艦隊これくしょん ~永遠の終わり~ リメイク   作:Mt.モロー

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4.次発装填よし:敵襲!高度3000

11月13日 サンタクルーズ諸島沖

 01時10分 第三航空戦隊 【隼鷹】

 

 第四航空戦隊の南西五十五(かいり)(約90km)で行動中の第三航空戦隊にも【長門】よりの指令が入った。旗艦である【隼鷹】の周囲に【摩耶】【五十鈴】【江風】【涼風】【海風】が集まっている。

 

「隼鷹、これはどういうことだよ」

 

 男勝りの【摩耶】が【隼鷹】につっかかる。だが、【隼鷹】も口の悪さでは負けてはいない。

 

「聞いたとおりだ。私たちは①への薄暮攻撃(はくぼこうげき)一回のみで撤退だ」

「バカ言うなよ。第四は夜間雷撃しようとしているんだぞ。援護しなければ【利根】たちは全滅する」

「零式は夜戦能力がない。それに第四とは距離も離れすぎている。なにもかもが遅すぎた」

「攻撃隊の発艦は四時ぐらいだろ? 一部を第四の護衛に……」

 

 それはできない相談だと気がつき、【摩耶】は口を閉ざした。そもそも目的が違うのだ。第四航空戦隊は、あと二時間ほどで趨勢(すうせい)が決まるガダルカナル撤収作戦のために、敵に目視で発見される必要があった。敵航空部隊①の進行を遅延(ちえん)させるだけの自分たちとはわけが違う。

 相手はサーチ・アンド・デストロイを徹底している深海棲艦なのだ。しかも夜間攻撃力は非常に高い。第四航空戦隊はその攻撃を受けることになる。

 

 野性的な【隼鷹】と【摩耶】の会話に、落ち着いた口調の【五十鈴】が口を挟む。

 

「私が援護に向かいます。最短距離を進めば二時間で第四と合流できます」

「二時間か……遅すぎないか?」

「撤退戦を援護できると思います。吹雪と夕立だけでじゃ防ぎきれないでしょうから」

「しかし……」

 

 対空特化改装を受けた【五十鈴】ならば第四航空戦隊を救えるかもしれない。ただし、こちらの対空防御ががら空きになってしまう。【隼鷹】がそう考えている時に、【江風】から最悪の報告がされた。

 

「四時方向に敵水偵! しきりに無線を発しています」

「水偵……ツ級のか」

 

 発見されたからには敵も同じことを考えるはずだ。つまりは薄暮攻撃。機数はこちらのほぼ倍だ。対空防御の要である【五十鈴】に抜けられると全滅の危険性がある。

 

「摩耶、利根に五十鈴と海風を向かわせると言え。間に合うかは分からんが」

「……こっちはどうする?」

「交換条件で筑摩からすべての九六式をもらう」

「攻撃はしないつもりか?」

 

 【隼鷹】は頷いた。

 

「艦隊司令部に連絡だ。われわれ第三航空戦隊は薄暮攻撃を実施せず。予測される敵航空攻撃を全力迎撃する」

 

 言っている【隼鷹】でさえ可能とは思っていない。零式艦上戦闘機は補用を含めて15機しか搭載しておらず、【筑摩】の九六式艦上戦闘機と合わせても20機弱だ。60機以上が予測される敵攻撃機を全機撃墜など不可能だ。

 

「隼鷹……」

「足りなきゃ九九式も上げる。鈍足でも攻撃機なら落とせるだろう」

「無茶苦茶だよ」

「あんたに言われたくはない」

 

 

11月13日 サンタクルーズ諸島沖

 01時45分 第四航空戦隊 【吹雪】

 

 十分ほど前に逆探(電波探知機)に敵艦隊レーダー反応があり、【吹雪】たちはその方向に舵を向けている。とはいっても、第四航空戦隊が敵に発見されたわけではない。レーダー(電波探信儀)は反射波を探知するものであり、探知機よりも有効範囲がずっと狭い。

 

「敵水偵を目視! 三時方向」

 

 【吹雪】は、雲の多い空に薄っすらとした動体を確認した。フロートのようなものが見える。敵軽巡から放たれた水上偵察機だ。【吹雪】はホッと胸をなでおろす。威力偵察のスコードロンではなかったからだ。

 ノイズ交じりの敵無線も耳に入ってきた。完全に目的は達せられた。自分たちに航空母艦がいないことが報告されたはずだ。

 

「利根さん、夜偵からの報告は?」

 

 逆探では正確な位置は分からない。【利根】から発艦した九八式水上偵察機が航空部隊②を発見していることを祈るだけだ。

 

「方位一一〇およそ二五浬(約40km)にて②を見つけておる。吾輩たちは追い風じゃ。20000まで接近できるかもしれないが……」

 

 敵軽空母はカタパルトを装備している。とはいえ、艦載機の発艦には風向きを合わせて速力を上げて合成風力を作らなければならない。第四航空戦隊と航空部隊②は向かい合う形となり、一気に距離を縮められる。

 

「きますかね?」

「吾輩たちがここまで接近しておるのじゃ。殲滅(せんめつ)する以外に身を守る方法はなかろう。必ずくるぞ」

 

 夜間の航空機攻撃は高い技術と練度が要求される。発艦後に集結して編隊を組まなければ効果は見込めない。深海棲艦とて時間はかかるはずだ。

 

「20000に近づく前に攻撃を受けるぞ……北上どうする」

「高速機動したら夜間爆撃なんて当たらないよ」

 

 【吹雪】は無意識に速力を上げていた。この貴重な時間を無駄にしたくなかった。

 

「吹雪、できるか?」

「一撃離脱! やりましょう」

 

 

 ――第四航空戦隊は二五ノットで逆探の情報を頼りに進んでいた。【吹雪】は上空を確認する。だいぶ雲が薄くなってきた。今日は満月ではないが新月でもない。月明りは敵にも味方にも不利に働く。

 

(敵艦隊にダメージを与えなければこっちが全滅する。利根さんの言ったとおりギリギリの勝負だね)

 

 【吹雪】は単縦陣の先頭を走っていた。【利根】【筑摩】が続き、攻撃の主力になる【北上】【大井】。最後尾に機関不調の【夕立】が続く。

 雲の隙間から檸檬(レモン)のような月が顔を出した。これで深海棲艦のマストも発見しやすくなった。無論、それは敵にも言えることだ。

 【吹雪】はチラリと後ろを振り返った。ぼんやりではあるが、旗艦【利根】の険しい顔が見えた。

 

(そうですね……その気になれば敵は60機以上で攻撃してくる。防ぎきれるとは思えない)

 

「五十鈴がこっちに向かっておる。吾輩たちは敵の第一次攻撃を凌いだらいい」

 

 いつもの豪快な笑顔で【利根】が言った。しかし、【吹雪】の不安はぬぐえない。【五十鈴】の到着にはまだ時間がかかる。自力で【北上】【大井】を守らなければならない。自分と【夕立】、それに利根級二艦では対空能力が不足している。

 

(敵はMIで重雷装艦の怖さを知っているからね……北上さんたちに攻撃を集中してくる)

 

 少しでも早く②を見つけなければと気がはやり、【吹雪】は水平線にマストを探す。そして、なにも発見できないまま20分が経過した。

 

「夜偵から報告じゃ……」

 

 【利根】の声が沈んでいる。

 

「②は航空機の発艦を終え、針路を一九〇に変更。速力二十ノット」

「こちらからの方位と距離は?」

「そこまでじゃ……」

 

 そういうことかと【吹雪】は思った。つまりは、【利根】の放った夜偵は撃墜されてしまったのだ。

 【吹雪】は歯を食いしばり、②の最終確認位置と夜偵が報告してくれた貴重な情報を加味して、予測される方位に目を凝らす。

 

(……いた)

 

 水平線にマストの先端が薄っすらと見えた。おそらくツ級のマストだろう。

 

「②を確認! 方位一八〇、距離およそ22000」

 

 そして【吹雪】はもう一つの脅威も発見した

 

「同方向高度3000、敵編隊! 約15機」

 

 旗艦である【利根】が戦闘開始の指令を出した。

 

「電探の使用は自由! 全機撃墜せよ!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

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