気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!   作:味噌村 幸太郎

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444 光り

 

 今年初めて、宗像先生が出した課題。

 それは、俺が一ツ橋高校を……学校を楽しむということだ。

 

 正直、意味がよく分からん。

 元々俺という人間は、学校が好きじゃない。

 勉学が嫌とかじゃなくて、対人関係でトラブルが多く。

 あまり楽しい思い出がない。

 

 だから、幼い頃。学校外でマリアと仲良くなったりしたのだが……。

 

「先生。俺が学校を楽しむって、どういうことですか? 一体、何をすればいいんです?」

「ん? そうだなぁ~ 新宮が他の生徒たちと遊んだりして『いえ~い。俺ら青春なう~!』とかやってりゃ良いんじゃねーか?」

 すごく、テキトーな回答だ。

 俺はそんな陽キャ高校生じゃないっつーの。

 だから、ミハイルと一緒にいたんだ……。

 

「もうちょっと、具体的に話してくれませんか? 俺がミハイル以外の友人と、学校で遊んでればいいってことですか?」

 宗像先生は座卓に並べられた、たくさんのジョッキグラスを見て、豪快にゲップする。

「ゲフ~ッ! まあ、物事に正解なんて無いんだよ。大体、あれだけ新宮にこだわっていた古賀だぞ? お前が他の生徒……つまり、女子なんかと遊んでいたら、当然イライラするし。嫉妬もするんじゃないのか?」

 吐き出したゲップが、酒臭い。

 マジで女か、この教師。

「まあそうですけど……俺は、捨てられた身なんですよ?」

「分かってねーなぁ、新宮。そんなんだから、童貞なんだよ!」

 悪かったな、でも処女じゃないもん。

 

「じゃあ、俺が他の女子と楽しくしていれば、ミハイルは戻って来るんでしょうか?」

「簡単に言えば、そうだな。別に同性と仲良くしても、効果はあるだろう」

 てことは、ミハイル並みの男子を連れてきて、イチャつけば良いのか?

 思い当たるとしたら、リキに惚れている住吉 一ぐらいだ。

 

 俺が黙って考えこんでいると。

 宗像先生は大きく口を開いて、豪快に笑って見せる。

 

「だぁはははっははは! 新宮。お前は、もう終わったと思い込んでいるんだろ?」

「え? だって、アイツに絶交だって言われたし……俺のせいで、長い髪も切らせてしまって……」

「考えすぎだろ! 今時の奴らは、気分で長い髪も切る。それに本気で絶交したいやつが、プレゼントを大事にするか?」

 その言葉に、耳を疑った。

「プレゼント? なんのことですか?」

「なんだ? 気がついてなかったのか、ははは! そりゃ振られるわな!」

 一人だけ分かっているような口ぶりだったので、俺も苛立ちを露わにする。

「な、なんですか!? 教えてくださいよ!」

 力いっぱい拳で座卓を叩くと、近くにあったグラスが倒れた。

 それを見た宗像先生は笑みを浮かべ、自身の耳を指さす。

 

「古賀の耳元。ネッキーとネニーのピアスをつけていたぞ。あれ、お前が誕生日にプレゼントしたんじゃないのか?」

「あ……そうです。でも、なぜ俺がプレゼントしたって、分かったんですか?」

「そりゃ私は女だし。直感だよ。前後の話も聞いているしな。お前は古賀を抱きしめるぐらい、想いが強かったんだろ? ならプレゼントも高額になっても自然だもんな」

 普段からアホな言動が目立つ教師のくせして、こういう時だけは鋭い。

 

「あのピアスが高いって、分かるんですか?」

「うん。だって小さいけどダイヤが入ってたし。付き合ってもない関係なのに、数万円もかけるとか。正直見ていて、ドン引きしたけどな」

 

 クソッ、言いたい放題言いやがって……。

 

 でも、安心した。

 俺はまだミハイルに捨てられていない……のかもしれん。

 あの時、渡したプレゼントを大事につけているのだから。

 

  ※

 

「じゃあ、古賀に楽しいところを見せつけてやるか」

 そう言うと、宗像先生は怪しく微笑む。

 片手に、スマホを持って。

「な、なにを見せるんですか……」

 悪い予感しかない。

 こういう顔をしている時の宗像先生は。

「とりあえず、新宮。こっちへ来い」

 手招きされるがまま、俺は先生の方へ近寄る。

 隣りに座ると、先生が自身の太ももを指さす。

 

「なんすか? どうするんですか?」

「いいから、さっさと来い! 古賀を取り戻すためだ!」

 そう言うと、宗像先生は俺の首を掴み、強引に太ももの隙間へと突っ込む。

 鼻と口を抑えられて、息が出来ない。

「ふごごご……」

 アラサー教師の股ぐらに、顔を突っ込んで、何が嬉しいのやら。

「よし! 今から撮影するぞ~ 新宮、お前もこっちを見て笑え! 楽しそうにするんだよ♪」

「へ?」

 

 顔を上げた瞬間、フラッシュがたかれた。

 口角をあげる暇もなく、撮影は終わってしまう。

 

「おぉ~ 良い感じに撮れたじゃないか~♪ みんなの蘭ちゃん先生を独占とか、うらやましいな。新宮」

 スマホの画面に映っていたのは、顔色の悪い生徒と酔っぱらったアラサーの女性教師。

 事故とはいえ、俺は宗像先生に膝枕をされている。

 周りに食べ散らかした中華料理と、グラスが並んでいた。

「……」

 これのどこが、楽しそうなんだ?

 

「じゃあ、私のというか……本校の公式”ツボッター”で、写真を投稿しておくぞ。古賀も見ているかもしれん」

 ファッ!?

 今、そんなことしたら。ミハイルの怒りが治まるどころか。

 火に油を注ぐような行為だ。

 

「ちょっ、先生! やめてください! もしミハイルが見たら、絶対良い気分しないでしょ!?」

「なーにを言っておるか! 恋は駆け引きというだろう。使えるもんは全部使うんだよ、バカ野郎!」

「そんな……」

 

 完全に酔っぱらった、おっさんだよ。

 

「ヘヘヘ、投稿してやったぞ。ほれ、新宮も確認しろ」

 

 仕方なく先生のスマホを覗いてみると。

 

『友人に捨てられた生徒を、グラマラスな太ももで癒す私』

『癒された生徒は、もう宗像先生がいないと生きていけない! と元気が出たようだ』

『私のような美人教師がいるのは、一ツ橋高校の福岡校だけ。随時、生徒募集中!』

 

 結局、ただの広告じゃねーか!

 いいように使われただけじゃん。

 

  ※

 

 宗像先生が言うには、俺が学校で楽しく生活していれば。

 ミハイルが、戻ってくる可能性が高いそうだ。

 実際、過去にヤンキーの生徒たちがケンカして、退学した時も。

 残った生徒たちの楽しそうな話を聞いて、戻ってきた事例があるようだ。

 

 一応お悩み相談は、解決というか。

 安心できたので、俺と宗像先生は店を出ることに。

 外に出ると、空はもう真っ暗だ。

 ミハイルのことで、午後の授業もサボってしまった。

 だが宗像先生の計らいで、出席扱いにしてもらえた。

 

 これは俺だけでなく、ミハイルも同様で。

 真面目に出席している俺たちだから、特別に……とのことだ。

 テストは後日、彼の家に郵送するらしい。

 

 

「お、珍しく。私の投稿にリプが届いてるぞ?」

「本当ですか?」

 

 二人して、スマホの画面をのぞき込む。

 

 先ほどの先生の投稿に対し、こう書かれていた。

 

『アラサー教師の太ももとか、エグい』

『ばばあ、無理すんな。必死すぎ』

『こんな高校行きたくない。写真の生徒がかわいそう』

 

 結構、責めた内容だな。

 ん? 投稿主の名前が気になった。

 “ボニョ大好き☆”

 

 これは……まさかミハイル!?

 一発で釣れたのか?

 

 驚く俺とは対照的に、宗像先生は顔を真っ赤にして、スマホへ怒鳴り散らす。

 

「誰が、ばばあだ! ネットから出てこい、クソガキ!」

 

 でも……本当に彼なら、俺はまだ信じてもいいのだろうか?

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