、“黒田節の像”でいいか?」

『いいよ☆』

「じゃあ、またな」

 

 彼女の声を聞けたことで、ようやく穴が塞がった気がする。

 胸にぽっかりと空いてしまった大きな穴……。

 

  ※

 

 アンナの誕生日、当日。

 俺は博多駅の中央広場にある黒田節の像の下で、彼女を待つ。

 

 もうあと一週間ほどで、今年も終わる。

 博多駅の前には、明日のクリスマスを祝うために、巨大なツリーが建設されていた。

 行き交う人々もどこか忙しい。

 

 空を見上げれば、どこか暗く曇っていた。

 ひょっとしたら雪が降るのかもな。

 

 正直言ってかなり寒い。

 ダッフルコートを着ていても、ぴゅーぴゅーと横風が身体の中を通り抜けて行く。

 でも、なんか今年は、不思議と胸のあたりが暖かく感じる。

 何故だろう……。

 

「タッくん~! お待たせ~☆」

 

 そう言って、目の前に現れたのは、金髪の美少女。

 アンナだ。

 今日のファッションは、至ってシンプル。

 全身真っ白のファーコート。衿には大きなパールがデザインされているものの。

 気温が低いせいか、ボタンは全部しっかりと留めている。

 これではコートの中が見えない。

 まあ、丈の短いデザインだから、相変わらずその細く美しい脚は拝めるのだけど……。

 なんというか、いつも露出してくれているありがたみが、再確認できた。

 

「お、おお……久しぶりだな」

 アンナは俺の顔を見て、すぐになにかを察したようだ。

 頬を膨らませ、上目遣いで俺を睨む。

「タッくん。今日のファッション。つまんないんでしょ?」

「いや……そういうわけじゃ」

「アンナだって、こんなに寒くなかったら、コート脱げるよ」

 

 そう言って、大きな緑の瞳を潤わせる。

 参ったな……見透かされていたのか。

 

「すまん。俺も女の子と冬を過ごすのは初めてでな。あ、でも頭につけている髪飾りか? コートと同じなんだな」

 どうにか話題を変えようと、頭につけているカチューシャを指差してみる。

「あ、わかった? これ、コートと同じでパールなの。あとね、手袋とバッグもお揃いでぇ……」

 

 聞いてもないのに、ベラベラと喋り出したよ。

 ま、いっか。

 

「しかし、今日は冷えるなぁ。雪が降るかもしれん」

「うん。ホント、寒いねぇ~ こんな日に生まれてごめんね☆ もっと暖かい日に生まれたら、コートもいらないのに」

 とウインクしてみせる。

 

 いや、生まれて来てくれてありがとう。

 というか、暖かいホテルに連れて行けば、コートも脱げるよね?

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