艦隊これくしょん ~永遠の終わり~ リメイク 作:Mt.モロー
1943年3月14日 9:00
珊瑚海 晴空攻撃隊
ラバウルから発進した晴空攻撃隊6機は、敵機動部隊のレーダーピケット艦であるニ級二隻を正面に捉えていた。その役割として本隊に晴空攻撃隊の接近を伝達しているはずだ。まもなく迎撃戦闘機がこちらに来襲すると予測されるが、晴空も無防備ではない。護衛機である強風改12機が晴空の周囲を警戒している。
高度5000を飛行していた晴空6機が下降を開始する。強風改はその高度を維持し、上空から晴空を護衛する。ニ級との距離は10000mほどだ。晴空6機は高度を2000まで落とし、速度は400kmに増速した。
これから、左側面に突き出した三式空八cm砲(もとは阿賀野級の九八式八cm高角砲)一門と三式40mm機関砲一門、2連装に改造された旋回20mm機関砲で攻撃を加える。
ニ級二隻は前後に1000mの間隔を空けていた。晴空に対して12.7cm両用砲を激しく打ち上げてくる。
晴空は、ただでさえ頑丈だった二式飛行艇に増加重装甲が施され、この距離ならば至近距離弾でもなければびくともしなかった。
攻撃距離は3000mに設定されていた。400km以上の速度ではニ級の両用砲は追尾できない。機関砲ならば対応可能だが、射程内に
晴空は反時計回りに旋回しながら一隻目のニ級を攻撃する。一機あたりの攻撃時間は3秒から5秒しかない。だが、その間に三式空八cm砲なら2発、三式40mm機関砲は6発、20mm機関砲は100発射撃できる。それが、通り魔のように6機襲い掛かるので駆逐艦クラスならとんでもないことになる。
結果、一隻目のニ級には三式空八cm砲が1発、三式40mm機関砲が8発20mm機関砲が80発以上命中し、大火災を起こしてその場に停止してしまった。沈没は免れるかもしれないが、戦闘艦としての機能は完全に喪失していた。
晴空たちは二隻目のニ級に照準を定める。彼女は、こちらの目的を察したのか、回避機動しながらの対空戦闘を仕掛けている。しかし、初陣を済ませ、練度の上がった晴空隊からは逃げられなかった。各砲は命中精度が向上し、ニ級を穴だらけにしてしまった。八cm砲もかなり命中したようで、砲塔が爆裂し、前方から
レーダーピケット艦を仕留めた晴空攻撃隊に、目立った損傷がなかった。もちろん何発かは被弾したが、装備や機関部への影響は皆無だ。これから、敵機動部隊に突入する。いかに晴空とはいえ、軽巡や空母を沈めることはできない。ただ、輪形陣はボロボロにできる。本格的な攻撃は、まもなく到着する予定の四航戦の攻撃隊にまかせたら良い。
上空がチカチカと光っている。敵機動部隊の直掩機だ。だが、晴空攻撃隊はそれを無視する。奴らの相手は強風改がしてくれる。水上機なので速度的なハンデキャップはあるが、機動性では敵には劣らない。攻撃を妨害してくれだけでもありがたい。
敵機動部隊を視認した。中央のヲ級を、ト級(軽巡洋艦)二隻とニ級四隻で囲んでいた。
晴空隊は最大の障害になるト級を沈黙させる必要があった。
ニ級とは比較にならない弾幕が先頭を飛行していた一番機の晴空を襲った。三番エンジンが被弾し出火している。幸い自動消火装置が機能し、火は消し止められたが、速度がかなり低下したので、先頭を2番機に変更し、後方へ離脱した。
あまりに激しい弾幕に、輪形陣の外周旋回をあきらめ、陣内を中央突破することにした。
先ほどよりも速度をあげて、ト級二隻の右側より侵入し、射撃を開始する。一隻目のト級は、多数の命中弾により、次々と対空砲が沈黙し、艦橋付近への命中弾により火災が発生し、モクモクと煙を上げだした。しかし、二隻目にはそれほど命中弾はなく、相変わらず分厚い弾幕を形成している。
その一発が、離脱中の一番機に直撃した。重装甲の晴空でも、大口径砲の直撃弾には無力だ。爆発四散し、その残骸が海に落下していった。
残った5機は、仲間を
4機になった晴空隊は中央の空母と周囲のニ級に狙いを定める。対空防御の主軸であるト級の戦線離脱により、やすやすとヲ級に接近できた。とはいえ、空母自体の戦闘力もバカにはできない。密度の濃い弾幕により晴空の進路を
晴空は速度を上げて一気に空母上空を突っ切った。その間、八cm砲6発を飛行甲板に命中させ、使用不可能にした。こんなダメージでは沈まないだろうが、彼女の対空兵装には壊滅的な被害を与えた。最も効果があったのは20mm機関砲だった。むき出しの機銃や高角砲が連続した命中で無残に破壊されていた。
その後、晴空攻撃隊は、ニ級二隻に修復不能な損害を与えてラバウルへ進路を変えた。機動部隊の輪形陣を破壊することはできたが、こちらの損失も1機、いや、最終的には2機になるだろう。強風改も5機損失した。決して低い消耗率ではなかった。
それに、深海棲艦は晴空の戦術を知ってしまった。これからは、もっと損害が増える可能性もある。こちらだって対策は考える。装甲や武装の強化改善は行うはずだ。しかし、それは終わりなき死のマラソンなのだ。ありていに言うのなら、戦争のいたちごっこでしかない。
1943年3月14日 9:25
ソロモン海 第三航空戦隊【大鳳】
【大鳳】は呆れていた。
彼女を守っていた四隻の秋月型は、上空援護の零戦五四型が打ち漏らした敵機8機をほんの数分で全機撃墜してしまった。いかに対空特化されているとはいえ、その、手際の良さには驚きを通り越して呆れるしかなかった。
「一航艦が手放さないわけだね」
【最上】も【大鳳】と同じ感想の様子だ。だが、これは、【秋月】たちの成果と言うよりは、提督の発案による航空殲滅戦の成果なのだ。自分たち第三航空戦隊は戦闘機のみ搭載していた。敵をおびき寄せ、全力で迎撃する。その作戦がうまくいっているだけだ。
「四航戦攻撃隊より報告がありました」
通信を担当している【熊野】だ。笑顔なので結果は想像できる。
「それで?」
「驚きますよ、全艦撃沈です」
「全艦……ぐ、具体的には?」
「ヲ級1、ト級2、ニ級6。晴空の攻撃により、敵対空防御は貧弱で、航空隊の損失も6機にとどまりました」
「……」
正直、【大鳳】は晴空の運用に関しては
「いいことばかりではありません。四航戦の残存機は燃料がギリギリです。あと50分ほどでこちらに来ます」
本当に良いことではない。東方に発見されたもう一つの機動部隊からまるでタイミングを合わせたように攻撃隊が向かっていた。
「最上、東の機動部隊からの攻撃隊は?」
「ほぼ同時だね……着艦中に攻撃を受けるよ」
提督から指示された航空殲滅戦とは、敵航空機に
「零戦隊の補給を急がせます。最上、熊野、鈴谷。次が決戦です」
「了解! 瑞鳳にも準備するように言うよ」
「1機たりとも失ってはならない。この大鳳が傷ついても、全機生還させます」
「……傷つくのはいいけど、絶対沈んじゃだめだよ。キミは旗艦であり、第三艦隊の司令官なんだからね」
【大鳳】は笑った。そういえばそうだ。自分は提督より第三艦隊を任されているのだ。自分を含め、だれ一人として沈めてはならない。それが、この戦を終わらせる唯一の方法だ。
(提督……吹雪……そうですよね!)
上空の零戦隊が補給のために次々と【大鳳】に着艦してくる。
【大鳳】は、鋭い眼光で【最上】たちに司令官として命令を告げる。
「全艦戦闘配置。大混乱が予想されるが、各自自分の役割を徹底せよ!」
「了解!」
次話:トラック防衛隊:航空殲滅戦(後編)